~ プロローグ ~ |
「お前たちは東方島国ニホンの文化を知っているか?」 |
~ 解説 ~ |
なんでも形から入る人っているものですね。 |

~ ゲームマスターより ~ |
なんでも形からはいる人間っていますよね。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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A・ジンジャを参拝する 二ホンと貴族とのジェネレーションギャップに驚きつつも参拝を楽しむ。 御守りは、響は「安全」、愛華は「学力」を買います。 B・貸出衣装を楽しむ 愛華は巫女服を響はあれば袴を着たい。 その後は、茶菓子を食べながらまったり境内を見て回ります。 |
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ニホン、知っています 何故か昔からとても惹かれる所で クリスのお母様、ニホン出身だったんですか? 初めて聞きました 今度、会ってお話ししてみたいです はい…巫女服を着るの楽しみです … ……あの、私の知ってる巫女服って、もっとハカマが長い気がするんですが… え、あ、そうですね、裾が邪魔になってはいけませんものね それじゃ頑張ってお仕事してみます…! はい、クリスも似合ってますよ (ちょっとドキドキしました…) 一緒に境内のお掃除 掃き集めたゴミを塵取りに入れながら思ったのは こう言うのでクリスと協力するって平和でいいですね クリスが怪我することも無いですし 作ったミントの香りのお守りを差し出して あまり怪我、しないで下さいね… |
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A ◆アユカ おお~、これがニホンの文化…! かーくんってこんなに楽しげな国に住んでたんだね~ ハツモウデってどういうもの? …さすが本場の人、詳しいね! じゃあ、かーくんの真似するね …ニホンが懐かしくなった? そっか…後でかーくんのニホンのお話、聞かせてね ◆楓 ニホンはここまで愉快な場所ではありませんよ まあ、体験施設とはこういうものでしょう 初詣は、年始に参拝して一年の平穏無事を祈願する行事です 参拝の作法は様々ですが、その社の決まりに従うものです …いえ 私の知るニホンは、こう華やかなものではないので そういえば、前から思っていたのですが アユカさんの名前はニホン的な響きですね 親族にニホン出身者がいるのかもしれません |
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★A ロスは鎧武者や武器に眼を輝かせ ティはその様子に引け気味 「重たい鎧武者。すげぇ!普段着てっ鎧と全然違っな!これ着れっのか?おぉ着れた重っ!なんか違っな!重いっつーたら長巻ってあっらしいんだけど見れっか?刀か薙刀かっつー柄と刀と同じぐれぇの長さで刃の方が普通の刀より重くて切味悪くて重さで斬って行くらし!いいなー欲しーなー 「日本刀と言ったら切味良いイメージあるのですが (迷わず拷問官選んだ理由がなんとなく理解しました… 「?だから刀じゃねぇんじゃ?長巻 「形状聞くと断罪者用の長剣では 「こう両手で柄持ってガンッて斧っつーかハンマーっぽくねぇ?いや片手で振り回すと長剣かー 「刀でスマートなイメージが(遠い目 |
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◆トウマル B:貸出衣装 ニンジャになれると聞いて。 黒尽くめとか格好良いだろ間違いなく グラは十二単似合うんじゃねーか 着付けなら手伝うけど ちなみに俺は名前はニホン的だが 文化には詳しくない。素直に楽しむ そこはかとなく忍びつつ茶菓子と貝殻手に奥へ。 貝殻はレポートと一緒にロリクへの土産 グラ、頼んだ。俺よか器用だろ 苦い抹茶は倍の甘味で味わえばちょうどいい グラの皿から団子ちょこちょこ攫い。 俺今ニンジャ。見えてないから。 あとは短歌か。グラは作れるか? ……速すぎて書き留める暇なかったし意味もわからん 最初は5音。お抹茶の、いやお団子の? あ、和菓子とか独自の菓子いっぱいあるらしいから 充実させるべき、とロリクに報告する |
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~ リザルトノベル ~ |
「なんか、いろいろとすごいですね」 ニホンと貴族とのカルチャーショックにやや驚く『響・神原』の横では、久々の着物を楽しみにしている『愛華・神宮慈』はむしろ、物珍しげにそれらを眺めていた。 「うむ。なんとも面白そうではないか!」 「お嬢がそれでいいなら、いいですけど」 貸衣装屋に訪れると店内に並ぶ鮮やかな着物――ぽいもの。決して本場のものとは異なるが、それでも中々によくできているのはいるのだが。 「これは」 「ミニですね」 巫女服はなぜかミニスカしかない。 着てみたいがミニスカに迷っていると店員がどうぞ、どうぞと愛華の背中を押してきた。 「ま、まって、まだ着るとは……!」 奥へと連れ去られた。 「あ、俺は袴がいいです」 響はちゃっかり自分はシンプルなものを選んだ。 ミニスカ巫女服で足のきわどいところが見えている愛華にたいして無難な上は茶、下は紺色のシンプルな袴姿の響は噴き出しそうになって口を手でおさえた。 「くっ……くく、お嬢よく似合ってますよ」 「響、き、貴様……後で覚えておけよ……っ!」 愛華は恥ずかしさに震えながら響を睨みつけた。 二人はジンジャの参拝へと向かった。 建てられてまだ真新しいそれは紅色の立派な鳥居であった。 ニホンではジンジャは神事を扱う場所として礼儀正しく振る舞うべきだが、ここは形だけの体験施設だ。そんな必要はないが、愛華は背筋を伸ばし、頭をさげ、響も習う。 ただ問題は。 「鎧武者がいますね」 「中々の猛者のように見受けられるな」 細かいことを気にせず、楽しむつもりの愛華は、がっしりと立つ鎧武者に感心している。 鎧武者は二人が門を通ると、手に持つ槍で地面を叩き、かーん! と響く鉄の音で歓迎してくれた。 入口の横には石作りの水場がある。そこらへんは二人の知るジンジャと同じだ。 手を清めたあと、愛華は慣れから水を口に含み、清めた。それに響も黙って習った。 砂利石の上、つい習慣で中央を歩かぬように二人は端を歩く。 木々が作る影の下、優しい風が愛華の長い髪を揺らした。 「あそこか」 きれいに並べられた石階段を登ると中々に立派なジンジャが二人の前に佇んでいる。 「手法はそれぞれ異なるが、せっかくだ。習慣通りいくか」 「そうですねぇ」 愛華が率先していくのに、響も付き合う。 頭を下げ、手を二度叩き、鐘を鳴らす――ここが本来のジンジャにある鈴とは異なっているのには苦笑いするが――手をあわせ、頭を二度さげた。 「ここまで立派なら、そのうちなにかあるだろう」 「ですかね」 参拝が終わった人はどうぞーとジンジャの横にある販売所では巫女服を着たスタッフが二人に声をかけてきた。 のぞけば色とりどりの、お守りが並ぶ。 「参拝の方には無料でお配りしてます」 「ほぉ。ありがたい。どうする? 響」 「俺はこれで」 迷わず、赤い布で作られた「安全」を手にとった。 「では私は……これを頂こう」 愛華は少し迷ったあと紺色の「学力」。 「見ろ。団子も売ってるぞ」 「いいですね」 串に刺さった三色団子を二人はそれぞれ買い、少しばかり行儀は悪いが、食べながら境内をゆっくりと歩いた。 「団子はニホンまんまですね」 「懐かしいな」 風に髪を遊ばせて、愛華は懐かしい甘さに目を細めて微笑んだ。 衣装を返すためにも再び、二人は衣装屋に立ち寄った。そこで愛華はスタッフに声をかけると、にこやかに尋ねた。 「殿方の着る衣装はもっとないのか?」 「男性者ですか? いっぱいありますよっ」 武者やらニンジャやらの衣装が大量に出てくるのに響は唇をひくりとひくつける。 「え? お嬢」 「仕返しさせてもらうぞ」 ミニ巫女様を笑われた仕返しとばかりに、山のように積まれた男性衣装の前で響の首根っこを掴む。 このあと二時間ほど、響はおとなしく、お着換え人形に甘んじることになった。 ● 『アユカ・セイロウ』は目を輝かせた。 「おお~、これがニホンの文化……! かーくんってこんなに楽しげな国に住んでたんだね~」 「ニホンはここまで愉快な場所ではありませんよ。まあ、体験施設とはこういうものでしょう」 『花咲・楓』は苦笑い気味に誤解を与えないように説明した。 「そうなの? 体験するハツモウデってどういうものなの?」 「初詣は、年始に参拝して一年の平穏無事を祈願する行事です。参拝の作法は様々ですが、その社の決まりに従うものです」 「さすが本場の人、詳しいね! じゃあ、かーくんの真似するね」 ここは形だけの場所なので流儀も作法もなにもないが、楽しむアユカに楓は野暮な言葉を飲み込んだ。 貸衣装屋にアユカは興味津々なのに楓は大人しく付き合った。 なにを着ようかと迷うアユカに、楓は無難なものでとスタッフに声をかけた。 「じゃあ、二人のイメージで!」 ノリのいいスタッフに背中を押され、二人は奥へと引きずり込まれた。 アユカは薄桃色に艶やかな紫、赤、紺色の紫陽花を散らした着物だ。帯は薄色でシンプルにするかわりに、帯留めはアユカの瞳を意識した薄紫の金魚だ。 楓は紺色の袴姿だ。 「いつも違って、ちょっと暑いね! それになんだか動きづらい……かな」 「風流というものですよ」 慣れない着物にアユカが転げてしまわないように楓は手を差し出すと、アユカは嬉しそうに笑って手をとった。 ジンジャの前に立つ鎧武者にアユカは大はしゃぎだ。そして、きょろきょろとして、すぐに気配を察知してニンジャを見つけた。 「あれがニンジャかな? 本で見たことある! で、あれがセンゴクブショウ……だっけ?」 樹に隠れているニンジャはアユカに見つかると、手をふってくる。鎧武者もはしゃぐアユカを愛想よく出迎えた。 なんだかものすごく違う――口にはしない楓はアユカが楽しそうならそれでいいと自分も楽しむことに決めた。 「アユカさん、鳥居の前では頭をさげないと」 「あ、そうだった!」 アユカは慣れない作法にちらちらと横目で楓がやる様子を見て、一生懸命同じようにする。 冷水で手を洗い、砂利道を二人は歩く。とくに慣れないアユカはここで少しばかり苦戦して、転びそうになるのを楓は横についてしっかりと支えた。 「えへへ。すごいね、ニホンって!」 「……そうですね」 ニホンにいい思い出があったのは、子供の頃田舎の村に住んでいた時のみの楓は少しばかり口調が重くなる。 こうした華やかな雰囲気にはあまり馴染めない自分を意識してしまうからだ。 ようやくたどり着いたジンジャの前でも、楓を手本にしようとアユカはちら、ちらと盗み見て――楓はその視線を受けるのに、参拝でよく行う方法をとって――一礼、二拍子を行った。 「ニホンでは、鈴をつけているんですよ」 「鈴を? ちっちゃいと音がしないんじゃないの?」 「大きな鈴です」 「おっきな? ……すごいねっ」 アユカは大きな鈴を想像しながら手をあわせ、目を閉じて、心の中で願う。 (今年も一年安全でありますように……半分以上過ぎちゃってるけどね) 販売所に訪れたアユカは楓にお守りの意味を伺い、青い「家内安全」を手にとった。 「お土産なのでつつんでください」 スタッフが丁重に包んでくれるのに、アユカは楓に笑いかける。楓も口元が自然と緩んだ。 「そういえば、前から思っていたのですが、アユカさんの名前はニホン的な響きですね。親族にニホン出身者がいるのかもしれません」 「え、そうなの?」 驚いてアユカは目をぱちぱちさせる。 「けど、それってかーくんの名前みたいなの? どんな風になるんだろう」 「そうですね……紙や書くものがあれば」 傍にいたスタッフがすぐに墨と和紙を出してくれたのに楓は少し迷った末、『歩花』『歩佳』の二文字をしたためた。 「ぱっと思いついた文字ですが、あゆんでいくはな……あゆむさきによいことがある、という意味です」 「かーくん、すごい! これ、もらってもいい?」 「走り書きですよ?」 「うん。いいよ!」 二つの文字が並ぶ紙をアユカは手にとって眺める。 (これも記憶への手掛かり……なのかな) ● 『トウマル・ウツギ』、『グラナーダ・リラ』は貸衣装屋にやってきた。 理由は簡単だ。 「ニンジャになれると聞いて」 トウマルは名前こそニホンの響きに似ているが、まったく知識がない。この体験施設を素直に満喫して、楽しむつもりだ。 たいしてグラナーダは表情にこそ出さないが。 (ニホン出身の友人がいたのでそこそこ詳しいのですが、参加者が楽しんでいるなら水はさしません) 大人の対応である。 「しかし、ニンジャ……トーマはそういうものに憧れる年頃ですか」 グラナーダの言葉にトウマルが片眉を持ちあげる。 「なんだよ、黒尽くめとか格好良いだろ間違いなく。グラは十二単似合うんじゃねーか」 「十二単は女性が着るものですし着付けが難しいのでは?」 「着付けなら手伝うけど」 きょとんと告げるトウマルに、グラナーダは小さくため息をついた。 「問題視して欲しいのはそこではありません。無難な着物でいいです」 二人のやりとりをにこにこと笑って聞いていたスタッフは、勢い込んで答えた。 「十二単ですか! 着付けも手伝いますよ」 トウマルの選んだニンジャの衣装は黒一色で、さらに肘あて、膝あてがつけられる。シンプルだが、動きやすく、通気性もばっちりだ。 「これでシノブんだな! グラは?」 「……着物でいいと言ったのですが」 グラナーダ相手にやる気を出したスタッフ総動員で十二単は着付けされた。 色は、まだ夏とグラナーダの瞳と髪の色を考慮し、蝉の羽色を下から杜若色、花薄と落ち着いた色合いでまとめられた。 「飾りも角につけられるって」 目をひいたのはグラナーダの瞳と同じ青色のトンボ石の珠だ。トウマルが手にとって眺めると濃い紺色にも見えた。そこには赤、黄が混じった見事な文様がかかれている。それをトウマルはグラナーダの角にいつもの要領でつける。 そこはかとなく――気持ちはニンジャなので――和菓子と貝殻と絵具を手に、忍びつつ奥の座敷へと二人は移動した。 畳の青臭い匂いに、和紙のついた窓はなんともニホンぽい。 そこを開けば、砂利と松で整えられた庭と職人の手で作られた小川がさらさらと音をたてて流れている。 二人はその景色を見つつ、せっかくなので和菓子――三色団子、葛切り、花の形のがくらん、ふわふわと泡立つ抹茶をいただくことにした。 「グラ、頼んだ。俺よか器用だろ」 トウマルは当然のように貝殻と絵具をグラナーダに押し付ける。 今回の体験レポート兼お土産の予定だ。 グラナーダは胡坐をかいてお菓子に夢中になっているトウマルを見て小さな嘆息しつつも、頭をひねる。ロリクに提出するならなにがいいかと考えて、ジンジャの鳥居と、目の前にある川がよい題材となった。 その傍らでは抹茶に口をつけて、苦さに眉間に皺が寄せたトウマルが、三色団子食べればちょうどいい味わいになることを発見していた。葛切りは黒蜜をかけたら爽やかな甘さ、がくらんはさくっとしているのに抹茶を飲めば舌で溶けてじんわりと、あとまで残る味わいがある。 トウマルはさりげなくグラナーダのお菓子をかすめ取ることも忘れない。その手をぺしっとグラナーダの尻尾が叩く。 「トーマ」 「俺今ニンジャ。見えてないから」 「こんな堂々としたニンジャははじめてです」 グラナーダは絵を完成させつつあった。 「あとは短歌か。グラは作れるか? なんかルールとあるのか?」 「短歌には特別ルールはありませんよ。5句31音を意識するだけです」 「最初は5音ってことか」 「詠めと?」 グラナーダはトウマルを見つめて、目を細めたあと、唇を開いた。 「くれなゐの御簾に覗きし水月と倶に流るる時ぞ羨む」 「……速すぎて書き留める暇なかったし意味もわからん」 「即興なので深い意味はありませんよ」 「ふぅん、お抹茶の、いやお団子の?」 「トーマはどうあれ食べ物を詠む気ですか」 真剣に和菓子を見つめて、ぶつぶつと呟くトウマルにつられたようにグラナーダは手を動かす。風流な絵のなかに三色団子がくわわった。 ● 「ニホン、知っています。何故か昔からとても惹かれる所で」 『アリシア・ムーンライト』が伏せ目がちに呟くと『クリストフ・フォンシラー』は眼鏡のレンズの奥にある金色の瞳を細めた。 「ニホンかあ。アリシアの黒髪とか全体の雰囲気って確かにニホンっぽいよね。最初、母さんみたいな黒髪だからニホンの子なのかなって思ったんだ」 「クリスのお母様、ニホン出身だったんですか?」 クリストフを見上げるアリシアは小首を傾げる。 「あれ、話したことなかったっけ?」 「初めて聞きました。今度、会ってお話ししてみたいです」 「うん、じゃあ機会があれば一緒に俺の故郷に行こうか。母さんもきっと喜ぶよ」 何気ない誘い言葉にアリシアの唇が嬉しそうに、ふんわりと、花咲くように弧を描く。 「それはともかく、それじゃあ今日は体験コース行ってみようか?」 「……はい」 二人が選んだのは巫女・神主体験コースである。これはまず貸衣装屋で巫女と神主の服を借りるところからはじまる。 アリシアが迷うのにクリストフがさりげなく、ハンガーに飾られたミニの巫女服を指さした。 「アリシアの巫女服はあれかな?」 「……」 「ね?」 「……あの、私の知ってる巫女服って、もっとハカマが長い気がするんですが」 ちなみにミニの後ろにはちゃんと袴の長いタイプの巫女衣装もあるにはあるのだが。 「あまり裾が長いと仕事の時に邪魔になるんじゃないかな。だからその丈なんじゃ?」 「え、あ、そうですね、裾が邪魔になってはいけませんものね。それじゃ頑張ってお仕事してみます……!」 これと似たやりとりをつい最近バニー衣装のときにやった記憶があるのだが、アリシアは見事にクリストフに言いくるめられている。 そして、ちょうどそのやりとりを見ていた察しのいいスタッフは長い袴巫女服を奥へと隠し、いろいろと黙っておくことにした。 アリシアが身に着けたのは太ももが見えるくらいのミニ袴の巫女服だ。長い、墨を研いだような黒髪は後ろで一つに白と赤の和紙でまとめられ、金の紐でくくられる。紫布とピーズをあしらった花のコサージュがつけられた。 「似合ってるし、可愛いよ。俺はどうかな? 黒髪だったら良かったんだろうけどなあ。生憎、父親似でさ、俺」 クリストフは澄んだ青色の袴の神主衣装だ。さりげなく手袋はつけたままだ。 「はい、クリスも似合ってますよ。髪の色も、そんな、気にしなくても、いいと思います」 いつもと違うその姿にアリシアは目のやり場につい、困って畳とクリストフを交互に見た。 (……どきどき、します) 契約してから短くない時間を一緒にいるが、こうして任務のたびにクリストフの知らない、魅力的な一面を見ては心臓がうるさくなってしまう。 施設をざっとスタッフに案内され、ひととおりの説明と体験を終えたあと、広い境内で、二人は箒を渡されて掃き掃除に精を出す。 太陽がまぶしいなか、境内の端に植えられた木々が作った影の下、風によって零れ落ちる葉を集めて、きれいにしていく。 観光客や体験客が多いが、それでものどかだ。 「こう言うのでクリスと協力するって平和でいいですね。クリスが怪我することも無いですし」 「まあ前衛職だから」 いつもは浄化師としてヨハネ使徒やベリアルを相手にしているので危険も多い。特に剣を持ち、敵と真正面から戦う彼は。 気遣う優しい言葉に、少しだけ申し訳なさそうにクリストフは笑みをこぼす。その笑みに背中を押されるようにアリシアは一歩前へと近づいた。 「あの、これ……あまり怪我、しないで下さいね」 アリシアの両手がおずおずと差し出されたのはクリストフの髪の色と同じ、深緑色のお守りだ。そこには「厄除け」と書かれてある。 お守りの意味を教えてもらい、自分で作ることもできるときいたアリシアはスタッフにお願いして作らせてもらったのだ。 このお守りに、どれだけの効果があるかわからないが、アリシアの気持ちはぎゅっと詰められている。 「ありがとう。お守り、大事にするよ」 手にとると、微かにミントの甘酸っぱい匂いがクリストフの鼻孔をくすぐった。 そのとき、遠くでおーいと知り合いの元気な声が背中に聞こえてきた。 ● 貸衣装屋に訪れた『ロス・レッグ』は大興奮で尻尾をぶんぶんぶんと高速回転させていた。 傍らでは『シンティラ・ウェルシコロル』が若干、ひいていた。 「重たい鎧武者。すげぇ! 普段着てっと鎧と全然違っな! これ着れっのか?」 ロスの問いにスタッフは若干、目を白黒させながらこくこくと頷いた。 普段ここを訪れる客人は着物や巫女服を選ぶので、鎧武者は完全な飾りだったのだが、それを借りる猛者が現れるとは……! 鎧は頭の兜から腕、足、さらには胸当てとすべて銅で出来ている。それらすべて赤く塗られ、派手な上にものすごく重い。 「おぉ着れた重っ! なんか違っな! 重いっつーたら長巻ってあっらしいんだけど見れっか? 刀か薙刀かっつー柄と刀と同じぐれぇの長さで刃の方が普通の刀より重くて切れ味悪くて重さで斬って行くらし! いいなー欲しーなー」 一応レプリカとしてついている偽物の刀を手にとってロスは大はしゃぎだ。 「日本刀と言ったら切れ味が良いイメージあるのですが」 「そおかぁ?」 尻尾をふって笑顔のロスに、ティはなんとなく、彼がどうして迷わず今のアライブを選んだのか理解した。 なんでも殴ればいいってもんじゃないですよ、ロスさん。 「だから刀じゃねぇんじゃ? 長巻」 「形状聞くと断罪者用の長剣では」 「こう両手で柄持ってガンッて斧っつーかハンマーっぽくねぇ? いや片手で振り回すと長剣かー」 「刀はスマートなイメージが」 「それよか、ティはどうするんだ、服」 遠い目をしていたシンティラはロスの言葉と視線を向けてくるスタッフにはたと我に返った。 きょろきょろと視線をさ迷わせて、ハンガーにかかる巫女衣装に目が留まった。 「先ほど、ミニは別の方が借りられて長いのしかないのですが」 「それでいいです。なにかオプションとかありますか?」 「巫女衣装でしたら箒とかありますよ」 「それでお願いします」 長い、赤袴をシンティラは着付けをしてもらう。着物というと動きづらいかと思ったが袴なので足元はスカートのときと同じすーすーするし、動きやすい。 「この服動き易いです」 新しい発見にシンティラの口元が少しだけ綻ぶ。 鳥居の前に来るとロスはそこに立つ鎧武者を見て尻尾を振った。 「おぉ! 俺と同じ鎧武者!」 明るく手をふるロスに鳥居にいる武者は歓迎するように手を振り返してくれた。 「ニンジャもいるんだよな? とりあえず木々の中に人の匂いがあっなら解るんじゃ?」 「……私は解りません」 ロスがくんくんと鼻をひくつける。がざっと背後の木で気配がしたのにがばっと勢いよくロスは振り返るが、そこには影しかない。 「さすがニンジャ! 逃げたかっ!」 「ロスさんがうるさいのもあるんじゃないですか」 手を清めたあと、二人は砂利道を歩いていく。シンティラが箒を持って楚々と歩くのに、さすがにうるさいのもなぁと思ったロスは狼化して、そっと気配を殺す。しかし、狼だろうが人だろうが鎧をつけていることにかわりはなく、むしろ、人のときよりもこすれるので、がしゃがしゃと音がしてしまう。 「ロスさん」 「へへっ。てか、巫女って掃除するもんじゃねぇ?」 「いいんです」 ジンジャに向かうと、二人は傍にある立て看板をみながらお参りをすませ、横にある販売所に向かった。 ずらりと並ぶお守りのなかで青色が目に留まり、ティはそれを選ぶ。 スマートに「安全」と書かれてある。 ロスは逆に赤色にごてごてした難しい文字の――読めないが、かっこいいという理由で――それを選んだ。 「おみくじは?」 「結果が怖いのでいいです。絵馬をしましょう」 ティは絵馬を巫女から受け取り、ロスにもすすめる。 【武器】 ロスは豪快に二文字。 【符攻撃に影縫や束縛系を】 しっかりとした文字のティ。 「ティにしてみれば珍しい攻撃系願いなー」 「ロスさんのを見て似たのを狙って見ました」 ティはロスにはにかんでみせた。 ロスが二人の作った絵馬を飾ってくれ、帰り道を歩き出す。 砂利道は先ほど同様に狼姿のロスと、シンティラが静かに進む。 そこでロスは、おっと声をあげた。 「クリスじゃねぇ? おーい」 駆けだすロスをティは見つめた。 ● 「ロリク、これ」 「おお、トウマル、グラナーダ、レポート助かる」 「こっちは土産」 「わざわざ悪いな。ふふ、きれいに書けているし、お前たちらしい絵だなぁ」 体験レポートと一緒に三色団子と鳥居に川が描かれた貝殻が提出される。 「和菓子とか独自の菓子いっぱいあるらしいから、充実させるべき」 「あははは。食べること大事な、伝えておくよ」 和菓子が増える喜びにトウマルは拳を握る。 トウマルたちとは入れ違いにアユカたちがレポートを抱えてロリクの元へとやってきた。 「ロリクさん、これ体験レポートとお土産です!」 アユカがにこにこと笑ってまとめた体験レポートと「家内安全」のお土産を差し出す。 にこりと微笑むアユカにロリクも笑顔で答えた。 「ありがとう、二人とも、大切にするよ。お前たちもしっかり休んで次の指令に備えておけよ」 「はい!」 にこりとアユカは微笑んだ。
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*** 活躍者 *** |
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[6] トウマル・ウツギ 2018/08/01-22:33
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[5] ロス・レッグ 2018/08/01-05:59
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[4] アユカ・セイロウ 2018/07/31-21:42
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[3] アリシア・ムーンライト 2018/07/28-21:24
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[2] 響・神原 2018/07/28-13:09
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