~ プロローグ ~ |
空に浮かぶ太陽が沈み始めた頃――一人の浄化師が街の中を走っていた。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
大切な人が急にいなくなってしまうと心配で心配で、不安でたまらなくなりますよね。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
※アドリブ歓迎します ※料理は下手 ララエルが食べられるものを… そうだ、お粥だったら僕にも作れるかもしれない。 (寝台で) ほら、ララ、お粥だよ。 これなら君も食べやすいかと思っ…! ララ…本当にごめん。 ベリアルを殺す任務だったから 君を危険にさらしたくなかったし、心配をかけたくなかったんだ… バカ! 捨てるわけないだろう! 僕は君をこんなに愛してるのに こんなに心配してるのに…! (ララエルを抱きしめる) お粥…一口でもいい、食べてくれないかな。 |
||||||||
|
||||||||
【目的】 パートナーに御飯を食べて貰う 【行動・心情】 ミリオンさん…家事は確か全く出来なかったはずですが… まさか、この数日誰の手も借りずに居たのでしょうか 数日食べて無いなら胃は弱ってますよね 消化の良い物を作らなきゃ 消化の良い物… 栄養価を考えるとお粥が良いでしょうか ◇メニュー◇ 鶏ささ身の中華粥 鶏のお出汁で炊き粥に 大根、人参、鶏ささ身は柔らかくなるまで煮込んで 人参は臭みをとる為に日本酒で火を通してから 葱は添えて すった生姜を入れて 卵もいれて ミリオンさん 起きましたか? ごめんなさい、色々あって帰れなくて… えっと、裏切る…? 私を必要としてくれる限り 私はミリオンさんとずっと一緒ですよ はい、じゃああーんして下さい |
||||||||
|
||||||||
参ったな 留守を伝え損ねるとは ヨナの奴きっとかんかんだぞ 謝罪でヨナの部屋を訪れノック 出ない 鍵は開いている 居るか?と声をかけながら入る 乱雑に散らかった部屋 衣服に紛れ込むようになりながら倒れているヨナ 一瞬不安がよぎり脈を確認 生きている事に安堵 しかしどうしてこんな事になっているのか ひとまずベッドへ運び寝かせると気が付いた様子 ベルトルドさんっ 今までどこに…! 飛び起きそうな勢いも途中まででふらつき再びベッドに倒れ込む ベ その話をしに来たんだが…それより何があった 部屋はこの有様だしお前は倒れているし ヨ …何も食べていなくて… ベ どうして(強めに言ってしまう ヨ (言い返そうとして止めそっぽ向く 話すのは後回しにし台所へ |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
息を乱しながら街の中を駆け抜け、パートナーの元に戻ってきた浄化師の『ラウル・イースト』。 パートナーに何の連絡もせぬまま数日空けていた彼は今、目の前で寝台の上に寝ている『ララエル・エリーゼ』の顔を眺めていた。 彼女に何も連絡しなかった――それがララエルを不安にさせた。 一日程度ならば問題はないが、数日となると話は別だ。 時間が経つごとに膨れ上がる不安は、徐々にララエルの体を蝕み。 そして最悪の展開に……その不安はついに彼女の許容量を超えてしまった。 何日も何も食べずにラウルのことを待っていた彼女は力尽きて倒れ、先ほど戻ってきたラウルの手によって寝台に寝かされた。 これが今回の流れであり、その原因であるラウルは衰弱しているララエルに何かしてやれることはないか、と考える。 ララエル――呼吸はしているが、意識は朦朧としているようで。 ラウルが戻ってきたことに気づかず、か細い声でその名を呼び続けている。 ――僕が、ちゃんと伝えていれば……! ララエルが弱っているのは、不安にさせてしまったからで。 腹の音が鳴っているのは、空腹だからで。 今ラウルがしなければいけないことは、彼女の為に何か食べられるものを用意することだ。 ――そうだ、お粥だったら僕にも作れるかもしれない! 今すぐどこかの店に行って軽いものでも買えば何とかなるだろうが、それでは反省の気持ちなど一切ない。 悪いのは全て自分なのだ、故に、自分が用意しなければいけない、と。 料理が下手であるラウルは彼なりに必死に考え、そして思いついたのは『お粥』。 胃に優しい食べ物を作るべく、彼は迷うことなく部屋の外に出て行った。 ――――…… 「ララ……ほら、お粥だよ」 少しばかり時間が経った後、何とか無事にお粥を作ることができたラウルは、ララエルが寝ている寝台の横に座った。 「……ラウ、ル……?」 すると、ようやくその声に気が付いたのか、静かに瞼を開けたララエル。その瞳はラウルの顔をしっかりと捉えていた。 「ほら、これなら君でも食べやすいかと思っ――」 作ってきたんだ――と、そう言おうとしてスプーンで掬ったお粥をララエルの口に運ぼうとする、が。 「どこへ……行っていたんで、すか――ッ!」 今にも泣きだしそうな、怒りが籠った表情を浮かべたララエルはそれを払いのけた。 その行動に、ラウルは驚く……しかし。 「私、ラウルが心配で、心配で……っ!」 「……ララ、本当にごめん」 ララエルのその行動の理由がわかったラウル――ただララエルに謝るだけ。それしかすることは許されていないのだから。 なにせ悪いのは自分だ、責められるのは自分だ。ララエルの怒りは正しいものだ。 今の状態で怒るのはとても辛いだろう、けれど。 「僕が数日の間空けていたのは――ベリアルを殺す任務、だったから」 今正直に話さなければ、一体いつ話すのかと。 申し訳ない気持ちでいっぱいのラウルは、正直に告白した。 その言葉に、内容に、ララエルはまるで信じられないものを見たかのような顔になった。 「ベリアルを殺す……任務……? 何故ですか……?」 「君を危険にさらしたくなかったし、心配をかけたくなかったんだ」 だから――と、その続きを言おうとするラウルに、だが目に涙をためたララエルの言葉が先に行く。 「どうして……私を連れて行ってくれなかったんですか!?」 何故だ、と。どうしてだ、と。 弱弱しくも、だが圧倒されそうなほどの勢いでラウルの襟元を握った彼女は訴えかけるように彼に迫った。 「なんで、一人で行ったんですか? ベリアルを殺す時、ラウルはいつもおかしくなるじゃないですか……なんで私を連れて行ってくれなかったんですか!?」 「ララ……それは――」 「それとも、私なんかいらないってことですか……!?」 何も知らせずに一人でベリアルを殺しに行った――それは一人で十分だということ。 一人で問題ないのなら、パートナーは不必要なわけで。 パートナーであるララエルは、ラウルにはもう用済みだということだ。 と、そう考え、その答えにたどり着いたララエルの顔は徐々に絶望に染まっていく。 「私がいらなくなったから、ラウルは一人で行った……」 「ララ……それは――」 それは違う……そう言おうとした彼に、だが! 「私はいつでもラウルを守りたいのに――ラウルも私を捨てるんですか!?」 そのようなことを聞く耳は持たない! そう……大切に想っていたのは自分だけだった。 ラウルは自分のことなどどうでもよかったのだ。 怒り、悲しみ、苦しみ……様々な負の感情と共にその考えが言葉となってララエルの口から悲鳴と化して部屋中に飛びまわる。 ――しかし、 「バカ! 捨てるわけないだろう!」 そんなことはあるわけがない。 それは考えすぎだと、そう言わんばかりにラウルはララエルの体を抱きしめた。 「僕は君をこんなに愛しているのに、こんなに心配しているのに……!」 抱きしめられたララエル――何が起きたのか理解できずに、思考が停止した。 ――愛しているからこそ、危険にさらすわけにはいかない。 ララエルの身に危険が迫ったことを想像するだけで耐えらないんだ! そう思っているものの、しかし彼女の中で膨れ上がった不安が彼女を悪い方向へ考えさせた。 何もかも、全ては自分のせい――それはわかっている。 だが、それでも……。 「お願いだ。お粥……一口だけでも良い、食べてくれないかな」 このままララエルが弱っている姿を黙って見てはいられない。 そう訴えたラウルはララエルから離れ、傍に置いたお粥が入った器を手に取り、 「さあ、ララ……」 再び、彼女の口元に近づけた。 数日間何も口にしていないララエル――差し出されたお粥を恐る恐る口に含んだ。 「……おい、しい……」 それは、とても暖かく、優しいお粥だった。 ラウルの気持ち、想いが込められたそのお粥はララエルの涙腺を崩壊させ。 彼女の目から、大粒の涙を流させる。 「ララ、本当に……ごめん」 「うん……うん……っ」 想いは伝わった、言葉にせずともわかった。 だがそれでも溢れる涙は止まることを知らず、ララエルは涙を流しながらもラウルにお粥を食べさせてもらった。 食べ終わっても尚、その涙を流し続けて……。 ■■■ 「音無様が帰ってこない……」 部屋の中でそう呟いたのは、浄化師の『ミリオン・アインカノック』。 静かな部屋の中には彼一人だけで。 パートナーである『音無・亜咲』はどこに行ったのかと訊けば、わからないの一言だ。 なにせ何も告げずに彼女はどこかに消えてしまったのだから。 しかしまあ、彼女も大人なのだ。一人の時間ぐらいほしいはずだと。 そう思って帰りを待つものの、丸一日経っても戻ってこない。 故にまさか――と、ミリオンは考えた。 「まさか、音無様も我を裏切る……のか?」 いや、違う……音無様以外は信用ならないが、音無様だけは我を裏切らない。 でもまさか……いや、そんな……しかし――と。 絶望しては否定して、けれどまた考えての繰り返しをするミリオンは、だが空腹には勝てないのか、食事の用意を始めた。 しかしながら彼は家事全般が壊滅的。一人では満足に家事をすることは叶わない……でも自分でできることは自分でしなければと。 用意した栄養価の高いお茶の葉をご飯の上にかけようとする……が。 「――あ」 うっかりそれをひっくり返してしまい、お茶の葉とご飯は床の上に散らばってしまった。 仕方ない――と、そう判断した彼は同じものを用意するが、惨劇は再び起こった。 ――――…… 「ミリオンさん……確か家事は全くできなかったはずですか……」 数日後、私事から戻ってきた音無は真っ直ぐにパートナーであるミリオンの元に向かった、が。 「まさか、この数日間誰の手も借りずにいたのでしょうか……」 そこにあったのは、ミリオンの仕業なのか、お茶の葉とご飯がぶちまけられた部屋の光景と。 その床の上で倒れていたミリオンの姿だ。 不安から来た極限の疲労は彼の体の自由を奪っていて。 更には数日間何も食べなかったのか、彼の腹からは凄まじい音が鳴っていた。 それはまるで、ミリオンの苦悩を伝えるかのように。 その姿を見た音無はすぐさま彼を寝台の上に寝かせて、一体どうすればいいのかと考えていた。 「……数日間、何も食べていないのなら、胃は弱っていますよね」 寝台の上で鳴り続けている腹の音を聴く音無は、 「でしたら――まずは食事の用意をしないと。消化の良い食べ物を作らなきゃ」 胃に優しい食べ物を作るべく、部屋の外に出た。 台所に立った音無――彼女が今作ろうとしているのは栄養価を考えてのお粥で。 けれど美味しいと思える――鶏ささみを使った『異国風の粥』だ。 必要な材料を用意した彼女はすぐに調理を始める。 ――鶏のお出汁で炊き粥に。 大根、人参、鶏ささみは柔らかくなるまで煮込んで。 人参は臭みを取る為に、ニホン酒で火を通してから。 葱は添えて、すった生姜を入れて、卵を入れて……と。 黙々と、だが無駄のない料理が終わるのにはさほど時間はかからない。 ――――…… あっという間に調理を終えてお粥を運んできた音無は部屋の中に入る。 「あ――ミリオンさん、起きましたか?」 「音無……さま……?」 視線の先には寝台の上で、だが少しだけ楽になったのか、目を開けて訪問者の顔を見るミリオンの姿が。 久しぶりに音無の声を聴いたことで彼は僅かに力を取り戻したらしい、だが。 それでも立ち上がるまでとはいかず、ミリオンは横になったままだ。 彼の傍にお粥を運んできた音無は座る。 「……ごめんなさい、色々あって帰れなくて…………」 座るや否や、音無は今回の件についての謝罪を口にした。 そう、これは音無がミリオンに伝えていれば――きちんと伝えていれば起きなかった問題だ。 原因は全て自分に……だから謝るのだ。 言い訳などするわけがない、そんなものは無用だ。 謝る以外に選択肢はない――しかし、許してくれるだろうか。 怒っているだろう。ならばその怒りをぶつけてほしい。 それがどんな内容であれ、自分は喜んで受ける。拒否権はないのだから。 「――――」 そのことを察したのか、ミリオンの口がゆっくりと開く。 その口から一体どのような言葉が、内容が出てくるのか、覚悟を決める音無に、だが。 「――音無様、帰ってくると信じてましたよ」 「……え?」 「貴女は、我を裏切らないですよね?」 「えっと……裏切る……?」 ミリオンの口から出た言葉は怒りの言葉でもなく、罰の内容でもなく。 ただただ、音無に問う言葉だった。 むろん、不意を突かれた……とは少し違うが、予想外の言葉に音無の思考は追い付くことができない。 彼は一体何を言っているのだろうかと、そのような表情を浮かべている。 「――我には、音無様が必要なのです」 その表情を見たミリオンは、その問いの理由を語る。 「貴女がいなくなったら、我はもう誰を信じていいのか、わからなくなる。だから我は、貴女に裏切られるのが怖いのです……」 ミリオンが抱いていた想い――それは、音無に捨てられるのではないかという不安だ。 人間不信に陥った彼が唯一人心を開いたのは音無だけ。 その彼女に裏切られでもすれば、その時はもう何もかもが信じられなくなる。 衰弱しながらも、だが必死に音無を求めるその瞳に、彼女は応える。 「私は、ミリオンさんとずっと一緒ですよ」 笑顔で、絶対に見捨てはしないと誓うように。 「貴方が、私を必要としてくれる限り」 「音無、様……」 嗚呼、なんてことはない。自分はただ考えすぎていただけに過ぎないのかと。 そう思う表情になったミリオンに、音無はスプーンでお粥を掬って彼の口に近づける。 「はい、じゃああーんしてください」 「え、あ、あーん……?」 「あーん、してください」 「あ、あーん……?」 自力で動くことは困難なミリオンに、それを拒む術はあらず。 音無に食べさせてもらうことにたじたじになりながらも、だがゆっくりと口を開けてスプーンを受け入れた。 すると久方ぶりの食事に彼は嬉しそうな表情に。 その顔を見た音無は微笑み、一口、また一口とミリオンに食べさせていく。 そして完食した後、音無は。 「さて――それじゃあ次はこの部屋を掃除しますね」 「あ、はは……すみません、音無様」 「大丈夫ですよ。慣れてますから」 凄まじい光景となった部屋の掃除を始めた。 その姿を見るミリオンは、申し訳なさそうな表情に。 先ほどまでとは立場が逆転してしまった二人――だがそこには楽しそうな笑いがあった。 ■■■ ――参ったな、留守を伝え損ねるとは。 私用が終わり、パートナーの元に走って戻る『ベルトルド・レーヴェ』。 数日の間留守にする……と、己のパートナーである『ヨナ・ミューエ』に伝えたつもり……だったが。 ――ヨナの奴、きっとかんかんだぞ。 用事が終わった瞬間に伝えていないことを思い出し、全速力で街の中を駆けていた。 しかし流石は浄化師といったところか、彼はすぐにヨナの部屋の前にたどり着いた。 謝罪をすべく、ヨナの部屋に訪れたベルトルドは扉をノックする。 ……だが扉は開かない。返事も聞こえない。 もしかしてどこかに行っているのだろうか、と思った彼は無意識にドアノブを握る。 すると鍵が開いていたのか、扉はあっさりと開いた。 聞こえていないだけで、実は部屋の中にいるのかと思った彼は、 「ヨナ、いるか?」 と、声をかけながら中に入る――すると。 「ッ!?」 目に飛び込んできたのは、乱雑に散らかった部屋と。 衣服の中に紛れ込むようになりながら倒れている己のパートナーであるヨナの姿だった。 その姿を見たベルトルドは一瞬頭の中で不安がよぎり、すぐさまヨナに近づいて脈を確認する。 「……よかった」 脈を確かめるとしっかりと動いているのがわかる。 どうやら命に別状はないようで、そのことにベルトルドは安堵するものの、しかし酷く衰弱しているらしい。 一体何があったのか、どうしてこんなことになっているのか、と訊きたいことは色々あるが、ひとまずはベッドに寝かせるのが先だと。 ヨナを抱き上げてベッドの上に寝かせると、その僅かな衝撃で気が付いたのか、ヨナの瞳がベルトルドの顔を捉える。 「お、気が付い――」 意識が戻ったヨナに、ベルトルドは声をかける……が。 「ッ! ベルトルドさんっ、今までどこに……ッ!!」 飛び起きそうな勢いで、ヨナはベルトルドに掴みかかる。 しかしそれは途中までで、衰弱している彼女はふらつきながらも再びベッドに倒れ込んだ。 「一体……どこに――」 「その話をしに来たんだが……それより一体何があった? 部屋はこの有様だし、お前は倒れているし……話してくれないとわからないぞ」 「……何も、食べてなくて……」 何も食べていない――それはまさか、俺が街から離れた数日前からか!? なんでそんな馬鹿なことを! 「……どうしてだ?」 あまりにも馬鹿馬鹿しい行いをしたヨナに呆れながらも、だが同時に怒りが沸いたベルトルドは強めに訊く。 「……っ」 それに言い返そうとしたのか、しかしヨナは止めてそっぽを向いてしまった。 ――これは、何か理由があるな。 でも今は何も話してくれなさそうだし、先に食事でも作るか。 ヨナの腹から鳴る空腹の音を聴くベルトルドは、話すことを後回しにして台所に向かった。 ――――…… 「待たせたな、ヨナ」 しばらくして、台所から戻ってきた彼の手にはじゃがいもをすりおろしてバターを加えた『ポタージュスープ』が入った器が。 数日の間、何も食べていないとなると胃が弱っているはずで。 そんな状態で重いものを食べても逆効果になるわけで。 故に、彼は胃に優しいスープを作ってきたのだ。 ヨナの傍に座ったベルトルドはそのスープを匙で掬って彼女に飲ませる。 一口……また一口、と。ヨナがゆっくりとスープを飲み干すのを見守り。 少しして、スープを飲み終えたヨナに、ベルトルドは話の続きをする……と。 「ベルトルドさん、さっき……『どうして?』って言いましたよね?」 「あ、ああ、そう言ったな」 「それは私の台詞です。……どうして、どうしてっ!」 どうして、何も言わずにどこかに行ったんですか――ッ! 泣き叫ぶようにベルトルドにそう言ったヨナに、ベルトルドは悟った。 ――ああ、そうか。これは全部、俺が悪かっただけのことじゃないか。 軽く考えていた、黙っていなくなるとヨナがどうなるのかを。 そのことに気づかずに、ヨナのことを怒ろうとするなんて……馬鹿なのは俺の方じゃないか。 「……そうだったな。数日空けることを言い忘れていた。すまない」 ヨナが衰弱していたのは自分のせいだと、それに気が付いたベルトルドは謝罪の言葉を言う。 「突然いなくなって、攫われたんじゃないかって。それか教団を去って、どこかへ行ってしまったのかと、心配で心配で……」 「そんなことをするわけが――」 ない――と言い切る前に、ヨナの言葉がベルトルドを攻める。 「と・に・か・く! 私は、怒ってるんです!」 怒る……ああ、それは当然のことだろう。悪いのは全て自分なのだから。一から十まで全て自分が悪いのだから。 「ああ、悪かった。この通りだ」 だからこそ、全面降伏と言わんばかりに白旗を揚げる。 「で、だ。俺はどうすれば許して貰えるんだ?」 「え、あ……そ、そうですね……」 しかし不意を突かれたのか、予想外の対応にヨナは戸惑う。 けれどまあ……なるほど、そう来たか。ならば何をしてもらおうか――と、色々なことを考えるヨナは一呼吸おいて逡巡し、腕を広げて。 「ん」 そう言って促す。 「……?」 しかしながら、たったそれだけでは一体何をしてほしいのかがわからない。 理解不能という表情をするベルトルドに、ヨナは赤面しながら恥ずかしそうに言う。 「ハグ……ですよ。……『ただいま』の」 ――ああ、そういうことか。 ようやくヨナの意図を理解したベルトルドは軽く口角を上げ、ヨナの背中に手を回して抱きしめた。 「ただいま、ヨナ」 「……心配、したんですからね」 「ああ、本当にすまなかった」 抱きしめられたヨナ――目を閉じて嬉しそうな表情を浮かべながら、彼の背中に手を回して抱き寄せる。 「これからは気を付ける」 「ん、では許します」 先ほどまであった不安や心配、怒りや悲しみはどこかに行ってしまった――二人の間にあるのは互いを想う愛おしさだけ。 互いの暖かさ、優しい気持ちをもっと感じたい、と二人は更に互いを抱きしめる。 暖かなその雰囲気に、ひりついた空気は徐々に解け始め。 しかしそれでも二人は長く、強く……抱き合い続けていた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||
|
| ||
[6] ヨナ・ミューエ 2019/07/07-12:05
| ||
[5] ララエル・エリーゼ 2019/07/07-00:05
| ||
[4] ラウル・イースト 2019/07/05-11:29
| ||
[3] 音無・亜咲 2019/07/05-02:48
| ||
[2] ラウル・イースト 2019/07/04-17:42
|