精霊流しを楽しもう
簡単 | すべて
2/8名
精霊流しを楽しもう 情報
担当 春夏秋冬 GM
タイプ EX
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 簡単
報酬 少し
相談期間 5 日
公開日 2018-08-20 00:00:00
出発日 2018-08-28 00:00:00
帰還日 2018-09-04



~ プロローグ ~

 8月。今の時期には「精霊流し」と呼ばれる風習がある。
 それは多くの命が失われた世界大戦「ロスト・アモール」の死者を悼むために始まったものだ。

 発祥の地は東方島国ニホン。
 ロスト・アモールにより死に、呪いとして幽霊になってしまった者達を成仏させるために始まった。

 呪いとなってしまった無数の幽霊たち。
 彼ら、そして彼女達が解き放たれることを願って、紙で作った船を川に流して鎮魂の祈りを捧げたのだ。

 船には火を灯した蝋燭を載せ、死者への思い出や鎮魂の思いを記した文と共に川に流す。
 夜闇の中、川に浮かぶ船の灯りは、死者を導く道しるべのように見えたという。

 この時、川に流した紙舟は、今では「精霊船」と呼ばれている。

 それは死者を悼んだ皆の想いが幽霊に通じ、呪いから解き放たれた無数の魂が空に昇っていく様子が、精霊が舞っているかのように見えたことが理由のひとつだ。
 もうひとつの理由は、紙船にピクシーが楽しげにちょこんと座っている様子から、今では「精霊船」と呼ばれている。

 それらが合わさって、一連の紙船を流す風習は「精霊流し」と呼ばれているのだ。

 ニホンが発祥の精霊流しが広まったのは、教皇国家アークソサエティでも、それだけ多くの命が失われたという事でもある。
 それほどにロスト・アモールは、多くの悲劇が生まれていた。

 その悲劇を忘れぬ為に。
 そしてこの世を去った死者を想うためにも、今でも精霊流しの風習は続いている。

 とはいえ、悲しむだけが人間ではない。
 死者を悼み、そして生きる今を楽しむのも人間というものだ。

 弔いとしてだけでなく、イベントとして今では楽しんでいる。
 そのひとつが、精霊船の出来栄えを競うお祭り。
 リュミエールストリートのお店が協賛し、出来あがったものをお店に飾り、お客さんに票を入れて貰うというものだ。
 精霊船の謂れのひとつである、紙船にピクシーが楽しげにちょこんと座ったことにちなんで、実際にピクシーに協力して貰う所もある。
 リュミエールストリートにある、冒険者ギルド「シエスタ」に居るピクシー達も、そのために集められていた。

「それで、楽しいことはいつ始まるの?」
 テーブル席のひとつ。
 そこには3人の冒険者達と何人ものピクシー達が居た。
 冒険者に連れて来られたピクシーの1人が、自分を連れて来た冒険者の1人に問い掛ける。
 これに20そこそこの見目良い美女といった姿をしたセパルが返す。
「これからだよ。浄化師の子たちにも協力して貰えるよう頼みに行ってるから、ちょっと待ってて」
「えー、まだなのー」
 拗ねたように言うピクシーに、さくらんぼをひとつセパルは上げて機嫌を取る。
「あー、私も私もー」
 セパルにさくらんぼを貰ったのを見て、他のピクシーたちが騒ぐ。
 そこに冒険者のひとりである涼やかな美女セレナが、リンゴをうさぎさんの形に切り分けて振る舞う。
「他にも欲しい物があったら言って。切ってあげるから」
「は~い♪」
 喜ぶピクシーたちに、目を細めるセレナとセパル。
 そんな2人に冒険者の最後の1人、20代半ばの厳ついにぃちゃんといった見た目のウボーは、頭にうつ伏せで乗ったピクシーに髪を三つ編みにされながら言った。
「そろそろ、クロアさんが頼んだ浄化師達が来てくれる頃だな」
「うんうん、そろそろだね」
「状況説明とか、した方が良いかしらね?」
 3人が浄化師達を待っているのは、精霊船の出来栄えを競うイベントに協力して貰うためだ。
 浄化師も参加するイベントとして箔を付ける、ということで毎年協力を求めているのだ。 

 そんな、精霊船の出来栄えを競うイベント協力指令を、アナタ達は受けました。
 精霊船の制作と、それに乗るピクシーに何かしてあげて欲しいとの事でした。

 ピクシー達に何か服やアクセサリーを付けてあげて、船と共に見栄えを良くしてあげる。
 船の見た目に凝ってみる。

 他にも何かアイデアがあれば、してあげて欲しいとの事です。
 必要なものは、リュミエールストリートのお店から依頼を受けた冒険者達が用意してくれます。
 
 この指令に、アナタ達は――?


~ 解説 ~

○目的

精霊船の出来栄えを競うイベントの手伝いをして下さい。

○手順の流れ

まず最初にシエスタに集まります。そこで冒険者達とピクシーに会った後、どんな船を作るのか? ピクシー達に何を身に着けてあげるのか? 他にアイデアは無いのか? を話し合います。

話し合いが終れば行動開始。船を作り始めても良いですし、ピクシー達に身に着けさせる物を探しに行ったり作ったりしても良いです。

必要なものに関しては、冒険者が用意したり手配したり案内したりします。

それが終れば、出来上がった精霊船とピクシーは、一緒にお店に。

指令はそこで完了です。

その後は、それぞれ自由に行動できます。

リュミエールストリートのお店巡りをしてもよし、当日は屋台も出てますので、それを巡ってもよし。

お店は、

カフェテリア「アモール」
大手ファッションショップ「パリの風」
フリーマーケット「オルヴワル」
飲み屋街「ボヌスワレ・ストリート」
猫カフェ「ミネ・アンジェ」
キャバレー「スターダスト・ルージュ」
大衆食堂「ボ・ナ・ベティ」

などがあります。

最後は、夜に、ピクシーが乗っている精霊船が川に流されるのを見て終わりです。

○精霊船

一隻でも良いですし、複数作って頂いても構いません。

○ピクシー

精霊船に乗るために連れて来られてます。交渉して平和裏に連れて来ているので問題は発生しません。

歌ったり踊ったりが好きな陽気な子たちを連れて来てます。

○NPC

セパル・セレナ・ウボーの冒険者。基本的に浄化師達とピクシーのための雑用係です。

必要なものの用意と、全てが終わった後、ピクシーを元居た場所に戻します。

○その他

今回のエピソードは、前半にPC達が協力して指令をこなし、指令が終わった後はそれぞれ、好みでPC同士が関わるのでも構いませんが、描写されます。

ですので頂いたプランにもよりますが、PC同士が関わる描写が多くなる場合がありますのでご了承ください。

解説は以上です。


~ ゲームマスターより ~

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、精霊船にまつわるエピソードです。

そして量的に多くなりそうだったので、初のEXタイプになっております。

初めて出すので、どの程度ご参加頂けるか戦々恐々としておりますが、少しでも楽しんで頂けるよう、判定にリザルトに頑張ります。

それでは、ご参加をお待ちしております。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ロス・レッグ シンティラ・ウェルシコロル
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / エレメンツ / 陰陽師
■ロス
ピクシーが乗っ船か
うし作ってみっか


船の先で揺れるブランコ
針金や銀色メインで
三日月の天辺からブランコの紐(鎖
星の飾りが上に
星と鎖の飾りを船周りに


「俺はこういうの好きだけどどーだろ?評判よろしくねぇなら持って帰っけど
軍艦風
紙で作った砲台を付け黒色に
甲板に細い木の板敷き詰め
錨や浮き輪付け縄で支え


屋台あっのかー
じゃ食いモン後で飲み屋街に行って来っか
・冷酒
俺は辛口が好き!すーっと入ってて体に染み渡る感覚いいよな
焼鳥スルメ枝豆あっか?
他の人に勧められたら手持ちの酒を勧めつつ全部頂く
かなり酔いそうになればストップ
煙草手につまみ食いつつ時間潰し

∇屋台
やっぱビールは外せねぇ!
焼きそばお好み焼きメシ!
ヒュドラ・コロレフ ヒューイ・ターク
男性 / 生成 / 陰陽師 男性 / 生成 / 悪魔祓い
セパル君、セレナ君、ウボー君。よろしく、世話になるよ。
ピクシー達の船かい?なるべく彼女らの意に叶った物を作りたいが
そうだな月夜の絵を描こうかこの静かな夜を彷彿させる絵を
ヒューイ描いてみるかい?(片手振って断り
そうかならピクシー達に遊んで貰うといい(断れず遊ばれるヒューイに楽しげに絵を描くヒュドラ
中に蝋燭入れて出来上がりだ遠くまで流れるといいね
服はそうだねどれでも似合うと思うよ
ニホンからの伝統というのなら和服もいいよね
元気なピクシー達には半被や背中に団扇
帯はピンクで大きくリボンにしようか
リボンの端を地面ギリギリにしておけば踊る度に綺麗だろう
踊りには手拍子

思春期真っ最中なヒューイは時に赤く顔を押え


~ リザルトノベル ~

●精霊船を作ろう
 リュミエールストリートのお店が協賛する精霊船コンテスト。
 その箔付けを兼ねた協力指令を受け、浄化師達は待ち合わせ場所である冒険者ギルド「シエスタ」にやって来た。

「セパル君、セレナ君、ウボー君。よろしく、世話になるよ」
 協力者である冒険者達に、最初に挨拶したのは『ヒュドラ・コロレフ』。
 穏やかな笑みを浮かべるヒュドラの横に居る『ヒューイ・ターク』も、合せるように視線を向ける。
「…………」
 言葉は無く、表情もつとめて変化なく、けれどその瞳の輝きは好奇心を浮かべているのが伝わってくる。
 視線の先にはピクシー達と、サンプルとして用意された精霊船。
 何を作ろうか?
 言葉が無くとも、雄弁に語るような青年だった。
 そんな2人に返したのは、冒険者の1人セパル。
「よろしくー!」
 残りの2人、セレナとウボーも返し、継いで『ロス・レッグ』と『シンティラ・ウェルシコロル』にセパルは声を掛ける。
「今回もよろしくね!」
 以前、とあるダンジョンを調べる時に同伴して貰ったセパルは続けて言った。
「あの時は助かったよ。今日も頼むね!」
「おう! 任せろ!」
 ロスは元気良く返し、シンティラも続ける。
「お役に立てたなら良かったです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 挨拶が終ると、まずは話し合いという事で、ウボーがテーブルをふたつくっつけて場を作る。
 そして椅子を勧めながら言った。

「まずは確認させてくれ。今回こちらが頼んだことで、分からないことはあるかな?」
 これにロスが返す。
「大雑把には聞いてっけど、詳しくはこっちで聞いてくれって」
「そうか。この子達が乗る精霊船を作って欲しいんだ」 
 ウボーの言葉に、ピクシー達が集まってくる。
 サンプルの精霊船に乗ったり、ウボーの頭の上に腰かけたりしているピクシー達に視線を向けながらヒュドラは言った。
「ピクシー達の船かい? なるべく彼女らの意に叶った物を作りたいが」
「ホントに? じゃーねー、じゃーねー、楽しいの!」
 ヒュドラの言葉にピクシー達は、はしゃぐように飛び回る。
「貴方も作ってくれるの?」
「…………」
 ピクシー達の期待感いっぱいな眼差しを受けながらヒューイは、こくりと頷く。
「わーい! ありがとー!」
 嬉しそうに飛び回るピクシー達に、緩みそうになる表情を抑えるヒューイ。

 そうして指令の詳しい内容を聞いた所で、シンティラは言った。

「物作りなら、ロスさん少しは得意なのでお任せです」
「ピクシーが乗っ船か。うし作ってみっか」
「こう星がキラキラなのをお願いしたいのですが」
「キラキラ? なら星の飾りとかあっといっか」
「良いかもしれません。用意出来ますか?」
 シンティラの問い掛けにセレナが返す。
「ええ、任せて。そのために私たちは居るから。必要なものがあったら言って、用意するから」

 必要なものの用意や雑用は冒険者達に任せても大丈夫という事で、浄化師達はアイデアを出していく。
 最初に提案したのはヒュドラだった。

「精霊船が流されるのは夜だから、それに合った意匠の絵を描いてみるのも良いかもしれないな」
「…………」
 一体どんなのを?
 興味深げに視線を向けて来るヒューイに返すように、ヒュドラは続ける。
「そうだな、月夜の絵を描こうか。静かな夜を彷彿させる絵を」
 そこまで言うとヒューイに視線を向け言った。
「ヒューイも描いてみるかい?」
「…………」
 片手を振って断るヒューイ。
 よほど遠慮したいのか、いつもより緊張したように表情が硬い。
 そんな彼にイタズラするように、ヒュドラは楽しげな笑みを浮かべ言った。
「そうか。ならピクシー達に遊んで貰うといい」
「遊ぶの!?」
 ヒュドラの言葉に、ヒューイの周りを飛び回るピクシー達。
「遊びましょう!」
 何人ものピクシー達に服を掴まれ、ひっぱられるヒューイ。
「…………っ!」
 ヒューイは抵抗しそうになったが、なにしろピクシー達は小さい。
 下手に抵抗すると怪我をさせそうなので、そのまま引っ張られる。
 微妙に表情をぴくぴくさせて連れて行かれるヒューイを楽しげに見詰めながら、ヒュドラは持って来ていた画材セットで絵を描き始めた。

 その間に、ピクシー達はヒューイを引っ張り出している。
 それを見たロスは当然のように、はしゃぐピクシー達の輪に加わる。

「遊ぶのか? だったら俺も混ざっか!」
 ひょいと、ヒューイの周りを飛び回るピクシー達の元に行くロスに、シンティラは止めたものかどうかと、ちょいと悩む。
 そんな彼女の元にピクシー達が、すいっと飛んでくると、期待感を浮かべた眼差しを向け誘って来る。 
「ねぇねぇ、貴女は遊ばないの?」
「遊ぼ遊ぼ、遊びましょう♪」
 服を掴まれ引っ張られ、シンティラは息を抜くように苦笑すると、ピクシー達の輪の中に。
「何して遊ぶのー?」
 ピクシー達の期待感をにじませた言葉に、シンティラは返した。
「ダンスでもしますか? 船の上で踊れるようなものを試してみるのも良いかもしれません」
 これにセパルが返す。
「だったら、音楽があった方が楽しくて良いよね」
 そう言うと、知り合いらしい冒険者の元に。
「エール2杯でどう?」
「つまみにソーセージも付けてくれ」
「任せて。それじゃ、よろしく」
 セパルがエールをカウンターに注文しに行く間に、明るく軽やかな音楽が奏でられていく。
 音の出どころはリュートだ。
 吟遊詩人でもあるらしいセパルの知り合いの冒険者は、慣れた手つきで演奏していく。
 それに合わせて飛び回るピクシー達。
「踊りましょう♪ 踊りましょう♪」
「おう! 踊っか!」
 ピクシー達に合せ、踊るロス。
 気分が乗って来れば、獣人変身。
 ピクシー達を背に乗せて、音楽に合わせぐるんぐるん。
 シンティラも、それに合わせるようにピクシー達と踊っていく。
 その横で、ピクシー達に翻弄されるように踊るヒューイ。
「…………」
 いつもの表情は崩さないように気を付けて、音楽に合わせピクシー達と踊っていく。
 その踊りと音楽に合わせ、手拍子が広がる。
 始まりはヒュドラが。
 そしてシエスタで飲んで食べて、依頼の話し合いをしていた冒険者達が合わせて来る。
 エールを掲げ歓声を。
 リズムに合わせ、足踏みを。
 その日暮らしの冒険者稼業を歌う音楽に合わせ、皆は踊る浄化師達を盛り上げる。
 明日何があるか分からない。
 だからこそ、楽しめるその日を逃さない。
 そんな強かな享楽さをみせる冒険者達と一緒になって、浄化師達は踊り楽しむ。
 その中で注目され、思春期真っ盛りなヒューイが顔を赤くするのはお愛嬌。
 踊りは続き、演奏が山場を見せる。
 エール2杯と、つまみのソーセージ1皿分。
 吟遊詩人の演奏が終わりを見せると、皆は喝采と拍手で締めくくる。
「へへ、盛り上がっな!」
「ええ。それでは、そろそろ指令に戻りましょうか、ロスさん」
 尻尾を振り振りしながら、まだまだピクシー達と踊り足らないといった感じのロスに声を掛けて、シンティラはテーブルへと戻る。
 そして提案をした。
「私はピクシーさん達に来て貰う服を見繕いに行こうかと思います。精霊船だけでなく、ピクシーさん達も着飾ってあげた方が良いと思いますから」
 これにヒュドラは同意する。
「良いアイデアだ。服はそうだね。どれでも似合うと思うよ」
 肩に腰を下ろしたピクシーに笑顔を向けながら続けて言った。
「ニホンからの伝統というのなら和服もいいよね。元気なピクシー達には半被や背中に団扇。帯はピンクで大きくリボンにしようか」
「リボン? 綺麗なのにしてね!」
 期待感いっぱいで見つめてくるピクシー達にヒュドラは返す。
「リボンの端を地面ギリギリにしておけば踊る度に綺麗だろう」
「良いですね」
 シンティラはヒュドラの言葉に同意すると、服の確保を申し出る。
「精霊船の皆さんにお任せしますから、私は服の調達に動こうと思います。セパルさん、良いお店を知っていますか?」
「うん、いくつかね。セレナも知ってるお店もあるから、一緒に行こうか?」
「はい、お願いします」

 話し合いは終わり、浄化師達は二手に分かれる。
 シエスタで精霊船作りに勤しむ男性陣と、ピクシー達の服の調達に動く女性陣。
 そうして女性陣がシエスタを後にする中、精霊船作りは進んでいく。

「私は月夜の絵を描いた物を作るつもりだが、ロス君はどんなのを作るんだい?」
 ヒュドラの問い掛けにロスは返す。
「俺は軍艦風のを作ろって思う。紙で作った砲台とか、甲板に細い木の板敷き詰めたりして」
 そこまで言うと、シエスタのカウンターから材料を持って来たウボーに尋ねる。
「俺はこういうの好きだけどどーだろ? 評判よろしくねぇなら持って帰っけど」
「大丈夫だ。色んな種類があった方が喜ばれるからな」
 ウボーは、むしろ乗り気な感じで聞き返す。
「小物はどうする? どうせ作るなら凝りたい所だが」
「小物かー? 錨とか浮き輪付きの縄とか、全部作っか」
「…………」
 手伝おう。
 というように、材料と道具を集めるヒューイ。
「ありがとな! じゃ、作っか!」

 そして製作開始。
 服の調達に行った女性陣に連いて行かずに残ったピクシー達も手伝う。
 といっても、要望を口にしたり遊んだりの方が多かったが。

「楽しい船を作ってね!」
「おう! じゃ、こんなのはどうだ?」
 ロスは軍艦風の船とは別に、ブランコ付きの船を作る。
「わあっ! これ良い!」
 船の先に揺れるブランコを。星の飾りが上に付き、三日月の天辺から鎖状のブランコの紐が降りている。
 星と鎖の飾りが船周りを彩って、蝋燭の火が灯れば、夜の闇に浮かび上がる美しさを見せるだろう。
 それに負けじと、ヒュドラもヒューイと共に作っていく。
「ああ、少しそこに立っていてくれるかい?」
 ヒュドラはピクシー達に、精霊船の傍に立ってくれるよう頼む。
「君達の可愛らしさと美しさに合わせて絵を描きたいからね」
「…………」
 ヒュドラの言葉を聞いてヒューイは、じと目を向ける。
 これにヒュドラは笑顔で返す。
「顔が赤くなってるよ、ヒューイ」
「あー、ホントだー」
「かわいいー♪」
「…………」
 他意なく素直な気持ちを口に出すピクシー達に、赤くなった顔を押さえるヒューイだった。

 そうして船が作られている頃、シンティラはセパルとセレナの案内でフリーマーケットであるオルヴワルに。

「ピクシー用の服なら、人形の物を流用した方が使い勝手が良いのよ」
「ファッションショップとかだと人間相手の商品しかないからね」
 セレナとセパルの説明を聞いてオルヴワルにやってきたシンティラは、勧められた出店のひとつを覗いてみる。
 店主の女性の手作りらしい小さな服が、所狭しと並べられていた。
「キミは、どういうのが好みなの?」
 セパルの問い掛けに、服を品定めしながらシンティラは返す。
「自分で着る分には実用性が一番なのですが……今回はピクシーさん達のための服ですから――」
 そう言って選んだのは、羽衣のような煌びやかな布で出来たドレス。
「ダンスをするので、下に動き易いスパッツやTシャツような物があると良いのですが。スカートですと動き辛いですし。こけた時とか泥んこになった時とか大変です」
 これに店主の女性は頷くと、シンティラの要望に合った服を見繕ってくれる。
「ありがとうございます。あとは、セーラー服はありますか?」
「セーラー服?」
 不思議そうに訊き返すセパルにシンティラは返す。
「ロスさん、軍艦風の精霊船を作ると言ってましたから」
「なるほど、それに合わせるって訳ね。それなら大丈夫。確か、職業シリーズであったよね?」
 セパルの言葉に、店主の女性は店の奥から小箱を取り出す。
 その中には、浄化師達の制服や、セーラー服が折りたたまれて収納されていた。
「これなら良さそうです。包んで貰えますか?」
 白地に青色ズボンとそれに合わせた上着のセーラー服をシンティラは見繕う。
 その後、ヒュドラの提案した服も買い揃えシエスタに戻った。

 そしてシエスタに戻ると、精霊船を作り終えていた男性陣に迎え入れられる。

「お帰り、シンティラ君」
「…………」
 ヒュドラは穏やかな笑顔で迎え入れ、ヒューイは出来あがった精霊船をお披露目するように見え易い場所に動かす。
「こっちもでったぞ!」
 ロスは船先のブランコにピクシーが乗った精霊船と、紙で作った舶刀(カットラス)を手に、はしゃぐピクシー達が乗っている軍艦風の精霊船を見やすい場所に出してくる。
「良い船が出来ましたね。お疲れ様です。私の方は――」
 そう言ってシンティラは、調達した服をテーブルの上に。
「わー、なにこれなにこれー!」
「私これが良いー!」
 一斉に服に向かって来るピクシー達。
「着替えるの? だったら個室があるから、こっちにおいで」
 その場で着替えそうになるピクシー達を連れ、セパルはピクシー達を個室に連れて行く。
 ピクシー達が着替える間に、ウボーはこの後の予定を浄化師達に訊いた。
「お疲れさん。これで後は、夜に精霊船を流すだけだ。それまで自由にして貰って良いんだが、どうする?」
 これにロスは返す。
「なんか良い所あっか?」
「今日は屋台も色々と出ているし、それを見て回るのも良いかもしれないが」
「屋台あっのかー」
 ちょっと考え、ロスは続けて言った。
「じゃ食いモン後で飲み屋街に行って来っか」
 これにヒュドラが賛同する。
「良いね。折角だから、一緒に飲みに行こうか、ロス君」
「おう、一緒に飲みにいっか」
「それは良かった。ヒューイはどうする? 連いて来るかね?」
「…………」
 こくりと頷くヒューイ。
「よし、決まりだな。どうせなら、名物の酒がある所が良いんだが――」
「なら、俺が案内しよう」
 ヒュドラの言葉にウボーが返す。
「リクエストがあれば、それに合った店を勧めるが」
「だったら冷酒があっとこ知ってるか?」
 ロスのリクエストにウボーは返す。
「それなら、一軒良い店を知っている。そこに案内しよう。あとは――」
「なになに? どうしたの?」
 着替えを終わらせたピクシー達を連れてきたセパルの問い掛けに応える形でウボーは言った。
「精霊船を流すまでどうするかって話をしてたんだ。男性陣は飲み屋街に行くそうだから、俺がお勧めの店を案内することにした」
「そうなの? だったらキミは行きたい所はある?」
 セパルに訊かれ、シンティラは少し考えてから返した。
「――そうですね。猫カフェに行ってみようかと」
「ミネ・アンジェに行くの? 好いね。今あそこ、良い子が居るんだ。紹介してあげる」
 誘うように声を掛けて来るセパルに、どうするかとシンティラが考えていると、セレナが続けて言った。
「あの店も、今回の精霊船コンテストの協賛店だから。貴女が精霊船作りに協力してくれた浄化師だと知ればサービスしてくれると思う。私達が今回のお世話係になってるから、連いて行けば説明も楽になるわ。だから一緒に行ってみない?」
 これにシンティラは、2人の好意を無碍にしなかった。
「では、お願いします」

 こうして夜までの間、浄化師達は冒険者達の案内を受けながら、それぞれ自由行動をする事に。
 その間、ピクシー達をシエスタに預けるため、シエスタに来ていたお客全てにエールとつまみを奢った所で、皆はシエスタを後にした。


●夜まで自由時間
「良い雰囲気の店だね」
「…………」
 ウボーの案内で訪れた店を見てヒュドラは感想を口にし、こくりと頷くヒューイ。
 そこは居酒屋とバーが合わさったような店だ。
 カウンターで店主の壮年の男性が娘である若い女性と共に、カウンターでバーテンダーをしている。
 そこから少し離れた場所は、幾つものテーブル席が備え付けられ、お客さんが楽しく酒盛りをしていた。
 ほどほどに賑やかで、けれど騒がし過ぎないお店だ。
 テーブル席に空きがなかったのでカウンター席を浄化師達は勧められる。
「ここは色々な国のお酒が飲めるんだ。カクテルも作ってくれるし、好きなのを頼んでくれ」
 ウボーは顔なじみらしい店主に挨拶したあと浄化師達に勧める。
「じゃ、俺は冷酒。辛口あっかな?」
 ロスの問い掛けに店主は応える。
「グラスの種類は、どうしますか?」
 そう言って、いくつかグラスを前に出す。
 色々な種類のグラスを見て、ロスは返した。
「夜になったら屋台を回っし、色んなの飲みたいからこれで」
 そう言うとショットグラスを手にする。
 ロスの応えを聞いて手の平に収まるほどのショットグラスを店主は酒を注ぐために取った後、ヒュドラとヒューイに尋ねる。
「御二方は、どうしますか?」
 これに真面目な表情で悩むヒューイ。
 ヒュドラは苦笑するように見詰めたあと、慣れた様子で返す。
「酒に合わせたグラスで任せるよ。酒の種類は……貴女のお勧めの物を貰おうかな」
 若いバーテンダーの女性に笑顔を向けて注文する。
「良いんですか? 私の好みだと甘いお酒になっちゃいますよ」
 若いバーテンダーの女性の返しに、ヒュドラは変わらぬ笑顔を浮かべたまま応えた。
「君を口説いて良いなら、ぜひ頼みたいね」
「…………」
 女たらし。
 顔を赤らめながら、じと目を向けて来るヒューイに、ヒュドラは余裕を浮かべた表情で返す。
「度数がそこそこ高くて辛いのは1人で飲むのが乙だけど、女性を口説きたければ甘いお酒は良いものだよ」
「…………」
 おっさんだ。
 さらに顔を赤らめながら、無言で視線を向けるヒューイ。
「ヒューイ? 顔に出てるよ?」
 ニコっと笑ったまま、平然と受け止めたヒュドラは続けて言った。
「まぁ、今日の所は、純粋にお酒を楽しむとしよう。名物があると聞いてきたんだが、それを頼めるかな?」
 ヒュドラの言葉に、店主はウボーに視線を向ける。
 これにウボーは返した。
「山の雫はあるかな?」
「ありますよ。ニホン酒の良いのも入ったんで、凍結酒もありますが」
「なら、飲み比べで両方出してくれ」
 ウボーの注文を受け、店主はカウンターの奥に引っ込むと、2本のお酒を持って来る。
 その内の1本の口を開き店主は言った。
「飲み易いですが、強いお酒なので気を付けて下さい」
 ショットグラスに注がれたそれを、ロスはくいっと。
 ヒュドラはこくりと飲んで、ヒューイはちびりと舐めるように飲む。
「おっ、これっ、うっめぇな!」
 感嘆の声をロスは上げる。
 飲んだ瞬間は、清涼な湧き水を飲むような涼やかさが喉と舌に広がり、胃の腑に落ち僅かに間を開けて、かっと熱くなる。
 それと同時に、えもいわれぬ香気が余韻のようにほど良く残った。
「俺は辛口が好き! すーっと入ってて体に染み渡る感覚いいよな」
 笑顔を浮かべるロスの横で、ヒュドラはグラスに残った酒の香りを楽しみながら言った。
「これは……味も良いが、強い酒だな」
 半分ほど飲んだあと、味を確かめるように残りを飲むヒュドラに店主が返す。
「ニホン酒を冬の山の頂上に置いて、余分な水分だけを凍らせて取り除いたお酒です」
「それはまた、手間の掛かったお酒だね」
「一部の物好きが、趣味で作るようなお酒ですから。元のお酒が良くないと、ただ度がキツイだけの物になってしまうのですが」
「なら、これは元のお酒が良かったんだね。旨いお酒だよ」
 ヒュドラの言葉に店主は嬉しそうに目を細めると、もう一本の酒の口を開けて注ぐ。
「…………」
 注がれたお酒の様子に、ヒューイは驚いたように目を丸くする。
「おっ、これ凍ってんのか!?」
 注いでいる時は確かに液状だったのに、グラスに注がれるとシャーベット状になったそれを見て、ロスは面白そうに声を上げる。
 これに返したのはウボーだった。
「ゆっくりとニホン酒を冷やしていくと、巧くいくとこういう酒が出来るんだ。食感が面白いから試してくれ」
 早速試してみる浄化師たち。
 雪化粧にも似た、みぞれ状のお酒を味わう。
 シャリシャリとした食感と、とろりとした舌触りが、口の中でほろりと溶けていく。
 こくりと飲み干せば、氷の冷たさの後にお酒の熱さがゆっくりと広がっていった。
「お酒の種類や、同じ種類でも物によって食感や舌触り、それに味やアルコールの濃さも変わって面白いですよ」
 店主が説明していると、新たにお店に入って来た客が声を掛けて来る。
「珍しいのが出てるな。こいつは、檸檬やら絞ったのを掛けても旨いし、リキュールやらを掛けても風味が面白い味になるんだ」
「そっなのか? なら試してみっか!」
 ロスは店主に追加注文。
「檸檬掛け、追加で。あと枝豆とスルメもあったら、それも追加で」
 ロスは用意されたつまみを口にしながら、飲む量を調整するように煙草に火を点ける。
 続けるようにしてヒュドラも注文した。
「私も檸檬掛けをひとつ。ヒューイはどうする? 他にも色々なお酒を頼んで感想を言い合ってみようか?」
 これにヒューイは首を振ると「これを飲み終わったら、試してみる」とでも言うように、まだ残っているグラスを見せて返す。
「…………」
 お酒があまり強くないヒューイは、もう少し時間をかけて楽しむらしい。

 そうして男性陣は、暗くなるまでお酒を楽しんだ。
 店主や馴染み客と、お勧めのお酒を語り合い賑やかな酒盛りだった。
 そうして男性陣が楽しんでいる頃、女性陣のシンティラはネコカフェを満喫していた。


●猫をもふろう
「この子がお勧めの子だよ~」
「なぁ~う」
 ネコカフェに着き、シンティラはソファに座りながらセパルに真っ白な猫を紹介された。
「綺麗な猫さんですね」
 よほど手入れが良いのか、ふわっふわさらさらな毛並みにシンティラは、もふる気満々になる。
「綺麗な子でしょ。なにしろこのお店の猫の王さまだからね」
「なぁ~う」
「ごめんごめん。女の子だから女王さまだね」
 失礼しちゃうわ、とでも言いだけな白猫にセパルは返す。
 すると白猫は、セパルの腕の中からソファに跳び移る。
(これは、もふるチャンスですね)
 シンティラが静かに手を伸ばすと、するりと白猫は離れる。
 手が届きそうで届かない絶妙な距離にいる白猫から視線を外し、セレナに白猫の名前を尋ねる。
「この子、なんという名前なんですか?」
「マーレっていうのよ。良い響きの名前でしょう?」
「ええ、本当に――」
 話をしていると、白猫のマーレが傍に寄って来る気配が。
 すっと手を伸ばすと、また距離を置くマーレ。
 嫌がっているというよりは、遊んでいるような動きを見せる。
(ロスさんとは違いますね)
 つれない猫の仕草に、それはそれで良さを感じつつも、どうにか捕まえられないものかと考える。
 するとマーレが、ひと鳴き。
「にゃうん」
 すると猫が数匹、シンティラの座っているソファに集まってくる。
(女王さまの呼び掛けに家来が集まって来たみたいですね。だから猫の王さまですか)
 どうしたものかと考えて、シンティラはセレナに呼び掛ける。
「この子達のご飯を頼めますか?」
「ええ、任せて。一緒に貴女が食べたい物があれば注文して来るけれど、なにかあるかしら?」
「ではパフェで」
 注文をセレナがしている間に、店の店員と話していたセパルが子猫を連れて戻ってくる。
「精霊船を作ってくれた浄化師さんにサービスだって」
 生後1か月かそこらの、手のひらに乗りそうなほど小さな子猫たち。
「にぃ」
 小さく鳴くと、人懐っこそうにシンティラの傍に。
 もちろん存分にもふっていると、それまで距離を取っていた猫たちが近付いてくる。
(チャンスですね)
 ひょいっと捕まえ、次々もふる。
 もふられて逃げ出そうとした所に、セレナがパフェと一緒に猫のご飯を持って来る。
「なぁ~う」
 お、飯か?
 とでも言いたげに集まってくる猫たち。
 苦笑するようにシンティラは目を細めると、猫たちにご飯をやる。
 もちろん、もふる。
 そうしてひとしきり猫をもふり、パフェを楽しんだ後は静かに読書タイム。
 その頃には、セパルとセレナが邪魔にならないように猫と子猫を連れて行く。
 ゆったりとしたひととき。
 一冊読み終わった時、気付く。
(ずっと傍に居てくれたんですね)
 すぐ傍で寝転ぶマーレに、シンティラは撫でてみる。
「なぁ~う」
 特別よ?
 とでも言うように鳴き声を上げるマーレだった。

 そうして時間は過ぎ、辺りは暗くなる。
 約束の時間が来たので、浄化師達は再び集まった。
 精霊船が流される川に向かう道中、まだ時間が合ったので屋台巡りを。
「やっぱビールは外せねぇ!」
 ロスは屋台のオヤジから木製ジョッキに入ったビールを受け取ると飲み干す。
「食いモンはどっすっかな。焼きそばお好み焼きメシ! 色々あって目移りしちまうな!」
「食べ切れない分は……持ち帰りの容器を用意して貰いましたから、それに入れて持ち帰りましょう」
 シンティラは林檎飴を齧りながらロスに返す。
 手には使い捨てらしい簡易な木製の容器が入った紙袋が。
 シンティラの予定を聞いていたセパル達が用意してくれたものだ。
 お菓子を幾つか見つくろいながら、持帰り分含めたロスのご飯も確保する。

 そして一緒に連れだって歩いているヒュドラは、リンゴジュースを屋台でふたつ買い、ヒューイに渡す。
「お酒の後には、水分と糖分を取ると良いらしいよ」
「…………」
 少し酔ったらしいヒューイは、いつもより幾分とろんとした表情で素直に受け取り飲み干す。
 さっぱりとしたリンゴジュースは飲み易かった。
「はは、美味しいみたいだね。もう一杯貰ってこようか? ビールもあったし、そっちが良いなら付き合うよ?」
「…………」
 遠慮しておく。
 とでも言うように、ちょっと早めに手を振るヒューイ。
 これにヒュドラは苦笑するように目を細めると、林檎飴をふたつ買って、ひとつを手渡す。
「お酒がダメなら、甘いものはどうだい? せっかくの催し物だ。楽しもう」
「…………」
 ヒューイは、同意する、とでも言うように目を細めると林檎飴を受け取った。

 そうして屋台を巡り、しばし歩いた先で、精霊流しをする川に到着した。


●精霊流し
「人が多く集まるのだね」
 夜闇の中、魔術道具を使って灯されているらしい明かりが広がる川岸に、ヒュドラは他の浄化師達と共に居た。
「確かに人多いな」
 ロスが周囲を見渡し言うと、シンティラが返す。
「ええ……あ、見て下さい。ロスさん達が作った船が流れて来ましたよ」
「…………」
 シンティラの言葉にヒューイは川上を探し、自分達が作った船を見つける。
「…………っ」
「ああ、分かってるよ。風情があるね」
 ヒューイの示す方向に視線を向け、ヒュドラは返す。
「うん。ピクシー達が乗ってくれると、より一層良いものに見えるね」
「…………」
 こくりと頷くヒューイ。
 月夜が描かれた精霊船は、灯されたろうそくの明かりでほのかに照らされ、風情のある味わいを見せている。
 そこに乗るピクシー達は、半被と背中に団扇を身に着け、元気よく踊っている。
 リボンのようなピンク帯が、踊る度にふわりふわりとひらめいて綺麗だった。
 それを見ていると、ピクシー達はヒュドラとヒューイに気付いたのか、期待するように視線を向ける。
「ヒューイ、どうやら彼女達は、私達に盛り上げて欲しいようだ」
「…………」
 こくりとヒューイは頷くと、シエスタの時と同じようにリズムカルな手拍子を、ヒュドラと共に打ち鳴らす。
 それに合わせ踊るピクシー達。
 すると、一緒に手拍子をする見物客も。
「ティ、俺らも手拍子すっか」
「そうしましょう。ロスさんが作った船も来たみたいですし」
 シンティラの言葉通り、ロスの作った2隻の精霊船も流れてくる。
 一隻は、船先にブランコが付いた、星と鎖の飾り船。
 羽衣のような煌びやかな衣装に身を包んだピクシー達が、楽しげに踊っている。
 もう一隻は軍艦風。
 セーラー服を来たピクシー達が、手拍子に合わせ敬礼をしたり、行進をするように規則正しく踊ってみせる。
 他の精霊船も次々流れてくる中、皆の手拍子は広がる。
 それは精霊船が川下の先に流れていくまで続いていた。
「精霊船が流される風景は感慨深いものがあるよね」
「…………」
 ヒュドラの言葉に、こくりとヒューイが頷く中、精霊船は離れていく。
 遠く離れた頃、皆は自然と手拍子を止め、静かな面持ちで消えていく精霊船を見詰めていた。
 すると、ふっと周囲の照明が消える。
 それに合わせて、遠く離れた精霊船に、蝋燭の火とは異なる明かりが灯った。
 それはピクシー達が魔法で自分達を包むように灯した明かり。
 遠くから見るそれは、どこか寂しさと共に温かさを感じさせた。
 そして、それはひとつひとつゆっくりと、空へと昇るように浮かび上がる。
 ロスト・アモールで死に、呪いとして幽霊になってしまった者達。
 彼らと彼女達が、精霊船を流した人々の悼む気持ちで解き放たれた故事をなぞるような光景だった。
「死者の弔いか」
「…………」
 静かに手を合わせるヒュドラとヒューイ。
「ロスさん、私達も」
「んっ、そっだな」
 シンティラとロスも、静かに黙とうした。

 その後は、片付けはしなくても大丈夫という事で、そのまま解散することに。
 その前に、冒険者達に住み家に連れて帰られるピクシー達が、浄化師達に礼を言う。
「ありがとー!」 
「船、綺麗だったしカッコ良かったよ♪」
「この服、持って帰ってみんなに自慢するのー」
「一緒に踊ったの、楽しかったよー♪」
 楽しげに礼を言うピクシー達に浄化師達はそれぞれ返す。
「気に入ったなら良かった! 踊り楽しかったぜ!」
「服、気に入って貰えたなら良かったです」
 ロスとシンティラは笑顔で返し、同じようにヒュドラとヒューイも返す。
「素晴らしい踊りだったよ」
「…………」
 手を振るヒューイにピクシー達も元気良く手を振るのだった。

 こうして精霊流しの協力指令は終わりをみせる。
 浄化師達のお蔭で、評判の良い精霊流しが達成できた。
 生者にも死者にとっても、共に良い精霊流しになったに違いない。
 そう思える浄化師達の尽力ぶりだった。


精霊流しを楽しもう
(執筆:春夏秋冬 GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/08/20-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[4] ヒュドラ・コロレフ 2018/08/27-22:08

私はヒュドラ。こちらはヒューイ。先日に続きよろしくお願いするよ。
ロス君、居酒屋に行くなら私達も一緒に行かせて貰おうか。  
 

[3] ロス・レッグ 2018/08/27-07:52

あ。俺は居酒屋、ティは猫カフェ予定ー  
 

[2] ロス・レッグ 2018/08/27-00:07

ロスとティ(シンティラ)参加な、ヨロシク。

へぇ、ピクシーが乗る精霊船か! おぅ、ちーと頑張ってみっな!