イベント概要
10月12日 23:30 から 10月31日 23:59 までの期間中、
エピソードイベント『怨讐のハロウィンナイト』を開催いたします!
期間中にエピソードタイトルの先頭に特別な文字「【魔女】」が記入されたエピソードが公開されます!
エピソードイベント『怨讐のハロウィンナイト』を開催いたします!
期間中にエピソードタイトルの先頭に特別な文字「【魔女】」が記入されたエピソードが公開されます!
教皇国家アークソサエティ全域は、絶賛ハロウィンムード。
リュミエールストリートでは仮装をした若者が歩いていたり、カボチャ料理やスイーツが売り出されています。
エクソシスト達も、世俗の盛り上がりに影響を受けた指令をこなしたりと、ハロウィンムードを楽しんでいました。
そんな人々が集まる主要都市から遠く離れた森の奥では、秘密裏に魔女集会「ワルプルギス」が催されていました。
不定期に開催されるこの集会に、魔女の派閥の一つである『怨讐派』が一つの計画を発表しました。
ヨセフ・アークライトが魔女狩りを積極的に行っていない、この隙に人間に復讐するべきではないか、というものです。
派閥の一つである『世俗派』はこれに反対し、むしろこのまま魔女に対する意識改革を行っていくべきだと主張します。
議論の結果、『怨讐派』はこれ以上は無駄だと議論を中断し、計画の実行を行うとして、姿をくらました。
『怨讐派』の計画とは、ハロウィンの夜、悪霊を魔法によって従えるなどして、人間達を殺し喰らうというもの。
仮装をしていれば、特に子どもなどは騙しやすいため、喰らいやすい。
計画を知った『世俗派』は、これの阻止を決定。
命を捨てる覚悟で教団に足を運び、『怨讐派』の計画をすべて暴露しました。
ヨセフ・アークライトは計画を聞き、『世俗派』の魔女と大きくわけて2つの対応を行うことを約束します。
・人間を食らおうとする魔女の処分(もしくは捕縛)。
・魔女が出現しない抑止力として、ハロウィンイベントへの参加。
ハロウィンの関連する依頼は、魔女がらみのものであるとして、エクソシストに指令を発令することとなりました。
そうして、奇妙なハロウィンが幕をあけることとなったのです。
プロローグ
その日は穏やかな夜だった。
秋ということもあり、部屋の中であっても清涼な空気が心地好い。
休むにも、そして仕事をするにも適している。
教皇国家アークソサエティ薔薇十字教団本部「室長」であるヨセフ・アークライトが、執務室で魔女と会談を行ったのは、そんな時だった。
「ウボー・バレンタイン。記録だと、お前はパートナーであるセレナ・エーデルハイトと共に死んだことになっているのだが」
椅子に座ったまま、ヨセフは静かに問い掛ける。
これに、対峙している3人組の1人が返した。
「ウボーと呼んで下さい。今はそれで通しています」
二十歳そこそこの逞しい青年、ウボー・バレンタインの応えに、ヨセフは残り2人に視線を向ける。
1人は涼やかな美女であるセレナ・エーデルハイト。
ウボーと共に、かつて魔女の討伐に赴き、相討ちで死亡した筈の浄化師。
そして残り1人。
見目良い美女といった姿をしたエレメンツに見える人物に、ヨセフは声を掛けた。
「なるほど。2人が生きている所を見ると、貴女が『幻惑の魔女』か」
「うわっ、種明かしする前に見破られちゃったよ」
楽しげに、幻惑の魔女と呼ばれたセパル・ローレライは声を上げる。
「すごいすごい! 『円転滑脱の権謀術策』の2つ名は伊達じゃないね!」
「褒めていただいて光栄だが、生憎と書類仕事が溜まっている。もてなしもせずに悪いが、用件を話して貰おう」
平然とした口調でヨセフは言った。
異常な光景である。
教団本部「室長」であるヨセフが、教団が邪悪と呼ぶ魔女を前にして言葉を交わしていることも。
教団に多くの同胞を殺された筈の魔女が、和やかな表情でいることも。
世間に広まった常識からすればあり得ない。
つまりそれは、世間に広まった常識、それこそが酷く偏ったものであることの裏返しだった。
「一言で言うとね、助けて欲しいんだ」
セパルの言葉に、ヨセフは僅かな黙考を費やし返した。
「魔女の中で、何か争いがあるのか」
「話が早くて助かるよ。怨讐派の魔女がテロを計画しているんだ。それを防ぐために手を貸して欲しい」
怨讐派の魔女。
それは世間が知らぬ、魔女の真実のひとつだ。
魔女とは全て、邪悪な魔法を使う人食い。
それが世間に流布された常識だ。
けれどそれは、正しい真実ではない。
そも魔女は大きく分けて3つの派閥に分かれている。
ひとつ目が世俗派。
最大勢力を誇り、自分達の生存と人権を確保するべく、秘密裏に協力者を得るべく活動している。
ふたつ目が隠遁派。
世俗からは完全に離れて生きており、良くも悪くもズレた意識を持った者達だ。
最後のみっつ目。
それが怨讐派だ。
ここが最も、世間が思い浮かべる魔女のイメージに近い。
すなわち、人食いを行い、時には魔法を使ったテロ行為に走る者達。
被害者から裏返った加害者。
それが怨讐派の魔女達だ。
魔女狩りにより、住む場所も大事な人も尊厳さえ奪われ、餓死すらしそうになった時。
憎悪と怒り、そして極限状態の錯乱から魔法で人を殺した。
そこから証拠隠滅と、何よりも飢えのために人食いを行ってしまったのだ。
しかも悪いことに、それだけでは済まなかった。
死体を食べたことで、『人間を食うことが、人間を克服したことであるという意識』が芽生え。
彼女達あるいは彼等は次第に、人間をとって喰うことを中心とした食生活に変わっていく。
そうした人食いの魔女達が睨みを利かすのが怨讐派と呼ばれる者達だ。
もっとも、怨讐派に属する魔女全てが人食いという訳ではない。
食べるために子供をさらったが、殺せずにそのまま育てている魔女なども居る。
そもそもが復讐心を抱えつつ、人間に対して直接の害を与えることをためらっている者も居る。
けれど彼女達に共通しているのは、人間に対する憎悪と怒りだ。
それほどに、魔女狩りが刻んだ傷は深い。
「ボク達、世俗派だけじゃ、手が足りないんだ」
セパルの言葉通り、魔女の中の最大派閥である世俗派であっても、怨讐派の全てを抑えることはできない。
そもそも世俗派の目的は、魔女の生存と人権の獲得。
全ての怨讐派を抑えきることまでは、人も労力も足りないのだ。
だからこそ、命を懸けてセパル達はこの場に来ていた。
魔女であるセパルはもとより、彼女に協力しているウボーとセレナも同じだ。
加えて言うならば、いつもなら使っている外見を変える幻惑系の魔法を使わずに、ヨセフと会っていた。
ある意味それは、ヨセフに首を差し出して嘆願することに近い。
だがそれと同時に3人は、したたかだった。
「タダでとは言わないよ。いくつか見返りは用意してる」
セパルの言葉を受け、ウボーが何枚かの書類をヨセフに手渡す。
中身に目を通したヨセフは返した。
「魔結晶を、こちらに供与するということか」
書類に書かれていたのは、魔結晶を採取することができる場所に対する概略。
「それだけじゃないよ。もし協力することが出来るなら、将来的には共同で魔法を使った新しい技術の開発もしたいと思ってるんだ」
笑顔のまま、セパルは続けて言った。
「その方が効率が良いと思うよ。魔女を実験動物にするために、デタラメを流すよりは」
魔女狩りが引き起こされるほどに、魔女が大悪であると流布したのは教団だ。
研究体として彼等を手に入れるために、魔女を確保しやすい印象操作をした。
とはいえ、それは過去の話。ヨセフが室長になってからは、研究は締結され、魔女狩りも教団側では行われていない。
「……耳に痛いな」
「そう思ってるくれなら、信用できるよ」
セパルは、ヨセフの言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべる。
そんな彼女を、ウボーは苦笑するように目を細めて見詰めたあと、ヨセフに提案を続けた。
「世俗派の魔女だけでなく、彼女達に協力する者達も、貴方の力になることを約束します」
「それは、お前の家が俺の下に就くという事か?」
「そう取っていただいても構いません。私の家は、今でこそ教団に従いながら貴族をしています。
ですが元々は、八百万の神々を祭る集団の祭司です。
だからこそ、八百万の祭司として協力関係にあった魔女のために動くことを躊躇いません。
貴方が、魔女の人権と生存の確保に協力していただけるなら、我々としても協力は惜しみません。
そして可能なら、私達の伝手を使って、更に貴方に協力する者達を紹介することも出来るでしょう」
セパル達の言葉を、ヨセフは吟味するために黙考する。
そして軽く息を抜くような間を開けて返した。
「俺の手が届く距離も、掴める物も、救えるものも――まだまだ足りない。
より遠くに手を伸ばし、より多くの物を掴むためになるのなら、協力しよう」
かつて妹と交わした約束を胸に秘めながらヨセフは断言する。
それに誠実に返すべく、セパル達は怨讐派たちの計画を、知り得る限り伝えていった。
(執筆:春夏秋冬 GM)
秋ということもあり、部屋の中であっても清涼な空気が心地好い。
休むにも、そして仕事をするにも適している。
教皇国家アークソサエティ薔薇十字教団本部「室長」であるヨセフ・アークライトが、執務室で魔女と会談を行ったのは、そんな時だった。
「ウボー・バレンタイン。記録だと、お前はパートナーであるセレナ・エーデルハイトと共に死んだことになっているのだが」
椅子に座ったまま、ヨセフは静かに問い掛ける。
これに、対峙している3人組の1人が返した。
「ウボーと呼んで下さい。今はそれで通しています」
二十歳そこそこの逞しい青年、ウボー・バレンタインの応えに、ヨセフは残り2人に視線を向ける。
1人は涼やかな美女であるセレナ・エーデルハイト。
ウボーと共に、かつて魔女の討伐に赴き、相討ちで死亡した筈の浄化師。
そして残り1人。
見目良い美女といった姿をしたエレメンツに見える人物に、ヨセフは声を掛けた。
「なるほど。2人が生きている所を見ると、貴女が『幻惑の魔女』か」
「うわっ、種明かしする前に見破られちゃったよ」
楽しげに、幻惑の魔女と呼ばれたセパル・ローレライは声を上げる。
「すごいすごい! 『円転滑脱の権謀術策』の2つ名は伊達じゃないね!」
「褒めていただいて光栄だが、生憎と書類仕事が溜まっている。もてなしもせずに悪いが、用件を話して貰おう」
平然とした口調でヨセフは言った。
異常な光景である。
教団本部「室長」であるヨセフが、教団が邪悪と呼ぶ魔女を前にして言葉を交わしていることも。
教団に多くの同胞を殺された筈の魔女が、和やかな表情でいることも。
世間に広まった常識からすればあり得ない。
つまりそれは、世間に広まった常識、それこそが酷く偏ったものであることの裏返しだった。
「一言で言うとね、助けて欲しいんだ」
セパルの言葉に、ヨセフは僅かな黙考を費やし返した。
「魔女の中で、何か争いがあるのか」
「話が早くて助かるよ。怨讐派の魔女がテロを計画しているんだ。それを防ぐために手を貸して欲しい」
怨讐派の魔女。
それは世間が知らぬ、魔女の真実のひとつだ。
魔女とは全て、邪悪な魔法を使う人食い。
それが世間に流布された常識だ。
けれどそれは、正しい真実ではない。
そも魔女は大きく分けて3つの派閥に分かれている。
ひとつ目が世俗派。
最大勢力を誇り、自分達の生存と人権を確保するべく、秘密裏に協力者を得るべく活動している。
ふたつ目が隠遁派。
世俗からは完全に離れて生きており、良くも悪くもズレた意識を持った者達だ。
最後のみっつ目。
それが怨讐派だ。
ここが最も、世間が思い浮かべる魔女のイメージに近い。
すなわち、人食いを行い、時には魔法を使ったテロ行為に走る者達。
被害者から裏返った加害者。
それが怨讐派の魔女達だ。
魔女狩りにより、住む場所も大事な人も尊厳さえ奪われ、餓死すらしそうになった時。
憎悪と怒り、そして極限状態の錯乱から魔法で人を殺した。
そこから証拠隠滅と、何よりも飢えのために人食いを行ってしまったのだ。
しかも悪いことに、それだけでは済まなかった。
死体を食べたことで、『人間を食うことが、人間を克服したことであるという意識』が芽生え。
彼女達あるいは彼等は次第に、人間をとって喰うことを中心とした食生活に変わっていく。
そうした人食いの魔女達が睨みを利かすのが怨讐派と呼ばれる者達だ。
もっとも、怨讐派に属する魔女全てが人食いという訳ではない。
食べるために子供をさらったが、殺せずにそのまま育てている魔女なども居る。
そもそもが復讐心を抱えつつ、人間に対して直接の害を与えることをためらっている者も居る。
けれど彼女達に共通しているのは、人間に対する憎悪と怒りだ。
それほどに、魔女狩りが刻んだ傷は深い。
「ボク達、世俗派だけじゃ、手が足りないんだ」
セパルの言葉通り、魔女の中の最大派閥である世俗派であっても、怨讐派の全てを抑えることはできない。
そもそも世俗派の目的は、魔女の生存と人権の獲得。
全ての怨讐派を抑えきることまでは、人も労力も足りないのだ。
だからこそ、命を懸けてセパル達はこの場に来ていた。
魔女であるセパルはもとより、彼女に協力しているウボーとセレナも同じだ。
加えて言うならば、いつもなら使っている外見を変える幻惑系の魔法を使わずに、ヨセフと会っていた。
ある意味それは、ヨセフに首を差し出して嘆願することに近い。
だがそれと同時に3人は、したたかだった。
「タダでとは言わないよ。いくつか見返りは用意してる」
セパルの言葉を受け、ウボーが何枚かの書類をヨセフに手渡す。
中身に目を通したヨセフは返した。
「魔結晶を、こちらに供与するということか」
書類に書かれていたのは、魔結晶を採取することができる場所に対する概略。
「それだけじゃないよ。もし協力することが出来るなら、将来的には共同で魔法を使った新しい技術の開発もしたいと思ってるんだ」
笑顔のまま、セパルは続けて言った。
「その方が効率が良いと思うよ。魔女を実験動物にするために、デタラメを流すよりは」
魔女狩りが引き起こされるほどに、魔女が大悪であると流布したのは教団だ。
研究体として彼等を手に入れるために、魔女を確保しやすい印象操作をした。
とはいえ、それは過去の話。ヨセフが室長になってからは、研究は締結され、魔女狩りも教団側では行われていない。
「……耳に痛いな」
「そう思ってるくれなら、信用できるよ」
セパルは、ヨセフの言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべる。
そんな彼女を、ウボーは苦笑するように目を細めて見詰めたあと、ヨセフに提案を続けた。
「世俗派の魔女だけでなく、彼女達に協力する者達も、貴方の力になることを約束します」
「それは、お前の家が俺の下に就くという事か?」
「そう取っていただいても構いません。私の家は、今でこそ教団に従いながら貴族をしています。
ですが元々は、八百万の神々を祭る集団の祭司です。
だからこそ、八百万の祭司として協力関係にあった魔女のために動くことを躊躇いません。
貴方が、魔女の人権と生存の確保に協力していただけるなら、我々としても協力は惜しみません。
そして可能なら、私達の伝手を使って、更に貴方に協力する者達を紹介することも出来るでしょう」
セパル達の言葉を、ヨセフは吟味するために黙考する。
そして軽く息を抜くような間を開けて返した。
「俺の手が届く距離も、掴める物も、救えるものも――まだまだ足りない。
より遠くに手を伸ばし、より多くの物を掴むためになるのなら、協力しよう」
かつて妹と交わした約束を胸に秘めながらヨセフは断言する。
それに誠実に返すべく、セパル達は怨讐派たちの計画を、知り得る限り伝えていった。
(執筆:春夏秋冬 GM)