~ プロローグ ~ |
エントランスで、つい視線を巡らせる。 |
~ 解説 ~ |
このシナリオのテーマは「おかえり」「ただいま」を言うことです。 |

~ ゲームマスターより ~ |
急な出張をして戻ってきたとき、にゃんこに出迎えられて優しくて泣いたのは私ですよ! |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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他に何か手伝うことはあるか? 大丈夫だ、大体こちらでやることは終わって比較的手が空いているし。 なぁハル…ああ、出かけてるんだったな。 この一週間。 気がつけばとっくに夕飯の時間が過ぎていたり、 物をどこに仕舞ったのか忘れていたり。 意外と抜けてるところがあったんだなって笑われたりもした。 俺が普段からどれだけ無意識にハルに頼ってたかがよく分かった。 飲み物を持ってきてくれたり、次に必要になるものを準備しておいてくれたり。 大きな声で名前を呼ばれて、気がついたら捕まえられてて少し驚く。 それでもいつも通りのハルの様子に安心する。 「おかえり、ハル」 ハルの話は後で聞かせて貰おう。 ああ、そうだ。 普段の礼も言わないとだ。 |
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■出張と留守番 出張=ユキノ 出迎え=リール ユキノは帰りがけにリールが好きそうなお菓子を見つけてお土産に 出迎えるリールは額に絆創膏 7日の間に苦手な戦闘を克服しようと修練場で訓練した時にできた傷 ■出迎え ロリクさんもユギルさんに会いたかったんだよね いいなぁ、素敵ー!(きゃー) ユキちゃんが見えたら駆け寄ってハグ! ユキちゃーんっ! ユキノ:リール、走っては危険です…その額は? リール:え、えへへ、訓練でちょっと。ユキちゃんがお仕事の間、私も何かしようと思って… ユキノ:…そうですか、頑張りましたね …あっ、大事な事言ってなかった! リール:ユキちゃん、おかえりなさい! ユキノ:…はい。ただいま、リール(ふわりと微笑) |
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出張側 姉さん…一人で大丈夫かな いつも部屋に姉さんを迎えに行って、彼女の髪を整えて あの時間が無いと、どうも一日が始まらない気がする 胸に開いた孔が、ひどく冷たい 身体も、冷たくて上手く動かない、ような 力が入らない こんなに、虚ろだったろうか 姉さんが隣に居ない時間は これまで離れ離れだった時間の方がずっと長い筈なのに …駄目だ 彼女に触れたい 彼女に、触れていないと 僕は…駄目になる ◆帰 姉さん、姉さん…!! (駆け寄り抱き締めた勢いでそのまま押し倒してしまう) ただいま、姉さん。…寂しかった 優しく撫でてくれる指先に、心満たされる ああ、春の様に温かい …姉さん、今日は一緒に眠りたい お土産話とか、さ 話したい事が沢山あるんだ |
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ロウハが出張に行き、シュリが待つ ◆シュリ 部屋とエントランスを行ったり来たりする日々を送る 浄化師になる前は、どこかにロウハを待つのなんてよくあることだったのに どうして今はこんなにそわそわするんだろう 会いたいな、ロウハ… だから、帰ってきたらすぐに迎えられるようにしよう おかえりなさい、ロウハ…! ◆ロウハ 俺だけで仕事に出るの、久々だな お嬢は、まあ…寮にいるし一人でも大丈夫だろ そういえば、前は…俺が買って来る手土産を楽しみにしてたっけな お嬢が好きそうな果物系の菓子でも買って行くかな 帰ったらすぐさまお嬢に出迎えられて驚く なんだ、待っててくれたのか? ああ、ただいま。お嬢 こんな風に迎えられるのも、いいもんだな |
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【目的】 出張を全うする 【行動】 ユギルさんと出張して任務を全うする 【心情】 えっと、出張? 私で宜しければ是非お手伝いさせてくださいな♪ そういえば、私ウィルと出会ってから離れて行動するの初めてですわ ふふ、ケーキか何かお土産に買っていかないと あと、紅茶も 帰ったら二人でお茶にしないといけませんわ 『帰ってから』 ただいまウィル! ふふ、とっても楽しい出張でした、わ?(抱き締められて戸惑い うぃ、ウィル! あの、どうしたのかしら? |
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出張→ヨナ ベルトルドさんはこの間倒れたのもありますし私が行くのが妥当でしょう 向こうは向こうで暇をしてる時間は無いと思いますけどね 指令の方は無難にこなせたと思います 多分… お土産を買うつもりは特に無かったのですが ユギルさんに勧められたのでお菓子系を買っておきます これくらいなら嵩張らないですし ベ 心なしか張り切っていて逆に不安だ しかし俺の課題まで張り切ってたんまり作る事はないのだが? 課題投げ出し。一人でやるのは全く捗らないな…(嘆息 机に向かうより体を動かしていた方が性に合うと修練場へ 帰還予定日近くになるとエントランスでさりげなく読書しながら待つ ページは進んでいない 課題=単語ドリルと読書感想文 |
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出張に行った方 えっと お土産 買ってくるね? 手伝いは順調 自分の知識を駆使してサポート 3日目辺りから無意識にメルを探し出す あぁそうだ メルはいないんだっけ そう思った瞬間途端に寂しさがこみ上げる 頑張らなきゃ 失敗なんてしたらメルに心配かけちゃう でも落ち着かない… 困った時 どうしたらいいのか分からない時 メルはいつも私を助けてくれた メルに私は頑張ってきたよって伝えないと 「今度こそ」かえらないと …あれ?今度こそ? ふと沸き上がった感情に首を傾げ ともかく帰ろう 帰還後、突撃してきたメルに驚きながらも 彼女にしては珍しい微笑で 「メル 私はかえってきたよ」 え?笑ってた? こ、こう?(とても笑顔とは言えないひきつり顔 |
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~ リザルトノベル ~ |
「他に何か手伝うことはあるか? 大丈夫だ、大体こちらでやることは終わって比較的手が空いているし。なぁハル」 書類をまとめて提出した『テオドア・バークリー』は横へと視線を向けて、そこに誰もいないことにはっとした。 「……ああ、出かけてるんだったな」 俯き、小さなため息が漏れる。 この一週間。 一人でいるせいか、気がつけばとっくに夕飯の時間が過ぎていたり、物をどこに仕舞ったのか忘れることが多発した。 同僚たちには意外と抜けてるところがあったんだなって笑われたりもした。 ――テオ君! 子犬のような笑顔でいつも自分の傍にいて支えてくれたパートナーの顔がよぎる。 (俺が普段からどれだけ無意識にハルに頼ってたかがよく分かった……飲み物を持ってきてくれたり、次に必要になるものを準備しておいてくれたり) 思えば幼いときからずっと一緒にいる彼は呼吸するように自分の必要なことを理解してくれていた。今まで自分がしっかりしなきゃと思っていたが、実は支えられていたのだと理解した。 「ただいま、テオ君!」 大きな声で名前を呼ばれて、驚いて振り返ったとき強い抱擁に目を見開いた。のしかかるような、強い強い力での束縛がいやだとは思わなかった。 いつもの――ハルトだ。 「あー! もう帰りたい帰りたい帰りたい! もういいじゃん、俺一人ぐらいいなくたっていいだろ。おーれーはー! 行くなんて一言も言ってないのー!」 ほぼ強制的に連行される形での出張に『ハルト・ワーグナー』は子供のように文句を口にしてはユギルを困らせた。 七日はとても長い。こんなにもテオドアと離れていたことなんてあっただろうか? きっと、なかったはずだ。 仕事の間もずっとテオドアのことばかり考えて仕事もミスしてしまった――だったら帰ってもいいよね? と聞いたら睨まれた。けちだ。 「夕方か。いつもなら夕飯どうするか話してる時間だよな。……テオ君、何してるかな」 朝の寒さ、昼の空腹、夕方の灯の折々にテオドアの顔が浮かび、彼が向けてくれるだろう言葉やしぐさが脳裏に蘇る。 だから。 教団近くになったら一緒に指令にあたったメンバーを残してハルトは駆け出した。門をくぐり、視線を巡らせ、見つける。 (人の目? 報告とか諸々? 知ーらね! 俺のテオ君に会うことの方が大事!) 声をあげて両手を広げて、自分のテオドアを堪能する。 (俺のテオ君!) 強く抱擁するとぽんと頭を撫でる手があった。 「おかえり、ハル」 テオドアがハルトの抱擁をやんわりと引き離す。少し惜しそうにハルトは口を開いた。 「聞いてよテオ君、酷いんだよ! 俺テオ君のとこ帰るって散々言ってんのに、あれやこれや押し付けられて全っ然帰れなくってさー!」 「ハルの話は後で聞かせて貰おう。ああ、そうだ」 「テオ君、何だか嬉しそう? え、なに?」 (あー! 一週間ぶりの俺のテオ君の笑顔が心に染みる!) 笑ってくれるテオドアにハルトは小首を傾げた。 「いつも、ありがとう」 『ユキノ・スバル』を見つけた『リール・アスティル』は即座に走って両腕を伸ばした。リールに気が付いたユキノはびっくりして、目を見開き、その熱烈な抱擁を受けた。 「ユキちゃーん!」 「リール、走っては危険です……その額は?」 リールを受け止めたユキノは、その可愛らしい額の絆創膏に気が付いた。 「え、えへへ、訓練でちょっと。ユキちゃんがお仕事の間、私も何かしようと思って……」 「……そうですか、頑張りましたね」 穏やかな声で言われてリールの胸に嬉しいという気持ちが、綿毛のようにふわふわと飛んで、満していく。 リールにとってユキノは大切な、何度も助けてくれたパートナーだ。ただ以前指令で逃げ出してしまった自分をもっと強くしたいとこっそり訓練をしていたのだ。不慣れすぎてこけたり、打ち身を作ってしまい、昨日は額に傷が出来た。たいしたことないのだけど、ユキノに見られると少しだけ恥ずかしい。 ユキノの手が絆創膏に触れる。 「次からは一緒に訓練しましょうね」 心配した声。 「う、うん!」 「また怪我をしては大変です」 真面目に言われてしまった。 ユキノにとってリールは大切なパートナーで、守るべき存在だ。けれど彼女もひとつひとつ成長しているのだと、七日の間離れて仕事をしていたが、合間、合間に手をとめてはリールのことを考えてしまっていた。 それでも真面目な彼女は仕事をつつがなくこなして帰路についた――ただつい目についた御菓子屋で、ふと浮かんだリールの笑顔に、お土産を買ってしまっていた。 ふと声が聞こえてきたのに視線を向けるとロリクがユギルを出迎えている。 「ロリクさんもユギルさんに会いたかったんだよね。いいなぁ、素敵ー!」 甘い雰囲気の二人を見てリールが心のなかできゃーと悲鳴をあげる。 「……あっ! 大事な事言ってなかった!」 「?」 ロリクとユギルのやり取りを見てリールは大切なことを思い出した。 「ユキちゃん、おかえりなさい!」 「……はい。ただいま。リール」 ふんわりと、優しい微笑み包まれたリールは――ほんの少しだけ寂しいと思っていた気持ちが実はすごく寂しかったのだと自覚した。 それはユキノも同じだ。たった一言の出迎えが、こうしていることが嬉しいと思う。不思議な気持ちだが嫌いではない。 「これ、買ってきたので食べましょうか?」 「美味しそうなクッキー! 二人で食べよう!」 (一人に、なっちゃった……こんなに長い間、シアが居なかった事なんてなくて……何を、したらいいんだろう……?) 『リュネット・アベール』は途方にくれていた。いつも一緒にいる片割れが連れていかれて慣れない事務仕事をしなくてはいけない。 ちゃんと、お姉ちゃんらしく……と思ったが、自分一人でなにをしていいのかわからなくなってしまったのだ。 うまく声を出せなくて、髪の毛も結べない。 (教団でも、街でも、いつも……他の人とは、シアが代わりに話してくれてたから。髪だって、僕一人じゃ上手く編めない) つい人を避けて逃げてばかりで仕事ができない。 (……駄目。シアも、今頃遠くで頑張ってる。駄目なお姉ちゃんって、思われたくない。僕一人だって、やれる事はやらなくちゃ) だから紙に文字をかいて受けた仕事を必死にこなしていく。頭のなかでずっとシアと呟きながら。 (姉さん……一人で大丈夫かな?) 離れた二日目の朝、『リュシアン・アベール』は教団本部にいるリュネットのことを考えた。 いつも部屋に彼女を迎えに行って、長くゆるやかな髪を整えてはじまりを迎えていた。 あの時間が無いと、どうも一日が始まらない気がして力が入らないのだ。 胸に開いた孔に、ひどく冷たい風が吹き抜けていく。 肉体にも上手く動かない、ような気さえする。 (力が入らない) リュネットのいない一日は長く、虚ろで。 (これまで離れ離れだった時間の方がずっと長い筈なのに……?) 知ってしまったのだ。彼女のぬくもりと優しさを。もう戻ることなんてできるはずがない。 (……駄目だ。彼女に触れたい。触れていないと、僕は……駄目になる) 沈んでいく思考のなかでリュシアンはきらきらとした宝石のような彼女の笑顔だけを浮かべては、慰めにした。 一日を千年のように感じながら、ようやく戻ってきた教団の本部のエントランスで、すぐにリュシアンはリュネットを見つけ出した。 リュネットも、自分を見つけて笑ってくれている。 「姉さん、姉さん……!!」 「シア! おかえりなさ、……きゃあ!?」 勢いよく抱きしめられて床に二人一緒に転がった。顔を覗き込み、赤い瞳が絡み合う。リュネットの手が優しくリュシアンの頭を撫でた。 「ただいま、姉さん。……寂しかった」 「……おかえりなさい、シア」 今までの虚ろが嘘のように晴れていくのをリュシアンは感じる。優しく撫でてくれる指先に、心満たされる。 ああ、春の様に温かい。はじめて出会ったあの庭の芳醇な花の香りのように。 「姉さん、今日は一緒に眠りたい。お土産話とか、さ。話したい事が沢山あるんだ」 「ふふ、今夜はパジャマパーティ、だね。僕も……シアに聞いて欲しい事、沢山あるの。いっぱい、頑張ったんだよ」 優しい微笑みにリュシアンは一瞬だけ、彼女が遠くへと行きそうな恐怖を覚えながらも人々の注目を感じて慌てて立ち上がる。手を伸ばして、握りしめた手。 この奇跡を、決して手放したりはしない。 『シュリ・スチュアート』の毎日は寮と本部の往復のみに費やされた。やることは淡々としていて、仕事をし、食事をして、眠る。それだけだ。 いつもならしっかりしている彼女が上の空で仕事にならないのに周りが体調不良かと心配するほどだ。 体調は大丈夫。――たぶん。 (ロウハ、どうしてるかな……仕事ちゃんと上手くいってるかな……危ない目に遭ってないかな?) 頭に浮かぶのは一つのことばかり。 ロウハがいない、それだけで何もかも味気ない。世界に色がない。 (浄化師になる前は、ロウハを待つのなんてよくあることだったのに……どうして今はこんなにそわそわするんだろう?) パートナーがいない、それだけのこと。それだけのことが、シュリの胸に穴をあけてしまう。 浄化師になる前はただ、家族として一緒にいた。 信頼の種はまかれて芽をつけ、いつしか、小さな花が咲いた。 シュリの心には、ロウハへの気持ちがちゃんとある。離れれば離れるだけ会いたい、声を聞きたい、その顔をみたい。そのぬくもりを、もっと触れたいと強く思う。 いない、それだけで胸が苦しい。 「会いたいな、ロウハ」 指折り、日々を数えては小さなため息が出てくる。 (わたしは……ロウハが好き。じゃあ、ロウハは) 彼はどう思ってくれているの、だろう? 『ロウハ・カデッサ』にとっては、出張は少しばかり毛色の違う指令、という認識しかなかった。 「俺だけで仕事に出るの、久々だな。お嬢は、まあ……寮にいるし一人でも大丈夫だろ」 彼の気掛かりはシュリのことで、安全だと思えば何も恐れることはない。 (そういえば、前は……俺が買って来る手土産を楽しみにしてたっけな。お嬢が好きそうな果物系の菓子でも買って行くかな) 指令の合間、合間にシュリのことを思えば、どんな土産がいいのか、旅先で見た風景を伝えてやりたいと思ってしまう。 ロウハが考えことに沈む時間が多くなっていたが、指令をしっかりこなしているので問題にならなかっただけだ。 指令の終わりの日、菫の花の砂糖漬けを買ってロウハは教団の門をくぐった。 「お嬢は」 「おかえりなさい、ロウハ……!」 軽やかな声だ。普段は表情をあまり見せないシュリには珍しく、口元が微笑を浮かべている。それが彼女の笑顔だとロウハは知っている。 いつ戻ってきても、すぐに出迎えられるように、シュリはエントランスで待っていたのだ。 「なんだ、待っててくれたのか? ああ、ただいま。お嬢」 少しだけ驚きながらロウハは自分の懐へと駆け寄って、見上げてくるシュリの頭を撫でる。 いつものように、お土産を差し出してあげながら。 「こんな風に迎えられるのも、いいもんだな」 シュリの目尻が緩んでいるのにロウハは昔からしているように言葉とともに頭を撫でた。 そうして久方ぶりにシュリを見たときに覚えた胸の高鳴りを意図的に押し込んだ。 「えっと、出張? 私で宜しければ是非お手伝いさせてくださいな♪」 ユギルに誘われた『アリス・スプラウト』は一も二もなく答えた。それに傍にいた『ウィリアム・ジャバウォック』は瞠目し、言葉をなくし、慌てた。 「な、何を勝手に……あ、ちょっと、アリス!」 手を伸ばして、制そうとするがアリスはするり、とウィリアムの手の届かないところへと行ってしまう。 「いってきます、ウィル」 笑顔で手をふられた。 「くっ、私が居ない間にアリスに何かあったら……い、いや……私がそこまで束縛するのも可笑しな話か」 事務仕事を任されたウィリアムはアリスがいない間を書類との闘いにあてながら考えた。 (そもそもアリスのなんなんだ? ただのパートナーだろう?) 「……ただの、パートナー……」 口にして空しくなった。 (そもそも、私は自分が大事だろう? だが) アリスが居なくなったということだけで、ウィリアムは仕事でミスを連発しては混乱した。いつもならこんな単純なミスなんてしないのに。 ただアリスがいないだけなのに。 (……自分でも思った以上にアリスを大事に思っている、のか?) ウィリアムは唖然とした。 (そういえば、私ウィルと出会ってから離れて行動するの初めてですわ) 一方アリスも指令にあたりながら考えた。 物珍しいものを見ては、つい横にいるウィリアムに声をかけようとして、いないことに気が付いて、ああと小さなため息をついてしまった。 それでもアリスは一人の指令も、他の仲間もいることから比較的楽しんだ。きっと自分がいなくてもウィリアムなら大丈夫と信じてもいた。 (ふふ、ケーキか何かお土産に買っていかないと! あと、紅茶も。帰ったら二人でお茶にしないといけませんわ) アリスのなかにウィリアムのことを考えて、帰りが楽しみな気持ちが生じるのだ。 そして、長い出張はつつがなく終わり、アリスは教団に戻ってきた。 エントランスでウィリアムを発見して手をふる。 「ただいまウィル! ふふ、とっても楽しい出張でした、わ?」 アリスは言葉を失う。 理由は、ウィリアムに抱きしめられたからだ。 「アリス」 切実な声に、力強い腕、あたたかい、そしてウィリアムの香り。 「うぃ、ウィル! あの、どうしたのかしら?」 「お、おかえりなさい」 絞り出すような声に、アリスは胸の高鳴りを覚えて息する方法を忘れる。 (わ、わ、わたし、ど、どうしよう、こ、こんなの) 恋愛小説を読んだときのような胸の切なさにアリスは迷いながら、ウィリアムの背中に手をまわして抱擁をかえした。 いまは、必死に自分を愛しんでくれる彼に、ただいまと伝えるために。 「ベルトルドさんはこの間倒れたのもありますし私が行くのが妥当でしょう」 どちらが出張に行くか問われて『ヨナ・ミューエ』は断言した。 その張り切りを見て、心なしか不安を覚えたベルトルドは眉を寄せた。 「これ、私が帰るまでに仕上げてくださいね」 山のような課題にベルトルドのひげを震わせる。 「な、これは」 「単語ドリルです。こちらは読書感想文のための本です。面白いし、ベルトルドさんでも十分に読めます」 「……」 ばっちり用意されている課題をベルトルドは受け取った。 (俺の課題まで張り切ってたんまり作る事はないのだが?) ヨナがいない間の課題はすぐに投げ出してしまった。一人ではまったくやる気にならない。お小言が恋しいわけではないが、嘆息しか出ない。仕事と言われても事務の仕事はベルトルドには窮屈で、ロリクに断りをいれて鍛錬場で一人、もくもくと体を動かして日々を過ごした。 だから。 決して寂しいとか待っていたとかではない。ただ何もしてないとヨナが爆発すると思って、本を手にヨナが帰ってくる日、彼はエントランスで本を読んでいたのだ。ページはまったく進んでいないけど。 一方ヨナは一人の指令にてんてこ舞いになっていた。 (多分、こなせていますよね?) 指令中、ユギルがさりげなくフォローしてくれているような、気もする。 最終日はユギルが酒を包んだチョコがあると土産にすすめられて購入してしまった。 (これくらいなら嵩張らないし) 「戻りました。ここで待っていてくれたんですか?」 「ん、まあ、な。そろそろとは聞いていたし。調査はどうだった。しっかりできたか? 周りに迷惑はかけなかったか?」 歯切れが悪いが本をすぐに閉ざして視線を向けてくるのにヨナは呆れた。 「はじめてのおつかいの母親みたいな態度は何なんですか! ユギルさんも何とか言ってください」 ちゃんとしていたぞ、とユギルから含みのある視線を感じてベルトルドはぎくりとする。ばれているな。これは。 「それから、一応これはお土産です。早めにどうぞ」 「む……これは美味そうだな」 ぴーんと尻尾がたっている。機嫌のいいときの証だとヨナは内心、あらと驚いて沸き立つ幸せを表に出さないように努めた。 「喜んで貰えたなら買ってきてよかったですね。では今日は寮に戻ります」 「ん」 手の中の土産を眺めて尻尾を揺らしているベルトルドを遠目にユギルが見て笑っている。 ごぼん、とわざとらしい咳払いをしてベルトルドはそっぽを向いた。 後日、課題をしていないことがばれて大目玉をくらうことになった。 「えっと、お土産、買ってくるね?」 出張にいく『相楽・冬子』が口にすると『メルツェル・アイン』は胸を反らして頷いた。 「行ってらっしゃい。お土産期待していますわ!」 二人とも寂しそうなそぶりはないように見えたのだが……。 三日過ぎた。 冬子は自分の知識を存分に発揮し、優秀なサポートでユギルが誉めるくらいだった。しかし、つい視線が虚空を彷徨う。何かを探すように。 傍らにいる彼女がいない。 (あぁそうだ メルはいないんだっけ) とたんに腹の孔が冷たく、寂しさを覚えた。 (頑張らなきゃ。失敗なんてしたらメルに心配かけちゃう。でも落ち着かない) いつも一緒にいるメルツェルの声や表情が見えないだけで心がどこか彷徨ってしまう。 (困った時 どうしたらいいのか分からない時、メルはいつも私を助けてくれた) 一日たつごとに考えてしまう。 (メルに私は頑張ってきたよって伝えないと、「今度こそ」かえらないと) そこで冬子は自分の思考に疑問を持つ。 (……あれ? 今度こそ?) 胸に浮かぶ感情がなんなのかわからなくて小首を傾げる。とにかく今は帰ろう。 一方のメルツェルは。 一日、二日はパートナーがいないことを心配されても笑顔で。 「トーコはいい子ですから! 最高の仕事をして戻ってきますわ!」 と口にしていたが、三日すぎるとそわそわと落ち着きがなくなった。 七日を迎える朝には 「あの子は大丈夫でしょうか……!? 怪我はしてないかしら、大変なことに巻き込まれてとか!」 ロリクに詰め寄って、今日の昼には戻るといわれても心配のあまり居てもたってもいられない。 (あの子はこの最高傑作たるワタクシのパートナー。大丈夫ですわ。あの子は優秀です……ですけれども! それとこれとは別です!) 一緒にいて、世話をやけないストレスの大爆発である。 そう、これはもう可愛い妹を心配する姉の気持ちである。 が。 冬子の姿を見た瞬間、メルツェルはタックルをしていた。本当は優しく抱擁しようとしたのだが勢いとパワーがちょっと過激に溢れてしまった。 「……!! おかえりなさい」 冬子の胸の中で笑顔を浮かべる。抱きしめた冬子は驚きながら、ふっとあたたかいものがこみあげてくるのを感じた。 「メル 私はかえってきたよ」 痺れるような驚きにメルツェルは口をぱくぱくさせる。 「どうしたの?」 「もう一度! 笑顔を!」 「え? 笑ってた? ……こ、こう?」 ひきつった顔の冬子にメルツェルは大変残念な顔で「……oh」と小さく呟いた。 これではメルツェルが完全に妹で冬子が姉である。――その真実は、まだメルツェルは気が付いていない。
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*** 活躍者 *** |
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