~ プロローグ ~ |
周囲を堅牢な城壁で囲み外部からのあらゆる危険を排除している教皇国家アークソサエティ。しかし、その外角にあたる一部の地区は犯罪者やならず者、かすかなスキをつき不法に侵入してきた者たちの吹き溜まりとなり、治安は悪化の一途を辿っている。 |
~ 解説 ~ |
・貧民窟の古井戸について |
~ ゲームマスターより ~ |
「終焉の夜明け団」の設定と禁忌魔術の世界観を使ってみたく、戦闘もののエピソードを書いてみました。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■目的 狂信者捕縛 キメラ討伐 魔導書回収 ■捜索 キメラが蝙蝠型ならってことで昼に行くよ! 偵察を重視 横穴ではランタンの光量抑え足音も潜め 迷子防止のためキリーにマッピングして貰うね 足跡や音に注意して終焉の夜明け団の根城を探すよ ■戦闘 根城を発見したら 「薔薇十字教団です!抵抗しないで!」 警告と同時にDE1で奇襲 基本ペアで敵1体ずつに当たるよ 人数で負けてるなら狭い通路へ引き込みたいな 魔術真名を唱え キリーが前衛、わたしは後衛で援護 狂信者を追い詰めたら降伏勧告し縄で捕縛 キメラは全員で当たりたいけど襲ってくるならわたし達で優先して対処するね スキルも出し惜しみしない! 魔導書も忘れず回収 処分されたりしないよう注意だね |
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【目標】 キメラ討伐 狂信者の捕縛、魔導書の捜索と確保 ■捜索 ・井戸周りを注意深く調べ、まずは縄梯子を見つける ・下へ降った後、ランタンを駆使して横穴を調べよう まさか私達が表で人助け出来る日が来ようとは、な。 縄梯子…ふむ、井戸にこんなものがあるとは… この件はここで間違いなさそうだ。 ■戦闘 ・自身は狂信者捕縛を優先、捕縛後にキメラ討伐へ ・スペル詠唱後、MG1で魔力攻撃の抵抗力を高める ・敵に近づき過ぎない距離で、狂信者へは死なない程度に攻撃 ・キメラへは全力を持って攻撃を繰り返す 終焉の夜明け団…お前からはまぁ、後でゆっくりいろいろ聞こうか。 その為にも今は眠ってくれると助かる。 ・戦闘終了後、周囲警戒 …終わったか |
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・目的 キメラ討伐 狂信者捕獲、魔導書捜索と確保 ・昼間に井戸を注意深く調べ、縄梯子を見つけ下へ降る ・井戸を調べる際はランタンで明かりを確保 住民の皆さんもこんな近くに妙な影が潜んでいたら …不安で仕方ないですよね。 皆さんの為にも早めに倒しましょう! ・見つけ次第戦闘開始。共にスペルを唱えBD1発動 ・狂信者は逃亡の可能性を考え、優先的に対応し捕縛を目指す ・近づき過ぎないように間合いを見ながら攻撃 ・狂信者を縄で確保後(最悪討伐後)、キメラ対応へ移る 見つけましたよ! 狂信者は可能なら捕縛との事…私達はまず彼を優先します! 私は人殺し等しません、この信念にかけて! ・戦闘終了後、周囲を注意深く確認 何とか…なりました。 |
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目標は、キメラ駆除と狂信者討伐、可能なら捕縛し連行。 存在すれば魔導書を回収し教団に届ける。 仲間と予め行動方針をすり合わせ、足を引っ張らないようにする。 仲間と昼に古井戸へ。 梯子が破壊された時に備え、予め半日連絡無い時は確認にくるよう要請。 探索時は可能な限り、射撃武器持ちを囲む隊列を提案。 上方含め分担警戒し、コンパスで方位確認しつつ静かに進む。 交戦時は対狂信者を主に担当。 まず周囲に隠れる狂信者有無確認し、発見し次第仲間に報告。 基本的に、薙鎖が符で牽制し、その間にモニカが懐に飛び込み殴る。 狂信者は動きが止まるまで警戒を解かず殴り、息あれば捕縛。 必要なら敵の服の袖を裂き、猿轡に。 |
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~ リザルトノベル ~ |
先日、この一角で奇妙な殺人事件が起こり、目撃証言からその事件に危険な狂信者集団「終焉の夜明け団」と、忌むべき禁忌魔術によって生み出された合成生物キメラが関係している可能性が極めて高いことが判った。 この怪異極まる事件の捜査・解決に、四組のエクソシストが派遣された。 「ここだね、事件の前後に奇妙な声とか物音が聞こえたっていう井戸は」 先頭を歩いていた人間の悪魔祓い、セアラ・オルコットは振り返って、メンバーに声をかけた。 「確かに証言通りっす。下に降りるための縄梯子がありますぜ」 セアラのパートナー、半竜のキリアン・ザジは井戸に駆け寄り、身を乗り出して下を覗き込みながら言った。キリアンが喋るたび咥えタバコの煙が微妙にたなびく。 「あぁ。古井戸にこんなものがあるとはな。ここで間違いなさそうだ」 ルシ・フェルツというどこか小国の王子様然としたエレメンツの青年が、能面のように動きのない表情で呟いた。彼のパートナー、フォンサー・ダルシュというアンデッドが彼の傍で必死に頷いている。フォンサーはルシのことをパートナーというより忠誠を尽くし付き従う者と考えているようだ。 うっすらと見える井戸の底には水の気配はなく、ただ墨汁の染みのような暗がりが口をあけている状態だった。 「こんな近くに妙な影が潜んでいたら、付近の住民の皆さんも不安で仕方ないですよね。住民の皆さんのためにも早めに解決しましょう!」 赤髪を後ろで編んだ真面目そうなEva・Schneidというエレメンツの少女が口を開く。 「エファ、初陣ですからそんなに気負わずに行きましょう」 エファの言葉に緊張を読み取った彼女のパートナー、クルハ・リヴァルツェというヴァンピールが、いかにも物腰が柔らかさそうな紳士然とした態度でたしなめる。 「わ、私がそんなに硬くなっているように見えます? クルハ、あなたも怖いからそんなことを……」 「ただ、世界各地で様々なテロ行為を働いている『終焉の夜明け団』のアジトらしきところに踏み込むんですからね。慎重に、かつ用意は周到に、ですよ」 エファのクルハへの反論を遮るかのようにアンデットの薙鎖・ラスカリスが口を挟む。 彼のパートナーのモニカ・モニモニカが応えて、 「心配ないわよ。ナギサは怖くなったらワタシに任せておけばいいんだからね。あ、それと縄梯子を壊されたりなんかした時のために、半日連絡が途絶えたら捜索隊出すように手配しておいたから」 「よし、じゃ、降りよう!」 セアラが号令を出すと、ちょい待った、とキリアンがタバコを地面に捨て足で火をもみ消した。 「タバコ、消しときまさぁ。まだ吸えるんで名残は惜しいが匂いで感づかれたらかなわねーんで」 一行は、あまりランタンの光量を強くしたくないということで、1ペアに一人ずつランタンに灯を入れ、縄梯子を伝って光を吸収するかのような薄暗い闇の世界へと降りていった。 「やっぱり間違いないな。怪しげな奴らも、怪物もここから来てる」 ルシは井戸の底に降りるなり、底の砂地に人の足跡と獣の足跡が多数残っているのを見つけた。 「よし、じゃあ進もう。物音は極力少なくね。キリアン、マッピングお願いね」 セアラがそう言うと、キリアンは悪戯っ子のような微笑を浮かべて頷く。 一行はひとまず地面の足跡が一番はっきりしている方向を探索することに決めた。横穴は、井戸水の水流が作ったものにしては異様に大きく、やはり人の手によって何らかの目的のために掘られたものに違いなかった。 「なんか気味悪い音、しませんか?」 クルハが掌を耳に持ってくるジェスチャーをしながら、メンバーに耳を澄ますように促す。低く地鳴りのような、地の底から響くような音がする。その音はいくつか分岐している穴のうちの一つから響いていた。 「怪しいな。そちら行ってみよう」 ルシの言葉にフォンサーが従順に頷く」 「なぁ、フォン。裏稼業に身をおく私たちが、こうやって表に出て人助けなんてのができるなんてな」 「オレは、ルシ様の行かれるところどこでもついて行きますから!」 フォンサーは自分の言葉にまた深く頷くようにしてルシを見た。 「敵は近いかもね。ねぇ、みんな、ここで一旦、隊列を整えましょう」 モニカが提案し、射撃武器や魔術系武器を得意とするメンバーを近接武器を持ったメンバーが護衛するような形をとる。 「こんなところに、こんなドアが……」 薙鎖が驚いたように呟く。 「ナギサ、大丈夫?」 モニカが驚愕しているような薙鎖を気遣うように言う。 土肌がむき出しの薄暗い横穴には似つかわしくないぐらい重厚に作られた木製のドアが、唸り声を頼りに奥に進んだ一行の行く手を阻んでいた。 「ここ、だよ、ね?」 セアラが息を飲むように、やっと声を出す。 「の……ようっすね……」 キリアンも神妙な顔つきになって応える。 「よし、開けよう!」 ルシが木製のドアに手をかける。フォンサーが手を添え、二人で注意深く音すら立てないようゆっくり開いていく。極めて最小限の開きに留め、一行は一人ずつドアの内側に滑り込んでゆく。 ドアの中はかなり広くなっている区間だった。もとは地下にできた広い空間だったようだが、所々に木材での補強が入っている。松明が設置されておりかなり明るい。一行はランタンの灯を消した。 間違いなく、何者かが意図して潜伏している空間だった。 幸運なことにドアのすぐそばに、ここに潜んでいる者たちの使う物資が入っていたのだろう木箱が所々に積んであった。一行はペアごとに木箱の陰に身を隠した。お互いの 声は届き合う距離に分散しており、落ち着いて索敵と情報共有をするには御誂え向きだ。 一行は各々の見える位置から周囲の状況を探る。かなり広い空間のドアから右側の方向に三人の人影が見えた。ローブを着ているように見える。住民の見た『怪しい者』の姿に符合する。『終焉の夜明け団』だ。 そして奴らがいる方の反対側、低い唸りの発生源。漆黒の塊が見える。 次の瞬間、その黒い塊から一対の蝙蝠の羽が一瞬羽ばたき、すぐに閉じた。おそらく、あれがキメラだ。 「『終焉の夜明け団』の奴らと思しき人影が三つ。で、やはりキメラがいる。キメラと奴らの間には多少距離があるんすね。先に狂信者の奴らを処理して、落ちついてキメラの相手するんが良くないすか? みなさん」 ドアの正面側の物陰に陣取ったキリアンが分析する。 「じゃ、彼らに警告を発して……」 と、物陰から立とうとするセアラの肩に手をかけて制する。 「と、お嬢。奴ら、まだこちらに気づいてないんでスペル唱えて準備してから、先制しましょうや」 「じゃ、フォン」 ルシはフォンサーの手を取り、ゆっくり目を閉じる。口の中で真名を詠じるとルシはさらにファンサーの指に固く自身の指を絡める。 「ル、ルシ様……」 フォンサーは一瞬戸惑うが、その手を伝って大いなるパワーの流入を感じる。 「ルシ様! オレ、ルシ様のこと絶対に守ります!」 「フォン。私のことだけではなく皆のことも頼む」 「わ、わかりました!」 「いい子だ。行くよ」 (ル、ルシ様カッコいい……) ルシは全く表情を変えず、狂信者からの魔術攻撃に備える。『オラクル・タロット』の効力がある以上、それほど気に留める攻撃ではないからだ。そのまま物陰から躍り出てマナ・ディスクから攻撃を繰り出す。命中はしなかったが敵の一人の足元をかすめ、その敵は手をついて倒れる。ローブの者たちは奇襲に慌て対応の一手が遅れる。フォンサーはその隙に自身の鎌に『シールドタックル』を纏わせ、ルシが態勢を崩した敵に一閃を加える。敵はよろよろと少し後退したが、致命傷ではない。 怯んだ敵に追い討ちのルシのマナ・ディスクからの攻撃が飛ぶ。右足に命中するが、敵は懸命に踏みとどまる。 逃げながら漸く攻撃態勢を整えた敵の一人がルシに光球を放つ。魔術防御の力が作用し、右腕の袖を焼くに止まる。敵はもはやいう事を聞かないほど痛手を負った足を引きずり、撤退する。 「私たちも……」 セアラがスペルを唱えるためキリアンに手を差し出す。キリアンが手を握ると少し震えているようだ。 「お嬢。怖いんすか?」 「ち、ちがーう! キリアンたらこんな時に!」 「しっ。詠唱前に気付かれちまいますよ。大丈夫。お嬢、援護頼みますよ」 二人は目を閉じ、セアラは魔術真名を唱える。力が湧くとともに少し落ち着きを取り戻したセアラは『ワーニングショット』を放った。狂信者の左腕を射抜くが、敵は短く呻いて踏みとどまる。キリアンが普段の猫背からは想像できないスピードで、その動きの鈍った狂信者の一人に斬りかかる。敵の右肩から鮮血が迸る。呻いた敵は至近距離からの魔術攻撃を試みようと口内で静かに呪文を唱え、その掌に光球ができかかる。 キリアンの危機を察知したセアラが二発目のボウガンをセットするが、先に敵の手から放たれた光球がキリアンの脇腹をかすめる。大きく態勢を崩したキリアンに向けて、敵は馬乗りになって押し倒し、今度はゼロ距離で光球を放とうと再度、詠唱を始める。 「キリアン! だめ!」 相棒を傷つけられ動転したセアラは無我夢中でボウガンの狙いを定めようと構える。 敵が光球を放とうと振り上げた掌をセアラの矢が光の尾を引き、射抜く。敵は大きな苦痛の叫びとともに崩折れる。 「お嬢。ありがとさんです! こいつ、捕縛するっしょ!」 「キリアン、怪我は?」 「全然平気っすよ」 敵の光球が掠め、少し出血した脇腹を庇いながら、キリアンは敵の捕縛に取り掛かった。 仲間を一人囚われた敵は一旦物陰に隠れた。 「あそこにもう一人! モニカ、モニカ、みんな、危険です。もう一人いますっ……!」 戦闘前に確認できなかった敵を見つけ、薙鎖が動転する。すかさず傍のモニカが混乱する相方の肩に手をかけ、優しく呟く。 「ナギサ、落ち着いて。護符うって。ワタシが切り込む!」 唾を飲みながら小さく頷いた。 敵を正面に見るところまで躍り出て、まじない護符で攻撃を繰り出す。そのうちの一撃が軽く敵の左足をかすめ敵の小さな呻きが聞こえる。薙鎖に反撃することだけに気を取られた敵が足の痛みを堪えて一歩前進すると、そこに持ち前のダンサブルな素早い動きでモニカが立ちふさがり、腹にバトルグローブの一撃を加える。敵の動きが止まる。モニカにとって敵を捕縛するにはこれだけの隙でも充分だ。手と足を折り、敵の衣服を破り猿轡と手足の捕縛をする。 一方、先ほど身を隠した敵の行方を目で追っていたエファ&クルハ組は、うまく敵の背後に回り込む。 「クルハ、スペルを唱えましょう」 エファが差し出した手を優しく両手で包み、笑みを浮かべて頷く。 「エファ、うん。きっとうまくいきますよ。いざとなったら私が狂信者なんてブチ殺してやりますから」 「何言ってるんですか! 捕縛対象ですよ!」 (心配して、わざと言ってくれてるんでしょうけど、なんで私……) 「さぁ、詠唱です」 緊張でエファの指がいつもより強くクルハの指に組み付く。力がみなぎり、エファの落ち着きも少し戻ってくる。エファは敵の攻撃に備え、『パーフェクトステップ』の効力を受けていることを確認し、敵の扇動をするべく物陰から身を敵前に踊り出す。エファの姿に気を取られた敵を見て、クルハは『クロス・ジャッジ』を口の中で小さく唱えながら接敵し、敵に致命傷を与えなうように足をめがけて攻撃を繰り出す。十字の閃光が走り、敵の右足から血がほとばしる。捕縛に向かったエファに直接攻撃を試みた敵は、華麗に身を翻され、負傷した右足から地面に崩折れ、二人のエクソシストに包囲され戦意を消失した。 一方、先ほどルシ&フォンサーからの攻撃を受けた敵が足を引きずってキメラの傍に辿り着く。今やキメラは黒い塊ではなく蝙蝠の翼を大きく広げ、ライオンに似た鬣のある身体を震わせ、その口を両目から炎のような赤が垣間見える。ただ、その場で哮り狂うだけで移動をしない。 キメラが動かない謎は、その首に光っている重厚な鉄の首輪と鎖にあった。手負いの敵は、それを解除しようとしているようだった。 「何をする! そいつの呪縛を解けば、いまの我等では制御できんぞ! こいつらはもちろん我々も全員死ぬぞ!」 エファ&クルハ組に捕縛された敵が叫ぶ。 「こいつらは『薔薇十字教団』のエクソシストだ。同じアレイスター・エリファス様の創始した組織に居ながら信仰を持たず我々の邪魔をするのであれば、我はキメラに喰われても、こやつらを殺す!」 敵が秘密の手順で回転式の錠を回すと、キメラを呪縛していた首輪は砕け、キメラは一飛びで広間の中央まで躍り出た。 口からマグマ状のヨダレを垂らし、背には大きな蝙蝠の翼を有する漆黒のライオン。目撃情報では野犬と称されていたが、その実態は恐るべきものだった。 「さぁ皆さん、死にたくなければこの化け物を倒さなければ!」 ルシが声を上げる。音量は大きいが表情は普段の仏頂面から変わらない。ルシにもはや絶対服従以上の感情を持つ相方のフォンサーにとってはそれが毅然とした冷静さに感じられ、その信頼が自身の力になるのを感じた。 「ルシ様の命令だからな、あんたらみんな守ってやる!」 キメラの前面に躍り出たフォンサーの鎌が空気とともにキメラの右足部分を切り裂く。もう一度『シールドタックル』を纏わせて繰り出した攻撃だったが、少し浅い。キメラは攻撃者の方に向き直り、短い咆哮とともに口から火球を放つ。危機一髪、フォンサーは身をかわすが右腕は火気の煽りを受け、鎌を手放してしまう。 「フォン!」 相方をフォローするマナ・ディスクからの一閃はキメラの右目にヒットする。 怯むキメラは蝙蝠の翼をバタつかせて上空からの反撃を試みているようだ。 「させねぇっすよ! お嬢! ビビってねぇっすよね?」 「全然ヘーキ!」 セアラの魔術の力を纏ったボウガンの矢の連射も、数本は当たったはずなのに、キメラの動きを止められない。そこでキリアンが前進する。脇腹の怪我の影響か、少し足が重いキリアンを狙って、またキメラの口から光球が生成されゆくのを見たセアラがボウガンを放つ。今度は光球を放つために薄く開けた口にヒットする。急所ではないようだったが光球は消え、キメラは頭を下げる。好機と見たキリアンは低くなったキメラの頭頂部から一直線に太刀を繰る。 「今度はこっち!」 キメラの右側にポジションを取った薙鎖が動きを鈍らせたキメラの翼に護符を放つ。右側の翼が護符の発する光に灼かれ、開いたままになった。モニカは自分の素早さを信じ、キメラに再接近するとキリアンがつけた脳天の傷に渾身のナックルの殴打を浴びせる。 激しく脳天から血が噴き出すが、まだキメラの足元は力強い。 セアラはレンジを取り、集中が続く限り『ワーニングショット』を放つ。両前足に複数本、光の尾を引く矢が当たり、キメラの動きを少し止めるが、キメラの吐く火球がセアラのところに飛ぶ。直撃は免れたようだが、セアラは足場から転げ落ちた。 「お嬢!」 キリアンが普段の軽率な雰囲気からは想像もできない声で叫ぶ。 「だ、大丈夫だよ!」 うずくまりながらもセアラは応答した。 前足が利かなくなったキメラを見て、ルシがキメラの後方に回り、今度は至近距離からマナ・ディスクから右後ろ足のアキレス腱近くに攻撃を仕掛ける。 「ル、ルシ様っ!」 フォンサーが、もう一度、自身の鎌に『シールドタックル』を纏わせ、必死の形相でキメラの眼前に躍り出る。 キメラは恐ろしい燃える目でフォンサーを捉え、火球を吐こうと一層頭を下げた一瞬に、鎌の一閃を流血激しい脳天の傷に見舞う。 激しい咆哮。その振動が空間の土壁の一部を崩す。 もはや狙いの定まらなくなったキメラの口からの火球をかいくぐり、エファとクルハが動きをシンクロさせた一太刀を、キメラの首の両サイドから袈裟斬りに浴びせる。 キメラは最期に一際大きく咆哮し、天井に向けて火を吐くと、その大きな身体は崩折れ、途端に真っ黒な灰になり四散した。 「終わったな」 ルシが短く表情を変えずに言い、一行は互いに負傷の有無などを確認し合った。 魔術による回復のスキルを持つものがいなかったので、一行は手持ちの薬を分け合って対処した。 キメラの生成は禁術の中でも非常に難しく、攻撃力は高いが不安定で短命な個体が生まれることで知られている。厳しい戦いではあったが、今回はその不安定さが助けになった。だが、こういう事態が繰り返されれば、いずれ術者のレベルも飛躍的に向上し、無差別の多数の者を殺傷するに足る個体を生み出す事ができるだろう。 捕らえた狂信者を手負いであることをまったく意に介さず、クルハが捕縛した敵を吊るし上げて尋問をしていた。 敵の供述に従って、広間の一角から『終焉の夜明け団』が所持するとされる魔導書が発見された。魔導書は写本や偽書も多いが、その真贋の判断はエクソシストの役目ではない。 ただ、驚愕すべきは、未然に大事は防がれたといえ、ここアークソサエティ内で魔術を用いたテロをも辞さない者共が密かに活動し、禁術まで用いてキメラの生成まで目論んでいたことである。 敵はベリアルのみならず。 一行は来るべき、この先の長き闘いの日々に心巡らせながら、教団本部への帰還の途についた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[14] 薙鎖・ラスカリス 2018/03/27-23:56
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[13] ルシ・フェルツ 2018/03/27-03:35
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[12] セアラ・オルコット 2018/03/27-01:40
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[11] キリアン・ザジ 2018/03/27-01:37
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[10] Eva・Schneid 2018/03/26-20:04
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[9] セアラ・オルコット 2018/03/26-01:44
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[8] セアラ・オルコット 2018/03/26-01:37
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[7] Eva・Schneid 2018/03/26-00:08
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[6] ルシ・フェルツ 2018/03/25-22:22
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[5] セアラ・オルコット 2018/03/25-14:41 | ||
[4] ルシ・フェルツ 2018/03/25-04:43
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[3] セアラ・オルコット 2018/03/25-02:03 | ||
[2] セアラ・オルコット 2018/03/23-01:49 |