~ プロローグ ~ |
「申し訳ありません。お嬢様は今日もお会いにならないそうです」 |
~ 解説 ~ |
■目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
※プラン記載時は固有名詞等を行頭の数字で表現していただいて問題ありません! |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目的 贈り物の用意を手伝う。 行動 プロレマのアロマは青い実を探す。 メイドさんに作り方や必要な採取量を聞いて、作る道具や場所はユリウスさんに用意してもらう? アロマ作りとハーブティーの運試しは基本的にはマリオスが挑戦。 でもシルシィも失敗覚悟でやってみる。 ユリウスさんの贈り物は書店の可愛いしおりを推薦。 マリアさんの趣味が読書なので。 アロマオイルはリラックス効果、ハーブティーは鎮静効果。 マリアさんはだいぶ不安なのかも。 ユリウスさんには贈り物を届ける時は服装も言動も落ち着いて、と言ってみる。 メイドさんにマリアさんの普段の様子を聞いてユリウスさんに伝える。 話題は町の様子とか?できればロマンチックな。 |
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わあ… 初めて出会った人と一目で恋に落ちるなんて 物語の一シーンみたい ね、シリウス 自分の赤く染まった頬に手をあてて ほんわり笑う わたしたちにできることはほんの少しだけれど お力になれるなら喜んで 1、アロマの調達に 植物学の知識も使う どちらのメッセージもすてき シリウスなら どちらを喜んでくれるかしら 愛して… 知らず自分のパートナーを想う 真っ赤になりつつ 青い実を採集 メイドさんにはよろしくお願いしますとお辞儀 話をしっかり聞いて上手くできるよう もう一つはA 綺麗な栞を シリウスと合流 お疲れ様と笑顔 プレゼントが集まっていればラッピングしてユリウスさんに 沢山お話して なかよくなってください どうかおふたりに 幸せが訪れますように |
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~ リザルトノベル ~ |
■ユリウスとの顔合わせ 「はじめまして。俺が依頼を出したユリウスです。今回は来てくださってありがとうございます!」 ユリウスは集まった浄化師たちに頭を下げた。 今回は4人の浄化師が集まった。 「いい贈り物ができるように力を尽くします」 柔らかな笑みを浮かべてそう言ったのは『マリオス・ロゼッティ』。その隣では彼のパートナーの『シルシィ・アスティリア』がこくりとうなずいていた。 「初めて出会った人と一目で恋に落ちるなんて物語のワンシーンみたい」 そう言って赤く色づいた頬に手をあて、ほんのりとほほ笑むのは『リチェルカーレ・リモージュ』だ。 「ね、シリウス?」 「ね、と言われてもな……」 隣に立っていた『シリウス・セイアッド』はパートナーの言葉に苦笑をうかべる。 それを聞いていたユリウスも照れたように頬をかいた。 「あはは……ちょっと恥ずかしいな。……っと、準備が良ければさっそく手伝いをお願いしたいんですけど、いいですか?」 ユリウスに言われ、マリオスがうなずいた。 「はい。問題ありませんよ」 返事を聞き、ユリウスは再度4人に頭を下げた。 「マリアさんのために、どうかよろしくお願いします!」 こうしてユリウスと浄化師たちはさっそく行動を開始した。 ■アロマを求めて~森の中~ 一行はまず『プロレマのアロマ』を調達することにした。 ユリウスと共にマリアの住む屋敷へと向かう。すると、門前にメイドが一人立っていた。 「ユリウス様からご連絡をいただいて、皆さまをお待ちしておりました」 そのままメイドにつれられ、一行がやってきたのは屋敷の近くに広がる小さな森だった。季節の花や緑の葉が生い茂る木々に交じり、ぽつりぽつりと赤や青の木の実が見える。 「もしかしてあれがプロレマの実ですか?」 リチェルカーレが尋ねるとメイドは少し驚いた様子を見せた。 「よくお分かりになりましたね。結構珍しい植物なのに……」 「前に図鑑で見かけたんです。植物を少し勉強していたので」 「それなら安心してお任せできます。アロマを作る際には2種類の実を混ぜてはいけないので、どちらか片方を選んで採取してくださいね」 メイドはそう言うと、5人それぞれに小さなカゴを渡した。受け取りながら、マリオスがメイドに尋ねる。 「実の色によって効果に違いがあるんですか?」 「いえ、効果に差はありませんよ。ただ、実の色によって込められる意味が変わってくるんです」 その言葉にユリウスが興味を示す。他のメンバーもメイドの周りに自然と集まり、話を聞く態勢になった。 メイドの話によると、赤い実には『あなたのことを愛しています』という意味が、青い実には『あなたが幸せでありますように』という意味が込められているという。 4人とユリウスは相談し、青い実を採取することに決めた。 さっそく採取にかかろうと各々が動き出そうとしたその時。 「あの、アロマに必要な実の量はどのくらいですか?」 シルシィはメイドに近づくと、そんな風に尋ねた。 「この人数なら、さきほどお渡ししたカゴ一杯分ずつ採取できれば十分ですよ」 「分かりました。ありがとうございます。……行こう、マリオス」 シルシィはメイドに礼を言うと、マリオスと共に森の中へと入っていった。 一方、リチェルカーレとシリウスも森の中へと足を踏み入れた。 「どちらのメッセージも素敵ね」 リチェルカーレはメイドの話を思い出しつつ、ちらりとシリウスの方を盗み見た。 (シリウスならどちらを喜んでくれるかしら……) そんなことを考えつつ、リチェルカーレは地面に落ちた実をじっと見つめた。 青い実は『あなたが幸せでありますように』。赤い実は……。 (あなたのことを愛して……) 「リチェ? どうかしたのか?」 シリウスは彼女の顔が赤いことに気づき、首をかしげた。 「な、なんでもないわ」 リチェルカーレは慌てて首を横に振った。 「さあ、私たちも採取をはじめましょう」 リチェルカーレは赤い頬をシリウスから隠すように、黙々と青い実を採取しはじめた。 「……そうか」 (何か思うところがあったのだろうか……) シリウスは彼女の様子を気にしつつも、それ以上なにも問いかけず採取を始めた。 ■アロマを求めて~小屋の中~ 数十分後。青い実が十分に集まり、一行は森の入り口にたたずむ小屋へと移動した。小屋の中には鍋や、実を潰すための道具などアロマづくりの準備が整っていた。 「アロマの作り方はメイドさんが教えてくれるんですよね?」 マリオスがそう尋ねるとメイドは「はい」と返事をした。 すると、マリオスは落ち着いた足取りで作業台の前に立った。 「ここは僕が手伝わせてもらおう。シィもやる?」 「うん……とりあえずやってみる」 続いてリチェルカーレもカゴを抱えながら鍋の方へと近づく。 「私もお手伝いします。シリウスはどうするの?」 そう尋ねられ、シリウスは少し考えた。 「そうだな……人数も十分いるだろうし、俺は先にこの後行く店の場所を調べてくる」 シリウスはそういうと、メイドに尋ねた。 「確かアルノーという庭師が店の場所を知っていると聞いたが、取次を頼めるか?」 「はい。こちらをお持ちください」 メイドはシリウスにカードを一枚手渡した。 「これを屋敷の門番に見せると庭に入れるようになります。アルノーは門扉の近くで花壇の手入れをしていると思いますので、声をかけてください」 シリウスはカードを受け取ると、さっそく外に出ようと扉の方へ向かった。 「頑張ってね」 「……善処はする」 リチェルカーレの見送りにぼそりと返事をしつつ、シリウスはアルノーの元へと向かった。 「それではアロマづくりをはじめましょうか」 「よろしくお願いします」 シルシィ、マリオス、リチェルカーレの3人はメイドの号令にそろって行儀よく頭を下げた。 メイドは慣れた口調で3人に作り方の説明をしていく。3人はそれに一生懸命耳を傾け、アロマの作り方を覚えた。 時折質問を交えながら、和やかな雰囲気で作業が進んでいく。 「そろそろ実をつぶす作業に入りましょうか。ここは手際よくやることが大切です。時間をかけるとせっかくの香りが飛んでしまいますからね」 3人の目の前には底に突起の付いた小さな器と青い実がいくつか置いてある。器の突起に実を押し付けるようにして潰すのだ。つぶした実は後でろ過し、実に含まれていたエキスと分離させる。 「これは……なかなか力が必要だね……」 マリオスは想像以上に固い皮を持つ実に驚きつつも、難なく作業を進めていった。 その隣でシルシィは若干苦戦していた。涼しい顔で作業を進めるマリオスをちらりと見て、その手際の良さに驚いていた。 「マリオス、すごいね。全然苦戦してないみたい」 「コツをつかむと意外と簡単にできるよ。シィ、もう少しヘタに近い部分を持って……そうすると上手く力が入る」 マリオスはシルシィの手をそっと掴むと、ヘタの近くへと手を誘導する。 「ん。分かった……」 シルシィは言われた通り、手の位置を変えると作業を再開した。先ほどまでよりも実を潰すペースが若干上がっている。 「その調子だ」 マリオスはその様子を見てほほ笑むと自分の作業を再開した。 二人がやり取りをしている間にリチェルカーレも手を青く染めながら、さくさくと作業を進めていく。 その様子を見ていたメイドはわあ、と声を上げた。 「リチェルカーレさん、筋がいいですね」 「もっと苦戦するかと思っていましたけど、ちゃんとできているみたいで安心しました」 「いやいや……私もコツをつかむまで結構時間がかかったのに。尊敬しちゃいます」 「ふふ、ありがとうございます」 その後、3人は黙々と実を潰し、あっという間にカゴの中身は空になった。 「お疲れさまでした。みなさん。こちらで手を拭いてください」 メイドは三人に濡れた手ぬぐいを渡しつつ、ねぎらいの言葉をかけた。 「マリオスさんもとても手際が良くて驚きましたよ。本当ならもっと時間のかかる作業なんですが、あっという間に終わっちゃいました」 その後すりつぶした実をろ過し、残ったエキスを鍋で数分煮詰める。 その最中、シリウスが一度小屋に顔を出し「先にハーブティーを買いに行く」と告げに来た。 「僕たちもあとから追いつきます」 マリオスがシリウスにそう声をかけるとシリウスは頷いた。 「ああ。そちらは頼む」 そんなやり取りをしているうちに、少しくすんだ色をしていた液体は、徐々に鮮やかな青色へと変化していった。 最後にメイドが用意した小瓶に中身を移し替え、森で摘んできた小花を中に浮かべた。 「お疲れさまでした!『プロレマのアロマ』完成です」 「なんとか完成せることができたね」 小瓶を前にマリオスはふう、と息を吐いた。 「思ったよりも早く完成できたし、私たちも、お茶屋さんに行ってみる?」 シルシィは完成したアロマをユリウスの手に渡しつつ、マリオスとリチェルカーレにそう尋ねた。 「そうだね。行ってみようか」 ■お茶を求めて~庭師アルノー~ 3人が一生懸命実を潰しているその頃。シリウスはメイドに聞いた通り、門番にカードを見せると屋敷の庭へと足を踏み入れた。 ついでに門番にアルノーのいる場所を尋ねる。門番は門扉のすぐ横にある花壇の前にシリウスを連れて行った。 花壇には季節の花が鮮やかに咲いている。その前に一人の老人が屈み込み、手入れをしていた。 「あの人がアルノーさんだよ」 「助かった。ありがとう」 シリウスは案内してくれた門番に礼を言うと、アルノーに声をかけた。 「少し尋ねたいんだが……」 「おや、何かね?」 アルノーは作業の手を止めシリウスを見た。 シリウスはできる限り丁寧な口調を心がけて、アルノーに事情を説明した。常の無表情は仕方ないにしても、失敗するわけにはいかない。 アルノーは「なるほどお嬢様にお相手がなぁ……大きくなって」となぜか涙ぐみつつ、シリウスの説明を聞いた。 話を聞き終えると、アルノーは手帳を一枚破り簡単な地図を描いてシリウスに渡した。 「ハーブティーは大通りの外れにある『黒猫亭』で扱っておるぞ。ただあそこの店主は変わり者じゃからな……まあ、頑張ってくれ 「……?」 心なしか同情的な視線を向けられ、シリウスは内心首を傾げた。表情には一切出ていないが。 (とりあえず場所は分かった。一度小屋に戻るか) シリウスはアルノーに礼を言うと、報告のために一度小屋に戻った。 ■お茶を求めて~運試し~ 「ここが『黒猫亭』か」 シリウスは一人、大通りの一角に佇んでいた。 小屋に顔を出したら、アロマづくりはまだ続いていた。「あとは煮詰めるだけだ」と聞き、人手は足りているだろうと判断した彼は、一足先にハーブティーを買いにやってきていた。 ドアを開け、店の中に入る。天井まで届く背丈の棚が壁一面を埋めている。棚には茶葉がぎっしりと並べられていた。その数は100以上はあるだろうか。 「いらっしゃい」 カウンターに座るのは眼鏡をかけた中年の男だった。 シリウスはカウンターに近づくと男に言った。 「『森のハーブティー』を1つもらいたい」 男はカウンターの下から紙袋を取り出した。袋には『黒猫亭謹製ハーブティー』と書かれている。 そのまま男は袋をシリウスの前に置く……と思いきや。 「兄ちゃん、一つ遊びをしよう」 思いがけない言葉にシリウスは目を瞬かせた。 「ちょっとした運試しだ。ここに10枚のカードがある」 男はシリウスの前にカードを置いた。10枚中9枚には赤いハートが、残りの1枚には青いハートが書かれている。 「俺がこれからこの10枚を伏せてカウンターに並べる。兄ちゃんはその中から青いハートを引き当ててくれ」 (これが『変わり者』ということか……) シリウスはアルノーの視線の意味が分かり、心の中でため息をついた。 「ルールは理解したが……」 何のためだ、と言外にシリウスは問う。男はにやりと笑った。 「だからちょっとした遊びだ。俺の暇つぶしに付き合ってくれよ。……そうだ、兄ちゃんが当てたら茶葉の量をオマケしてやろう」 「……分かった」 シリウスが頷くと、パラパラとカードを混ぜる音が店内に響いた。 ■お茶を求めて~合流~ 一度マリアの様子を見に行くというユリウスと別れ、シルシィ、マリオス、リチェルカーレは街へやってきた。 『黒猫亭』の扉を開けるとなぜかシリウスがカードゲームをしていた。 「なんでカード……?」 シルシィがつぶやくと、カウンターの方を向いていたシリウスがくるりと入り口の方を振り返った。 「ああ、来たか」 シリウスは店主とのやり取りや経緯を3人に説明した。 「へえ、カードを引き当てたら茶葉をオマケしてくれるんですか。それで、シリウスさんはどうでしたか?」 マリオスが尋ねると、シリウスはカウンターの上を視線で示した。青いハートの書かれたカードが表に返されている。 「ちょうど1勝したところだ」 「すごいわ、シリウス」 「……そうか」 リチェルカーレに褒められ、シリウスは少し照れたように視線をそらした。 「兄ちゃんのお仲間か。よかったらアンタたちも挑戦するか?」 店主の一言に、ぱちりとシルシィが目を瞬かせる。 「いいんですか?」 「ああ。こう言っちゃなんだが、元々道楽で始めた店だからな。儲けようなんて考えちゃいない。俺の好きな茶をたくさん飲んでもらえるなら本望だ」 それならば、とシルシィとマリオスがカウンターに近づいた。 リチェルカーレはシリウスの横に並び勝負の行方を観戦することにした。 「いいのか?リチェはやらなくて」 「2人にお任せしようかと思って。……お疲れ様、シリウス」 シリウスは隣にやってきたリチェルカーレの手に視線を向けた。 (頑張っていたみたいだな) 彼女の手はところどころ青く染まっていた。たくさんの実を潰す過程で、汁の色が染みついたのだ。 「……そっちこそ」 そうねぎらわれ、リチェルカーレもはっと自分の手を見る。手を見つめるシリウスのまなざしは優しい。 「ありがとう……」 リチェルカーレは少し頬を赤くして、ほほ笑んだ。 「じゃあ、僕が挑戦してみます。店主さん、お願いします」 カウンターの前でそう言ったのはマリオスだ。店主は「よしきた」と声をあげると、再びカードを混ぜカウンターに並べた。 「さあ、どいつを選ぶ?」 店主に促されマリオスは一番端にあった一枚を取った。裏返すと……赤いハートが描かれている。 「惜しいな、兄ちゃん!」 「はは、残念です」 マリオスは苦笑すると、カウンターから離れた。様子を見ていたシルシィに近づくと、彼女にそっと声をかけた。 「シィはどうする?」 「……やってみる」 シルシィの言葉に「分かった」とうなずくと、マリオスは彼女をカウンターの前へと連れて行った。 「店主さん、次は彼女の番です」 「よし。さあ、嬢ちゃん。どれを選ぶ?」 シルシィはカードを一枚一枚じっと見つめると、真ん中の一枚を選んだ。 「さて、嬢ちゃんの運はどれほどの物か……カードオープンだ!」 店主の掛け声で、シルシィは選んだカードを裏返した。 カードに描かれているのは青いハート。 「わあ、シルシィさん!やりましたね!」 リチェルカーレが拍手を送る。 「すごいよ、シィ。大当たりだ」 「まさか当たるなんて思ってなかった……」 店主はまだ少し茫然としているシルシィにオマケの茶葉を持たせる。 こうして一行は、大量の茶葉を手に入れ店を後にした。 ■彼女が喜ぶプレゼントは? 店を出ると、ちょうどユリウスが屋敷から戻ってきたところだった。 「あとはマリアさんへのプレゼントでしたよね」 リチェルカーレが尋ねると、ユリウスが頷いた。 「はい。いくつか候補はあるんですが、決めきれなくて……ぜひ意見を聞かせてもらえると」 ユリウスは『書店』『雑貨屋』『服飾店』の名前を挙げた。 「その中なら書店がいいと思います。マリアさんは読書が趣味みたいですし、栞は丁度いいんじゃないかと」 シルシィの意見に、リチェルカーレも同意する。 「私もそう思います。せっかくなので、女性が好きそうなデザインの物にしてはどうでしょう?」 「それもそうですね。でも、俺はあまり女性の好みそうなものには詳しくなくて……一緒に見てもらえませんか?」 4人はもちろん、とうなずきユリウスと一緒に書店へと向かった。 その道中。 「政略結婚で相手のことを好きになれる、の? 幸せ、ね」 静かに道を歩いていたシルシィがぽつりとつぶやいた。 「シィ?」 そのつぶやきが耳に入ったマリオスが、彼女を見る。少し先を歩いている3人には聞こえていないようだ。 「ん、別に。……マリオスは、プレゼント貰うなら、魔術に関係するものが嬉しい?」 付け加えられた質問に、マリオスは少し考える素振りを見せた。 「うーん、そうだなあ……。シィは何だったら嬉しいんだ?」 逆に問い返され、シルシィも少し考え込む。しかし彼女はすぐに首を横に振った。 「……よく、分からない」 シルシィの視線は先を歩くユリウスの背中を見つめていた。シルシィはマリオスに尋ねた。 「『プロレマのアロマ』と『森のハーブティー』。マリアさんは、どうしてこの二つを欲しいって言った、の……?」 マリオスはその質問に「そうだな……」とつぶやくと、シルシィに微笑みかけた。 「シィ、それは宿題にしよう。プレゼントが全部そろうまでの」 「……宿題」 シルシィは黙り込んだ。頭の中ではきっと様々な思考を巡らせている。 マリオスはすっかり考え込み始めた彼女をやさしく見守るのだった。 ■ユリウスへのアドバイス そして一行は書店でプレゼント用の栞を購入し、アロマづくりで使った小屋へと戻ってきた。 ユリウスはこのままマリアの元を尋ねてみるという。取次のためか、先ほどのメイドも小屋にやってきていた。 「本当にありがとうございました。これでプレゼントもそろったし、あとは渡すだけですね……!」 「あ、少し待ってください」 リチェルカーレは今にも外に出ていきそうな勢いのユリウスを慌てて止めた。 「その紙袋のままでは少し味気ないですから……良ければラッピングをしましょうか」 「あっ……そういう部分は全然気が回らなかったな。でも材料もないし……」 ユリウスはリチェルカーレの提案に一瞬乗り気になったが、すぐに表情を曇らせた。それを見たメイドが横から口を挟む。 「簡単なリボンなら私がいくつか持っていますから、お使いください」 メイドは一度小屋を出ると、何種類かのリボンを調達して戻ってきた。 「ありがとうございます。……シリウス、手伝ってくれる?」 「ああ」 リチェルカーレはシリウスに手伝いを頼むと、どのリボンがいいか吟味をはじめた。 一方、シルシィとマリオスはユリウスにアドバイスを続けていた。 「今の服装は……落ち着いた感じになっているし、大丈夫そうですね」 マリオスがユリウスの服装をチェックし、及第点を出す。 「あとは、言動も落ち着いたものを心がけてください。年下の女性ですから、怖がらせないように」 「はい!」 加えられたアドバイスにユリウスは素直に返事をした。 シルシィはその間にメイドの傍に寄っていく。話題のきっかけがあれば、と思ってのことだ。 「マリアさんは普段どんな様子ですか?」 「そうですね。最近は少し落ち込み気味ですが、街の話などは興味があるみたいですよ。あまり外にも出たことがないので……。あとは本の中でもロマンス小説がお好きなようです。憧れがあるんでしょうね」 なるほど、とシルシィは相槌を打ちながらメイドの話を記憶していく。そして情報をユリウスに伝えると、ユリウスは心なしかほっとしたような表情を浮かべた。 「正直何を話すべきか、と迷っていたんですよ。シルシィさん、教えてくださってありがとうございます」 「いえ、大したことは。……少しでも、彼女を安心させてあげてください。話題はマリアさんが好きそうな、ロマンチックなものがあるといいかもしれません」 「そうですね。たくさんお話して、なかよくなってください」 ラッピングを終えたリチェルカーレとシリウスも話題に混ざる。 「特別なことをしなくても、素直な気持ちを伝えてあげることが大切だと思いますよ」 (素直に、か……。俺にはとてもできない……) シリウスはリチェルカーレの言葉を黙って聞いていた。その唇がわずかに歪んでいたのを知るのは本人のみ。 ユリウスは改めて礼を言うと、用意したプレゼントを持って屋敷へと出発した。 その背中を見送りながら、マリオスはシルシィに問いかけた。 「……宿題の答えは出たみたいだね」 「どうして、そう思うの?」 「さっきユリウスさんに『安心させてください』って言ってただろう?だから、気づいたのかと思って」 シルシィはマリオスの言葉に、こくりとうなずいた。 「アロマはリラックス効果。ハーブティーは鎮静効果。……マリアさんはだいぶ不安なのかも。だからこの2つを頼んだんだと思う」 「そうだね。……知りたかったのかもしれない。彼の心を、贈り物を通して。ユリウスさんも、それに応えたかったんだろう。自分の心を伝えるために」 「贈り物で、心を伝える……」 シルシィは再びマリオスに尋ねた。今度は、自分が『伝える』のもいいかもしれない。 「マリオスは、何をもらったら嬉しい?」 ■その後の2人は 数日後。教団にユリウスからの手紙が届いた。 手紙には4人への感謝とその後の彼らの様子が綴られていた。 ユリウスは4人のアドバイスを忠実に守り、マリアの心を開くことに成功したらしい。今は定期的に彼女と会い、時々屋敷の外にも連れて行っているという。 『彼女の不安とゆっくり向き合って、幸せになります』 そんな一文で手紙は締めくくられていた。 マリア・アリスティン嬢、晴れて婚約者とご結婚。 そんな見出しが新聞で見られるようになる日は、そう遠くない。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[8] シルシィ・アスティリア 2019/01/29-22:15
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[7] リチェルカーレ・リモージュ 2019/01/29-21:42
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[6] シルシィ・アスティリア 2019/01/29-21:38
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[5] リチェルカーレ・リモージュ 2019/01/29-21:20 | ||
[4] シルシィ・アスティリア 2019/01/29-21:13 | ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/01/29-20:18
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[2] シルシィ・アスティリア 2019/01/28-19:51
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