~ プロローグ ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ 解説 ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ミズナラ様、鬼さんお久しぶりです 付喪神ちゃんたちも元気だった? ミズナラ様の社でご挨拶 今日はお礼を言いに来たんです 先の戦いでは 助けて下さってありがとうございました 談笑の後 勧められた雪祭りに 着せてもらった着物に大判のショールを羽織って いつもと違うシリウスの様子に頬を染める 瞬く様子に ううん なんでもない 差し出された手に 一拍置いて笑顔 彼が人に触れるのが苦手なのを知っている だからこそ余計この手が嬉しい わあ 大きな像 あれはミズナラ様よね あっちの像は誰かしら? 雪と氷に囲まれているのに ふたりで見るとなぜか暖かい 今年は…未来はこれからどうなるのかしら 返された言葉に頬を染めて うん、こちらこそ これからもどうぞよろしくね |
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~ リザルトノベル ~ |
● 四季のうつろいは色の変化と共に訪れる。 夏には青々としていた境内も今は白い。まるで厚い綿布団を被っているようだ。 せっせと雪かきをしていた付喪神は人の気配に顔をあげた。 こんな日に誰だろう? そんな疑問は来客の姿を見た瞬間に吹き飛んだ。 「こんにちは、雨降小僧さん」 雨降小僧は飛び上がって喜んだ。 石段を昇ってきたのは『リチェルカーレ・リモージュ』と『シリウス・セイアッド』。 世界の窮地を救い、そしてこの辺りの付喪神からは良き遊び相手として認識されている二人の来訪に雪かきから逃げていた付喪神たちが一斉に顔を出す。 「りちぇ?」「しりうす?」 「ようこそー」「こそこそー」「祝、ご無事」 俄かに境内が騒がしくなる。二人の足元に群がってきた付喪神はそれぞれが好き勝手に歓迎の舞を踊っているようだ。 「付喪神ちゃんたちも元気だった?」 「危ないぞ。蹴飛ばすだろう」 一体一体を撫でていくリチェルカーレと、溜息を吐きながら纏わりつく付喪神たちを安全な場所へ移動させるシリウス。三度目ともなると付喪神のあしらい方が上手い。 「おっ、りちぇ殿。しりうす殿!」 「二人とも息災か?」 「ミズナラ様、鬼さんお久しぶりです」 ペコリと頭を下げたリチェルカーレに合わせてシリウスもまた会釈をする。ミズナラは微笑み、鬼は豪快に破顔した。 「外は寒い。中へ」 ミズナラは注連縄のかかった社殿の扉を開いた。 「それで今日は何用で?」 「お礼を言いに来たんです」 雨降小僧が運んできた茶に礼を言うとリチェルカーレは背筋を正して話を切り出した。 「先の戦いでは、助けて下さってありがとうございました」 頭を下げるリチェルカーレ。 シリウスへと視線を移せば、真摯な翡翠がひたとミズナラを見つめている。 「助力に感謝を。おかげで助かった。……ありがとうございました」 それを聞いたミズナラが感じたのは驚きと安堵であった。 ヴァンピールという種は総じて警戒心の強い者が多いと聞く。そんな青年が礼を告げた事に、ミズナラは喜びを隠しきれずにいた。 これから世界の垣根は少しずつ低くなるだろう。 必ずしも良い方向へ向かうとは限らないが、少なくともひとつ、希望が存在している事をミズナラは知ることができた。 リチェルカーレ。優しい、春の光を思わせる少女。 誰かを思いやれる強い心を持つ人の子は、頑なだった氷を溶かしつつあるようだ。 「いつか杏の咲く季節が来るかもしれぬな」 「どうした?」 「いや、ひとつの可能性を視ただけのこと」 白と枯木色の重ねをずるりと擦り、ミズナラもまた深く頭を下げ返す。 「人の子、そして夜の子よ。先の闘いで救われたのは我(わ)等のほう。おかげで長年の枷であった八百万の軛も解放された。礼を言う」 「俺たちが今も生きているのはお前さんたちが頑張ってくれたお陰だ。んでよ。そろそろ誰か、頭を上げちゃあくれねえか?」 鬼の冗談にどちらともなく笑い合う。そんな時、襖の向こうから廊下を走る足音が聞こえてきた。 「ねえ、ミズナラまだー? そろそろお祭りに行こうよー!」 「雪女さまっ、まだお客様が」 すぱーんと障子がスライドし、上から下まで白い女が顔を覗かせた。そしてリチェルカーレとシリウスの姿を見るとパッと顔を輝かせる。 「可愛い陰陽師ちゃんと夜の子だあ! はじめましてー、雪女だよー」 「は、はじめまして?」 リチェルカーレは驚いて瞬きをし、シリウスはどういう反応を取れば良いのか分からず静の表情のまま固まっている。 「そういや今日は雪祭りの日だったな」 「忘れないでよー、私頑張ったんだからー」 「近くの村で厄払いの雪祭りがある。良ければ二人とも寄っていかぬか?」 此度は帰りを急ぐ旅でもない。 リチェルカーレとシリウスは視線を交わして頷いた。 「ええ、ぜひ」 「ウフフ、着替えましょう」 「ひゃっ」 「リチェ?」 小さな悲鳴にシリウスが横を向くと、黒髪の女童が二人、リチェルカーレの両脇に控えていた。 初めて会う筈なのだが、二人とも初見の気がしない。どことなく人の足元に体当たりしてコロコロ転がって遊んでいそうな気配がある付喪神だ。 「ウフフ、やっと地底湖に落ちかけた所を救って下さった御恩返しができまする。さあさ、此方へ」 「ウフフ、殿方は村の入り口で待っていてくださいませ。『でぇと』とはそういう物でございまする」 眼を白黒させているリチェルカーレを目の前で誘拐され呆然としたシリウスだったが、困った様子の雨降小僧と狐火に袖を引かれて我に返った。 「……着替えて、村の入り口で待っていれば良いんだな?」 溜息で山が出来そうだ。 シリウスは疲れた顔で頷く狐火と雨降小僧の頭を撫でてやった。 ● 視線を感じる。 ミズナラ神や付喪神たちと共にいるからだろうかと、シリウスは視線から逃れるように銀灰色の襟巻きをかき寄せた。 宵色の表地と雪雲色の裏地を合わせた着物は加護があるのか、ぬくぬくと温かい。 締めた焦茶の帯は六華模様が刻まれ、帯から垂れた翡翠の蝙蝠が風に揺れている。巻きつけた朱紐が一筋、艶やかな結び目で黒髪を彩っていた。 「しりうす君が格好いいから、みんな見てるんだよー」 「かっこいい?」 表情を変えぬままシリウスはオウム返しに雪女が発した単語を繰り返した。まるで未知の言語と出くわしたと言わんばかりの発音に雪女は思わず笑う。 実際、見慣れぬ若武者が来たと村の中は大賑わいだ。 「りちぇ殿も来たぞ」 牛鬼の視線を追ったシリウスは両の眼を大きく開いた。 風花のなか、雪模様の白いケープが珊瑚色の振袖の上で羽衣のように踊っている。 歩くたび、耳元に流れる銀糸の連菱がしゃらりと氷鈴の音を奏でた。 リチェルカーレの流水のように美しく豊かな髪は一つに纏められ、優しい水仙の花に彩られている。 桜色の紅をさした唇と眦、酔ったように潤んだ瞳にはシリウスが映っている。 言葉を忘れていたのはどちらも同じ。 笑い声に気づいたシリウスは夢から醒めたように瞬きをすると小さな犯人たちをジロリと睨んだ。 「集合」 精神年齢年少組付喪神たちがシリウスを揶揄う裏で、ミズナラおよび年長組は静かに顔を寄せあった。 「二人の顔面偏差値の高さ、なめてたねー」 藍染の紬に袖を通した凛としたシリウス。 そして空を思わせる清楚なリチェルカーレ。 版画絵に出てきそうな気品ある二人が並べば、更に浄化師だと知られれば、あっという間に人気者として囲まれるだろう。 「これではゆっくりと観光させてやれそうもない」 「ふたりの時間は守らねえと」 楽しくニホンを見物させてやりたいという純な気持ち。 そしてあわよくば良い雰囲気にしてやりたというお節介な気持ちがコラボレーションした結果、思った以上の結果を叩き出してしまった。 「二人はお忍びでやってきた、やんごとなき身分の若君と姫君でー、二人の邪魔しちゃダメだよって村人に伝えるー?」 「そうしよう」 「合点だ。おーい。りちぇ殿、しりうす殿。俺たち何か色々忘れ物したから先に祭りを楽しんでくれ!!」 言うが早いか付喪神たちは空気の中に姿を消した。 「え?」 「何か色々って、なんだ?」 あとに残されたのは着物姿の二人。 誰もいなくなった村の入り口にぴゅるりと風が吹き抜ける。 「……あのね、シリウス」 リチェルカーレはそうっと指を持ち上げた。細い指が戸惑うように胸元で揺れてはシリウスへ向かい、最後にはきゅっと拳の中へと隠れてしまう。 「ううん、何でもない」 そう言ってリチェルカーレは控えめに微笑んだ。 感情を隠したその笑顔を見るとき、シリウスの心にはいつだって冷たさに似た小さな痛みが奔る。それが何の感情であるのか、彼にはまだ分からない。けれど。 「……迷子になると困るだろう」 差しだされた手。よく無機質だと称される青年の表情が、実は豊かであることをリチェルカーレは知っている。 「うん」 シリウスは人に触れるのが苦手だ。 だけど、手をつないでくれる。 シリウスがリチェルカーレを見る瞳は花を愛でるかのように穏やかだ。 熱くなった耳に気づかれませんようにとリチェルカーレは密やかに願い、手を取り合った。 「わぁ、大きな像。あれはミズナラ様よね。あっちは誰かしら?」 「……鬼、か?」 信仰が深いのか。それとも身近な存在なのか。村には八百万の神や妖怪を象った雪像や氷像が幾つも並んでいた。 その半分が荘厳で、後の半分はどこかコミカルだ。 リチェルカーレは瑠璃と新緑の瞳に好奇心をいっぱいつめこんで周囲を見渡した。見慣れた雪も、見知らぬ場所では新鮮に見える。 サクリ、ザクリ。パイ生地を崩すような楽しげな足音はリチェルカーレが雪道に足を取られないようにとのんびりしたリズムだ。 小さな心遣いに気づいたリチェルカーレはそっと頬をゆるめる。 「ニホンの冬は寒いと聞いていたが、嫌な寒さでは無いな」 シリウスは白い吐息を燻らせながら呟いた。 飾られた青白磁色の氷花が眩しい。透き通ったネモフィラの花のようだと思い……誰かさんの髪色にもよく似ていると心の中でシリウスは呟いた。 ――そう。とても、綺麗だ。 「そうね」 「んっ」 「どうしたの? シリウス」 あまりにもタイミング良く頷いたものだから、声に出してしまったかとシリウスの心臓がドキリと跳ねる。 「何でもない」 ふいと顔を逸らしたシリウスの心の内を知ってか知らずか。リチェルカーレは優しく目を細めてシリウスを見上げた。 「空気が澄んでいて寒いけれど綺麗。ねえ、シリウス。少し、しゃがんで?」 リチェルカーレは愛情に満ちた手つきでシリウスの髪についていた雪を払った。木の葉のようにはらはらと、雪花の欠片がすべり落ちていく。 「はい、とれた」 クスクスとした笑い声が風に混じる。雪と氷に囲まれているのに、ふたりで見ると暖かい。 夕日が白銀の世界を紫陽花色に染め、ぽつぽつと道の雪燈籠に朱色が灯りだした。 ひんやりとした世界に一瞬だけ色が溢れ、二人はそれを眺めるためにベンチへ座った。 「今年は……未来はこれからどうなるのかしら」 幻想的な光景が夜の帷に包まれていく様子を、リチェルカーレはぼんやりと見つめていた。 その指先にほんのりとした温かさが灯る。 はぐれる心配もない。転ぶ心配もない。ふれた指先は純粋な意思の元で絡まった。 リチェルカーレの手を握るとき、シリウスはいつだって、その指が壊れやすい砂糖菓子であるかのように扱う。 それが嬉しくて、少しだけ、悔しい。 「区切りはついたけれど まだやることは多そうだな」 シリウスもまた空を見上げていた。 その横顔には少しの畏れと決意が見え隠れしている。それは迷っている時の眼差しだ。 「その……今年も、よろしく」 傍にいたい。いてほしい。 リチェルカーレは控えめな一等星の不器用さを、輝きを、受け止めてきた。 だから、声無き声に応えるために。手をつないだまま、ゆっくり体重を、命の重さを隣へと預けた。 「うん、こちらこそ」 桜のようにはらはらと、月光の欠片が瞬いた。 白月からふたりへ贈られた六花の香りに満たされて、星に祝福された舞台で肩を寄せあう。 「これからもどうぞよろしくね」 「うん」 囁きを聞いたのは舞い散る雪だけ。 ふたりだけの、白い世界で。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |