~ プロローグ ~ |
「またのお越しをお待ちしております」 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
誰かにプレゼントをする際、贈り物は一体何が良いか、場所はどこにしようか……などなど、そんなことを考えたことはありますでしょうか。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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来店:冬子 あ、えっと……その… パートナーの人に、プレゼントを……(絶賛人見知り発動中) いつも自分の為にいろんなことをしてくれるパートナーに日ごろの感謝をこめて 何となく立ち寄った店でお買い物 …と、思ったはいいもの人の為にプレゼントを買ったことはなく 依頼で選んだことはあるが、個人で選ぶのは初めて おすすめ、ありますか …すごく自信にあふれてて 凛々しくて、信念があって とてもやさしいひとなんです だから、あの…アクセサリー、とか 自らが最高傑作と語る彼女に、アクセサリーは不要なのかもしれないけど せめてもの、気持ち 渡す場所は自室 拙いながらも感謝をこめて プレゼントは白椿モチーフのブローチ その、いつも、ありがとう |
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日頃お世話になっているし、 リンにプレゼントでも、と思ってふらりと来店。 シャドウガルテン出身だからか、ゴシック系が好きで、 結構男の人っぽいシルバーアクセサリーをよくつけてるよね。 ハートのペンダント…はちょっと恥ずかしいから… 狼、だと流石に男の人っぽすぎるかな。 うーん……そうだ! リンを、どこかの花畑に呼び出す。 大した用事じゃないんだけど、いやいや、そうだけど、そうじゃなくて! 日頃お世話になってるからね、ちょっとプレゼントをと思って。 はは、そんなにキザじゃないよ。 そこの花を見てみて。 えっ、これもキザ!? いや、そんなことないでしょ! |
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~ リザルトノベル ~ |
「おや、いらっしゃいませ。何かお求めですか?」 教皇国家アークソサエティ『ソレイユ』にある店の中――その店主であるロレンスがそう言ったのは来店した女性客一人で、しかし。 その女性はただの女性ではない、浄化師だ。 「あ、えっと……その……」 が、何やら戸惑っている様子だ。 ――それもそうだろう、その浄化師『相楽・冬子』は只今絶賛人見知りを発動しているのだから。 知らない人と会話をする……なるほど、それはとても難易度の高い行動だろう。 何を言えばいいのか、どうすればいいのか。それをあらかじめ考えているのに、いざ他者を目の前にしてしまえば思考回路がショートして何も考えられなくなる。 結果、傍から見ればおどおどした態度に見えてしまうのだ。 じゃあそれを直せばいいじゃないか、と何も知らない他人は言うだろう。簡単にそう言うだろう、だが! そんな簡単に改善できたら苦労はしないッ! ……とまあ、自分もそのような時期があったなぁ、と人見知り発動中の相楽を見ながらロレンスは微笑む。 「えっと、その……ですね」 「大丈夫ですよ、落ち着いてください」 深呼吸をするように促すロレンスの言葉に相楽は従う。 何回かの深呼吸を繰り返した後、落ち着いた相楽はここに来た理由を話し始めた。 「えっと……なんとなく立ち寄っただけなんですけど」 「しかし何かしらの理由がおありでしょう?」 「その、ですね……いつも自分のために色んなことをしてくれるパートナーに日頃の感謝を込めて、プレゼントを贈ろうと……」 なるほど、それは素晴らしいことだ。 「で、でも私、人のためにプレゼントを買ったことがないんです」 相楽――過去に依頼で選んだことはあるが、彼女自身個人で誰かにプレゼントをするために選ぶのは初めてだ。 一体何を買えば喜んでもらえるのか。 もし趣味が合わないものだったらどうしようか、と考えている。 つまり、自分では何を選べばいいのかがわからない。 しかし、ここは幸いにもソレイユでは評判の高い店だ。 店主のロレンスに事情を話せば、彼はとびっきりの商品を見出してくれるだろう。彼はそういう人だ。 彼女がここに足を運んだのは、きっと偶然ではないのだろう。 「で、ですので……おすすめ、ありますか?」 「おすすめ……ですか」 ロレンスに訊く相楽だが、訊かれたロレンスは難しい顔をして悩み始めた。 ――そも、情報が少なすぎる。 相手が男か女か、一体どういう性格でどのような人物なのか。そういったものが何一つ語られていない。 話しにくいことなのかもしれない、とロレンスはあえてそれを訊かないのだが。 必要な情報を言っていないと気づいた相楽は慌てて、 「その、私がプレゼントを贈りたい人はですね」 自分のパートナーの姿を思い浮かべながら、言う。 ――彼女はすごく自信に溢れていて。 凛々しくて、信念があって。とても……とても優しい人なんです。 「だから、あの……アクセサリー、とか」 「アクセサリー?」 「自分こそが最高傑作と語る彼女に、アクセサリーは不要なのかもしれませんけど、せめて……せめてものの気持ちで」 感謝の気持ちを伝えたい――彼女はそう言った。 なるほど、ではその願いに応えるのが自分だとロレンスは思考を巡らせ。 相楽から得た情報と経験を照らし合わせて、彼は最適な商品をいくつか手に取った。 「では、こちらはいかがですかな?」 相楽に見せたそのアクセサリーは――……。 ――――…… 「冬子、自室に来てほしいって何かあったのですか?」 相楽の部屋に入ってきた女性『メルツェル・アイン』。 金色の瞳を持ち、自信に満ち溢れたその姿は、相楽がロレンスに語った言葉通りだ。 その彼女が見る先には、少しうつむいている相楽の姿が。 彼女に一体何があったのだろうか、と思ったメルツェルは無意識に近づく。 ――と。 「め、メル!」 パートナーの名前を叫んだ相楽は、背中に隠していたモノをメルツェルに差し出した。 「その、いつも……ありがとう」 「――まぁ!」 拙いながらも感謝の言葉と共に、プレゼントはメルツェルに贈られた。 そのプレゼントは白椿をモチーフにしたブローチ。 事情を聞いたロレンスが渡したアクセサリーの中で、相楽が『自分で選んだ』ものだ。 「これ、ワタクシにプレゼントですの!?」 「う、うん……日頃の感謝の気持ち、で。……気に入らなかった?」 「まさか! 素敵ですわ、えぇとても素敵ですわ!」 手渡されたプレゼントに、メルツェルはとても嬉しそうな表情をして喜ぶ。 まさか冬子からプレゼントをもらえるとは、と。 「よ、よかった……それを選んで」 「まさか――これはアナタが選んだのですかトーコ!?」 「え? あ、うん……そうだよ」 「――――っ!!」 相楽の言葉を聞いたメルツェルの嬉しさは倍増していく。 ……それもそうだろう。いつも引っ込み思案な相楽が自分のためにプレゼントを選んでくれたのだから。嬉しくないはずがない。 「しかし白椿だなんて……少し照れてしまいますわね」 「えっと、もしかして趣味に合わなかった……?」 いつも堂々としている彼女が珍しく小声でそう言ったことに違和感を覚えた相楽は不安を抱き。 せっかくのプレゼントだが、メルツェルが嫌なら返しに行こうと思い、手を伸ばす……が。 「いいえ、白椿は最高傑作たるワタクシに相応しい花ですもの。嫌ではありませんわ」 「そ、そうなんだ……よかった」 そんなはずがない、と相楽の伸ばしたその手をメルツェルは片手で優しく包み込む。 暖かな、優しい手に握られた相楽にメルツェルは一つお願いをする。 「冬子――このブローチ、アナタが着けて下さる?」 「え、いいの?」 「もちろん。アナタに着けてほしいのです」 メルツェルにブローチを着ける役目を受けた相楽は嬉しそうな顔をしながら、彼女の一番目立つ胸元に着けた。 「邪魔、じゃないかな……?」 「邪魔……なわけがありませんわ! アナタが選んでくれたものを身に着けたいと思うのは当然のことです!」 強い口調で相楽との距離を更に詰めるメルツェル。 「もちろん、きっちり手入れもさせていただきます! 一生大事にしますので!」 ……ここまで言われれば何も言うまい、と。 観念した相楽は無意識に後ろに下がって距離を取る。 「でも、ふふふ……このブローチのお陰で、ワタクシはより綺麗になってしまうのかしら?」 ブローチを着けた姿を確認すべく、メルツェルは鏡を見る――その時。 「め、メルはいつも綺麗だから!」 反論するかのように相楽はそう言った。 「……あらあら、まあまあ。そうですの」 「え、あ、ち、ちが……」 彼女の口から嬉しい言葉を聞いたメルツェルは軽く微笑みながらゆっくりと近づいて。 その綺麗な肌に、頬に、そっと手を触れた。 まるでその姿がとても愛おしいかのように優しく、だ。 ――さて、白椿の花言葉を知っているだろうか。 それは『至上の愛らしさ』だ。 恐らく、花言葉を知らない相楽は何も考えずに直感で選んだのだろう。 だが花言葉を知っているメルツェルはそう捉えている。 愛らしいと贈り物で言われたメルツェル、相楽の瞳をじっと見つめて、 「冬子……アナタも綺麗ですわ」 今にも相手の鼻が当たりそうなほど顔を近づけた。 二人のその光景を、外から入ってくる光が絵画のように映えさせる。 その光景はさながら、目の前の恋が楽しく、愛おしいと感じている恋人同士ではないだろうか。 ■■■ 「いらっしゃいませ、何かお求めですかな?」 ソレイユにある店――その主であるロレンスの前にいるのは『マイス・フォルテ』という浄化師。 浄化師である彼が何故このような店に足を運んだのか、その理由は簡単だ。 彼は自分のパートナーに日頃世話になっているお礼にと思ってプレゼントを買おうとしているのだ。 だが一体何を買えばいいのかわからず、悩んでいた。 そしてふらりと立ち寄ったのが、ロレンスがいるこの店だ。 つまり、この店にある商品が目的で来たわけではない。 ただ、何か良いものがあればいいなぁという程度のものだ。 ……まあ基本的に新たな店を開拓するのはこういう理由が殆どだ。別に何も間違ってはいない。 しかしマイスはその言葉を直接言うのは失礼だと判断し、 「いえ、ちょっとプレゼントを……」 「プレゼント、ですか。それは良いですね。一体どのような相手に?」 「パートナーになんですが、その――」 自分がここに訪れた理由を嘘偽りなく答えた――プレゼントを探しに来た、と。 その言葉を聞いたロレンスは、店の中にある商品の中で最適な品を持ってこようと思い、マイスの相手の情報を聞き出そうとする、が。 「まずは僕が自分で選んでみようと思うんです。でも迷ったら助けていただけませんか? 我が儘で申し訳ないですけど……」 相手への贈り物の品を、自分で考えず他人の意見を聞いて、他人が思いついた品を渡すのは何か違うのではないかと。 そう考えた彼は、ロレンスの協力を断った。 「そうですか。自分で選ぼうとするのは相手のことを想っている証です。謝ることはありません、それほどパートナーの方を大切に想っているのですから」 だから気にしないでください、と彼は言う。 「では私は少し席を外しますので、ごゆっくりお選びください。それがあなたにとっても、パートナーの方にとっても特別なものであることをお忘れなく」 マイスに協力を拒まれたロレンスはそう言い、頭を下げて店の奥に引っ込んだ。 店の中で一人になったマイス――静かな時間が流れ始める。 この静かな中で思う存分店の商品を見て、自分がこれしかないと判断した物をじっくりと考えることができる……しかし。 ロレンスはああ言ったものの、店の中でゆっくり品定めをするのは実質不可能だ。 そも、ここは商品を売る場所だ。店の中だ。いつ自分以外の客が来店するかもわからない。 もし誰かが来店した場合、当然ロレンスは店の奥からやってきて対応するに決まっている。 彼とその客が何を話すかは知らないが、その会話はマイスの思考を邪魔するだろう。 考えがまとまらず、時間だけが過ぎてしまい、その客が帰った後でも決めることができなければ流石のロレンスも困るはずだ。 流石に自分勝手な理由で店に、ロレンスに迷惑をかけるわけにはいかない。今すぐにでも決めなければ。 となれば、まずは直感で選ぶか……と、マイスは店の中の商品を一通りじっくり見始めた。 だが、彼の中では直感というものが存在していないのか、それとも感じなかったのか、いまいち「これだ!」と思うものがなく、決めることができなかった。 けれどそうしている間にも時間は刻々と過ぎていく。 「――そういえば」 ふと、マイスはパートナーの姿を頭に思い浮かべた。 ――彼女はシャドウガルテン出身だからか、ゴシック系が好きで。 結構男の人っぽいシルバーアクセサリーをよく付けているんだった。 なるほど、パートナーの情報を思い出して、そこから好みを探すというわけか。 「じゃあこのハートのペンダント……は、ちょっと恥ずかしいかな」 目の前にあったハートの形をしたペンダントを手に取るが、それを贈り物とするには難度の高いものだと思い、元に戻す。 「それじゃあこっちのオオカミ……だと、流石に男の人っぽすぎるかな」 ではその隣のオオカミの形のペンダントを……だがそれを身に着けるのは恐らく男が大半だろうと思い、元に戻した。 考え方はわかった、だが深く考えてしまうのか、出した案を自分で却下することの繰り返しになり、頭を悩ませる。 ――だが。 「うーん……なにが――そうだ!」 ついに最適な物を見つけたのか、マイスは少し大きな声でそう言い。 「何か良い物でも見つけましたかな?」 店の奥にいたロレンスが微笑ましい顔でマイスに近づいた。 ――――…… 「全く……いきなり休日に呼び出すなんて、一体何の用かしら」 街の中を歩いている一人の女性――『リン・リレーロ』。 浄化師である彼女が一人で街の中を歩いている理由は、パートナーであるマイスに急に呼び出されたから。 来るようにと指定された場所はとある花畑。彼女はそこに向かっている途中だ。 指定した場所は何ともロマンチックな場所だが、しかし一体何故そこなのか、と彼女は歩きながら考える。 マイスとリン――浄化師として共に指令をこなす二人は、だが特に指令がない日はあまり会うことがない。 それはお互い、契約してまだそこまで日が経っていないから。 言い方を変えれば、二人はまだ初対面に近い状態なのだ。 そんな間柄の中での、休日にいきなりの呼び出し――何かあるとしか思えない。 「しかも花畑って……アタシ、プロポーズでもされるの?」 まさか……いやいやそんなわけがない、と思いつつも、しかしその可能性が否定できないリン。 万が一の可能性も考えて、彼女は目的地である花畑に着いた。 そこには無論、呼び出した本人であるマイスの姿が。 どうやらここには彼と自分の二人だけしかないようだ。 「で、花畑なんかに呼び出してなに? 大した用事じゃないなら帰るけど」 ……早速喧嘩腰のリンの態度に少々戸惑ったマイスは咄嗟に、 「その、大した用事じゃないんだけど――っていやいや! そうだけど……いや、そうじゃなくてっ!」 たった今、大した用事じゃないのなら帰ると宣言したリンにそう言ってしまった。 そう言われたリンは即座に来た道を退き返そうとするが、彼は必死にリンを止める。 「……で、本当は一体何の用なの? 休日に呼び出すぐらいなんだから大事な用事なんでしょ?」 「あー、その……日頃お世話になっているから、ちょっとプレゼントをと思って」 「……プレゼント?」 マイスが言った言葉を数秒遅れて理解したリンは周りを見回して、 「『この花畑の景色が君へのプレゼント』とかって言うつもり?」 ベタ過ぎる展開を予想し、そう言った。 「はは、僕はそんなにキザじゃないよ」 「じゃあなに?」 「そこの花を見てみて」 「花?」 マイスが指さした先には一見周りに生えている花と何ら変わらない花が、だが。 「ん、何かかかっているね。これは――」 近づいてよく見れば、その花にはブーケのシルバーアクセサリーがかけられていた。 なるほど、ただ素直に渡すのではなく、周りの物を利用するのか、とリンは微笑む。 「まさかマイスにこんなキザな演出ができたなんてね」 「えっ、これもキザ!? いやいや、そんなことないでしょ!」 「ふふ、これも十分キザだよ」 花にかけられたアクセサリーを手に取ったリンは、それをじっと眺める。 「ど、どうかな……気に入らなかったら別に――」 「ありがと、大事にするよ」 マイスが言葉を言い終える前にリンがそう言う。 ――気に入る、気に入らないの問題ではない。『贈られた』ことが重要なのだ。 まあ、まったく趣味の合わないものを贈られても困るが、しかしこのアクセサリーは中々のもの。 これからも共に行動するマイスからの贈り物なのだ。「いらない」という考えはない。 だからこそ、リンはそのアクセサリーを大事に握りしめ。 「これからもよろしくね」 これから大変な日々が続くだろうが、一緒に乗り越えていこうと。 そう意味を込めた言葉を、花畑を背景にしたリンはマイスに言った。 ■■■ 浄化師たちがプレゼントをする品物を買いに来た店の中――アドバイスを終えたロレンスは椅子に座っていた。 久しぶりに初々しい反応をする若者を見た、とそう微笑みながら。 「……ああ、私もあんな時期がありました」 背中をもたれさせて、目を閉じたロレンスは独り言のようにそう呟く。 「何を贈れば相手が喜んでくれるのか、どうすれば気に入ってくれるのか。色々悩んだ結果、悩みすぎるのが馬鹿らしくなりましたね。……君のせいで」 ――思い出すのは、亡き妻との思い出。 「君の気を引こうとして、かなり見栄を張った物を買って。それをプレゼントしようと思ったら、君はこう言ったんですよね」 『「プレゼントをされる」のが嬉しいのであって、物の価値なんかどうでも良い』――と。 趣味に合うものがプレゼントであれば嬉しいのは当然だが、趣味に合わないものを贈られても、それが『大切な人』からのものであれば十分嬉しいものだ。 むしろ、それ以外に嬉しい理由はない。 「あれは中々に堪えましたが……でもそのお陰で君と良い関係になることができたんですよね。懐かしい記憶です」 ――このネックレスも、今となっては懐かしい記憶ですね。 思い出に浸り、嬉しそうな笑みを浮かべるロレンス。 だがふと、そこで客が来店したことを告げる鈴の音が鳴った。 「おっと、今日はお客が多いですね。思い出に浸らせてくれる暇もありませんか」 やれやれ、と腰を上げたロレンスはいつもの表情に戻って。 「いらっしゃいませ、何かお求めですかな?」 今日も、店を続けていく。
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*** 活躍者 *** |
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