~ プロローグ ~ |
樹氷群ノルウェンディ。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ロゼ「温泉と食事は定番だねー」 クロ「冬を楽しむとすれば他には景色かウィンタースポーツとか」 「しかし施設には結界が張られている、外には行けないからね」 ロゼ「外は無理で中のみか、あ、動物と戯れるのはありかな?」 クロ「温泉って…カピバラとか?一緒に混浴は厳しいと思うけど、眺める分にはいいかもね」 ロゼ「クマやトラ、アザラシなんかも温泉に入るみたい、どうせ結界張って分けるんだし入ってる分にはおとなしいから色々入れとけばいいかな♪」 プラン1:温泉動物園 ロゼ「オーロラは見れないのか」 クロ「場所によるね」 オゼ「じゃあダイヤモンドダスト見たいな」 クロ「…結界が張られてるから中だとどうかだろう」 プラン2:細氷 |
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目的 「アイスラグーン」を楽しむ。 アトラクションのアイデアを出す。 会話 シルシィ 温泉のプール、楽しそう。 でも、魔女さんたちの魔法でどこまでできるのか、よく分からないけど…。 マリオス …提案するだけしてみればいいんじゃないか? シルシィ ん、そうする。 …ここって、夜も入れたりする? 提案 夜はゆったり幻想的な雰囲気で、とか。 温泉を操って、ランタンをいくつも水に浮かべて灯りにする(何色かあるといいかも)。 温泉を操って、ゆったり流れるプール。 温泉を操って、噴水とか水のカーテンでアトラクション? |
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【目的】 なるが依頼だと言うからベリアル討伐の依頼だと思ったんですけど…まぁとにかく今は皆に楽しんでもらえるようなアイデアを考えるのを頑張ります。 【提案】 水上アトラクションも楽しそうですが見て楽しむ水上ショーなどがあっても楽しいのではないでしょうか。昼と夜に1回ずつ温泉を操って雪でしたっけ氷でしたっけの女王をテーマにした水上ショーなんてどうでしょうか。夜の水ショーはライトアップを有効的に使うのもいいと思います。 【お試し】 なる提案のかき氷風ホットドリンクをいただきながらの水上ショーは楽しいですね。 |
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ヨナ 寒さの厳しいノルウェンディにこのような大きな温泉施設があるんですね 魔女のイメージ払拭の為にも何か良いアイデアが出れば良いのですが そうですね… ドームに魔法で色々な場所の景色を映したりは出来ないでしょうか? 温泉に浸かりながら様々な景色を楽しむというのも乙なのでは ベルトルド ウボーとセレナには何かと世話になっている 魔女達も元気そうで良かった ヨナの意見に同意しつつ 景色か。幻を見せるような魔法だろうか 場所だけでなくうつろう季節を感じられたりすればいいかもしれないな アトラクションも若者達に人気がありそうだが 俺は温泉といえばゆっくりくつろぎたい 二人ともゆったりしたい派なので 静かに温泉に浸かった後軽く食事 |
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~ リザルトノベル ~ |
●アイデアを出そう 「ベリアル討伐の依頼ではなかったんですね」 トナカイのソリ馬車に乗りながら『神楽坂・仁乃』は『大宮・成』に言った。 2人は他の浄化師たちと共にノルウェンディを訪れている。 訪れると現地の住人から、アイスラグーンを盛り上げるアイデア出しの場所を提供すると言われ、皆と一緒にトナカイのソリ馬車に乗りながら移動中なのである。 「べリアル討伐の依頼の方が良かった?」 成の問い掛けに、仁乃は静かに返す。 「……いえ。皆に楽しんでもらえるようなアイデアを、頑張って考えます」 意識を切り替えるような間を空けて、仁乃は言った。 そんな仁乃を見て、成は思う。 (にのを笑顔にしたい) 成がアンデッドになる原因を作ったのはべリアルだ。 それだけに仁乃は、ある意味べリアルに囚われている。 成は、そんな仁乃を少しでも自由にしてあげたいのだ。 「アイスラグーンに来た人達が笑顔になれるようなアイデアを考えていこう」 成は仁乃に呼び掛ける。 もちろん、その笑顔の中には、仁乃だって含まれているのだ。 「はい。頑張りましょう」 成の呼び掛けに、仁乃はやわらかな表情で返した。 そうしてしばしトナカイのソリ馬車に運ばれて、着いた先はノルウェンディの城だった。 「ようこそ! 今日はよろしくね!」 到着すると、先に着いていた魔女達を代表してセパルが挨拶をする。 それに最初に返したのは『マリオス・ロゼッティ』だった。 「こちらこそ、よろしくお願いします」 マリオスに続けて『シルシィ・アスティリア』も挨拶を交わす。 「よろしくお願いします。魔女さん達と一緒に、頑張ろうと思います」 どこか魔女を気に掛けるように、シルシィは挨拶をする。 彼女は少し前に、魔女狩りの記憶が再現される街を訪れ、精神的なダメージを受けている。 そのこともあってか、魔女達の様子が気になるようだった。 そんなシルシィに、セパルたち魔女は明るく返す。 「ありがとう! 嬉しいよ!」 屈託なく笑顔を浮かべ、人懐っこく言葉を返す。 そんな魔女達に、シルシィは心が軽くなったのか、同じく笑顔で返した。 挨拶していく中には、以前の依頼で顔見知りの相手も。 「今日もよろしくね!」 「ああ、よろしく頼む」 何度か依頼で顔見知りの『ベルトルド・レーヴェ』は、魔女達の様子に安堵するように返す。 「元気そうで良かった」 ベルトルドの言葉に続けるようにして、『ヨナ・ミューエ』も言った。 「魔女のイメージ払拭の為にも、何か良いアイデアを出したいと思います」 意気込むヨナに、魔女達は笑顔で礼を返した。 他の浄化師達も同じく挨拶をし、城の中に。 案内されたのは、迎賓用のゲストルーム。 そこに居たのは、ノルウェンディの王であるロロ・ヴァイキング。 「よぅ、来たのぅ。今日は、ええアイデアを頼むわ」 歓待するロロ。 話を聞けば、王であるロロが浄化師や魔女達を歓迎することで、国民にも広く受け入れやすい環境を作る一環とのこと。 「こういうのも、王の仕事じゃけぇ。とはいえ、仕事の前にワシも楽しみにしとるけぇ。ざっくばらんに思いついたことを聞かせてくれると助かるわ」 ロロが野太い笑顔を浮かべ、浄化師と魔女達に無礼講と言うと、メイド達が部屋に入って来て給仕をする。 香りの良い紅茶と、瓶に入ったリンゴのジャムを出される中、浄化師達はアイデアを出していった。 「温泉と食事は定番だねー」 「他にも、冬を楽しめる物があると良いかも。景色か、ウィンタースポーツとか?」 最初にアイデアを口にしたのは『ロゼッタ・ラクローン』と『クロエ・ガットフェレス』だ。 2人は、まず自分達で考えをまとめるように話し合う。 「でも施設には結界が張られてるから、外には行けないんでしょ?」 クロエのアイデアに返すロゼッタに、横からロロが答える。 「出入りは自由じゃ。じゃが、温かいのは結界の中だけじゃけぇ、そこから外に出ると寒うなるの」 「外は無理で中のみか……」 ロロの答えに、少し考え込んでからロゼッタは続ける。 「あ、動物と戯れるのはありかな?」 「温泉って……カピバラとか? 一緒に混浴は厳しいと思うけど、眺める分にはいいかもね」 動物好きなクロエは、乗り気で返す。 これにロゼッタも賛同する。 「クマやトラ、アザラシなんかも温泉に入るみたい。どうせ結界張って分けるんだし入ってる分にはおとなしいから色々入れとけばいいかな♪」 このアイデアに、ロロが返す。 「ええアイデアじゃの。動物は、いま用意できるのはシロクマぐらいかの。ワシん所で飼うとるのを使っても良いんじゃが、万が一暴れでもしたらいかんしのぉ」 「そっちは、こっちでどうにかなるよ」 動物の安全性をどうするか悩んでいる所にセパルが返す。 「契約術(ファミリア)って魔法があるから。これを使えば、撫でたりしても大丈夫だよ」 セパルの説明では、動物と契約を結ぶことで従わせる魔法があるらしい。 それを使えば問題は無くなるとの事だった。 これにより、まずはひとつめのアイデア、温泉動物園が決定する。 続けてふたつ目は、細氷(ダイヤモンドダスト)に関わるものだった。 「温泉だと、オーロラは見れないのかな?」 ロゼッタの質問にクロエが返す。 「場所によるね」 クロエの言葉通り、オーロラが見れるのは温泉があるオーセベリではなくトゥーネ地区になる。 それを聞いたロゼッタは続けて言った。 「じゃあダイヤモンドダスト見たいな」 「……結界が張られてるから、中だとどうだろう」 クロエの懸念に、セパルが魔法でどうにかすると返す。 「結界の外でダイヤモンドダストを魔法で作って、そのあとダイヤモンドダストだけが結界を通り抜けられるようにするよ。すぐに溶けないよう魔法をかけてね」 ここまで言うと、他に魔法でして欲しいアイデアは無いかと言われ、クロエとロゼッタは返した。 「魔法で動物作れますか?」 「ふれあい乗り物用として良いかも」 これも可能ということで、アイデアとして実行されることになった。 次々に、浄化師達はアイデアを出していく。 そんな中、考え込むように黙っていたのはシルシィだった。 「どうしたの?」 マリオスが尋ねると、シルシィは返す。 「温泉のプール、楽しそうだなって思って。でも、魔女さんたちの魔法でどこまで出来るのか、よく分からないから……」 「……提案するだけしてみればいいんじゃないか?」 「ん、そうする」 マリオスの言葉に背中を押されるようにして、シルシィは尋ねる。 「……アイスラグーンって、夜も入れたりする? 温泉を操って、ランタンをいくつも水に浮かべて灯りに出来ると、良いなって思う」 これにセパルが返す。 「ロマンチックで良いね! 大丈夫、出来るよ。アイスラグーンは、夜も入れるんだよね?」 セパルの問い掛けに、ロロを補佐するように隣に座っていたウボーが返す。 「ああ、掃除をするとき以外は開いてる。夜もお客は多いし、ランタンの明かりは人気が出ると思う」 セパルやウボーの応えを聞いて、シルシィはアイデアを更に出していく。 「温泉を操って、ゆったり流れるプール、とか。温泉を操って、噴水とか水のカーテンでアトラクション? とかも良いかも」 このアイデアに、セパル達は喜んで賛同する。 アイデアが出る度に、それは採用されアイスラグーンの盛り上がりに繋がっていく。 それは他の浄化師達のアイデアも同様だ。 「水上アトラクションも楽しそうですが、見て楽しむ水上ショーなどがあっても楽しいのではないでしょうか」 仁乃はアイデアを提案していく。 「昼と夜に1回ずつ温泉を操って、氷雪の女王をテーマにした水上ショーなんてどうでしょうか。夜の水上ショーは、ライトアップを有効的に使うのもいいと思います」 これにウボーが返す。 「氷雪の女王の歌劇として、脚本を作って演じて貰おう」 すぐに手配に動くウボー。 その間も、アイデアは出されていく。 「アトラクションだけじゃなく、温泉プールに入りながら楽しめる食べ物か何か欲しいな」 成は、考えをまとめるような間を空けて続ける。 「ホットドリンクなんてどうかな。温泉プールからあがって休憩する時、湯冷めにもいいと思う」 そこから更にアイデアを加えていく。 「ただのホットドリンクじゃなくて冷たくない氷の様なものでおおった、見た目がかき氷の様な、ノルウェンディにいながら南国気分に浸れるホットドリンクとかできないかな」 これにロロは、ノルウェンディの溶けない氷『固定氷塊』を使ったトロール・ブルーで作ってみようと返す。 それを受け、部屋に戻るなり、また手配に動くウボー。 話は纏まっていき、最後にヨナとベルトルドがアイデアを口にする。 「結界のドームに魔法で色々な場所の景色を映したりは出来ないでしょうか? 温泉に浸かりながら様々な景色を楽しむというのも乙なのでは」 ヨナのアイデアに、ベルトルドも同意する。 「良いアイデアだと思う。可能だろうか?」 ベルトルドの問い掛けにセパルが返す。 「夜劇(ナイトシアター)みたいで良いね! 大丈夫、出来るよ! ちょっと人手が必要になるけど、契約術で契約した動物にどこかの景色を見に行って貰って、それを映したりできるし。あとは、ボク達が以前見た風景とかを映してみても良いね」 「景色か。幻を見せるような魔法だろうか? 場所だけでなく、うつろう季節を感じられたりすればいいかもしれないな」 ベルトルドの要望に、可能だと応えるセパル。 それを聞いて、ベルトルドは続けて返した。 「アトラクションも若者達に人気がありそうだが、俺は温泉といえばゆっくりくつろぎたい」 賛同の声が上がり、のんびりと出来る温泉プランも出来ていく。 楽しんで、のんびりも出来る。 そんなアイデアが出されていき、ロロも満足げに頷く。 「これだけしてくれるんじゃ。ワシらも、虚栄の孤島の王族探し、ようけ手伝わんといけんの」 ロロの言葉に疑問を抱いたのか、マリオスが疑問を口にする。 「虚栄の孤島の王族探し、ですか?」 これに諸々の手配に動き戻って来たウボーが説明する。 魔女の自治領として、島自体がダンジョンとして認定されている虚栄の孤島を使いたいこと。 そのために行方が分からなくなっている、虚栄の孤島を治めていた王族を探すこと。 今回の指令は、それを行うための取引のひとつだと知らされた。 そうして背景も語られる中、浄化師達のアイデアは形になっていく。 事前に、どんなアイデアであってもすぐに対応できるよう準備がされていた事もあり、すぐにでも実現できる用意は整った。 これに浄化師達は、モニターも兼ねて参加することになった。 ●アイスラグーンを楽しもう 「かわいい」 シロクマの子供を撫でるクロエは、目元が緩んでいた。 「大人しいね。これも魔法のお蔭かな?」 ロゼッタもシロクマを撫でながら、されるがままのシロクマの様子に少し考察してみる。 2人は今、パレオタイプの水着を着てアイスラグーンに居る。 その中でも、アイデアを出した温泉動物園を堪能していた。 「シロクマって、器用に泳ぐのね」 小熊の母親が、すいすいと温泉プールを泳いでいるのを見てロゼッタは感想を口にする。 すると、クロエに撫でられていた小熊が、とことこ母熊の居る温泉プールに進み、ちゃぷんと入る。 犬かきの要領で、ぱしゃぱしゃ泳いで、母熊の背中の上によじ登る。 「かわいい」 目元が緩みっぱなしのクロエ。 すると、ペタペタという音が。 見ればペンギンの一団がやって来て、シロクマと一緒に泳ぎ出す。 魔女の魔法により、騒ぎも起こさず泳いでみせるシロクマとペンギン。 眺めていると、小熊が温泉の岸に上がって来る。 ぷるぷると体を震わせお湯を弾くと、クロエの元に。 後ろ足だけで立って、クロエが手にしている林檎を、頂戴と言うように前足を伸ばす。 「欲しいの? はい、どうぞ」 食べさせてやるクロエ。 食べさせてあげている間に、身体を撫でる。 堪能するクロエ。 一方、ロゼッタはダイヤモンドダストの入った小瓶を眺めている。 「手が早いわ」 感心するように言う。 小瓶の中のダイヤモンドダストは、魔法により溶けることなく舞っている。 明かりに向ければ、きらきらときらめいていた。 それだけでなく、空からもダイヤモンドダストが。 ロゼッタはクロエの傍に寄ると呼び掛ける。 「屋台に行ってみる? ダイヤモンドダストを見ながら、食べたり飲んだりしてみない?」 「この子も、連れていって良い?」 クロエの問い掛けに視線を向ければ、足元をうろうろとする小熊が。 どうやらまだ食べたりないらしく、ねだるようにじゃれついてきているらしい。 ロゼッタは、くすりと笑うとクロエに返した。 「ええ、良いと思う。ホットドリンクだけじゃなくて、串に刺した果物とか色々あるみたいだし」 そう言って、2人は小熊と一緒に屋台に向かって行く。 小熊と一緒に軽食を楽しんだあとは、温泉で作られたイルカの背に2人は乗って、流れる温泉を楽しむ。 当然のように、一緒に乗ってクロエに撫でられる小熊。 「かわいい」 ロゼッタと共に堪能するクロエだった。 そうして楽しんでいるのは、他の浄化師達も同じだ。 「にの。ホットドリンク、持って来てくれたよ」 成は、温泉で作られたイルカの背からホットドリンクを受けとり仁乃に渡す。 いま2人は、アイスラグーンの温泉に入っている。 広々としたそこは、ゆっくりと流れ、2人はその流れに乗ってふよふよと。 もっとも、温泉の中で浮いて流されているのではない。 魔女の魔法で作られた、温泉でできたジンベイザメの上に乗り、流れに乗っているのだ。 「ありがとう、なる」 ホットドリンクを受け取った仁乃は成に礼を返す。 受け取ったホットドリンクは、涼しげな見た目だった。 硝子の器に乗ったかき氷、といった見た目だが、手にとって温かさを感じ取れば違うと分かる。 かき氷に見える部分も含め、溶けない氷『固定氷塊』で作られたトロールブルー。 かき氷の表面が『固定氷塊』で作られ、内部は空洞。 ストローを入れる穴が開いているので、そこに挿し込まれたストローでホットドリンクを飲めるようになっている。 「美味しい?」 甘みの強いジンジャーエールの味を尋ねる成に、仁乃は柔らかな表情で返す。 「ええ、美味しいです」 仁乃の自然な表情に、成は安堵したように笑顔を浮かべる。 そんな成を見て、仁乃の表情は温かなものになる。 「きっと、多くの人が喜んでくれますね」 成のアイデアで作られたホットドリンクの器を褒める仁乃。 褒める仁乃の表情が嬉しそうなのが、成の喜びに繋がった。 そして2人がお喋りをしていると、2人を乗せた温泉ジンベイザメは、ある場所で流れるのを止める。 「にの、水上ショーが始まるみたいだよ」 辿り着いたのは、水上ショーが行われる最前列。 仁乃のアイデアを元に作られたそれは、氷雪の女王。 時に温泉が、樹氷で出来た城のようになり。 あるいは、氷細工の花畑の様相も見せる。 それは笑顔を忘れた氷雪の女王に、1人の優しい青年が笑顔を取り戻させる物語。 ――貴女の笑顔こそが、私の望みです! 多くの冒険の果てに、青年は氷雪の女王の笑顔を取り戻そうとする。 その物語を、仁乃は見詰めている。 今の彼女の表情は、浄化師ではなく、年頃の少女らしい屈託のなさを見せていた。 だから、成は嬉しい。 「楽しいね、仁乃」 成の笑顔は、仁乃が喜んでくれるからこそ。 そして彼女の喜びは、成の笑顔があるからこそ。 「はい、楽しいですね」 2人は共にあるからこその喜びを感じながら、水上ショーをホットドリンクを飲みながら楽しんだ。 こうして2人が楽しんでいる水上ショーは、昼と夜の部の2回。 夜は、ライトアップされ楽しめる。 けれど夜に灯る明かりは、それだけではなかった。 「綺麗だね」 「ん、そう思う」 夜の帳が落ちる中、マリオスとシルシィは、温泉プールをゆったりと流れていた。 周囲には、幾つもの柔らかな明かりが。 ほのかに灯るそれは、ランタンの明かり。 流れるプールに合わせ、ふわふわと浮いている。 「のんびりできて、良いね」 セパレートタイプの水着を着たシルシィは、浮き輪に身体を預けるようにして、ゆったりと流されている。 「偶には良いと思うよ」 「マリオスも、そう思う?」 「ああ、そう思うよ」 シルシィと一緒に温泉の流れに乗っているマリオスは、どこか安堵した表情で言った。 (元気が出てくれたみたいだな) 今回の指令をマリオスが引き受けたのは、シルシィのため。 魔女狩りの過去を見てしまったシルシィが、少しでも元気になって欲しかったからだ。 その願いは、叶ったらしい。 シルシィの要望を聞きながら魔女達は魔法を使い、その間間にお喋りもしている。 楽しそうに仕事をしている魔女達の様子に、シルシィは気が晴れたようだった。 「……空、見て」 温泉の流れに乗っていると、シルシィがマリオスに呼び掛ける。 その言葉に視線を空に向ければ、満面の星空が。 「綺麗だね」 「ああ、そう思うよ」 空に星のまたたきを見上げ、ランタンのほのかな明かりに包まれながら、2人はのんびりと温泉に入っていた。 しばらく堪能したあと、ぱしゃりという音が。 みれば、温泉で作られた小魚が水面を何度も跳ねている。 それはまるで、一緒に泳ごう、と言っているようだった。 「競争、してみる?」 スタートラインで待っているというような温泉魚達を見て、シルシィはマリオスに提案する。 「ああ、良いよ」 そして2人は、温泉魚に先導されるようにして一緒に泳ぐ。 遊ぶようにして、2人は泳ぎを楽しんだ。 「ん、楽しかった」 「それは良かった」 しばし楽しんで、少し疲れたので小休憩。 「喉が乾かないか? ホットドリンクもあるみたいだし、行ってみようか?」 「ん、そうする」 そうして2人は、かき氷に見える器に入ったホットドリンクを楽しんだ。 思い思いに楽しむ浄化師達。 それはヨナとベルトルドも同様だ。 「この真冬に水着に着替えるとは思いませんでした」 ゆったりと温泉に浸かりながら、ヨナは傍に居るベルトルドに言った。 「そういえば夏はそんな機会無かったか」 夏の時期を思い出すような間を空けて、ベルトルドは返す。 これにヨナは、どこか言い訳をするように返す。 「まあ、避けてましたから」 「そうなのか」 「そうですよ」 ヨナは、思い出を心に浮かべるような間を空けて続ける。 「あの頃はベルトルドさんと遊びに行く必要って感じませんでしたし」 気恥ずかしさを隠すように、どこか早口でヨナは言った。 これにベルトルドは、苦笑するように返す。 「今は違う?」 目を柔らかく細め見詰めてくるベルトルドに、浮かんできた気持ちを隠すような間を空けてヨナは返した。 「……い、いまは、その。今日はセパルさん達の事もありますからっ」 ぷいと横を向くヨナ。 それは、今は2人で何かすることに楽しさを感じてる事を見透かされている気がしたから。 そんな彼女から、ベルトルドも視線を逸らす。 ヨナが横を向いた瞬間、彼女の細い首筋が目についたからだ。 夜の帳の中、ランタンのほのかな明かりに浮かび上がる、温泉に浸かり朱を帯びたヨナの首筋。 それはいつもとは違い、長髪を頭の高い位置で纏めているせいか、意識してしまうほど目についたのだ。 何となく視線が彷徨うベルトルドは空を見上げ、気付く。 「おい、ヨナ。空を見てみろ」 「なんですか?」 言われて空を見上げれば、そこに映し出されたのは、透き通るような青空。 どこまでも続くようなそれは、やがて夕焼けを映し出す。 夕焼けは空だけでなく、大地も染め上げ。 茜色が広がる大地に景色は移った。 そこにあったのは、一面の麦畑。 豊かに実った穂は、そよ風に揺れ。 収穫される時を、待っているようだった。 「……誰かの、故郷でしょうか?」 「さてな。だが、思い入れのある景色なんだろう」 麦畑は、多くの人間が関わり手入れがされてきたのだと、見る者に伝えてくるような確かさがあった。 「……魔女の誰かの記憶でしょうか?」 「……そうだろうな」 その麦畑の景色は、失われてしまったのか? それとも―― 応えのない過去に、2人は思いを馳せていた。 しばし、思いに浸るような間が空いて、ぱしゃりという音が。 視線を向ければ、温泉から作られた魚が、2人を誘うように跳ねている。 何事かと視線を向けていると、温泉魚は軽食のできる店の方に。 「行ってみますか?」 「そうだな」 2人は苦笑するようにお互いを見詰め、軽食を摂るために温泉から上がった。 こうしてアイスラグーンを盛り上げる指令は終わりをみせた。 浄化師達のアイデアのお蔭で、今まで以上の盛況をみせることになる、アイスラグーンであった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[5] ロゼッタ・ラクローン 2018/12/26-11:42
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[4] 神楽坂・仁乃 2018/12/25-17:33
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[3] シルシィ・アスティリア 2018/12/24-19:37
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[2] ヨナ・ミューエ 2018/12/24-18:07
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