そして波は引いていく
普通 | すべて
1/1名
そして波は引いていく 情報
担当 春夏秋冬 GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 2 日
公開日 2022-05-10 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2022-05-10



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

シィラ・セレート エフェメラ・トリキュミア
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / エレメンツ / 狂信者
ルシアの過去をお茶会で聞いていたら
突然の連絡、何事?
感覚で分かる、何かが起きたと

エフェメラ様、と呼んでも黙り込んでいて
よく見れば、考え込むような顔
無理矢理引っ張って詳しい話を聞きに

海で生物?でもそれだけでこんな慌ただしくはならないでしょ?
まさか、地獄から?……そうじゃないの?
見たことがない姿だけど……ルシア!?
突然飛び出した彼女を追いかける
止まりなさい、外は嵐よ!!

ひょっとして、彼女の故郷と関係が?
…なんだか、随分とうまくいくのね

辿りついた海はひどく荒れていて
ルシア!戻って!その先は危険よ!
ねぇ、誰と話しているの!?まさか…やめて!


~ リザルトノベル ~

「一体、何があったの!?」
 慌ただしく走っていた全界連盟職員を捕まえ、『シィラ・セレート』は問い質した。
「只事じゃないみたいだけど」
 連盟本部の家神であるシィラは、内部の状況をある程度把握できる。
 だが詳細を知るには聞いた方が手っ取り早いので尋ねると、職員は応えた。
「ランク3の緊急事態が発令されました」
「いきなりランク3!?」
 シィラは驚いて声を上げる。
 全界連盟では危険度に合わせてランクを決めているのだが、ランク3は『界滅因子発生』に相当する。
 すぐさま世界が滅ぶとは限らないが、放置すると世界崩壊に繋がりかねない危機のことだ。
「現状、手の空いている職員は現場に向かって貰っています。貴女達も可能なら向かって下さい」 
 言うなり、職員は慌ただしく離れていく。
(どういうこと? よりにもよって、こんな時に)
 アプスルシアの話を聞いて浮かび上がっていた懸念が、今回の緊急事態で形を結び始めている気がする。
(そんなこと……ないとは思いたいけど)
 嫌な予感は、当たるものだ。
「エフェメラ様」
 不穏な物を感じたシィラが呼び掛けると、いつもとは違う強張った表情になっているのに気付く。
「……」
 黙り込んだまま、深く考え込んでいるようにも見えた。
(エフェメラ様、何かに気付いたんじゃ……)
 思いついたシィラは、エフェメラの手を引くと、アプスルシア達に言った。
「このままここに居るより、詳しい話を聞くために司令部に行きましょう」
 そう言ってシィラは皆と走り出し――
「状況はどうなってるんですか!?」
 司令部に入り尋ねると、総司令である無名・一が応えた。
「時が来たってことだよ」
「どういうことです」
 聞き返すシィラに、一の隣にいるメフィストが応える。
「フラグを回収する時が来たってことでーす」
「それは全て決まっていたということか?」
(エフェメラ様!?)
 鋭く尖った声を上げるエフェメラに、シィラは驚く。
(本当の意味で、エフェメラ様に余裕がない……これは――)
 自分のことであれば、こうはならないだろう。
 つまりは、近しい大事な誰かの危機を感じているということだ。それは――
(……ルシア)
 シィラが視線を向ければ、彼女は前を見上げている。
 そこには指令部に設置された大判モニターがあり、今回の異常事態が起こっている場所を示していた。
「この場所って……」
 シィラは思わず息を飲む。
 モニターに映し出された場所は、アプスルシアが見つかった場所だった。
「何が起こってるんです!?」
 ざわつく思いに突き動かされシィラが問うと、一が説明してくれた。
「界滅因子を感知し、それを元に見つけ出した現場が、今モニターで映し出されてる場所だ」
 モニターを凝視するアプスルシアに視線を向けた後、一は続けて言った。
「現場観測している者からの報告だと、未確認の海洋生物が次々湧いて出ているらしい」
「海で生物? でもそれだけでこんな慌ただしくはならないでしょ?」
「真っ当な生物じゃないから問題だ。アレ、『生きて』ないぞ」
「生きてないって……死んでる? まさか地獄から?」
「いや、そういう意味じゃない」
 一は軽い口調で否定する。
「あれらは生死の枠組みから外れてる。そもそも生物じゃなく、歪みが具現化したようなもんだ」
(歪み!)
 シィラは、アプスルシアの言葉を思い出す。

 突然、海の中に……ひずみ? のようなものが現れて

(やっぱり、ルシアに関係してるっていうの?)
 胸騒ぎを抑えながら、シィラはメフィスト達に問い掛けた。
「それで、どうするつもりなんです?」
「既に現場への転移門は開きましたー。場所は――」
 メフィストが話した途端、アプスルシアは駆け出した。
「ルシア!」
 気付いたシィラは、皆と共に追い駆ける。その途中――
「どうしたんだ!? ルシアが走っていったが何かあったのか!?」
 異変に気付いたラギアがシィラ達に同行する。
「クソっ、止められれてれば」
「まだ間に合う筈よ。急ぎましょう」
 焦る中、皆は転移門に跳び込み――

 嵐で荒れる海の前へと辿り着いた。

「ルシア!」
 嵐の先、奇怪な海洋生物が湧き立つ場所を見詰めるルシアに、シィラ達は駆け寄った。けれど――
「……」
 アプスルシアは奇怪な海洋生物達が湧き立つ場所を見詰め続けていた。
「――そうか……そうだ、そういうことだったんだ」
 全ての迷いが消え失せた、覚悟を決めた表情を見せている。
「ダメよ――」
 気付いたシィラがアプスルシアを止めようとするが、すでに遅かった。
「ルシア! 戻って! その先は危険よ!」
「それは出来ない」
 静かな声でアプスルシアは返した。
「私は、戻らなければならない。奴の言う通りに」
「何を言ってるの? ねぇ、誰と話しているの!? まさか……やめて!」
 荒れ狂う海へと進むアプスルシアを必死に止めようとするが、彼女は止まらない。
 そのまま進もうとして――
「命じる。爆ぜよ、嵐」
 エフェメラの極大魔法が、海を荒れ狂わせる嵐を消し飛ばした。
(凄い! これだけの魔法――エフェメラ様、奥の手を使ったわね)
 エフェメラの域にある大魔女は、普段消費しない魔力を蓄積し、刻印として自身に刻んでいる。
 恐らく今回使った刻印は、百年単位の物。
 まぎれもなく切り札のひとつ。
 それを惜しげもなく使ったエフェメラは、油断なく前を睨みつけている。
「エフェメラ様……?」
 不倶戴天の敵を前にしているかのようなエフェメラに、シィラが理由を尋ねようとする。
 だがその『答え』を示したのは、エフェメラでは無く悪魔だった。
「おやおや、気付かれましたか」
 神経に触る不快な声と共に、邪悪は姿を現した。
「人形遣い!!」
 幾度となく凶悪事件を引き起こした諸悪の権化に、シィラ達は一斉に戦闘体勢に移る。
「何しに来たの」
「ろくでもないことは確実だ」
 シィラとラギアが魔力を励起させ、すぐにでも叩けるように準備する。
 しかし人形遣いは、自分に向けられた敵意を愉しげに受けながら、アプスルシアを指差し言った。
「別に今日は、戦いに来た訳じゃありません。むしろ彼女を返してあげようというのですよ。元の世界に」
「どういうつもりだ」
 大海の如き重々しさを込め、エフェメラは人形遣いに詰問する。
「シィラに何かするつもりか? そうであるなら、消す」
 今まで以上に魔力を膨れ上がらせるエフェメラを前にして、人形遣いは涼しげに言った。
「言った通りですよ。彼女を元の世界に戻す、と。これは、この世界のためでもあるのですよ。何しろ彼女を戻さなければ、この世界に矛盾による歪みが存在し続けるのですから」
「何を言ってる……」
「おやおや、気付いてないのですか? それとも見て見ぬ振りですか? ふふ、かわいらしいですねぇ。だから、教えてあげますよ」
 シィラ達が油断なく警戒する中、人形遣いは言った。
「彼女は、本来この時代に存在しない人間です。遠い過去から、現在であるこの時代に転移している。それによる矛盾が、世界に歪みを作り出している」
「タイムパラドックスか……」
「ええ、そうですよ」
 愉しげに人形遣いは続ける。
「彼女の世界に渡った『私』の1人が、色々としてくれましてね。時間矛盾による界滅の誘発因子として、彼女を時間転移させた。それより、向こうの世界と繋がっているこちらの世界も影響を受け、本来なら存在しない筈のこの時代に、彼女は訪れたのです」
「貴様――」
 エフェメラは、長い人生で数えるほどしかない本気の怒りを抱く。
「最初からそのつもりだったのか」
「ええ。笑えましたよ。世界の滅びの鍵となり得る彼女を、そうとは知らずに保護してるんですから。笑えますね? 笑えます」
 くつくつと喉を鳴らすように笑う人形遣い。
 それを断ち切ろうとするかのように、ラギアは召喚した大斧の切っ先を向ける。
「べらべらと余計なことを喋って何のつもりだ?」
「言ってるじゃないですか、彼女を帰すと。でないと、歪みは在り続けますよ」
「そんなことをしてお前に何の得がある」
「更なる滅びの手段を手に入れるだけです」
 愉しげに人形遣いは応えた。
「彼女が戻れば、その揺り戻しで世界に大きな歪みが出来る。私はそれを利用します」
「それが本当ならさせるとでも――」
「止めますか? 御随意に。その時は彼女が存在することで歪みはあり続ける。どちらにしろ、私にとって役に立つ」
 笑いながら人形遣いは選択を示す。
 それはどちらを選んでも苦しい選択。
 だからこそ人形遣いは話し、苦悩の顔を楽しもうとした。けれど――
「ルシア!」
 エフェメラの呼び止める声を背に受けながら、アプスルシアは前に出る。
「止まれ、その先が其方の故郷である保証はない!!」
「ルシア! お前ひとりが犠牲になる必要もないんだ」
「お願い、戻って……ッ!?」
 皆の制止の声に、アプスルシアは笑顔を浮かべ応えた。
「ありがとう。私は、大丈夫だから」
 人形遣いが引き寄せた歪みを前に、アプスルシアは万感の思いを告げる。
「シィラ、私に寄り添ってくれてありがとう」
 姉に、あるいは母に言うように。
「ラギア殿、稽古をつけていただいたこと、感謝します」
 師に、あるいは父に言うように。
「リホリィ、その騒がしさは嫌いじゃなかった」
 友へと言葉を贈り――
「エフェメラ様――」
 思慕の念を抱きながらエフェメラを見詰める。それを受け――
「駄目だ! ルシア!」
 エフェメラは止めようとした。けれど――
「残念。手遅れです」
 笑いながら悪魔が、アプスルシアを歪みへと突き飛ばす。
 必死に手を伸ばすエフェメラ。
(頼む、手を取ってくれ!)
 けれどその思いにアプスルシアは応えられない。
(やめろ、やめてくれ、手を離さないで)
 慟哭のような眼差しを向けるエフェメラに、アプスルシアは想いを告げた。
「――お慕いしていました」
 伸ばした手は、届かない。
 歪みへと落ちたアプスルシアは、世界から消え失せた。
「ルシア!」
「止めろじいさん!」
 叫ぶ声が遠く響く。そして――

 一瞬。あるいは宇宙がひとつ終る刻が流れ――

「……ここ……どこ?」
 彼女は浜辺に現れた。
 彼女の記憶は、霞がかっている。
 自分が誰であるか? ここが何処か? どこから来て、誰と居たのか?
 分からない。解らない。
 でも朧げに、ここではない世界の光景が一瞬よぎる。そこに――
「どうしたの? 大丈夫?」
 偶々近くを通り掛かったローレライに、彼女は保護された。
 保護される中、来た場所や名前を尋ねられる。
「来た場所……異世界から来たの……名前は――」
 ふと、ひとつの名前が浮かんでくる。
「――シィーラ。そうやって、だれかが、呼んでいたような……」
 そうして彼女は、『シィーラ・ネルエス』として、この世界に帰還した。
 しばし、自分を落ち着かせるような時間を過ごし、シィーラは運命へと繋がる場所へと訪れる。
「ここが――」
 フトゥールム・スクエア魔法学園。
 ここで何が起こるのか? そして得られるのか?
 解らない。
 けれど予感はある。
「……待っててね」
 意識せず、小さく呟く。
 これから新たに始まる、長い道のりの果ての再会。
 知らずとも、魂は願っている。
 いつか戻るべき場所、彼らの元に、帰るのだと。
 波が寄せては、引いていくように。それまでは――
「はじめよう」
 シィラは学園生としての生活を、始めるのだった。


そして波は引いていく
(執筆:春夏秋冬 GM)



*** 活躍者 ***

  • シィラ・セレート
    あらあら、今日もみんな元気ね
  • エフェメラ・トリキュミア
    ひっ!?…な、なんだお前か…

シィラ・セレート
女性 / エレメンツ / 狂信者
エフェメラ・トリキュミア
男性 / エレメンツ / 狂信者