~ プロローグ ~ |
今日も今日とて指令を受けにエントランスへと行くと、いつもは指令発行受付口にいるロリクと、調査員のユギルを見つけた。 |
~ 解説 ~ |
互いに弁当作って交換して、食べようぜ! というのがこのエピソードです。 |

~ ゲームマスターより ~ |
ごはん、大事。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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◆作る工程をメインに ・唯月も瞬もそれぞれ他の参加者さんに見て廻りながら もしくは聞き廻りながらお弁当のメニューを決める ・唯月は卵焼きや唐揚げ等の定番メニューに挑戦 ・瞬は参加者さんを参考にしたメニューに挑戦 唯(変わったものを作るより定番メニューを作れたならいいですよね すると卵焼き…唐揚げ辺りでしょうか…? うぅ…誰かの為に料理するのは初めてなので…緊張、です…っ!) 瞬(そもそも料理しないからお弁当の定番がわからない〜 こうなったら皆の参考にさせてもらおー!) ◆唯月はまぁまぁ、瞬は黒焦げ失敗 ・取り敢えず彩りは良い唯月の弁当 ・焦げが目立つ瞬の弁当 唯「定番でも難しかった…次はもっと!」 瞬「うわーん黒焦げ〜」 |
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※アドリブ歓迎します ●唯月さんやシア君達と一緒に作る ●作る弁当…チョコレートやメープルシロップ、ホイップクリームが これでもかとかかったサンドイッチ (これでララが、甘いものの素晴らしさをわかってくれると良いんだけど…) ●馬車の中で さて、どんな弁当をララは作ってくれたのかな。楽しみだな。 (蓋を開ける) (形容し難い、真っ黒なゲテモノ料理が) な、何だこれ…レシピ集でも見ながら作ったなら、こうはならない筈なんだけど… サラダを揚げた!? 意味がわからないよ、大体君は… ごめん、言い過ぎた。誰にでも得意不得意はあるよ。 (黒い物体をガリッと噛んで) こ、これはこれで歯ごたえが…はは。 |
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※男女で別れて協力 定番のおかずは火加減を誤る想像しかできない… 火を使わず、工程も簡単で、姉さんが好きなもの… 悩んだ末フルーツサンドに パンに果物を挟んで切るだけだし、クリームも砂糖と混ぜるだけだ これなら極端な失敗はないと思う …ないと思いたいな レシピを守りつつ味見を重ねて クリーム、僕は甘さを抑えた方が好みだけど 姉さんはもっと甘い方が好きだろうな 苺、キウイ、オレンジ 果物も色々な種類を使って で、できた…っ 良ければ味見をお願いできますか? ◆食 ぷっ…あはははっ! (同じ物を作っていた事に吹き出し 僕は姉さんが作った方が好きだな 甘すぎないし、苺とよく合ってるよ 今度は一緒に作ろう? 苺を使って、もっと色々なものをさ |
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ヨ 料理は出来ない訳ではないですが、味や見栄えを考えたりしたことは特に… 人の為なんて尚更無いですよ お、お腹に入れば一緒じゃないですか パートナーの好物を知らない はたと気付く やっぱりお肉? でも野菜も使ってバランスを取ったほうがいいでしょうか… レシピを復唱しながら皆と協力しつつ何とか作る むむ… ちょっと作りすぎたような 蓮根の肉詰め 慎重に失敗しないように ベ 大した腕がある訳でもないが… いつも作っているようなものでいいか 色どりで野菜をこうして。まあこんなものだろう 中華鍋を使って卵とベーコンの炒飯 竹輪の胡瓜詰め ミニトマト あまり考えずささっと作る 食 炒飯弁当とベルトルドを交互に見比べ え。これを ベルトルドさんが |
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●お品書き ニホンの料理、鰯のつみれ 料理スキル0の二人の無謀な目標 ●フィノ レシピ…ないなぁ(見逃しただけ) 仕方ない、アドリブだ! 魚をかなり細か~くしてあったはずだから (試しに鰯を一匹丸々ミキサーに掛け) どろどろだね…うげぇ生臭い でもつなぎを入れて冷やせば!(ボウルに開け卵を混ぜて氷水で冷やし) (震えるユンを見て)仕方ない、毒見は任せて! (鰯ジュースを一気飲み) ぶふぉぁ(吹き出してぶっ倒れ) (失敗した調理器具をがしがし洗いつつ、苦笑して杜郷さんに事情説明) …というコトで弁当は料理長にお願いして、 代わりに飴が出来ました 疲れた時は甘いものですよね♪ (自信作のべっこう飴と料理長の即席弁当を皆にお裾分け) |
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~ リザルトノベル ~ |
「けっ、けっこう、広い……ですね」 キッチンを一望する『杜郷・唯月』の横では『ララエル・エリーゼ』、『リュネット・アベール』、『ユン・グラニト』が宝石を見たように目を輝かせる。 唯一『ヨナ・ミューエ』だけは表情がかたい。 「ど、どんな見た目でも……お、お腹に入れば一緒じゃないですか」 不安をぽつりと漏らす。 「わぁ~立派なキッチンだねぇ~」 「本当ですね」 にこにこ笑顔の『泉世・瞬』の横で『ラウル・イースト』と『リュシアン・アベール』は少しばかり圧倒されている。 「楽しそうだなぁ!」 『フィノ・ドンゾイロ』はおもちゃを与えられた子供のように笑顔だ。 「大した腕がある訳でもないが……いつも作っているようなものでいいか」 などと『ベルトルド・レーヴェ』が呟く。 「料理できるんですか~? すごいな。よかったらいろいろと教えてくださいね~」 「いや、まあ一人で暮らしているからな」 瞬の言葉にベルトルドは尻尾をぴんとたてた。 ● 今回はパートナーに料理を作るということで、せっかくなので男女に別れて作ることになった。 広いキッチンで男性側、女性側と別れて作業を行う。 ララエルとリュネットは互いに白いエプロンを結びあい、ユンは唯月とみんなのぶんの調理器具の用意をする。 ヨナは素材を睨みつけていた。 「ぁ、あの、どうかした、んですか?」 おずおずと唯月が声をかける。 「え、あ、いえ。準備はできましたね」 「は、はい! が、がんばりましょう! ……あ、あの……よかったら、何を作るのか、聞いても、いい、でしょうか? あ、わ、わたしは……変わったものを作るより定番メニューを作れたならいいですよね。……卵焼き、唐揚げ辺りでしょうか……?」 定番のお弁当を唯月なりに一生懸命考え、自分でも作れそうなものを考えたチョイスだ。 「料理は出来ない訳ではないですが、味や見栄えを考えたりしたことは特に……人の為なんて尚更無いですよ。それに相手に食べてもらうなんて」 うーんと腕組みをして難題に立ち向かうヨナに唯月も口元に小さな笑みを作って同意する。 相手に食べてもらうというのはなかなかに緊張する。 「どうかしたんですか?」 「メニューの相談を……そちらは何を作るんですか?」 ヨナの言葉にララエルは拳を握りしめる。 「私はラウルが甘いものばかり食べているので、お野菜やお肉にしょうと思います。このままだと病気になっちゃいます!」 「僕は……まだ決めてないから、レシピを参考にするつもり……包丁とか持ったことないから……僕でも作れるものがあるといいんだけど」 ギヨーム・フエール料理長が厳選した初心者からプロまで御用達の料理本を両手に抱えてリュネットが少し頼りなさげに告げる。 その横ではユンもやる気に満ちた顔で両手に拳を握っている。ちなみに料理経験は皆無である。 「あ、相手の好み、に合わせるのも……大切ですよねっ! 体調にも気を付ける……中々難しいですね」 「好み?」 唯月の言葉にヨナははっとした。大変重要なことに気が付いたのだ。 「あ、あの……?」 「どうかしたんですか?」 「……大丈夫?」 「へ、いき?」 「……ベルトルドさんって何が好きなんでしょうか?」 ベルトルドの好みをヨナは知らない。 ● 「そもそも料理したことないからわからないんだよね~」 瞬が苦笑いする。料理本のページをめくってもどれが定番なのかがいまいちわからない。 こうなったら皆のを参考にするしかない。と結論に落ち着いたのだ。 「僕は甘いものにしようと思います。ララエルに今度こそ甘いものの良さをわかってほしいので」 「うんうん! 指令のあととか甘いものっていいもんね~」 一方、ラウルとエプロンをつけあっていたリュシアンはまだ決めかねているようだ。 「僕は料理をしたことがないので包丁や火を使わないものにしようと思います」 「え、そんなものあったけ~?」 「定番のおかずは火加減を誤る想像しかできない……火を使わず、工程も簡単で、姉さんが好きなものを……まだ何にするかは悩んでるところです」 「そっか~。慣れないことだから火を使わないのも手かぁ~」 お弁当だから必ず火を使ったり包丁を使うとばかり思っていた瞬としては目から鱗が落ちるほど感心する。 その傍らでは鍋を片手に、材料を並べてすでに料理開始しそうなベルトルド。 「わぁ、プロみたいですごいなぁ~」 「本当ですね。すごい!」 男性陣の羨望を集めてベルトルドの尻尾がまたしてもぴんと伸びた。 「たいしたものじゃないぞ、本当に……なんだか女性陣の視線を感じるんだが……俺か? 俺は炒飯を作って、おかずは適当だ」 あまりにも慣れたベルトルドに全員から感心のため息が漏れる。 「しかし、おい、フィノ、なにしてるんだ」 「え? あ、あははは。今回、瞬さんの持ってきたレシピ本を見せてもらってるんですけど……鰯のつみれを作ろうかと思って……レシピ、ないなぁ」 笑顔のフィノにベルトルドは、またえらく難易度の高いものを選んだものだとひげを震わせる。 「レシピにない~? おかしいな~。料理長の厳選レシピ本なんだけどなぁ~」 「うーん、仕方ない! アドリブだ! とりあえず、必要そうな道具を用意しないと!」 フィノがやる気になって道具をとりにいくのに瞬がページを見つけて、声をかけようとしたが既に遅かった。 ● 「ラウルは甘いものが好きです」 「シアは……甘さが控えめなほうが好きだよ」 「フィノ君、何でも、食べま、す」 「そ、そうですね……瞬さんも、好き嫌いしたところ、見たことはない、です」 とりあえず参考になるかわからないが、自分たちのパートナーの好みを告げる心優しいメンバーにヨナはベルトルドの今までのことをいろいろと思い出す。 お酒好きで、確かつまみを……。 「やっぱりお肉?」 ヨナは疑問形で呟く。あの見た目だし、けっこう動くし、男性だし。 「と、とりあえず、お肉でいってみます。あと、みなさん、包丁の使い方わかりますか?」 またしても沈黙。 「あ、あの……わ、わたし……包丁で、……ものを切る、くらいなら……ただちゃんとした包丁の扱いと言われると」 「おっ、おねがい、おしえて……くれない?」 唯月はリュネットに乞われて目をぱちぱちさせたあと、はにかみながら頷いた。 「ええっと、包丁はこう、しっかりと持ちます……お野菜を持つ手はにゃんこの手、です。丸めて、抑えておくんです」 「にゃんこの……手……うん、……ありがとう……すごく、助かった……にゃんこの、て、にゃんこのて」 「わ、わたしなんかで、お役に立てるなら、よ、よかったです」 唯月は照れて頬が熱くなるのを感じた。 「レシピ、やっぱり、ない」 ぽつりとユンが呟く。 今回、ユンはフィノと一緒に共同で作ろうとも考えていたものが一つある。 鰯のつみれ。 「れしぴ、残念」 ただ単純に見逃しただけである。 「あどりぶ!」 ごっくりと息を飲む。 やる気だけは誰にも負けない。 レシピを見逃したのがまさか、あんなことになるなんて誰も思わなかっただろう。 (うぅ……誰かの為に料理するのは初めてなので……緊張、です……っ!) 唯月はせっせっと手を動かす。卵をまぜたり、おにぎりを握ったりとてきぱきと動いていく。 一生懸命、誰かを思ってお弁当を作るというのは難しいけれど、楽しい作業だ。 「定番でも、難しかった……ですね」 瞬が笑顔だといい。 (わたしのことを考えると、大変だろうけど……けど) 柑橘の甘酸っぱい匂いを思い出してふいに手をとめた。 (二人の……思い出……) 包丁を持ったことのないララエルはラウルのことを考えて手を動かしていた。 (ラウルは甘いものを食べ過ぎですから、お野菜も食べて欲しいです) 気持ちはたっぷり。 行動もいっぱい。 ただし、目の前で焼け付くフライパンのキチンソテーと不ぞろいな野菜たち。 (だ、大丈夫です! 味はおいしいはず、です!) 多少の見た目が悪くても優しいラウルなら食べてくれる、はず。 みんなが教えてくれたこともしっかり参考にしてララエルはサラダを混ぜて油たっぷりの鍋へと投下した。 必死にレシピをめくって、今回作るものを決めたリュネットはゆっくり、ゆっくり丁寧にパンを切る。 (フルーツサンド、これなら……僕にもできる……でも、もしかしたら、シアは……男の子だし、甘いもの、あんまり好きじゃないかも……これでおいしく食べてくれる、かな?) パンにクリームを塗って、挟むものを考える。 (これなら、大丈夫…かな? ……苺……シアと僕の瞳みたい) 自然と苺をひとつ、ふたつ……切って並べて挟んでいく。 「あ」 小さな声が漏れた。 (ど、どうしよう……) 苺をはさんだサンドイッチばかりが出来上がってしまった。 (野菜でバランスを、とればいいのでしょうか?) ヨナはレシピを頭のなかで繰り返しながら手を動かしていく。 蓮根にお肉を詰めて焼くだけ。少しばかりお肉が零れたり、焼きすぎたりするのも歯ごたえがあっていいはずだ。 見栄えは女性陣総出で詰めていけばきっといける、はず。 はじめは焼きすぎたりしたけど、かりかりのきつね色も出来てきた。さくさくしておいしそうだ。 少しばかり嬉しい気持ちに、単純作業に体がせっせっと動いてしまう。 で。 (むむ……ちょっと作りすぎたような) 山となった蓮根の肉詰めにヨナは遠い目をした。 ● 「色どりでこうして。こんなものか」 昔よくパートナーである師のために作っていたことがある。 卵とベーコンのあっさり風の炒飯。竹輪の胡瓜詰めに鮮やかなミニトマト。バランスもいいし、形もそこそこ。 ベルトルドはふと視線を感じてヨナを見る。 作り上げたらしい大量のおかずとにらみ合いをしている。 (大丈夫か、あいつ……ん、他のメンバーは……) 視線を向けて、はっと恐ろしいものを見つけたベルトルドはかたまる。尻尾が若干膨らんだ――本能的に。 「フィノ、それはやめたほうがいいぞ!」 料理初心者である瞬、ラウル、リュシアンはそれぞれ包丁の持ち方をベルトルドに指導をしてもらい――にゃんこの手である。多少、危なげな手つきでパンを切ったり、野菜を切っていく。 「焼き加減難しいなぁ~」 「食べるだけだとわかりませんね」 「見た目も大切だけど……まずは相手への気持ちを大切にしましょう」 みんなのレシピを参考に瞬は頭を悩ませる。本ではとっても簡単となっているが、いざやるとなかなかに難しい。 (皆いろんなもの作るっぽい? 内緒の皆のは俺じゃどんなものか想像もつかないけど、それぞれがそれぞれ相手の事を思って作ってる事は伝わってくるね……!) 盗み見た唯月が真剣ながら笑っている、それに瞬も自然と楽しくなってきた。 「あ……うわーん黒焦げ~」 ちょっと目を離した隙に火加減の難しい炒飯をほぼ真っ黒にしてしまった瞬は途方に暮れる。 ラウルとリュシアンはパンを切るとそれに各々、用意した具をいれていく。 (これでララが、甘いものの素晴らしさをわかってくれると良いんだけど……) 以前特製かき氷は軽く怒られてしまった。 だから今回はチョコレートやメープルシロップ、ホイップクリームがこれでもかとかかったサンドイッチだ。 疲れた体も一気に回復して元気になること間違いなし。 一方、リュシアンは丁寧に果物を切っていく。苺、キュウイ、オレンジ……レシピを見て甘いものが好きな姉のことを考えたチョイスだ。 パンに果物を挟んで切るだけだし、クリームも砂糖と混ぜるだけだ、これなら極端な失敗はないというのでフルーツサンド。 (失敗……ないと思いたいな。ただ姉さんは甘いの好きだから、少し甘めに) 味見を何度もして甘すぎないように調節し、レシピもしっかり守った。 多少、パンの端っこがぎざぎざなのは愛嬌だ。 「で、できた……っ! 良ければ味見をお願いできますか?」 「シア君すごいね! ありがとう。じゃあ一口」 「え、いいの~。ありがとう。わぁ……すごいな。あ、他の人もよ……っ!」 せっかくの味見をみんなでしようと瞬が声をかけようとしてかたまった。 「レシピがなかったんだよね」 「う、ん……残念」 フィノ、ユンは二人で一緒に挑む――鰯のつみれ。 「魚をかなり細か~くしてあったはずだから、これ、借りてきたんだ。名前とかはよくわからないけど、このなかにいれると細かく砕けるらしいんだ!」 フィノがわざわざ借りてきた道具にユンはこくこく頷く。 「これをいれて、砕けば」 神妙な顔でユンは見つめる。 「一匹でいいのかな?」 「……ふたり、ぶん、だから……多いと、困る?」 下処理をまったくしてない魚を頭から道具のなかに一匹、ぽいといれる。 ちなみに道具の使用方法も借りるときに適当に聞いてしまっていたのでいまいちわかってない。 「えーと、これを発動させたらいいのかな」 「ふた、フィノ君!」 借りてきた道具は恐ろしい音をたてて――その音を聞いた運の悪いベルトルド、瞬はのちに「モンスターの断末魔みたいだった」と語る。 がこん、ばっこん、きゅいんんん、しゃああああ! 「わ、動く、これ、すごく動く」 「フィノ君!」 二人して道具を抑えることものの一分。 赤黒いどろりとした液体が出来上がった。 「どろどろ……」 ユンは目を見開く。なんとなくいやな予感を覚え始めた。 「どろどろだね。うげぇ生臭い」 フィノも顔をしかめるが、ここからきっとすばらしいものになるはず、と期待をしてボウルに移す。 「でもつなぎを入れて冷やせば!」 卵をいれて、氷水で冷やしながらがっつり掻きまぜる。 「……ふ、フィノ君」 そして出来上がったのはベリアルの見た目より禍々しく、ヨハネの使徒を見たとき以上の絶望を覚える液体である。 「……」 「……」 ぷるぷるとユンは震えあがる。 「仕方ない、毒見は任せて!」 「あ、あ……」 止める間もなく、命知らずなフィノが飲み干していくのをユンは涙目で見つめる。 そして。 「ぶふぉぁ!!」 「ひゃぃ!」 フィノが倒れ、ユンの悲鳴が轟いた。 ベルトルドと瞬の制止は間に合わず、他のメンバーもキッチンの端っこで起こった恐ろしい事態に気が付き、慌てたのは言うまでもない。 素早い応急手当が功を成し、フィノが天に召されることはなかったが。 「ベリアルとヨハネの使徒が……胃のなかで暴れてる……」 ユンがぺこぺことと頭をさげてまわり、瀕死のフィノに水と胃薬を飲ませて休ませると掃除をせっせっとしていく。 「う、うーん……死ぬかと思った!」 「フィノ君! い、いきてる?」 「あんなことで死んだらいやだよ。あ、掃除、手伝うよ」 まだ顔色の悪いフィノはそれでもユンだけに後片付けは任せられないと借り受けた道具を洗っていく。 今日の昼は料理長にお弁当はお願いしたので食べそこなう心配はないのだが、せっかくのお弁当がうまくいかずにしょげる二人。 「れしぴ、れしぴ……あっ」 ユンが諦めきれず、一生懸命考え、フィノが掃除に精を出している隙に唯月たちに相談してあるものを作ることにした。 「フィノ君っ!」 「ん、どうしたの?」 砂糖と水を混ぜてあわせ、鍋でぐつぐつと煮て、キツネ色になったものをお皿にたらしてつまようじを突刺す。冷めれば飴の出来上がり。 「で、できたっ。うまく、いったね!」 「やったね!」 二人は笑顔でハイタッチを交わす。 いびつなものもあるけれど、それが愛嬌もある。 ● 「はい、いづ~」 「あ、ありがとうございます。こ、これです」 あたたかな太陽の日差しに、虫たちが鳴くあぜ道で唯月と瞬はお弁当を交換する。 蓋をあけると、唯月は女性らしく整えられバランスもいい。一方、瞬の炒飯は焦げてしまったし、彩と思っていれた野菜もかなり形がまばらだ。 「中々難しかったです……あの、次はもっと、がんばりますっ!」 「あはは、ありがとう。俺のは……いづ、無理して食べなくていいんだよ~」 「そ、そんなこと、ないです。お、おいしいです! あ、あの、これデザート、よかったら」 小さな箱の蓋を開けると、柑橘で作った小さなハートのゼリー。 「半分こしようか~」 「は、はい!」 「さて、どんな弁当をララは作ってくれたのかな。楽しみだな」 「ラウルが作ってくれたお弁当……えへへ、楽しみです!」 蓋を開けた瞬間、ラウルとララエルは笑顔で硬直した。 ラウルの目の前には黒いゲテモノ料理が詰められたお弁当――これでも女性陣総手でがんばって詰めたのだ。 ララエルの目の前にはかき氷のときと同様の見ただけで胸やけしそうなサンドイッチ。 「な、何ですかこれー! ラウル、これじゃとーにょー病になっちゃいます! これじゃあの時のかき氷です!」 「な、何だこれ……レシピ集でも見ながら作ったなら、こうはならない筈なんだけど……」 ラウルも負けじと言い返す。 「さ、サラダはあげたんですよぉ! かりかりしたほうがおいしいとおもって」 「サラダを揚げた!? 意味がわからないよ、大体君は慎重に考えないから」 「なっ! 私はラウルに、お野菜も食べてもらおうと……っふええぇ。そこまで言わなくても良いじゃないですか! ラウルなんて嫌い!」 二人ともにらみ合う。しかし、ララエルの大きな瞳に涙が浮かぶと、負けてしまうのはラウルのほうなのだ。 「ごめん、言い過ぎた。誰にでも得意不得意はあるよ」 「……私も言い過ぎました、ごめんなさい」 仲直りした二人は目の前のお弁当に向かう。 「こ、これはこれで歯ごたえが……はは」 「あむ! 甘いものは、疲れをとってくれますよね」 多少笑顔はかたいが互いの気持ちのこもったお弁当を二人はおいしくいただいた。 「ふぇ?」 同時にお弁当箱のふたを開けてリュネットはきょとんとした。 作ったものが同じだったのだ。 「ぷっ……あはははっ!」 噴き出したリュシアンはとても嬉しそうにサンドイッチに手を伸ばす。リュネットも照れ笑いながら手を伸ばした。 「あの、僕の……苺ばっかりで、ごめんね、シアのは、凄く綺麗なのに……シアの、おいしい」 「僕は姉さんが作った方が好きだな。甘すぎないし、苺とよく合ってるよ。……今度は一緒に作ろう? 苺を使って、もっと色々なものをさ」 「……うん、うん! シアも、食べたいもの、一緒に作ろ」 素敵な思いつきに二人は自然と笑いあう。 「そんな顔するものでもないだろう。爺さん……前のパートナーとあちこち放浪していた時に覚えただけだ。さてこちらの弁当は。作っている様子は少し不安だったが旨そうだ……な……」 蓮根の肉詰めばかりの弁当にベルトルドの顔が神妙になる。 「作りすぎてしまって他のものまで手が回らなかったんですっ。別に、無理に食べなくてもいいですよ」 交換したお弁当をヨナは乱暴に奪い返してしまう。 蓮根の肉詰めばかり……味付けは塩胡椒の薄いものだから、いくらだってソースなどで味の変更はきくからこれくらい食べられる、はず。 しかし、なかなかに胃に重い。 困り果てているとベルトルドが箸を伸ばして、一つ、二つと奪われていく。 「ほら、これでバランスがいいな」 ベルトルドのお弁当の半分が差し出されてヨナは悔しさや恥ずかしさに目を逸らしたまま、小さく、「ありがとうごさいます」呟いて、かぶりつく。おいしい。とってもおいしい。 人並に料理が出来るようになる! ――ヨナは心のなかかたく誓った。 「あ、よかったら、これどうですか? べっ甲飴です! 心配かけちゃいましたから~。あ、瞬さん、唯月さんもおかず作るときはいろいろとありがとうございます。これどうぞ~! 疲れた時は甘いものですよね♪」 ちょうどフィノとユンが自作のべっ甲飴を皆に配り始める。 「こっちも蓮根の肉詰めが少し多めなんだ。食べるか?」 それぞれ少しばかり作りすぎたお弁当のおかずを持ち寄り始める。 甘いサンドイッチ、卵焼き、蓮根の肉詰め、フルーツサンド、べっ甲飴……みんな笑顔を零してお弁当を食べていく。 「あ、あの、ララエルさん……以前の、指令のとき、いっぱい、気にかけて、くれて、ありがとう」 ユンがべっ甲飴を差し出して声をかけるとララエルは目をぱちぱちさせたあと、にこりと笑った。 「フィノ君、これ」 「わぁ、きれいだね」 二人が食べるのは少しだけいびつだけどハートの形のべっ甲飴。それを二人で割って頬張る。
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*** 活躍者 *** |
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[15] フィノ・ドンゾイロ 2018/09/24-22:07 | ||
[14] ヨナ・ミューエ 2018/09/24-18:55 | ||
[13] フィノ・ドンゾイロ 2018/09/24-15:52 | ||
[12] ヨナ・ミューエ 2018/09/24-11:05 | ||
[11] 杜郷・唯月 2018/09/24-08:02 | ||
[10] ラウル・イースト 2018/09/24-05:45 | ||
[9] リュシアン・アベール 2018/09/24-02:37
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[8] 杜郷・唯月 2018/09/24-00:48 | ||
[7] ヨナ・ミューエ 2018/09/24-00:09
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[6] 杜郷・唯月 2018/09/23-07:57
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[5] ラウル・イースト 2018/09/22-23:32
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[4] リュシアン・アベール 2018/09/22-20:36 | ||
[3] ララエル・エリーゼ 2018/09/22-17:54
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[2] 杜郷・唯月 2018/09/22-09:13 |