イベント概要          
6月3日 18:00 からの期間中、エピソードイベント『ニホン友好大作戦!』を開催いたします!

期間中にエピソードタイトルの先頭に特別な文字「【友好】」が記入されたエピソードが公開されます!


緊急指令「海魔海戦アポルタージュ」の結果により、浄化師は無事に東方島国ニホンへの渡航を成功させました。
その際、八百万の神「オケアノス」から貰い受けたオケアノスの枝により、東方島国ニホンに居る八百万の神に便宜が図られます。
これにより、八百万の神との関係性が強い東方島国ニホンで浄化師は友好的に受け入れられました。

この流れを好機と見た室長「ヨセフ・アークライト」は、更なる東方島国ニホンとの交流を図ることで、外交上の優位性を確立することを計画。
浄化師が東方島国ニホンとの交流を行える指令を集中して出すよう、教団員に指示が出されるのでした。


*用語説明*魔法
「魔法」とは、大気の魔力を消費して発現できる奇跡です。
魔術とは異なり複雑な魔術式を必要とせず、体外の魔力を使用したり、他の生物などから力を借りることで発現する特質を持ちます。
魔力回路から生成した魔力を使用するわけではないので、魔力が枯渇する心配はほとんどありません。

魔女
数百年の時を生き、魔法を使うことができる者の総称です。
元々は「魔法使い」と呼ばれていましたが、忌み嫌われる存在として「魔女」と呼ばれるようになりました。
1100年頃に、突然変異種として生まれたエレメンツに類する生き物で、エレメンツと変わらない容姿を持ちます。
基本的に16歳~30歳の容姿をしていますが、年老いた容姿やこどもの姿をしている場合もあります。


プロローグ          

 エド城。
 東方島国ニホンの最高権力者である将軍の居城。
 そこで、ひとつの会談が行われていた。

「つまり、教皇の首をすげ替えるのに協力しろということか?」
 楽しげな口調で、エド幕府8代将軍『徳川義宗(とくがわ・よしむね)』は、教皇国家アークソサエティの使者である『ウボー・バレンタイン』に問い掛けた。
 これにウボーは返す。
「はい。すでに、シャドウ・ガルテンの統治者であるウラド・ツェペシェと、
 ノルウェンディの王であるロロ・ヴァイキングの賛同を得ています。
 貴方の賛同も得られれば、大きな一歩になり得るでしょう」
「ふむ」
 思案深げに、義宗は黙考する。

 いま話題としているのは、現教皇を退位させ、教団室長である『ヨセフ・アークライト』を教皇にするための発議についてだ。
 教皇国家アークソサエティと協力関係にある国のトップ。その一定以上の発議で、教皇交代の選挙が可能になる。
 この制度があるのは、教皇国家アークソサエティの外交のひとつだ。
 単一国家としてみれば最強であるアークソサエティ。
 その独走を許さないために他国が同盟を組み、戦争を仕掛ける事を防ぐ目的がある。

 教皇国家アークソサエティを中枢とする同盟国家体制。
 国際協力組織として機能させるために、他国に配慮した結果だ。
 もっとも、これには一つの絡繰りがある。
 教皇交代の発議は、確かに他国にあるのだが、実際にそれを良しとするかの決定権は、教皇国家アークソサエティの貴族達にあった。
 そのため発議をした所で、教皇国家アークソサエティの貴族達の支持も得なければ教皇の交代は実現しない。

(実現するかどうかが分からない博打に近いな)

 ウボーの申し出に乗るかどうか。
 義宗が変わらず黙考していると、助け舟を出す形で、この場に居る八百万の神が口を開いた。
「まずは、友好を深めてみればどうでしょう。
 親しくなれば、答えは出やすくなるかもしれませんよ」
 声の主は、一本の枝を手にした黒髪の女性。
 ヒューマンに見える彼女は、人の信仰心により神格を得た八百万の神の一柱。
 樹海の女神とも呼ばれる『なんじゃもんじゃ』だ。
 本体である巨木は富士の樹海にあるのだが、自身の枝を中継点にして作り出した分身を操り、この場に居る。
 なんじゃもんじゃに提案された義宗は、間を空けずに返した。
「確かに。私もそう思っていた所です」
 あっさりと賛同する。
 ニホンは八百万の神に対する畏敬の念が強い国であるため、なんじゃもんじゃの提案を、将軍であろうと無碍にはできない。
 そうした理由もあるが、それ以上に、元から義宗はウボーの提案を受け入れるつもりだった。

(変革の波が来ている。乗り遅れるのは損だ)

 かつては鎖国を維持していたニホンだが、ラグナロク以降は国力が落ち鎖国を取り止め。
 さらにアークソサエティの申し出に従い薔薇十字教団の支部を置くまでになっている。
 言ってみれば、他国の武力を国内に駐留することを許しているような状況だ。
 しかも国内通貨でさえ、アークソサエティのJr(ジェール)が一般には使われているほど。
 はっきり言って、状況的には属国に近い。
 この状況を変えるには、今のアークソサエティとの関係性を変えるしかないが、現在の教皇の元では望みが薄い。
 だからこそ、たとえ博打に近いとしても、賭ける必要がある。
 なんじゃもんじゃの提案は、義宗にとって渡りに船だった。
「我が国に滞在する、浄化師との友好を図るよう、私から国中に触れを出そう」
「ありがとうございます。友好を深めていただけるなら、何よりです。
 その始めとして、いくつかご提案したいことがあります」
 ウボーは、そう言うと、後ろで控えていた2人の女性に目くばせをする。
 これにウボーのパートナーであるセレナと、ウボーと行動を共にしている魔女セパルが、青く美しい器を義宗となんじゃもんじゃに渡す。
「これは?」
 見事な器に見ほれながら、義宗は問い掛ける。
 それにウボーは返した。
「ノルウェンディの名物である、トロール・ブルーです」
「ほう、これが……話には聞いていたが美しいな」
「お気に召していただけたなら、何よりで。その製法を、差し上げます」
「……本気か?」
「はい。それに、それだけではありません。
 我らとの友好が成し遂げられた暁には、さらなるご提案があります」
「ほう。それは、この美しい器を、この国で作れるようになる以上のことか?」
「はい。アークソサエティからニホンへの渡航に使用した蒸気魔術船ホープ・スワロー。
 この製法をお伝えします」
 息を飲むような間を空けて、義宗はウボーに返す。
「……ずいぶんと大盤振舞だな。それだけの物を提示されても、こちらには返す物は無いぞ」
「いえ、そんなことはありません。これは、こちらにも利のあることですから」
「利、だと?」
「はい。この国はヨハネの使徒が大量に存在する希望の塔が近いこともあり、
 他国よりもヨハネの使徒の出現率は高いと聞いております」
「それが一体……あぁ、なるほど。ホープ・スワローとやらは、
 ヨハネの使徒の残骸から作られるということか」
「その通りです。ホープ・スワローを作るためには、大量のヨハネの使徒の残骸が必要となります。
 この国ならば、それを多く集め、多くの船を作ることが出来ます」
「大量の船か……それを我らに作らせ、そちらが手にするということか」
「対価はお支払いします」
「それにより、この国は潤うと。
 実に、至れり尽くせりなことだが、そんなことをして何をする気だ」
「希望の塔への進攻です」
「……ほう」
 義宗はウボーの答えに、一瞬言葉を無くした。
 希望の塔は、神が地上にヨハネの使徒を送り込むために建設した塔であると言い伝えられており、神が住まう天界へ繋がっているとも言われている。
 かつて大船団で調査のために訪れるも、調査隊のほとんどが死亡し、あるいは失踪した場所。
 それだけに、そんな場所に攻め入るなど、今ではほとんど全ての者が思いつきすらしない。
 それを成し遂げるために協力しろと、ウボーは言外に含めて伝えていた。
「それは、誰の考えだ?」
「我らが次期教皇に押す、ヨセフ・アークライトの考えです」
 この答えに、義宗は一瞬黙ったあと、楽しげに大笑した。
「ははははっ! そうか、今のこの世界で、そんなことを考えられる男か。ヨセフ・アークライトは。
 気に入った! ヨセフ・アークライトを教皇にするための発議、考えよう。
 だが、そのためには、私一人では足らんぞ。この国に生きる大名、侍、そして民草。
 それらすべてが良しと思えるようにならねば、絵に描いた餅よ。
 そのためにも、貴様らとの友好、大いに良し!
 お前たち浄化師が、この国で自由に動けるよう、便宜を図ってやろう!」
「ありがとうございます。きっと、ご期待には応えます」
 義宗の賛同に、ウボーは深々と頭を下げ礼を言った。

 こうしてニホンとの友好が図られるようになりました。
 これが巧くいけば、世界の安寧へと繋がる大きな一歩になることでしょう。
 それを成し遂げるために、これから浄化師の皆さんには、さまざまな指令が下されます。
 成功するか、それとも――
 その全ては、浄化師の皆さんの活躍に掛かっているのです。


(執筆:春夏秋冬 GM)