~ プロローグ ~ |
――目を開ける。 |
~ 解説 ~ |
●状況 |
~ ゲームマスターより ~ |
どうもお世話になっております、虚像一心です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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…シキ… 違う。あれは『ただのベリアル』だ 故郷を滅ぼし、育ての親の行方を眩ませた元凶にすぎない 剣を左手に持ち替え、シキに近寄る 自分の存在に気づいたシキが、黒く染まった双眸をこちらに向ける その黒い目が、なんとも痛々しい もうパートナーのことも忘れてしまったようだ シキ、… 名を呼べば「なになにっ? アル!」と煌めいた瞳で駆け寄ってきた日々が、嘘のよう …また『大切な者』を失って、『一人』に戻る 何かが、頬を伝った気がした シキの寮部屋にて …シキ、 アンタがベリアルになったら、容赦はしない ベリアルは…この手で潰す (けど、実際、目の当たりにしたら俺は、深く絶望してしまうんだろうな) っ…(頬に触れられ、動揺) …うるさい |
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サク:パートナーがベリアル化したらどう行動するか?そんなの決まっているじゃない キョウ:待って!心の準備が!! 【行動】 サク 悩むまでもないわ。殺すの一択。 だってほら、ベリアルって敵なのよ。 カレナやセシリアのようになりたかったのならごめんなさいね。 逃げるという考え(夢)を見るのは良いけど現実(今)をしっかり見ないと。 彼女たちはコッペリア(アレ)に使われていたじゃない。 アレに使われるくらいなら。殺すし死ぬわ。 自分がベリアル化してる自覚を与えないくらいなるべく早く殺してあげる。 それが無理なら いや、無理なんてないわね。 どこに行っても、絶対に殺す。 何か意見しても良いけど私の考えは変わらないわよ? |
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※アドリブ歓迎します (取り乱して) ララエルはベリアルになんかならない! そうさ…なるもんか、僕がさせない…っ! (ララエルに諭され) それなら…いいさ、ララに一瞬の痛みも与えず殺して、 僕も死ぬ。 新しいパートナー?そんなものいらない。 僕はララエルしかいらない。 ララエルに代わるものがあるなら持ってこい。 空の上で結婚式をあげよう、ララ(ララエルを抱きしめ) 前に言っただろう?僕たちは始まりも終わりも一緒だって。 ララエル、もう一人にはしないよ。 |
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・喰人がベリアル化 あんたは聞かなくても分かるわよ あたしぶっ殺して自分も死ぬ、でしょ あんたがベリアルになった時か そういえば考えたことなかったわね、でもそっか よくよく考えたら、あの時 危なかったのあんたの方だもんね ベリアルになったら?殺すわよ 当然でしょ もし仮にそんな状態になるとしたらあたしのせいだろうし 責任は取ります とはいえ 今度こそあんたに置いていかれたら… あたし何を原動力にして生きるのかしら?復讐?誰に?ふふ 少なくとも今みたいに 他のことを楽しんでる余裕はなくなるしね そーならないように あんたも自制しなさーい (なんて茶化したけど きっとあたしも狂う 「裏切者」って叫びながら、何度もラスを殺すんだ) |
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~ リザルトノベル ~ |
「……シキ……」 そう呟く『アルトナ・ディール』は視線の先に浮かぶ光景に胸を痛める。 罪もない人々を殺し、家屋を焼き、快楽の、本能のままに殺戮を楽しむ獣『シキ・ファイネン』がそこにいるからだ。 ――浄化師としてアルトナと共に数々の任務をこなしてきたシキ。 だがその果てに、彼は、狂ってしまった。その心も、その体も、何もかも変わってしまった。 気が狂い、我を忘れた浄化師は獣へと堕ち、ベリアルと成る。それはすなわち、浄化師の敵として寝返ったことに他ならない。 ベリアルは存在そのものが赦されない。放っておけば恐らく……いや、ほぼ確実に周りに被害を生む。 ならば殺さなければならない――ベリアルを殺せるのは浄化師だけ。その浄化師は今ここにいる。アルトナと言う男が。 アルトナは浄化師としての任を果たすために、ベリアルと化したシキに狙いを定める。 だが、その体が固まる。何故だろうか。……いや、その理由は分かっている。 例え堕ちるところまで堕ちようが、眼前の敵はかつてのパートナーだ。どれだけ変わろうと、その事実は変わらない。 もしかしたら……否、それは違う。あれは『ただのベリアル』だ。 アルトナの故郷を滅ぼし、育ての親の行方を眩ませた元凶に過ぎない。……それも変わらない事実だ。 その事実を胸に、アルトナは剣を左手に持ち替えて、シキに近寄る。 シキは自身に近づくアルトナの存在に気づいたらしく、その黒く染まった双眸をアルトナに向けた。 「……っ」 向けられた視線――その黒い目が、何とも痛々しい。 黒い目がアルトナを捉えると、獣は唸り声を上げながら地を駆けてアルトナに近づく。 それはまるで……親しい友と久しく会っていなかったかのように。 けれど現実は、新たな獲物を見つけた喜びと、その息の根を止めるための準備。 迷いなく嬉々としてアルトナに近づくシキは、もう……パートナーのことさえ忘れてしまったようだ。 「……シキ、……っ」 アルトナがシキの名を呼ぶ。 いつもの様に名を呼べば『なになにアルっ!?』と煌めいた瞳で駆け寄ってくる――その日々が、まるで嘘のようだ。 ――認めたくはない、諦めたくはない。 けれど既にシキにとって自分は興味の対象であり、守るべき大好きなパートナーの声さえも届かなくなってしまった。 ひたすら、村人の命を奪ってゆくだけの存在に変わり果てたのだ! 何を想うのか、微動だにしないアルトナに、シキは己が獲物を振りかぶり命を狩ろうとする。 これでまた一つ、殺した快感を味わえる――そんな未来を待ちわびただろう。 しかしそれは叶わなかった。 シキがアルトナを殺そうとしたその刹那、アルトナは持っていた剣でシキを叩き斬った。 防ぐ時間も意識する時間さえも与えられずに斬られたシキからは、大量の血飛沫が宙に飛び、身体の機能を停止させた。 シキ……ベリアルは死んだ。 アルトナは浄化師としての使命を果たしたのだ。 だがその代償は……また『大切な者』を失って『一人』に戻る、重いものだった。 無意識に体の中からこみ上げてくる何かに、アルトナの頬に何かが伝わった……気がした。 ――そんな妄想が、いつか現実になる時が来るだろう。 「……シキ」 「ん、なに? アル」 シキの寮部屋にて、アルトナとシキがお菓子を摘まみながら雑談を交わす中。 「――もしアンタがベリアルになったら、俺は容赦しない」 突然の話に、シキは大きく目を開いた。 ベリアル化、それは――浄化師に与えられた呪い。 気が狂い堕ちた浄化師が成り果てるもの。 もしパートナーがそうなった場合、残された方はどうするのかを問うたものに、 (……けど、実際。ベリアルになったシキを目の当たりにしたら俺は、深く絶望してしまうんだろうな) 「……アル……」 だがシキは笑みを浮かべて応え、 「そんじゃ、もしアルがベリアルになったら――俺がアルを殺るよ。その眉間を綺麗に撃ち抜いて見せるからさ。ばーんっ!」 指で銃を模倣し、険しい顔をするアルトナの眉間に指を当てて、発砲する仕草をした。 その雰囲気の差に、逆に目を見開かされたアルトナ――シキはその表情に「にしし」と笑う。 「……ベリアルは、この手で潰す」 「む、俺だってやる時はやるんだぜっ?」 ベリアルと化したパートナーをこの手で殺す、その覚悟があるのか疑わしいシキは、アルトナに対抗しようとする。 だが。 「……だけど、そうなってほしくない」 「…………」 「アルトナは、俺の……俺の相棒だよ、ずーっと」 そんな未来など訪れさせないと、そう願うように呟いた。 ――出来ることなら、そうあって欲しい、けど……。 「だから……アル? そんな顔、すんなよ」 「っ……!?」 深く思い始めたアルトナの頬にシキが触れた。 突如頬を走った感覚に動揺するアルトナに、シキはにたりと笑んで言う。 「けど、大丈夫かな~? アルって詰めが甘いトコあるしぃ?」 「……うるさい」 「あ、塩対応! 俺砂糖対応が良いのーっ!」 面倒になったのか、視線を逸らしたアルトナの対応にシキが改善を求める声を出す。 ――これなら、しばらくは大丈夫だろう。 馬鹿なことを考えることは……今しばらく。 ■■■ 「パートナーがベリアル化したらどう行動するか、って?」 そう問われた『サク・ニムラサ』――突然の問いに少々驚くものの、だが不敵な笑みを浮かべて、 「そんなの――決まってるじゃない」 自分は――と、そう言おうとしたその瞬間。 「待って! 心の準備が!」 傍にいたサクのパートナー『キョウ・ニムラサ』が制止の声を出した。 なるほど、もしかしたら訪れるかもしれない未来、ベリアル化した自分をパートナーはどうするのかという興味はあるものの。 だがその重大な選択を受け止めきれるだけの覚悟をキョウはまだしていなかったようだ。 体で時間を引き延ばそうとするキョウに、だがサクは躊躇なく答える。 「悩むまでもないわ。『殺す』の一択よ」 むしろそれ以外の選択肢があるのかと言うような表情を浮かべたサク。 「だってほら、ベリアルって敵なのよ。なのに殺さないって、それどーなのよって話」 「で、でも……」 「カレナやセルシアのようになりたかったのならごめんなさいね。でも逃げるという夢を見るのは良いけど、今をしっかり見ないと。夢と現実は違うのだから」 「それは……そうですけど」 「それに、彼女達は『アレ』に使われていたじゃない。『アレ』に使われるぐらいなら殺すし死ぬわ」 アレ――それはキョウも憶えている。否、そう簡単に忘れるものか。 スケール5のベリアル『コッペリア』が引き起こした、あの事件を。 ソレは、アウェイクニング・ベリアルを発症した少女『カレナ』とその恋人の『セルシア』を利用して災害を引き起こそうとした。 その結果――二人を含む数人の浄化師の手によってそれは何とか阻止出来た。 そして、ソレに操られていた二人の様子を知るサクからしてみれば。 哀れな道化師の様に、使い捨ての道具の様に操られるぐらいならばいっそのこと、楽にしてやった方が嬉しいだろう、と。 「それが無理なら……いや、無理なんてないわね」 「……どうしてですか?」 「どこに行っても、絶対に殺すから」 ――どれだけ逃げようとも。どれだけ抵抗しようとも。 例え地の底や天の上、世界の果てに逃げようとも、絶対に逃がさない。追いかけて必ず殺す。 「何か意見しても良いけど、それで私の考えは変わらないわよ?」 ――ベリアルと化したキョウ、その亡骸を足に、サクは天を見上げる。 ベリアルは殺さなければならない。ベリアルになった浄化師も、また同じ。 だが、戻れる可能性があるから、とサクはちょっと迷っていた。 アウェイクニング・ベリアルを発症してベリアルになっても、元に戻れる可能性はある。何事にも例外は存在するからだ。 けれど元に戻れた後の事を考える。 もしベリアルから戻れたキョウは、きっと罪悪感に耐えられないだろう。 意識がなかったとは言え、罪のない人々を殺してしまったその罪悪感に。 ベリアルになってしまった……自分自身に。 優しすぎるその性格は、例え戻れたとしても永遠にその身を蝕み続けるだろう。終わらない苦痛に、きっとキョウは耐えられない……そう思ったから。 故に殺すしかない。そう言わなければならなかった。 故に殺すしかなかった。苦痛を味わわせたくなかった。 『…………』 口にし、それを実行したのはサク自身。そこに戸惑いなどあるわけがなかった。 だがどれだけ覚悟を決めても、後悔だけはしてしまう。 『「また」家族を殺めた』……と。 ――もしかしたらそうなるかもしれない未来。そうなった場合、サクがどのような行動をとるのか。 サクの言葉に『待って』と言ったキョウは、実のところそれを内心察していた。 サクラは必ずそうするに決まっている、と。 ……でも。 「その後、絶対後悔しますよね」 自分を殺したサクを想像しながら、キョウはそう呟いた。 「あら、そう見える?」 「だって、長い間生きてると後悔すること多いですからね。サクラもきっと後悔します」 「私は後悔なんてしないわよ。過去を振り返らないオンナなの」 「だから――」 「だから後悔しない様に忘れるのかって?」 「っ……」 言葉を先読みされていたキョウは口を閉じる。 言いたいことが分かっているのならば、それはそう考えたことがあると言うことだ。 後悔しない様に忘れる――ああ、それが出来ればどれだけ幸せなことだろうか。 嫌なことを何もかも忘れることで自身が背負う重さに気づくことをしなくて済むのだから。 そう……楽しかった、思い出さえも。 だがそんなことをして、本当に幸せだろうか。後悔しないだろうか。 その先の答えを、キョウは見つけることは出来ない。 ただ一つ、分かるのは……、 「キョウ、悲しい顔しないで」 ――後悔しないサクラはきっと楽しくないはず。 「だってそもそも、そんな未来が訪れることはないのよ。好き好んでベリアルになんかならないし、ならせない。でしょ?」 「……ええ、サクラ」 なるほど、サクの言う通り、悲しい顔をする必要はない。 ベリアルになることなど、あるわけないのだから。 「それじゃあ、キョウ――貴方はどんな死に方がお望みなのかしら?」 「え、まだ続くんですか、この話……?」 「当たり前じゃない。で、どうなのよ?」 「えぇ……」 そしてまた一つ、キョウに分かったことがある。 この話をすると、サクは面倒になるのだと。 ■■■ 「ララエルはベリアルになんかならない! そうさ……なるもんか。僕がそうさせない……っ!」 取り乱し、絞り出すように声を荒げる『ラウル・イースト』。 もしパートナーがベリアルになったらどうするか――そう問われた彼は少し固まった後に取り乱し始めた。 なるほど、大切なパートナー『ララエル・エリーゼ』がベリアルになるなど考えたくもないことだろう。 憎きベリアル。忌々しいベリアル。目の前で両親を殺した復讐の対象。 大切な想い人がそれになるなど、到底受け入れられるものではない。 ――故にさせない。何があっても、何としてでも阻止してみせると。 そう叫ぶラウルに、傍にいたララエルが語り掛ける。 「ラウル、今は『もしも』のお話ですよ」 女神の様に微笑み、ラウルの両手を包み込む。 その温もりを感じたのか、ラウルの動きが止まった。 「ラウル――もし私がベリアルになったら、あなたに危害を加える前に撃ち抜いてくださいね」 「…………」 「私、最期までラウルのこと、おぼえていますから」 ――ベリアルになった私。それを殺しに来るラウル。 ただ本能と快楽のままに殺戮を続ける私を止めに来るのは、きっとラウル以外にいない。 銃を構えて、私の胸に照準を合わせるその姿に気づいた私は、当然襲い掛かるでしょう。 大好きな人を、私の王子様を、私の騎士様を、ただの獲物だと認識して……。 そうして襲い掛かる私に、彼は、きっと……すぐにでも泣き出しそうな顔をするんでしょう。 だけどラウルは引き金を引く。 手元が狂う前に。 決心が鈍る前に。 ラウルが放った弾が私の胸を穿つ時――ありったけの想いが込められた愛を受け止めた私は意識が無くなる前に思い出せるでしょうか。憶えていられるでしょうか。 何があっても、どんなことが起きても。 ずっと傍にいたいと思える大切な人がいたことを。 大切な……大好きなラウルを愛していたことを。 ――大切なラウルに、たくさん愛されていたことを……。 「それなら……いいさ」 俯きながらもそう答えたラウルにララエルは安堵した。 これでもしものことがあっても、ラウルが死ぬことはない。彼は必ず私を殺してくれる、と。 「ララに一瞬の痛みも与えずに殺して」 「ええ、そうしていただけると――」 「そして――僕も死ぬ」 「っ!」 だがそれも束の間。続いたラウルの言葉に安心して瞼を閉じていたララエルの目が大きく見開かれた。 「どうしてですか? ラウルが死ぬ必要はどこにもないじゃないですか!」 死なない様にそう言ったのに。 私が死んでも新しいパートナーが傍にいるのに――そう言ったララエルに、ラウルの瞳がゆっくりと向けられた。 「新しいパートナー……? そんなもの、いらない。僕はララエルしかいらない」 「どう……して……?」 「僕のパートナーはララエルだけだ。どんな時も一緒に行動して、笑って、怒って、ずっと日々を積み重ねてきた大切な人だ。そんな人に……ララエルに代わるものがあるのなら持ってこい」 ラウルの言葉にララエルはふと考える。 もしラウルではない『誰か』がパートナーとして自分の隣にいるなら。 その人は、ラウルの代わりになるのだろうか? ……いや、ラウルの代わりになどならない。 例え姿かたちが同じで声も同じだったとしても、共に日々を積み重ねていないソレは、ラウルの代わりになんてならない。 ――つまりは偽物。 自分の半身のような存在が消え、その場所に偽物が居座っている。楽しかった思い出を、辛かった日々を知らない偽物があたかも当然の様にそこにいる! 夢に魘されるほど愛した人の場所を偽物が奪うなんて、そんなのは耐えられない――ッ!! そしてララエルは気づいた――自分の言葉はどれだけ酷いものだったのかを。 大切な人が傍にいない孤独。永遠に会うことが出来ない絶望。 熱を持つ切り傷のようにその身を蝕む激痛を、永遠に味わいながら苦しんでくれと言っていることと同じだとッ! 「――ララエル」 自らの言動を後悔するララエルを、ラウルは抱きしめる。 「空の上で……結婚式を挙げよう、ララ」 「……ぁ……」 結婚――その言葉を聞いたララエルの頭に、クリスマスの出来事が鮮明に思い出される。 そう……クリスマスのあの日、ベッドの上でのあの時。 彼に言われた、特別な言葉を――、 「っ……わたし、ラウルにもらったもの……忘れませんから……っ」 ララエルの瞳から徐々に涙が零れ始めた。 「アクアマリンのアクセサリー……やさしくしてくれたこと……」 「うん。……うん」 「けっこんしようって……言ってくれた、こと……っ!」 まるで決定事項の様に言ったあの言葉、左手の薬指に嵌められた指輪。 呪いの様に二人を繋ぎ止めるそれらは、だが嬉しい気持ちが溢れ出て止まらなかった。 「前に言っただろ? 僕達は始まりも終わりも一緒だって」 自身の腕の中で泣くララエルを更に抱きしめ、ラウルは言う。 「ララエル――もう一人にはしないよ」 「はい……っ、はい……っ!」 例えベリアルになっても絶対に離れないというその言葉は。 そんな未来を否定する祝福として二人の中に満ちる。 ■■■ ――もしパートナーがベリアル化したら自分はどうするか、そう問われた『ラニ・シェルロワ』と『ラス・シェルレイ』。 ほんの少しだけ考えた二人は互いに顔を見合わせ、 「お――」 「あんたは聞かなくても分かるわよ。――あたしぶっ殺して自分も死ぬ、でしょ?」 ラスが口を開いてそう言おうとした言葉を、先にラニが言った。 「おうそうだよ。ようやく分かったか突進娘」 「ふふん、まーね」 口角を上げて、したり顔を浮かべたラニに、ラスは腕を組んで嬉しそうに笑みを浮かべる。 …………、 ………………、 次の続ける言葉が見つからず、沈黙の空気が流れる中。 「なあ」 「なによ?」 「もしもオレがベリアルになったらお前はどうするんだ?」 「……そぉーねぇ……」 ラスが言ったその言葉に、ラニは真剣な表情になる。 「そういえば考えたことなかったわね。……でもそっか。よくよく考えたらあの時、危なかったのあんたの方だもんね」 ラニが言うあの時、それは――アウェイクニング・ベリアルを発症した『カレナ・メルア』とその想い人の『セルシア・スカーレル』の二人を助けるために必要な道具を手に入れようとした時のこと。 過去の恐怖やトラウマを再体験させられた時のことだ。 「あの時のことは……正直、あんまり覚えていないんだが」 「でしょうね」 「真っ暗で、何も考えられなくて……お前しか見えなかったような……」 「ちょっと、無理に思い出さなくていいわよ」 思い出せない記憶を思い出そうとするラスに、ラニの制止の声が止めた。 記憶は無理に思い出さず、徐々に思い出す方が良いと。 「ん、そうだな。――ところで、俺がベリアルになったの話に戻るんだが」 「ああ、そうね。もしあんたがベリアルになったら――」 答えを聞いていない問いに、ラスに問い返すように呟いたラニは、答える。 「――殺すわよ、当然でしょ」 「そもそも、もし仮にそんな状態になるとしたら当然あたしのせいだろうし。その責任はきちんと取ります」 「ん、だろうな」 しかしその言葉はラスの予想通りだったのか、ただコクリと頷いただけで、特別驚くような素振りは見せなかった。 「とはいえ、今度こそあんたに置いていかれたら……あたしは何を原動力にして生きるのかしら?」 が、話の火種は良からぬところに引火したらしく、ラニの顔に不気味な笑みが浮かび上がった。 「やっぱり――復讐? 一体誰に? ふふ……ふふふ」 何が面白いのか、一人で笑うラニ。 その笑顔に、その声に、いつもの雰囲気は感じ取れない。ラニの中で何かが黒炎のように燃え上がっているようだ――それを。 「……やめろ、今以上に燃えてどうするんだ」 ラスが、止める。 「燃える? ……ええ、燃やすわ。とことん、それこそ骨はもちろん」 「灰すら残すつもりはないと――」 肩を掴み、力を入れてラニの顔を自分の方に向けたラスが見たその顔は。 「それでお祭りになったらさいこーね」 「……はぁ」 にやにや、とまるでイタズラが成功したような童の笑みだった。 なるほど、どうやら一杯食わされたらしい。 何とも言えない楽しみ方に呆れたラスの口からはため息が漏れた。 「ま、あんたもそーならないように自制しなさーい」 「その言葉、そっくりそのまま返してやるよこの野郎」 「ちょ、何すんのよ!? いた、いだだだだだだだっ!」 やられた仕返しのつもりだろうか、ラスはラニの頭を拳でぐりぐりと、まるでネジを埋め込まんばかりに押し当てる。 髪の毛ごと抉られるかのような痛みに抵抗するラニは――思う。 (なんて……茶化したけど、きっとあたしも狂うんだろう) ――『裏切り者』って叫びながら、何度も、きっと何度も、ラスを殺すんだ。 ――我を忘れ、ベリアルに堕ちてしまったラス・シェルレイ。 その顔に、その姿に、その雰囲気に、かつての面影はどこにもなく。ただ快楽と本能のままに獲物を殺す獣へと変わった。 その獣を止める狩人は他の誰でもない――ラニ・シェルロワだ。 獣に近づく狩人は笑いながら、その瞳から大粒の雫を流す。 それは今までの思い出も、喜びも……全てを殺意に変えたが故に。 眼前にいる敵を、容赦なく殺しつくすために。 ベリアルが目の前にいる――ならば殺そう。 今まで楽しかった……だから殺そう。 でも今は悲しい……故に殺す。 頬から零れ落ちる涙を止めることなく、狩人は飢えた獣に一歩、また一歩と近づく。 獣はその気配を察し、新に来た獲物で楽しむための準備に入った。 地を蹴り、狩人の命を刈り取ろうとする獣はその生命を奪い取るために武器を振り上げる。 そして狩人に向けて振り下ろされた……その僅かな時間。次の瞬間には違う景色に切り替わるその瞬く時間に。 全ての感情、全ての思い出、全ての想いを殺意に変えた狩人は剣を振り上げて、落とす。 空を切る剣が獣の体を抉るその時、狩人は再び笑みを浮かべる。 ――憎いからではなく、それは相手を殺すのは自分でありたいから。 そんな醜い姿に変えてしまった、その責任を取るために。 そして……、 「この……裏切り者!」 裏切り者を、決して赦さないために。 獣を叩き斬った狩人はその顔に怒りを宿し、動かなくなった亡骸に向けて叫び続ける。 己を裏切った者に贈る蔑称を……。
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*** 活躍者 *** |
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[5] サク・ニムラサ 2019/12/22-22:48
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[4] ラニ・シェルロワ 2019/12/22-18:35
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[3] ララエル・エリーゼ 2019/12/22-15:27
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[2] シキ・ファイネン 2019/12/21-21:27
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