~ プロローグ ~ |
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
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~ 解説 ~ |
現代社会とは、起源などが異なっていますが、基本的なイメージは同様のイベント内容になっています。
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~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル『聖なる夜に祝福を!』の対象エピソードです。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【11】 きらきら輝く光に 「わあ」と小さく歓声 見てシリウス すごく綺麗! 光の花が広がるように見える地面を 弾むように何歩か歩いて 満面の笑みで彼を見る イルミネーションと 雪のせいかしら いつもより明るく見えるわ 不思議そうな問いに小さく笑う 特別綺麗なイルミネーションが見られると聞いたの クリスマスの夜の灯りって 何だかわくわくするでしょう? 一緒に見に来たかったから 「どこでもいい」って言ってくれたから ここに決めたけれど… シリウスこそ ここで良かった? 返ってきた応えに笑顔 光の道を 彼と二人歩く 自分を見るシリウスの目が とても優しく見えることが嬉しい 名前を呼ばれ 彼を振り仰ぐ なあに? 差し出された包みに目を丸く ーありがとう!とっても嬉しい 満面の笑みでお礼 ほっとしたようなため息に笑い声を シリウス 緊張してる 本当にありがとう こんな綺麗なプレゼント初めて 思わず彼にきゅっと抱きつく 一拍遅れ 包み込む暖かさと彼の腕に真っ赤に |
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~ リザルトノベル ~ |
常夜の国、シャドウ・ガルテン――陽光射さぬ土地だからこそ、其処に住む者たちは光に焦がれ、様々な光で世界を彩ることに情熱を傾けたのだろう。首都カーミラにあるルミナス広場では、外界から齎されたクリスマスの文化も取り入れて、色とりどりのイルミネーションが道往くひとびとの目を楽しませていた。 「わぁ……すごく綺麗!」 花綻ぶような笑みを浮かべて歓声をあげる、リチェルカーレ・リモージュもそのひとりであり――銀青の髪を夜空に躍らせる少女は、まるで光の花畑が広がっているかのような地面を、弾むような足取りで歩いていく。 (……まるで、兎みたいだ) そんなリチェルカーレの様子を見つめる、シリウス・セイアッドは、そう思って微かに表情を緩めたものの。「何か言った?」と此方を振り返って首を傾げた彼女へは、無言で首を振り、普段の無機質な貌を形作ろうと努めることにした。 「イルミネーションと雪のせいかしら。いつもより明るく見えるわね」 「……本当にここで良かったのか? 他にも行ける場所はあったのに」 最近国交が回復したばかりと言うこともあり、シャドウ・ガルテンに足を運ぶ者は未だ少なく、娯楽にも乏しいと聞く。――が、そんなシリウスの問いに、リチェルカーレは小さく笑って、雪と戯れるように両手を広げつつ頷いた。 「ええ、特別綺麗なイルミネーションが見られるって聞いたの。……クリスマスの夜の灯りって、何だかわくわくするでしょう?」 ――それに、シリウスと一緒に見に来たかったから。続けるリチェルカーレの声は、不意に灯った頬の熱に紛れて、唇の中で溶けてしまったけれど。 「そんなものか? 俺には良く分からないが」 首を傾げつつ相槌を打つシリウスだったが、こうして楽しそうな様子のリチェルカーレを見ているのは嫌ではなかった。アレイスター・エリファスの生誕祭――だから特に何がある訳でも無いとは思うが、この祝日に際し束の間の休息が指令として与えられたのなら従おう、と思っていた、筈だ。 「どこでもいいって言ってくれたから、ここに決めたけれど……シリウスこそ、ここで良かった?」 ――けれど今、リチェルカーレの花のような笑顔や、輝く青と碧の瞳が、自分に向けられるのを嬉しく思ってしまう。 「……ああ」 ぶっきらぼうに返ってきた、そのシリウスの首肯にリチェルカーレは笑顔を見せると、ふたりは連れ立って光の道を歩いていく。 色彩豊かなイルミネーションが魔法をかけてくれたのだろうか、自分を見るシリウスの目がとても優しく見えることがリチェルカーレには嬉しくて――一方でシリウスの方はと言えば、己の裡に生じた気持ちの変化に、微かな戸惑いを隠せずにいた。 (失いたくないから、大切なものは作らない――ずっとそう誓っていた筈なのに) ――だって、自分が失いたくないと思っていた人たちは皆みんな、死んでしまったから。自分が想いを寄せることで、大切なひとに不幸を招いてしまうのなら、誰とも関わらずに居よう――心を寄せる存在なんて作らないようにしようと、決めていたのに。 「シリウス、どうかしたの……?」 無邪気に此方を見上げてくるリチェルカーレの瞳に、ふっと過ぎし日の惨劇の光景が重なった。もし彼女が目の前でいのちを散らし、自分はそれを成す術も無く見ていることしか出来なかったとしたら。 嗚呼――優しいリチェルカーレのことだ。彼女は誰かを責めることもせず、ただ微笑んで他人の幸せを願いながら逝ってしまうのだろう。 ――馬鹿なことを考えるな、と自分に言い聞かせてみても、矛盾に揺れるシリウスの心はいつしか、切ないまでの痛みを訴えてくる。 (いや……もう少しだけ、リチェと。彼女は浄化師の片割れなのだから) そう、これはあくまで自分たちに与えられた指令だからと、シリウスは子供じみた言い訳を心の中で呟いて。何でもない、と言うように頷いた後、彼は広場の中央に立つ大きな大樹へゆっくりと背を預けた。 まるでクリスマスツリーのように人工の光で彩られた大樹を、頬を染めて見上げるリチェルカーレ――そんな彼女の様子に少し魅入りつつ、シリウスは己の半身たる少女の名を呼ぶ。 「なあに?」 「……これ、誕生日祝い。気に入るかどうか、わからないが」 瞬きひとつしてから振り向くリチェルカーレと向き合って、シリウスはプレゼントの包みを彼女に手渡した。目を丸くしたリチェルカーレが、丁寧にその包みを開いてみれば――其処から覗いたのは、青い石のあしらわれた、花と翼のレリーフが描かれた髪飾り。 「……ありがとう! とっても嬉しい」 ふわりと笑顔の花を咲かせるリチェルカーレの貌は、常夜に灯る光よりも眩しく輝いていて。その様子にシリウスがほっと溜息を零すと、リチェルカーレは思わず鈴の音のような笑い声をあげてしまった。 「ふふ、シリウス、緊張してる」 「……俺でも人並に、緊張くらいする」 困ったように――それでも、ほんの少し口の端をあげて苦笑するシリウスが、何だかとっても愛おしい。照れ隠しのように、彼がそっと自分の頭を撫でて髪飾りを留めてくれた所で、リチェルカーレは思わずきゅっとシリウスに抱きつき――その頼もしい胸の中に飛び込んでいた。 「……本当に、ありがとう。こんな綺麗なプレゼントは初めて」 ――リチェルカーレは気付かなかっただろう。彼女の華奢でちいさな身体を抱きしめたシリウスが、驚いたように目を見開いて――戸惑いながらもゆっくりと、軽くその背に手を回したことを。 「……誕生日おめでとう、リチェ」 けれど、ちいさな声で囁かれた彼の声は、はっきりとリチェルカーレに届いたのだ。其処に込められた優しさとぬくもり、そして自分を包み込む温かさも――一拍遅れて頬がかぁっと熱を持つが、シリウスの腕を振り払うことなど、出来る筈が無い。 (シリウス……私の誕生日、覚えていてくれたのね) ――大時計の針が頂点を指し、新たな一日の始まりを告げる中で、荘厳な鐘の音が広場に鳴り響いていく。生誕祭の翌日、それがリチェルカーレの生まれた日だったのだ。 (ああ……何だか、とても懐かしい) 不意にリチェルカーレが思い出したのは、シリウスと出会った時のこと。契約の適正を判断する為、言われるままに指を絡めて、適合者であると告げられた後で――恥ずかしさと嬉しさで見上げた先には、ほんの少し戸惑ったような彼の顔があった。 運命の出会いだと職員に言われ、不思議なくすぐったさのようなものを感じて。それから色々なことをふたりで乗り越えてきた今――静かな夜の闇に抱かれた国で、色とりどりのイルミネーションに包まれて、大切なひとが自分の生まれた日を祝ってくれている。辺りに人影は殆ど無く、このうつくしい景色を知るのは、世界で自分たち二人しか居ないかのようだった。 (これ以上、近づいてはいけないと分かっている。……でも、もう少しだけ) 特別な存在でなくてもいいから、ただリチェルカーレの傍に居たいと、シリウスは切ないまでの祈りを天に捧げて。一方でリチェルカーレは、時折彼が見せる――何かに必死で耐えている悲痛な様子を思い出し、そっと白い吐息を零して自身の胸に言い聞かせる。 (シリウスの力になりたい、支えになりたい。だけど……どうすればいいのか、私にはまだ、わからない) ――それでも、今は。ふたり一緒に、このかけがえのないひと時を楽しもう。これから先、祓魔師として生死を賭けた戦いに臨むことになる、その時に――決して後悔だけはしないように。
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*** 活躍者 *** |
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