~ プロローグ ~ |
陽の暖かさもようやく安定してきたそんな初夏の頃。 |
~ 解説 ~ |
ティータイムメニューは以下の通りです。 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは!またはこんばんは! |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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唯(今月は瞬さんのお誕生日があって… 最近瞬さんの様子…変ですが…その… でもお祝いはしたいなぁ…と…っ!) ◆衣装 唯:ピンク 瞬:青 ◆ティータイム 唯「アフタヌーンティー… 一度体験してみたかったんですよね…ふふ!」 瞬「ふふ、どーりでキラキラなわけだ!」 唯「う、うぅ…」 瞬「縮こまらない縮こまらない、美味しーでしょー?」 唯「っ!はい、勿論っ!」 ◆お誕生日! ・でもあなたは何歳? 唯「瞬さん、今日は以前聞いてた話では お誕生日…でしたよね?おめでとうございます…!」 瞬「え?あれ、もうそんな日が来てたんだねー! お祝いありがとー!」 唯「ところで瞬さんは何歳になったんですか?」 瞬(ギクッ) 唯「今日こそは知りたいです!」 |
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【注文】 祓:ローズブレンドティ 喰:ブラックティ 祓: 任務で大怪我した相方の快気祝いに、こちらへ誘った …が、紅茶と注文が来てからは、顔を合わせた分だけ心が落ちる、胸が苦しくなる 些細な会話のやりとり 静かに穏やかに紅茶を飲んでいる相方に、引け目しか感じない 目に浮かぶのは前回の戦闘、眼前で敵に剣で貫かれた相方の姿 祓「あの時は…すまなかった…俺が」 喰「気にする事はない。あれは俺の不手際だ」 恨み節を言われた方がましだった 目を閉じ、心満ちた様子で微笑むグレールの全てがこちらの胸を締め付けた …これを、失い掛けていたなんて 心を抑えて食事を終え、庭園へ 人気の少ないところで、 「無事で、良かった…」と、心からの本音を |
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どきどきする… イダ、あたしたち浮いてない?大丈夫? ドレスはピンクのやつ 可愛すぎかなと思ったけど、着てみたら綺麗でびっくりする 注文、そう注文しよう えっと、アップルシナモンティ コールスローサンド スコーン ブルーベリーのチーズケーキ! そう?嬉しい イダも服似合ってる ……照れる こういう綺麗で可愛いの着たことなかったから お姫様みたいでどきどきする イダは堂々としてて、かっこいい 王子様というか、騎士様みたい 緊張してるの? き、きれい 綺麗…あたしが。顔熱い イダは褒めすぎ 無言で食べて、それを眺められて いつもと違う衣装、場所でずっとどきどきが止まらない (イダもかっこいい) 直視できなくて、視線をあちこちして |
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衣装:漆黒のジャケット わぁ…凄く素敵だよ、姉さん!よく似合ってる ドレスはピンクと迷ったんだけど たまには揃って大人っぽく、と思ってね さ、お手をどうぞ、と席までエスコート 目を輝かせる姉さん それだけで来て良かったと思う 勿論、全部分けようか。種類もあるしね コールスローサンドは食べやすくて スコーンは2つの味が楽しめて でも何より姉さんの笑顔が温かい 口の端にクリーム付いてるの、気付いてないな …こんなに嬉しそうな姉さんは、初めて見たかもしれない って、それはシナモンだからそんなに入れたら…! あーあ…口直しにローズチョコを一つ差し出して ついでに付いたままのクリームも指先でそっと拭う 流石に格好付けすぎたかな、なんて |
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■動機 薔薇好きの珠樹、甘い物や食べることが好きな千亞。 共にウッキウキで参加。 ■珠樹 衣装→青のロングジャケット ローズブレンドティ トマトとサラミのサンド フィナンシェ ローズチョコレート ブルーベリーのチーズケーキ ■千亞 衣装→真紅のドレス ミルクティ チーズサンド スコーン イチゴのタルト ショートケーキ ■行動 幸せそうな千亞の表情、姿に笑みの零れる珠樹 「千亞さん、よろしければ私の皿のチョコもいかがですか?」 「え?」 「このチョコも千亞さんに召し上がられる方が幸せかと…!」 「それじゃあ…有難くいただこうかな」 幸せそうな千亞に 「あぁ、私もチョコになり、千亞さんに舐めつくされたい…!(はぁはぁ)」 「静かにしろド変態」 |
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衣装…青のロングジャケット ローズブレンドティ トマトとサラミのサンド フィナンシェ ショートケーキとブルーベリーのチーズケーキ あ、ああ、そうだね(照れ) 良いんだよ、僕が好きで君に着て貰ってるんだから。 そう言えば、何かサプライズを用意してきたって言ってたけど、なんだい? (スイーツを食べながら) これは…うん、これなら二人で使えるし、瞬さんも喜ぶんじゃないかな! …だからそんな言葉どこで覚えてきたのさ… (ララエルと二人で瞬さん達の席へ行き、 お揃いの銀の装飾が入ったマグカップ入りのプレゼント箱を渡す) (瞬さんの異変に何となく気づく) 瞬さん、誕生日おめでとうございます。これからも唯月さんと仲良く、健やかに。 |
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青と銀のドレスを着用。 メニュー ミルクティ トマトとサラミのサンド マドレーヌ 朝摘みイチゴのタルトレット ローズチョコレート ノグリエさん、ティーパーティーへのお誘いありがとうございます。 とってもきっちりした雰囲気でちょっと緊張しちゃいます。 (出来るだけお上品にお淑やかにノグリエさんが恥をかくことのないようにしないと…。) (でも無理をしているのがばればれ) はう!なんですかノグリエさん?…えっブルーベリーのチーズケーキを分けてくださるんですか?ありがとうございます!実はそちらも気になっていたんです (はたと気付いて) あ、でもこういうのはお行儀が悪いんでしょうか…気にしなくていいですか? はい、楽しく、ですね。 |
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~ リザルトノベル ~ |
●特別な日(杜郷・唯月 / 泉世・瞬) 「アフタヌーンティー……一度体験してみたかったんですよね……ふふっ」 両手を頬に当て、小花が刺繍されたピンクのドレスに身を包んだ杜郷・唯月は、テーブルの上に並べられた華やかな数々を目にしてうっとりと呟いた。 「ふふ、どーりでキラキラなわけだ!」 浮かれているパートナーの様子に青のロングジャケットに身を包んだ泉世・瞬はクスリと笑んだ。 「う、うう……ど、どうせ私なんかが……こんなドレス着ても……」 途端にネガティブになる唯月に、瞬は苦笑してマドレーヌを差し出した。せっかく可愛らしい格好をしているのにもったいない。 「縮こまらない縮こまらない、美味しーでしょー?」 「っはい、勿論!」 唯月は瞬からもらったマドレーヌを食べると姿勢をただした。それは彼をティーパーティに誘った大切な理由でもある。 「瞬さん、今日は以前聞いていた話ではお誕生日……でしたよね? おめでとうございます……!」 「え? あれ、もうそんな日が来てたんだねー! お祝いありがとー!」 チーズケーキの上に乗っているブルーベリーをつまみながら柔らかな笑みでさらりとお礼を言う瞬だが、『あの話題』に触れられなければいいが、と内心ハラハラしていた。 「ところで瞬さんは何歳になったんですか?」 (ギクッ) 直球な唯月の問いかけに、瞬は引きつった笑みを浮かべた。 「今日こそは知りたいです!」 純粋な唯月の期待に輝く緑の瞳が眩しすぎて直視できず、視線を泳がせた。 「……そー……だよね、そろそろちゃんと言わなきゃね……えっと、引かない?」 「え? なんでです?」 首を傾げる唯月に、瞬は緊張を和らげるためにブラックティを一口飲んだ。 「はぁ……、うん……えーとーさんじゅーご……かな……?」 「ぇえ!」 (やっぱダメ……?) 唯月が発した大きな驚きの声に瞬は項垂れた。 「それ思ったよりオジサンじゃないです!」 「え、そう?」 予想外の唯月の言葉に瞬は驚いて顔を上げた。 「そうですよ!」 「そっかー……へへ、ありがと」 「?」 ほっと胸をなでおろす瞬を不思議そうに見て首をかしげた唯月だったが、思い出したように手を叩いた。 「じゃあ、ちょっと待っていてくださいね!」 「いづ?」 キョトンとする瞬に片目を瞑ると、唯月はベルで呼んだ執事に耳打ちをした。 「ふふ、お楽しみに、です」 「いづ……?」 唯月の様子を怪訝に思いつつ、しばらくして庭園で生演奏をしている楽団の音色が変わった。 「この曲……」 それは誰もが知っている誕生を祝う曲だ。 そして執事がワゴンに乗せて運んできたものは、小さな花火がついたバースデーケーキだ。中央のプレートには瞬の35歳を祝う文字がチョコで記されている。 瞬が周りを見渡すと、庭園にいた他の客たちも拍手をしていて、この場にいる全ての人が瞬を祝ってくれているのがわかった。 「改めて、お誕生日おめでとうございます、瞬さん」 「いづ、ありがとう」 瞬が礼を言うと、唯月は照れくさそうに頷いた。 二人にとって特別な日は始まったばかりだ。 ●秘めた想い(ガルディア・アシュリー / グレール・ラシフォン) ガルディア・アシュリーは、先日の戦闘で深手を負った相方グレール・ラシフォンの快気祝いをしようと、ブリテンにあるポーポロ宮殿のアフタヌーン・ティーパーティへとやってきた。 「綺麗な場所だな」 「あ、ああ……」 しかし自分から誘ったものの、目の前で穏やかにブラックティを楽しむ相方とは対照的にガルディアはそわそわと手元のカップを揺らすだけだ。 だが琥珀色の中に薔薇の香りを漂わせ紅茶はガルディアの背中を押してくれた。 「あの時は……すまなかった……俺が」 「気にすることはない。あれは俺の不手際だ」 意を決したガルディアが何を言わんとしたかを察してか、間髪入れずにグレールはそう言うとにっこりと微笑んだ。 (そういうこと、か……) グレールはガルディアから快気祝いにと誘われたのだが、自分が怪我をして以来相方が一度も心から笑っていないことを知っていた。 それに今日の彼は注文したフードメニューにもお茶にも口をつけず、目が合えばうつむいたりと落ち着かない様子だ。 (気にかけてくれている、ただそれだけで俺の気持ちは十分なんだがな) グレールはそう思っているのだが、グレールが怪我をした原因は自分にあると思っているガルディアは、彼から恨み節を言われた方がマシだと思っていた。だがガルディアを責めることなく、目を閉じ心満ちた様子で微笑んでいるグレールの全てがガルディアの胸を締め付けた。 (……これを失いかけていたなんて) 忘れられないその恐怖と強い後悔の念が未だにガルディアを苛んでいる。 「ジャム、つけるか?」 「あぁ……」 ガルディアを気遣ってかスコーンを勧めてくるグレールに、ざわつく心を抑えつつ、せっかくだから薔薇を見ようとグレールを誘った。 「香りがすごいな」 「……あぁ……」 薔薇の香りを楽しむグレールにガルディアは言葉少なく頷くだけだ。 奥に進むと人気もまばらになり、真紅の薔薇が咲き誇る陰で、ガルディアは思わず傍にあったグレールの手を取った。 何故だか赤い薔薇に囲まれるグレールに、血を流しながら倒れたあの時の光景が重なってしまったのだ。 「ガルディア?」 そしてガルディアは、突然のことに戸惑うグレールの手の甲を震える手で握りしめ、縋るように自らの眉間へ導いた。 額に触れた温かな彼の体温が、彼が生きているという事実をガルディアに実感させてくれる。だがその分後悔も強くなって、溢れるものが止まらなくなる。 「ガルディア……」 グレールは手の甲に温かく濡れたものが触れたのを感じた。顔を隠しながら震える相方の姿に、それが彼の涙だとグレールはようやく理解した。 「無事で、良かった……」 いつもは傲慢なそぶりを見せる相方らしからぬ、震える声が綴るその祈るような言葉に、湧き上がって来た愛おしさに負け、グレールは肩を震わすガルディアを抱きしめた。 彼の涙に秘めていたはずの親友以上の思いが隠せなくなりそうだ。 「ガルディア、俺は生きている。だから……」 大丈夫だと言葉を続ける代わりに、グレールは今だけは、とガルディアを抱きしめる腕に力を込めた。 ●ドキドキは誰のせい?(アラシャ・スタールード / イダ・グッドバー) 「どきどきする……イダ、あたしたち浮いてない?」 アラシャ・スタールードは、目の前に座るイダ・グッドバーにおずおずと問いかけた。 「ああ、大丈夫だから安心しろ。浮いてないから」 二人はポーポロ宮殿で開催されているアフタヌーン・ティーパーティへと参加していた。貸衣装も借り、お互いドレスアップしての参加だ。 「ドレス、ピンクにしたんだな」 「うん、可愛すぎかなーと思ったんだけど」 アラシャは少し気恥ずかしそうに俯きながら金の髪をいじる。 「アラシャの金の髪によく似合う。まるで物語に出てくるお姫様みたいだな」 「おひ……っ!?」 自分でも綺麗だなとは思っていたが、イダから思いもよらない言葉をかけられアラシャは赤面した。 「はは、照れてるのか?アラシャ……おっと」 イダはいつもの癖で着崩してしまったことにきづいてそれを直した。窮屈だが、フォーマルな場にはふさわしくないだろう。 (しかし……俺よりもおどおどしているアラシャのおかげで堂々とできるな) アラシャはといえば、両手を頬に当てて何やらブツブツ呟いている。 「落ち着け、とりあえず注文するぞ」 「注文! そう、注文しよう」 イダはアラシャにテーブルにあったメニューを手渡した。 (んん、適当に頼んでおいてくれとも言えんなこれは……) メニューを開いた途端、頼み方の複雑さにイダは渋い顔をした。 「えっと、アップルシナモンティ、コールスローサンド、スコーン、ブルーベリーのチーズケーキにしようかな」 「じゃあ……俺はブラックティー、トマトとサラミのサンド、マドレーヌにローズチョコレートにするか」 二人の注文が決まったところでメイドを呼び、それを頼んだ。 注文が終わってからもアラシャはそわそわと落ち着かず、テーブルの花をつついたりしており、その様子にイダは苦笑した。 「うん、普段の活発な姿もいいが、そういうドレスも似合うな」 改めて感想を告げると、アラシャは青空の瞳を細めてはにかんだ。 (おお、衣装と相まって照れる姿が可愛いな) 「そう? 嬉しい。イダも服似合ってる」 「はは、俺のは馬子にも衣装だろ」 「そんなことない。イダは堂々としててかっこいい。王子様というか、騎士様みたい」 (まるで別人だな) 普段は「おっさん」と呼んでくることもあるアラシャからの言葉にイダは驚いた。 「かっこいいか。褒められるのは悪い気分じゃない。ありがとう、アラシャ」 二人がお互いを褒めている間にも頼んだメニューがテーブルの上に並べられていく。 「熱っつ」 「大丈夫? イダ、緊張してるの?」 イダがうっかりテーブルの上にお茶をこぼしてしまい、アラシャが慌てて駆け寄り溢れたお茶を拭いながらイダに尋ねた。 「おお、俺も緊張しているぞ。綺麗なアラシャに、慣れない食事処でな」 「き、きれい」 (綺麗……あたしが?) そこへメイドが片付けにやってきたので任せ、アラシャは席へと戻った。その間にもイダの言葉がアラシャの頭の中でぐるぐるとまわっている。 (イダは褒めすぎだよ……) 照れ臭さと恥ずかしさでアラシャは無言になった。時々イダの視線を感じて落ち着かない。 アラシャはイダを直視できなくて、彼の視線を避けるように視線をあちこち泳がせるけれどやっぱり最後はイダを見てしまい、触れる視線に彼女のドキドキはしばらく治らないのだった。 ●ふたりの時間(リュシアン・アベール / リュネット・アベール) リュネット・アベールはポーポロ宮殿のアフタヌーン・ティーパーティの会場で借りた衣装に着替え終わり更衣室を出た。そこへすでに漆黒のジャケットに着替え終えた弟のリュシアン・アベールが駆け寄ってくる。 「わぁ……すごく素敵だよ、姉さん!」 「シ、シア……変じゃない、かな……?」 青と銀のドレスを選んでくれたのはリュシアンだ。選んでくれたのは嬉しいけれど、いつもと違う服装に落ち着かない、と呟くリュネットに、リュシアンはそんなことない、と首を振った。 「変じゃないよ。ドレスはピンクと迷ったんだけど、たまには揃って大人っぽく、と思ってね」 そう言うと、リュシアンはリュネットに恭しく手を差し出した。 「さ、お手をどうぞ」 「は、はい……っ」 (シア……なんだか大人っぽくて緊張する……) 突然のエスコートに緊張しながらも、リュネットはリュシアンに導かれて席に戻ると、メイドが料理を運んでくる。 「わぁ……このお茶、本当に林檎の香りがする。お菓子も……これ、全部食べていいの?」 リュネットはアップルシナモンティの香りにうっとりとし、フードやスイーツの数々に目を輝かせている。 姉のその様子に、ここに来てよかった、とリュシアンは笑みを深くした。 「ね、シア、一緒に食べたい。全部半分こしよ」 「もちろん、全部分けようか。種類もあるしね」 提案にリュシアンが応じてくれたので、リュネットは早速ショートケーキを一口彼に差し出した。 「うん、美味しいね」 リュシアンの笑顔に満足げに頷き、リュネットもまたショートケーキを口に運んだ。 (姉さんの笑顔、温かいな) リュシアンは、マドレーヌを手に取った嬉しそうなリュネットの口の端にクリームが付いていることに気づいた。 (姉さん、口の端にクリームが付いているの、気づいていないな) 「これは……お砂糖、かな」 しかしリュネットは顔についたクリームではなく、茶色いパウダーを見つけていた。 「……って、姉さんそれはシナモンだからそんなに入れすぎたら……っ!」 リュシアンの制止も間に合わず、リュネットはティースプーンに山盛りのシナモンをアップルティーへと投入してしまった。 「シア、何か言った?」 「あ……っ」 そして何も気づいていないリュネットはカップを傾ける。 「~~っ!?」 「あーあ……」 途端にリュネットはシナモンの味に驚き激しくむせてしまった。涙目になっているリュネットに、リュシアンは口直しにと甘いローズチョコレートを食べさせ、そのついでに口の端についたクリームを指先でそっと拭いとった。 「姉さん、大丈夫?」 「う、うん、大丈夫……」 リュネットの口の中で溶けていくチョコの甘さがシナモンのスパイシーさを和らげていく。 (あれ、僕ずっとクリーム付けたままだったの? お姉ちゃんなのに、みっともない所、見せちゃった……) リュシアンが触れた部分にクリームがあったことにようやく気づいたリュネットは頬を染め、口元を隠した。 (流石に格好つけすぎちゃったかな) そう思いながらも、リュシアンはペロリと指先についたクリームを舐め取った。 「そうだ、新しいお茶頼もうよ。ちょうど僕もカップが空いたんだ」 リュシアンはそう言うと、美味しいティータイムを仕切りなおすためにベルを鳴らした。 ●薔薇の記憶(明智・珠樹 / 白兎・千亞) 「千亞さん……お似合いです……!!」 うっとりと嬉しそうにいう明智・珠樹の視線から体を隠すように白兎・千亞はその場にしゃがみ込んだ。 二人はブリテンのポーポロ宮殿で開催されているアフタヌーン・ティーパーティに訪れ、貸衣装に着替えたところだ。 「衣装を借りに行ったら、女性のものを渡されたんだ。あんまり、見るな……」 普段から男装をして過ごしている千亞はいつものように男性用のジャケットを選ぶつもりでいた。しかしスタッフが手渡してきたのはドレスだった。 「千亞さん、どうぞこちらを。初夏とはいえ、まだ少し冷たい風が吹きますからね。風邪をひかないように」 そんな千亞に珠樹は首に巻いていた貸衣装の一つであるシルバーのスカーフを解いて千亞の肩にかけた。 男性ものの幅広のスカーフはストールがわりにもなり、千亞が気にしているボディラインを隠してくれる。 「あ、りがとう……」 いつもは口を開けば変態なことを言う珠樹の、予想外の紳士的な行動に千亞は驚きつつも彼の手を借りようやく立ち上がった。 「ふふ、さあ、参りましょう」 二人が席に着くと待っていましたとばかりに料理が運ばれてくる。 「わぁ……っ!」 ドレスを恥ずかしがっていた千亞だが、甘いものを目にして歓声を上げた。 「うわぁ、美味しい……!」 幸せそうな千亞の表情や姿に珠樹から笑みがこぼれる。 「千亞さん、よろしければ私の皿のチョコもいかがですか?」 「え?」 「このチョコも千亞さんに召し上がられる方が幸せかと……!」 「それじゃあ、有り難くいただこうかな」 力説とともに珠樹から差し出されたローズチョコレートを受け取り食べようとした千亞だったが、何故だか次第に珠樹の息が荒くなっていることに気づき動きを止めた。 「私もチョコになり、千亞さんに舐めつくされたい……!」 珠樹はハァハァと荒い息を吐き、顔を紅潮させながら潤んだ瞳で千亞が受け取ったチョコを心底羨ましそうに見つめている。 「静かにしろド変態」 千亞は低い声で言うと珠樹の視線を避けるようにしてチョコを口に入れた。 「ああ、千亞さんのお口の中で、とろけるチョコ……」 「いい加減にしろ、変態っ!」 千亞は勢いをつけ珠樹の口にスコーンを突っ込んだ。そしてようやく静かになった席で千亞は料理を堪能するのだった。 食事を終えた二人は薔薇が好きな珠樹の要望で薔薇の咲き誇る庭園へと向かった。 「珠樹はどうして薔薇が好きなんだ?」 そういえば珠樹はお茶もローズブレンドティだったし、スイーツメニューでもローズチョコレートを頼んでいたと千亞は思い至った。 「えぇ、この世界での私の記憶は薔薇から始まっておりますので、ふふ」 記憶喪失の珠樹が目覚めたのは薔薇園だったのだと、返ってきた言葉に何故だか千亞はそれを聞いてよかったものかわからず俯いた。 「そうか……今日ここにきて、何か思い出せそう……か?」 「いえ……。でも、今日という忘れたくない思い出は出来ました」 ほんの少し寂しげな珠樹の表情とその意味する言葉に千亞は頰が熱くなり、うつむいた。 「……忘れたら許さないからな」 千亞の言葉に珠樹は微笑み、頷いた。 ●お揃いの青に身を包んで(ラウル・イースト / ララエル・エリーゼ) ララエル・エリーゼは、ポーポロ宮殿で開かれているアフタヌーン・ティーパーティの会場でレンタルしたドレスの裾を持ってくるりと回った。ふわりと青のドレスが風を受けて膨らみ、ふんだんに飾られた銀糸を混ぜたフリルが揺れる。 「えへへ、ラウルとお揃いの色の衣装です!」 「あ、ああ、そうだね」 嬉しそうなララエルの言葉にラウル・イーストは照れ臭そうに笑う。ラウルもまたレンタルした青のロングジャケットに身を包んでおり、選んだ色が意図せずララエルとペアルックとなり、好みが合致した事に密かに幸福を感じていた。 「ラウルのお屋敷にいた時もそうでしたけど、こんなに素敵なドレス……嬉しいです」 「良いんだよ、僕が好きで君に着てもらっているんだから」 「ルルにもブルーのリボンを付けていただいたんですよ」 見ればララエルが身につけているドレスと同じ生地で作られた小さなリボンが、ララエルが大事にしている人形ルルの胸元にある。 「みんなお揃いですね!」 嬉しそうなララエルに、ラウルは頷いた。 「そろそろ料理も揃う頃だから、行こうか」 「はい!」 二人が連れ立って席に戻ると、あっという間に注文した料理が並べられた。 「そういえば、何かサプライズを用意してきたって言っていたけど、なんなんだい?」 甘い物好きのラウルがショートケーキを食べながらララエルに問うと、ララエルはミルクティをソーサーに置き、待ってましたと言わんばかりに目をキラリと光らせた。 「あっそうなんですよ!じゃじゃーん!瞬さんのお誕生日プレゼントを用意してきたんです!」 ドヤ顔でララエルが差し出したのはラッピング済みのマグカップが入っている箱だ。ララエルとラウルは出発前に教団で、同じくアフタヌーンティーを楽しみに来ると言っていた浄化師、泉世・瞬が本日誕生日を迎えるのだと彼のパートナーである杜郷・唯月が話しているのを聞いていたのだ。 「これは……うん、これなら二人で使えるし、瞬さんも喜ぶんじゃないかな!」 「ですよね、これなら二人で今日みたいに紅茶を楽しめるんじゃないかなって」 二人が紅茶を楽しんでいる姿を想像しているのだろう。ララエルはうっとりと両手を頰に当てて目を閉じた。 「ララはセンスがいいなあ……とても素敵なマグカップを見つけたね」 「ふふふ、ドヤです! ドヤ!」 「……だからそんな言葉どこで覚えてきたのさ……」 ラウルは脱力しつつも、キメ顔を繰り返すララエルの可愛さに微笑みフィナンシェを口にした。そしてララエルはというと、庭園を見渡して目的の二人を探している。 「みつけました! 早速渡しに行きましょう!」 ララエルはルルを抱き上げ、ラウルの手を引いて立ち上がるよう促した。 いつのまにか弦楽器の音も誕生を祝う音楽に変わっている。プレゼントを渡すタイミングは今だろう。 二人がどんな反応をするか少し緊張しながらも、ラウルたちはウキウキと彼らの席へと向かったのだった。 ●君にかける魔法(シャルル・アンデルセン / ノグリエ・オルト) 「うん、今日のシャルルも可愛いらしいですね。青と銀のドレスにいつもの髪飾りも映えていますし……」 ノグリエ・オルトはシャルル・アンデルセンのドレスアップした姿に狐目をさらに細めた。 二人はアフタヌーン・ティーパーティを楽しもうと、ブリテンのポーポロ宮殿を訪れていた。 「ノグリエさん、ティーパーティへのお誘い、ありがとうございます。とってもきっちりした雰囲気でちょっと緊張しちゃいます」 そわそわとシャルルが辺りを見回すたびに、彼女がいつも身につけている先端が青に染まっている羽飾りが揺れる。 「シャルルはこういうきっちりとした雰囲気には慣れていないようですね」 「は、はい……」 (出来るだけお上品にお淑やかにノグリエさんが恥をかくことのないようにしないと) ノグリエの隣でシャルルは小さく拳を握り決意をしていた。だが力が入りすぎたシャルルの動きはぎこちない。 「ふふ、緊張しているのがバレバレです」 その事に気づき、ノグリエは苦笑してシャルルの手を取り自らの肘にかけるよう誘導した。 「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。いつも通りに」 「ノグリエさん……」 まるで魔法にかけられたように、シャルルの緊張が解け、弦楽器の演奏に合わせるように腕を組んだ二人は席へと歩を進めた。 そしてテーブルの上に並んだ料理を見てシャルルは目を輝かせ、ノグリエは満足そうに頷いた。 (出来るだけシャルルとは別のメニューにしましたが正解のようですね……特にこのチーズケーキはすごく悩んでいましたから) シャルルは注文を決めるとき二種類頼めるプチスイーツのメニュー欄を「ブルーベリー……イチゴ……」と呟きながらずっと眺めておりなかなか決められないでいるようだったのだ。 「ほら、そんなに緊張していないで。ボクの頼んだチーズケーキ、一口いかがですか?」 「はう! なんですかノグリエさん?」 席についたとたん、そこに置かれた食器類の多さに再び緊張し、固まってしまっていたシャルルはノグリエの言葉をほとんど聞き取れなかったらしい。だが差し出されているケーキを見て、大体の意図は察することができたようだ。 「……えっブルーベリーのチーズケーキを分けて下さるんですか? ありがとうございます! 実はそちらも気になっていたんです」 蜂蜜色の瞳を輝かせ、ノグリエが差し出した皿を受け取ろうとしたシャルルだったがふとその手を止めた。 「でもこういうのってお行儀が悪いんでしょうか……」 上目遣いにケーキとノグリエを交互に見つめるシャルルに、ノグリエはその可愛らしい仕草にケーキが乗った皿を落としそうになった。 「お行儀が悪いとかそんなことは気にせずに」 「……気にしなくて、良いですか?」 「ボクはシャルルが楽しんでくれるのが一番ですから」 そう。ティーパーティで大切なことは、楽しむことなのだ。 「はい、楽しく、ですね」 「うん。良い笑顔ですね」 はにかみながら皿を受け取ったシャルルにノグリエは満足そうに頷いたのだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[9] シャルル・アンデルセン 2018/06/10-15:24
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[8] ガルディア・アシュリー 2018/06/08-09:12
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[7] 杜郷・唯月 2018/06/08-08:52
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[6] ララエル・エリーゼ 2018/06/08-00:18
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[5] 白兎・千亞 2018/06/08-00:05
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[4] リュシアン・アベール 2018/06/07-23:56
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[3] アラシャ・スタールード 2018/06/06-18:58
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[2] 杜郷・唯月 2018/06/06-02:48
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