~ プロローグ ~ |
その日、ヨセフは教団上層部に呼び出され糾弾されていた。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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デイムズを遠くに転移していただき、分断してもらいます その後私達は皆さんと転移先に急ぎましょう けれど万が一すれ違いにならぬよう、目を凝らしながら進みます 出会ったら避難や敵浄化師対応の方々がより専念できる時間を稼げるよう、会話を試みてみます それに疑問も尽きません。何よりなぜ室長がわざわざ来たのか…… 戦闘では眼帯の死角や太陽を背にすることを意識し立ち回ります 魔術真名詠唱と、黒炎解放をし、致命傷を負わぬようヒットアンドアウェイに徹する 更にステラを私の背に隠すなど死角から攻めます 魔眼には化蛇で波の壁を作り他の方を隠し支援 さらに、濡れた路面は太陽光を思わぬ形で反射させる……その眼に隙も作れるかもしれません |
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目的 死者を出さない 指令の内容が一瞬理解できない程度には耳を疑う 教団の人間が…? 武力を持たない一般人を…? 敵浄化師の対応 村人達を避難させる方向に浄化師を向かわせない セパル ウボー セレナ このまま援護を頼む しかし一体どうなっているんだ 室長クラスの人物が出てくる相手でもあるまいし FN13を威嚇射撃のように使い足止めを試み、その隙に喰人が敵との距離を詰め攻撃 やめなさい 私達の敵は人ではなく神なのをお忘れですか!? 声をかけても手応えのない相手に違和感 魔力感知などで要因を探す その間も手は緩めないが極力致死ダメージは与えないよう細心の注意を払い気絶などの戦闘不能を狙う |
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デイムズ!貴様…オクトと戦争するつもりか! 村人もオクトの人間も必ず守る…!何があってもだ! 俺はデイムズを足止めする ヘルターゲットでデイムズの距離を把握 アネモイでデイムズのみを浄化師や民間人から遥かに遠い場所に飛ばす 奴の位置情報についてはニコラ、セラとマドールジャックで情報共有 奴が民間人に近づいたらまずいからな 黒炎解放後デイムズの防御を下げて仲間のダメージを通りやすくしポイズンショットで更に削っていく 毒はなるべく絶やさないようにしつつ攻撃 腐ってるな…何もかも貴様の蹂躙対象のつもりか… いつか必ず相応の報いを受けさせてやる!! 戦闘後は応急手当てに回る …別に嫌ってくれてもいい ただ俺がしたいだけだ |
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お願い止めて わたしたちの力は誰かを助けるためのものじゃないの? 思わず叫んで シリウスの言葉に頷く …ええ この手に宿るのは守りの力 わたしはそう思ってる 魔術真名詠唱 シアちゃんと禹歩七星をかけた後 浄化師対応組へ 避難している人との間に割り込み 壁役をしながら回復と支援 ウボーさんたちや避難している人も 怪我をしていれば回復を 鬼門封印や禁符の陣で敵の動きを止める どうしてこんなことを やめてください あの人たちは敵じゃないわ わたし達と同じ人間よ 対峙する浄化師に声をかける …何か様子がおかしい? ウィッチ・コンタクトで魔力の流れに注意 気が付いたことがあれば周知 余裕がある時は九字で仲間の支援 仲間への攻撃は盾に |
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>目標 仲間と協力し 誰も死なせないこと 戦闘力のない人を 浄化師が殺すなんて そんなこと絶対にさせない 転移前に可能ならセパルさんに周囲の地形を確認 避難先の目途をつけ 皆に周知 現場につけば魔術真名詠唱 敵と一般人の間に割って入り 仲間が抑えている間に避難誘導 セ:ニコラさんと分担 村右側へ魔術通信で避難呼びかけ 安全圏まで誘導します 落ち着いてついて避難を ペンタクルシールドで一般人を守りながら移動 近づく相手にはルーナープロテクションを リ:助け合って速やかな移動を 敵を近づけさせない 向かってくる者がいれば盾に スイッチヒッターも使いながら 逃げる道を作る 安全圏までいけば魔術通信で仲間に連絡 手当てと護衛 不測の事態に努める |
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何故、何の目的で、村の人達を巻き添えに…? どうしてそんな、酷い事… デイムズさん…あの方を、止めなければ… 魔術真名詠唱 リチェちゃんと協力して禹歩七星を皆さんに デイムズさんを転移した場所まで全力で 武器での拘束が発動できないか中衛位置から試して 上手く行かなければ鬼門封印を 天恩天賜で皆さんの回復をしながら 攻撃が来たときには式神召喚で耐えます デイムズさん あなたは、何故、人を殺そうとするのですか? ここにいるのは、村の人 オクトとは言え、戦う術を持っていない人 なのに、部下を洗脳してまで、どうして 教団は、みんなを、脅威から守る組織じゃ、ないんですか? あなたのような方がいるから お姉ちゃんは……きっと、オクトに…… |
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転移されすぐにセラと手分けし魔術通信 左側にいる者達に呼び掛け 助けに来た この連中は私達が止める その間に護衛要員を出すので避難してくれ 私達はこいつらとは違う派閥の者だ 信用して欲しい ウボー達に 3人はそのまま戦列に加わってくれ と連絡 速力を上げて貰い魔術真名詠唱 浄化師の方へ走る 避難誘導組の道を開くよう 敵の1人を足止め 没終で武器防具破壊狙いと 柄打ちで昏睡狙いを 1人昏睡させたら他の個体に 何故一般人まで巻き込んで殺そうとする お前達には浄化師としての誇りは無いのか 余裕ができたらショーンに様子を聞き セラから連絡が入ったら皆に伝える この7人のペアを見極め1人残る奴を特定してみよう そいつはデイムズのパートナーだろうか |
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デイムズだか何だか知らないけど、教団の評判を落とすような真似は慎んで欲しいわ 魔術真名詠唱、支援を貰ったら敵浄化師の方へ 村人やオクトとの間に割って入るようにして前衛へ スポットライトを使用、敵を引き付けて避難の邪魔をさせないようにする 戦踏乱舞で周囲の味方を支援 村人達が離れたら、敵浄化師達を挑発するように攻撃、回避を繰り返し撹乱する 殺しはしないわ、哀れな同胞さん ただ少し、バテるまで踊って頂戴 途中でデイムズが戻ってきたら、デイムズ対応組にも戦踏乱舞を使用 自身は変わらず浄化師の対応を受け持ち 自分が狙われた時のみ回避と反撃からの、デイムズから距離を取る 敵浄化師が皆撤退か捕縛後に、対デイムズに向かう |
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~ リザルトノベル ~ |
指令内容を聞き『ヨナ・ミューエ』は呆然と呟いた。 「教団の人間が……? 武力を持たない一般人を……?」 指令内容が一瞬理解できず耳を疑う。 だがそれが事実だと理解すると怒りをあらわにした。 「わざわざオクトに対して教団と判るように襲撃したのは対立を煽りたいから……? そのようなことしている場合ではないでしょうに!」 その怒りと嫌悪感は、他の浄化師も変わらない。 一刻も早く現場に向かうべく魔導書アネモイが皆の前に出る。 「それじゃ、跳ばすね」 アネモイの言葉とほぼ同時に、浄化師は負担なく転移した。 ●守るための戦い 転移すると、すぐにセパルが状況を説明した。 100mほど離れた場所にデイムズが居り、その少し後方に引き連れた浄化師が7名。 そこから100mほど離れた場所に村人と非戦闘員のオクト。 村人達は状況が読めていないのか呆然としているが、オクトは危機的状況だと理解したのか、その場を逃げるよう村人達に呼び掛けるが、状況を把握できない村人達の動きは鈍い。 そもそも、教団の人間が自分達を殺しに来るという発想が湧かないのだから、それは仕方がないとは言えた。 その状況で、デイムズは引き連れた浄化師達に命を下そうとする。 「突撃準備。1人も生か――」 口上の途中で、ウボーとセレナが襲い掛かり時間を稼ぐ。 「おお、もしや君はバレンタインの! 大きくなったものだ」 すでに眼帯を外し解析の魔眼を解放していたデイムズは、セパルの魔法で偽装していた2人の素性を暴く。 「死んだと聞いていたが。はは、普段は魔法で見た目を偽装していたのか」 ウボーの大剣とセレナの双剣の連携を、デイムズは手にした魔喰器フォボスで捌き、あるいは避ける。 「父上は元気かね? 隣はガールフレンドか。うむ、若いとはいいものだな」 声を掛けながら動きには一切停滞が無い。 そこに連続してウボー達は攻撃し時間を稼ぐ。そこにセパルも加わる。 「ボクも行くよ。キミ達が動ける時間は稼ぐから」 浄化師が役割を分担し動ける時間を稼ぐため、セパル達はデイムズを抑える。 「あと一人……原初の子か」 参戦したセパルにデイムズは楽しげに眼を細める。 「どうだ、この眼に費やした研究材料(魔女共)の愁いでも晴らしてみるか?」 挑発し相手の動きの隙を逃さず、デイムズは攻勢に動き出す。 同時に、背後にいる浄化師達も動き出そうとする。 それを見て『リチェルカーレ・リモージュ』は思わず叫んだ。 「お願い止めて! わたしたちの力は誰かを助けるためのものじゃないの!?」 震えるリチェルカーレの肩を『シリウス・セイアッド』は、落ち着かせるように軽く叩く。 「止めよう。皆助けるんだろう?」 シリウスの言葉に、リチェルカーレは頷く。 「……ええ。この手に宿るのは守りの力。わたしはそう思ってる」 リチェルカーレらしい答えにシリウスは目を眇め頷いた。 守るための決意は皆も変わらず、即座に役割分担と行動指針を決め動いていく。 「何故、何の目的で、村の人達を巻き添えに……? どうしてそんな、酷い事……」 村人達に視線を向け『アリシア・ムーンライト』は決意を込め呟く。 「デイムズさん……あの方を、止めなければ……」 「うん、止めよう。それにウボー達がやられる前に助けに入らないと」 アリシアの決意に『クリストフ・フォンシラー』は応え、戦闘態勢へと移る。 皆は、それぞれ魔術真名を唱え魔力回路を完全開放すると、最善を目指し役割を分担し動き出す。 役割は3つ。 ひとつは村人とオクトの避難誘導。 ふたつめはデイムズが率いる浄化師への対応。 みっつめがデイムズへの対処。 この内、デイムズの対処は、アネモイの能力を利用して可能な限り離れた場所にデイムズを転移させ、そこで戦力を集中して叩くことを決めた。 決断すればあとは動くのみ。 リチェルカーレとアリシアが協力して禹歩七星を掛け移動速度を上げ、浄化師は動き出す。 「そのまま戦列に加わってくれ。デイムズはアネモイに跳ばして貰う」 避難誘導に動く『ニコラ・トロワ』は、魔術通信でセパル達だけに聞こえるよう声を掛ける。 そこから即座に、村人とオクト達に向け魔術通信を飛ばす。 「助けに来た。この連中は私達が止める。その間に護衛要員を出すので避難してくれ」 これにオクトのマドールチェが返信する。 「嵌めるつもりじゃないだろうな」 「私達はこいつらとは違う派閥の者だ」 即座にニコラは返す。 「信用して欲しい」 だがオクト達の警戒は消えない。 「やはり、そう簡単には信用してくれんな」 「それでも、助けないと」 ニコラと並走する『ヴィオラ・ペール』は返す。 「いくら上層部が腐っていると言っても、まさか一般人に手を出そうなんて……止めます。絶対に誰も死なせません」 「もちろんだ」 ニコラは頷き、さらに速度を上げた。 同じように『セシリア・ブルー』も魔術通信で声を掛け、ニコラと同じように警戒する声が返ってくる。 「信用されてないわね。仕方ないけれど」 一般人を浄化師が殺そうとしている。 この状況に、セシリアは呆れたように呟く。 「軍人が一般人を虐殺。これ以上はないゴシップね。浄化師の信用は地に落ちるでしょうけれど」 それをしようとするデイムズの思惑を考える。 (自分だけは大丈夫と思っているの? そんなものなくとも好きにできると思っているの? どちらにしても――) 「思い通りにはさせない」 「うん。絶対に、助けよう」 セシリアと並走する『リューイ・ウィンダリア』は、決意を込め言った。 「戦闘力のない人を、浄化師が殺すなんて。そんなこと絶対にさせない」 「ええ、もちろんよ」 セシリアはリューイの決意に頷き、村人達の元に近付いていく。 そうして浄化師達が村人の元に近付こうとしているのを察知したデイムズは、配下の浄化師達に号令する。 「皆殺しにしろ」 即座に動き出す敵浄化師。その瞬間、デイムズはアネモイの能力により離れた場所に跳ばされ消え失せた。 指揮者であるデイムズが消え、僅かだが敵浄化師の動きが止まる。 その隙を逃さず、浄化師は距離を詰めた。 「デイムズだか何だか知らないけど、教団の評判を落とすような真似は慎んで欲しいわ」 転移させられ消えたデイムズを確認しながら『リコリス・ラディアータ』は言った。 並走する『トール・フォルクス』も同意するように返す。 「教団の派閥争いなんてオクトや一般の人には知るところじゃないってのに……勘弁して欲しいよ」 「まったくね。そういうのは見えない所でこそこそやってればいいのよ。関係ない所に迷惑掛けるんじゃないっての」 「でも、今は違う。被害を出す前に止めよう」 「ええ。それじゃ、私は前に出て止めるから、トールは援護をお願いね」 「ああ、任せろ」 2人はそのまま走り続け、途中でウボー達と合流。 「俺達と一緒に、デイムズが連れて来た浄化師の相手を頼むよ」 トールの呼び掛けに、3人は応え動き出す。 その直前に、リコリスは戦踏乱舞を掛け、皆の戦意を高める。 「ありがとう。それじゃこっちもお返しだよ」 セパルは礼を言うと、防御の加護を魔法で掛けた。 その間も、敵浄化師は村人に向かい走り続ける。 そこに立ち塞がったのは『ベルトルド・レーヴェ』だった。 ベルトルドは黒炎魔喰器、竜哭の特殊能力を発動。 竜の咆哮の如き撃音が周囲に響き、一時的に敵浄化師の足が止まる。 その隙に浄化師達はそれぞれの配置に動き、ベルトルドはウボー達と合流する。 「セパル、ウボー、セレナ。このまま援護を頼む」 連携できる位置取りをしながら、苦々しく言った。 「しかし一体どうなっているんだ。室長クラスの人物が出てくる相手でもあるまいし」 これにセパルが返す。 「そういう性格なんだと思うよ。肉親の目玉を抉り出して自分に移植するぐらいだし」 「なるほど。以前の教団を体現したような方のようですね、把握しました」 魔眼の由来にあからさまに不快感を表しながら、ベルトルドと同行していたヨナは、余計に戦意を強くした。 近接系の前衛が前に出る中、『レオノル・ペリエ』は後方から攻撃魔術を叩き込む準備をする。 敵浄化師を迎え撃つ位置取りをする中、レオノルは皮肉げに呟く。 「デイムズってある意味平等主義者だよねー。自分以外は駒、って意味で」 迫ってくる敵浄化師の様子を見て、思わずにはいられない。 (この人達、状況が分かってて来てるのかな) 彼らの表情には、何ひとつ揺らぎがない。心が無いかのような無表情だった。 (向こうにどんな思惑があるかは分からないけど止めないと) 魔力を励起すると、発動する魔術に込めていく。 これらの動きにより、敵浄化師が村人達に到達する前に、対応班が間に合った。 さらに避難誘導班も、村人達の元に辿り着く。 その頃、転移で跳ばされたデイムズの元に、対応班が集結しつつあった。 (なぜ室長がわざわざ来たのか……) 万が一にもデイムズの挙動を逃さぬよう、目を凝らしながら『タオ・リンファ』は走り続ける。 (これまで見せていた姿は、全て偽物だというのですか? そうだとしたら、私は……) なにをどうするべきか? 迷うリンファに『ステラ・ノーチェイン』の明るい声が掛けられる。 「マー。あいつやっつけるぞ!」 「……ぇ」 「だってあいつ、わるいやつなんだろ? だったらやっつけるんだ!」 いつもと変わらぬステラの様子に、リンファは余分な力が抜けていく。 「ええ、そうですね。デイムズ室長が悪人だというのなら、倒すのが浄化師というものですよね」 ステラに気力を貰いながら、デイムズの元に走り寄ったリンファは、見極めるために呼び掛けた。 「どういうことですか、デイムズ室長……。 貴方はシャドウガルテンの支部に着任したはずです、ここで何をするつもりだったのか……答えてください!」 「皆殺しだが?」 平然とデイムズは応えた。 「ヨセフ殿と遊べる大義名分が欲しくてな」 「なぜ……」 「思ったより反抗されてな、なかなかどうして、それが嬉しい」 本気で楽しそうにデイムズは言った。 「描く通りにはいかぬこれが、人生というものか。 だが、そうであるからこそ良い。思い通りにしかならぬ人生など、張り合いがないからな」 「……よく、分かりました」 リンファは蒼滅呪刀・化蛇を構える。 「ふむ、刃を向けるか」 デイムズは面白そうに目を細め、半歩横に避ける。 それとほぼ同時に、『ショーン・ハイド』の狙撃音が響いた。 「デイムズ! 貴様……オクトと戦争するつもりか!」 吠えるようなショーンの怒声に、デイムズは肩を竦めるようにして返す。 「それがどうかしたかね?」 解析の魔眼でショーンの狙撃を回避したデイムズは平然と言った。 「教団に敵対する組織の人間を殺して何が悪いのかね?」 「ふざけるな。貴様、村人も殺す気だろう」 「尊い犠牲というヤツだ。なに、全てオクトに責は被って貰う。そのためにも、全員死んで貰わねばな」 「させるか!」 連続狙撃しながらショーンは宣言する。 「村人もオクトの人間も必ず守る……! 何があってもだ!」 「血気盛んで良いことだ。やってみたまえ。出来るものなら」 笑みを浮かべ狙撃を回避しながら、デイムズは浄化師達に襲い掛かって来た。 この時点で、それぞれの配置に浄化師は就く。 そこから本格的な戦いが始まった。 ●村人を逃がせ! 「ヴィオラ、先に行け。ここより先は死守する」 「はい」 信頼するように言葉を交わし、ヴィオラは走る。 そこに横合いから、敵浄化師の1人が突っ込んで来た。 「何故一般人まで巻き込んで殺そうとする。お前達には浄化師としての誇りは無いのか」 ニコラは壁になるように前に立ち塞がり、憤るように声を掛ける。 だが、敵浄化師は応えない。まるで心が無いかのような無表情を見せていた。 無表情のまま、敵浄化師はニコラの横を抜けようとしたが、ヴィオラが去り際に放ったタロットカードに邪魔された。 敵浄化師はタロットカードを長剣で薙ぎ払うが、その隙にニコラが肉薄する。 即座に敵浄化師は反応し、ソードバニッシュを放つ。 瞬速の抜き打ちを、ニコラはギリギリ、デモン・オブ・ソウルで受け止めた。 (重い!) 危うく打ち負けそうになるが、反撃の没終を叩き込む。 狙いは武器破壊。 渾身の力を込め打ち出すが、敵は長剣を合わせて来る。 武器と武器の撃ち合う音が響く。 反動で武器を落としてしまいそうになるほどの衝撃が手に伝わった。 (簡単には止められんか) 敵の強さを実感しながら、しかし先には行かせんと、不退転の覚悟で武器を振るい続けた。 その横を通り抜けようとする相手には、リューイが止めに入った。 「セラ、先に行って」 「ええ」 リューイを信頼し、後ろを振り返ることなくセシリアは全力で走る。 その信頼に応え、リューイは敵浄化師に対峙した。 「ここから先には行かせません」 不退転の決意を胸に、リューイは刃を振るう。 黒色と白色、2色の刃を閃かせる。 魔性憑きらしい軽快なステップを生かした斬撃は、しかし当たらない。 (この人も魔性憑き、か) リューイの鋭い斬撃を、敵浄化師は軽やかなステップで避けていく。 全てを避け切り、リューイの攻撃が止んだ一瞬の隙を掴んで、即座に反撃。 素早い動きで3連撃。 だが、その全てをリューイは回避。 逆にカウンターのスイッチヒッターを発動し、敵浄化師の腕を斬り裂く。 しかし、浅い。 敵浄化師はリューイを手強いと見たのか、戦わず横を抜けようとするが、リューイは素早く立ち塞がる。 「この先には、戦えない人しかいないんです。絶対に通しません」 リューイの決意に、敵浄化師は排除のみに集中する。 目まぐるしく斬り掛かってくる敵浄化師を、果敢に止めるリューイだった。 そうして敵を抑えてくれている間に、セシリアとヴィオラは村人達の元に辿り着く。 「安全圏まで誘導します。落ち着いて避難を」 セシリアの言葉に、オクトが反応する。 「ふざけるなよ浄化師。お前らもあいつらの仲間じゃないのか」 「あれは教団の恥部。私達が責任を持って排除します。その間に、ここから逃げましょう」 オクトと真正面から視線を合わせ、ヴィオラは応える。 「そんなもの、信用でき――」 「オクトの皆さんは教団を信じられないと思います」 視線を合わせたまま続ける。 「教団は信じなくて良いです。私達を信じて下さい」 そう言うと、武器を外して渡す。 「信じられないならこれをお渡ししておきます」 「お前――」 ヴィオラの覚悟にオクトが返そうとした、その時だった。 敵浄化師の1人が放ったエクスプロージョンが、近くで炸裂する。 爆炎と爆風が吹き荒れ、ヴィオラは咄嗟に、身体を張って盾になる。 「大丈夫ですか?」 「――っ」 苦い顔になるオクト。 そこにリチェルカーレが慌てて走り寄る。 「怪我を! 治します!」 「私は大丈夫です。それより、他の人達を」 天恩天賜を止めるヴィオラに、リチェルカーレは浄化師として、村人の回復を優先する。 「分かったわ。でも、苦しかったらすぐに言ってね」 少しでも早くヴィオラを回復できるよう、リチェルカーレは素早く怪我をした村人に天恩天賜を掛けていく。 この身体を張った行為により、村人とオクトは、避難誘導に協力し始める。 「仲間が抑えてくれている間に避難を」 セシリアは村人達を安心させるように、落ち着いた声で誘導していく。 「大丈夫。安心してください。仲間たちは強いんです」 今も敵浄化師を抑えてくれているリューイ達を信頼するセシリアの言葉に、村人達は恐慌を起こすことなく避難に動く。 「慌てなくても大丈夫です」 誘導しながら、協力も頼んでいく。 「若い人で元気な人は、お年寄りの避難の手伝いをお願いします」 全体を見ながら、魔術通信も使い、皆を先導していった。 これらにより、避難誘導は進んでいく。 殿をオクトが務める中、一緒に避難誘導するヴィオラは、すまなそうに言った。 「皆さん、怖い思いをさせて申し訳ありません」 これにオクト達は、苦い表情をするのだった。 避難誘導は進んでいく。 ある程度目処がついた所で、皆の回復を終わらせたリチェルカーレは、敵浄化師の抑えに向かう。 「避難、お願いします。わたしは抑えに動いてくれる、みんなの助けに行きます」 リチェルカーレは、ヴィオラとセシリアに声を掛けると、急いで走り出す。 その頃、敵浄化師との戦いは白熱していた。 「殺しはしないわ、哀れな同胞さん。ただ少し、バテるまで踊って頂戴」 リコリスは、敵浄化師の1人との間合いを詰める。 敵は片手盾と、巨大な鉄槌を持っている。 跳び込んでくるリコリスに、敵は鉄槌を大きく振りかぶり一気に振り降ろした。 (当たったら、ただじゃ済まないわね。でも――) 鉄槌の一撃をリコリスは見切ると、打点を見極め回避する。 リコリスに避けられた鉄槌は、地響きすらさせ地面に突き刺さった。 そこから即座に、敵は鉄槌を間横に振ろうとする。 しかしリコリスの動きの方が速い。 素早い動きで死角に移動すると、鋭い斬撃を放つ。 だが敵は、予想していたかのような動きで、それを片手盾で受け止めた。 (強いわね) 盾に受け止められた反動で、手が痺れるような衝撃を受ける。 そこに敵は追撃を掛けようとするが、リコリスは危なげなく避けると、カウンターの斬撃を放つ。 浅くだが、幾筋かの傷を与える。 けれど戦闘不能に追い込むには、まだ足りない。 (やられるつもりはないけど、時間が掛かりそうね) 敵は、防御に優れた墓守。素早さと手数で戦う魔性憑きにとって、ある意味面倒な相手だ。 (トールと連携を取れれば良いんだけど) いかんせん、それは叶わない。 敵は、一塊になって村人達に襲い掛かるのではなく、分散して襲撃する形を取っている。そのため浄化師は個別に対応するしかなかった。 敵の動きは、誰かが攻撃を受けている間に村人とオクトに近付き殺せれば良いという、自分の身を全く省みない戦法だった。 (命令されているのかもしれないけど、命が惜しくないのかしら) 傷を受けても全く表情ひとつ変えない敵に、薄ら寒い物を感じながら、リコリスは戦いを続けて行った。 そんなリコリスに向け、敵の悪魔祓いが狙撃をしようとする。しかし―― 「させるか!」 トールのピンポイントショットが狙撃を止める。 針の穴を通すような精密射撃は、敵の肩を掠るように当たる。 すると敵は即座に狙いをトールへと変更。 狙いをつけ引き金を引く。 (まずい!) 敵の構えから攻撃を読んだトールは、全力でその場を退避。 紙一重の差で、先程までトールがいた場所に無数の銃弾が降り注いだ。 (マッピングファイアを撃てるのか。下手に一箇所に固まる訳にはいかないな) 仲間と合流することは捨て、敵を引き付けることに集中する。 お互い狙撃を繰り返しながら、少しずつトールが押していく。 敵の動きを抑えるように撃ち続けながら、少しでも良い位置を取り合うために目まぐるしく走り回る。 同時に、トールは残りの敵にも意識を向ける。 (浄化師が7人ということは、一人はデイムズのパートナーのはずだ。そいつを抑えられれば……) 少しでも手かがりになる挙動がないか探るが、敵に狙われている状況では巧くいかない。 (まずは目の前の相手を抑えるしかないか) 意識を切り替え、トールは目の前の敵に集中した。 皆が敵と戦う中、必死に相手に呼び掛ける者もいる。 「やめなさい! 私達の敵は人ではなく神なのをお忘れですか!?」 ヨナは間合いに入られないよう動き回り、あるいは攻撃魔術で牽制しながら、敵である獣人の浄化師に呼び掛ける。 敵は拷問官の浄化師。 武器は手甲型の魔喰器を装備している。 動きはしなやかであり、巧妙さもあり、時にフェイントを使って間合いを詰めて来ようとする。 (間合いを詰められたら負ける) 敵の動きから即座に判断したヨナは、先読みに近い動きで敵を近づけない。 (ベルトルドさんとの訓練のお蔭で、なんとかなっていますが……) 時折、ベルトルドと行っている戦闘訓練が、ヨナに戦局の有利を導いている。 しかし、それだけに接近戦で戦えば自分が不利だということは、戦うまでもなく分かる。 ゆえに、距離を取っての攻撃魔術の連打。勝利するにはそれしかない。だが―― 「止まりなさい!」 ヨナは制止の声を掛けながらソーンケージを放つ。 魔力で出来た茨は敵を絡めとり、下手に動けば傷だらけになる。 だというのに、敵の速度は落ちない。 皮膚を切り裂かれながら間合いを詰めて来ようとする。 「なにをしてるんです! 死んでしまいますよ!」 血を流しながら、何の感情の色も浮かべず突進してくる敵に、ヨナは怖気が走る。 (普通じゃない。何かされてる?) 魔力探知で探るが、魔力の乱れは、怪我をしているというのに異常なほど全くなかった。 (魔術が理由じゃない。だとしたら――) 薬等を用いた洗脳。もしそうだとしたら、今すぐこの場でどうにか出来る方法はない。ならば―― 「死なない程度に、戦闘不能になって貰います」 敵を止めるべく、ヨナは魔術を連打した。 そのすぐ近くで、ベルトルドが敵の1人を制圧しかけていた。 (狂信者か) 立て続けに攻撃魔術を放って来る敵に、ベルトルドは機先を見極める。 ヨナと行った戦闘訓練が、ここで役に立つ。 攻撃範囲をギリギリで見極め、敵の攻撃を誘う。 それに敵は引っかかる。 立て続けに攻撃魔術を放ち、次を放とうとする僅かな隙を突いて、ベルトルドは間合いを詰める。 敵は反応しきれない。 反射的に攻撃魔術を放つが、その全てをベルトルドは回避。 近接戦闘の間合いにまで詰めると、敵の腕を掴み引き寄せ、腹に打突。 そこから流れるような動きで背後に移ると肝臓打ち。 普通なら痛みで悶絶する所を、敵は即座に襲い掛かってくる。 「止めろ! 死ぬぞ!」 ベルトルドの制止の声など知らぬとばかりに、敵は攻撃を重ねて来る。 (おかしい。どういうことだ) 明らかに異常な敵の様子に、歯噛みするベルトルドだった。 戦いの中で、敵の異常さが分かってくる。 その異常さに、レオノルは寒気を感じながら戦っていた。 (明らかに様子がおかしい) ソーンケージの傷をものともせず襲い掛かってくる敵に、レオノルは異常を感じ取る。 (まるで自我が無いみたいだ……魔術による思考操作?) 不自然な点がないか魔力探知で探るが、異様に安定した魔力の流れ以外に異変は感じない。 (魔術じゃない。なら、薬物を使った洗脳? それなら、医学と薬学に詳しいショーンに聞けばあるいは……!) レオノルの考えは、間違ってはいない。 魔術ではない以上、それは薬物と条件付けを利用したマインドコントロールによる洗脳。 方法が分かれば、薬と魔術を併用すれば改善する可能性がある。 だが、そのための時間が今は無い。 薬物やマインドコントロールで、いわば物理的に脳を弄られているような物だ。 それを改善するためにはどうしても長い時間が必要になる。 敵浄化師を駒として見ているデイムズは、その場でどうにかなるような駒を使っているとは思えない。だからこそ、いま敵を止めるためには―― (戦闘不能にするしかない) 止む無く魔術の連打による戦闘不能にしようとする。 その時だった。 対峙している敵浄化師に、離れた場所から魔力による因果線が接続される。 (デイムズの居る方向から?) 魔力探知で確認しているレオノルは推測する。 (パートナーとの契約による因果線? それならこの人がデイムズのパートナー? でも普通、契約してるからってこんなのが見える訳が――) 推測している間に、デイムズからの因果線とみられる魔力の糸は、他の敵浄化師にも伸び結びつく。 (どういうこと!? パートナーが複数いる? そんな訳が……) 混乱するレオノルの前で、敵浄化師の肌に魔方陣が浮かび上がる。 (アウェイクニング・ベリアル!?) レオノルの見立て通り、目の前の相手は覚醒しているように見える。 だが、その割には強さは変わらない。 その代り凶暴さが増している。 まるで、覚醒の強さだけを誰かが手に入れて、それによるリスクのみを押し付けられているように見えた。 「ガアアアアッ!」 狂暴化した敵浄化師が襲い掛かってくる。 反射的にレオノルはアビスブリザードを放つも、敵は氷の槍に足を刺されながら、変わらぬ速度で突進してきた。 肉薄する。その瞬間、リチェルカーレが援護に入る。 禁符の陣による拘束と束縛。 敵が一時的に動きが止まった瞬間、リチェルカーレは必死に呼びかける。 「やめてください! わたしたちは敵じゃないわ!」 けれど対峙する浄化師の殺意は止まらない。 (こんなのって……) ウィッチ・コンタクトで魔力の流れを見ているリチェルカーレは、今の状況が明らかにおかしいことが理解できる。 だからこそ、決意する。 「レオノル先生、止めましょう」 「うん。止めないと」 2人は協力し、目の前の相手を抑えていった。 浄化師により、避難誘導は巧くいき、敵浄化師を確実に抑える。 だからこそ、勝負の趨勢はデイムズとの戦いに関わってくる。 その決着をつけるべく、対峙する浄化師達は激闘を繰り広げていた。 ●デイムズを撃退せよ! 「素晴らしい! もっと楽しませてくれたまえ!」 歓喜を浮かべるデイムズに、浄化師達は連続して攻撃を叩き込む。 最初に跳び込むのはシリウス。 神速の踏み込みと同時に放つのは、閃光の如き速さのソードバニッシュ。 並の相手であれば避けるのはおろか、斬撃を放たれたと気付く事さえ出来ない一撃。 それをデイムズは、手にしたフォボスで捌く。 シリウスの剣閃の軌道に合わせ、自らも抜刀。 フォボスを打ち合わせ、剣閃の軌道を書き換えるようにして逸らす。 ソードバニッシュを捌かれたシリウスは、距離を取らずむしろ間合いを詰める。 そこから強引に蒼剣アステリオスを打ち込み、デイムズは危なげなくフォボスで受け止める。 「ふむ、良い腕だ。私の部下になる気はないかね?」 これにシリウスは挑発するように薄く笑う。 「大元帥クラスと聞いたが、クロードとはだいぶ違う。……人望がなさそうだ」 「青いな。若いの」 余裕をもってデイムズは返した。 「人を支配するのに必要なのは力だ。人望など、力で幾らでもねじ伏せられる」 笑みを浮かべそう言うと、デイムズはシリウスを押し返す。 そこにクリストフの追撃が入る。 疾風の如き速さで間合いを詰め、暴風の如き勢いで陽炎剣ロキを放つ。 それをデイムズは腰を落とし、フォボスで受け止める。 鍔迫り合いをしながら、クリストフは少しでも仲間の攻撃の助けになるよう、挑発するように声を掛けた。 「初めましてだよね。教団が嫌われるような事やめて貰えないかなあ。まともな浄化師が迷惑するんだよね」 余裕を見せるようにニッコリ笑い相手の腹を探るように話し掛け気を引く。 するとデイムズは、獰猛な笑顔を浮かべ返した。 「おかしなことを言うな、若いの。まともな浄化師? そんな物が必要かね? 要らぬよ。必要なのは、私の役に立つ駒だ」 「なにを、言ってるんですか」 デイムズの言葉に、アリシアは悲痛な声を上げる。 「デイムズさん。あなたは、何故、人を殺そうとするのですか? ここにいるのは、村の人。オクトとは言え、戦う術を持っていない人。なのに、部下を駒のように使ってまで、どうして」 「必要だからだが?」 平然とデイムズは言った。 「教団上層部に逆らうヨセフを粛正する。そのために必要な戦争の理由を作るために村人には犠牲になって貰う。私の部下は、それに必要な駒というだけだ。何か、おかしい所があるかね?」 「なんて、ことを……」 アリシアは、もはや苦しそうに言った。 「教団は、みんなを、脅威から守る組織じゃ、ないんですか? あなたのような方がいるから、お姉ちゃんは……きっと、オクトに……」 激情が湧き立ち、アリシアは鬼門封印を放ちデイムズの動きを阻害しようとする。 しかしその瞬間。デイムズはクリストフを押し返すと、解析の魔眼で鬼門封印を読み解く。 そして効果が発動される前に、鬼門封印の構成式をフォボスで叩き切り無効化させる。 そこへ間髪入れず、ショーンのポイズンショットが放たれた。 「ふむ。やはり厄介だな、その銃は」 ポイズンショットを回避しながら、デイムズはショーンの攻撃を危険視する。 解析の魔眼で、ショーンの狙撃を見たデイムズは、その銃弾に特殊な効果があることを見抜いていた。 そのため常にショーンの狙撃を意識し、絶対に当たらないように回避に専念している。 それがあるからこそ、いま浄化師達は互角に戦えていた。 すでに黒炎魔喰器は解放している。 それにより、最初は有利に戦えていた浄化師達だったが、途中からデイムズが覚醒し、戦闘が激化した。 「これは転魔というのだよ。理性を保ったままの覚醒。連れて来た駒がべリアルになるかもしれんが、必要経費というヤツだ」 平然と応えるデイムズに嫌悪感を抱きながら、浄化師は攻撃を重ねていく。 「デイムズ!」 注意を引くため、あえて大きく声を掛けながら、リンファは真っ直ぐに跳び込む。 疾風の如き速さの踏み込みから、暴風の如き勢いの抜刀。 蒼滅呪刀・化蛇の一撃を、デイムズは真正面から受け止める。 「ほぅ。以前見た時よりも、格段に強くなっているな。ふむ、これなら、妹ではなく君が死んでくれた方が良かったな。死んでいれば、良き駒になっただろうに」 「――っ! なにを言っているんです!」 激昂するリンファに、デイムズは笑顔で返す。 「ははっ、知りたければ死にたまえ。そうすれば分かるとも」 そう言うと、デイムズは脱力する。 それまで打ち合わせていたリンファは、思わず体勢が崩れる。 そこにデイムズが首を狩り獲ろうとするが、させぬとステラが突っ込む。 「マーに何すんだ!」 リンファの背に隠れての吶喊。突進の勢いも込め、両手斧アヴェンジャーを全力で振り下ろす。 「元気が良いな」 デイムズは余裕を持って受け止める。 細い刀身しかないフォボスで、危なげなく受け止めると、そのまま弾くように振り抜く。 「ステラ!」 吹っ飛ばされるステラに、リンファは思わず声を上げる。 するとデイムズは、余裕のある声で言った。 「他人の心配をしている場合かね? そんな物より全力を出したまえ。でなければ、殺すぞ」 挑発してくるデイムズには乗らず、リンファはヒット&アウェイを意識し攻撃を重ねていった。 浄化師は途切れず攻撃を重ねていく。 だが、デイムズを追い込むことができない。 それは転魔による覚醒と、解析の魔眼による見極めのみならず、百戦錬磨の戦士としての経験ゆえだ。 いまデイムズは、完全に避けと待ちに徹している。 それは黒炎魔喰器の効果時間切れを狙ってのもの。 黒炎魔喰器を使っている今なら、デイムズと浄化師達の力は拮抗している。 何かあれば、勝敗の天秤は浄化師に傾くほど。 だからこそデイムズは焦らない。 狡猾な狩人は、獲物の息が途切れる時を待っていた。 その均衡を崩したのは、リンファだった。 (解析の魔眼。あれをどうにかしないと) 死角や太陽を背にすることを意識し立ち回るリンファだが、それが巧く効果を見せていないことに焦り始める。 (単なる視覚的な物では効果がないのですか?) 死角からの攻撃にも反応し、太陽の眩さにも目をくらませた様子はない。 (魔術的、あるいは魔法的な物だから、普通の視覚的な目くらましでは無駄ということですか? もし、そうなら――) リンファは手にした化蛇を握りしめ、その特殊能力を開放する。 「波濤に沈めろ、化蛇!」 刀の間合いの外からの振り抜き。 それは黒炎が変化した巨大な波を生み出しデイムズへと向かう。 「たいそうな技だ。当たらなければ意味がないがね」 デイムズは余裕を持って回避。 だが、その途中で自らの失策に気付く。 「しまっ――」 慌ててその場を離れようとするが、そこにステラが吶喊する。 「にげるなーっ!」 デイムズは舌打ちしながら、ステラの一撃を弾く。 しかしそれによって、僅かだが動きが止まる。 その位置は、リンファの化蛇により生み出された大波が壁となり、他の浄化師の位置を隠している。 ただの水による大波ではデイムズの魔眼であれば透過してその先を見ることが出来る。 けれど黒炎魔喰器により生み出された大波は別だ。 解析の魔眼ですら見通すことが出来ない。 「どこから来る?」 デイムズが構える中、右手からシリウスが踏み込んだ。 「デイムズ!」 注意を引くための呼び掛け。 反射的にそちらにデイムズの意識が向いた瞬間、リンファは化蛇により生み出された大波を消す。 障害物がなくなった所で、待ち構えていたショーンがピンポイントショットを放つ。 針の穴を穿つほどの精密狙撃に、不意を突かれた形のデイムズは避け切れない。 回避に動こうとするも肩を撃ち抜かれた。 「おのれ!」 初めて余裕のない声を上げるデイムズに、シリウスは斬り掛かる。 放つは反旗の剣。 傷口は浅く、だがそれにより処断の剣が発動する。 「があっ!」 デイムズの身体に、幾つもの傷が刻まれる。 それはシリウスが受けた傷と同じ物。 応報の呪詛魔術が込められた一撃は、シリウスのダメージをそのままデイムズに与えた。 「ちっ!」 舌打ちし、デイムズは一端その場を離れようとする。 だが、クリストフの追撃が立ちはだかる。 「邪魔だ、小僧」 デイムズはクリストフを排除するべく、この日初めて、本気の一撃を放つ。 まさしく目にも止まらぬ抜き打ちが、クリストフを袈裟がけにするべく襲い掛かる。 しかしそれが当たる瞬間、顔をひきつらせたのはデイムズだった。 「貴様っ!」 クリストフの黒炎魔喰器、陽炎剣ロキの特殊能力が発動する。 デイムズの一撃がクリストフを斬り裂いたと思った瞬間、逆に斬り裂かれたのはデイムズだった。 黒炎解放中、一度だけだが、敵の攻撃を反射する特殊能力が発動したのだ。 自らの一撃を受け、動きが止まるデイムズ。 そこに間髪入れず、クリストフは反旗の剣を叩き込む。 今までクリストフが受けた傷を、デイムズは味わわされた。 繰り返された攻撃にデイムズは傷だらけになる。 それを好機と、浄化師達は一斉に攻撃した。けれど―― 「舐めるな!」 デイムズは歴戦の戦士としての実力を見せつける。 リンファの斬撃を弾き、続くステラの振り降ろしを横手から打ち据える。 シリウスの双剣を受け流すように捌き、クリストフの一撃を叩き落とす。 そこからショーンの精密射撃を読み切り、大きく後方に跳び間合いを取った。 余裕のある距離で、デイムズは獰猛な笑みを浮かべる。 「いいぞ、何年振りか。死線を感じたのは」 愉しげに言うデイムズの身体からは、しゅうしゅうと音をさせ蒸気が上がる。 高速再生による高温が、湯気を上げさせていた。 もはやベリアルなみの再生力を見せるデイムズが、再び戦おうとした、その時―― 『村の人達は安全な場所にまで逃がしました』 避難対応に回っていたセシリアの魔術通信が聞こえる。 それを聞いたデイムズは、殺気を消し言った。 「見事だ。今日の所は、そちらの勝ちだ」 ゲームの一戦を終えたかのような軽々しさで、その場を後にしようとする。 それをクリストフが止める。 「待ちなよ。負けを認めたなら、こちらの疑問に答えるぐらいのことはしていきなよ」 少しでも情報を得るための呼び掛け。 これにデイムズは面白そうに応えた。 「ふむ、確かに。若いの、何が聞きたい?」 「あんたの目的がただ村人を殺すことだとは思えない。一体何を企んでる」 「戦争だ」 平然とデイムズは言った。 「ヨセフ殿と戦争がしたいのだよ。もちろん、君達ともだ。その大義名分を得るために、オクトと村人には犠牲になって貰おうとしただけだ」 「腐ってるな」 シリウスは吐き捨てるように言った。これにデイムズは大いに笑う。 「はははっ、若いな。それが人だ。死山血河を築き我を通す。人とは本来そういうものだ。もっとも最近は純粋さが足らん。戦争するにも手間が掛かる」 「そんなこと、出来る訳ないじゃないですか」 リンファは苦渋を飲み込むように言った。 「貴方の暴虐を、上層部が許す筈が――」 「許さない? 誰がだね? 君の言う上層部には、私も含まれているのだよ」 「ああ、そうだ……そうでした。貴方も確かに、教団上層部の一人でした……!」 信じてきた物に裏切られたように悲痛な声をリンファは上げる。 それを面白そうに見るデイムズに、ショーンは言った。 「腐ってるな……何もかも貴様の蹂躙対象のつもりか……いつか必ず相応の報いを受けさせてやる!!」 「はははっ、楽しみだ。やってみたまえ、若いの」 デイムズは楽しげに笑うと、負傷した部下の浄化師を引き連れ、その場を去って行った。 戦いが終わり、浄化師達は村人とオクトの元に向かう。 そこで怪我をした者を応急処置していくが、村人はともかくオクトは警戒している。 けれど、それでも皆は怪我人を癒すために動いていった。 「……別に嫌ってくれてもいい。ただ俺がしたいだけだ」 苦悩を飲み込むショーンに、オクトは苦い顔をしながらも、無言で応急処置を受けていった。 怪我を癒し、あとは教団に帰るだけ。 しかし浄化師の胸中には、デイムズに引き連れられていた浄化師達のことが気に掛かる。 「……なんでみんなデイムズの道具に。何とか解放する方法ないかな……?」 レオノルは手段を模索し、ショーンは少しでも力になれないかと、自らの知識と経験を動員する。 それでも、今この場で答えは出てくれない。 敵の非道に、皆は憤る。 「こんな……未だ浄化師に人体実験のような事……頻繁にあってはなりません」 ヨナは憤りを飲み込みながら呟く。 「どうして前に進もうとする度、教団という組織が枷となってしまうのか」 悔しさに唇を噛みしめ、それでも答えを探そうとするように思い悩むヨナだった。 かくして指令は終わりをみせる。 浄化師達が役割を巧く分担し、最適に動けたからこそ、犠牲者を1人も出さずに済んだ。 少しでも今回の結果よりも拙ければ、死者はともかく、後遺症が残るほどの負傷者が出る所だったが、1人も出さず村人もオクトも助けることが出来た。 デイムズを撃退し、被害を最小限に抑えることが出来た浄化師たちの活躍だった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[41] ヨナ・ミューエ 2020/04/06-23:07
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[40] ニコラ・トロワ 2020/04/06-22:35
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[39] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/06-22:25 | ||
[38] タオ・リンファ 2020/04/06-22:03
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[37] ニコラ・トロワ 2020/04/06-20:44 | ||
[36] ヨナ・ミューエ 2020/04/06-16:16 | ||
[35] タオ・リンファ 2020/04/06-00:41
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[34] ニコラ・トロワ 2020/04/05-23:22
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[33] リューイ・ウィンダリア 2020/04/05-22:36
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[32] クリストフ・フォンシラー 2020/04/05-21:33 | ||
[31] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/05-21:15 | ||
[30] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/05-17:47 | ||
[29] ショーン・ハイド 2020/04/05-17:38 | ||
[28] タオ・リンファ 2020/04/05-16:54 | ||
[27] リコリス・ラディアータ 2020/04/05-13:52 | ||
[26] タオ・リンファ 2020/04/05-11:37 | ||
[25] リューイ・ウィンダリア 2020/04/05-10:34
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[24] ヴィオラ・ペール 2020/04/05-00:06 | ||
[23] レオノル・ペリエ 2020/04/04-23:26 | ||
[22] リコリス・ラディアータ 2020/04/04-22:39 | ||
[21] クリストフ・フォンシラー 2020/04/04-20:42 | ||
[20] ヨナ・ミューエ 2020/04/04-16:50 | ||
[19] ヴィオラ・ペール 2020/04/04-11:28
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[18] ニコラ・トロワ 2020/04/04-11:14 | ||
[17] リューイ・ウィンダリア 2020/04/04-09:00 | ||
[16] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/04-00:40
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[15] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/04-00:34 | ||
[14] ショーン・ハイド 2020/04/03-22:29 | ||
[13] クリストフ・フォンシラー 2020/04/03-21:48 | ||
[12] リコリス・ラディアータ 2020/04/03-16:51
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[11] タオ・リンファ 2020/04/03-15:56 | ||
[10] ヨナ・ミューエ 2020/04/03-14:12 | ||
[9] ニコラ・トロワ 2020/04/03-00:20 | ||
[8] リューイ・ウィンダリア 2020/04/03-00:11
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[7] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/02-23:20 | ||
[6] リコリス・ラディアータ 2020/04/02-23:18 | ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2020/04/02-22:58
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[4] クリストフ・フォンシラー 2020/04/02-22:51 | ||
[3] ショーン・ハイド 2020/04/02-20:17 | ||
[2] タオ・リンファ 2020/04/02-13:16 |