《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


ぴかぴかの、
普通|すべて

帰還 2018-04-14

参加人数 8/8人 ナオキ GM
 世界の秩序と平和を守るエクソシストは、天賦の才を持つ限られた存在だけが成り得る立場である。  よって、純粋な羨望だけでなく、嫉妬や畏怖の目を向けられることも少なくない。  それでも彼らは文字通り己の魔力と命を賭して戦う。  闇色の教団制服の裾を翻して。 「今期から正式に配属される者たちの採寸はどうですか。恙なく進んでいますか」  教皇国家アークソサエティ薔薇十字教団に籍を置き、幾度も修羅場をかいくぐってきた妙齢の女性喰人にそう問いかけられ、バインダーに挟んだ資料とにらめっこをしていた年若い部下は暗い顔で首を横に振った。 「いえ……、今期も大型新人が多いですね。採寸から脱走する者もいれば、異性の採寸を覗きに行く者、手合わせをやたらと乞う者。選り取り見取りです」  部下の回答に、女性は思わず額に手を遣って深々と溜息をつく。  まだ制服を持たない新人エクソシストと、日々の連戦で傷んだ制服を持つ中堅たち。  今日は、そんな彼らを教団寮に集めての採寸日である。  教団側としては全員纏めて招集して一度に済ませてしまいたいのだが、エクソシストにはどうも癖の強い者が多く、戦闘でもないのにむやみに大人数を集めれば手の付けられないことになる、としっかりと学んでいた。  この日集められたのも、十組にも満たないエクソシストだ。  しかし既に採寸に飽きたのか、脱走を試みてアークソサエティ中心街の観光を企てる強者もいるようで、採寸係として働く者は大いに手を焼いていた。  制服を改造したり着崩したりして個性を出すなんてのは、まだまだ可愛いほうなのだ。  懐中時計を確認すると、女性が出席しなければならぬ定例会議まで、あと二時間と少々。  速やかに採寸を終え、血の気と魔力の多い奴らをそれぞれの巣へと放り出す必要がある、と。  眉間にしわを刻んだ女性は、脇に控えていた部下に短く命じた。 「手段は問いません。――終わらせろ」  あくまでもこれは、制服採寸に対しての命令だ。  断じて新人共の命を奪おうとしているわけではない。  幸いにも本部には、お抱えの採寸のプロがいる。  まるで鞭のようにメジャーを扱うプロが。  毎回何人もの“ひよっこ諸君”をメジャーで縛り、時には天井から吊るし、羞恥で頬を染めた彼らのあんなところやそんなところを測ってきた。  緊縛のプロではなく、もちろん、クリーンな採寸のプロ。  市民たちから憧れを抱かれている制服が、毎度毎度どのような騒動を経てエクソシストの元に届いているのかを、市民たちが知るよしはない。  何事もイメージというものがあるからだ。  ――エクソシストよ、常に気高くあるべし。
夜明けのキメラ
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 じょーしゃ GM
 季節は、冬。  そうは言っても寒さは落ち着いていて、道端には春の足音が聞こえ始める、そんな季節だ。  そんな中、教団の本部が存在する中心部から南方にある都市『ルネサンス』に喰人の目撃情報がないか調査しに来ていた浄化師は、全身を黒の外套で覆った男に声をかけられる。 「おい、知ってるか? あの洞窟、落ちてるって噂だぜ」  急なことだったので少し戸惑いながらもその言葉について追及する。 「何が……落ちているんだ?」 「決まってるだろ……あれだよあれ、『魔結晶』だよ」  魔結晶とは魔力が結晶化してできる石である。  通常は高い魔力を持つ動物が絶命した時に生成されたりするものだが、魔力が十分に満ちている場所でも生成されることがあるという。  この情報が本当なら魔結晶を回収する拠点が増えるということで、教団にとってもプラスな話のはずだ。 「どうするよ浄化師さん、放っちゃおけねぇ話だろ?」  喰人の調査もあるがこちらも捨ててはおけない話だ、すぐにその黒ずくめの男に場所を案内させる。  途中何人かの街の住人とすれ違ったが、皆が不思議なものを見る目をしていた。  ついた場所は石炭などを採掘していたであろう洞窟で、炭鉱員の影がないことから、だいぶ昔に石炭を掘りつくしてしまった廃鉱だということはすぐに分かった。 「こんな場所に魔結晶が落ちているのか……おい……?」  振り向くと案内してきた男の姿はなく、途端、強烈な眠気に誘われる。  どれだけ眠っていただろうか、まだ視界がぼやける中で立ち上がると洞窟の奥から何やら音が聞こえた。  生き物の声だろうか、その声は昆虫が発する断末魔の悲鳴のような声で、同時に何本もの足を動かす歩行音が聞こえた。  音のするほうに歩み取るとそこに見えたのは巨大な蜘蛛の生物。  しかし目の前にいるのはどう考えても蜘蛛ではない、『蜘蛛』であって、『蜘蛛』でないのだ。  その体にはサソリの尻尾が雑なコラージュ作品のように付いていて、生物の進化の過程で絶対に生まれることがないものだということは容易に想像がつく。  そしてその傍らにいた男が声を発する。 「目が覚めたか浄化師の兄ちゃん、この生物をみて驚いてるだろう? そりゃそうだ、こうなることを知っていた俺でさえ驚いてるんだからな!」  そして嘲笑うかのようにこちらを見ながら言葉を続ける。 「魔結晶があるなんて簡単に信じちゃってさ、浄化師ってのはこんなもんなのかねぇ?」  外套の袖から覗いた左手の甲には埋め込まれているような十字架の形が現れており、それを見た瞬間に事のすべてを察した。  黒い外套と埋め込まれた十字架、そしてこの不気味な生物。  ここにいるのは『終焉の夜明け団』の信者だ。  終焉の夜明け団は禁忌とされている魔術を使い、『キメラ』と呼ばれる合成生物を生み出そうとしていると聞いたことがある。  そして完成したのであろうその実験を、この廃鉱で試そうとしているのだ。  一人で闘っても勝ち目はない、そう思った浄化師は洞窟の中を逃げながら出口を探すことに決めたが一歩遅かった。  キメラに噛みつかれ、直後体が痺れるような感覚に陥る。  身動きが取れないまま浄化師は再び目を閉じるのであった。  ――そしてその頃、薔薇十字教団本部はルネサンスの住人から怪しげな情報を入手していた。  曰く、街はずれの炭鉱に浄化師が連れていかれるところを見た、と。  そしてその洞窟の内部から奇妙な生物らしき声がした、と。  ルネサンスには教団が喰人捜索のために派遣した浄化師がいるはずだ、もしその情報が本当なら……と臨時で指令が発令された。  教団から指令を受けた浄化師達は、ルネサンスの洞窟へと急ぐのであった。
子を思う親の愛ゆえに
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 檸檬 GM
●  今度こそ、と願いを込めて、木から石に変えた。  山で切りだした石を背負って冷たい流れに足を入れ、一つ一つ丹念に積み上げて太い橋げたを作った。  川向うの学校へ通う子供たちのために、春までに橋を完成させてやりたい。  思いを胸に、村の男も女も、時間が許す限り手伝いに出た。  あと少し。  あと少しで完成する。  なのに全てはあっさり崩される。  「ベリアルだ! また、熊のベリアルが出た!」  村人たちが指さす先に、アシッドの影響によって生まれた熊の魔物がいた。  体に張りついた艶のない毛を割って、赤黒い触手が何本もうねり伸びている。  早すぎる目覚めに体はやせ細ってはいるが、それでも大人ほどの背丈があった。  肩を揺らして歩きくるベリアルの後ろから、人間の両手にすっぽり入るほどの大きさの生き物がよちよちとついてきていた。  目も耳も開いたばかりのその生き物は、冬眠中に生まれた熊の子たち――。    熊のベリアルは灰色の毛に埋もれた目を赤く燃え立たせると、逃げる村人たちには目もくれず、我が子を岸辺に残し川へ駆け入った。  水しぶきを上げて進み、橋げたに巨体をぶつける。  橋が川底に沈むまでは、あっという間の出来事だった。  もう自分たちだけの力では橋を完成させられない。  それに、いまは橋の破壊だけで満足して森へ帰っていくが、魔物はそう遠くない日に村を破壊し、人を襲うだろう。  ついに村人たちは重い腰をあげて、薔薇十字教団に熊のベリアル退治を依頼しに行った。
行商隊を救出せよ
簡単|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 梅都鈴里 GM
「キャアアッ! で、出たわ! 悪魔よ!」 「一般人を避難させろ! 積荷は置いていっていい! 命が最優先だ!」  平和であった現場は一瞬にして騒然となった。  とある行商隊が出会った異形のモンスター。どす黒い触手を体中から生やした野犬は、見た目からしても通常のそれではない。 『アシッド』と呼ばれる瘴気を吸い込み、魂を捕われた生き物が変化した禍々しい姿。  口の端からダラダラと涎を垂れ零し、視界に認めた人間達を食らおうと牙をむいていた。 「きゃあっ!」  人々の急流に押された小さな子供が、石に躓いて転んでしまった。  混乱の中でようやっと大人が気付いた時にはしかし、悪魔――『ベリアル』は、必死に立ち上がろうとする小さな命――格好の獲物に、赤く光る眼光を向けている。 「あの子は私の、私の娘なの! 誰か助けて!」 「行ってはならん! 食われてしまうぞ!」  助けを請う母親を大人達は取り押さえる。  きっとこの非力な母親が出て行っても、出て行かなくても、あの子供は食べられてしまうだろう――。  誰もが、命の終わりを覚悟した。 「だれか、たすけて……!」  ――浄化師、エクソシストさまっ……!  子供が、祈るようにその言葉を口にしたまさにその時――飛び掛ったベリアルを、一陣の風が弾き飛ばした! 「ギャイィンッ!!」 「っ! 誰だ!?」  人々が一様に、救世主を振り返る。  彼らは神の意思に反旗を翻す、選ばれし存在。 「――怪我はないか、お嬢ちゃん。今、助けてやるからな!」  少女が呼んだヒーローは呼びかけに応え、にっと歯を見せ頼もしい笑顔で笑いかけた。
エンケの魔猪
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 碓井シャツ GM
 狩猟は上流階級の楽しみとして流行している。  競技としてのハンティングの台頭とは関係なく、教皇国家アークソサエティの中心部より離れた山間の小さな村であるエンケでは、生活としての狩猟がさかんだった。  猟師は訓練された猟犬と共に山へ分け入り、日々の糧として動物を狩る。  その日も村の猟師が三人、山へ入っていた。ベテランの猟師が一人、身を屈めて地面を検分する。 「この足跡は、イノシシだな……まだ新しいぞ」  獲物の形跡を確認し頷き合うと隣を歩いていた猟犬が、キャウウウウ、と悲壮な声をあげた。  続けて前方に向かって、キャンキャンと吠え続ける。 「どうしたんだ、臆病風に吹かれたか。お前らしくもない!」  常にない猟犬の様子に猟師は胴を叩いて落ち着かせようとするが、半狂乱の犬はおさまるようすがない。  犬の視線を追って前方を見れば、霧の中に獣の大きなシルエットが浮かび上がる。 「イノシシだ……!」  一番年若い猟師が引き攣った声を出して、猟銃を構えた。 「いや、あれは……」  霧の合間から、其れは異容を現した。  身体の至る所から獣皮を突き破って、赤黒い触手が伸びている。  ベリアル化していることは明らかだった。 「逃げろ、あれは銃で死なねえぞ……ッ!」  悪魔に成り果てたイノシシが力を溜めるように、ぐっと身を低くする。 「来るぞ、左右に散開しろ!」  猟師が声を張り上げた。  爆発のような突進だった。イノシシがぶち当たった巨木がメリメリと音を立てて倒れる。  避けそこなったら、ひとたまりもなかっただろう。  這う這うの体で村に逃げ帰った猟師たちは、こう叫んだ。 「薔薇十字教団へ……! 浄化師を呼んでくれ!」
新たな目覚め
簡単|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 3/8人 Narvi GM
 巨大な壁に囲まれた国、教皇国家アークソサエティ。  その中心部にある首都エルドラドから南部に位置する巨大都市ルネサンスは、たくさんの市民や国外から来た者が住んでおり、いつも賑わっている。  しかし、現在ルネサンスは大混乱に陥っていた。  いつもなら人気の多い通路を必死に走り抜ける少女と、それを追うヨハネの使徒。周りの人には一切見向きもせず、ヨハネの使徒は一直線に少女を殺さんと移動していた。  一生懸命に逃げる少女。その瞳に涙を浮かべ、絶望に足を止めたくなるのをどうにか振り払って、少女は逃げる。  その後ろに続く三体のヨハネの使徒。額のコアを輝かせながら、少女に向かってかなりの速度で地上を移動していた。  少女は自分の才能を呪った。この才能さえなければ今こうやってヨハネの使徒に追われることはなかったのに、と。  魔力を多く持つ者はヨハネの使徒に狙われやすい。  生まれつきのものなんてどうしようもない――――そんな当たり前のことはまだ幼い少女でもわかっている。それでも、謝罪の言葉が際限なく溢れ出すのだ。  こんな才能さえなければ、お母さんもお父さんも自分を庇って死ぬことなんてなかったのだから。  涙が止まらない。それでも、ここで死ぬわけには行かなかった。 『ライラ、あなたは……あなただけは生きて……』  両親は最後にそう言い残して、冷たくなった。  悲しむ暇なんてなかった。少女の目の前にはヨハネの使徒がいる。両親の生きた印を拾う時間も、落とした愛用のペンダントを気にする暇すら残されていない。  密かにその胸に復讐の闘志を燃やしながら、少女は立ち上がり後ろを向いた。  きっと浄化師があなたを見つけて、助けてくれるから。その言葉を信じて、ただひたすらに少女は逃げ続ける。
闇夜に蠢くもの
普通|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 4/8人 terusan GM
 周囲を堅牢な城壁で囲み外部からのあらゆる危険を排除している教皇国家アークソサエティ。しかし、その外角にあたる一部の地区は犯罪者やならず者、かすかなスキをつき不法に侵入してきた者たちの吹き溜まりとなり、治安は悪化の一途を辿っている。  そのような外角近くの貧民窟の一角で、残虐な殺人事件が起きたのが一昨日の深夜。夏に降るにしては冷たい雨が街路を激しく叩く月のない暗い夜だった。  一夜明け、近所に住む老婆が、普段から大酒喰らいで評判だった男の無残な遺体を発見した。老婆は驚いて地区の自警団に通報し、3名の自警団員が早速遺体の元に駆けつけた。工員の男のようで作業着を身につけているが、上半身を中心に無残にもビリビリに破られ原型をとどめていない。  そのボロボロの衣服に変色してどす黒くなった血が大量に染み込んでいた。 「こいつはここいらでも有名な酔っ払いでしてなぁ。まぁ、こんなにされた日も酔ってウロウロとしていたんでしょうな」  老婆が自警団員の一人に話しかけた。  老婆の言葉には全く反応せず、その自警団員は遺体につかつかと歩みよりしばらく遺体を調べていたが、急に顔色を変え周囲で遺留品や手がかりを探していた他の2名にここに来るようにと声をかけた。 「おい、こいつの傷を見てみろ。刃物で切られたのでも刺されたのでも殴られたのとも違うぞ! 」 「何かで激しく抉られたり、まるで食いちぎられたりした跡のようだな」 「おい、ここらあたりで最近おかしなことを見たり聞いたりした者はいないか? 」  まじまじと遺体を見つめていた三人目の自警団員が、顔をあげて周囲に集まってきた野次馬の群衆に声をかけた。 「そこの先の袋小路にある古井戸から、ここんとこ気味の悪い声やら音やらが聞こえてきて、ここらの人間は夜だけじゃなく昼間も井戸には近づかなくなったんだよ」  若い工員が自警団員の問いかけに応えた。 「それとよ、1週間ほど前の晩に薄気味悪リぃ生き物の影を何人もが見てるんだ」  杖をつき長くヒゲを伸ばした老人が付け加えた。 「ワシも見たんだ。最初でっけえ野良犬かと思ったんだが、どうもそいつの背中からは蝙蝠の羽みてえなのが生えてるんだ。それで眼なんだろうが暗闇で真っ赤に光ってて、少し開いた口からは火ィでも吐くんじゃねえかってくらい赤い舌が見えたんだ」  老人と同じモノを見た者が一斉に頷いた。 「俺も奇妙な奴を見たよ! 」  二十代ぐらいの若い男が口を開いた。道具屋の店番をしている者だという。 「店にさ、全身黒ずくめの外套を羽織った全く一言もしゃべんねぇ男の客が薬をいくつか買いにきたんだ。で、そいつが金を払うときに見えたんだ。左の手の甲に埋め込んである、十字架をよ」  道具屋はあまりの怪しい雰囲気に思わず男を尾行し、例の古井戸の中にするっと消えるのを見たと言う。 「おい、誰かその井戸に案内してくれ! 」  自警団員の一人が声をかけると、先ほどの道具屋が先頭を歩いて自警団員を井戸に案内した。  井戸を覗き込んだ一人の自警団員が井戸に密かに取り付けてあるハシゴを見つけた。  三人の自警団員は勇敢にもハシゴを使って井戸の下に降り、井戸の底から横に果てしなく続く横穴を発見した。 「これは、臭うな。『終焉の夜明け団』の狂信者の奴らかもしれないぞ! 」 「ああ、しかも、その見立てが正しけりゃ、爺さんが見たのは奴らが作ったキメラだ。よりによってキメラがこのアークソサエティ内にいる可能性があるなんて! 」 「早いとこ、薔薇十字教団の教団本部に報告に行った方がいいぜ」  自警団員たちは浄化師たちが集まる薔薇十字教団に赴き、事の次第を余す事なく伝えた。  アレイスター・エリファスを狂信し、その復活のためならば禁忌魔術の行使をも厭わない「終焉の夜明け団」は、教団からも、発見し次第即刻捕縛もしくは処刑の命令が通達されているほどの危険な集団だ。  特に本件は、禁忌魔術「ゴエティア」が行使され、凶暴な合成生物「キメラ」が生み出されている可能性が高い。  直ちに教団に所属する浄化師たちに狂信者捕縛とキメラ殲滅の指令が発令された。  君の志願を待つ!
薔薇十字教団クリーン週間
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 8/8人 北乃わかめ GM
 とある昼下がり。教団本部の廊下をずんずんと足音を立てて歩く女性職員がいた。  かなり憤慨している様子で、たまらず顔見知りである女性清掃員が声をかける。 「ちょっとあんた、どうしたんだい?」 「あ、聞いてくださいよ! 彼ったらひどいんです!」  話したくて仕方なかったとでも言うように、清掃員に詰め寄る職員。  ああこれは貧乏くじを引いたなと思うも、後悔先に立たず。職員の口からは、付き合っている彼氏がいかにだらしないかが止めどなく語られた。 「洗濯物はいつまでも干しっぱなしだし、食べた物は片づけないし! 昨日なんて先週飲み終わったビール瓶を置きっぱなしにしてて……!」  おそらく大げさに言っている部分もあるのだろうが、確かに並べられる彼氏の特徴は「だらしない」の一言だ。  職員曰く、片づけられない系男子なのだとか。  清掃員として、そりゃ酷いねえと一応相槌を打っておくが、正直どうでもいいとも思っていた。 「少なくともゴミは片づけてほしいっていうか!」 「うんうん、そうだねえ」 「でも全然言っても聞いてくれないし……。あ、そうだわ!」  ひらめいた! と明るい表情になる職員。  嫌な予感がしたが、清掃員は彼女を止める術を持ち合わせてはいなかった。 「本日より、薔薇十字教団クリーン週間としましょう!」 「……それはどういう内容なんだい?」 「きれいにするんです!」 「……そうかい」  別に教団を巻き込む必要はないんじゃないか? という疑問を口にすることはできず。勝手にやってくれ、なんて野暮なことも言えず。  相談してきますね! と意気揚々と走っていく女性職員の背中を、ただ見送るしかできなかった。
迷い猫探し
簡単|すべて

帰還 2018-04-07

参加人数 3/8人 oz GM
「浄化師さん、ココがいなくなっちゃったの。おねがいです、ココを見つけてください」  10歳ぐらいの女の子が泣くのをこらえながら、浄化師に必死に頼み込む。  ここは教皇国家アークソサエティから西部に向かってある大都市エトワール。  エトワールの中心街にあるリュミエールストリートから少し外れた市民街。  君たちは市民からの願いで「迷い猫探し」のために教団から派遣された。  愛猫がいなくなり、依頼者の女の子はずいぶんと落ち込んでいるようだ。女の子の気持ちを代弁するようにその日は小雨が降り続けていた。  女の子の着ているワンピースは一般市民が着ている服よりも上等なものなので、両親は裕福な商人なのかもしれない。  落ち込む女の子を優しく宥めながら詳しい話を聞くと、女の子は愛猫のために覚束ない説明ながら現状を話してくれた。  話をまとめてみると、飼い猫は二週間ほど前にいなくなったそうで、家の周辺を両親と一緒に探してみたが、見つからなかったそうだ。  近所の住民にも話を聞いてみると、ほとんどの人が「見かけていない」と答える中で、三軒隣のおばさんから、買い物帰りにリュミエールストリートの方角に歩いていたのを見た、との目撃情報を得る。  すぐさま女の子は探しに行こうとするが、両親に一人では行かせられないと反対される。両親も仕事が忙しく、これ以上猫探しに時間を割いている暇はない。  エトワールの治安は悪くはないが、女の子一人で出歩かせるのは両親にとっても不安だったのだろう。  困った女の子の両親は、最後の手段として教団に依頼した、というのがこれまでの経緯だった。 「ココは黒い猫さんで、目の色はグリーンなの。とても人懐っこくて、チーズが大好物なんだよ。さわるとね、ふわふわした毛並みで幸せな気持ちになれるんだ」  飼い猫のことが大好きなのだろう。自慢するように一生懸命に猫について話す女の子。 「わたしがあげた赤い首輪をしているの・・・ココ、どこいっちゃたんだろう。わたしのこと嫌いになっちゃったのかな・・・?」  だんだんと女の子の声が消え入りそうになる。 「わたしも色んなところ見て回ったんだけど、全然見つからなくて・・・」  スカートの裾をぎゅっと握りしめると、聞き取れるか取れないかぐらいの小さな声で「ココに会いたい」と呟く。  君たちは女の子に必ず見つけると約束し、猫探しに向かった。  危険性はほとんどない任務だが、市民の一人である女の子を笑顔にするのも浄化師の仕事だ。健闘を祈る!
冬森に潰えた絆
普通|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 4/8人 狸穴醒 GM
●ある少年の死  走る。走る。  針葉樹の森の中を、少女は走る。  雪だまりで足がもつれる。息が苦しい。心臓が破裂しそうだ。それでも走り続ける。  枝から雪の塊が落下し、少女のすぐ後ろを塞ぐ。  厚手のコートはあちこちに鉤裂きができている。冬枯れの小枝が頬をかすり、切り傷をつくった。  柊の茂みを突き抜けると、曲がりくねった山道に出た。この先に、村がある。  転がるように山道を駆け下りながら、少女は振り向いた。 (――お兄ちゃん)  本当は今からでも戻りたかった。だけど。  ついさっきの出来事が、少女の脳裏に蘇る。 『アンネ、先に行け!』  恐怖にすくんだ少女を背にかばい、少年が叫ぶ。  凍った池の向こう、針葉樹の陰に覗くのは――異形の、獣。自然の生物にはあり得ない触手が、揺れる。  すぐに悟った。ソレが、決して相容れない存在であることを。  少女に背を向けたまま、少年が言う。 『村の人たちにベリアルが出たことを伝えて、浄化師を呼んでもらえ! こいつらは普通の人間じゃ太刀打ちできない』 『お兄ちゃんは、っ、どうするの?』  震えながらも問い返すと、少年はきっぱりと答えた。 『俺はここに残る』 『そんな、だめだよ!』  普通の人間では対抗できないと自分で言ったくせに。けれど少年は首を横に振る。 『俺もこいつらを足止めしたら追いかけるから』 『でも!』 『いいから行け! 早く!』  ちっぽけな狩猟用のナイフを手にして少年は――少女のたったひとりの兄は、一瞬だけこちらを見て、微笑んだ。 『転ぶなよ』  溢れそうな涙を堪え、少女は走る。絶望が胸を侵食していく。 (あたしのせいだ。あたしが、凍った池を見たいなんて言ったから)  森が途切れ、村外れの小屋と雪をかぶった畑が見えてきた。村にたどりついた、けれど少女の胸中は安堵からは程遠い。  (ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!)  走る。走る。  ベリアルが出たことを村へ伝えてほしいという、兄の最後の頼みを果たすため。  折れたナイフを取り落とし、少年は針葉樹に背を預けた。 (あー……もう駄目だな、こりゃ)  雪に赤が散っていた。  脇腹と左脚、右腕。それ以外にも数え切れない箇所。全身の傷から、血と生命とが流れ出ている。  コートを着ているのに、さっきからおそろしく寒かった。  短い人生の終わりに瀕して、それでも少年は、かすかに笑った。 (父さん、母さん。俺、ちゃんとアンネのこと、護ったぜ)  ――こんなに早く、そっちに行くとは思ってなかったけど。  両親を流行り病で失って、妹とふたりで生きてきた。妹には人並みに食事をして、まともな服を着て、笑っていてほしかったから、村の雑用でも何でもこなした。  自分がいなくなれば、妹はひとりだ。それが気がかりだけれど、アンネは年齢のわりにしっかりしている。村の人たちだって親切だ。きっと大丈夫だろう。  血に半ば塞がれた視界の中、獣の影が近づいてくる。  狼に似ているが、その輪郭は無茶苦茶に生えた触手のせいで元の姿を失っている。  ベリアル――アシッドに侵されて異形と化した、生き物の成れの果て。  まさかこんな村の近くで遭遇するとは思っていなかった。運が悪かったのだろう。  だけど少年は満足だった。できる限りのことはやったと、そう思う。 (元気でな、アンネ)  目を閉じる。  もう寒くは、なかった。  それを待っていたかのように、少年の身体を、幾本もの触手が刺し貫いた。 ●指令 「よく来てくださいました、浄化師の皆さん」  ソレイユ地区にある、雪深い小さな村。  指令に応じてやってきた浄化師たちを、老いた村長が出迎えた。 「皆さんにお願いしたいのは、東の森に出現したベリアルの討伐です。薪取りに森へ入った村人がひとり、すでに犠牲になっておりまして……」  浄化師たちは居間に招き入れられ、村長から詳しい内容を聞くこととなった。村長夫人が温かいお茶を淹れてくれる。  その、部屋の隅。  暖炉の脇に、12、3歳くらいの少女がじっと座っていた。少女の表情は、ひどく暗い。  不思議に思って浄化師のひとりが尋ねると、村長は沈痛な面持ちをした。 「あの子はベリアルの犠牲になった村人の妹で、アンネといいます。仲の良い兄妹だったんですが……一緒に森へ入って、兄のカイだけが」  村長夫人が言い添える。 「誰もいない家に帰すのはしのびなくてねぇ。うちへ連れてきたんですけれど、ずっとあの様子で」  アンネはほとんど無表情で虚空を見つめているだけだが、ときおり痛みに耐えるように唇を噛む。抱えた膝に、小さな爪が食い込んでいた。 「浄化師の皆さんはご存知でしょうが、ベリアルに喰われた者は、魂を囚えられてしまうのだとか」  村長は深く頭を下げた。 「――どうか、カイの魂を解放してやってください」