~ プロローグ ~ |
夕方、教皇国家アークソサエティ、アルバトゥルス駅舎の前。 |
~ 解説 ~ |
蒸気機関車と駅舎内はハロウィン一色です。 |
~ ゲームマスターより ~ |
プロローグを見て頂き、大変ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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列車の窓から見える夜景に歓声 景色が飛んでいくみたい 猫の耳を魔法でつけてもらいご満悦 シリウスの視線に ライかンスロープみたいでしょう? どうかしら? 返された答えに ころころと笑う だって猫の仮装だもの シリウスもお願いしたらよかったのに 他愛のないおしゃべり もっぱら喋るのは自分だけれど シリウスが柔らかい表情をしていて嬉しい あのね それでね ーっ!? 急に現れたお化けに悲鳴 思わずシリウスにしがみ付く 大丈夫という声に 怖々顔を上げて 目の前に再度出現したお化けにもう一度悲鳴 ぎゅーっとシリウスに抱きつく 子どものようなお化け達の笑い声に混ざり 吐息のようなシリウスの笑い 恐る恐る顔をあげ 予想以上に近いシリウスの顔と状況に真っ赤に |
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※アドリブ歓迎します (駅舎を飛び回るお化けに話しかけ、アブない目で) お菓子をありったけください。 (※超甘党) 大丈夫だよ、ララエル。 ここのお化けは皆、優しいお化けだから。 (機械好きなため、うずうず) さあララエル、機関車に乗ろう! …ってうわ、すごいお化けの数だな… …ララ?(察して) どなたか、替えのショーツは持っていませんか? (ララエルをトイレに連れていき、着替えさせる) 少しは落ち着いたかな?(優しく頭を撫で) ララエル… ここには君にそんな事をする人たちはどこにもいないよ。 もちろん、このお化けたちもね。 |
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蒸気機関車にまた乗れる機会が来るとはな! なかなか凝った装飾になってるようだが、これはこれで機関車の趣に合ってると思う 基本的に蒸気機関車そのものや機械には興味があるが お化けには興味が無く、動じることはほぼない、が まあ、そっちはヴィオラが楽しんでいるし問題はなかろう しかし、「可愛い」……? あれは「可愛い」と言う物なのか? ドラキュラやフランケンシュタインを見て首を傾げる 女性の感性は分からん 普通は怖いとか思うのではないのか? 返答を聞いて更に首を傾げ ベリアルも怖がってるのを見た事無い気がするが…… 抱きつかれて抱き留めつつ 怖くないのでは? と顔を覗き込む まあ構わないが ヴィオラはあの頃と違い、もう大人なんだな |
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仮装のお願い…どうしようかな… 「うん、しなくていいよ。うん、自前でどうにかなる!」 トランスして、黒狼の姿になる これで墓守の黒犬!…いや、僕は犬じゃないけど! え、脅かしに行くの? 怖いかな、僕??遠吠えする? 人驚かしたり一通り遊んだら、個室で休憩する 「ねぇ、カグちゃん」 …あのさ、僕…僕が、君の隣に居ても、いいのかな? 確かに、魔力の適正診断では君の手を掴めるくらい、相性がよかった だから、僕は今、ここに居る カグちゃんに出会えなかったら、僕は死んでた。 だからこそ、思う 僕は君を守る、と誓った …この想いは、君にとって重荷になったりしてない? |
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はいはい…。ねっむ…何も夜くることないだろ 夜が良いじゃなくて、『夜でも良い』だ 眠い。ったく…耳元でデカい声出した上に叩き起すとかマトモな起こし方じゃない(さっきまで寝てた) ・仮装 はいはい、可愛いよ(棒読み) アンタの場合、耳が気になるけど ・乗車 なんだよ、引っ張るな …ああ、いるな? …は? 喰人の視線の先にはキョロキョロ見渡してるシーツお化け(仮) だから、声デカい…どこの女子だ …シーツ、お化け…? シーツくん…? お前も大変だな…シキに絡まれて(シーツくんを見て) 背後からお化けが驚かせに来た ッ…!? …うるさい |
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~ リザルトノベル ~ |
●1章 ハロウィンはトリック 夜、教皇国家アークソサエティ、アルバトゥルス駅舎。 「仮装のお願い……どうしようかな……」 魔女に仮装を訊ねられ、ライカンスロープの『ヴォルフラム・マカミ』は考えを巡らす。 「うん、しなくていいよ。自前でどうにかなる!」 すぐさま思いつき、ヴォルフラムはトランスして黒狼の姿になった。 「これで墓守の黒犬! ……いや、僕は犬じゃないけど!」 胸を反らし、堂々たる仮装を披露するヴォルフラム。 「ジャックランタンで」 お次は『カグヤ・ミツルギ』の番だ。 「ヴォルがチャーチグリムなら、傍にウィル・オ・ウィスプが居てもいいでしょ?」 賢さからオカルトを知るカグヤは可愛らしく小首を傾げて、ヴォルフラムに言った。その姿は、南瓜の被り物に黒いフード付きのローブ、手にはランタンをぶら下げた長杖。 「そうだね。とても似合ってるよ」 ヴォルフラムは、思いっきりカグヤの仮装を褒めた。 「出発! 出発!」 丁度その時、ずんぐりむっくりなお化けの運転士が出発を伝えた。 「ヴォル、行こう」 「うん! 行こう、カグちゃん」 カグヤとヴォルフラムは仲良く乗車した。 程なくして、蒸気機関車は出発した。 「カグちゃん、お化けがいっぱいだね」 ヴォルフラムは、車内を賑やかにするお化け達を見回した。 「……暗がりからそっと出て来たらきっと怖い」 隣のカグヤは、何やら考え込んでいる様子。 「……怖い? もしかして、脅かしに行くの?」 気付いたヴォルフラムは、想定外なのか驚いたように聞き返した。 「うん……ヴォルは、その姿で全力で追いかけられたら怖いと思う」 カグヤは、頷いてから改めてヴォルフラムの黒狼姿を品定め。 「怖いかな、僕?? 遠吠えする?」 ヴォルフラムは、自身の姿を確認しつつ提案を一つ。 「……遠吠え……いいかも……とりあえず、誰か驚かしてみよう」 カグヤは提案を受け入れて、仮装の威力を発揮する相手を探し始めた。 そして、お喋りに夢中の『リチェルカーレ・リモージュ』やお化けに夢中の『ヴィオラ・ペール』を存分に驚かせた。 彼女達を驚かせた後、カグヤとヴォルフラムは標的探しに戻り、見つかる度に暗がりを使ったり、黒狼の姿を活かしてヴォルフラムが追いかけ回したりと存分にお化けとして活躍した。 そして一通り遊んだところで、カグヤとヴォルフラムは個室へ向かった。 「……少し、休憩」 「だね!」 一休みをするために。 個室。 「……ふぅ」 カグヤはちょこんと座席に座り、吐息を洩らした。 「ちょっぴり疲れたね」 と言って、ヴォルフラムは今の姿もあってか座席には座らず、カグヤの側に待機。 「……うん」 カグヤは、小さく頷いた。 そして、二人は休憩がてらハロウィンに湧く車窓に視線を向けた。 「……」 黙すカグヤ。 「……ねぇ、カグちゃん」 ヴォルフラムは、おもむろに声を掛けた。 「……ん」 ヴォルフラムに呼ばれてカグヤは振り向いた。 「……あのさ、僕……僕が、君の隣に居ても、いいのかな?」 ヴォルフラムは、思い詰めたような真剣さのある調子で聞いた。 「……ヴォル?」 カグヤは小首を傾げ、先を促した。 「魔力の適正診断では君の手を掴めるくらい、相性がよかった。だから、僕は今、ここに居る……カグちゃんに出会えなかったら、僕は死んでた」 ヴォルフラムは双眸を宙に向け、この日を過ごすきっかけとなった出会いと幼子には過酷な過去を思い出した。 「だからこそ、思う」 彷徨う視線をカグヤに向ける。今日はいつもと違い、見上げる側だ。 「僕は君を守る、と誓った……でも、この想いは、君にとって重荷になったりしてない?」 ヴォルフラムの言葉の端々に、真剣で少し心配を含んだカグヤへの思いの強さが伺いしれる。 「……同じだよ」 聞き終えたカグヤは、小さな声でぼそりと答えた。 (……何時もは私がヴォルを見上げていた……でも、今日は……違う……) 座席を降りて床にしゃがみ込み、かぶり物を取り、黒狼姿のヴォルフラムと視線を同じくする。 「……カグちゃん」 色違いの瞳に映る自分の姿を、カグヤは真っ直ぐに見つめ返す。 「私も、貴方が居なかったら、厄介者で終わってた」 そして、カグヤは胸の奥にある思いを自分の言葉で伝えた。 ●2章 急接近にドキドキ 夜、教皇国家アークソサエティ、アルバトゥルス駅舎。 「シリウス、見て! 景色が飛んでいくみたい」 リチェルカーレは、列車の窓から見える夜景に歓声を上げていた。 「……リチェ」 『シリウス・セイアッド』が言葉を挟む間もない。 「あっ、花火、お化けの花火!」 夜空を彩るお化けの形をした花火に、リチェルカーレは大興奮して指さす。 「わぁ、魔女さん!」 その時、箒に乗って夜空を飛ぶ魔女が、車窓のリチェルカーレに向かって手を振ってきた。 「こんばんは、素敵なハロウィンですね♪」 リチェルカーレは窓を開けて、にこにこと笑顔で手を振り返した。 (……リチェ、楽しそうだな) 見守るシリウスの視線は、感情に合わせてぴこぴこと動くリチェルカーレの猫耳に注がれていた。 「あ、これ、ライカンスロープみたいでしょう? どうかしら?」 シリウスの視線に気付いたリチェルカーレの猫耳が楽しそうにぴこぴこ動く。魔女に魔法で猫耳をつけて貰い、ご満悦だ。 「……猫に見えるな」 シリウスは楽しそうなリチェルカーレに、やや表情をゆるめながら一言。 「ふふふ、だって猫の仮装だもの。ふわふわで気持ちいいよ? シリウスもお願いしたらよかったのに」 リチェルカーレは、猫耳に触れながらころころと笑った。 「……俺はいい」 シリウスは、小さく返して目を眇めた。 「ふふふ」 リチェルカーレは楽しそうに笑った。 「そう言えば、中庭に金木犀が咲いて……」 そして、リチェルカーレは、にこにことお喋りを始めた。 「……そうか」 シリウスは頷く。 「小さな花を沢山咲かせてて、とってもいい匂いで」 花が好きなリチェルカーレは、猫耳をぴこぴこさせながら喋る。 「あっ、素敵な音楽♪」 歌が好きなリチェルカーレは、開けたままの窓から聞こえる音楽に合わせて、体を揺らす。 (……リチェと出会うまでは世界が色鮮やかなものだと、気付きもしなかったな) シリウスは、自分の世界に色を与えてくれた愛しい存在に、無自覚ながら穏やかな表情を向けた。 「それでね、秋桜の花畑も素敵で」 音楽が去った後、リチェルカーレはお喋りを再開させた。 (……シリウス) シリウスの表情の変化に気付いたリチェルカーレは、嬉しくなり猫耳が一層忙しくなった。 「あと……」 お喋りをするのはリチェルカーレばかりだが、耳を傾けるシリウスの表情は柔らかで楽しそうであった。 「うぉおおおん」 そんな時、黒狼に仮装したヴォルフラムが発する遠吠えに驚き、リチェルカーレは勢いよく振り向いた。 「きゃぁぁああ!!」 途端、いつの間にか現れた黒いフード付きのローブを纏った南瓜のお化けに仮装中のカグヤと目が合ったリチェルカーレは、大きな悲鳴を上げて思わずシリウスにしがみついた。 「……リチェ!」 シリウスは目を見開き、驚くも反射的にリチェルカーレを受け止めた。 「……大丈夫だ。ただの悪戯だ」 シリウスはお化けを務める二人を見やり、溜息混じりにリチェルカーレを宥めた。 「…………」 シリウスの言葉にリチェルカーレは、お化けが去ったと思ったのかそろりと顔を上げた。 「きゃぁぁああっ!!」 が、まだ存在するカグヤにリチェルカーレはもう一度悲鳴を上げた。長杖にぶら下げたランタンに下から照らされ南瓜お化けの怖さが増していた。 「……はぁ」 シリウスは溜息を吐きながら、ぎゅーっと必死に自分に抱きつくリチェルカーレを見下ろした。 (……できるだけ触れないようにと思っているのに) 腕の中で震える小さな体の体温と感触に、思わず眩暈に似た感覚に襲われるシリウス。これまで自分が関わった人間を失って来たから、彼女こそは失いたくないと抑えているのに。 「……大丈夫だ。もういない」 落ち着くようリチェルカーレの背中を軽く叩きながら、シリウスはランタンを揺らしながら去って行くカグヤとヴォルフラムを見送った。 (……全く、人の気も知らないで) リチェルカーレに向かって、苦笑に近い表情を浮かべながら。 「……シリウス」 遠ざかるランタンの音と吐息のようなシリウスの笑い、背中に感じる温もりにリチェルカーレは少し安心したのか、恐る恐る顔を上げた。 「!!」 途端、予想以上に近いシリウスの顔と状況に、リチェルカーレの顔が真っ赤に染まった。 ●3章 わくわくと可愛い 夜、教皇国家アークソサエティ、アルバトゥルス駅舎。 「蒸気機関車にまた乗れる機会が来るとはな!」 『ニコラ・トロワ』は駅に止まる蒸気機関車を見上げ、興味津々。 「ふふ、ニコラさん、とっても楽しそうで良かったです」 後ろにいるヴィオラは、少年のようなニコラの様子に微笑ましげな笑みをこぼす。 「私はハロウィンのこの装飾にウキウキしてますけれど」 ヴィオラが興味を惹かれるのは、駅舎内を彩るハロウィンの装飾だ。 「確かになかなか凝った装飾になってるようだが、これはこれで機関車の趣に合ってると思う」 蒸気機関車に目を輝かせている間でもヴィオラの声は届いていたのか、ニコラは背後に振り返り、周囲のハロウィン装飾も味わった。 「出発! 出発!」 丁度その時、ずんぐりむっくりなお化けの運転士が出発を伝えた。 「さて、お次は内部を確認するとしようか」 ニコラはいざ、蒸気機関車や機械への好奇心を満たすべく乗車。 「わぁ、可愛い!」 ヴィオラはお化け運転士に歓声を上げてから続いた。 程なくして、蒸気機関車は動き出した。 「ほぅ、これが内部か」 発車と同時にニコラは、忙しなく車内を見回す。 「それにしても、どこもかしこもお化けだらけだな」 ニコラの目に映るのは、興味を向ける機械的な部分だけでなく、沢山のお化け。興味が無いのか動じる様子は無い。 「まあ、お化け方面は……」 ニコラが振り返った先にいたのは、お化けに浮かれるヴィオラだ。 「わぁあ、可愛い♪」 ヴィオラは、お化けに目をキラキラ。 「ヴィオラが楽しんでいるし、問題はなかろう」 ニコラは口元を柔らかく歪めた。 「ニコラさん、ニコラさん」 その時、何か発見したのかヴィオラが忙しなく声を掛けてきた。 「どうした?」 気付いたニコラは聞き返した。 「ほら、ドラキュラさん、フランケンさんもいますよ。可愛いですね♪」 ヴィオラは嬉々と指さしながら、声を弾ませた。 「……か、可愛い……? あれはそう言う物なのか?」 ニコラは、自分の知る可愛いの基準との違いから反応に困り、小首を傾げた。 「あっ、あれも可愛い♪」 ヴィオラが次に興味を向けたのも、また不気味な化け物。何を見ても可愛いの連発状態だ。 「……女性の感性は分からんな。普通は怖いとか思うのではないのか?」 ニコラはついに疑問を口にした。 「そうですか? 私、お化け怖くないですよ?」 今度はヴィオラが首を傾げる番だ。 「こんなに可愛いじゃ無いですか。ベリアルの方がよっぽど怖いです」 ヴィオラは、ふよふよと浮いてる白いお化けに手を伸ばし、撫で撫でしながら言った。 「いや、ベリアルも怖がってるのを見た事無い気がするが……」 返答を聞いたニコラは戦闘中の彼女を脳裏に浮かべ、更に首を傾げた。 「あら、そうでした?」 ヴィオラは、くすっと笑って返した。 「うぉおおん」 その時、横の暗がりから黒狼姿のヴォルフラムの鳴き声が響く。 「!!」 ヴィオラが驚いて振り向いた瞬間、ローブを纏った南瓜のお化け姿のカグヤに迎えられた。 「きゃぁっ!!」 暗がりから現れたカグヤに大層驚いたヴィオラは、思わずニコラに抱きついた。カグヤとヴォルフラムは、驚かせ終えたと去って行った。 「……怖くないのでは?」 彼女を抱き留めつつニコラは、顔を覗き込みながら訊ねた。 「えっ、これは怖いんじゃなくて驚いただけでっ!」 ヴィオラは、顔を真っ赤に声を少し大きくして子供のように主張した。 「……そうか」 ニコラは気を悪くした様子は無く、優しく口元を歪めていた。 「……あの、もうちょっとこうしててもいいですか? 子供の頃みたいに素直に抱きつけるなんて、滅多にないと思うから……」 ヴィオラは離れようとはせず、真っ赤な顔を上げてそろりとお願いした。胸の内には、幼馴染みとして兄妹のように過ごした日々が蘇っていた。 「まあ構わないが」 ニコラはそう言って、抱き留めるヴィオラに眼差しを注いだ。 (……ヴィオラはあの頃と違い、もう大人なんだな) その眼差しは、兄のように優しかった。 ●4章 優しいハロウィン 夜、教皇国家アークソサエティ、アルバトゥルス駅舎。 「さすが、ハロウィンだな」 『ラウル・イースト』は駅舎内を見回した。あっちもこっちもお化けだらけだ。 「……お化けばっかり」 『ララエル・エリーゼ』はラウルの背後から、お化け達を恐々と見ていた。 「大丈夫だよ、ララエル。ここのお化けは皆、優しいお化けだから」 察したラウルは優しく言った。 「見ててごらん」 ラウルは、お菓子入りバスケットを持つお化けに近寄った。 「……ラウル」 ララエルもそろそろと続いた。 「お菓子をありったけください」 超甘党なラウルは即、トリックではなくトリートを要求。 「お菓子、お菓子」 お化けは、バスケットから飴を一つ差し出した。ラウルの言葉をよく理解していないらしい。 「ありったけください」 ラウルは受け取らないどころかアブない目で、再度要求。 「お菓子、お菓子」 やっと理解したお化けはバスケットごとお菓子全てを差し出し、ふよふよどこかへ行った。 「どれも美味しそうだ。まずは……」 沢山のお菓子にほくほく顔で物色するラウル。 「……ラウル、そんなに甘いものを食べたらとーにょーびょーに……」 成り行きを恐々と見守っていたララエルが注意をしようする。 「……?」 が、言い切る前に肩をとんとんと叩かれたララエルは振り返った。 「って、お化けえええっ!」 瞬間、大きな悲鳴を響かせた。 「ララエル、大丈夫だよ。握手をしたいだけだ」 ラウルは、優しい口調で言った。 「……握手……」 よく見るとラウルの言葉通り、お化けは手を差し伸べながらふよふよ。 「…………えと……」 ララエルは、おずおずとお化けの手を握り返した。 「ララエルに握手をして貰って満足したみたいだ」 ラウルの言葉通り、握手をして貰い気が済んだお化けはどこかへ飛んで行った。 「……」 ララエルは、握手をした手と去って行くお化けを見比べていた。 この後、二人は真っ直ぐに乗車する蒸気機関車が待つ駅に向かった。 「……なかなか」 機械好きなラウルは、蒸気機関車に心をうずうずさせた。 「……ラウル」 ララエルは蒸気機関車ではなく、子供のようなラウルを眺めていた。 「出発! 出発!」 丁度その時、ずんぐりむっくりなお化け運転士が出発を伝えた。 「さあララエル、機関車に乗ろう!」 ラウルはララエルと一緒に乗車した。 程なくして、蒸気機関車は出発した。 「……ってうわ、すごいお化けの数だな……」 ラウルは、車内を闊歩するお化け達を見渡した。 「きゃああああっ!!」 隣のララエルは、大量のお化けの姿に驚き大きな悲鳴を上げた。 「……」 と思ったら、恥ずかしそうに顔を伏せ、もじもじ。 「……ララ?」 悲鳴に驚き振り向いたラウルは状況を察して、乗務員のお化けの元へ。 「すみませんが、替えのショーツは持っていませんか?」 周囲に聞かれないように小声で訊ねた。 「ある、ある」 乗務員はすぐに用意し、ラウルに渡した。 「お掃除、お掃除」 そうしている間、他の乗務員がララエルの元に現れ、黙々と掃除を始めた。 「……ララエル」 ラウルは多くは言わず、ララエルをトイレに連れて行き、乗務員から調達したショーツを渡して、着替えをさせた。 「……」 ラウルはトイレの外で、車内のお化け達を見ながらララエルが出て来るのを待っていた。 「……ラウル」 すぐにララエルがトイレから戻って来た。 「少しは落ち着いたかな? ララエル」 ラウルは、優しく頭を撫でながら言った。 「……ラウルはおこらないんですか?」 ララエルは伏し目がちにぼそり。 「私がお屋敷にいたころは、私がなにもしなくても……叩かれて、そのたびにそそうをしてしまいました……」 胸を締め付けるのは、今とは全く違う辛い日々。 「ララエル……ここには君にそんな事をする人たちはどこにもいないよ。もちろん、このお化けたちもね」 いたたまれぬララエルの様子にラウルは、一層優しく言葉を掛けた。 「……ラウル……ありがとうございます」 ララエルは上目遣いに礼を言った。 「洗濯、洗濯」 そこに洗濯お化けが現れて、ララエルの洗濯物を手に取った。 「……あの、お化けさん、ありがとうございます……」 ララエルは優しい瞳を洗濯お化けに向け、お礼と共にそっと手を取った。 「洗濯、洗濯」 洗濯お化けは、一瞬動きを止めた後、仕事に戻った。後程、洗濯し終えた物がララエルの元に戻って来た。 「……ララエル」 ラウルは、ララエルの様子を優しく見守っていた。 ●5章 トリートではなく…… 夜、教皇国家アークソサエティ、アルバトゥルス駅舎。 「うはー、すげぇ、お化けばっかだ」 『シキ・ファイネン』は弾んだ声を上げ、お化けがうろつく駅舎内を忙しなくきょろきょろしていた。 「……ハロウィンだからな」 ツッコミを入れる隣の『アルトナ・ディール』は、浮かれている様子が無いどころかどこか機嫌がよろしくない模様。 そんな事には構わず、シキは子供のようにはしゃぎ回る。 「アル、アル、あそこ、お菓子配ってるぞ、向こうで演奏してる、何か、めっちゃ楽しそう! つーかもう楽しいっ!」 そして、面白い物が目に入る度に指し示してアルトナに教える。 「……はいはい……ねっむ……何も夜くることないだろ」 アルトナは棒読みよろしく適当に流して、眠そうに欠伸を一つ。 「祭りって言ったら、夜だろ。つーか、こういう祭りっぽいフンイキは夜派だし俺」 シキはくるりとアルトナの方に振り返り、当然とばかりに主張を始めた。 「……で?」 納得なんぞしていないらしいアルトナは、睨め付けつつ問いただした。 「でって、アルだって星見えるだろーから夜が良いって言ったじゃんかー!」 アルトナの機嫌がよろしくない空気をびしびし感じたシキは、誘った理由を大きな声で言った。 「いや、夜が良いじゃなくて、『夜でも良い』だ」 アルトナは、すかさずシキの言葉を正して返した。 「そもそも、耳元でデカい声出した上に叩き起こすとかマトモな起こし方じゃない」 その上、睨め付けたまま不機嫌な理由を口にし、欠伸を洩らした。実は先程まで寝ていたのだ。 「う、それは悪かった、この通り反省してる!」 シキは両手を合わせて、両目を閉じて大袈裟な調子で謝って見せた。 「……」 アルトナは、何も言わず溜息を一つ二つ。 「なっ?」 シキはちろっと片目を開けて、アルトナの機嫌伺いをする。まるで叱られた子供のよう。 「あー、許す、許す」 アルトナは、明らかに面倒臭そうな適当調子で言った。 「んじゃ、機関車の所に行こうぜ!!」 お許しが出た途端シキは勢いよく反省を切り上げて、意気揚々と蒸気機関車の元へ駆けて行った。 「……はぁ、眠い」 アルトナは欠伸をしつつ、歩み遅く続いた。 「アル、アル! 可愛くね?」 遅れて来たアルトナを迎えたのは、魔女の魔法で耳と尻尾を得た黒猫姿のシキ。 「はいはい、可愛いよ」 アルトナは棒読みで褒めた。明らかな塩対応。 「アンタの場合、耳が気になるけど」 おまけに余計な一言までつく。 「エレメンツだしなあ」 シキは、尖り耳に触りながら返した。 「出発! 出発!」 丁度その時、ずんぐりむっくりなお化けの運転士が出発を伝えた。 二人は乗車した。 程なくして、多くの乗客を乗せた蒸気機関車は出発した。 「おおおー、すげぇ」 乗車と同時にシキは、駅舎内同様はしゃぎ歓声を上げた。 「……ったく、子供か」 隣のアルトナは呆れの溜息を洩らした。 「ちょっ、アル、あれ、あれ」 何か見付けたシキは興奮気味に指し示し、もう片方の手でアルトナの服の裾を引っ張った。 「なんだよ、引っ張るな」 アルトナは、煩わしそうにしつつ示された先を見た。 「シーツ被ったお化けいるぜ……?」 いたのは、きょろきょろ周囲を見渡しているシーツを被ったお化け。 「……ああ、いるな?」 アルトナの返答は、当然素っ気ない。 「ちょー可愛いんですけど!」 だが、シキの目はキラキラし、興奮からか声が大きい。 「だから、声デカい……どこの女子だ」 アルトナは、呆れ気味に言葉を洩らした。 「ルーくんシーツお化けンとこ行こーぜ?」 と言って、シキはシーツお化けの所に行ってしまった。 「……シーツお化けねぇ」 アルトナは、もそもそと続いた。 「よっ! 元気か? シーツくん!」 シキは、シーツお化けに近付くと片手を軽く上げて、人懐こそうに挨拶をした。 「♪♪」 シーツお化けは、挨拶に答えるようにくるくるとその場で回ってみせた。 「……シーツくん……?」 追いついたアルトナは、陽気なシキをちらりと一瞥。 「お前も大変だな……シキに絡まれて」 そして、シーツお化けに憐憫の目を向けた。 「アルはやっぱ俺には塩だ……」 シキはむぅと不満を口にした。 「ッ……!?」 瞬間、アルトナの背後にお化けが現れ、表情に驚きがよぎった。 「おお……アルが驚いてる……いつでも見れるわけじゃねーから新鮮……!」 貴重な場面にシキは思わず、驚きと楽しい気持ちから大声を上げ、手をパチパチ。 「……うるさい」 すぐに気持ちを立て直したアルトナは、見られたくない所を見られたのかシキを睨んだ。
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*** 活躍者 *** |
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[11] シキ・ファイネン 2019/11/01-03:05
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[10] リチェルカーレ・リモージュ 2019/10/31-22:41
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[9] ヴィオラ・ペール 2019/10/31-21:04
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[8] ラウル・イースト 2019/10/31-18:57
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[7] ヴォルフラム・マカミ 2019/10/30-20:55
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[6] シキ・ファイネン 2019/10/30-20:50
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[5] ラウル・イースト 2019/10/30-10:16
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[4] ヴィオラ・ペール 2019/10/29-20:40
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/10/29-20:33 | ||
[2] ララエル・エリーゼ 2019/10/29-12:07 |