エンケの魔猪
普通 | すべて
4/8名
エンケの魔猪 情報
担当 碓井シャツ GM
タイプ ショート
ジャンル 戦闘
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 7 日
公開日 2018-03-20 00:00:00
出発日 2018-03-30 00:00:00
帰還日 2018-04-09



~ プロローグ ~

 狩猟は上流階級の楽しみとして流行している。
 競技としてのハンティングの台頭とは関係なく、教皇国家アークソサエティの中心部より離れた山間の小さな村であるエンケでは、生活としての狩猟がさかんだった。
 猟師は訓練された猟犬と共に山へ分け入り、日々の糧として動物を狩る。
 その日も村の猟師が三人、山へ入っていた。ベテランの猟師が一人、身を屈めて地面を検分する。

「この足跡は、イノシシだな……まだ新しいぞ」
 獲物の形跡を確認し頷き合うと隣を歩いていた猟犬が、キャウウウウ、と悲壮な声をあげた。
 続けて前方に向かって、キャンキャンと吠え続ける。

「どうしたんだ、臆病風に吹かれたか。お前らしくもない!」
 常にない猟犬の様子に猟師は胴を叩いて落ち着かせようとするが、半狂乱の犬はおさまるようすがない。
 犬の視線を追って前方を見れば、霧の中に獣の大きなシルエットが浮かび上がる。

「イノシシだ……!」

 一番年若い猟師が引き攣った声を出して、猟銃を構えた。

「いや、あれは……」

 霧の合間から、其れは異容を現した。
 身体の至る所から獣皮を突き破って、赤黒い触手が伸びている。
 ベリアル化していることは明らかだった。

「逃げろ、あれは銃で死なねえぞ……ッ!」

 悪魔に成り果てたイノシシが力を溜めるように、ぐっと身を低くする。

「来るぞ、左右に散開しろ!」

 猟師が声を張り上げた。
 爆発のような突進だった。イノシシがぶち当たった巨木がメリメリと音を立てて倒れる。
 避けそこなったら、ひとたまりもなかっただろう。

 這う這うの体で村に逃げ帰った猟師たちは、こう叫んだ。
「薔薇十字教団へ……! 浄化師を呼んでくれ!」


~ 解説 ~

◆解説◆

・目的
 森に出現したベリアルの退治。

・村について
 教皇国家アークソサエティの中心部から離れた、山の谷間に存在する小さな村。
 狩猟がさかんでベテランの猟師が多く住んでいる。
 小さな商店が存在するが、品揃えはよくない。

・森について
 ベリアルの目撃された森。
 現在は村人の手によって縄がはられており、一般人が入らないように立ち入り禁止の注意書きがされている。

・敵について
 出現する敵はイノシシのベリアル1体。
 体長は140cm前後
 かなりの威力の突進を繰り出してくるが、予備動作を見逃さなければ避けることは可能


~ ゲームマスターより ~

イノシシ狩りがしたかった。
森でイノシシ追ったり、狩ったりする皆さんの雄姿をお待ちしています。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

キールアイン・ギルフォード ナニーリカ・ギルフォード
男性 / マドールチェ / 人形遣い 女性 / アンデッド / 悪魔祓い
まずは、猟師にこの辺の地形情報とか、猪狩猟にあたっての生態などについてみんなで訪ねてみる。
狩猟場に入る時は、人形とランタンを持って警戒しつつ、可能であれば霧に人形の影を映して、多少かく乱を狙えればと思う。
猪を発見して戦闘に入ったら、ランタンは自分の体の前に置くようにして、人形で猪を前衛部隊と共に牽制して、木にぶち当てるように行動する。
木にぶち当たって行動が封じれたら、ランタンを体の影から出して、後衛部隊に木にぶち当たったことを伝える。
触手の攻撃は少し喰らってでも、突進だけは絶対に回避する。
それほど霧が濃くなければ、特にランタンは使わずに行動をするようにする。
ベルクリス・テジボワ カティス・ロウ
女性 / 人間 / 悪魔祓い 男性 / アンデッド / 墓守
・ベルクリス
より正確に撃てる様、見晴らしの良い場所で動きを止めた敵を狙いたい。
条件に該当する場所を探して待機し、仲間に敵を誘導して貰う。
敵が木に突進して動きが止まった所を射撃(DE1)。
合図を聞きor見逃さないよう注意。
より良い場所を選べる様に猟師から猪の生態や探し方を聞いておく。

・カティス
敵の突進を利用して木にぶつけながら体力を削ぎ、射撃方の待つ場所へ誘導。
仲間が回避困難な状況でないかを常に気を配り、
その際はスキル(GK1)で敵に攻撃しその隙に移動して貰う。
仲間には予め、次の回避が困難な状況に陥った際は
すぐに名前を呼ぶなりして知らせる様に伝えておく。
挑発や誘導よりも安全確保に意識を集中する。
ベアトリス・セルヴァル ジョシュア・デッドマン
女性 / ライカンスロープ / 魔性憑き 男性 / アンデッド / 陰陽師
猪かあ……

探さないといけないなら、足跡とか、木が倒された形跡を見逃さないようにしないとね!
恥ずかしいからあんまりしたくないんだけど…木々が深そうなら獣人変身して匂いを嗅いだ方が良いのかも。

ベリアルを発見次第、魔術真名詠唱して戦闘態勢に移行するよ!
前衛の三人と被らない方向、丈夫そうな木を背後に、ジョシュアを守るようにして立つよ
「大丈夫、ジョシュアはあたしが守る!」
挑発も三人とずれたタイミングでしよう、上手くいけばあっちこっちに振り回せるかも。

猪がこっちに向かってきたら、まずジョシュアを避けさせて
直前であたしも回避する。背後の木にぶつける狙いだよ。
隙ができたらすかさず拳を叩き込んで素早く離れる!
シュリ・スチュアート ロウハ・カデッサ
女性 / マドールチェ / 占星術師 男性 / 生成 / 断罪者
◆作戦
猪のベリアル(以下猪)を探し出し誘導して木に衝突させ、動きが止まった所に攻撃を叩き込み倒す作戦
前衛で囮になり猪を誘導する班と、衝突させる木の付近で待機し狙撃する班に分かれる

予め村で猪の生態や弱点・衝突させるのに良い大木の場所等を猟師に聞き情報収集

齟齬ある部分は仲間に合わせる

◆戦闘
シュリ:
猪が所定の場所に誘導されるまで、所定場所から攻撃が届くギリギリ遠くの位置で待機
囮班の合図を確認したら攻撃準備
猪が木に衝突したら攻撃

ロウハ:
前衛で囮役
猪を挑発しつつ攻撃しながら所定場所まで誘導
猪が突進前の予備動作に入ったらランタンの光を点滅させ待機班に合図
突進は全力で避け、猪の停止時間が長ければ接近して攻撃


~ リザルトノベル ~

●猟師の知恵と作戦会議
 薔薇十字教団の団員服をまとった六人の浄化師は、エンケの村に熱烈に迎え入れられた。こんな山奥までよく来てくれた、救いの主だ、と期待の声に囲まれる。
「歓迎、感謝いたしますわ」
 優雅に礼をしてみせたのは、ベルクリス・テジボワだった。その田舎の村には似合わぬ所作にあてられて、村の猟師たちはたじろいだ。
「ですが、それはどうか後になさってほしいんですの。まずはベリアルについて……いえ、山やイノシシについて聞かせて頂きたいですわ」
「賛成。俺達、そっち方面に関しては素人だからね」
 賛意を示したのはキールアイン・ギルフォードだ。小柄なマドールチェであることを度外視しても少年という年頃だが、『そっち方面に関しては』という言葉に別の方面では熟達をしていると感じさせる雰囲気がある。
「あ、ああ、イノシシや山のことなら任せてくれ!」
「浄化師さんに助言を求められるって何だか嬉しいもんだな」
 村人は協力的だ。ベリアルに出くわしたベテランの猟師が集まり、積極的に知識を共有してくれる。

「突進攻撃を仕掛けて来るんですのね……それを利用しない手はないと思いますわ」
「攻撃を誘って木にぶつけるってこと? それなら、あたし役に立てるかも!」
 身軽が売りの魔性憑きである、ベアトリス・セルヴァルが挙手したのを皮切りに、前衛の誘導班と後衛の狙撃班に役割が分かれる。
「じゃあ、俺は囮の方だな。お嬢は後ろの方のが足りなくなりそうだから、そっちがいいだろ」
「そ、そうね……」
 ロウハ・カデッサが話を向けると、シュリ・スチュアートの目は微かに翳った。初めての実戦だというだけで緊張するのに、ロウハと別働隊なのか、と思うと不安が胸に湧き上がってくる。浄化師になったんだから、しっかりしないと、と口の端を引き締めた。
「私は誘導の方につくよ。接近戦型ばかりの面子じゃ、いざってときに心配だ。あとは突進を避けるのに合図があった方がいいんじゃないか? たとえば……」
 ジョシュア・デッドマンが机の上にあったランタンを頭上で振ってみせた。確かに、これなら霧の中にあっても突進の予兆に気づくことができるに違いない。
「まーなんかの拍子で音や光を発した組が狙われるかもだが、見落として攻撃もらっちまうよりマシってもんだろう」
「いいアイディアだと思うよ。それでも回避が難しいと思ったときには、すぐに呼んでほしい」
 墓守であり防御に長けた、カティス・ロウは自分の役目をよく弁えていた。
「もらった地図によれば、ベリアルをぶち当てるのに丁度良さそうな木が幾つかある。最終的に仕留めるのは、ここかな。ナニカ、どう?」
「まぁ良いんじゃないかな。見通しもよさそう」
 ナニーリカ・ギルフォードが弟に微笑みを返す。方針は決まった。狩りの始まりだ。

●イノシシ追い込み猟
 山の入り口で二手に分かれる。
 ポイントの木で待機する狙撃班――ベルクリス、ナニーリカ、シュリと、その他の誘導班だ。
「ロウハ、しっかりね。……わ、わたしだってちゃんとやるわよ」
 気丈に振る舞えど、不安と緊張のにじむシュリを安心させるようにロウハは鋭い目を細める。
「二人であれだけ訓練したろ? お嬢は筋がいいからな、大丈夫だ」
 ロウハの大きな手がシュリの頭に置かれる。その手のあたたかさがシュリの不安をとかしていく。昔からそうだった。
「またあとでな」
 ロウハが最後にぽんぽん、とシュリの頭を叩いて励ますと、シュリは頷いて、あらかじめ打ち合わせた場所へと向かった。
「心配ですか」
 シュリの背中を見送ったロウハに、カティスが声を掛けた。
「まあ、そうだな。お嬢が不安になるといけねえから抑えちゃいるが。あんたもそのクチだろ」
「私は……そうだね。でも取り合えず、あの子が前に出る様なことにならなくてよかった、と思うのは不謹慎かな」
 これは内緒だね、と保護者同士、苦笑する。役目を果たし、ベリアルの力を削ぐことがパートナーを守ることにもなる。誘導班は、獣道を使って山へと分け入っていった。
 猟師からイノシシの足跡の見分け方は聞いていたが、そう本職のようにはいかない。
「イノシシがこの辺にいるのは確かみたいだけど。どっちに行ったのかな」
 キールアインがイノシシの足跡がついているのを見て、左右を見渡す。他に手がかりは目につかない。
「ちょっと恥ずかしいけど、しょうがないかな」
 普段はあまり見せないのだが、人助けのためなら仕方がない。ベアトリスは自分のライカンスロープとしての特技を利用することにした。闊達な少女の姿が、愛らしいミニブタへと変わる。獣人変身だ。
「子豚の鼻を使うってわけか」
「あたしに任せて! こっち!」
 すんすんと地面や木の根のにおいを嗅ぐと、すぐにイノシシの進行方向をつきとめてみせた。においを追うベアトリスが先行し、後ろが続く。奥に進むほど霧が濃くなっていく。
「近い気がする!」
 たたたっと走り出たベアトリスの横合いから、ぬっと霧をわけて巨体が姿を現した。
 堂々たる牙、爛々と光る禍々しい目、硬い毛に覆われた皮膚を突き破り蠢く赤黒い触手――ベリアルだ。
「あは……本当に近かった……」
 ベアトリスは、牙に串刺しにされそうな距離感にミニブタの姿のまま頬を引き攣らせる。
「バカ、そんなこと言ってる場合か!」
 ジョシュアが咄嗟に呪符を投じ、九字を切った。反撃を予測していなかったらしいベリアルが体勢を崩す。その隙にベアトリスは転がるようにして敵のレンジから離れる。
「び、びっくりした~!」
「勘弁してくれ……こっちは寿命が縮んだよ」
 人型に戻って胸をおさえるベアトリスにジョシュアは肩で溜め息する。自分がこの場にいなかったらと思うと、本当に心臓に悪い。
「ハイファイブ!」
 ベアトリスとジョシュアが魔術真名を唱え、ハイタッチする。本来の力が十全に解放された感触を得て、ベアトリスはステップを踏みながら拳を握り込んだ。
「さっきは不意をつかれたけど、もう負けないからね!」
 気合を発し、胴に拳を叩き込むと、怯んだイノシシはあさっての方向に走り出す。
「追い込み猟だな!」
 ロウハがどこか楽しげに笑って飛び出していく。思いっきり暴れられる喜びはあれど、油断はない。事前に話し合ったポイントへの道筋をちゃんと頭に描いている。
 木刀で切りつけイノシシの注意を引くと、挑発的に指笛を鳴らして敵意を煽る。イノシシの殺意の籠った目が、ロウハに向けられている。高まる緊迫、荒事には慣れている。
「来な、獲物はこっちだぜ?」
 イノシシが後ろ足に力を溜めるように身を低くした。
「来る!」
 後ろからその予兆をはっきりと確認したキールアインとジョシュアが頭上でランタンを振る。爆発的な突進がロウハに向かって繰り出されたが、訓練された浄化師だ。分かりやすい合図があれば避けられないはずがない。ベリアルはロウハが背にしていた木にぶち当たる。木は小枝のように折れた。
「もっとでかい木じゃないとダメだ。タイミングは分かったろ? もういっちょ行くぜ!」
「次はこっちだよ」
 継いだのはキールアインだ。キールアインの指の動きに合わせて人形が自在に動く。目の前をちらつく人形にイノシシは興奮している。キールアインは人形を動かす速度に緩急をつけて、イノシシを更に森の奥へと誘った。
「ほら、ついて来いよ!」
 霧の中で動く人形の影は大きく、または小さく映り、ベリアルを翻弄する。振り回されて怒り心頭したベリアルが触手を振り回した。人形を操っていて無防備な状態のキールアインを鞭のようにしなる触手が襲う。間に入ったのはカティスだ。規則性のない動きをする触手を出来うる限り、盾で弾く。
「大丈夫かい?」
「ありがとう、助かった」
 多少、触手の攻撃はもらっても仕方がないと思っていたキールアインだが、カティスの仲間への目配りに素直に礼を述べる。
「しかし、触手は動きが読みづらくて突進よりも厄介かもしれないね」
「次が来るぞ!」
 身を屈めたイノシシを見とがめて、ジョシュアがランタンを振った。イノシシの目線が光に釣られて動く。
「え、まさか、こっち来る? そういうのはキャラじゃないんですけどね……」
 言いながらも作戦通り、大木の前へ位置を移動するのがジョシュアという男の合理主義であり、難儀なところである。
「大丈夫、ジョシュアはあたしが守る!」
 せいや! と発声勇ましくベアトリスがジョシュアを押しのけるようにして前に立った。パーフェクトステップを踏む。
 城壁を打ち壊す砲弾のような突進が放たれた。バトルダンサーと呼ばれるに相応しい身のこなしで、ベアトリスは回避してみせた。大木が砕け、木の破片が勢いよく飛んでくる。
「あいたた……刺さったあ~っ」
 木という思わぬ伏兵にベアトリスが飛び跳ねる横をすり抜けて、隙を逃さずロウハが木屑に埋もれたイノシシに追撃を加えた。斬りつけられたベリアルはぶるりと大きな体を震わせ、触手で周囲をなぎ払う。
「うおっ……!」
 逆に木に叩きつけられた、ロウハがうめいた。
「まだ動くのかよ」
 どすどすと逃げていくイノシシを、強かに打ちつけた背中を擦りながら睨む。
「だが、やっこさん、かなりグラグラ来てる。動きが鈍ってるぞ」
 ベアトリスに刺さった木片を抜いてやりながら、ジョシュアが指摘する。確かにイノシシの走りは蛇行して見える。
「俺が最後の場所まで誘導するよ」
 キールアインが再び人形を操った。

●最終ポイント
 山で一番の大木を中心に狙撃を任された三人は身を潜めている。木々が深い周囲と違って、猟師が野営地に使っているのか比較的にひらけている。狙撃手には絶好のポイントだった。
 シュリはぶり返した緊張に息を詰めていた。
 誘導班がイノシシを連れて来るまで、あとどのくらいだろうか。いや、もうすぐだ。
 悪魔祓いの二人よりも射程距離の短いシュリは前方に陣取っている。イノシシの足音が近づいて来るのがいち早く伝わってきた。
 ざっ、と草を分ける音がして、ベリアルと浄化師たちが飛び出して来た。
(……来た!)
 少なからず傷だらけの仲間たちの姿から、ここまでベリアルを誘導してくるのが決して楽な仕事ではなかったことが伝わってくる。
(ロウハも、皆も頑張ってる……わたしもきっとやれるわ……ロウハが大丈夫だって言ったもの)
 今日、別れ際に置かれたロウハの手のあたたかさを思い出す。お嬢は大丈夫だ、と言うロウハの声が繰り返しシュリの心を励ます。合図があるまでベリアルに気づかれないようにしなければならない。

 二度の空振りさせられた突進でベリアルは額から血を流し、足取りも覚束なくなっている。しかし闘争本能ばかりは刻一刻と高まっているように見えた。
 不意にイノシシの上体が傾ぐ。体勢を崩した今が好機とベアトリスが近づく。
「違う、突進だ!」
 ベリアルがふらつく動きと、上体を屈める行動を判別しそこねたのだ。回避が間に合わないと見たカティスが盾を手に踏み込む。イノシシの突進とシールドタックルの突進がぶつかり合った。
 互いに弾き飛ばされ、カティスは地面を転がる。ベリアルは転倒して、なかなか体を起こせないでいる。
「うぅ、く……っ」
 腕を押さえて呻くカティスに、爆発したのは言わずもがなベルクリスだった。
「おじ様……っ!」
 立ち上がったベルクリスに驚いたのは、カティスだ。
「わたくしのおじ様を傷を付けましたわね!? 許さなくてよ!!」
「ベル、私は大丈夫だ、落ち着きなさい!」
「いいえ、落ち着けません!」
 ベルクリスがライフル銃に魔力を込め、構える。完全に目が据わっている。ワーニングショットによってライフルから射出された魔力弾がベリアルの右前脚をふっ飛ばした。これでもう、突進を繰り出すことはできない。
「計画とちょっと違うけど、敵は今動けない! 今だ」
 混乱の中、秩序を取り戻したキールアインがランタンで攻撃の合図を送る。呆然としてしまっていたシュリがはっと、正気づいて占星儀を手にした。
「タロット・ドロー!」
 シュリの手から放たれたタロットがベリアルの表皮を引き裂く。引き裂かれた体から、更に触手が飛び出してくる。
 その触手を撃ち落とす矢があった。
「ナニカ!」
「キル!」
 ボウガンを構えたナニーリカが弟に駆け寄って来る。背中合わせになると、心強さが段違いだった。ナニーリカが触手攻撃の阻止に注力してくれるおかげで、みんなが動きやすくなる。
 キールアインの魔力糸で操られた人形がイノシシに攻撃を加えている間に、ベルクリスが次の弾を込める。
 ついに弱ったベリアルから鎖に捕らえられた魂が露出した。
「ごめんあそばせ」
 ベルクリスの銃が鎖を打ち砕く。
 解放された魂が天に還り、イノシシの体が砂となって崩れていく。
 エンケの魔猪は姿を消した。

●討伐を終えて
「ベル……また無茶をして。怪我はしていないね、見せてごらん」
 カティスがベルクリスの頬をさすり、傷がないかを頭からつま先までを目で検める。目立った怪我はないようで、安堵の息を吐いた。
「無茶をしたのは、おじ様の方ですわ! わたくし気が気じゃありませんでした……なんともありませんの?」
 どさくさに紛れてひっついたベルクリスだが、心配する気持ちは純正である。イノシシの突進を受けとめた際に手で押さえていたカティスの腕が折れたりはしていないかと目を潤ませる。
 カティスはアンデッドなので、あまりいい想像ではないが――腕がちぎれたところでくっついてしまう体質である。しかし、そんなことを口にしたら更に心配をかけてしまうことは目に見えていた。
「有難う、ベル」
 私のために怒ってくれて。向けられた好意を受け取って、カティスはどこか困ったような顔で笑った。

「お嬢、カッコよかったぜ」
 初めての実戦を終えて、呆けたようになっていたシュリにロウハは声を掛けてきた。
「べ、べつに……普通よ。わたしは浄化師なんだもの」
「でも、俺はお嬢を誉めたい。頑張ったな」
 本当はぜんぜん普通なんかじゃなかった。すごく緊張して、でもロウハも一緒だと思えたから乗り切れたのだ。別行動だったとしても、一人じゃなかった。
「ロウハ、ありがと」
 頭にぽん、と手を置かれて、ぼそり、と小さな声で返す。

「みんな~! 猟師さんたちがご飯食べさせてくれるって!」
 村長に討伐完了の報告に行っていたベアトリスが手をぶんぶん振って呼んでいる。
「え、あのイノシシ、砂になっちゃったじゃん」
「キル、あのイノシシ食べたかったの?」
 キールアインが首を傾げるのを、ナニーリカが笑う。
「しばらく猟ができてなかったから、生のお肉はないんだけど、燻製ソーセージがあるから、よかったらって!」
「ぜったい食べる」
「私も!」
「ナニカも食べたいんじゃん」
 明るく手を上げたナニーリカに今度はキールアインが笑う。

「でも、いいのか。子豚」
「何が?」
 きょとん、とベアトリスはジョシュアを見つめ返す。
「共食いになりやしないかと思ってね」
 ジョシュアの目にからかいの色が浮かぶ。一拍置いて、意味を理解したベアトリスが、あたしはイノシシじゃないよ! と憤慨するのは確定的未来だった。


エンケの魔猪
(執筆:碓井シャツ GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/03/23-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[19] ベアトリス・セルヴァル 2018/03/29-22:37

シュリとロウハ…よろしくね!

イノシシ探しは、あたしの獣人変身も役立てないか考えてみるね  
 

[18] ベルクリス・テジボワ 2018/03/29-18:05

シュリさん、ロウハさん、どうぞ宜しくお願いしますわ。

出発が近づいてますわね、お互い支度は万全にして参りましょう!
 
 

[17] キールアイン・ギルフォード 2018/03/29-16:59

参加者が増えたみたいだね。シュリ、よろしく。
行動指針も、把握したから、俺も忘れない内に提出、しておこうかな。
悪いけど、別件があって、俺もこのまま出発まで相談できないかもしれない。
でも、ランタンでのアピールとかも把握してるから、購買部寄ってから用事に行くことにするよ。  
 

[16] シュリ・スチュアート 2018/03/29-03:11

出発直前の参加になってしまうけれど、加勢させてもらうわ。
わたしはシュリ、こっちはロウハ。よろしくね。

今までに出た作戦は把握したわ。
ベルクリスがたくさん説明してくれたから。
村で猟師の人からイノシシの情報も聞くのよね。

わたしは後方からの攻撃、ロウハは前衛で囮をやってもらうつもり。
光で合図するためのランタンも持って行くわね。  
 

[15] ベルクリス・テジボワ 2018/03/28-23:55

ファッ!?

…な、なんですの!?
そりゃあ、確かに大事なことですけれど…
わたくし別に、2度も3度も言うつもりはありませんでしたのよ?(おろおろ)

申し訳御座いません、お目汚し大変失礼致しましたわ。  
 

[14] ベルクリス・テジボワ 2018/03/28-23:51

出発までもう余り時間も残っていないことですし、そろそろ行動計画を纏めませんとね。
わたくし、明日の夜は少し忙しくなりそうですの。
とりあえず目下の敵はジスウ・セイゲn(ごほごほ)…ですわね。

わたくしの認識が間違っていないか確認したいのですが、全体的な方針としては、
前衛方はそれぞれ安全確保に努めながら敵を挑発し、突進を仕向けて木にぶつける。
可能なら攻撃も行いつつ振り回して体力を削り、射撃方の待機するポイントへ誘導。
射撃方は予め決めておいたポイントで待機し、所定の位置にて敵の動きが止まった所を狙って鉛弾をぶち込む!
…で宜しいのかしら?
間違っている所や、追加・修正が有りましたら、是非言って下さいまし!  
 

[13] ベルクリス・テジボワ 2018/03/28-23:51

出発までもう余り時間も残っていないことですし、そろそろ行動計画を纏めませんとね。
わたくし、明日の夜は少し忙しくなりそうですの。
とりあえず目下の敵はジスウ・セイゲn(ごほごほ)…ですわね。

わたくしの認識が間違っていないか確認したいのですが、全体的な方針としては、
前衛方はそれぞれ安全確保に努めながら敵を挑発し、突進を仕向けて木にぶつける。
可能なら攻撃も行いつつ振り回して体力を削り、射撃方の待機するポイントへ誘導。
射撃方は予め決めておいたポイントで待機し、所定の位置にて敵の動きが止まった所を狙って鉛弾をぶち込む!
…で宜しいのかしら?
間違っている所や、追加・修正が有りましたら、是非言って下さいまし!  
 

[12] ベルクリス・テジボワ 2018/03/28-23:51

出発までもう余り時間も残っていないことですし、そろそろ行動計画を纏めませんとね。
わたくし、明日の夜は少し忙しくなりそうですの。
とりあえず目下の敵はジスウ・セイゲn(ごほごほ)…ですわね。

わたくしの認識が間違っていないか確認したいのですが、全体的な方針としては、
前衛方はそれぞれ安全確保に努めながら敵を挑発し、突進を仕向けて木にぶつける。
可能なら攻撃も行いつつ振り回して体力を削り、射撃方の待機するポイントへ誘導。
射撃方は予め決めておいたポイントで待機し、所定の位置にて敵の動きが止まった所を狙って鉛弾をぶち込む!
…で宜しいのかしら?
間違っている所や、追加・修正が有りましたら、是非言って下さいまし!  
 

[11] ベルクリス・テジボワ 2018/03/28-23:48

光や音で合図を送り合うの、良いですわね!
わたくしも賛成ですわ!
前衛の安全を高めるだけでなく、射撃方にとっても攻撃のタイミングを図れて助かりますもの!

ハッ…そうでしたわ、相手はベリアル…ただの猪ではありませんものね。
ですが触手に関してはわたくしに出来る事はなさそうですの…。
前衛方で何とかして下さいまし!(ぐっ)
 
 

[10] ベアトリス・セルヴァル 2018/03/28-22:53

↓交代するのを忘れていました
(ジョシュアとしての発言です)  
 

[9] ベアトリス・セルヴァル 2018/03/28-22:52

ちょいと子豚と交代するよ、口調がまだ固まっていないみたいでね。

少し読んでてこうしたら安全なんじゃってアイディアが出た
予備動作が行われたことを確実に周知するためにランタンとかの光か音で合図を送りあうのはどうかね、引き寄せてしまう可能性はあるが霧の事もあるし、見落としよりマシかと思うんだが。

あと、私の攻撃だがいざという時(回避不能、攻撃が当たってしまう直前)にぶつけて妨害しようかと思ってるよ。畳みかけるのも悪かないが、セーフティーが無きゃおっさんは不安なんだよ。  
 

[8] キールアイン・ギルフォード 2018/03/28-20:02

おお、人数増えてだいぶ楽になったっぽいね。
ベアトリス、よろしく。

前衛での惹き付け役が多いと、かく乱にもなって良さそうだよね。
霧とか生態確かに、一回猟師の人に話し聞いてみたいかも。
霧の環境下でも狩猟してたんだから、多分そういう日の狩猟の仕方とかも知ってるかもな。

ベリアル化してるから、突進だけじゃなくて、触手の攻撃もあるだろうから、その辺もうまく前衛でひきつけて置きたいって思う。
 
 

[7] ベルクリス・テジボワ 2018/03/28-01:23

メンバーが増えて心強いですわ。
宜しくお願い致します、ベアトリスさん、ジョシュアさん。

まぁ!確かにそうですわね、わたくし現場の状況については考えていませんでしたわ…。
霧の事も考えると、一層場所の選定はしっかり行わなくてはいけませんわね。
それに折角場所を決めても、そもそも近くに居なかったではお話になりませんから、猪の生態や探し方について一度猟師の方にお話を伺っておきたいものですわね。

おじ様は前衛のサポートに専念されるそうですわ。
もし突進を回避し難い状況になった時はスキルでお助けするそうですの。
誘導や弱体化よりも退路確保に集中するとのことです。
勿論、そのような状況は無いに越した事有りませんけれど。  
 

[6] ベアトリス・セルヴァル 2018/03/28-00:08

い、猪かあ…
あ!はじめまして、あたしはライカンスロープのベアトリスだよ
相棒はアンデッドのジョシュア、よろしくね。

あたしは中衛だけど回避技があるから、攻撃を誘って木にぶつけるのなら前衛に加わろうかな?
前衛皆で猪を挑発して振り回しちゃって疲れさせられないかなって思ったよ。

ジョシュアは後衛だけど攻撃技は無いから、地道に通常攻撃を重ねようかな。  
 

[5] キールアイン・ギルフォード 2018/03/27-20:21

ぼたんなべっていうんだ。今回はアレだけど、今度食べに行ってみるよ。

木にぶち当てるっていうのは、良いかもね。
俺人形遣いだし、比較的安全圏でイノシシの注意惹きやすいかも。
ただ、直撃したらそのままオダブツな気がするから、できればカティスが近くに居てくれると、助かるかもな。

見晴らしの良いところでの射撃は、ナニカも賛成なんだけど、
実を言うと、微妙に(プロローグで)霧について言われてるのが気になっててさ。
どれくらいの視界見えないのかわからないんだけど、あんまり遠くからの射撃はできないのかな、っていうのが印象。
ただ、木にぶちあてて攻撃、っていうのはそのままで良いと思う。  
 

[4] ベルクリス・テジボワ 2018/03/27-02:50


わたくし存じておりますわ!
別名『牡丹』とも呼ばれるお鍋の料理ですわね!(ドヤ)
…食べた事は有りませんけれど。

ともかく!
戦闘の相談なのですわ、キルさん。


猪突猛進という通り、この特徴を活かさない手は有りませんわ。
わたくし銃を扱えるとは言いましたけれど、矢張り、的は大きく動かず見晴らしの良い場所に有るのが良いに決まってますもの。
集中して撃てるよう出来るだけ良い場所に留まりたいと思っていますのよ。
理想としてはベリアルが木などにぶつかって動きが止まった時を狙いたいんですの。
ですから、その、前衛のお二人には誘導も含めて動いて欲しいんですの。
勿論、妥協だって考えますわ、わたくし!
…飽くまで『案』ですのよ?
 
 

[3] キールアイン・ギルフォード 2018/03/26-21:10

ベリアル化してたら、倒した後食えなさそうだよなー。
いのしし鍋? っていうの、ちょっと興味あったけど、仕方ないよな。

ベルクリス、俺はキールアイン・ギルフォード。長いしキルとかギルとか呼んで貰って大丈夫だよ。よろしくな。

アライブ的に、カティスと俺が前の方で、ナニカと、ベルクリスが後衛から攻撃するのが基本になりそう、って感じかな?
森での戦闘だし、真っ直ぐの突進しかないなら、意外と余裕かもね。
 
 

[2] ベルクリス・テジボワ 2018/03/25-05:29

猪…もとい、ベリアル狩りですわね!

コホン、失礼致しました。
わたくし、ベルクリス・テジボワと申します。
おじ様と一緒に任務に当たらせて頂きますわ。
わたくしは多少ですけれど銃の心得が御座いますの、おじ様は盾をお使いになられます。
戦闘だなんて初めてですけれど、頑張りますわ。
宜しくお願い致しますわね。