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~ プロローグ ~ |
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最近、教団内である噂が目立つようになってきていた。 |
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~ 解説 ~ |
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【目的】 |
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~ ゲームマスターより ~ |
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GMのぽたと申します。本作で担当は2話目となります。 |
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◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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山奥暮らしの、魔術師らしきヴァンピールか。訳ありな臭いがするな。 まずは使徒を片付けるぞ。GK3を張り魔術真名を発動して敵を誘き寄せ、GK3と盾で攻撃を受ける。その隙にラファエラにコアを撃たせる。 敵が俺を狙ってない時でも鎌を足に引っかけて動きを妨害し、コアを狙いやすくするぞ。 ラファエラ「で、この使徒(の残骸)持ち帰るわけ?こんなとこから?」 勿論だ。 ・勧誘で言う事の要約 使徒が出た以上、世捨て人暮らしも潮時だろう。魔力をパンクさせないためにも、一度は教団に来るべきだ。少なくとも、教団は人形遣いやヴァンピールが白い目で見られるとこじゃない。 浄化師の人手も、いくらあっても足りないしな。 |
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最初に「ヨハネの使徒との戦いは今回が始めてなのでよろしくお願いします」とご挨拶 プランは使徒を倒してから少女の探索 まず情報収集 噂の元になる情報が幽霊屋敷となっているが、なぜ双子との認識でなく幽霊なのか? しかし使徒が出現しているので討伐が優先、教団内の噂がベースなので調査はそっち絡みで出発する前に 使徒戦には援護主体 少女の探索ではクロエの魔力探知で探して教団員の皆とともに接触 双子なのかどうか?とか身元を確認しつつ保護する方向で 少女に出会えたら、まず自己紹介 クロエ「こんにちは、お嬢さん。私は薔薇十字教団に所属するエクソシスト、 クロエ・ガットフェレス、よろしく 大きな力を持っているのね、私達も同じだけど」 |
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目的 ヨハネの使徒の撃破。 少女の保護。 行動 方針は『さっさと撃破して全員で少女の元へ行く』 出発前に目的地の詳しい場所とそこまでの道順を聞いておく。 ついでに、教団はいつ頃どうして屋敷のことを知ったのか、噂と確認の前後関係を一応。時間はかけられないから。 屋敷の近くまできたら、ヨハネの使徒や保護対象の少女がいないか、周囲の様子や音に注意。 誰か襲われていれば救助。 途中で戦闘し易そうな場所があれば覚えておく。遭遇場所が不利なら移動? 近くまで行ってもヨハネの使徒に遭遇しなければ、魔術真名を唱えて誘き寄せを試みる。 マリオスは前衛。コアを狙ってアライブスキル使用。突進時は防御。 シルシィは中衛。天恩天賜で回復。 |
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◆目的 ・ヨハネの使徒、撃破 ・少女の引き入れる ◆戦闘 ・方針:さっさと撃破して全員で少女の元へ ・中後衛(唯月:中衛、瞬:後衛) ・スペル詠唱は戦闘始めに ・両者通常攻撃に加え 唯月はMG8で敵の攻撃力を下げ、誰かを庇う時はMG3使用 瞬は初手にFN1を使用し火力を上げ、攻撃にFN10を使用 ・仲間との連携も大事に、同士討ち等も注視 ・自身の危機的状況の際は戦闘から離れ、サポートを ・仲間と認識違いがあった場合は仲間に従う 唯「久々の…戦い…」 瞬「大丈夫?」 唯「正直初戦並みに緊張してますが…大丈夫、です …頑張りましょう!」 瞬「…うん、そうだね〜!」 ◆少女を救出 ・少女から『先生』について話が出た際そちらへも向かいたい |
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◆作戦 先に全員でヨハネの使徒を撃破、その後少女の保護に向かう 予め魔術真名使用、魔力により敵を誘き出せないか試みる ◆戦闘 核の位置が判明したら重点的に狙う 敵が屋敷に近づかないよう引き付ける ・シュリ 初手、使徒にMG8 次にロウハと周囲の仲間にMG3、切れたら掛け直す 基本的にロウハの後方に位置して攻撃 使徒にMG8が全く掛かっていない場合は再度使用 ・ロウハ 初手、JM9 その後は前線で攻撃に専念 JM8は敵が弱ってきた段階で使用 ◆少女保護 周囲に警戒し屋敷内へ 少女と会ったら自分達に危険がないことを伝える わたしたちは浄化師。あなたを保護しに来たの ここには二人いると聞いたのだけど… もう一人の少女の正体をそれとなく探る |
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どんな子でしょうねぇ、お友達になれたらいいですねぇ 使徒と遭遇次第後衛へ。 グレンを始め最前線で戦う方にはフォースカップで支援しちゃいますよーっ! グレン、大変です!すっごくお人形さんみたいに綺麗な子でした! とにかくまずはお名前を聞かないとです。 差し支えないようであればこの屋敷に住んでいる理由も。 何か特別な理由があるのなら無理強いはできませんから。 あの、またああいったことが屋敷の外でないとも限りませんし、もしよければ私達と一緒に来ませんかっ? 教団の方で探してる人のことを調べて、一緒に行方を追うことができるかもしれませんし! 大丈夫、生きてさえいれば再会のチャンスだってあるはずです! 駄目…ですかねぇ? |
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~ リザルトノベル ~ |
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「ヨハネの使徒との戦いは今回が始めてなのでよろしくお願いします」 礼儀正しく頭を下げる『ロゼッタ・ラクローン』に、今回の依頼遂行のため集まった面々は「こちらこそよろしく」と口々に返す。 ひと通りの挨拶を終えたところで、『エフド・ジャーファル』が早速仕事の話に切り替える。 「山奥暮らしの、魔術師らしきヴァンピールか。訳ありな臭いがするな」 皆がきりりと表情を引き締める中、のんびりとした『ニーナ・ルアルディ』の声が。 「どんな子でしょうねぇ、お友達になれたらいいですねぇ」 『グレン・カーヴェル』はパートナーの危機感を欠いた発言に思わず片手で自らの額を押さえる。良家のお嬢様として箱入りで育てられたニーナは、時折このような、よく言えばおっとり、悪く言えば世間ズレした言動が見られるのだった。 「けど、どうして幽霊屋敷なんだろうね。瓜二つの女の子……双子のセンもあると思うんだけど、人々の認識が幽霊なのはどうしてなのかな」 『クロエ・ガットフェレス』が素直な疑問を口にする。 確かに、と、『シュリ・スチュアート』は内心クロエの疑問に同意していた。が、口には出さない。 気になることは多々あれど、自分は考えると深読みしすぎてしまう質であることをシュリはよくわかっていた。だからあえて、疑問を追求せずにいるのだ。 「じっくり調べたいところだけど、そんな余裕はないみたいね」 『シルシィ・アスティリア』が言うように、ヨハネの使徒の姿が確認されている以上、ことは一刻を争う。 「詳しい調査は教団に任せて、僕たちは目撃者から目的地の詳しい場所とそこまでの道順を聞いて現場に急ごう」 『マリオス・ロゼッティ』の言葉に皆一斉に頷いた。 「久々の……戦い……」 『杜郷・唯月(もりさと・いづき)』は拳で胸を押さえ思い詰めたように呟く。 「大丈夫?」 気遣うように、『泉世・瞬(みなせ・まどか)』が唯月の顔を覗き込む。 「正直初戦並みに緊張してますが……大丈夫、です……頑張りましょう!」 唯月はなんとか笑顔を作ってみせる。 「……うん、そうだね~!」 瞬も彼女に合わせて、瞳を細めた。 大人数で押しかけては相手を威圧しかねないということで、ロゼッタとクロエ、そしてシルシィとマリオスの4名と、筆記具をもった唯月が幽霊少女を目撃したと主張する猟師の家を訪ねる。 初老の猟師は興奮気味に語る。 「そりゃあ幽霊だと思いますでしょ。あんっな生気のない顔した人間いやしませんよ。アンデッドだってもっと生き生きしてまさぁ」 どうやら、幽霊と確定する確かな証拠があるわけではなかったようで、ロゼッタとクロエは少々期待外れとばかりに、こっそり顔を見合わせる。 「屋敷のある森の近くには、以前ヨハネの使徒に全滅させられた小さな集落があるんでね。屋敷の幽霊はその被害者なんじゃないかって猟師仲間の間でもっぱらの噂ですよ」 浄化師としては悔しいことだが、小さな集落が教団に助けを求める暇もなく住人が皆殺しにされ消滅することや、浄化師が派遣されても力及ばず、といった事例は、この時代珍しいことではないのだ。 話を聞いていた5人の胸がちくりと痛んだ。 「その屋敷までの詳しい道のりを教えてくれませんか」 重い空気を振り払いシルシィが問うと、猟師は歩きやすい道を危険な箇所や見通しの良い場所なども交えて教えてくれたので、唯月はそれをメモ帳に図も入れて記録していった。 皆の元に戻ったロゼッタたちの話を聞いて、『ラファエラ・デル・セニオ』は、 「幽霊の正体見たり枯れ尾花なんて言葉があるけれど、なんでも幽霊話にしたがる人っているのよね」 と呆れたように笑った。 「こんな森の奥に屋敷があるのか」 唯月が書いた地図を見て『ロウハ・カデッサ』は参ったなとでもいうように頭を掻く。もちろん自分は森の中だろうと山の中だろうと構わないが、心配なのはシュリである。彼女にとって骨の折れる行軍になりはしないかと、それが気にかかる。 パートナーのことが心配なのは瞬も同様だ。 「いづ、疲れたらおんぶしてあげるからね。大変だったらいつでも言ってね」 「そ、それは……猟師さんが歩きやすい道を教えてくれたので……大丈夫、です」 唯月は少し顔を赤らめ瞬の申し出をやんわり断る。 「戦闘に向いていそうな比較的開けた場所もいくつか教えてもらったんだ」 マリオスが地図を指し示しながら説明する。 「なるほど。その場所にうまく誘導できるといいな」 エフドが頷きながら言った。 「あいつらの生体感知能力はそれなりにあるっつー話だ。これだけ魔力を持った奴が一箇所に集まれば、嫌でも向こうから来るだろ」 グレンが皆の顔をぐるりと見回して言う。 「そうね。とにかく、現場に行ってみましょう」 思案よりも行動派のロゼッタの声で、皆は森へと足を向ける。 まずはヨハネの使徒を退治してから少女を探し出す、それは皆の共通見解であった。 森に差し掛かる頃合いで、シュリはヨハネの使徒を魔力で誘き出せないかと、ロウハと魔術真名を唱え2人の魔力を解放する。 「紅き星に誓う」 「わたしたちも」 と、シルシィが手を差し出すとマリオスはその手を取る。 「我らの意志の元に」 例え屋敷にいる少女が魔力を持っていたとしても、こちらがこれだけ魔力を解放していればヨハネの使徒は少女ではなく浄化師たちに引き寄せられるだろう。 皆は気を引き締めて木々が生茂る道へと足を踏み入れた。 足元に纏わりつく枯葉をざしざしと蹴りつけ、目の前に垂れ下がる蔓草を忌々しげに振り払いながら独り言のようにラファエラは言う。 「こんな森の奥深くに隠遁するくらいなんだからそれなりの事情があるんじゃないかしらね」 それをわざわざ引き摺り出すのもどうなのだろう。しかし、エフドの考えは違った。 「浄化師は自分や大事な人を苦しめる様々なものと戦う力を持ち得る。もし件の少女にその力があるのなら、それに相応しい場所を用意してやるのも俺たちの仕事ではないか」 浄化師となることで貧しい難民から成りあがった彼には、浄化師として教団に身を置くことがより良い人生に思えるのかもしれない。 ラファエラはエフドの言葉にひょいと肩を竦めると、樹々の葉の間から遠く見える空を見上げた。 「世俗から離れた暮らしも良いものだと思うけど」 そうこうしているうちに、ラファエラたちの前を歩いていたクロエが声をあげる。 「魔力の流れが見えてきた……!」 彼女はずっと魔力探知で辺りを警戒していたのだ。 先頭を歩いていた瞬が、唯月の持つ地図と目の前の地形を照らし合わせながら、前方を指差す。 「この辺りが、戦闘しやすいんじゃないかな」 皆は木々の開けた場所に出ると早々にそれぞれの武器を構える。 「ドント・フォーギブ」 エフドはラファエラと魔術真名を唱えるとさらに予期せぬ急襲に備えて魑魅魍魎ノ壁で自身を中心にシールドを展開した。 他の面々も、それに続くようにパートナーと魔術真名を唱える。 戦闘体制が整うと、皆は息を潜め周囲を警戒する。 耳を澄ませ、視線は休むことなく敵の姿を探して。 遠くから聞こえる葉ずれの音。 これは、風によるものか、それとも。 ぱきり。 小さく、枝が折れる音が聞こえた。 浄化師の皆がはっと顔を上げる。 枝を折る音は微かではあるが連続して発生しながら大きくなっていく。自然の風の仕業ではない。 バキバキと木枝を無遠慮に折りながら、それはこちらへ猛然と直進していた。 「いかにもオツムの弱い殺戮機械の動きって感じね」 ラファエラがふふんと笑うと同時に、ヨハネの使徒が目の前の大木を体当たりで破砕しながらその姿を現した。 無意識に唯月の前に出て彼女を庇おうとする瞬に、唯月は、 「わ……わたしは平気、ですから……瞬さんは自分の持ち場に……」 と、促す。 今後の為にも今回は別れてお互い自分の役割に専念するのが良いかもしれない、と2人は前もって話し合っていたからだ。 「だ、大丈夫?」 瞬の表情が陰る。 「瞬さんが不安になってどうするんですか! さぁ……頑張りましょうね!」 唯月はぎこちなく笑顔を作り、瞬に背を向けた。 「初手は任せろ!」 叫ぶが早いか地を蹴るロウハは瞬時にヨハネの使徒に迫り、ドラゴンスレイヤーを一閃させる。 「ソードバニッシュ!」 ロウハの剣に弾かれたたらを踏むヨハネの使徒の姿を見て、皆は息を飲む。 人を優に超える3メートルといった巨躯に、殊更大きく発達した前足たる突起部。 その巨躯が携える大きな鎌状の前足、そして頭部と思しきパーツの部分には、見るに明らかな赤が際立っていた。 飛び散ったような形状を残すそれは言わずもがな、生物の血である。 天使を思わせる純白の上に、ヨハネの使徒にはない『生命』を象徴する血の赤。 ヨハネの使徒が単体でここいらをうろついていると聞いた時分から、悪い予感はしていた。 もしや、ヨハネの使徒は既に……。 「考えるのはあとだ。さっさと叩くぞ!」 エフドは短く声をかけると魑魅魍魎ノ壁によるシールドを張り直し、そのシールドに入るように、武器を構えたマリオスとグレンが並び立つ。その後方に控えていたシュリと唯月はルーナープロテクションでヨハネの使徒の攻撃力低下を図った。 素早く体勢を整えたヨハネの使徒は、ロウハに報復せんとばかりに血塗れの鎌を振り上げる。 しかしロウハは身軽に地を転がるとその間合いから逃れ、代わりにヨハネの使徒の前に迫るはシールドに身を守られたエフド、マリオス、グレンである。 グレンの後ろでは、ニーナがフォースカップを発動させグレンの運気を上昇させている。 エフドは気合の咆哮を響かせると盾を掲げてヨハネの使徒の鎌を受け止める。魑魅魍魎ノ壁によるシールド越しであるにも関わらず腕にズシリとした衝撃が走るが、ぐっと堪えた。 即座にもう一方の鎌を振り上げるヨハネの使徒だが、それをグレンが暴撃で弾き返した。 「とっととコア叩き割って本来の仕事に戻らせてもらうからな!」 グレンの一撃はフォースカップの加護もあってか予想以上の有効打となったらしくヨハネの使徒が身体をのけぞらせる。 「やりましたね!」 はしゃぐニーナにグレンは「前に出過ぎるな」と目で合図する。 ヨハネの使徒が身をのけぞらせているところへ、後衛を担うロゼッタとクロエがそれぞれ魔術で攻撃。 ヨハネの使徒は身を守るべく身体を丸めるようによじる。 その隙にシルシィは天恩天賜でエフドの腕の痛みを和らげてあげた。 ヨハネの使徒が身をよじった際に、ラファエラの目はその左脇腹にコアがあるのを発見した。 「そこね!」 ラファエラがコア目掛けて魔術を撃ち、直後、唯月と離れ後方に下がっていた瞬が捧身賢術によって高められた集中力でファイヤーボールを放つ。 ヨハネの使徒が次なる攻撃に移ろうと体勢を変えたため、ラファエラの攻撃は的を若干外しラファエラは舌打ちしたが、続いてヨハネの使徒を襲ったファイヤーボールはコアの破壊には至らぬまでもその周囲を大きく損壊した。 身を削られつつもヨハネの使徒が振り下ろす両手の鎌を、グレンとマリオスがそれぞれ武器で受け止める。ヨハネの使徒は身を反転させこれまた鎌状の足で彼らを蹴りつける。間一髪、シュリの展開したペンタクルシールドがその衝撃を大幅に和らげるが、グレンとマリオスは左右に弾き飛ばされた。 「マリオス!」 シルシィはマリオスに天恩天賜を施すべく駆け付けた。 「ニーナ、マリオスにもフォースカップを頼む」 グレンの言葉に、ニーナは、 「わかりました!」 と力強く頷く。 ヨハネの使徒は前衛の合間を縫って突進する。 唯月が慌ててペンタクルシールドで自分と近くにいる仲間の身を守る。 エフドが急ぎ手を伸ばし、ヨハネの使徒の脚に鉄の鎌を絡ませる。 ヨハネの使徒は転がるように倒れ馬のようにぶるぶると首を振った。 「今よ! みんな、コアを狙って!」 ラファエラの呼びかけで後衛のロゼッタとクロエが魔術を撃ち、さらに瞬がファイヤーボールを撃つ。 ヨハネの使徒はよろよろと立ち上がると、後衛からコアを隠すようにしながら後退する。そこへ。 「こっちだ!」 右後方からグレンの声が響く。ヨハネの使徒がそちらへ頭を向けた隙に。 「獣牙烈爪突!」 反対側の後方から回り込んだマリオスのソニックサーベルが見事コアのど真ん中に突き刺さった。 ヨハネの使徒は激しく暴れ、それと共に振り回されるマリオスはついにはソニックサーベルから手を離してしまった。 だが、コアにはヒビが入り、ヨハネの使徒が大きなダメージを受けていることが見てとれた。 「ロウハ!」 シュリが叫ぶと同時に、ヨハネの使徒に向かいルーナープロテクションを発動させる。 「おうよ!」 心得たとばかりにロウハが飛ぶように駆けつけ、渾身の一撃でコアを粉砕した。 ヨハネの使徒は2、3度地を蹴ると膝を折り頭を伏せ、静かに動きを止めた。 「いづ!」 戦闘が終わったのだと思うと居ても立っても居られなくなった瞬が唯月の元に駆け寄った。 「大丈夫? 痛いところはない?」 瞬は唯月の周りをくるくる回り彼女の無事を確認する。 「だ、大丈夫ですから……瞬さんこそ、怪我はないですか?」 と、唯月も瞬を気遣う。 シルシィはマリオスを初めとし、皆の負傷状態を把握するため走る。中衛、後衛組は無傷で済んでいたが、マリオス、エフドとグレン、ロウハたち前衛に出て戦った面々は打撲や切傷などの怪我が見られたため、順に天恩天賜で癒していった。 エフドとラファエラは動かなくなったヨハネの使徒に近づくと、その機能が完全に停止していることを確認した。 「で、この使徒持ち帰るわけ? こんなとこから?」 ラファエラは残骸となったヨハネの使徒を顎で指し示しながらエフドに問う。 「勿論だ」 答えるとエフドは徐に、ヨハネの使徒の脚をぼきりと折り持ち運びやすい大きさにする。 ここまで歩くのも大変だったのに、さらに荷物を増やして帰ろうとするとは。 「俺たちも手伝うぜ。まあこんなん放置しとく訳にもいかねーしなぁ……軽くなるとはいえ多少荷物になるっつーのが難点だが」 グレンが声をかけ、男性陣がヨハネの使徒の解体に取り掛かった。 「情報によると出現していたヨハネの使徒は1体ですから、ひとまず安心ですね」 ニーナはほっと胸を撫で下ろす。 「でも、まだ気になることがあるね」 ロゼッタの視線の先には、ヨハネの使徒の鎌にこびり付いた血液。 「まだ、とても弱いけれど魔力の流れが見えるよ」 クロエが言うと、皆はぴたりと押し黙り、神経を研ぎ澄ます。 「こっちの方から感じる」 クロエが指差し歩き始める。その方向はヨハネの使徒が現れた方向だ。 「待って、危険よ」 シュリがクロエの背に声をかけると、ロウハとマリオスがヨハネの使徒の運搬をエフドたちに任せ、自分たちが先頭に立つと申し出てくれた。 クロエの案内に従い皆は注意深く、ヨハネの使徒になぎ倒された木々の間を歩く。 「あ、あれは!」 突如マリオスが前方を指差し声をあげる。 「な……っ、大丈夫か?」 ロウハが折れて飛び散った枝を飛び越えながら走り出す。 その先には、折れた大木に背を預け、浅い呼吸を繰り返している初老の男性の姿があった。 「あれは……教団の制服!?」 ロゼッタが言うように、男性が身に付けているものは土や草、血液などでかなり汚れあちこち破れてはいたが確かに薔薇十字教団のものであった。 皆はヨハネの使徒の鎌になぜ血液が付着していたのかを瞬時に理解し、負傷した男性を取り囲むように駆け寄る。 「しっかりしてください。今、わたしが天恩天賜で……」 そう言うシルシィの言葉を男性は途中で右手を上げて遮った。 「いや、いい……どのみち私は、もう長く………ない」 苦しげな息の下、男性はそう告げる。 「そんなこと……!」 シルシィが言うも、男性は首を横に振る。 「元より私の体は……病に侵されて、いる……」 浄化師たちが息を呑み見守る中で、男性は上着の内側から何かを取り出した。 「これ、を……屋敷にいる、ミオに……」 彼の掌には銀色に光る髪留めが乗せられていた。 震える掌から零れ落ちる髪留めを、シルシィは慌てて受け止めた。 髪留めには「シオ」と名前らしき文字が彫られている。 「妻が……私の喰人が……呼んで、い……る……」 「待って、しっかりして!」 ロゼッタが声をかけるも、男性はがくりと力なく頭を垂れる。 「もう、私たちに出来ることはないよ……」 クロエはロゼッタの肩にそっと手を置いた。 「一刻も早く任務を終えて、教団に報告しよう」 マリオスが言い、シルシィは頷いて立ち上がる。 ニーナと唯月が傍に咲く花を手折り息を引き取った男性の足元にそれを供えると、皆は屋敷の方向を目指し歩き始めた。 その大きな屋敷は崩れた門の奥にあり、壁は蔦にびっしりと覆われていた。 「これは……出そうだね?」 とんでもないことを言う瞬に、 「や、やっぱり……で……出るんですか……?」 と、唯月とニーナが互いの腕をひしと掴みあって怯える。 「あー、ごめん。脅かすつもりはなかったんだよ」 瞬が頭を掻き、グレンが、 「出『そう』ってだけで、出『る』とは言ってないだろ」 と宥める。 教団の浄化師ですらこうなのだ、一般人の目撃者がここを幽霊屋敷と噂するのも無理からぬことだ。 「こんなところに、本当に女の子が住んでいるのか?」 あまりの廃墟っぷりに、思わずロウハが零す。 「とりあえず、入ってみようよ」 ロゼッタは傾いた門扉を押し開けながら奥に入る。 「おい、あれ」 続いて足を踏み入れようとしていたグレンが立ち止まり、呟くように投げかける。 その指が指す先では、正面の屋敷扉が丁度閉まる様子があった。 パタン。 小気味いい音を立てて閉まる木の扉。 その奧へと消えていった姿こそ見えはしなかったが、瞬間、皆が一様に立ち尽くしていた。 一拍遅れてクロエが魔力を探知をしてみる。 「確かに魔力が屋敷の方へと続いているよ」 クロエの言葉に皆は肯き合うと、再び歩みを進めた。 「殆ど獣道のようになってしまっているわね」 屋敷に辿り着くまでの間にも、シュリは周囲への警戒を怠らない。 その甲斐あってか何事もなく正面扉の前までくるが、グレンが扉に手をかけてみてもガタガタと揺れ動くだけである。 「鍵がかかっているようだぜ」 「古い型の簡単な鍵ね。これなら大丈夫よ」 ロゼッタがピッキングツールを取り出し、鍵穴に通す。そして器用に手首を返すと、カチリ、と手応えがあった。 グレンがロゼッタに礼を言いながら扉を押すと、それは重々しい音を立てて動いた。 皆はそろりそろりと足を踏み入れる。 ヨハネの使徒の残骸は、内部検索の際荷物になるからと正面扉の脇に置いていくことにした。 「暗い」 「あぁ、暗いな」 「暗いですね」 誰ともなしに同じ言葉を零す。 ただ、誰もランタンやその類の物を持っていなくとも見えるくらいには、まだ鮮明に物の見分けはついていた。 昼間に来て良かった。 唯月のそんな呟きに、何人かが頷く。 そんな中、クロエは再び意識を集中した。 魔力が正面の大きな階段を上がり、左右に分かれる中腹の踊り場を右、更にその奧へと続いているのがぼんやりと見える。 「まさか罠だったりしないわよね」 ラファエラが訝しむ。 「罠じゃないとしても、対象の女の子が俺たちを敵と認識しちゃったなら攻撃の一つでもしてきたりして?」 瞬も、口調こそいつも通りだが、そこかしこに視線を向けて注意は怠らない。 「それならここは、カードの啓示を受けてみましょう」 ロゼッタは占星儀を掲げると、タロットカードを引く。 唯月とシュリ、ニーナもロゼッタが引いたカードを覗き込む。 「これは……」 占星術師たちは顔を見合わせる。 「前進せよ、との啓示ね」 ロゼッタは頷く。 「とりあえずはそちらに向かっても良いんじゃないでしょうか?」 「マリオスに同じです」 マリオスが提案し、同意するシルシィ。 ここで話しているだけでは解決しないのだから。 「でも、これだけ広くて古い屋敷だと、どこにどんな危険が潜んでいるかわからないわ」 シュリが言うと、エフドも頷く。 「急ぎ少女と接触することも重要だが、屋敷内の探索も必要だろう」 「じゃあ、二手に分かれるというのはどうですか。女の子を探すチームと、お屋敷の中を探索するチームと」 ニーナが軽く手を挙げて提案する。 話し合いの結果、シルシィとマリオス、唯月と瞬、ロゼッタとクロエの6人が少女のものと思われる魔力を追い、エフドとラファエラ、シュリとロウハ、ニーナとグレンの6人が屋敷内の探索をすることに決まった。 「さて、どこからどう探索したものか」 何となく廊下を進みながら、エフドが溜息交じりに呟く。 「本当、歩いてみると実感しますね。恐ろしく広い屋敷です」 ニーナが頷き見渡す屋敷内部は、廊下だけでもちょっとした通りくらいの広さがある。 思考するメンバーの至った結論は、とりあえず“食堂”や“応接室”といった、具体的な用途の決まっているような部屋を当たってみようというものだった。 そうと決まれば、大きい扉の構える部屋から手あたり次第。 まずは玄関広間から見えていた、階段付近の大部屋へと向かう。 「随分と広いけど、閑散としてる……机を挟んでソファが2つ。応接室のようね」 シュリが大部屋の内部を見渡して言う。 ロウハが壁際にある廃れたタンスを開けてみると、中には割れたりヒビが入っていたりとタンス同様廃れ切った皿やカップの類が収納されている。 天井には煌びやかだが小さく落ち着いたシャンデリアに、壁にはシカらしい動物頭部の剥製といった装飾もある。 「おじさん、あれ」 控えめな声音でラファエラがある一方を指さす。 エフドが振り向いた窓の先、中庭と思しき植生空間の中心にあるガゼボ、そこに設置された青銅色のガーデンチェアに、依頼書にあった『純白の長髪』というキーワードに当てはまる後ろ姿があった。 「ホンモノかもう一人の方か……確かめに行くか」 そう言って窓の方へと歩くと、 「よっ、と」 軋む音など構うことなく、エフドは窓を開け放った。 「まさかそこから出るつもり?」 というラファエラの呆れ声を無視して、エフドはそのまま中庭へと窓を飛び越えて出ていった。 まったくもう。 そう愚痴を零しながら、ラファエラも窓枠をよじ登り、そのまま中庭へ出る。 「わ、私も……」 とニーナは後に続こうとするが、いくら頑張っても窓枠を越えられずじたばたする。 「大人しく扉を探すぞ」 「うぅ……分かりました……!」 ニーナは素直にグレンの言葉に従うことにした。 「お嬢、俺たちも扉を探そう」 「そうね」 シュリも、自分には窓枠を越えるのは難しそうだと悟りロウハに従う。 エフドは大股で、白銀の髪が流れ落ちる背中へと近付いた。 「おい、そこの女――かは分からんが。そこで何をしてる?」 膝丈のワンピースを着用しているので、おそらく女だとは思うのだが、念のために。 遅れて追い付いたラファエラも、同じように言葉を投げかける。 「ちょっと、あんた大丈夫? そこで――」 何をしてるの、と続けようとしたところでエフドが立ち止まり、その背中にぶつかりそうになったラファエラも足を止めた。 そこには違和感があった。確かな違和感が。 起きているにせよ眠っているにせよ、人間であれば通常、呼吸に伴って肩が上下するのは道理。それはアンデッドであろうと、同じく呼吸をしている者には共通する事象だ。 対象がマドールチェであれば話も変わる可能性もあるが、此度の依頼における保護対象の少女は『肌の白いヴァンピールらしき』とある。 「不意にかけられた言葉にも反応なし。おじさん、これって……」 ラファエラがエフドに並び立ち、彼の顔を見上げる。 「ああ」 答えるとエフドはガーデンチェアの正面にゆっくりと回り込んで、そこに座るものの顔を覗き、言った。 「こいつはマドールチェでもねえ――ただの人形だ」 中庭へと続く扉を見つけた他の4人もガゼボへと来てその人形をまじまじと見つめた。 「綺麗な顔立ちですね」 ニーナが見惚れ、 「かなり精巧に出来てるわね」 と、シュリが感心する。 「こいつをどうする?」 グレンが人形の腕をとりながらエフドに尋ねた。 「この人形についてはあの少女に確かめるしかないだろう」 エフドが人形を持ち上げようとする。物証として本人に直接確認させようというつもりらしい。 「おっと、俺がこっち側持つぜ」 エフド1人でも運べるだろうが、大切に運ぶためには1人より2人の方がいいだろう。ロウハは人形の両脚を抱え上げる。 「助かる」 エフドが感謝の意を示す。 (よりによって脚側……) シュリはじっとりとロウハを見遣る。 「なんだよその目は……?」 「なんでもないわ」 「???」 何も邪な気持ちなどないロウハはわけが分からず首を傾げた。 一方、魔力を追っていた6人は最上階のある一室の前に辿り着いた。 全体的に埃っぽい屋敷だが、その部屋の扉だけはこぎれいで、蔓や木の実で作られた素朴なリースまで飾られていた。 魔力はこの扉の向こうに続いている。 先ずはロゼッタがノックしてみる。 と、中から弾かれたように 「先生!?」 と期待に満ちた声が聞こえ、パタパタと足音がする。 バタン! 開けられた扉の向こうに現れた、輝かんばかりの白い髪の少女は浄化師たちの姿を見とめると、ガーネットの如き煌めきを放つ瞳をまん丸にする。 「ミオ……さん?」 おずおずとシルシィが語り掛けるが、少女は無言でばたりと扉を閉めると、その後はいくらノックをしようと声をかけようと、返答はなかった。 「どうしましょう?」 唯月が困ったような顔を見せる。 「まぁ話をしないことにはね。相手にその意思があれば、だけれど」 マリオスが扉をじっと見つめた。 クロエが扉越しに自己紹介を試みる。まずは、こちらの身元を自分から明かさないことには、信用も得られないだろう。 「こんにちは、お嬢さん。私は薔薇十字教団に所属するエクソシスト、クロエ・ガットフェレス、よろしく。大きな力を持っているのね、私達も同じだけど」 「同じく、わたしはシルシィ・アスティリアよ。わたし達はヨハネの使徒の討伐と、あなたの保護のためにここに来たの。あなたさえ良ければ、教団には来てもらえないかと思ってるわ」 扉の向こうからの返事はなかったが、息を潜めてすぐそばにいるのがわかった。 「ここにいるのはあなただけかしら? このお屋敷には二人いると聞いて来たのだけれど?」 シルシィの質問に、少女が身じろぎする気配が感じられた。 しばらく様子を見ようか、それとも意を決して扉をこじ開けてみようか思案しているところへ、複数人の足音が近づいてきた。 二手に分かれて行動していた仲間たが来たのだとそちらへ顔を向けた皆は、エフドとロウハが扉の向こうにいるはずの少女を抱えているのを目にして驚いた。 だが、すぐにその「少女」の違和感に気づく。 「それ、人形ですね」 ロゼッタの明瞭な声が廊下に響いた。 すると。 「人形なんかじゃない……っ!」 バン、と荒々しく扉が開かれる。 皆は扉へと注目した。そして、そこにいる少女と人形とがそっくり瓜二つであることを実感する。 「グレン、大変です!すっごくお人形さんみたいに綺麗な子です!」 ニーナが目を輝かせる。 少女は、先ほどよりも人数が増えた浄化師がずらりと並んでいる姿に一瞬狼狽え、しかし勇気を振り絞らんと息を吸うと、体当たり同然の勢いでエフドとロウハの元へ駆け寄り彼らの手から人形を半ば奪うように取り上げた。 少女は人形をぎゅうと抱きしめ、じりじりと後退する。 その時シルシィは、少女の髪に、ここへ来る途中に男性から託された髪留めと鏡合わせになるデザインの髪留めが飾られていることに気付いた。おそらく、対になるように作られたものなのだろう。 「まぁ良いが――それで、その人形は何だ?」 エフドは後退していく少女に声をかける。すると、少女の足がぴたりと止まった。 「に、人形ではありません……シオと呼んでください……!」 憤慨する少女の声は、鈴を転がしたように繊細かつ綺麗である。 「……その子は、あなたの大切な子……なんですね?」 唯月の言葉に少女は俯く。 「わたしたちは、あなたに危害を加えるつもりはないわ」 「良かったら、話を聞かせてくれないかな」 シュリとクロエが落ち着いた声音を心掛けて話しかける。 「――場所を変えます。中庭まで移動しましょう」 少女はそう告げると、廊下を進み始めた。どうやら敵ではないということだけはわかってくれたようだ。 一同はほっとして顔を見合わせると、彼女に続く。 歩きながら、少女、ミオは語り始めた。 「あれは、1年ほど前になるでしょうか……私の生まれ育った小さな村は、ヨハネの使徒の襲撃により、終わりを迎えました」 「浄化師は――」 「もちろん、来てくれました」 シルシィの疑問にミオは答える。 「でも……その時にはもう、ほぼ村は壊滅状態だったのです。結局村は消滅し、生き残ったのは、私だけ……私のあの村での最後の記憶は、倒れたまま動かない、シオの姿でした」 ミオは唇を噛み、そっと人形の髪を撫でた。 「シオ……というのは?」 半ば答えはわかっていたが、ロゼッタが訊く。 「私の……双子の妹、です」 ミオは人形をきゅうっと抱きしめる。 「シオを失った後、しばらくの間の記憶は定かではありません」 いつも側にいた自分の半身が突如奪われたのだ、そうなるのも仕方のないことだ。 語るうちに中庭へ続く扉へと辿り着く。エフドが扉を開けてやると、ミオは軽く感謝のお辞儀をして中庭の石畳に降り立った。 「私の意識を再び現実に引き上げてくれたのは、『先生』でした」 手入れのされていない蔓薔薇が好き放題に伸びている中をミオはガゼボへと歩く。 「先生、とは?」 最初、部屋の扉をノックした時に返ってきたミオの言葉が「先生」だったことを思い出し、シルシィが訪ねる。 「村を襲撃したヨハネの使徒を倒してくれた浄化師です。私に色々教えてくれたので、私が勝手に先生と呼んでいるんです」 ミオはそこで初めて、微笑んだ。 「先生は意識のはっきりしない私につきっきりで、ずっと話しかけてくれました。おかげで、私の意識もだんだんと現実に戻ってきたんです」 ミオは、ガゼボの下の椅子に人形をそっと座らせ、丁寧に服の皺を伸ばしてあげた。 「とりわけ私の心に響いたのは――人形遣いのお話でした」 自身の持つ魔力を糸に変え、それを任意の人形に繋いで動かし戦う人形遣い。 その話を聞いたとき、ミオの意識は深い水の底から現実へと浮上したのだ。 そして、先生にせがんだ。人形遣いについて、人形についてもっと教えて欲しいと。そこに、シオを『復活』させる手立てを見出したから。 「先生も人形遣いだったから、詳しく教えてくれました。そして――」 ミオは再び、人形の髪を撫でる。 「先生の伝手を頼り、とある技師に作ってもらったのが、この子……シオ、です」 ミオが人形であるシオを見る目は、慈しみに溢れた優しいものであった。 「先生は、奥様であるパートナーを亡くし自分も病身の身であるから、と教団には戻らずずっと私と一緒にいてくださいました。人形遣いであった先生は、時折シオを動かしてもくれました。先生とシオ、そして私はまるで家族のように過ごしました」 帰る村を無くした少女と、パートナーを失い戦う力を無くした浄化師は、互いに自分の居場所を相手に見つけたのかもしれない。 敢えて誰も口にしなかったが、その先生はミオの村では浄化師として戦っていたというのだから、彼の妻はそこで命を落としたのだろう。 「でも、ヨハネの使徒は私たちをそっとしておいてはくれませんでした」 通常よりも魔力の多い2人が共にいるのだ、それも無理からぬこと。 「私たちはヨハネの使徒が現れるたび、逃げて、逃げて……ここに辿り着いたのです。そして先生は、私に、ここにいるようにと言い置いて、出て行きました。ヨハネの使徒をなんとかするから、と。それから、何日も経ちました……」 「ヨハネの使徒は、私たちが倒したわ」 ロゼッタが安心させるように言う。 「では、先生は……?」 期待と不安の入り混じった赤い瞳がロゼッタを見返す。 先生とは、おそらく、道中で出会ったあの初老の男性だろう。しかし、彼はもう……。 誰もが押し黙った。その沈黙を破ったのは、瞬だった。 「俺たちが受けた指令は、ヨハネの使徒の退治と、君の保護なんだ。先生のことは、改めて他の浄化師にお願いするよ」 人当たりの良い笑顔で告げる。 しかしミオは、何かを悟った様子であった。 ミオは寂しげに頭を振る。 「私は、ずっとここにいます。先生にここで待っているように言われました。ここでずっと、シオと、先生を待って暮らします」 たとえ先生が帰ってこなくとも。先生が帰って来る日を夢見ながら双子の妹の面影を抱きここで過ごしていたい。その気持ちが痛いほどに伝わってくる。 「強制執行令は出てないわ。ノーと言い張ればそれまでよ」 ラファエラがエフドに囁く。が。 「使徒が出た以上、世捨て人暮らしも潮時だろう」 エフドはミオを連れて帰るつもりのようだ。 「あの、またヨハネの使徒が来ないとも限りませんし、もしよければ私達と一緒に来ませんかっ?」 ニーナもミオの身を案じて、そう促す。 「魔力をパンクさせないためにも、一度は教団に来るべきだ。少なくとも、教団は人形遣いやヴァンピールが白い目で見られるとこじゃない。浄化師の人手も、いくらあっても足りないしな」 と、エフドが諭す。 ミオはシオの人形を見つめる。 この先も、この子と共にいればそれだけで奇異の目で見られることもあるだろうし、今回のように幽霊だなどとあらぬ噂をたてられることもあるだろう。 しかし教団の浄化師ならば。大手を振ってシオと共にいられる……? ミオの気持ちが揺らいでいるのを感じ取り、ロゼッタがぐいとミオに迫る。 「あなたにはあなたの持つ力を自分で自分の未来を切り開けるぐらいに、そして誰かの未来を切り開けるぐらいに強く生きて欲しいな」 「あなたの人形を扱う力は貴重です、どうでしょうか……?」 唯月も真剣な面差してミオを見つめた。 「で、でも……私が教団に、なんて」 ロウハはそっとシュリを肘でつつくと耳打ちする。 「浄化師になるきっかけは色々だ。俺達は自分で教会の門を潜ったが、他の浄化師に救出されたり勧誘された奴もいるはず。今回は俺達がその『他の浄化師』ってやつだぜ、お嬢」 ロウハはそう言ってシュリを促す。自分よりもミオに年の近いシュリの方が勧誘に適していると考えたのだ。 「そうね」 シュリは頷くとミオの前に出た。 「ミオさん。あなたの力が人形遣いのものなら、浄化師として戦う資格があるの。わたしたちの仲間になってくれない? わたしたちにできることがあれば、力を貸すわ」 「先生のように、先生が私を助けてくれたように、私も誰かを助けられるのでしょうか」 ミオはか細い声で問う。 「それはミオさん次第よ。でも、浄化師になればシオさんも生きることができるんじゃないかしら。ただの人形ではなく、戦う仲間として」 「駄目……ですかねぇ?」 シュリの後ろでニーナが祈るように手を組み合わせて潤んだ瞳でミオを見つめる。 ミオは一度皆に背を向けると、シオの手を取りぎゅっと握った。 そして。 振り返り、深くお辞儀をする。 「私とシオを、教団へ連れて行ってくださいますか」 それを聞いて、熱心に諭していた面々はぱっと顔を輝かせた。 「あ、そういえば!」 シルシィはポケットからシオの髪留めを取り出しミオに手渡した。 「これ……ええと、道で、拾ったのよ」 いずれ知られることにはなるのだろうが、今はまだ真相は話せないので、シルシィは言葉を濁す。 「シオの髪飾り!この屋敷に来るときに落としてしまった物です……ありがとうございます!」 ミオは歓喜に顔を輝かせると、早速シオの髪にそれを付けた。 ――我が愛弟子を、よろしくお願いします――。 ロゼッタの耳にどこからか、あの初老の男性の声が聞こえてくる。 ロゼッタは、「心配ないよ」と空に向かい笑った。 だってミオはこれから、たくさんの仲間と出会うだろうから。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[12] 杜郷・唯月 2018/08/14-22:44
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| [11] シュリ・スチュアート 2018/08/14-15:57 | ||
| [10] シルシィ・アスティリア 2018/08/13-01:46 | ||
| [9] エフド・ジャーファル 2018/08/12-14:43 | ||
| [8] ロゼッタ・ラクローン 2018/08/12-12:08 | ||
| [7] シュリ・スチュアート 2018/08/12-10:15 | ||
| [6] シルシィ・アスティリア 2018/08/12-09:18 | ||
[5] ニーナ・ルアルディ 2018/08/12-02:17
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[4] 杜郷・唯月 2018/08/12-01:20
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[3] エフド・ジャーファル 2018/08/11-21:30
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[2] シルシィ・アスティリア 2018/08/11-21:10
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