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1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。
子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。
そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。
「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。
しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
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●トラブルメーカー卿の来訪
新年と言えど、教団に休みは無い。ヨハネの使徒やベリアルといった脅威はカレンダーに従って休んではくれないし、年末からのお祭りムードでトラブルはかえって増加する。
新人教団員であるリネット・ピジョンは諸先輩を差し置いて休むことは出来ず、年明け早々業務に励んでいた。
「あけましておめでとう! 諸君!」
突拍子もなく響き渡った朗らかな声に、目を白黒させながら顔をあげる。先ほど、同じく勤務中の団員が差し入れを持ってきてくれたので、またその手の来訪者かと思ったが、立っていたのは見慣れた団服ではなく、きらびやかな装飾の施されたインバネスコート姿の男性だった。
「あ、あけましておめでとうございます……?」
「おや、君は初めて見る顔だな。吾輩はフィルマン・ラクロワ。爵位は無いので、気楽にラクロワ卿と呼んでくれたまえ」
リネットよりも頭二つ分ほど高い長身に、服の上からもわかる軍人のような逞しい体つき。年のころは四十代前半といったところか。麦色の髪を赤いリボンで一つに結び、彫の深い眼窩にモノクルをはめている。レンズの奥で、淡い水色の瞳が好奇心を湛えて煌めいた。
「畏まりました、ラクロワ卿。私はリネット・ピジョンと申します」
直接まみえるのは初めてだったが、その名前には聞き覚えがあった。
貴族でありながら国政に興味を示さず魔術師の道を選び、年がら年中研究に没頭している変わり者――司令部詰めの団員からは密かに『トラブルメーカー卿』という綽名を奉られており、彼が持ち込んだ指令に関する資料を見たリネットは出来ることなら関わりたくないと心底思ったものだった。祈りが通じたのかどうかこれまで顔を合わせることは無かったのだが、とうとうこの日が来てしまったか――。
覚悟を決め、リネットはいっそう背筋を伸ばすと口を開いた。
「それで、……本日はどのようなご用件でしょうか」
「いやぁ、はっはっは、やってしまったよね!」
参った参った、と言いながら、ちっとも悪びれずにラクロワは頭を掻いた。この男、黙っていれば重厚な貴族然とした雰囲気があるのに、口を開くと途端に軽くなる。ひとしきり笑った後、ラクロワはその軽いノリのまま話を続けた。
「近頃は、東方島国ニホンの魔術が気になっていてね。やれ式神だ、呪符だ、九字だとあれこれ研究してみているんだが……君は知っているかな、干支というものを? 十二種類の動物がねえ、年ごとにぐるぐる回るのだよ。その年の守護動物というのかね、あれは。まあ、下々の者どもは特に意味も考えずにその年ごとの動物の絵だの置物だのを有難がって飾ったりしているようなのだが……十干十二支といって、十二の動物と、十の五行の兄弟たちが六十年周期で回るのだ。これがとても興味深いものでねえ……」
はた迷惑なのはさておき魔術師としては優秀だ、という評判だったはずだが、説明はお世辞にも分かりやすいとは言えない。ただでさえ、ニホンの魔術などリネットは門外漢である。幸いにも、リネットが単純な相槌さえ打ちかねているのに気が付いたラクロワはひとつ咳払いをして、説明を打ち切った。
「ともかく今年は己亥といってね、猪がラッキーアニマルなのだよ。吾輩は普段から屋敷のまわりをゴーレムに守らせているのだが、折角だから式神とゴーレムの技術を掛け合わせて見張り番をしてくれる猪を作ろうと思いたった。そうして機能性、耐久性、それに見目の愛くるしさに拘って、とうとう吾輩は作り上げたのだよ!」
だが、と、ラクロワは突如悲哀に顔を歪めた。
「その猪たちは皆、逃げ出してしまったのだ」
「え」
「あまりに可愛らしく出来たので興奮しているうちに、術式をひとつ組みこみ損ねてしまったようなのだ。本来なら吾輩の命令に従って動くのだが、いやあ、なんだ、そのつまり野生のゴーレムになってしまったのだ。正確には、ゴーレムではないな。あのような無骨なものではなく、毛並みや手触りまで再現された最先端の式神というべきだが」
「ラクロワ卿……」
「安心したまえ! 幸いにも彼らは皆、我が屋敷の地下迷路に逃げ込んだ。外へ出て一般市民を害するようなことは無いと誓う! それに、例え外に出たとしても、うりぼうは可愛いからな! 市民たちは恐れおののくどころか歓喜の声を上げるであろう!」
「外見の良し悪しは関係御座いません」
ぴしゃりと言い捨てたリネットに、ラクロワは悄然と肩を落とした。案外に打たれ弱い。だが、立ち直りも早かった。
「う、うむ……まあ、ともかく! あの子たちを捕まえてほしいのだ。用意した呪符を貼り付けてもらえば、ただの置物に戻るはずだ。地下迷路とは言ったが、もちろん屋敷の主である吾輩は地図を持っている。情報の開示は惜しまないと約束しよう。無論、報酬もはずむとも! 大いなる報酬は人を寛容にする効果があるからな!」
この御仁、自身がトラブルメーカーであるという自覚はあるらしい。そこで態度を改善するのではなく、開き直って札束をちらつかせるのは性質が悪いとしか言いようがない。
なにはともあれ、新年の晴れやかな街中にうりぼう――まだ子どもとはいえ無数の猪が解き放たれるようなことがあってはいけない。
リネットは溜息を飲み込み、粛々と依頼を受諾した。
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1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。
子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。
そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。
「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。
しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
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1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。
子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。
そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。
「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。
しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
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1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。
子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。
そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。
「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。
しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
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技術革新特区として、商業に栄える街、ブリテン――。
「サクリファイスのテロだ! 至急、エクソシストに救助要請を!」
いち早いレヴェナントの報告から、有志のエクソシストらへと速やかに指令が発令される。
幸いまだ『サクリファイス・タナトス』は発動していない。魔方陣は完成し、生贄となる信者は揃っているのに、だ。
強化するべきベリアルの確保に手こずっているだけだろうか……? 監視に配備された構成員は、信者らの動きに眉をひそめる。
何にせよ、術が発動されてしまえば厄介だ。そうこうしているうちに、指令を受けた浄化師らが現場へと到着した。
「待っていたよ、浄化師たち。さあ、神へ捧げる浄化の儀式の始まりだ……!」
浄化師らが現場へ到着したタイミングで、集まった信者らを生贄に『サクリファイス・タナトス』が発動する。
核となる生物が『口寄魔方陣』で呼び込まれる――皮膚を突き破る触手、確認されたのは強化によりスケール2へと進化した猪型ベリアルだ。
固体数も多くない。この程度なら戦闘は長引かないだろう――。
一瞬の油断のあと、口角を吊り上げた術者を見て、構成員はハッとして浄化師らを振り返った。
「う、っぐ、あああっ!」
苦しみ始めた一人を見て、しまった、と気付いた。
術者の狙いは最初からこちらだったのだ。
「ククッ、知っているよ。この術が、君たちの持つその厄介な武器に強く作用することを……生きる為の理由が強くなる程、死が迫るのは苦しいことだろう? 抗い難い衝動に身を任せてしまえばいい。大丈夫さ、神もそれを望んでおられる――」
一度発動した『サクリファイス・タナトス』は止まらない。
苦しむ傍らのパートナーの瞳には、混濁した闇が渦巻いていた。
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1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。
子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。
そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。
「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。
しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
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1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。
子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。
そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。
「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。
しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
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教皇国家アークソサエティ、薔薇十字教団司令部。
手を貸してくれとフォー・トゥーナへと報告する男の言葉には、隠しきれない焦りが滲んでいた。
市井の服装と街の至る所で見かける髭面の平凡さが、教団内部に居る事で異質に浮かび上がる。
『レヴェナント』は薔薇十字教団司令部の下で独自に過激派宗教団体サクリファイスを追う組織だ。「創造神が人間を滅ぼすと決めた。人間は滅びを受け入れるべきである」と語るサクリファイスのトップ『カタリナ・ヴァルプルギス』に心酔する者は多く、流行病のように一般市民の中にも浸透している。
男はそういった一般市民の中でも特に危険な人物を監視する役目にあったのだが。
「昨晩、対象が姿をくらませた。一刻も早く見つけ出さねば大惨事になりかねん。今はどこもかしこも手が足りん。その上……」
舌打ちと共に続けられた言葉は苦い。
「昨晩、その女の家から魔術の痕跡らしきものを見つけたと仲間から連絡があった。それを最後に、彼とは連絡が取れていない」
『サクリファイス』に存在する魔術師。他者の魂を糧にベリアルを強化する『サクリファイス・タナトス』なる魔術が明らかになった今、その存在は大量殺人の可能性を示唆している。
男は目を閉じ、眉間にしわを寄せる。
「心当たりといえば、最近気になることがあった。普段は近寄りもしない近所の公園に出かけ、熱心に中央広場のツリーを見ていたんだ。住民たちが持ち寄りのプレゼントを置くだけで、他に面白みもない場所だというのにな」
その公園は柔らかい温かさで満ちていた。
木製のおもちゃ。温かいグリューワイン。木皿に乗った焼き林檎。親に手を引かれ、耳当てをした子供たちが嬉しそうに笑いあう。
テントの並ぶ公園の遊歩道は賑わい、俯いて歩く女を誰も見ていない。
女はまっすぐに中央広場へと向かっていた。
楽し気な回転木馬の横を通り過ぎ、道化の差し出した風船を無視し、飾りつけられた巨大なクリスマスツリーの前で立ち止まると顔をあげた。
喜びに満ちた眼差しはツリーの根本に積まれたプレゼントの山へと注がれる。
生誕祭の日に近隣の住民へと配られるそれは、愛らしいリボンや飾り紙で祭り景色をいっそう華やかに彩っていた。
独り言を呟きながらつり上がっていく女の唇を、飴をくわえた子供が隣で不思議そうに見上げる。
女は片手を天へと伸ばした。ツリーの天頂に飾りつけられた星を求めているのだと、そばに立っていた子供は思った。
プレゼントの山ががらりと崩れ落ちる。
中から現れた仔馬ほどの大きさのソレが、元は飢えた鼠であったと誰が分かるだろう。
背骨だった部分を、眼球だった部分を、尾であった部分を突き破り、幾つもの触手が蠢いている。
沼のように淀んだ黒い毛皮を見て、女は満足そうに笑った。
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樹氷群ノルウェンディ。
観光業が盛んな雪国だ。
数多くの温泉が湧くので、それを目当てにした観光客に事欠かない。
観光名所は他にも多く、ツアーガイドの案内でオーロラを見ることの出来る場所もある。
トナカイの畜産も盛んなので、トナカイがひくソリ馬車や、肉を柔らかくする甘辛いタレに漬けた焼肉料理も好評だ。
他にも、固定氷塊と呼ばれる『溶けない氷』で作った食器や人形細工が人気がある。
人気のある観光国家。それがノルウェンディだ。
とはいえ人気があるからと怠けていれば、いつのまにやら寂れるなんてのはよくあること。
それを避けるため、普段から新しい呼び物を探すのに余念がない。
そこで目を付けたのが、魔女の魔法を使った新しい催し物。
魔女の魔法で流れる温泉プールにウォータースライダー。
他にも何かアイデアはないかと、頭をひねっている。
このアイデアを成功させるため、浄化師に協力が求められた。
浄化師が居ることで、魔女が関わる催し物も安全だと、アピールしたいのだ。
かくしてアナタ達は、ノルウェンディの観光名所、温泉施設『アイスラグーン』を訪れることに。
のんびり楽しむも良し。
新しいアトラクションを企画して、それを実行しても良し。
息抜きがてらの指令を、アナタ達はこなすことになりました。
そうした段取りの全ては、ノルウェンディの王ロロ・ヴァイキングが鎮座する王城にて話し合われた。
◆ ◆ ◆
「よう来たの。ウボー」
ロロは親しげに、親戚筋に当たる青年、ウボーに声を掛けた。
「お久しぶりです、オジキ」
気安い口調でウボーはロロに返す。
今この場に居るのは4人。
玉座に座るロロと、それに向かい合うウボー。
そしてウボーのパートナーであるセレナと、魔女セパルである。
「話は猛虎の牙から聞いちょる」
ロロは各地の情報収集のため、冒険者として動かしている身内から聞いた話を口にする。
「ワシに手を貸して欲しいことがあるそうじゃのう」
「はい。虚栄の孤島の国家復活に手を貸して欲しいんです」
ウボーが口にした虚栄の孤島とは、かつて小さな国家として栄えた島であり、今では滅びすたれている場所だ。
人が住んでいないことから、魔女の自治領として使えないかと、魔女の権利獲得に動く者達は考えている。
そのために必要なことを、いま話し合っているのだ。
「国家復活っちゅうことは、あそこの王族を見つけたっちゅうことか?」
「いえ、まだ。そのための手助けも頼みたいんです」
虚栄の孤島を治めていた王族は、今では行方が分からなくなっている。
国を復活させるためには、そこを治める王族は必要なのだ。
「王族を見つけることの他に、王族が見つかったなら、オジキに後見を頼みたいんです」
「後見のう……ワシも一応は王じゃけぇ。他の国、それに教団に認めさせる相手としちゃ、権威付けにはなるじゃろうが」
「ダメですか?」
ウボーの問い掛けに、ギタリと笑みを浮かべロロは返す。
「いけん言う訳ないじゃろが。可愛い甥っ子と、別嬪な魔女さんの願いじゃ、それぐらい安いもんじゃ。じゃけどなぁ――」
獰猛な笑みを深め、ロロは言った。
「それだけで済ます気ぃは無いんじゃろ。ワシら相手に気ぃ使わんでもええ。全部、話せぇ、ウボー」
王というよりは、ゴッドファーザーとでも言うべき雰囲気を漂わせるロロに、ウボーは同じような笑みを浮かべ返した。
「教皇の首をすげ替えます。最終的な目的のためにも、虚栄の孤島の国家復活は必要なんです」
ウボーの応えに、ロロは大きく笑う。
「ガハハハハッ! 大きく出たのぅ。教皇の交代には、関連国の王族か代表者の一定数の発議が必要じゃけぇ、その数合わせに虚栄の孤島の王族を使おうっちゅうことか」
「はい。この方法を取らなければ、恐らく多くの血が流れます。穏便に教皇の首をすげ替えるためには、この方法が必要です」
ウボーの言葉にロロは同意する。
「じゃろうのぅ。じゃが、教皇交代の発議が出来ても、それを実行するためにはアークソサエティの貴族連中の承認が要るじゃろ。そっちは大丈夫なんか?」
「すでに貴族筋の幾つかは、話を進めています。問題は現教皇のシンパとなる貴族ですが、そちらの切り崩しも水面下で進めています」
「腹は括っちょるっちゅうわけじゃな。ええじゃろ、協力しちゃる。じゃが、条件がある」
セパルに視線を向け、ロロは言った。
「魔女さんらに、ウチの観光名所の手伝いをして欲しいんじゃ。これから魔女さんらは、表に出て来て一緒に暮らすんじゃろ?」
「うん、そのつもりだよ」
笑顔で返すセパルに、ロロも笑顔で返す。
「ええことじゃ。ウチとしても魔法の使える魔女さんは、のどから手が出るほど欲しいからの。ぜひ、協力していきたいんじゃ。その手始めに、アイスラグーンで何かしてくれんか」
「アイスラグーンって、すっごく大きい温泉だよね? ウチの子達も、一度行ってみたいって言ってる子も多いから、願ったり叶ったりだよ」
「だったら、水着探さなきゃダメよね。あとで行ってみる?」
「うんうん、好いね好いね。楽しみ~」
女性陣のセレナとセパルは、笑顔でお喋りを。
2人を微笑ましげに見ているウボーに、ロロは傍に寄ってボソリと。
「あと一つ、頼みがあるんじゃが、ええか?」
「俺たちで出来ることなら」
ウボーの応えにロロは返す。
「竜の渓谷を襲った、終焉の夜明け団っちゅう奴らが居るじゃろ。アイツらが関わりそうな事件があったら知らせぇ。ぶちのめすのに手ぇ貸しちゃる」
「ドラゴン達のためですか?」
「おう、そうじゃ」
迷いなくロロは返す。
「密猟者共のせぇで、今じゃ離れて暮らしちょるが、ドラゴンはワシらの家族じゃ」
ノルウェンディは、元々は竜の生息地である。
当時のドラゴンのリーダー『ファフニール』との話し合い(物理的なものも含む)により、奴隷や難民も抱え込んだ海賊であったヴァイキング達が住むことを許された場所でもある。
文明や魔術が発達する前は、ドラゴン達の協力により身の安全を確保していたノルウェンディの民は、今でもドラゴンに対する親愛の情は強いのだ。
だからドラゴンが襲撃されたと聞いて、ノルウェンディの民は激怒しているのである。
「分かりました。恐らく、浄化師が一番アレらと関わることが多い筈です。その時に協力を頼めるかもしれません」
「話をつけてくれるか? そん時は、頼むぞ」
◆ ◆ ◆
などという話し合いにより、巨大温泉施設「アイスラグーン」での魔法を使ったアトラクション企画が持ち上がり、浄化師に協力が求められたのです。
裏では色々と複雑に話が絡み合っているようですが、今回浄化師であるアナタ達が頼まれたのは、ふたつ。
アトラクションのアイデア出しと、実際に楽しんでみることです。
お客さんが大勢きてくれるよう、皆さんのアイデアをお待ちしております。
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