~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティのブリテンにて。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
さて、月日が流れるのは早いものですね。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【役割】 モナ(裏方) ルイス(アナお嬢様の質問に答える) 【目的】 アナお嬢様を楽しませる方法を考える。 【作戦】 カップケーキを花やマジパンの妖精で飾ってカラフルな花畑と花畑に佇む妖精を表現して見た目で楽しんで貰えるようなお菓子を目指す。 ※ここからルイス視点) 【行動】 「パートナーには…内緒にしてくれる?」 アナの質問に答えながらレストレンジが来ないかと何度も周りを気にしながら質問に答える。 『パートナーのことをどう思っているのか』 「レストレンジの事を?レストレンジの事は…あい…あいつは僕が初めて失いたくないと思った人かな。」 (彼女がなにも無かった僕に生きる意味をくれたから。) ※ウイッシュに続く |
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アナの相手 喰人 最近は何かと子供と縁がある しかし俺が執事の真似事とは こういうのは女子同士の方が良さそうなものだがヨナは早々に裏に引っ込んでしまったし かといってお嬢様の期待に満ちた眼差しを裏切れない …やるか 質問の答え 言葉気を付けつつ素が出がち 1 そうだな 俺が言うのもなんだが警戒心の強い猫みたいな奴だ…です 本人は澄ましているつもりでも案外隙があるのでたまにいじりたくなる なります …なあ敬語で続けないと駄目か? 2 一番 一番…(しばし考え しっかり向き合って話すようになったこと だろうか 彼女は融通がきかない所があったし 俺もパートナーだから理解しあえて当然というのが無意識にあったのか 当初はなかなか上手くいかなかった |
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~ リザルトノベル ~ |
外を歩いていたら偶然見かけて声をかけた少女――アナ。 服装から、彼女がどこかの『お嬢様』であることを察した『モナ・レストレンジ』と『ルイス・ギルバート』の二人。 退屈だった、と言うアナを相手に一体何をして遊べば良いのか、それを悩んでいると。 アナは『お茶会をしたい』――と。 それは怪我をする心配もなく、目の届く範囲にいて。 更には退屈することなく、楽しむことができる素晴らしい案だ。 その案を素直に呑んだモナとルイスは近くにある喫茶店で、アナとお茶会を開くことにした。 そのために、二人は近くの喫茶店の主と話し合い、交渉の末に『貸し切り』を手に入れた。 そこでモナとルイスはアナとお茶会をする……だが。 無論、ただのお茶会ではつまらない。 せっかく浄化師と話ができるのだから、浄化師のことが知りたい、と。 アナのその願いに応えるため、二人が考えた末に思いついたのが、 「じゃあルイ――アナ殿の話し相手は任せたよ。我は裏方に回るから」 「まあ、それが当然だろうね。君だと色々と不安だし」 モナ――中身が少し残念な少女は裏方『メイド』になることを選んで。 ルイス――消去法で、アナの話し相手に決定した。 「それにしても、ここがお茶会の会場なのね。少し狭い気がするけど、まあ三人しかいないのだからきっと大丈夫ね」 一般的な喫茶店の中を『少し狭い』と言ったお嬢様。 彼女の中ではお茶会というのは、一体どのような場所で開かれるのか、気になるところだ。 店の中を見回すアナは未知の世界を楽しむかのように。 だが少ししたら飽きたのか、先に中央の席に座った。 そのアナと同じ席に着くため、ルイスはアナと一対一で向き合うように椅子に座る。 「さて……それじゃあお茶とお菓子が運ばれてくるまでわたし達はお話をしましょう」 「そうだね、でも何の話をするの?」 「ふふふ、せっかく浄化師とお話するんですもの、あなた達のことが知りたいわ」 「僕達のこと? 訊いても面白くないと思うけど」 「いいえ、きっと面白いわ。パートナーのことについて、なんてね♪」 ――なるほど、そういうことか。 いつも一緒にいるパートナーについての質問を、アナはするつもりらしい。 その真意に気付いたルイスは、答えている間に裏方に回ったモナが来ないかと何度も周りを気にしながら、 「……パートナーには、内緒にしてくれる……?」 「ええ、もちろんよ」 不安な気持ちになりながらも、アナの質問に答える。 「じゃあ最初はね――あなたはパートナーのことをどう思っているのかしら?」 「レストレンジのこと? レストレンジのことは……」 「ことは?」 「……あい、あいつは、僕が初めて失いたくないと思った人、かな」 「へえ、へえ! とっても素敵ね! まるで童話の中の台詞みたいだわ!」 確かに、その通りなのかもしれない。 だが、そう思っているのは事実だ、それに偽りはない。 モナ――彼女はルイスに生きる意味を与えた。 何もなかったルイスに、彼女は生きる意味を与えてくれたのだ。 与えてくれたお蔭で、ルイスはここにいる。 しかしそれは言い方を変えれば、彼女を失えば、ルイスはここにいる意味がなくなるということだ。 故に、失いたくないと。 偽りなく答えたそれに、アナは興味津々に目を輝かせながら、次の質問に移る。 「じゃあじゃあ――大切なパートナーにしてもらったことで、今までで一番嬉しかったことはなぁに?」 「……今は僕のパートナーとして傍にいてくれるならそれでいいよ」 「それだけ? 他にないの?」 「ないよ。でもあえて言うなら……『絶対に見捨てない』――そう言ってくれたことかな」 行動ではなく言葉。 それが一番嬉しかったことだと言ったルイスに、アナは深く訊かないようにする。 それはルイスがどこか不安そうな顔をしているから。 ――レストレンジは何も知らないで、ずっと今のままでいてほしい。 パートナーとしてでも良いから、僕がいないとダメだと思っていてくれるなら。 僕は……それで良いんだ、と。 無意識に不安そうな顔をしているルイスはそう思い。 その顔を見たアナは――だがあえて、 「それじゃあね――もう一つ訊かせてくれないかしら?」 「……なに?」 「仮にね、もしもの話よ。仮にもし、別の人と組むことになったら、アナタはどう思う?」 ルイスが抱いた不安の核を突くような質問をぶつけた。 浄化師は立場上、いつ死ぬかわからないもの。 いつどこで命を落とすかわからない。 最悪二人とも死ぬか、運悪く片方が死ぬか――それは予想できない。 しかし片方が生き残った場合、『浄化師』として活躍するために別の人と組むことは珍しくない。むしろそれは当然だ。 共に過ごしたパートナーのことを忘れ、新しいパートナーと共に生きる。 だがそれは……とても残酷なことだ。 惨くて、残酷な現実だ。 ――だからこそ、 「可笑しなこと訊かないでよ。他の人なんて考えられない。僕のパートナーはモナしかいないから」 そんなことはあり得ない、と言い切った。 絶対にあり得ない、そんな未来はない――自分はそう思っている。 「――でも、モナは……」 だが、モナはどう思っている? 自分と同じように思っているのか? もしかしたら、そう思っているのは自分だけで、モナの方は違うことを思っているのかもしれない。 とすれば、それは―― ――モナは別に、僕がパートナーじゃなくても良いんじゃ……? そう思った瞬間、ルイスはとてつもない不安に襲われた。 ただの質問、何も知らない無垢な子どもが思ったことを言っただけのこと……なのに。 ――こんな質問に不安になるなんて、本当にモナじゃないとダメなのは僕の方……じゃないか。 相手にいないとダメだと思っていてほしい――モナがルイスに依存している、のは逆で。 本当は、ルイスがモナに依存しているのかもしれない、と。 その事実に気付いたルイスは、自分はどうすれば良いのかと悩む――その間に。 「二人ともお待たせしましたー」 店の奥にいたモナの声が聴こえた。 声が聴こえると、アナとルイスはその方向を見る……すると。 「まあまあ、とっても素敵なメイドさんね!」 メイド服に着替えたモナ――その格好はアナが言うように、とても素敵な姿だ。 見慣れないパートナーの姿に、ルイスは一瞬だけ無心になる、が。 その一瞬が、先ほどまで考えていた悩みを無意識に消してしまった。 「――ん? どうしたの、ルイ?」 「あ、いや……で、何を持って来たの、レストレンジ?」 「ふふん、よくぞ聞いてくれました!」 両手にお菓子のようなモノを載せて持って来たモナは、それを二人の前に一皿ずつ置く。 「わぁ……すごいわ……!」 「我の自信作です。まあ、不慣れでしたが……」 モナが店の奥で作っていたモノ――それはカップケーキだ。 だが、ただのカップケーキではない。 そのカップケーキは花やマジパンの妖精で飾って、カラフルな花畑と花畑に佇む妖精を表現した、もはや芸術作品のようなもの。 見た目で楽しんで貰えるように目指して、精一杯の工夫を重ねた、モナ・レストレンジの自信作なのだ。 「それにしても……食べるのがもったいないわ。このままずぅっと見ていたいぐらい」 「あはは……それは嬉しいですけど、できれば食べていただけると」 未知のものを見るかのように、目を輝かせながらモナ特製のカップケーキを眺めているアナと。 「ルイ、食べないの?」 「――どこから食べて良いのかわからない」 食べようにも、素晴らしい見た目故に、どこから食べれば良いのかわからないルイスに。 せっかく作ったのに、自信作なのに。 このまま食べられることがないのでは、不安になるモナ。 だがふと、 「そういえば二人とも、一体何の話をしてたの?」 モナは自分がいない間に、二人はどんな話をしていたのか、それを訊いた。 しかしながら、その質問は。 「内緒だよ、レストレンジ」 「ええ、内緒よ。わたし達二人だけの」 二人が最初に交わした口約束――『内緒に』という言葉で返された。 無論、モナにとっては自分だけ仲間外れにされるのはあまり良くない気分だ。 けれども、それは仕方のないこと。 ルイスは自分の気持ちをモナに伝えることは、今の段階では早すぎる。 何事も、急ぐものではない。ゆっくりと時間をかけるべきだ。 ……まあ、そのような話は一旦置いておいて。 「ねえ、これ……とっても食べにくいのだけど」 「確かに。見た目にこだわり過ぎて、どこから食べたら良いのかわかんない」 「そのまま一息に齧りついたらいいんじゃないの?」 「ダメよ! そんなことしたら、妖精さんが可哀そうじゃない!」 「えぇ……」 見た目で楽しんで貰える――それは合格した、しかし。 それを合格したことによって、更なる問題が発生した。 そう、壊さずに食べる、という問題が! 「むむ……これをこうして、ここを……いや、でも……」 「いや、あの、そこまで夢中にならなくても」 脳内でどこから食べるのか、その計算に必死になっているアナ。 別の意味で、楽しんでくれていることには違いないのだが。 「お願いだから、食べてくれませんか……?」 できれば、早く食べてほしいのだと。 嬉しいのやら、悲しいのやら、複雑な気分に襲われるモナは、苦笑いするしかなかった。 ■■■ 「それじゃあ、ベルトルドさん。アナさんのお相手、お願いしますね」 「ああ、任せろ」 そう言って喫茶店の奥に行った『ヨナ・ミューエ』と、少女に目を輝かせながら見られている『ベルトルド・レーヴェ』。 近くの喫茶店を貸切った二人は、この店の中で『お茶会』をしようとしているのだ。 それは、偶然外で声をかけたどこかのお嬢様であるアナの要求で。 退屈していたところを、二人が浄化師であったため。 浄化師のことを知りたいアナは――だったらお茶会をしましょう、と。 中々に無理矢理なその願いは、だが二人の手にかかれば簡単に叶ってしまった。 それにしても、とベルトルドは思う。 ――最近は何かと子どもと縁があるな。しかし今度は、俺が執事の真似事とは。 こういうのは女子同士の方が良さそうなものだが、ヨナは早々に裏に引っ込んでしまったし。 かといって、お嬢様の期待に満ちた眼差しを裏切れないし……うん。 ……やるか! 心中そう呟いて気合を入れたベルトルドは。 ヨナとは別に、店の奥に行って即座に執事服に着替え、今か今かと待ちわびながら既に席に座っているアナの元に。 「あら、とっても素敵な恰好ね。……でもなんで着替えたの?」 「その方が良いからだと思って……からです」 「ふぅん、別に着替えなくても良かったのに。まあ良いわ、お話しましょう」 何故か不思議そうな顔をしているアナ――ベルトルドは彼女と向き合うように座る。 そしてアナは、知りたかった質問を彼にぶつける。 「じゃあ早速だけど――アナタはパートナーのことをどう思っているのかしら?」 「そうだな、俺が言うのもなんだが、警戒心の強い猫みたいな奴だ……です」 獣人がエルフに対して『猫』と……そのおかしなことに、アナは思わずクスクスと。 「本人は澄ましているつもりでも案外隙があるのでたまにいじりたくなる……なります」 「ふふ、アナタって見た目の割に意外と意地悪なのね」 「そんなつもりはないんだが……ないですけど。――なあ、敬語で続けないとダメか?」 慣れない言葉に気をつけているが素が出がちだった彼は。 やっぱり自分の素で話させてくれと――だが。 「え? わたし、アナタに敬語で話せって頼んだ覚えはないわよ?」 「……え?」 「それに執事になってと頼んでもないわ。アナタが勝手にしたことなのに、わたしのせいなの? ひどいわ、ひどいわ」 そう、何故アナが不思議そうな顔をしていたのか――その理由がこれだ。 ただ話を聞きたかったのに、勝手に着替えて敬語で話してきて。 何故そのようなことをしているのか、それがわからなかったのだ。 ベルトルドはただ勘違い、思い込みをしていただけだ。 が、それを自分のせいにされた、と知ったアナは自分の顔を両手で隠した。 傷ついた――そう思わされるような仕草に、ベルトルドは困惑を隠しきれない。 一体どうすれば良いのか、そう慌てているベルトルドに、だが。 「……えへへ、冗談よ。怒ってなんかいないわ」 アナはどうやら悲しむ演技をしていたようで、顔を見せると意地悪そうに舌を突き出した。 「ああ、良かった……ヨナに知られたらどうなっていたことか……」 「それも面白そうね、残念」 はて、確か目の前にいたのはお嬢様で、決して小悪魔ではなかったはずだが。 一体いつの間に入れ替わったのだろうか。 「じゃあ次ね――パートナーにしてもらったことで、今までで一番嬉しかったことってなぁに?」 「一番? 一番、か……」 その質問にはすぐに答えられないので、しばしの間考え……そして。 「――しっかり向き合って話すようになったこと、だろうか」 「あら、どういうこと?」 「彼女は融通がきかないところがあったし、俺もパートナーだから理解し合えて当然というのが無意識にあったのか、当初はなかなか上手くいかなかったんだ」 「でもお互いが頑張ったから、今みたいになった――それが一番嬉しいこと?」 「そうだな。他にも色々あるが、一番はこれだな」 子どもには少々難しい話ではないか、と思うが、アナは十分内容を理解しているらしく。 「素敵ね、まるで恋の始まりみたいだわ」 世界中の少女にとっては最大級の夢と言っても過言ではない『恋物語』を想像して楽しんでいた。 すれ違っていた二人が、いつしか理解し合える仲になった――まさに恋の物語だ。 アナも年頃の少女だからか、いつか自分もそんなことをしてみたい、と。 「少なくとも俺達はそんな関係じゃないんだがな」 「わかってるわ。……まだ、ね」 「?」 「じゃあ次の質問ね――仮にもし、別の人と組むことになったら、アナタはどう思うの?」 何やら意味深なことを言ったアナ――三つ目の質問をぶつけ。 「上からの命令なら従うまでだ。彼女もそうするだろう」 その質問に、冷静に、冷徹な返答をしたベルトルドにアナは目を丸くした。 「……どうして?」 「別にパートナーでなくとも、縁が切れる訳ではないからな」 パートナー――所詮それは肩書のようなもの。 それが無くなったとしても、けれど二人の縁が無くなるわけではない。 生きてさえいれば、どこにいようとも二人の縁は繋がっているのだ。 故に、問題ないのだと。 「――だがな」 しかしその言葉には少々訂正を、とアナに耳打ちするかのように顔を近づけた彼は、 「今の関係を、はいそうですか、と大人しく手放すのは少し惜しいな」 「……まあっ!」 「それがたとえ不器用で愚直なお転婆だったとしても、な」 簡単に離れる気はない――と、そう言いウィンクをした。 綺麗な瞳に素敵な言葉、最後に大人の魅力に満ちたウィンク。 見事なその流れにアナは――嗚呼、と。 「まあまあ! まあまあまあっ!」 「彼女には内緒だぞ?」 「ええ、ええ! 内緒にするわ秘密にするわ! こんな素敵なもの、誰かに話したらもったいないものっ!」 興奮して、顔を真っ赤にさせていた。 相手が少女であることを利用したのか、ベルトルドの一連の流れは純粋無垢なアナには効果抜群だ。 理想的で、幻想的な想いを目の前で見た。 その興奮の大きさは彼女が自身の腕を激しく動かす仕草が十分に表していた。 ――と、その時。 「二人とも、一体何の話で盛り上がってるんです?」 「お、やっと来たか」 ようやく準備が出来たのか、ティーワゴンを運びながらヨナが登場した。 メイド服に着替えた彼女はとても絵になる。 外を歩けば大勢の者が振り返りそうなほど美しい姿の執事とメイド――執事が告げた二人の関係にアナは更に興奮する。 「実はな、お前の話をしていたんだ」 「むぅ……私の話ですか? 変なこと言ってませんよね?」 「変なことは言ってないな。変なことは」 ニヤニヤ、と意地悪そうに笑うベルトルドに仲間外れにされた気分のヨナに。 ふと、興奮していたアナは我に返って、 「それは一体なにかしら?」 「これですか? これは『マロウブルー』と呼ばれるハーブティーです」 ヨナは思い出したかのように、二人にそれを出すべく、準備を進める。 「お菓子を出すべきだと思ったんですけど、お菓子作りは……勉強中なので、飲み物を用意しました」 「ほう、綺麗な色だな」 「透き通った空のような青だけでも目を引くところですが、そこに」 二人の前にお茶を出したヨナは、更に一工夫、と。 小さく切ったレモンを出して、それを加えるように促す。 「レモンがお嫌いでなければ加えてみてください。面白いものが見れますよ」 「これをお茶の中に入れるのね」 言われるがままアナはレモンをつまんで、その果汁をハーブティーの中に数滴入れる……すると。 「――わぁ!」 カップに入れられた空のような青色が、レモンを入れた途端にその色を変えた。 青から鮮やかな石竹色に変わっていくその様子を喜んでもらえるかどうか不安だったが、それは心配ないようだ。 「すごいわ、すごいわ! こんな素敵なことが……」 「見るのも良いですけど、冷めないうちに飲んでください」 「うん、中々美味いぞ」 「ベルトルドさん……あなたはもう少し雰囲気を楽しむとか、そういうのをですね」 キッチリ熱湯の温度から何まで測って時間をかけて出したハーブティーを。 ベルトルドは楽しむ素振りさえ見せず、いつの間にか口に入れていた。 そのことに少々ガッカリしたヨナではあるが、 「美味しい……美味しいわ! 浄化師って本当にすごいのね。 素敵なお話をしてくれるし、美味しくて面白いお茶を出してくれるんだもの! 出会えて本当に良かったわっ!」 「素敵なお話? 二人とも、一体どんな話をしていたんですか?」 「ん? それはだな」 ヨナに何を話していたのか訊かれたベルトルドは人差し指を口に当てて微笑む。 それはつまり、内緒だと。 アナも同じように、自身の口に人差し指を当てて「内緒よ」と笑う。 二人が黙秘したことで、先ほどの会話の内容はアナとベルトルドの『秘密』となった。 秘密が出来た――そのことに、アナは嬉しそうに年頃の子どものように、けれども上品に笑った。 「むぅ……教えてくれないんですか?」 「内緒だ」 「内緒なのだわっ!」 ■■■ 「ふぅ……素敵な時間だったわ。もっともっとお話したいけど、もう帰らなくちゃ」 浄化師達と素敵で楽しい会話を楽しんでいたアナ――けれども、時間が終わりを告げる。 元々アナは屋敷の住民達に黙って外に出てきた身だ。 先ほどまでは皆は仕事に追われてアナのことを意識していなかったが、今はどうだろうか。 ひと段落したところで、アナの様子が気になった誰かがアナを呼ぶ。 でもアナは外に出ているために、屋敷の中にいない。 そのような事実は、周りを大混乱にさせてしまうものだ。 だから……帰らなければいけない。 「でも、今日は本当に楽しかったわ。最初はちょっと怖かったけど、あなた達がいたお蔭で、とっても楽しい時間になった。素敵な一日だったわ!」 自分の家に帰るため、アナは浄化師達と別れの挨拶をする。 「それでは皆さま――本日は楽しい時間をくださって、本当にありがとうございました」 ――なんと。 流石はお嬢様と言ったところか、そこはちゃんと教育されているらしい。 上品に一礼をしたアナに浄化師達は驚くが。 「あーでも、わたしが今日のことをお父さまやお母さまに言ったら、あなた達はどうなるのかしら。誘拐? それとも脅迫?」 …………、 ……………………はい? ちょっと待て、と浄化師達はアナを問い詰める。 泣きそうになっていたところを声をかけて、アナの要求通りにお茶会を開いたのに。 何故そのようなことになるのか、と。 「だって、わたしはお外に出たことを誰にも言ってないもの。だったらわたしは浄化師に攫われたと思うでしょ?」 いやいや、それは違うだろうに――と。 「それに、わたしがちょこっと嘘をつけば、みぃんな悪者なのよ? これって、面白いことじゃない?」 全然面白くない、心臓に悪い冗談だ――と。 意地悪そうにそう言うアナとは違って、浄化師達は本気で焦る。 いっそのこと、このまま家に帰さないようにするか……そう考えるが。 「冗談よ、そんなことはしないわ。このことは秘密にするもの。……でも、最後にもう一つだけ、お願いしていい?」 この流れで頼みごとをするとは一体どんな精神をしているのか、若干気になるものの。 けれども少女の、我が儘なお嬢様の頼みごとを聞かないわけにはいかない。 浄化師達は頷き、アナはお願いを言う。 「もしよかったら、またわたしと遊んでくれる? 今度は別のことをして」 ――もちろん。 今度はちゃんと両親に許可を取ってから、と。 「えへへ、ありがと! それじゃあね、バイバ~イ!」 最初から最後まで我が儘を貫き通したお嬢様は。 とても良い笑顔を向けて、自分の家に向かって走って行った。 その姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けて……。
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*** 活躍者 *** |
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[5] モナ・レストレンジ 2019/04/08-23:21
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[4] ヨナ・ミューエ 2019/04/08-22:33
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[3] モナ・レストレンジ 2019/04/08-10:37
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[2] ヨナ・ミューエ 2019/04/08-09:23
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