~ プロローグ ~ |
チクタク、チクタク、チクタク……チクタク。 |
~ 解説 ~ |
みなさんのレティシアです。 |
~ ゲームマスターより ~ |
初めまして、伊吹猫です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
カフェねぇ、こういうのって競争するから良いんだろ? 売り上げがないってことは、他の店に負けたってことだし、放っておいてもよくね? ふーん、そういうことなら、まぁ一口。 !!!! うっっま、なんだこれ。こんな店潰すとかもったいねー! ヅラとかはぶっちゃけどーでも良いけど、店の宣伝はするぞナニカ! 宣伝ならまかせろー! マリオネッターの技術はこういう時にも使えるんだよな。 人形がビラ配ってたら、面白いだろ? 人が集まったら、なんか他の料理もくれよな! |
||||||||
|
||||||||
ウィッグは、わからないなぁ。 うーん、こうなるとお客さんを呼び込むのが良いよね。 え、ここリン、来たことあるんだ。 そっか、そんなに美味しいなら潰れないでほしいよね。 僕達は、チラシ配りより、呼び込みの方しようか。 表通りでもちょっとわかりにくい?のかなとおもうから、お店の場所を呼び込んでみよう。 大体、みんな表通りの噴水あたりでたむろしてるからね。 割引は、ちょっと根本的な解決にはならないと思うから、 うん、頑張って呼び込もう! |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
● リュミエールストリートは、平日であるのに騒がしいほどの賑わいを見せている。人の間を縫うように『キールアイン・ギルフォード』と『ナニーリカ・ギルフォード』は、指令のあった店である茜喫茶を目指して歩いていた。 その道すがらのことである。 「カフェねぇ、こういうのって競争するから良いんだろ? 客が少なくて、売り上げがないってことは、他の店に負けたってことだし、放っておいても良くね?」 「そう言わないでよ、キル。美味しいのと、繁盛しているのは必ずイコールじゃないからねー。それに美味しいお店がなくなるのは、寂しいじゃない?」 「そう言うもん?」 「そう言うものなの! 本当に美味しいんだから!」 キールアインとナニーリカが茜喫茶に着き、中に入ろうとすると、カランコロン。と扉を開けた時に、ベルが鳴った。 ウェイトレスであるレティシアに案内され、テーブルに着くと、すぐにナニーリカがメニューに書いてある茜喫茶の一番人気の料理をキールアインのために注文し、ナニーリカは、店主の自慢の紅茶をホットミルクティーで注文した。 キールアインのために運ばれてきたものは、オムハヤシ。茜喫茶の店主が食材から選りすぐって作ったこだわりの逸品だ。 ナニーリカは、運ばれてきた紅茶にミルクで円を描きながら言った。 「まぁまぁ、ともあれ、疑うなら食べてみたら? 宣伝するにも、少なくとも料理の味は知らないと、だからね」 「ふーん、そういうことなら」 キールアインは、怪しんでいた。繁盛している店であるならば、昼時の店内にこんなに人が少ないはずがない。昼時に少ない理由は、料理がまずいからだと。 スプーンを持って、目の前にあるオムハヤシを見た。オムライスは、ふわトロの卵に綺麗に包まれており、その周りにハヤシソースと少しのミルクがかけられている。 「見た目は合格だな……」 匂いを嗅いでみた。湯気とともにハヤシソースの数種類のスパイスが鼻をくすぐる。キールアインの食欲のスイッチを入れるには十分すぎる刺激であった。 「匂いも悪くねー……。まあ一口……」 スプーンでオムライスを一口サイズに分ければ、顔を出すバターライス。それをハヤシソースにたっぷりとつけ、口に頬張る。途端、目を見開いた。 「!!!! うっっま、なんだこれ。こんな店潰すとかもったいねー! 正直ヅラとか聞いた時には、ぶっちゃけどーでも良かったし、かんけーねぇだろって思ったけど、店の宣伝はするぞナニカ!」 「ふふ、清々しいほどの手のひら返しー! お金があれば、ウィッグも良いの買えるもんね」 夢中になってオムハヤシを頬張るキールアインをナニーリカは、ミルクティーを持ちながら、温かな目で見ていた。 オムハヤシは、みるみるうちに減ってゆき、綺麗さっぱり無くなると、キールアインが言った。 「宣伝ならまかせろー! マリオネッターの技術はこういう時にも使えるんだよな」 「そういえば、マリオネッターって、元々曲芸として使われていたってほんと?」 「よく知ってるな。元々は、魔術師の国家資格を持つ大道芸人の曲芸の技術だから、こういうのにも向いてるし、人形がビラ配ってたら、面白いだろ?」 「うん、確かに面白いね。私も手伝うよ。いつも人の波に隠れる側だから、こうやって目立つのも新鮮だね」 そういうと、キールアインは立ち上がり、カウンターテーブルにいる店主の元へ一直線に向かった。 「人が集まったら、なんか他の料理もご馳走してくれよな!」 店主は、もちろんだ、いつでもきてくれて構わないと答えると、ナニーリカが言った。 「現金だねー、キルは。でも、このお店美味しいから、私も頂きたいけどね」 とキールアインを見て笑みを洩らした。 キールアインとナニーリカは、リュミエールストリートの表通りでビラをまくことにした。お店からも近く、比較的人通りの多い場所に陣をとることに成功した。 キールアインがドールの準備をしながら言った。 「ナニカ! 人の気を引いてくれよ。曲芸中、俺は、あんまり喋らないから! 人形に目を向けてさせるだけで良い!」 「わかったー。まぁ、行くよ!」 「たのんだ」 ストリートには、楽しそうに話す声、足音、衣擦れの音、風が細い路地を通る時のびゅっという音など、雑多な音が辺りから聞こえてくる。 並大抵の音では、気にも留めずに去っていってしまうことが容易に想像できた。 そんな場所であるのにナニーリカは、人目を引くためにただ単に手を数回叩くだけだった。それしかしなかった。 しかし、その簡単そうな行為とは反対にとても響く音だった。ひょっとすると、この場で一番大きい音だったかもしれない。 ドラム音かと思ってしまうような音に、一瞬その場が静かになった。その機を逃さずにナニーリカが言った。 「みなさーん。ここにいるのは、人形遣い。今から、人形遣いによる楽しい曲芸をお見せします」 通り過ぎようとしていた人たちは、一同に足を止めて、声を上げるナニーリカのことを見た後に、キールアインの足元にあるドールに目を遣る。 ドールは――キールアインは――立ち止まる人の間を縫うように進んでゆく。ただのドールは、まるで社交界で輝きを放ちながら踊っている淑女のように、そして、時には、好きな夕食が出るのだと聞いて、思わずスキップをしてしまう幼女のように動き回った。 「キル……、すごい」 ドールは、視線を下に向けて立ち止まる人に一枚一枚、お店の詳細が書かれたビラを配ってゆく、その小さく愛らしいドールから手渡されるビラを断れるものなどいるはずがなく、人は受け取ってしまっていた。 「みなさん。カフェ『チェーロ・ロッソ・デル・トラモント』は、ここよりすぐです。ぜひ、お越しください」 と、ナニーリカが言うと、それに合わせるようにドールも令嬢のように可愛らしくお辞儀をした。 同様のことをキールアインとナニーリカがドールを使って繰り返すと、瞬く間に用意していたビラは、無くなっていた。 「やったねー。これでだいぶ繁盛しているんじゃない?」 「これで、食べ放題だ!」 「もう、本当に現金なんだから!」 翌日、人が多いだろう時間を避けて、茜喫茶に向かった。 カランコロン。と昨日と同じようにベルが鳴った。そして、店に入るとキールアインとナニーリカは、昨日と同じテーブル席に座ると、まずはと、昨日と同じものを注文した。 しかし、昨日とは違い、ウェイトレスのレティシアは忙しそうに注文を取りにあちこち歩き回っている。 「忙しそうだね。よかった、よかった」 「お腹すいた……」 「もう、すっかりここのファンね」 昨日と違うことは、店の繁盛だけではない。その一つに注文した料理は、レティシアではなく、店主が運んできた。 「お待たせしました。みなさんのおかげでこの繁盛。これで安泰です。約束どおり、たくさん食べて行ってください」 「それはよかったぁ! それじゃあ、お言葉に甘えて……」 と、ナニーリカが店主の顔を見ると固まった。 また、キールアインはスプーンでオムハヤシを食べようとしているところで、異変を察して正面を見るとナニーリカが止まっているのを見た。おかしいと思い、その視線の先に目を向けると、同じように固まった。 「「え?」」 と、二人が揃ってそういうと、ナニーリカが慌てたように口を開いた――。 店主が立ち去ると、ナニーリカは、小さくキールアインにだけ聞こえる声で言った。 「なにあの頭。絶対おかしい。変だよ」 「毛を増やせば、いいってもんじゃないだろ。でも、マスコットには向いているかも」 と、キールアインがツッコむと、湯気が立ち込めるオムハヤシを勢いよくかっこむ。 「やっぱり、ここの料理サイコー! なくならなくてよかった!」 「ふふ。本っ当、清々しいほどの手のひら返しねー!」 と、優しく言った。 ● 茜喫茶の窓際のテーブル席に座り、どうやって宣伝をしようかと相談をしている『マイス・フォルテ』と『リン・リレーロ』の二人がいる。マイスが腕組みをして物思いにふけていると、気を利かせたように茜喫茶の店主がコーヒーを差し入れた。 「ありがとうございます」 とマイスが言うと、それに合わせてリンは会釈をした。そして、店主がにっこりと微笑んでから、奥の方に消えていく。今日も茜喫茶は人が少ないらしい。 「正直、ウィッグは、わからないなぁ」 といったのは、マイスだった。 「そうだね。ウィッグは、好みもあるだろうし、まずはお金の問題を解決したいかな」 「うーん、そうなるとウィッグのことは置いといて、宣伝をしたいところだね」 「うん、お客さんにこのお店のことをたくさん知ってもらった方がいいよ」 リンは差し入れされたコーヒーに砂糖を好みの分量を入れると、右手に持っているティースプーンでゆっくりとかき混ぜながらいった。 「アタシ、なんどかここでお世話になっているしね。潰れて欲しくないんだよね」 「え、ここリン、来たことあるんだ!」 リンは、砂糖が溶けたのを見計らうと、フーフーとコーヒーを冷まして口に含んだ。 「うん。美味しい」 と呟く。 その様子を直視できなかったマイスは、目を泳がせてしまっていたが、落ち着くために、リンと同じようにコーヒーを口に含んだ。 「指令の時に立ち寄ったりしてたからさ。アタシって、もともとシャドウ・ガルテンの出身だから、この国の料理も興味あってさ。たまたまなんとなくで入ったこのお店が好きになっちゃったんだ」 「そっか、そんなに美味しいなら潰れないでほしいよね」 リンがいつにもなく寂しそうな顔をしていることにマイスは気がついた。 「僕たちは、チラシ配りより、呼び込みの方しようか。ここは、表通りでもちょっとわかりにくい? のかなと思うから、お店の場所まで呼び込んでみよう」 「そうだね、代表的な料理の宣伝も合わせてしよっか」 リンは、いつになく積極的に作戦の提案をするマイスを少しだけ頼もしいと感じていた。 マイスは、さらに宣伝方法を詰める。 「大体、みんな表通りの噴水あたりでたむろしているからね。あそこがいいんじゃないかな?」 「そうだね、いいんじゃないか。それと割引とかは、どうする?」 「うーん。割引……。割引は、ちょっと根本的な解決にはならないと思うから、しなくてもいいかな」 「うん、割引は結局採算取れないだろうからね」 「よし、頑張って呼び込もう!」 リンは、張り切っているマイスを見て、少しだけ微笑んだ。 「そうだね。その調子だと、すごく繁盛しそう。そうだ! 呼び込み頑張りすぎて、お店があまりにも人が増えすぎて回らなかったら、お店のお手伝いでもしてみようか」 「いいね」 リンが、マイスの言葉に頷き、残っていたコーヒーを飲み干すと、立ち上がった。 「さぁ、やろうか」 カランコロン。と扉のベルが二人を見送った。 ここは、リュミエールストリートにある噴水。そこでなにやら、キラキラと光るものがあった。おそらく、噴水の水の反射だけではない。 マイスは、その光に心惹かれて、のぞいてみると多くの硬貨が投げ込まれていたことに気がついた。 「リン、見てよ」 とマイスがリンを手招きで呼び寄せた。 水と硬貨は、お昼時をすぎて傾き始めた陽射しを反射していた。 ここには、哀しい顔をしている人や怒った顔をしている人などは、見受けられない。いや、そういった人たちには、この場所が似合わなかった。誰もが綺麗な光景を背景に談笑をし、笑い合って、和やかに過ぎる時を満喫しているのだ。 「なんとも、綺麗なところだね」 リンは、マイスの手招きにゆっくりと近づいてゆき、伸びをしながら、その空気を肌身に感じていた。 「そうだね。とっても綺麗だ」 マイスは、リンの方をちらっと見て微笑んでいた。それに気づいて、リンは小さな声を漏らした。 「え?」 「凛……」 リンは、自分の名前が言われたのかと思って、少しだけ鼓動が弾んだが、その後に続く言葉があることがわかった。 「……とした雰囲気で、堂々としている。きっと、この場所じゃなかったら、ここまでの存在感がないって思えるよ。時間が違ったら、また陽射しの関係でいろんな色を見せてくれるんじゃない……かな。また違う時間に来てみたい」 勘違いだと気がついてリンは、マイスに少し笑って見せた。 「うん、そうだね。アタシもまた来てみたくなっちゃったよ」 マイスもまた、リンがこちらをみて笑っていることに気がついた。そこで、マイスは、誰と? と言いたくなったが、その言葉を飲み込んだ。 なぜなら、リンがすでにマイスの隣から噴水の近くでたむろしている人たちのところに向かっていたからだ。 それをみたマイスもまあいいかと思い、リンと同じように呼び込みをしようと話しかけていた。 「すみません。ちょっといいですか? 落ち着く場所をお探しなら、この近くにカフェ『チェーロ・ロッソ・デル・トラモント』があるんです。とっても雰囲気のいいところで、料理も美味しい。お店のオススメはオムハヤシなんですが、もちろん、カフェですので、デザートの種類も豊富なんです。ご興味ありませんか?」 二組の男女に声をかけていた。 「えーと。チェーロ……ロっでる?」 「少し言いづらいですよね。皆さんは茜喫茶って呼んでます」 「っあ! そこ知ってます。行ってみたかったんですけど、場所がわからなくて……」 「よろしければ、ご案内しますよ」 「はい! よろしくお願いします」 と、マイスはなんなく呼び込みに成功した。二組四人のお客を案内する最中にリンの様子をみてみたが、どうやらリンも呼び込みには成功していたようで、同じように茜喫茶まで案内をしている最中のようだった。 二人は、お客を案内し、噴水まで戻り、呼び込みをする。それを幾度と繰り返せば、次第にお店の中は、昼過ぎの頃とは比べ物にならないほどに、人の行き交いが活発になっていた。 「アタシたち、少し頑張りすぎたみたいだね」 「そう……だね。レティシアさんの処理能力が追いついてないみたい」 「よーし。お店のお手伝いをしようか!」 「うん。そうしよう!」 と珍しく賑わう茜喫茶のウェイトレスとして、マイスとリンは素晴らしい働きを見せた――。 昨日、店を去る前に店主は、ご馳走したいから、いつでもいいから来てくれと言ってきた。その言葉に甘える形で、マイスとリンは、再び茜喫茶に訪れていた。 少し昼の時間を外したが、いまだに店内は多くの賑わいを見せている。 店主は、二人が来たことを認めると、コーヒーを二つ持ってきた。 「昨日は、ありがとうございます。おかげでこの繁盛。感謝しても仕切れないな。今日は、なんでも注文していってください。ご馳走させて欲しい」 「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもら……います?」 マイスは、少し戸惑った。しかし、それでも無理矢理にでも、最後まで行ったことは賞賛に値する。 「マイスは、すごいね。あの頭を見ても笑わずにいるなんて……」 「僕は、ウィッグのことはわからないけど、あれはおかしいんじゃないかなぁ」 「まぁ……、人の好みは色々あるってことかな」 と、リンは出されたコーヒーに砂糖を入れて、口に含んだ。 「うん。やっぱり、美味しい」 とリンは、小さくつぶやき、微笑んだ。 その様子を見て、マイスはこの指令を受けてよかったと思うのだった。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||
該当者なし |
|