~ プロローグ ~ |
「お前ら、猫は好きか?」 |
~ 解説 ~ |
猫を探してください。 |

~ ゲームマスターより ~ |
せっかくなので、楽しんでください。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目的 くろにゃんこさんの仲間を助ける 行動 昼間:分担して調査。定期的にカフェに集合、情報交換。 夜:集まった情報を元に救出作戦。 調査 飼っていた猫がいなくなった。元々リュミエールストリートで拾った野良猫なので戻っているかも。 という言い訳で、餌(非常食糧)を持って聞き込み。場所は他の人達と分担で。 人間に対しては猫が集まる場所が無いか。から猫がいなくなったりしていないかさりげなく。 ネコさん相手には正直に、他に攫われたネコさんがいないか犯人やアジトについて何か知らないか。 戦闘 アジトに裏口があればそちらに。 捕まったネコさんたちを確保または見つかった時点で突入。 魔術師は魔術道具を落とさせて魔法を邪魔するとか? |
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・昼 エフドが野良猫達から特に人気のあり、まだ犯行が起こっていない夜の店を調べる。くろにゃんこや彼とつながりのある喋る猫達から情報を集める。 ・夜 昼に調べた敵の来そうな店で、ラファエラが猫への施しをやらせてもらう。 猫と戯れるうちにやけに猫に興味を持つ酒臭い男が来たら、「あなたも猫が好きなの?」「喋る猫って本当にいるのかしら」といった風にナンパ(アビリティ使用)。あえてアジトに連れ込まれる。 ・戦闘 猫達と風呂に入りたいとでも頼んで風呂を借り、口寄魔方陣で武装。窓があればそこから猫を逃がす。なければ風呂にいてもらう。 仲間の突入騒ぎに乗じて戦闘参加。 エフドはダイヤシールドを構えてGK1で突撃。 |
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「思う存分もふもふ出来ると聞いて! 「付き添いです ■行動 ロス狼で 夜別行動前にティのTシャツ→ロスへ ∇昼 ・ロス ロリクに圧し掛かる勢いでモフモフ 満足したらベルトルド&ヨナにじゃれ付きながら 調子に乗って圧し掛かってズルズル 猫多そうな路地裏 ・匂い確認 猫の匂いで妙にこすり付け(抵抗跡?)ないか ・猫に話 黒い外套十字架を体に埋めた人の有無 猫囮の話をし 噂流す手伝いと参加のお願い 定期的にカフェで皆で待ち合わせ 来ない人がいれば様子見に ・ティ 黒猫回収 ヨナ達と探索に 行先地図見ながら相談 ・路地裏 魔力感知で猫探し 変な痕跡は? ダンボール木箱を表側へ並べ 逃走時店がある方に敵が行かないよう狭くするだけも カフェ 皆の探索場所チェック |
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◆日中 にゃんこに犯人の特徴と仲間が攫われた時どの方角に行ったか確認 その方面にあるペットショップなどに聞き込み (猫数匹を世話するなら何かと物資が必要だろうと思うので 犯人の特徴と合致する人や怪しい人がいなかったか またその周辺でも最近になって猫の鳴き声が聞こえるような建物や場所がないか聞き込み カフェで仲間と情報共有 ◆夜 にゃんこにお願いして囮になってもらう 調査中に「しゃべる猫がいる」と噂を流しておき、敵を誘き出す 見失わないよう「魔力探知」も使い尾行、アジトでの人質(猫質?)の位置確認 仲間とタイミングを合わせ突入 周辺に被害が及ばないよう通常攻撃メインで エリィは魔術師狙い、レイは猫の防衛と確保を優先 |
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●目的 終焉の夜明け団の捕縛 ●行動 ・昼 情報収集に専念 聞き込む場所は猫達が攫われた現場付近 内容は、猫達が目撃したという人物がこの界隈にいないか。またはそういった人間がどこかの建物に入ったなどの目撃情報 会話の最中にさりげなく喋る猫の噂を流す その後、猫達に周囲を調べさせて犯人の痕跡がないか探させる 終了後、集合場所にしておいたカフェへ集まり情報共有 ・夜 猫を囮に敵を追跡 アジトを発見したら隠密行動。猫の居場所を特定する その後猫の確保ができたらか、見つかったら戦闘開始 ・戦闘 前衛はセプティムが担当。見つかった瞬間【エッジスラスト】で攻撃 その後は遮蔽物を使って移動したりユウの攻撃に同調して接近。魔術師を狙って斬る |
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昼 ロス達と行動 ヨナ 狼ロスと匂い追跡。猫の臭いの付いた毛布等使う ロスさん、今のあなたは有能な探知犬…じゃなかった、狼です。この匂いを探し出してください ベルトルド シンティラの感知した怪しい場所、狭い所等率先して調べる 足場が悪い所は黙って手を差し伸べたり 夜 猫囮追跡班 目星をつけた人物の後付け魔力感知で猫達の存在を確認 ラファエラが行動を起こした気配で表から突入 逃げられたら追いかける 地理的に不利かも? ヨナ:…逃げると追いかけたくなるじゃないですか ついつい加減なしフレイム 壊れる屋台 飛び交う怒号 ベ:お前、この前の事(18話)もう忘れたのか ヨ:わ、分かってます。ただその、つい…すみません…(尻すぼみ |
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~ リザルトノベル ~ |
受付口は今や軽いカオス空間に陥っていた。 ご乱心ロリクの傍らで『エリィ・ブロッサム』は興味津々ににゃんこのふわふわ尻尾を指でちょいちょいと突く。 「いずれしっぽも二つに分かれるのデスカ!?」 「レディ、猫の嫌がることはしてはいけませんよ?」 『レイ・アクトリス』がやんわり嗜めた。 『ユウ・ブレイハート』は動物好きとして人一倍怒りに燃えていた――同時にもふりたくてうずうずして手がわきわき動いていた。 (かわいいにゃんこさんになんてことを! あと、いっぱいもふりたい!) いつもと違いいろんな意味で気合はいりまくりの相棒を『セプティム・リライズ』は冷めた目で見つめていた。指令に支障がなければ困ることはない、というのが彼の感想だ。 その傍らでは今回は報酬目当ての『エフド・ジャーファル』と『ラファエラ・デル・セニオ』は多少、辟易した顔で指令内容の説明を待っていた。 「ねぇ、はやく指令の内容を」 「まてまてまぇ~!」 どどどどとどとぇぉおおおおおおお。 エントランスに響く音。 「思う存分もふもふ出来ると聞いて!」 「付き添いです」 狼姿の『ロス・レッグ』と相棒の『シンティラ・ウェルシコロル』だ。 とぉ! ロスは、受付カウンターを飛び越え、ロリクに飛びついた。 そばにいたエリィ、ユウも思いっきりもふりの被害を被ることとなった――思いっきり、もふぅん! 「ちくちくのもふもふなのデス!」 「お日様の匂い、ふわふわする」 「へへ。エリィも、ユウもモフっていいぞぉ! ほぉら! ロリクぅ!」 「うおっ! 重いし、ちくちくした毛が! 机に大の字で乗るな書類が飛ぶ! シンティラ、こいつを止めろ!」 「がんばってもふられてください」 ロリクの腕から転がり落ち、床に転がったにゃんこの首根っこをひょいと拾い上げたのは『ベルトルド・レーヴェ』だ。 「大丈夫か?」 にゃんこは硬直し、尻尾がぶわぁと二倍に膨れ上がる。 「怖がってますよ」 『ヨナ・ミューエ』が冷静に告げると 「お、ヨナ! ベルトルド!」 ロリクを思い切りもふって尻尾をふるロスは新たなる被害者もとい友人の二人を見つけると、再び、とお! と飛んだ。 「え?」 察知したベルトルドは一歩後ろに下がって回避したが、油断して思い切りロスに倒され、尻もちをついたヨナは頬をむぅと膨らませる。 「お座り、お手、待て!」 びしっとしたヨナの命令にとたんに暴れていたロスが、びしっとお座りをして右前足を出す。 「よしよし!」 「へへへ~」 ヨナがわっしわっしと撫でるとロスは蕩けた顔をした。 「ロスさん」 「……いいのかあれで」 完全に扱いが犬。 「リート、彼は、彼らは何をしているのですか?」 『フェリックス・ロウ』は指令受付ロリクのご乱心、そしてもふりタイフーンを無表情に見つめていた。 伏せ目がちにその様子を見ている『ジークリート・ノーリッシュ』は少しだけ悩んだ口調で言葉を選んで答えた。 「え、ええと、猫さんを可愛がって、じゃなくて、猫さんに癒してもらってる、のかな。……すごく、お仕事が忙しかったのよ、たぶん」 「そうですか。仕事には休養が必要ということですね。わかりました」 「そうね、休養は必要ね」 変な誤解を与えたかもしれないとジークリートは多少、いや、かなり、不安になった。 よろ、よろ、とにゃんこが床を這って傍によってくるのに心配したジークリートは屈みこんで手を伸ばす。すると、肉球が重ねられ、にゅっと爪を出して、ジークリートの手をぎゅぅとにぎにぎしてくる。 「こわかったにゃあ」 「そ、そう」 にぎにぎ、むぎゅう。 ジークリートたちのところが安全地帯と判断して、にゃんこはジークリートの膝の上に自ら乗ってむぎゅうとしがみついた。 このままではもふって一日終わる勢いなので、ロスのことはシンティラとヨナが制し、適役ということでレイとエドフがメンバーのまとめ役となって方針を考え始めた。 まず、昼は聞き込みと調査を行うことで決定した。 ロリクから渡された地図にはにゃんこの証言をもとに猫が攫われた場所がマッピングされていた。 また今回調査で必要そうなペットショップなどの情報もきっちり書き込まれていた。あと何かの役に立つのかは不明だがネコカフェの情報もばっちり網羅済である。 「犯人に特徴とかないのデスカ?」 「ツルツルにゃあ」 「うーん……ツルツル以外になにか、こう、特徴デス」 エリィの質問ににゃんこが指さしたのはエフドだ。 「でっかいにゃ。で、お酒くさいにゃ。けど、一人だけ、なんか黒いマントを着たやついたにゃ」 にゃんこの言葉にレイは顎に右手をあて思案し、疑問を口にした。 「貴重な猫を捕まえるのに、わざわざ酒を飲むとは……もしかしたら敵の魔術師とその他は仲間というより、金で雇われただけかもしれません。だとすれば、リーダーを潰せば抵抗は少ないのでは?」 「かもな。金は万能に近いが、絶対の力じゃない」 エフドもレイの推理に賛同した。 「ええっと、では、昼間はばらけて情報を集めて、カフェで落ち合うでいいですか?」 「また会ったわね、礼儀正しいセニョリータ、それでいいと思うわ。集まった情報でさらに動く方法を決めましょう」 くすっとラファエラが口元に笑みを作る。 「お! 難しい話終わったか? もふっか」 「ロスさん、仕事ですよ。私たちは匂いを辿ろうと思います。ロスさんは鼻がきくので」 「では、言葉の情報はこちらが担当して、感覚に長けた情報を集めるのはお任せしますね」 レイが微笑む。 その横でやっぱり疑問と湧き上がる好奇心が抑えれないエリィにゃんこを膝の上において尻尾の先を指でつんつんしながら、あるアイディアを思いついた。 「にゃんこには悪いデスがしゃべる猫の噂を流して相手をおびき出すのも一つの手ではないでショウカ?」 にゃあ? とにゃんこがきょとんとする。 「囮作戦デス!」 「それはいい考えですね。にゃんこはこの大きさならそこそこ目立ちますから、十分敵を誘い出せるはずです。僕らも調査中にそれとなく噂を流してみます」 セプティムが頷く傍らでは、ユウはこっそりとにゃんこのぷにぷに腹を撫でてほんわかして、英気をしっかりと養っていた。 調査の分担と情報交換の時間帯と場所を決め、もふったりしながら、彼らはそれぞればらけることになった。 ジークフリートはリュミエールストリートで拾った野良猫がいなくなった一般人を装い、餌を持って街を回った。 客商売の店が多いのでみな愛想よく話は聞いてくれるが、野良猫をそこまで気に留めていない者が大半で、これといった目ぼしい情報はなかった。 また猫たちに声をかけようにも、彼らは仲間の失踪に警戒して、昼間はとんと姿を潜めてしまい、姿を見かけてもさっさと建物の奥へと隠れてしまった。 空振りなのは、ユウとセプティムのペアも同じであった。こちらは猫の消えた場所での聞き込みを行うが、昼と夜で客層も店も変わる場所では、これといって成果はあがらない。 ユウは、その細身のどこにそれだけの力があるのかと疑問に思える力でにゃんこを抱っこし、もふってがんばっていた。 「その、よかったらもふりますか?」 出来たら逆鱗に触れないようにと後ろ向きな付き合いをしているが、ユウはセプティムをほっておくことが出来ない。 「指令中ですよ、ユウさん」 「……猫と指令、どっちが大事なんですか」 「それは」 指令と答える前にユウがにゃんこをずいっと差し出して告げた。 「猫ですよね」 にゃあ? もふる? 「……」 これは失敗して落ち込んだとき以上に面倒なやつだ、とセプティムが判断するまで、そこまで時間は必要なかった。 エリィとレイもまた自分たちの担当エリアの情報収集を行っていたが、屋台の甘い誘惑は抗いがたい。 「アレ美味しそうデスネ!」 「レディ、真面目にやってください」 「大真面目ですケド! このあげパン、おいしいデス!」 「食べるか、しゃべるか、どっちかにしなさい」 レイははぁとため息をついて、パンの滓が頬についているエリィにハンカチを差し出す。 「おや、お二人とも、お探しものですか」 不意に声をかけられてレイは振り返った。 高級なスーツに帽子を深くかぶってた、顔ははっきりと見えないが、その見た目と雰囲気で裕福な紳士だとわかる。 「猫探しです。黒くて大きなしゃべれる猫を探しているんですが」 「ほぉ。それは心配ですね……ただあなたがたの探し物が本当に猫なのかと気になったので」 レイは相手の探りに動じないように警戒した。それを面白がるように相手は二人を見つめた。 「そちらのお嬢さんは……魔術がお好みのように伺えますが」 「どういう意味デスカ」 「猫、とくにしゃべる猫は魔術道具になるそうですよ」 道具という単語にエリィが眉を寄せた。 「ふふ、いじめすぎましたね。私はしがない商人なんですが、今回取引を中断して暇なもので、つい……お嬢さん、あなたはまだ普通の人のようだ。あらぬ疑いをかけたことはお詫びしましょう。あなた方の探し物が見つかるように」 男は目を細めて笑うと、背を向けて去って行った。 ロスを筆頭にやる気のヨナとお目付け役のシンティラとベルトルドは匂いを辿ることで調査を行っていた。 特にここ最近ヨナは暴走気味で、ベルトルドはそれとなく気にかけていた。前回反省していたので大丈夫かと思っているのだが。 「ロスさん、今のあなたは有能な探知犬……じゃなかった、狼です。猫の匂いを探し出してください」 「任せろぉ!」 ぶんぶん尻尾をふるロス。 「あれ、いいのか」 「いいんじゃないですか。ロスさん、楽しそうですし」 四人は地図で猫の失踪した店の付近――猫の匂いをメインに調査を行っていた。 猫などの小動物は自身が危機に陥るとき、仲間にそれを知らせるため、警戒の匂いを出すことがあるのだ。 くんくんとロスは湿った鼻をひくつける。 「こっちだな! ティ」 シンティラとヨナは共にエレメンツの特技である「魔力感知」を使用して、さらに小道などになにかないかを探していく。 「お、こっちだ!」 警戒心の強い猫は今やたまり場にも一匹もおらず、その点は空振りとなったがエフドたちは夜の店の調査に重点をおいた。夜に飲み屋となる店は昼の間はカフェや食堂になっていたり、店を閉めていたりするのでそれとなく近隣の店にどんな店なのか尋ねて、情報を集めていた。 「お? エフド」 「ロス。どうしてお前らが」 ロスたちの出現にエフドが片眉をあげた。 「匂いをたどったんだよー。ここ、すげー匂うんだ」 「この店、ずっと閉じているのに酔っ払いがよく、なにかの箱を持ったりして出入りしているそうよ……少し調べてみてもいいかもしれないわね」 獲物を狙う猫のように、ラファエラが笑った。 「おーい、こっち、いいもんあるぜぇ。なんか使えかなぁ」 ロスが店の脇に積まれた段ボールを前足で示した。 猫カフェに集まったメンバーは各自が持ち帰った情報からロスたちが見つけた店に狙いを定めることにした。 問題は決定打に欠けるため襲撃して、間違っていたら、犯人たちを逃してしまう可能性が高いというところだ。 悩んで沈黙するなかで、ラファエラが唇をつりあげて、口を開いた。 「私に、考えがあるわ。作戦はちょっとしたギャンブルだけど、みんな、私に賭けてくれる? 絶対に損はさせないわ」 「にゃあ! にゃんこは、このツルツルに賭けるにゃあ。お願いですにゃ、仲間を助けてくださいにゃ」 「いい覚悟だわ、ガト」 ラファエラの作戦は単純かつ大胆なものだ。 決定打がないなら、自分たちから掴めばいいのだ。今回怪しいと踏んだ店にラファエラは単独で接近することを決めた。 夜になる前に店の周辺を入念に調べ、どこになにがあるか、誰が待機し、いつのタイミングで突入するかも念入りに決めていると、すでに空は茜色に染まり、世界が顔を変え始めた。 作戦のため、薄いフリルのワンピースを身に着け、赤い口紅を唇に走らせ、ラファエラは戦闘態勢に入った。 夜。 それだけで街は顔を鮮やかに変える。太陽の出ているときは行儀よくしていた坊やは、夜になったとたんに男の本性を出すように喧噪が響く。 酒と駆け引き、轟く喧嘩と歓喜。 きらびやかな宝石よりもずっと艶めかしい。 (賞金が目当てだったけど、犯人の吠え面を拝めるのはなによりも楽しみだわ) ラファエラは今から始まる楽しみを考えてつい零れる笑みが抑えられなかった。 「大丈夫にゃぁ?」 店の近くの小道で間抜けな悪党をつるため一緒に囮となっているにゃんこがラファエラに問いかける。 「あら、不安なの? ガト」 「ツルツル、危なくないかにゃ」 「ガト、あなたは私たちに賭けたのよ。だから安心しなさい」 ラファエラは自分の背後で気配を感じた。横目で盗み見れば屈強な男が二人ほど酒瓶を片手ににやにやと吟味する視線を向けている。 その視線は腹立しいこの上ないが、ラファエラはにゃんこを胸の中に抱いた。 「そんな秋波を送るばかりじゃ、私みたいな女は鈍感だから何もわからないわよ」 ふくよかな胸や細いくびれを最大限に見せるため、――あとみんながもふっていたのに参加できなかったのも含めて、にゃんこをもふりながらラファエラは微笑みかける。 男たちの視線は狙い通り、釘付けとなる。 「あなた達って猫の愛護団体か何か?」 「いや、お嬢さん、あんたの抱いてる、猫は」 「なんだにゃあ」 にゃんこがしゃべると男たちの顔色が一瞬変わった。それをラファエラは見逃さなかった。 「おしゃべりしていたのよ。あなたたちも? わかるわよ。こんな荒んだ大都会じゃ、本当に愛せるものなんて限られてるもの。この子とかね」 もふもふの毛に顔を埋めてラファエラが囁くように呟く。 「よかったら、私たちと遊ばない?」 男の一人が赤い顔でにやにやと笑うのに、もう一人が、しかし、と呟いて警戒しているのにラファエラが可愛らしく小首を傾げて、魅力的な視線を向けた。 「おい、いいだろう、どうせ、こんな小娘だしな」 渋る仲間の警戒をもう一人は鼻で笑い、ラファエラの肩に腕をまわしてきた。 「この店の店主と知り合いなんだよ。その猫もぜひとも」 肘鉄をくわえたい気持ちを我慢してラファエラは男たちに誘われるまま、店のドアをくぐった。 店はカウンターとテーブルが並んだ、なんの変哲もない酒場のようだった。特にこれといって目につくものはなく、空振りかと思ったとき、奥の部屋から――にゃあ――とか細い声が聞こえた。 にゃんこの耳がぴんっと立ち、駆けだそうとするのをラファエラは強く抱きしめて制した。 「好きに飲むといいぜ」 「その前にシャワーはある? 外は暑くて汗でべとべとなのよ」 にゃんこを抱いたままラファエラが甘えた口調で言うと男が喉を鳴らす。 「なら奥にあるぜ。なんなら、俺が洗って」 「煩い! ああ、くそ、あいつ、いきなり取引中止なんて言い出しやがって!」 猫の鳴き声が聞こえた部屋のドアを開けられ、黒いマントをかぶった男が現れたのに酔っ払いたちがバツ悪そうにする。 すると男はラファエラのなかにいるにゃんこに目を止めた。 「猫! ……それも、なんてデブかわ……いや、いい。猫はいいが、なんだその女は、あまり遊ぶなと言ったはずだぞ!」 止める間もなく、にゃんこが男の手に奪われる。にゃあんとにゃんこが爪を出して必死にしがみつこうとするが、乱暴に引き離されてしまったのをラファエラは苦々しく睨みつけた。 男はにゃんこを抱えて、さっさと奥の部屋に引っ込んでしまった。 「ふん、猫のなにがそんなにいいのかね。あの男も、まぁ、金はしっかり払ってくれるが、ほら、風呂場はあっちだ。汗を流したら楽しもうぜぇ」 「……ええ、そうね」 「お! 匂いだぁ!」 ロスが尻尾をぶんぶんする。 今回潜入するラファエラには植物学に長けたベルトルドが匂い袋を事前に渡しておいたのだ。 潜入捜査などで連絡をとれる手段が限られているとき、ベルトルドのように嗅覚が鋭い者にのみ通じる秘密の連絡方法だ。 エフドが盾を持ち、目配せする。すぐにドアの前へとレイが進み、鍵開けを試みる。 少しばかり手間取ったが、たいした鍵ではなかったのかすぐにかちりとあく音がする。 「開きました。では、礼儀正しく参りましょうか、諸君、レディ」 「レイさん、どこでそんな技術覚えたんデスカ」 「内緒です」 などとやりとりするなかエフドが先陣を切る。 狭い店で猛進するエフドを止めるものはない。むしろ、油断していた男たちは突然の珍客に面食らう。 「今だ!」 エフドの声にセプティムが前へと駆ける。その刃に驚いた男が後ろに逃げると、その手にもっていた酒瓶が真っ二つに切り落とされる。中身の液体が宙に散り、いきなり炎にかわる。 「フレイムデース!」 「やりすぎないでくださいね」 レイは絶妙なタイミングでエリィを制することを忘れない。 「にゃんこさんは!」 心配するユウはきょろきょろと視線をさ迷わせる。 「奥よ! あなた達ついてるわねぇ。教団は寛大にも、殺しはしないと仰せよ? 安全な教団地下での夢の税金生活に死ぬまで感謝なさい!」 仲間の襲撃の音を聞きつけたラファエラはドアを蹴破り、ボウガンを構えて声をあげた。 男二人は苦々しい顔をして棚に無造作においてあった酒瓶を投げつけてくる。燃える炎のこともあり、エフドが盾を握ろうとした瞬間、酒瓶がくるんっと逆方向に向かって飛んだ。 「援護は任せてください」 「……助かる」 レイのリヴァース・フォーチュンの援護にエフドは短く礼を口にすると、自棄になって向かってくる男の一人を盾で弾き飛ばすタイミングで、ラファエラに視線を向けた。 「存分に踊りなさい!」 矢が飛び、宙を舞う酒瓶を貫き、アルコールが飛び散る。 「フレイームデース! 力はおさえてマース!」 エリィは威力を抑えるかわりにアルコールに炎をつけた。さながら炎の雨となって男たちを襲い、熱と痛みに踊らせる。その隙をついてセプティムの確実な一撃が男たちを沈めた。 「奥のドアに、にゃんこさんが……!」 ばーん、とユウが勢いよくドアを開けると、そこには――黒マントの男がにゃんこを両腕に抱いてもふっている。 「にゃあああん、たすけてぇえええ」 可憐なにゃんこの叫び。 ――ぷちん。 いま、ユウのなかでキレてはいけない何かが切れた。 ユウは杖を握り、高速で呪文を唱え、プロージョンを己へと施すと駆けだした。 それは普段は表情らしい表情のないセプティムが思わず目を見開いて驚くほどの俊敏さと思い切りの良い行動であった。 「にゃんこさんの敵!」 思いっきり、杖で殴った。 「おい、お前の相方、杖で殴ったぞ」 「……。……。……指令に支障がないならいいです」 エフドが思わずつっこむが、さらっとセプティムは流した。 「猫の敵! 猫の敵!」 「あいた、いっっ! なめるなぁ! ハンド・メス!」 「きゃあ!」 ユウを弾き飛ばした男は苦々しく舌打ちをこぼす。その片手は魔力を纏わせ、薄っすらと残酷な光を帯びる。 「くそ!」 男がさらに声をあげ、部屋の窓から外の裏道へと駆けていこうとしたのだが、進むべき道が段ボールで塞がっている。 男が驚くのに対して、待機していたジークリートたちが武器を構え、挟み撃ちにする。 「投降しなさい!」 ヨナが声をあげるのに男がさらに魔術を使おうとしたのをフェリックスの鎌が伸び、乱暴に邪魔をした。 男は舌打ちすると攻撃ではなく逃げの一手へと切り替えた。にゃんこを片手に抱えなおし、段ボールの上へとするりと足軽く駆け上る。 「まてぇ!」 ロスとヨナが声をあげた。 「おい、ヨナ」 「待ってください、ロスさん!」 制する二人を聞かず、逃げれば追いたくなる性に従い手加減なしのフレイムをヨナが放つ。 まるで獲物を狙う蛇のように執拗に追いかけてくる炎を男は、狭い通路をじぐざくに走り逃げる上、わざと表通りに出ると屋台などを乱暴に倒して追跡づらくさせる。 「ロスさん上です!」 ヨナが声をあげ、ロスは転がる段ボールを踏み台に、屋台の屋根に飛び乗り、その上を走っていく。 怒声、混乱の伴奏が響くなか、ロスは逃げる男のほぼ真横まで行くと、斧を強く握り、宙へと軽やかにとんだ。 「にゃんこー! 逃げろ!」 にゃあん! にゃんこは叫び、自分を捕まえる男の手を噛みつき、拘束が緩んだのに跳んで逃げた。 「にゃんこさん!」 ジークリートが両手を広げて、にゃんこをしっかりとキャッチした。 にゃんこに気を取られていた男はロスが落下してくるのに避ける手立てがなく、叩き潰された。 「……ひどいことになったな」 あれほど派手なことするなと釘をさしたのにもかかわらず、このありさまにベルトルドは頭を抱えた。 「ロスさんですから」 シンティラは得意のダンスの足さばきで人込みを避けつつ、負傷者の回復へと急いだ。 「互いに苦労するな。ほら、ぶつからないように、俺の脇を通るといい」 さりげなく壁側を走るように庇うベルトルドの気遣いにシンティラは目じりを緩めた。 「今回、屋台から被害のお便りがきていてな。ロス、ヨナ、なにか申し開きはあるか?」 「……」 「……」 ロスとヨナはエントランスで正座をしてくどくどとロリクから説教を受けていた。 犯人を無事に捕まえ、猫たちは自由になったのだが、屋台は壊れるわ、通行人がパニックになるわの一時だけだが大騒動を起こしてしまった。 やらかしたのは犯人だが、それでも多少の責任というか、原因はある。 「すいません」 「ロリクぅ、俺のこともふっていいぜっ」 「シンティラ、ベルトルド、頼むから今後はこいつらをしっかり見張ってろよ!」 教訓・この二人は一緒にしてはいけない、止める奴がいない。 保護された猫たちは無事であった。むしろ、ものすごくかわいがられていた。 「なんでも魔術道具の材料にしようとして捕まえたんだが、土壇場で取引相手から逃げられるし、犯人が猫のあまりの可愛さに目が眩んでもふりまくっていたそうだ」 ロリクの説明にエリィは目を瞬かせる。 「つまり、もふり天国していたわけでデスカ」 「なんて羨ま……いえ、許せないことを」 ユウは保護したにゃんこたちを優しく介抱し、犯人に対する怒りに拳を握りしめた。 「みなさん、ありがとうですにゃん。おかげでみんな無事ですにゃあ! お礼にいつでももふっていいにゃあ」 かわいらしい依頼主は大変満足し、尻尾をぴんとたてて協力してくれた浄化師たちにお礼を口にした。
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*** 活躍者 *** |
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[27] エリィ・ブロッサム 2018/07/30-22:24
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[26] ラファエラ・デル・セニオ 2018/07/30-21:53
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[25] ベルトルド・レーヴェ 2018/07/30-20:48 | ||
[24] ロス・レッグ 2018/07/30-20:36 | ||
[23] セプティム・リライズ 2018/07/30-08:52
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[22] ロス・レッグ 2018/07/29-23:02 | ||
[21] ヨナ・ミューエ 2018/07/29-21:41 | ||
[20] ロス・レッグ 2018/07/29-20:22 | ||
[19] ジークリート・ノーリッシュ 2018/07/29-19:07
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[18] ロス・レッグ 2018/07/29-12:40 | ||
[17] ベルトルド・レーヴェ 2018/07/28-17:59 | ||
[16] ロス・レッグ 2018/07/28-08:25 | ||
[15] ロス・レッグ 2018/07/27-23:22 | ||
[14] ラファエラ・デル・セニオ 2018/07/27-20:43
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[13] ベルトルド・レーヴェ 2018/07/27-03:34 | ||
[12] エリィ・ブロッサム 2018/07/26-22:41 | ||
[11] ロス・レッグ 2018/07/26-19:57 | ||
[10] ラファエラ・デル・セニオ 2018/07/26-12:52
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[9] ベルトルド・レーヴェ 2018/07/26-02:00 | ||
[8] ジークリート・ノーリッシュ 2018/07/26-00:05 | ||
[7] ラファエラ・デル・セニオ 2018/07/25-22:03
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[6] セプティム・リライズ 2018/07/25-22:02 | ||
[5] ロス・レッグ 2018/07/25-21:46
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[4] ロス・レッグ 2018/07/25-20:40 | ||
[3] エリィ・ブロッサム 2018/07/25-15:31 | ||
[2] ジークリート・ノーリッシュ 2018/07/24-22:00 |