~ プロローグ ~ |
平和と秩序を守る為、害なす存在と直接戦うだけが、エクソシストたちに課せられた任務ではない。 |
~ 解説 ~ |
・力を合わせて街はずれにある野外プールの清掃をしましょう。 |
~ ゲームマスターより ~ |
天気予報で「今週の気温は例年より高いでしょう」という言葉を毎年聞いている気がします。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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◆服装(用意不可装備の場合は借りる) 唯:半袖短パン 瞬:半袖ハーフパンツ ◆子供たちの為に ・プールの状況を確認、どんなゴミがあるかも把握しておく 唯「待ってる子供達の為にも…気合いが入ります、ね」 瞬「そうだねー!でも去年は自転車もあったって話だし 怪我しないように慌てず掃除しよー!」 唯「は、はい!」 ◆デッキブラシ競走 ・ロスさん提案の競争に瞬は参加 唯「きょ、競走?…怒られないでしょうか…」 瞬「まぁ、活気的な声が上がれば 子供達も気づいてくれるかもしれないからねー」 唯「そ、そうですか…わ、わたしは…み、見てますね…」 ◆お弁当の手伝い ・料理には自信が無いので手伝えないが、せめて配膳を 唯「わぁ…皆さん、凄い!」 |
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■目的 掃除に託けて皆と遊ぶ ■行動 ・弁当 ∇ティ プール掃除の話を聞いて即食堂へ 出来れば自分で作りたいが量的に不安な為 明日の昼分の用意をお願いしつつ 朝早くから手伝い ロスは荷物持ち ・掃除 軍手借用 ∇ティ 箒で葉や土等集めて袋へ ∇ロス プールの底から大きい粗大ゴミを上に 後でゴミ一掃荷車等に放込み ・デッキブラシ競争 (勝敗描写無しの騒いでいる最中描写希望) ∇ロス 「うっしゃ!やっぱプール掃除と言えばコレだよな! 合図が鳴ればスタート 壁にぶつかりそうになれば その勢いで登れ(飛べ)ないか試し(激突か落下 興味深そうな人巻き添え ∇ティ ロスが騒ぎ出したら 参加しないメンバーに安全なプールサイドへ呼込み 汚れが残ってる部分あれば指摘 |
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◆持ち物 タオル、着替え 昼食用のパンと飲み物は分け合えるよう多めに用意 ◆行動 リトル 長袖長ズボンのジャージ(足元はまくる デッキブラシを借りてコツコツ掃除 2人で協力して、皆が嫌がるようなところも率先して 子供達が喜んでくれたらいいなぁ… 服が濡れて透けてる女性がいたら慌ててタオルを パンプティ シャツ+ジャージズボンで腕捲り 息抜きに体動かそーっと! 気になる話もあるしな。うーん…(オーバーヒートしたら相棒に飲み物もらい でかいゴミの移動は任せろ! ブラシ競争?へぇ、面白そうじゃん ヨーイドンやろうか? たまに相棒に声を掛ける 拾った我楽多で子供向けに遊具作れねぇかな? なぁなぁ、さっきの答えーーえ?まだ秘密? アドリブ歓迎 |
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皆で協力して楽しく掃除したい 二人とも掃除に向いたラフな服装着用 清掃後に皆で食べるものとしてデザート持参 ◆シュリ プールって、初めて見るわ…! 楽しそうね 頑張って綺麗にしましょう 力仕事はロウハに任せて、デッキブラシで一生懸命掃除 …魔法使いの箒みたいに、飛べたら素敵なのにね ロウハのデッキブラシ競争は が、がんばってーロウハ…! 終わったら皆で食事にしましょう 掃除は大変だったけど、楽しいわ ◆ロウハ プールで水浴びとか、贅沢の極みだよなー ま、ちゃちゃっと終わらせるか まずはゴミの運び出し、その後はブラシで掃除 お嬢はあまり掃除慣れしてねーから、それとなく見ててやる デッキブラシ競争か、いいねー スピードなら自信があるぜ |
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軍手、デッキブラシなど掃除用具借りる 服装ジャージ 飲み物持参 お掃除ですけれど、なんだか賑やかになりそうですね ……どうしました?(首こてり ゴミ掃除してからプール内部掃除 力仕事は結構得意なんですよ 何かあったら気軽にお申しつけくださいね はい、私精一杯頑張ります 競争の邪魔にならないようゴシゴシと掃除 皆さん元気ですね。ふふ、楽しそう リシュテンさんは混ざらなくてよかったんですか? なんだか煮え切らない返事… リシュテンさんてたまにそういう所ありますよね いいんですよ、言いたいことややりたいことははっきり言っても 私はその方が嬉しいです あらかた終わったらプール見まわし これならきっと子供たちも喜んでくれますよね |
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今日はプール掃除ですね、頑張りましょう! 制服はできる限り汚したくはないので今日はTシャツと短パンです。 プールが使えるようになったら皆さんに喜んでもらえますしね。 子供の頃は私もよくお世話になりましたし。 お返しができるみたいで嬉しいです。 なんだか賑やかなお掃除で楽しいですね。 プールって意外と滑りやすいので気を付けてくださいね。 私も気を付けないと…きゃっ(早速転ぶ) …これ以上汚れるとか気にしなくてよくなった感じなので大胆に掃除できますね。 デッキブラシで空が飛べるか…ですか? 考えたことはありますね。児童書を読んで憧れた時期もありました。 あ、レモネードを持ってきたんです。よかったらみなさん飲んでください |
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●目的 掃除をしプールを使えるようにする。 掃除時に出て来たもので、何か復興の役に立ちそうな資材があれば控えておく。 ゴミの分別大事。 ●貸し出し希望 ゴム手袋、ゴム長靴、ゴミ袋。 他、お掃除用品諸々。 ●行動 目についたゴミをひたすら掻きだす。 明智「く、ふふ、ふはははははは!!」 何が愉しいのか愉しそう&一心不乱に掻きだす明智 千亞「落ち着け」 真面目に黙々と作業する千亞。 明智「綺麗になった暁には、沢山の人があられもない姿でここにいると思うと…ふふ…!」 千亞「このド変態!(蹴り)」 掃除は至って真面目に行う。 ロスさん主催のデッキブラシ競争に明智も参戦。 最初は後方に位置する追い込み型。 明智は 皆の尻に 興味津々だ! |
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■プール掃除 まずゴミを出そう 意外な大物は驚きつつ(大変そうなので)ナツキに任せる ゴミを出したらブラシで掃除だね いきなり水をかけられ振り向くとナツキと目が合う ナツキ:あっ、やべ ルーノ:…悪戯が過ぎるね、おしおきが必要かな?(にっこり笑ってナツキに水をぶっかけ) ナツキ:いや待てわざとじゃ…ぎゃー冷てぇ! ルーノ:ふふ、これでおあいこだ デッキブラシ競争?掃除は…これは、止めても聞かないな(苦笑し見守る) 落ち着いたら掃除に戻ればいいか ナツキ:うおお負けるかーっ!(無駄に全力でデッキブラシ競争に参加) ■掃除終了 ルーノ:浄化師の仕事も色々だな ナツキ:たまにはこういうのもいいな! ルーノ:…確かに、悪くはないね |
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~ リザルトノベル ~ |
●笑顔、燦燦 軍手や箒、ゴミ袋。 おおよそ掃除に必要そうな用具を抜かりなく装備するエクソシストたちは、涼しげ且つ動き易そうな衣服を身にまとい、それぞれの目的や期待を胸の内に抱えてよく笑い、そしてよく働いていた。 「お掃除ですけれど、なんだか賑やかになりそうですね」 箒片手にまるで子猫を見守る母猫のような眼差しをしているのは、この面子の中ではいっとう肌の露出が少ない唐崎・翠だ。 足が空気に晒される心許なさと気恥ずかしさを嫌い、平素でも教団の制服に腕を通さない彼女は、今日も長袖長ズボンのジャージという出で立ちだった。 (予想はできてたけど、やっぱり長袖長ズボン……) これならば日差しも防げて丁度いい、と袖も裾も最低限しか捲っていない翠の、唯一露出している白い足の甲にどこか残念そうな視線を落としているのは、パートナーであるレガート・リシュテンである。 最も汚れている溝の清掃を率先して行っているリトル・フェイカーも同じく長袖長ズボンだが、リトルは膝あたりまでズボンの裾を折っている。 別に、下心があるわけではなかった。 ただレガートは、今日ならば軽装になった翠の新たな一面を知れるかもしれない、と純粋に興味を持っていただけで―― 「どうしました?」 首を傾げる翠に、なんでもないです、と答えるより先に、 「ふふふふ。わかりますよ、レガートさん……翠さんの柔らかな二の腕や汗の伝ううなじが見たかったのでしょう?」 「?!」 「やめんかド変態! 鬱陶しい絡み方をするな!」 何故か、たまちゃん、とでかでかと書かれたゼッケンを胸元に縫い付けた水着と、そしてゴム手袋と長靴だけはしっかりと装備した明智・珠樹が、ぬうっと背後からレガートを覗き込んできた。 瞬時に、こちらは至って健全で動き易そうな服装の白兎・千亞が、遠慮なく珠樹の後頭部に蹴りをかます。 満足気な呻き声を上げる珠樹と、まあ、と口元を押さえる翠と、様々な理由で心臓が爆音を奏でるレガート。 「あぁ、千亞さんをはじめとしてみなさんのあられもない姿が……! プール掃除、万ッ歳ッ!」 「黙れド変態! ってかなんでそんな水着なんだおまえ!」 「お気に入りです、ふふ」 地面に伏して興奮からか時折びくびくと震える珠樹の尻を修羅のような表情で丹念に蹴飛ばしていた千亞だったが、咳払いのあとに態度を改めて翠たちと向き合う。 「すまない。もちろん僕もこの救いようのないド変態も掃除は真面目に行うが、またこいつが何か言ってきたなら、こういうふうに遠慮なく蹴るなり捨てるなりしてくれて構わない。それじゃあ」 首根っこを掴まれ、いい笑顔を浮かべたままの珠樹は千亞に引き摺られていく。 珠樹のそれは、まるで太陽のように晴れやかな笑顔だったという。 「……。あの、僕は、翠さんは何を着ても似合うなと思っていただけですから」 軍手を無意味にはめ直しながらのレガートの、出し抜けとも聞こえる返答に、いくらか間を置いてから翠はふわりと目尻を下げた。 「ありがとうございます。では私はプール内のこの大きなゴミを退かすことにしますので、何かあったら気軽にお申しつけくださいね」 「いえ、力仕事なら僕が、……頼もしいです、何かあったらよろしくお願いしますね」 たおやかな花のような翠が、その実、生まれついての種族故に力仕事を得意としているのを思い出す。 では行って参ります、と会釈した翠の背中を、レガートは信頼が滲む目で見送った。 ●清掃員、出動せよ 「待ってる子供達の為にも……気合いが入ります、ね」 「そうだね~! でも去年は自転車もあったって話だし、怪我しないように慌てず掃除しよ~!」 「は、はい!」 半ば粗大ゴミ置き場と化しているプール内をプールサイドから覗き込みながら、杜郷・唯月は密かに両手を拳にして気合も充分に返事をした。 そんな彼女を一瞥して、泉世・瞬もまた小さくガッツポーズをつくる。 「うんうん。じゃあゴミの種類にも気を配りながら、大きいのは力持ちな人たちに任せようか~。ねっ、ルーノ」 「ん? ああ、そうだな……特に女性は無理しないほうがいい。さっきも何故だかおでんの屋台らしきものがあったからね。ああいうのは筋肉も体力もあって脳まで筋肉がついてそうな者に一任するほうがいい。例えばうちの喰人みたいな」 あまり日に焼けていないルーノ・クロードの指が示すほうでは、うちの喰人ことナツキ・ヤクトと、そして立派な竜の尾や翼を持つロウハ・カデッサが、なにやら騒ぎながら軽々といくつものタイヤを回収していた。 「えっ。ほんとかよ、ロウハ! お前デザート用意してくれたのか!」 「おう。っつっても俺は作り方を教えただけでつくったのはお嬢、……おいコラ! 嬉しいからって尻尾を振るな! 集めたゴミが飛んじまうだろうが!」 悪い悪いと明るく謝罪するナツキに苦笑し、さてそのお嬢は、とロウハは視線を巡らす。 ロウハがお嬢と呼ぶマドールチェ――シュリ・スチュアートは、シンティラ・ウェルシコロルとシャルローザ・マリアージュとの三人で、どうやらプールサイドの床を磨くことに専念しているようである。 掃除にも他人との交流にもまだ不慣れなシュリを、しかし今日、ロウハはあまり構わないでいようと決めていた。 同僚である面々との仲を深めるのに、然して危険でもないひとつの目標を掲げるこの任務は最適だった。 女性同士、小さく笑い合いながら一生懸命ブラシを動かすシュリから目を離し、ロウハはまたナツキとの共同作業に戻る。 唯月と瞬も既に掃除を始めているその隣。 枯れ葉を集めるルーノの動きは、少しばかり鈍い。 先程、自然と己の口から出た言葉に自分自身で驚いていた。 うちの喰人。 「ルーノさん、少々手伝って欲しいことが。よろしければふたりの初めての共同作業をお願いしたく……ふ、ふふ」 「……いいとも。でもまずは内容を聞かせてくれる?」 折良く珠樹に妖しく助力を乞われ、ルーノは思考を置き去りにしてそちらへ向かう。 主にプール内の大きなゴミを動かす役目はロウハとナツキ、そして翠の三人に自然と任される流れとなった。 そしてそれらを廃棄所へ運ぶ為の荷車に豪快に乗せているのが、 「なんだこりゃ。銅像の片腕だけぇ? なんでこんなもん落ちてんだ?」 「こいつぁ傑作だ。ロス、お前それ記念に持って帰んなよ」 ロス・レッグとパンプティ・ブラッディという、こちらもまた力自慢のふたりである。 いかつい外見のふたりは種族と性別の差もなんのその、あっという間に打ち解け見事なチームプレーを発揮して、こちらもまたあっという間に二台の荷車に全てのゴミを積み終えた。 ふう、と背中を伸ばすパンプティを、明るいオレンジ色をしたロスの双眸がじいっと射抜く。 一台目の荷車をプールが併設されている公園の外へと運んでから、どうもパンプティの意識が掃除とは別のものへと向くような瞬間が――無論、彼女は全力でゴミを運んではいたのだが――あったように見受けられた。 更に、難しい顔になったパンプティの頭から湯気が出ているように錯覚することさえあった。 「おい、もしかして日射病か? 大丈夫かよ。水ぶっかけてやろうか」 「水を無駄遣いすんなよ。まず木陰に連れてってやれ」 砂地の多いサンディスタム出身であるロウハが、通りすがりに尤もなアドバイスを投げる。 「平気平気。そういうんじゃねぇよ。ちょっとしたなぞなぞの答えをな、考えてんの」 「なぞなぞだあ? なんだよっ、どんなの?」 「悪いけど、そりゃアタシと相棒の秘密さ」 けち! と拗ねつつも呆気なく引き下がり、ナツキと翠のほうへ駆けて行くロスの背中にけらけらと笑い、パンプティは晴天を見上げて唸る。 「天空天駆以外に、デッキブラシで空を飛ぶ方法なあ……」 (あ、また頭から煙出てる) ひとりで黙々と、皆が嫌がるであろう排水溝や溝の汚れと戦っていたリトルは、ひと段落ついたのを境にじんわりと汗ばんだ額を手の甲で拭う。 パンプティが荷車を外へ運んだ際に、公園で遊んでいた子どもたちから無邪気に聞かれたらしい。 デッキブラシで空は飛べるの? と。 『どー考えても無茶だよな』 『はぁ。まぁ、三つほどなら方法は浮かびましたが』 『えっ、嘘、マジで?』 『自信はないですけど……きっとプールが綺麗になる頃には、わかりますよ』 という会話をしてからなのだ、パンプティがたまに考え込んではなぞなぞの答えを探し始めたのは。 「なぁなぁ、さっきの答え、そろそろ教えてくれよ。デッキブラシで飛ぶ方法」 降参して答えを聞きにきた相棒に、しかし首を縦には振ってやらない。 「まだ秘密です。その代わり、気分転換に水でも、」 「――水もいいけど、レモネードはどうだい」 つい、とふたりの眼前に、紙コップを満たす冷たそうな飲み物が現れる。 揃って視線を上げた先で、ロメオ・オクタードが紙コップを差し出していた。 サンキュー、と早速ひとくちで飲み終えたパンプティは、紙コップを握り潰してロメオに返却する。 「んじゃ、もうちょっとひとりで考えてみるよ」 それだけ言って、賑やかにゴミを掻き出している一団の元へパンプティは走って行った。 「……おいしかったです。ありがとうございました」 「そいつはよかった。お嬢ちゃんが用意してくれてたみたいでね。あとで本人にもそう言ってやってくれ」 お嬢ちゃん、とは、ちょうどプールを挟んだ向かい側で仲間と共に落ち葉や土を袋に纏めているシャルローザだ。 「若いもんは楽しそうでいいねぇ。お嬢ちゃんも楽しそうだし」 シャルローザとロメオの視線が、一年ぶりに底を出したプールの真上で交差する。 何事かをシンティラとシュリに断り、シャルローザはやや誇らしげに目を輝かせて小走りにこちらへと駆け寄って来た。 その歩調は先のパンプティのものとは違いどこか危なっかしく、ロメオは思わず一歩、踏み出す。 「ロメオさんっ。そこもさっき私たちで綺麗にしました。意外と滑りやすいのでリトルさんも気を付けてくださいね。私も気を付けないと……きゃっ」 「……言ってるほうが転んでちゃ世話ないな。お嬢ちゃん大丈夫かー?」 いてて、と起き上がるシャルローザに、どうやら怪我はない。 怪我はないが、水を撒いたばかりのプールサイドへおもいっきり転倒した彼女の服は、 「あ。これ以上汚れるとか濡れるとかを気にしなくてよくなった感じなので、大胆に掃除できますね」 Tシャツも短パンも、前面が見事に濡れてしまっていた。 のほほんと少々ずれたやる気を漲らせるシャルローザの肩に、珍しく動揺の色を見せるリトルが急いで己のタオルをかけてやる。 「悪いな、坊主。シャル、いろいろ透けちまってるからここで待ってろ。俺が着て来たシャツ貸してやるからすぐ着替えな」 ばたばたと、時折滑る床につんのめりながら荷物置き場へ走るロメオを暫しぽかんと見送ってから、シャルローザは首を傾げてリトルの顔を覗き込んだ。 「ロメオさんったら。リトルさんは坊主じゃなくてお嬢さん、ですのにね」 「……。レモネード、ありがとうございました」 「どういたしまして。おかわりもたくさんありますよ」 もしここにそれぞれの喰人がいたなら、ツッコミ不在か、と鋭い指摘が飛んだであろうのんびりとした空気が漂う。 一方プール内の雰囲気は、混沌、のひと言に尽きるものだった。 大型のゴミが消え、あとは細かなゴミだけとなったそこを、 「く、ふふ、ふはははははは!!」 何やら高笑いを零しながら、愉快げ且つ一心不乱に猛然と綺麗にしていく珠樹と、心底うるさそうに眉を寄せる千亞。 「落ち着け」 「綺麗になった暁には、沢山の人があられもない姿でここにいると思うと……ふふ……! カラダが火照るのを止められませんねぇ!」 「このド変態!」 千亞に蹴飛ばされ吹っ飛ぶ珠樹をひょいと避け、瞬は困ったように頬を掻いた。 「うーん。一台目の荷車に乗せた分のゴミの分別と種類にまで気が回らなかったな~」 「おや、それなら私と千亞さんで確認してルーノさんにリスト化を頼みましたから大丈夫ですよ。プールの主……ご主人様ともいえる男性に既に渡してくれたそうですからご安心を」 「え? マジ?」 「はい。私はマゾです!」 プールに仰向けに転がりひとりで呼吸を乱している珠樹を呆然と見下ろしてから、瞬は勢いよくルーノへ振り返る。 珠樹の言葉を肯定して頷くルーノ。 「マジなの~?!」 瞬は目を白黒させるしかなかった。 マゾ、恐るべし。 ●はなまるひるごはん 残すはプール内部を磨く作業のみが残り、区切りがいいからと一同は昼休憩をとることにした。 「わぁ……すごい!」 唯月のお世辞ではない正直な反応を受け、シンティラはぺこりと頭を下げる。 「確かにティは今日も早起きして食堂で弁当をつくるのを手伝ってたぜ? でもこの荷物をここまで運んできたのは俺! 俺もすげぇだろ?」 「は、はいっ。レッグさんもすごいです」 「唯月さんが困ってるからやめなさい。それに先程から食べてばかりいるロスさんより、全員に平等に配膳してくれている唯月さんのほうがすごいです」 「はっへはやへっへんらひょ!」 「食べながら喋らない」 淡々と注意しながらも、ロスの頬についた食べかすを指先で丁寧に拭ってやるシンティラの目つきは柔らかなものだ。 肉や野菜やお菓子に至るまで、全員に充分いきわたる量の昼食を、皆リラックスした状態で胃袋に収めていく。 リトルが用意したたっぷりのパンに齧りつき、美味い美味いとはしゃぐナツキが喉を詰まらせれば、隣にいたレガートが慌てて飲み物をコップに注いでやる。 食欲を満たしつつもなぞなぞについて考え込むパンプティに、タイミングを見計らってはリトルは声をかけてやる。 放っておいたらオーバーヒートしてしまいかねない熱心さには、少々の微笑ましささえ感じていた。 いくつもあった大きな弁当箱が綺麗に空になった頃、シュリはクーラーボックスに入れて持参したデザートをおずおずと披露した。 みずみずしい果物をひとくちサイズにカットしたもの、カラメルソースを纏ったプリン、見るからに冷たそうなゼリー。 もう腹いっぱいだと寝転がっていた男性陣も、デザートは別腹という性質を持つ女性陣も、これには大喜びだ。 言動とは裏腹に甘味が好きな千亞の瞳がほんの一瞬だけ喜びで輝くが、それに気づいたのは珠樹だけであった。 デザートをそれはもう楽しみにしていたナツキが早速オレンジに手を伸ばすと、もう喉に詰まらせるなよとルーノが事前に釘を刺す。 甘くて冷たいデザートを片手に乙女らしく占いの話題で盛り上がるシャルローザと翠の様子をなんとはなしに見守っていたロメオに、皆に完食される前に彼の分を別の皿に取っておいた唯月が、どうぞ、とそれを手渡した。 お節介だったらすみません、と恐縮する唯月から、千亞と同じく密かに甘いものが好物なロメオがありがたくそれを頂戴する。 「ありがとう。嬢ちゃんは気が利くねぇ」 「うんうん。いづは最近の若者にしちゃあとっても気が利くいい子だよ~」 「……坊主はずいぶんとじじ臭いこと言うな」 思い思いにデザートに舌鼓を打つ仲間たちを、安堵の眼差しでシュリは見渡す。 この光景を見ているだけで胸がいっぱいになったらしいシュリに、シンティラが静かに声をかける。 「ご馳走になります。シュリさん、今度このプリンのレシピを教えて下さい」 「! ええ、もちろん。あの……わたし、プールを見るのも初めてで、掃除だって不慣れだから最初はみんなに迷惑をかけてしまうと不安だったのだけど、シンティラさんたちがいろいろ教えてくれたから、とっても楽しく過ごせたわ。どうもありがとう」 「よー、お嬢。デザート好評で良かったじゃねぇか。お嬢はいい嫁になれそうだな」 「……」 「あ? おい、顔あけーぞ。日焼けか? マドールチェも日焼けするのか」 赤く染まった頬を隠すように俯くシュリと、心配して保冷剤を差し出すロウハの隣で、悠々と寝そべるロスが愉快そうに尾を振る。 「ハッ! 愛欲の気配!」 「すまない、杜郷さん。ナイフとフォークを取ってくれないか? すぐにこのド変態を黙らせるから」 ●位置について、 昼食を挟んで、午後。 ここからは全員プールに入ってブラシで根こそぎ汚れを落とし、最後の仕上げを施す。 「あ」 満腹になったナツキが上機嫌でホースで水を撒いていたまでは良かった。 ほんの少し目測を誤り、己のパートナーにおもいっきり水を放出してしまうまでは。 金糸の髪から水を滴らせ、さぞモテるだろうと想像させる完璧な笑顔になったルーノと、目が、合う。 「……悪戯が過ぎるね、おしおきが必要かな?」 ナツキにとって不運なことは、ルーノも水撒き係だったことだ。 「いや待てわざとじゃ……、ぎゃー! 冷てぇ!」 「ふふ、これでおあいこだ」 「わざとじゃねぇっつってんのに! もっかい喰らえ!」 「おっと」 そしてこのふたりがホースを手にしていたことが、他の面々にとっての不運だった。 素早く避けたルーノの後ろにいたのがロスだったことが、極めつけの不運ではあったのだが。 「つめてっ。ふはは! やったな!」 嬉々として予備のホースを取りに行くロスを目視して、シンティラは無言のまますーっと隅のほうへ移動、否、いち早く避難した。 実は昨夜の内にてるてるぼうずをつくっていたりもして、今日のこの任務に乗り気だったリトルも、何事かを察知してパンプティの陰に隠れる。 「オラオラオラ!」 ロスによる無差別攻撃。 性別も種族も関係なく、シンティラとリトル以外は全員、笑ったり怒ったり呆れたりしながら逃げ惑うはめになった。 「若いもんの体力はすごいねぇ……」 濡れた髪を掻き上げ、肩で息をしながらロメオが零す。 「ま、まったくだよ~……」 「おたく、まだ若そうなんだから同意してない俺の分まで濡らしてもらいな」 同じくぜえはあ言っている瞬は、両手で大きくバツ印をつくって無言の拒否。 やがて。 頃合いを見たシンティラが無言のままロスの背中を軽く叩いて、水しぶきが舞うお祭り騒ぎを収束させた。 一度プールから出たリトルが迅速に濡れそぼった女性陣にタオルを配り、ナツキなぞは濡れて張り付くTシャツを苦労して脱ぎ半裸になる。 そして。 恙なく水遊びを逃れたふたりによって、全員にデッキブラシが配られた。 「おや、千亞さんの可憐で豊満な膨らみの形も露わにグエ! ぼ、棒状のものに攻められるこの快感…ッ」 早速ブラシを有効活用する千亞である。 軽快な音を立てて、各々ブラシを動かす。 「ナツキ。濡らされたっていうのに随分と楽しそうだ」 「おお、皆でやる掃除だからな。弁当も美味かったし、お前も楽しそうだからな!」 「……おかしな奴。まぁ、これも仕事だからね。ほらそこ、まだゴミが残ってる」 「俺の本気パワーで落としてやるっ」 まだまだ元気なナツキの真横を、こちらもまだまだまだまだ元気なロスが全力疾走で駆け抜けて行った。 壁が迫っても勢いを殺さず、そのまま突っ込む。 最後に大きく踏み込み、宙を飛んで壁に沿って滑空――出来るはずもなく、べしゃりと落下。 「なあ、今のってデッキブラシで空飛んでたよな? 一秒ぐらい」 「はい。僕もプールサイドで滑って飛ぶのもひとつの方法だと考えていました」 「あとひとつは? ラスト」 「……水鏡」 「あ? なんて?」 「いえ。まだ秘密です」 えー! と不満を漏らすパンプティを尻目に、リトルは床を磨く。 (綺麗になったプールに空が映れば、まるで空の中にいるみたいに見えるから……といったら君は一本取られたと笑うだろうか。君と子供の笑顔が見れたら、僕は嬉しいです) そのとき、それまで転がっていたロスが突然起き上がりこう叫んだ。 「デッキブラシ競争やろうぜ! 仕上げにもなって思い出にもなって一石二鳥だろ」 「へぇ、面白そうじゃん。よーいどんっつってやろうか?」 ころりとパンプティの興味がロスの提案に転がり、どやどやと皆も集まってくる。 シンティラに誘導され、競争に参加しない者はプールサイドへ引き上げた。 彼女曰く、救急箱も持ってきたから多少の怪我なら大丈夫です、とのことだ。 「きょ、競走? 怒られないでしょうか……」 「あの様子じゃ止めても聞かないだろうね」 不安そうな唯月にそう言って、ルーノはやれやれと肩を竦めた。 「が、がんばってー、ロウハ……!」 控えめなシュリの応援はしっかりとロウハの耳に届き、野性味溢れる獰猛な笑みが返ってくる。 「皆さん元気ですね。ふふ、楽しそう。リシュテンさんは交ざらないんですか?」 「いえ、その、僕は」 午前中からずっと真面目に掃除に取り組んできたレガートであったが、実はこの競争には参加してみたかった。 しかし翠が観戦を選んだというのに自分だけ楽しむのは気が引ける、と。 当の翠に本音を言うわけにもいかず言葉を濁すレガートの濡れたシャツに、そっと小さな手が乗る。 「いいんですよ、言いたいことややりたいことははっきり言っても。私はその方が嬉しいです」 ぽたり、と翠の毛先から水滴が落ちる。 真っすぐな視線と言葉に背中を押され、レガートはスタートラインに向かって歩き出す。 「やるからには一番になりたいけど、若い子達に勝てるかなぁ~」 「言い出しっぺの俺が勝ぁーつ!」 「半竜のスピードを見せつけてやる」 「翠さんが応援してくれてる……勝たなくちゃ」 「ふ、ふふ。まずは後方から皆さんの魅惑のヒップラインを拝、アウチ! 千亞さんの応援が痛い……素晴らしい!」 「うおお負けるかーっ! ルーノ、見てろよ!」 騒ぎを聞きつけてか、子どもたちが数人、公園からこちらを興味津々といった顔で窺っている。 「おーし。それじゃ位置について、よーい……どん!」 パンプティの合図が放たれ、参加者は一斉に走り出す。 「なあ、お嬢ちゃん。デッキブラシで空を飛ぶのって有名なのか?」 「考えたことはありますね。児童書を読んで憧れた時期もありました。プールに来ると、子どもに戻ったような気分になりますね」 シャルローザとロメオの会話を偶然耳にして、唯月はプールで繰り広げられる眩しい光景にそっと目を細めた。 (いつかこの光景を思い出して、絵を描きたいな……) 誰かが盛大にこけて、レースは波乱を巻き起こす。
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*** 活躍者 *** |
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[16] ロス・レッグ 2018/05/28-23:21 | ||
[15] ルーノ・クロード 2018/05/28-22:52
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[14] リトル・フェイカー 2018/05/28-22:44
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[13] 白兎・千亞 2018/05/28-20:28
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[12] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/28-18:46 | ||
[11] シュリ・スチュアート 2018/05/28-04:26 | ||
[10] シャルローザ・マリアージュ 2018/05/27-05:41
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[9] 唐崎・翠 2018/05/27-02:10 | ||
[8] ロス・レッグ 2018/05/26-15:59 | ||
[7] 明智・珠樹 2018/05/26-11:12 | ||
[6] 泉世・瞬 2018/05/26-05:26 | ||
[5] ナツキ・ヤクト 2018/05/25-22:35 | ||
[4] リトル・フェイカー 2018/05/25-20:01
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[3] ロス・レッグ 2018/05/25-18:56 | ||
[2] 明智・珠樹 2018/05/25-13:28
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