喧嘩の仲直りは自分から
とても簡単 | すべて
3/8名
喧嘩の仲直りは自分から 情報
担当 虚像一心 GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 ほんの少し
相談期間 4 日
公開日 2019-09-12 00:00:00
出発日 2019-09-19 00:00:00
帰還日 2019-09-20



~ プロローグ ~

 雲一つなく、青空が一面に広がり、太陽が地上を明るく照らす何とも気持ちが良い日。
 こういう日は意味がなくとも外に出たくなる気分になってしまう。
 ……だが。
 賑やかな街の中で、一つだけ雰囲気が違うものがあった。
 それは一人の浄化師の姿――一体どのように雰囲気が違うのかと訊かれれば、それは。
「…………」
 怒っている、と答えるしかない。
 そう、異様な雰囲気を醸し出している浄化師は今現在、怒っているのだ。それも物凄く。
 一体何があった? ――喧嘩したからだ。自分のパートナーと。
 何故喧嘩した? ――些細なことがきっかけだ。
 ――思い返せば、喧嘩のきっかけは本当にどうでも良いことだった。
 本当にどうでも良いこと……だから怒っているのはそこではない。
 浄化師が怒っているのは、相手の言い分に腹が立ったからだ。
 最初はいつも通りの会話だった。本当にどうでも良いことを笑いあっていた。
 だが何が引き金になったのか、両者は自分の言い分を押し付け始めた。
 向こうも自分も、言い方が気に食わなかったのだろう。怒りを覚え、何度も言い返し始めた。
 そうして徐々に興奮していき、最後には激怒するまでになり、二人は喧嘩別れをした――顔も見たくない、と。
 故に浄化師はこうして街の中を怒りながら歩いているのだ。
 しかしまあ、高まった興奮は冷めるしかないもので。
 外の空気で徐々に頭が冷え、冷静になった浄化師は何故喧嘩などしてしまったのか、と深いため息を吐いた。
 もし、相手の怒りがまだ収まっていなかったら。
 もし、こちらの怒りにまた火がついてしまったら。
 もし、このまま喧嘩を続けてしまったら。
 もしかしたら……もう二度とパートナーと組むことがないのだろうか、と近くにあった椅子に座り、自問自答を始める。
 ――確かにあの時は顔も見たくない、そう思った、しかし。
 それがずっと続けばどうだ? そんなものは嫌だろう?
 今まで共に行動し、危険な目に遭って、それでも互いを助けてきた、なのに!
 それがこんなどうでも良いことで壊れてしまっても良いのか!?
 自分はそれを望んでいるのか? 本当に? ――否、そんなわけないッ!
 自分とパートナーは今までも、これからもずっと一緒にいる。何があってもだ。
 なら……自分がするべきことはわかるはず。
 それは――先に自分が謝ることだ。
 たとえ自分が悪くなかったとしても、相手に誠心誠意謝れば、元の関係に戻れるはずだ。
 だから、さあ……今すぐ謝りに行こう――っ!


~ 解説 ~

●目的
 喧嘩別れしてしまったパートナーに謝りましょう。

●プランにほしいもの
 謝罪ですから、言葉だけではなく何かしらのことをした方が良いかもしれません。

・謝る相手を『祓魔人』『喰人』のどちらにするか。
 祓魔人を選択すれば、喰人中心で物語が描写され、
 喰人を選択すれば、祓魔人中心で物語が描写されます。

・喧嘩のきっかけが何なのか。
 一体何が原因で喧嘩をしたのか、具体的にお願いします。
 例えば、『よそ見をしていて注意をしたら……』とか『あの時こうしていれば……』など。
 何が原因かを明白にしたうえで『パートナーにこう言われ、言い返した』も記載いただければと思います。

・謝罪と共に何をするか。
 プレゼント、食事に誘う……などなど。
 少しイヤらしいかもですが、謝罪していることを相手に伝えましょう。

※今回はどちらが悪いか、ではありません。
 どっちもどっち、どちらも悪いのです。
 ですので、謝られた方もちゃんと自分も悪かったと伝えたうえで、しっかりと謝りましょう。


~ ゲームマスターより ~

大切な人と喧嘩した後、冷静になった途端にすごく落ち込みますよね。
それが些細なことがきっかけであればあるほど……一度は経験したことがあるでしょうか。
自分が悪いのに、と謎のプライドが邪魔していないでしょうか?

――そんな無駄なプライドは捨てて、大切な人との日常を取り戻しましょう。
仲直りし、もう一度素敵な日々を過ごしましょう!
素敵な日常を、どうか捨てないように!!





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ラウル・イースト ララエル・エリーゼ
男性 / 人間 / 悪魔祓い 女性 / アンデッド / 人形遣い
※アドリブ歓迎します
※謝るほう

…そんな大人っぽい服、ララには似合わないよ。
大体胸元開きすぎだし、スカートは短すぎだし、
君はまだ子供なんだから…って、どこへ行くのさ、ララエル!

(少し言い過ぎたかな…大体、ララにキスをして
あんなこと(シチュエーションノベル)までしたのは僕だし…)

(帰ってきたララエルに対し片膝をつく)
ララエル…さっきはあんな事言ってごめん。
この前、僕が君の騎士になって、守るって言ったよね。
これはその誓いだよ(ララエルにアクアマリンのブレスレットをはめる)
今度こそ騎士として君の心まで守る。
それから…君の事は僕が奪うから。
モナ・レストレンジ ルイス・ギルバート
女性 / 人間 / 悪魔祓い 男性 / ヴァンピール / 占星術師
謝る相手: 祓魔人

※喰人視点

【行動】

経緯)

レストレンジに新作のケーキが食べたいから一緒にカフェに行かないかと誘われる。

ル:「任務じゃないんだから1人で行って来たら。」

モ:「ルイは我と一緒に行くのは嫌なのか?」

ル:「そういう訳じゃないけど僕甘い物はあまり好きじゃないから。」

モ:「だったらそう言えばいいのに。コーヒーだけでも飲みに行かない?」

ル:「しつこいな1人で行けばいいじゃん。」

モ:「パートナーなんだからもっとお互いの話をしたいのにルイって全然自分の話してくれないよね。」

ル:「レストレンジには関係ないから。」


モ:「ルイっていつもそうだよね。関係ないからってそればっかり。我ってそんなに信用ない?」
レミネ・ビアズリー ティーノ・ジラルディ
女性 / 人間 / 人形遣い 男性 / 人間 / 断罪者
喰人が謝る

【台詞】
テ:レミネっさっきからすまなかったと謝っているだろう?
君と拗れるのは嫌だ。…人形なんて言って本当すまない…

レ:……。私、あの子(片割れ)と同じじゃないと…いや、で。そうじゃないのは私じゃないみたいで。ダメって、分かってるけど、
あなたに人形みたいって言われて、驚いて。…それで、あんな態度に…
ご、ごめんなさい…!

テ:そう、だったのか…。何も知らないのに人形だなんて…本当に悪かった。話してくれてありがとう
…何か食べたか?まだなら食事に行かないか
レ:…うん。ありがと…行く
テ:良かった。なら、行こうか
レ:ま、待って、ティーノ…!(先を行く相方を追う
テ:(ん?今…名前を…。レミネが?)


~ リザルトノベル ~

 教団内を一人で歩いている祓魔人『ラウル・イースト』。
 特にこれといった指令がないのでこれからどうしようかと思う彼に、ふと背後から走ってくる足音が聞こえた。
 別の浄化師が知り合い、またはパートナーを見つけて駆け寄っているか……いや、その足音は自分に向かって来ている。
 それが一体誰なのか、気になった彼は後ろに振り返る――すると。
「ラウル、見てください! 新しいお洋服を買ったんです!」
 笑みを浮かべ、そう言いながらパートナーの『ララエル・エリーゼ』がやってきた。
 どうやら彼女は新しい服をいの一番にラウルに見せたかったようで、走ってきたらしい。
 なるほど、その気持ちはとても嬉しいものだ。
「どうですか?」
 嬉しそうにその場で一周するララエルに、だがラウルはこう答える。
「……そんな大人っぽい服、ララには似合わないよ」
 一刀両断――そう思える言葉がララエルの体を停止させた。
 そも、先ほどララエルはこう訊いてきた――『どうですか?』と。
 それはつまり、その服が自分に似合っているかどうかを訊いたもの。
 気持ちと感想はまた違うものだ――似合うか似合わないか、どちらかを答えろと言われれば、ラウルが答えるのは後者。
 正直に言った感想にララエルは言葉を失うが、ラウルはそれに気づかずにその理由を述べる。
「大体その服、胸元開きすぎだし」
「…………」
「スカートは短すぎだし」
「………………」
 流れるようにララエルが選んだ服を否定するラウルに、ララエルは俯いた。
 胸元が開きすぎ――それはいけないことなのだろうか?
 スカートが短い――それは何が悪いのだろうか?
 確かに今の自分にはまだ早いかもしれない、だがしかし。
 それをパートナーであり、王子様であり、騎士様であり。
 大好きで、大切な人であるラウルに真っ先に見せようと胸を躍らせて。
 どういう反応をしてくれるだろうか、と。喜んでくれるだろうか、と楽しみにしていたのに。
「そもそも君はまだ子供なんだから――」
「……そこまで言わなくても良いじゃないですか……」
 それを否定するのが、『まだ子供だから』では納得できるわけない!
「……私は、ラウルが私を欲しいって言ってくれたから……」
 ――東方の島国ニホンのエドにて言ってくれたあの言葉は一体なんだった?
「それがどういう意味か知りたくて……大人っぽくしてみたのに……」
 ――訊いてもラウルは教えてくれなかった。だから自分でなりに考え、出た答えが自分を一人の女性として欲しいのではないかと、そう思った。
 それを確かめるためにこの服を買った……きっと、喜んでくれるだろうと。
 なのに、ラウルから見れば、頑張った自分は背伸びをした子供でしかないのだと!
 そんなの、あんまりじゃないですか――ッ!
「もういいですっ! ラウルなんて大嫌い!」
「ッ――どこへ行くのさ、ララエル!」
 湧き上がる悲しみを抑えきれず、ララエルは走って教団から飛び出して行った。
 ラウルは彼女を止めようと手を伸ばすが、反応が遅れたために、その手は何も掴むことはなかった。
(……少し、言い過ぎたかな)
 ラウルは考える――何故そこまでして大人の女性として見られたいのかを。
 ……いいや、それは考えるまでもない。
(大体、ララにキスをしてあんなことまでしたのは僕だし……)
 自分の言動が原因なのだ。
 ――それは、クリスマスの時。
 ケーキを持って嬉しそうにラウルの部屋に入ってきたララエルを、彼はベッドに運んで覆いかぶさった。
 何が起きたのか、困惑するララエルに彼は言った――『いつだって我慢できるわけない』と。
 そして欲望の赴くままに彼女を求める獣と化した彼は、だが彼女の小さな花のような笑みを見たことで正気に戻り、その先の展開に進むことなくクリスマスを、一緒にケーキを食べることができた。
 だが、彼女を求めたのは事実で。
 それは、ララエルを一人の女性として見たということ。
 彼女はその想いに応えようとしただけのこと。それをラウルは拒絶するかのような言葉を言ったのだ。
 ならば一体どうすればいいのか、そんなものは簡単だ。
 考えを行動に移すべく、ラウルは足を動かす。

 ――――…………
「ラウルなんて……ラウルなんて……」
 教団から走って飛び出したララエルは街を歩きながらパートナーのことを呟く。
 せっかく勇気を出してこの服を買ったのに、ラウルはそれが気に入らなかったらしい。
 子供なんだから、とそう言って。
 では、あの時言った言葉は一体どういう意味だったのか。
 あの日、彼がした行動は何だったのだろうか。自分を弄んでいただけなのか。
 そう考えると不満、怒り、悲しみが更に沸いてくる……でも。
(ラウル……凄く傷ついた顔してた……)
 大嫌い――自分がそう言った時の彼の顔は、とても傷ついていたように見えた。
 傷ついた自分は彼も傷つけてしまった、それは。
(私も、悪かったのかな……)
 そう考えたララエルは足を止め、後ろに振り返り、来た道を戻り始めた。
 大好きな彼に、自分も悪かったと言うために。

 ――――…………
 教団に戻ってきたララエルは、先ほどと同じ場所にいたラウルに向かって駆け寄る。
 その姿に気づいたラウルに、彼女は話しやすい位置で立ち止まり、
「あの、ラウル……私、言い過ぎ――」
 自分が悪かったと謝罪をしようとする、が。
「ララエル……さっきはあんなこと言ってごめん」
 先に謝罪の言葉を言ったのはラウル――片膝をついて謝罪をした。
 思わぬ展開にララエルは一瞬動きが止まるが、ラウルは止まらない。
「――この前、僕が君の騎士になって守るって言ったよね」
「え、あ……」
「これは、その誓い。証だよ」
 そう言いながら、ラウルは隠し持っていたアクアマリンのブレスレットを取り出して彼女にはめた。
「……これって……?」
「今度こそ、騎士として君の心まで守る」
 片膝をつく――それは相手を一生守り抜くという誠意を表すもの。
 その言葉を、その姿勢をする彼のどこに非があるだろうか。感謝こそすれ、文句などあるわけがない。
「ラウル、ありがとうございます……そして、私の方こそごめんなさい」
 嬉しさのあまりに涙を数滴流すララエル、だが。
「――それから」
 ラウルの言葉はまだ続く。
「君のことは、僕が奪うから」
「えっ? えっ……? それって……!?」
 立ち上がり、囁くようにそう言ったラウルの言葉に、ララエルは赤面する。
 それは心も体も、自分のすべてを奪うことだと、そう捉えたから……。

  ■■■

 ほんの数十分前、ある出来事が起きた。
 それは浄化師の『モナ・レストレンジ』と『ルイス・ギルバート』のやり取り。
 突然、モナが新作のケーキが食べたいからカフェに行かないかと、ルイスにそう言ったことが始まりだ。
 新作のケーキ……一体どんな味がするのだろうかと、楽しそうな顔をするモナに、だがルイスはこう返した。
『任務じゃないんだから一人で行って来たら?』
 ――浄化師が共に行動をする、それは主に指令をこなす時だ。そうしなければできるものもできない。
 だがしかし、別に指令の時以外であっても共に行動をするのは何も問題はない。
 でも、そう答えるということは。
『ルイは我と一緒に行くのが嫌なのか?』
 一緒に行動をするのが嫌だということだろう。
 今まで一緒に行動していた時、ルイスは苦痛だったのだろうかと。
 そう思うモナに、ルイスはこう説明する。
『そういうわけじゃないけど、僕、甘い物はあまり好きじゃないから』
『だったらそう言えばいいのに。じゃあ、コーヒーだけでも飲みに行かない?』
 甘い物が苦手――なら別の物を頼めばいいじゃないかと、モナはそう提案した。
 嫌ってはいない、ただ甘い物が苦手なだけ。
 ならばこれで何も問題はない、とまるでチェックメイトをかけたかのように。
 ――だが。
『しつこいな、一人で行けばいいじゃん』
 ルイスはそれでも頑なに行こうとはしない。意地になっているのかもしれないが、そこまで一緒に行きたくないのか、と少し不満そうなモナ。
『パートナーなんだからもっとお互いの話をしたいのに、ルイって全然自分の話をしてくれないよね』
 それじゃあ全然相手のことがわからない――そう言ったモナに、ルイスは一言。
『レストレンジには関係ないから』
『――――っ』
 その一言を言った瞬間、モナの雰囲気が変わった。
 楽しそうにカフェに誘う彼女の姿は、もうどこにもいない。その場から消えてしまった。
 ……それもそうだろう。
 関係ない――共に行動をし、危ない目に遭い、助け合ったパートナーからそう言われたのだから。
 それは彼女にとっては何よりも傷ついた言葉だろう、一瞬で悲しい気持ちでいっぱいになったことだろう。
『ルイっていつもそうだよね、関係ないからってそればかり。我ってそんなに信用ない?』
 傷ついたことで辛そうな表情になったモナはそう問うた。
 相手を信用していたのは自分だけなのかと。
 ルイはまだ自分に心を開いてくれていないのかと。
 今までの時間は一体何だったのか、と。
 その言葉にルイスは何かを言おうとした――だが、モナはルイスの言葉を聞く前に彼に背を向けてどこかに行ってしまった。
 ――これが、先ほど起きた出来事の内容。
 そして今現在――。

(また本心が言えずに思ってもないことを言ってしまった……)
 ルイスは一人、椅子に座って落ち込んでいた。
 先ほどモナに言った言葉――あれは決して自分の本心から出た言葉ではない。
 できることなら、彼女と一緒にカフェに行きたかった。
 一緒に食事をし、色んな話をして楽しく過ごしたい気持ちはあった。
 だが――それはできなかった。怖かったから。
 もし自分が彼女と一緒にカフェに行ったとしよう。そこで一緒に食事しながら他愛の話をするだろう。
 最近の出来事や冗談、好きなものやその他のことを笑いながら話をするだろう。もちろん、流れによっては相手が知らない自分の過去の話も。
 ――それが怖いのだ。
 自分の過去を知られれば、彼女に受け入れてもらえなくなるかもしれない。
 自分が元サクリファイスの信者だと。彼女の村を滅ぼした相手であると。
 それを彼女が知れば一体どう思うか、どういう反応をするか……それらを予想することは容易い。
 少なくとも今は思う――きっと彼女は自分を拒絶するだろう。
 家族を、友達を……村の皆を殺し、滅ぼした憎き相手が目の前にいるのだ、そうならないはずがない。
 だがそうなってしまえば、自分がこの世界に生きている意味がなくなってしまう。
 モナ・レストレンジに嫌われる――それが何よりも……怖い。
 そうならないためにも極力自分のことを話す機会は少ない方が良い――そう思う臆病者故の言葉。
 しかしそれは、逆に彼女を傷つけることになってしまった。
 それでは一体何のために断ったのか、その意味が全くない。逆に恐れていたことに近づいているではないか。
 ……いや、まだ関係を修復することは可能だ。
 そも、今回の原因は自分の素っ気ない態度、言葉にある。
 ならばまずはそれらを謝ることから始めなければいけない。
(でも……どうやって謝ればいいんだ……)
 そう考えたものの、どうすればモナに許してもらえるのか、それがわからない。
 考えに考え、思考を最大限にまで働かせ――そして一つの案が浮かんだ。
 その案は――……。

 ――――…………
「――レストレンジ」
「……ルイ」
 先ほどの非を謝るためにモナを探したルイス。
 ようやく見つけて彼女の前に現れたが、モナはルイスを見た途端、視線を逸らした。
 ……よほど傷ついているのだろう。
「その……関係ないとか、しつこいとか言ってごめん」
 口を開かないモナに、これ幸いとルイスは謝罪の言葉を口にする。
「僕が自分の話をしないのは、レストレンジに受け入れてもらえないんじゃないかと思って……その、臆病な僕を許してほしい」
「…………」
 視線を逸らしたままの彼女は応えない。
 そこで彼は先ほどの案を実行する。
「一緒に行けなかったお詫びに、レストレンジが食べたかったケーキも買ってきたんだ」
 ルイスの考え――それはモナが食べたがっていたケーキを買ってくることだ。
 だがしかし、彼女はただそのケーキが食べたかったわけではない。自分と一緒に食べることを楽しみにしていたはずだ。
 だから、これはあまり効果がないのはわかっている。
(本当は一緒に食べに行こうと言えたら良かったんだろうけど)
 けれど、臆病だから言えない――これが今できる限界なのだ。
 しかしそれでも受け取ってくれなかったら、許してくれなかったら。
 最悪の展開を予想し、内心怯えるルイスに、
「――どんな過去があったとしても、受け入れるって決めたから」
 逸らした視線をゆっくりとルイスに向けながら、モナは言う。
「それに、我が知りたいのは好きな物とか嫌いな物とか、もっと些細なことだから」
 知られたくないことは訊かない――そう告げる瞳を向けて。
 自分も申し訳なかった、とモナは頭を下げてルイスに謝った。

  ■■■

 申し訳なさそうな態度で、浄化師の『ティーノ・ジラルディ』は謝罪の言葉を口にしていた。
 その相手は彼のパートナーである『レミネ・ビアズリー』だ。
「レミネ、さっきからすまなかったと謝っているだろう? 君と拗れるのは嫌なんだ」
 一体何故彼が謝っているのか。
 彼は彼女に何をしたのか、謝罪をする原因は先ほど彼が言った言葉にある。
「……人形なんて言って、本当にすまない……」

 ――レミネ・ビアズリー、彼女には双子の姉妹がいる。しかし、どちらが姉か妹かはわかっていない。
 そんなレミネは、双子の片割れとお揃いであることを好む。――全てにおいて。
 それは言い方を変えれば、双子の片割れと『なんでも』同じでなければ嫌ということ。
 ……いや、彼女の場合は言い方を変えた方がしっくりくる。
 片割れがキラキラしたものやメイク道具を集めれば、自分も同じようにする。
 片割れがこうすれば自分もこうする――それがレミネの行動。
 お揃いでなければ、それは彼女にとってはストレスでしかない。
 故に、今日の彼女は片割れの好みであるクールな装いで身を包んでいた。
 だがしかし、幼い頃から彼女を……二人を知っているティーノはすぐにその理由がわかる。それは片割れの装いだと。
『今日はクールな感じだな』
 今日も双子は同じ装い……そう思うティーノに、レミネはこう返した。
『あの子と同じじゃなきゃ嫌だから』
 あの子――レミネは片割れのことをそう呼んでいた。
「……、私、あの子と同じじゃないと……いや、で」
「…………」
「そうじゃないのは私じゃないみたいで……ダメって、わかっているけど……」
「――レミネ」
「あなたに人形みたいって言われて、驚いて……それであんな態度に……」

 ――常に片割れを模倣するレミネに、ティーノは思わずある言葉を口にした。
『お前は人形か? まるで意思が感じられない』と。
 誰かの模倣をする……それは決して悪いことではない。時と場合によれば、むしろ褒められるものだ。
 だが何事にも限度というものはある。そこに模倣は例外ではない。例え双子であってもだ。
 自分以外の者を『常に』模倣するのであれば、ティーノが言ったように、彼女は人形に他ならない。
 何かをすれば自動的にそう動くように設定されている人形のように――そこに自分の意思が存在していない。それではただの道具と同じだ、人間ではない。
 ……だが、それは今に始まったことではない。
 レミネがそういう在り方であることをティーノは知っている。常に人形のようだと思っていた。
 だから、いつものように「そうか」と言えば拗れることはなかっただろう。
 しかしそう言ってしまった――その言葉にレミネはこう返した。
『……私の勝手じゃない』
『……何故、そんなことを言うんだ?』
 トゲのある言い方に疑問を抱いたティーノがそう訊くと、突然レミネは走り去ってしまった。
 人形と言われて驚き、混乱し、自分でもどうすればいいのかがわからなくなってしまったがゆえの防衛手段なのだろう。
 何が彼女をそこまで追いつめてしまったのは、ティーノはそれを考えた。
 考えて、考えて……そのきっかけが、自分が言った言葉であると理解し、彼はレミネを追いかけ。
 街の中を探し、そしてようやくティーノはレミネを見つけて謝ろうとした。
 ……だが。

「ティーノ……ご、ごめんなさい……!」
 ティーノの後にレミネが頭を下げた――悪いのは自分の方だと。
 そもそも始めから彼に非はない。あるのは自分の方だ。
 常に誰かの模倣をする――ああ、それは傍から見ればまさに人形にしか思えないだろう。
 自分一人では何もできず、ただ他者の模倣することで存在する、まるで鏡に映った虚像だと。
 そういう在り方……自分の意思がない人生――果たしてそれは『生きている』と言っていいのだろうか。
 呼吸をし、食事をし、睡眠をとり、言葉を交わすことで生きていると見せかけているだけで、その姿は命令を待っている人形に他ならない。
 ならばそれは、死んでいると同義だ。生きてなどいない。
 それらを思い知らせる言葉が、ティーノが言った言葉だ。
 現実を突きつける彼の言葉に、レミネは何も言えなくなり、逃げてしまった。
 逃げた理由は、何も考えなくていいから。逃げてしまえば答える必要はないから。
 安全圏に逃げ込むことで自身を守る手段のそれは、だが逆にティーノの心を傷つけてしまった。
 迷惑をかけてしまったと、レミネが頭を下げるのはそういったものを含めてのものだ。
「――そう、だったのか……」
 レミネが何故あのような言葉を言ったのか、何故走り去ったのか――その理由を聞いたティーノは更に申し訳ない気持ちになった。
「何も知らないのに人形だなんて……本当に悪かった」
 今回の原因は自分のせいだと。
 何も知らない無知な自分が悪かったと、頭を下げるレミネにティーノはそう言う。
「……でも、話してくれてありがとう」
 無知であったためにレミネを傷つけてしまった。だがそのお陰で彼女の想いを知ることができた。
 きっかけは嬉しくないものだが、しかし教えてくれたのは有難いと思える。
 これで仲が深まったのではないかと、そう思えるから。
「――そういえば、何か食べたか? まだなら食事に行かないか?」
 喧嘩別れをしてかなりの時間が経っている。
 問題が解決したことで空腹感に気づくことができたのか、それともこの重い空気を何とかしたかったのか、ティーノは食事に誘った。
 無論、レミネの方も何も食べていない。そんな余裕などなかった。
 だから断る理由はなく、
「……うん、ありがと。……行く」
 少々間をおいて返事をした。
「よかった。なら、行こうか」
「あ、ま、待って、ティーノ……!」
 返事を聞いたティーノはすぐさまどこで食事にしようかと、場所を決めるために先を歩き。
 レミネは置いて行かれないように彼の後を追い――ふと、ティーノは思わぬことに気づいた。
(今……名前を……、まさかレミネが?)
 普段は名前を呼ぶことがないレミネだが、たった今彼女は自分の名を呼んだ。
 それは一体どういうことだろうか、何がきっかけなのか。
 考えるが、だが答えは出てこない。
 見つからない答えを探すことに疲れた彼は、レミネと共に食事処を探す。
 いつかまた、その名を呼んでくれることを願って……。


喧嘩の仲直りは自分から
(執筆:虚像一心 GM)



*** 活躍者 ***

  • ラウル・イースト
    ララエル、僕は君を守るよ…必ず
  • ララエル・エリーゼ
    ラウルが…私を守ってくれるの…?

ラウル・イースト
男性 / 人間 / 悪魔祓い
ララエル・エリーゼ
女性 / アンデッド / 人形遣い




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2019/09/03-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[9] ララエル・エリーゼ 2019/09/18-12:03

ティーノさん、口には出さないだけで、
静かにレミネさんを見守る守護者さまっていう
感じなんですよね。
ルイスさんも、素直になれないだけで、本当は
モナさんを気にかけてる感じ…

もー、ラウルにも見習って欲しいです!(じたばた)  
 

[8] レミネ・ビアズリー 2019/09/18-08:01

あ、ど、どうも…!(ぺこり
ええ、そうですね、パートナーがちょっと…。あの人、なに考えてるんだろ。
モナさんも、なんですね。

(手をふりかえし)
素敵……なんですか、ね…?
あれが…?
ララエルさんも、ラウルさんのことで悩んで、なんですね。
うーん……ステキな方って印象ですが…。  
 

[7] ララエル・エリーゼ 2019/09/17-21:27

レミネさーん!お久し振りです!(手をぶんぶん)
前に指令で一緒になりましたよね。また会えて嬉しい!
ティーノさん、素敵なひとなのに、レミネさんも
何かあったんですね…よろしくおねがいしますね!

ラウルなんて全然紳士じゃないんですよ!
ルイスさんのほうがずっと素敵なんだからっ(クッキーもぐもぐ)  
 

[6] モナ・レストレンジ 2019/09/17-19:37

クッキー!?いただきま~す
(クッキーむしゃむしゃ)

ルイなんか見た目だけだから…
ラウルさんの方こそあんなに紳士的そうなのに…
ララエル殿もパートナーの事で悩んでいるのか。

レミネ殿もパートナーの事で悩んでいるのかな?
初めましてモナ・レストレンジとパートナーとは訳あって絶交中だけどよろしく。
(レミネ殿に会釈)  
 

[5] レミネ・ビアズリー 2019/09/17-18:20

…あの人、なんなのかな…(ぽそ

…えと。久しぶりの参加になります。
レミネ・ビアズリーと、相方は……

しりません(きぱっ
モナさんは初めましてで…ララエルさんはお久しぶり、ですかね…。
よ、よろしく。  
 

[4] ララエル・エリーゼ 2019/09/17-06:17

あっ、モナさん!私ララエル。ララエル・エリーゼです!(手をぶんぶん)
とりあえず、クッキーどうぞ(クッキーの箱をモナさんに)
紅茶はお湯に、ティーバッグ?をちゃぽちゃぽすると
飲めるみたいですよ!

ルイスさん、あんなにカッコいいのに
モナさんも悩んでるんですよね…えへへ、仲間です!
今回もよろしくおねがいしますね(にっこり笑う)  
 

[3] モナ・レストレンジ 2019/09/17-00:55

パートナーなんだからもう少し我の事信頼してくれてもよくない?ルイのバカ…

(ぶつぶついいながら会議室に入場)

…ララエル殿も来ていたのか。遅れての参加になるけど今回もどうぞよろしく…

(おずおず挨拶)  
 

[2] ララエル・エリーゼ 2019/09/15-15:15

(会議室に用意されたクッキーを一口食べて)
もう、ラウルってば!
(ミルクティーを一口飲んで)
まったく、まったく、まったく!
女の子の気持ちなんか、ぜーんぜん、わからないんだから!
私怒っちゃうんだから…(クッキーをばりぼり)