~ プロローグ ~ |
その古びた大きな木の下で愛を誓えば、必ず、叶う――。 |
~ 解説 ~ |
・成功条件 |

~ ゲームマスターより ~ |
今回は人命優先なので、まずはヨハンナを探すことをメインにしていただければとおもいます。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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し、親友だろ!(動揺) この場合、どっちが狙われるかわかんねーからな (見た目的にはルド、か?) コホン えーと、ルド 俺、お前の事嫌いじゃないぜ 食生活は直そうとしてくれるし 俺の事気遣ってくれるのわかる 綺麗かっこいいし、戦闘の時は時々見惚れてる あと……あーーーー! 俺は!お前の!嫌味ったらしくて頭でっかちでめちゃくちゃ口うるさくて好き嫌いが多いところがだいっっっ嫌いだ!!!!! 一回アンデッドになって蘇ってこい! さっっっ(顔真っ赤) ………これで本当に被害者のところに捕まるのかよ 他人任せかよ! うちに来ますように…! 人命第一。どっちが行ってもいいように準備しとこうぜ 敵が現れたらスキルで攻撃だ フルボッコにしてやる |
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そうだねぇ、俺も木の下で告白してみようか。 うまく俺の方が囮になれればいいんだけど…。 「俺は綾ちゃんの事今までもこれからも好きだからこれからもずっと一緒に居てほしいなって思うよ」 ふふ、こういうの照れくさいね。あのね、綾ちゃん、これ囮だからとかじゃなくて俺の気持ちだから。綾ちゃんに受け取ってもらえたらいいなぁ。 囮作戦後連れ去られた場所でヨハンナさんがいた場合は彼女の護衛につくよ。 戦闘になったら危ないし一般の人だからね。 俺もベッドに残った手掛かりから相手はトレントの類だとは思うんだけど。 残念ながら俺も綾ちゃんも火の属性じゃなくて。 とりあえずオイルライターは持ってきたから役に立てばいいんだけど。 |
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◆目的 ヨハンナ救出最優先+敵討伐 ◆行動 日中、恋人たちの樹の下で告白し 夜を待って誘き寄せられた敵に攫われる。 攫われた先にヨハンナがいれば保護し 全員揃い次第、敵と戦闘。 囮組と索敵(待機追跡)組で分かれての行動 ・トウマル 告白を受ける方。 夜は囮組として宿屋で寝てる。宿には話を通しておく。 攫われたら“どこか”へ連れていかれるまで大人しく。 ヨハンナの安全確保後に口寄魔方陣、武器防具装備。 索敵組と合流し魔術真名宣言 蔦切り捨て肉迫、エッジスラスト ・グラナーダ 告白する方。 索敵組。夜は宿の外、様子が窺える物陰で待機。 敵が囮を攫えば慎重に追跡し 場所特定できたら出口確保し突入。 負傷者を天恩天賜で回復優先。他、符で攻撃 |
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【準備・調査】 残されていた枝木の特徴、及び該当する木が村の中や周辺に無いかと、 ヨハンナを含め攫われたとされる人の人数・特徴を調べておく。 【作戦】 クラウス: 索敵組。 可能な限り誰かと行動して欲しいというのが妻の望み。 仲間と身を隠し待機し、人攫い発生時に追跡。 SH1を使用し、攻撃はせずにヨハンナ達の保護と怪我人の対処を重点に。 治療の際は簡易救急箱と医学を使用。 クラル: 囮組。 万一にもクラウスの方が狙われない様にと狙い易さをアピール。 宿の窓付近で外に背を向け待機。 魔道書だけは手放さず。 オイルライター所持。 蔦の束縛から逃れる等の際に敵を炙る。 戦闘時はFN3を使用し攻撃重視。 とは言えクラウスの安全が大前提。 |
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■行動 ・索敵探索ロス 告白後トランスして狼状態 他の探索メンバーの元へ 樹に纏わる話を聞きつつ嗅覚やベッドの樹の情報から当りつけ 敵に悟られないよう情報収集 ・待機ロス クラウス、グラナーダ達と一緒に待機 囮達の様子が解る位置で ランタンの灯洩れないよう服を被せ足元を ・囮ティ 暗くしてベッドへ バックは近くに 悲鳴が聞こえたり攫われそうになればバック持つ 人質発見 天恩天賜を 信号拳銃を放ち 符を放ち人質までの道を切り開き 確保し傷つかないよう場合によっては攻撃断念体で庇う ・追跡ロス 音に耳を澄まし騒がしい方へ 追跡メンバーと足並み合せ 戦闘 囮と人質達の間に盾を構え割込む 魔法使用で傷気にせず人質安否はかれるまで猛攻撃 松明を投げつけ |
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~ リザルトノベル ~ |
●思う、告げる、樹の下で
犯人に誰が狙われるかはわからない。 今回の指令を受けたメンバーは事前に村や宿に協力を仰ぎ、どのような人物が被害者となっているのかを調査を行った。その結果、出来る限り早急にヨハンナたちを救う方法として囮作戦を各自で行うことに決めた。 「こういう場合は、親友か? 恋人か?」 燃える火のような長い赤髪を一つにまとめ、肩にたらしたルドハイド・ラーマが思いあうという単語に金の目を細めて思案に暮れるのにアシエト・ラヴは大いに動揺した。 一つ一つの動作がどうしてこうもさまになっているのか。 見た目がどうも野暮なアシエトはいつもルドハイドを見てなんともいえない気持ちになるのだ。 「し、親友だろうっ!」 日に焼けた頬を赤く染めて断言するアシエトは、つい、頭を抱えたくなった。狙われるとしたらぜってーにルドだ! 俺とルドなら、俺なら絶対ルドを狙う! 「……あー、コホン、えーと、ルド。俺、お前の事嫌いじゃないぜ? 食生活は直そうとしてくれるし、俺の事気遣ってくれるのわかる、綺麗で、かっこいいし、戦闘の時は時々見惚れてるあと……」 なに言ってんだ。これだと日頃俺がどういう目で見てるか言ってるようなものじゃねーかよ! 「あーーーー! 待った! 待てよ! 俺は! お前の! 嫌味ったらしくて頭でっかちでめちゃくちゃ口うるさくて好き嫌いが多いところがだいっっっ嫌いだ!!!!! 一回アンデッドになって蘇ってこい!」 ぜぇぜぇと叫び、すぐに混乱した頭で考える。 告白ってこういうもんなのか? 恥ずかしすぎだろう! やっぱ、他のメンツに頼んで、俺たちは護衛だけしておけばよかった! 「……言いたいことはそれだけか?」 睨むような視線にアシエトはぎくりとした。 「お、おう?」 「……お前のことは認めている。好き嫌いが俺以上に激しいのは、目を瞑ろう。頭が悪いのも時々頭がキレるのも認める。それも相性がいい証拠だ。お前が暴れ、俺がそれを御す。そうやって俺達は成っている。相棒として、俺達はこれ以上ないくらい最高のパートナーだと思っている。お前のことを深く、信頼している。アシエト。お前のためなら、アンデッドにでも何でもなろう」 「な、な、なっ……なるんじゃねぇよ! ばか野郎!! 俺が告白するのに、てめぇがしてどうするんだぁあああ!」 思わず、二度目の罵倒をあびせたアシエトはやっぱり慣れないことするもんじゃねーなーと心の底から思った。 心臓が今まで経験したなかで一番早く音をたてている。 これが怒りのせいか、それともルドに告白なんてされたせいなのか今のアシエトには判断できそうにない。 ジエン・ロウは吉備・綾音を気づかわしげに見つめた。 囮作戦で、今回はジエンが告白し、綾音が受ける側だ。 (うまく俺が囮になれたらいいんだけど) 言葉を待つ綾音はジエンの視線に気が付いて小首を傾げる。闇色の瞳は少しだけ期待と不安で揺れていた。 犯人をおびき出すための作戦だとしても、告白されることに綾音も少しばかり動揺をしていた。 胸がどきどきして、ぎゅうと締め付けられる。同時に足元がぐらぐらと揺らぐような不安もある。 (だって、私には、記憶がないから) (本当に) (私でいいのかな、) 沈黙し、俯いている綾音の憂いをジエンはどう受け取ったのかはわからないが、そっとジエンの大きな手が伸びて、綾音の頬に触れる。 壊れやすい硝子細工みたいに、丁重に。 綾音の不安を溶かすような穏やかで、芯の強い声が降ってくる。 「俺は綾ちゃんの事今までもこれからも好きだから、これからもずっと一緒に居てほしいなって思うよ」 綾音は言葉を返せない。大切にしてくれて、思ってくれている。 頬に触れる手の優しさからもわかる。 ジエンの揺るぎない気持ちはこうして言葉にしなくても、ちゃんと伝わっている。だからこそ綾音は言葉が返せない。だって記憶が欠落している自分で彼は本当にいいのかわからない、自信がない、それを問えない。 ジエンを大切だと思う気持ちが、綾音から言葉を奪ってしまう。 まだ、うまくジエンに返せない。それをジエンがどう受け取ったのかは綾音にはやはりわからないが、彼は若葉色の瞳を細めて綾音から離れた。 「行こうか? 俺が囮になるためにも宿に戻って寝てみるね」 「武器などの用意は任せてください」 ジエンがゆるく笑うのに綾音は眼を細め、唇を小さく噛む。 今は指令中だから、それに集中しよう。 この作戦がうまくいくかどうかという不安と、被害者たちへの気遣う気持ち、そしてジエンを守りたい気持ちが胸のなかに湧き上がってくる。 光のことを一番知っているのは闇だわ。 生い茂った葉が作った影のなか、クラル・クラークはクラウス・クラークを見て内心の葛藤を押し殺していた。 手にとるようにわかる愛しい人の自己犠牲と願い。自分のことを思うからたった一言が言えなくて口ごもっていて。 だから、闇が進んで口を開く。 なぜなら、それが心からの喜びだから。 歪みは――承知している、けど、こんな形でも確かに自分たちはつながっている。 「クラウス」 名を呼ぶと空色の瞳を細めて、クラウスは迷うように言葉を唇から吐き出してくれた。 「……ごめんね、クラル。僕はいつも、君に我慢ばかり」 「いいえクラウス、違うわ。あなたも知っているでしょう。私が望む物が何か。私の望みはあなたの望みだわ。知っているでしょう?」 「……有難う。……愛しているよ、クラル。君がいないと僕は生きていけない」 「私も愛しているわ。私にはあなただけ。……あなただけで良い」 うまく告白として認識されるかを頭の端で考えるクラルは自分がひどく弱くて、殺しやすい生き物だと他者が見て思うように装うことに余念がなかった。 女性の中ではやや高身長だが、伏せがちな目と、俯く姿勢、疲れたような目の下のクマ……これらがどれだけ弱さを醸し出すかと計算もいれていた。それがクラウスのためになるとクラルはいつも考えている。 クラウスの弱弱しい視線を受けて、クラルは僅かに口元に笑みを作る。心から。 あなたの望みは私の望み。 赤いウルフカットが風に揺れているロス・レッグは少しばかり不満そうにシンティラ・ウェルシコロルを見つめる。 (俺、付き添いかー?) シンティラは素直に、折角の伝説がこんな形で駄目になることを悲しんでいた。出来たらみんなが幸せになる形で解決したいと願っていた。 だから囮作戦も進んで自分が囮役になると口にした。見た目が筋肉質なロスに比べてずっと小さな、白い花をそのまま人の形にしたようなシンティラだったらどちらを狙うかは明白だったからだ。 ただ、告白しなくてはいけないという難題に、シンティラは内心、実は、あんまり、けっこう、いや、とっても期待してない。だって相手が――ロスだから。 それがロスには少しばかり不満だったらしい。 「ティ」 「なんですか、ロスさん」 にぃとロスが笑う。 「なぁ、ガキん頃から一緒に居て一生このままと思ってたけど、その内俺がティ食わしてやっから待ってろよ!」 「え」 ロスがかがみこんで、シンティラの手をとって、笑みを深くする。 視線が、あう。 風に、葉擦れる音だけが響く。 シンティラのいつもはかたく結ばれた唇は言葉をこぼすかわりに、ぽかんと開いていた。とても驚いているという表情にロスは満足そうにふんと鼻を鳴らすと、さっと背を向けて去っていくのをシンティラは茫然と見つめた。 (告白らしいのをお願いしましたけど、ロスさんの事だからギャグにしかならないとばかり……!) 頬に血が集まるのが自分でもわかる。胸がどきどきしている。 ずっと一緒にいる相手の意外な一面を見てしまった気がする。だって今まで家族として傍にいたから! 内心の動揺のせいでハープを落としそうになりながら指を動かす。 魔力探知で周りを探ってみるが、この周辺の濃厚な魔力の気配のせいで、どこに犯人がいて、この様子を見ているのか割り出せない。 この周辺に魔力を漂わせている原因の木をシンティラは見上げる。 木が、ざわりと葉を揺らした。 「今日やっと貴方へ想いを伝える覚悟ができました。愛しています。どうか、私とともに人生を歩んでください」 グラナーダ・リラは憂いを帯びた視線をトウマル・ウツギに向ける。 淡い海色の瞳に、稲穂のような髪が揺れ、切なげな微笑みは本気かと錯覚してしまうほどだ。 これは、さっさと指令を進めるための演技のはず、なのだが―― なかなか返事をしないトウマルにグラナーダが促すような視線を向けてくる。 「……アンタの気持ちはわかった。返事はその、ちょっと待ってくれ」 トウマルは戸惑いがちに俯き、口許に手を持っていくと、視線はそっぽむいて、それだけ言い返すと背を向けて、去っていく。 背しか見えないグラナーダには見えないだろうが、トウマルの頬は赤く染まり、右手がぎゅっと左胸をおさえていた。 互いに深入りしない距離感をたもっているだけにこういう意外な一面を見るとつい動揺してしまう。それがばれないようにトウマルは必死だ。 (いや待て手馴れてねぇ? ……演技だよなアレ! 心臓に悪い) あまりにも動揺しすぎてそれを押し殺したせいで不愛想になりすぎていなかっただろうか? ちゃんと照れた態度がとれただろうかと逆に不安になってしまう。 これは人命もかかっている指令なのだから……風が吹いていないのに葉擦れる音がした。 まるで羨むように。 ●作戦会議の 告白を実施したあとは、それぞれ囮組は宿に戻って過ごす手はずになっている。 追跡する側に回るメンバーはあらかじめ事情を説明した宿屋の協力のもと、すぐにパートナーを救出できる大部屋を用意してもらい、そこに集まっていた。 囮作戦を決行すると決めたときクラウスが 「できれば一人ではなく、皆さん協力したいです……囮になる方は仕方ないのですが……一人になることは出来るだけないように……一緒に行動できませんか?」 「彼に危険がないように、お願いします」 クラウスを気遣うクラルからの要望もあり、追跡メンバーは一つの部屋に集まり、情報の共有と各自役割を決めることにしたのだ。 集まったのはクラウス、ロス、アシエト、吉備綾音、グラナーダだ。 「いや、悪い。うち、最後、罵倒しちまったからこないかもしれない」 アシエトが苦く笑う。 「ルドを見ると、つい、さぁ」 「喧嘩するほど仲がいいってことじゃねーのか? 俺も、シィに告白したけど、どうだろうな。長く一緒にいるせいか、家族愛が強いっからな」 ぼりぼりとロスが頭をかく。シンティラが大変動揺していたのをロスは疾風のごとく去ったので知らないのだ。 「仲がいいんですね。私のところは……どうでしょうか。私がうまくできたかどうか……自信がありません……けど、誰が連れ去られても、みなさんを守ります。ヨハンナさんも無事であるといいですが」 「あなたのパートナーは……きっとあなたのことを……大切にしているんですよ」 クラウスが俯く綾音に告げる。 女性として儚げな囮役が適任だろう綾音ではなく、ジエンが囮役をするのは彼がそれだけ綾音を大切にしているのだとわかる。 綾音はクラウスの言葉に眼を少しだけ見開いて、ゆるゆると頷いた。 その可憐だが、芯の強そうなところが、クラウスにクラルのことを思い出せた。自分のために進んで協力してくれる彼女は、きっと今も自分のために頑張ってくれているのだろう。 「連れ去られたときのためにも、見張る場所をきめておきましょう」 とグラナーダが提案し、部屋のなかにはスピードに自信のあるロス、アシエト、けが人の対応のできるクラウス。 宿の外にはグラナーダ、綾音が見張りにつくことになった。 「あとよ、今回のやつはトレント系じゃないのか?」 ロスが顎を指で撫でながら口にする。 事前にヨハンナの部屋を見ると、それらしいあとがいくつかあった。ロスは調査中に村人に頼み、三本の太い松明を用意してもらったのだ。 「それでしたら、私も」 おずおずと綾音がオイルライターを取り出した。 「私もジエンさんも火が得意ではないので、持ってます」 「クラルも用意していましたが……もう少し用意しておいたほうが……?」 クラウスの言葉にロスが頷いた。 「俺の用意した松明、あんたとアシエトに一本ずつ渡しておく。なんかのときはこれを投げつければいいだろう」 ●羨んだ、欲しがった、求めた、奪った、その先は クラルは窓に背を預け、待っていた。 告白の際、精一杯弱いアピールはした。 犯人から見えないように気を配って、我が身を守る魔導書は胸のなかに抱きしめ、左手にはオイルライターを隠し持つ。 事前に調査の結果、恋人たちの樹の下で告白された側の女性が今のところ、三人も行方知れずになっている。 ヨハンナの部屋を見たとき、葉が落ちていたので木属性と検討をつけたクラルは、もし、なにかあれば火で焙って逃げればいいと冷静に判断していた。 この事件の犯人は、とても愛に焦がれて、求め、まるで自分のことも愛してほしいと叫んでいるような切なる願いがあるようにクラルには思えた。 「……クラウス」 クラルが呟いた瞬間、大きな音と悲鳴が聞こえた。 「あれは、トウマルさん」 シンティラは暗くした部屋からバックを持って飛び出す。すぐ隣の部屋のトウマルのドアを乱暴に開ける。 「あっ!」 「くっ……!」 トウマルは太い木の蔦と枝に縛られ、苦し気な顔をしていたが、それでも視線が合うとこくんと頷いた。 大人しくこのまま捕まり、ヨハンナの場所まで案内してもらう予定だ。シンティラはトウマルを助けようとしてぐっと拳を握りしめる。 樹の蔦と枝は窓から侵入し、乱暴にトウマルを外へと引きずり出す。 幸い一階の部屋の窓から引きずりだされたところでたいした打撲にはならないが、樹の蔦は地面に体をしたたか打ったトウマルを乱暴に立たせるとずるずると、ずる、ずるっと力任せに引きずり始める。 皮膚が、赤く擦れる痛みに耐えてトウマルは一歩、二歩と進む。 そこは昼間、訪れ、みなが告白をした恋人たちの樹の下だった。 昼間は開いていなかった根本が、まるで飢えた獣の口のように大きく開けられ、大きな空洞を作っていた。そのなかにぐったりと倒れた三人の女性の姿があった。 樹は長い年月をかけて成長し、そこへと訪れるのは多くの観光客……そのなかには当然のように魔術師なども含まれていた。彼らが定期的に訪れ、その漏れた力が樹に力を与えたのだ。 恋人たちを見守る樹は、自分の下で幸せになる者たちを見守りながら、たった一本でそこに存在するゆえの孤独から妬む存在へと変貌していったのだ。 彼を捕えていた蔦はトウマルをそのなかへと放り込むと、満足したように穴を閉めようとごつごつとした太い幹が動き出す。 「させるかぁ!」 割り込んだのは、メンバーのなかで一番速いロスだ。両手で閉じようようとする幹を掴み、樹の妨害を行う。 樹は怒り狂ったように蔦を無数に伸ばし、ひゅん! 空気を切る音をさせ、蔦の鞭がロスの強靭な肉体を叩き、ひっかくように打つ。 「ロスさんっ!」 あとを追いかけるシンティラがロスの危機に声をあげ、手から符を投げた。それによって攻撃する蔦たちを一掃し、ロスを守るとともに仲間たちが樹へと向かう路を開く。 「ルド!」 「遅れるなっ!」 アシエトが飛び出し、追撃する蔦を剣が切り落とす。アシエトを狙う蔦や枝をルドハイドがエアーズを使用し、牽制し、切り裂いていく。 互いの隙を補い合う二人の息のあった攻防戦の隙をついて、ジエン、綾音、クラウス、クラルが細い枝が伸びてくるのをオイルライターで焼いて退けながら、穴のなかにいる三人の女性を外へと救出する。 ロスとともに幹に体を置いて逃げ道を確保するグラナーダは剣を片手に内側から襲われないように牽制するトウマルへと視線を向けた。 「無事ですか、トーマ」 「ああ。まずは捕えられた彼女たちが無事か見てくれ、グラ」 グラナーダが手を伸ばすのに、トウマルが言い返し、その手を掴んだ。 「みんな、無事だな! よっしぃ!」 ロスが声をあげ、持っていた松明を木の内側へと投げ入れる。内側からの攻撃には耐えられなかったのか、樹がむちゃくちゃに蔦を動かし暴れ狂うのに、アシエトとトウマルが剣でねじ伏せる。 「これで、決めるっ!」 トウマルがエッジスラストを放ち、強烈な一撃を幹に与えた。 畳みかける一斉攻撃がきいたのか、樹は音をたてて砕け、黒い煙を吐き出しながら全体が燃え始める。 炎に包まれ、悲鳴のような声をあげる樹を、その場にいた彼らだけが見ていた。 恋に焦がれて、求めて、嫉妬し、奪うことしかできない樹は何もかもを羨むように、ざわざわと葉擦れの音を広げ、消えていく。 討伐が終わったあとトウマルは視線を地面へと向けて、なにかないかと探った。もしかしたら、と願いをこめて。そして 「新芽だ」 少しだけ嬉しげな声を漏らす。せっかくの伝説をこんな風になくしてしまうのは惜しいと思ったのだ。 たった一本で、この地に根付き、人々を見守ってきた木だ。今度こそ、間違わず、この地を訪れた者を祝福する存在となってここにずっと根付いてくれればと思う。 伝説がどうなるのか気になっていたシンティラは新芽があることにほっとして、ロスに視線を向けると、ロスがにぃと笑う。 捕えられた少女たちが無事か、簡易救急箱で診察し、衰弱しているが命に別状はなく、大丈夫だと判断したクラウスは安堵し、傍にいるクラルを見る。言葉よりも雄弁な視線にクラルは、彼にだけ見せる、心から嬉しそうな笑みを作った。 無事に終わったことが確認でき、火の後始末をしていたジエンの横に綾音は歩み寄る。 「ジエンさん」 「どうしました? ケガはないですか?」 綾音はゆっくりとジエンを見上げる。 「はい。みんなが守れてよかったです……ねぇ、ジエンさん、私も……私も一緒に居たいです」 綾音の言葉が、昼間の告白の返事だとジエンは気が付くのにたっぷり一分の時間を要し、言葉をいくつも浮かべては沈め、ただただ、綾音の無防備な手をぎゅっと握りしめた。 綾音がびっくりした視線を向けてくるのに、ジエンは柔らかく笑う。 新しい芽の下で、誓い合う。自分の気持ちを。
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*** 活躍者 *** |
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[13] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/30-23:52 | ||
[12] トウマル・ウツギ 2018/05/30-23:14
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[11] クラル・クラーク 2018/05/30-22:36 | ||
[10] ロス・レッグ 2018/05/30-22:24
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[9] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/30-19:36 | ||
[8] ジエン・ロウ 2018/05/30-06:52
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[7] クラル・クラーク 2018/05/30-03:06 | ||
[6] トウマル・ウツギ 2018/05/30-00:22 | ||
[5] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/29-23:19 | ||
[4] トウマル・ウツギ 2018/05/29-20:54 | ||
[3] クラル・クラーク 2018/05/29-05:23 | ||
[2] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/29-00:42 |