ラニ・シェルロワの1日
普通 | すべて
1/1名
ラニ・シェルロワの1日 情報
担当 土斑猫 GM
タイプ シチュエーションノベル
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 0 日
公開日 2020-12-05 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2020-12-05



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ラニ・シェルロワ ラス・シェルレイ
女性 / 人間 / 断罪者 男性 / 人間 / 拷問官
神との最終決戦も終わり、ヨハネの使徒も数を減らしてきた今日この頃
毎日どこかぼーっとしている

…へ?なになに、指令?
へぇニホンに、あっちも平和なんじゃない?
まぁいいや!ひめちゃんにちゃんとお礼言ってなかったからね!

ということでいざニホンに!
ニホンって和服なんだっけ?わぁ可愛い!
着いた京都で早速着物に着替える どうどう?似合う?
…と、当然よねー!あたし美少女だもの!
屋台でりんご飴やらたい焼きやらを買い食いしつつ 桜夜姫の下へ

ひめちゃんやっほー!元気?
あたし?あたしはまぁ、ほら元気!(当然から元気)
お礼そういえばちゃんと言ってなかったからさ
ありがとう あんた達の助けもあったから
あたし達は生きることができる


~ リザルトノベル ~

 最後の戦いから、少しの時が過ぎた。
 全ての争いが、消えた訳じゃない。
 ベリアルも。ヨハネの使徒も。まだ残党が残っていて、散発的に騒ぎを起こす。
 けれど、それはほとんどスケール1・2と言った知能を持たない低スケールベリアルの仕業。本当の脅威となる筈の高スケール達は、ほぼ鎮静化している。
 知恵を持ち、心を持つに至った彼ら。先の大戦での敗北と、その中で見定めた人の可能性。そして、それに対する『同胞だった者達の結論』。コッペリアが散り際に放った最期の『最操』による共有で全てを知って、そして全てを受け入れた。
 争う意味も、意思もすでになく。報告を受けた浄化師達が討伐に赴けば、抵抗もなく受け入れる場合も多かった。
 彼らは、誰よりも理解していた。もう、『ベリアル』の役目は終わったのだと。
 悔恨も。憎悪もなく。確かな、充足と共に。

 使徒の場合は、もっと単純。主である創造神も。統率機構であるデウスマギアも失ったソレは、文字通りのガラクタ。
 当てもなく彷徨って、定められた行動原理の残滓をなぞって人を襲う。
 けれど、そこにはかつての統率力も目的とする答えもなく。
 ただ空回るだけの機兵は、浄化師でもない民兵の手で容易く壊された。

 争いは消えない。
 憎しみも、悲しみも、きっとそのまま。
 けれど。
 それでも。
 世界は、ほんの少し。
 けれど、確かに。

 ほんの一握りの、誰かさんの心。
 幾ばくかを、置き去りにして。

 ◆

「はあ……」
 自室の窓から外を眺め、『ラニ・シェルロワ』は細い溜息をついた。妙に黄昏たその様子から、彼女の売りである快活さがなりを潜めているのは明白だった。
『……駄目ね』
 戸の隙間から覗く、『シィラ』が言う。
「……腑抜けてるなぁ」
 隣りで覗く、『ケイト』も呟く。
「……黄昏てるな」
 その上から覗く、『ペトル』もポソリ。
「魂が、萎びておる……」
 で、その隣りで覗く『エフェメラ』。
「深刻だな……」
 最上段で覗く『グリージョ』も、思案顔。
 重なり合ってうら若き婦女子の個室を覗く四人。行く人々が物凄く不審げな視線を投げかけるが、取り合えず咎める声はない。彼らが部屋の主の友人と知れているのもあるが、普通に関わり合うのがイヤだ。
 そんな周囲の目など気にもかけず、四人は扉前にしゃがみ込んでヒソヒソと話し合う。
『創造神との決着がついてから、ずっとあの調子……』
「残党討伐の時なんかは、ちゃんと戦うんだけどね……」
「常時になると、どうもいけないな……」
 困る若者(?)三人。エフェメラが、思案する。
「ラニはここまで、町を滅ぼした使徒に対する憎しみを糧に生きてきた。それの消失は、そのまま存在目的の消失だ。生きる目的がない。危惧すべき事ではあったが……」
『……いつまで囚われてるのよ……。ホント、馬鹿なんだから……』
 苦悩を浮かべて呟くシィラに優しい視線を送り、グリージョも唸る。
「燃え尽き症候群の様なモノか……。それなりの休暇をとらせるべきだろうが、承知はしないだろうな。まだ、ベリアルや使徒が消えた訳ではない。このままでは、戦闘時に足元をすくわれかねないが……」
「どうしたもんかなぁ……」
「困ったなぁ……」
「……何やってんだ? お前ら……」
 呆れた声に顔を上げると、馬鹿を見る様な目で見下ろす『ラス・シェルレイ』。
 しばし見つめ、『やっぱコイツしかいないな』と頷き合う。
「ラス、これはお前の使命だ」
「全力全霊で、解決しなさい」
「な、何だよ? 急に」
 ズズイと迫って来たケイトとペトラに若干怯えながら、視線を送るのは常識人組の方。気づいたグリージョが、黙って扉の方を示す。
「ああ……」
 すぐに察したラスの様に、シィラは溜息をつく。
『……やっぱり、分かってたのね?』
「当たり前だろ……」
 そう言って、手に持っていた紙を見せる。
「指令か?」
「ああ。まあ、要請したのはオレなんだけど」
 エフェメラの問いに、ポリポリ頬を掻きながら答えるラス。覗き込んだ皆が、ホウと声を上げる。
「気の利いた事するじゃない」
「こんな洒落た気回しが出来たんだなぁ。お前」
 好き勝手言うケイトとペトラを無視して、ノックする。『どうぞ~』と気の抜けた返事を聞いて、中に。
 その後ろ姿を、五人は黙って見送った。

 ◆

「何だ~。ラスじゃん~。どうしたの~」
「……相変わらずだな。陸上げされた烏賊みたいだぞ」
「……喧嘩売ってんなら、買うわよ~?」
「ほら」
 差し出された包みを見て、フッと笑う。
「食べ物だと? そんなモノであたしが釣られ……」
「スイートドリームの特製・夢魔の誘惑プリンだ」
「くまー!!!!」
 食い意地があるのが、まあ救い。

 ◆

「うまー!」
 プリンを頬張って、顔を蕩かせるラニ。
「よく手に入ったわね~。相変わらず、大人気なのに」
「最近、夢魔の誘惑(サキュバス・ペイン)の生産量が増えて、供給が安定したからな」
「ハニーが例の蜂ベリアルの能力を解析して、シャドウ・ガルデンに技術提供したんだっけ? やるわね~、あの娘も」
「ま、『アイツら』のお陰もあるけどな」
 そう。その功績の陰には、謎のアルバイト三人組の尽力あり。ハニーと養蜂業者さん達の嘆願により、教団絶賛黙認中。
「この事知ったら、『アイツ』も喜んだでしょうにね~」
 思い出すのは、気に食わないけど甘味の趣味だけは合った『アイツ』。
 創造神がかけていた保険で、消えたベリアル達は別な存在として転生出来るらしい。アイツも、そうなのだろうか。もしそうなら、一度くらい……。
 ボンヤリと考えていると、ラスが一枚の紙を差し出した。
「……へ? なになに、指令? へぇ、ニホンに? あっちも、平和なんじゃない?」
「まぁいいや! ひめちゃんにちゃんとお礼言ってなかったからね!
「気分転換も兼ねて、行ってみないか? あんまり、見て回ってなかったしな」
 ラスの誘いに、ちょっとだけ考えて。頷く。
「まぁいいや! 『ひめちゃん』に、ちゃんとお礼言ってなかったからね!」
 浮かべるのは、絆を結んだ二ホンの八百万。『桜花の麗精・珠結良之桜夜姫』の顔。正直、会いたい。
「じゃ、行くか」
「いざ、二ホンに!」
 外で聞いていたシィラ達が走る。
『急ぐわよ!』
「完璧なプランを!」
「言われるまでも!」
「……やれやれ、若いモンは忙しないな……」
 呆れ声で見送るエフェメラの隣り。グリージョは気にかけていた『もう一人』の奮起する姿に、嬉しげに微笑んだ。

 ◆

 決めてしまえば、行動は早い。次の日にはもう、二人の姿は二ホンのキョウトにあった。
「ニホンって和服なんだっけ? わぁ、可愛い!」
 雅で華やかなキョウトの町中。見つけた店に飾られた着物に目を奪われるラニ。年相応。華の様な、笑顔。
 店の女将に誂えて貰った品に、早速着替える。
「どうどう? 似合う?」
 詰め寄ってくる彼女に苦笑するラス。でも、心から。
「うん。似合ってるよ」
 思いもしなかったくらい、ストレートな賛辞にキョトンとして。
「……と、当然よねー! あたし、美少女だもの!」
 はにかむ顔を見つめながら、手を伸ばす。
「髪、下ろすか? ほら、かんざし買ってやるから」
「う、うん……」
 照れるラニ。穏やかに薙ぐ心。ずっと、夢見ていた時間。
 りんご飴にたい焼き。みたらし団子にわらび餅。
 道中、屋台で色々買ったり食べたり。

 いつしか、日が西に傾く。
 黄昏時。
 逢魔が時。
 辿り着いたのは、町外れの社。
 約束の、場所。
 日が沈み。
 灯が灯る。
 フワリ。フワリと。
 季節外れの、花弁と共に。
 いつしか目の前に、大きな牛車。引く牛の姿もないのに、カラカラと輪を繰るソレ。『朧車(おぼろぐるま)』と言う妖怪。かの姫の、使い。
『ラニ・シェルロワ様とラス・シェルレイ様とお見受けいたす。我が主が、殿にてお待ちなれば』
 案内するのは、蓑を被った一本足の童子。『呼子(よぶこ)』と言う、山気の化生。クルクルクルと、独りでに簾が上がる。招くのは、仄かに甘いお香の香り。
『どうぞ、御乗り下されませ』
 促され、ラニとラスは中へと乗り込む。
 舞い上がる感覚。
 カラカラカラと、星が巡る。

 ◆

『よう参ったな。ラニ公、ラス坊』
 夜空を駆けたはどれ程か。着いた旨を受け、簾を上げるとソコはもう大広間。宴の準備が整ったその中心で、珠結良之桜夜姫は穏やかな。そして嬉しそうな笑顔を浮かべて、待っていた。
「ひめちゃん、やっほー! 元気?」
 朧車から飛び降りて駆け寄ったラニを、桜夜姫が抱き止める。
「当たり前じゃろ? 妾は樹霊ぞ? そうそう病みはせぬよ。むしろ、心配なのは人の身なる其方らの方じゃ」
 そう言って、ラニの顔を見上げる。実は、姫の方が背が低かったり。
「あたし? あたしはまぁ……ほら、元気!」
『そうかのぅ?』
 小首傾げる、黒真珠の瞳。見透かされそうな気がして、慌てて話題を変える。
「お礼、そう言えばちゃんと言ってなかったからさ!」
 言って、小さな手を握る。
「ありがとう。あんた達の助けもあったから、あたし達は生きる事が出来る」
『誠、阿呆じゃなぁ』
 下げられたラニの頭を優しく撫ぜる。
『アレを成したは、紛う事なく其方らの力じゃ。其方らの想いがなければ、妾や御母上はともかくも、高位の偏屈共は動かんかった。誇れ。全ては、其方ら人が掴みし道じゃ』
 クシャクシャと、朱い髪を手櫛が削る。愛しい我が子を愛でる様に。
 くすぐったそうに笑うラニ。
 じゃれあう二人を、ラスは遠間から見守っていた。
 優しく安らぐ。
 満たされた想いで。

 それから催された宴は、楽しかった。
 数多の樂妖が曲を奏で。
 蝶や小鳥の妖魅が舞を舞い。
 書や絵画の化生が小話を繰る。
 次々と運ばれてくる、滋味溢れる料理に甘美な菓子。話に聞いていた神露(しんろ)は違わず美味く、ラニは幾つも杯を空ける。
 まあ、酒みたいに毒にはならないと聞いてはいるけど。
 些か、心配。


「こっちも、何事もなかった様で何よりだ……」
 酔い潰れて眠ってしまったラニを横に眺めなら、ラスは桜夜姫と語る。
「……ラニが楽しそうで良かった。ありがとう」
『……些か、病んどる様じゃな?』
 姫の指摘に、苦笑する。元より、誤魔化せる相手ではないけれど。
「いざ平和になったら、落ち着かなかったみたいでな。気晴らしになったなら……」
『ラス坊』
「ん?」
『ラニ公の事は、大事か?』
 急な問いに、キョトンとする。
「……ラニの事? 大事に決まってる」
『何故じゃ?』
「どうしてって……何故だろう?」
 言われて、戸惑う。まるで、夢から覚める様に。
「出逢った時から……まるでそっくりで……」
 そう。そっくりだった。血が繋がっている訳でもないのに。
「一緒にいたら……落ち着くし……」
 落ち着くのだ。まるで、もう一人の自分といる様で。
『のう、ラス坊……』
 顔を、上げる。見つめる、姫の眼差し。優しく、揺れる。
『其方は、其方じゃ。そして、ラニ公も、ラニ公以外の何物でもない……』
「……?」
『放すなよ。見失うなよ。其方らの大事なモノは、何が在ろうと変わりはせん……』
「何を、言って……?」
『知らずに済むのなら、其れがいい……』
 花弁の様な唇が、フッと呼を吹く。華の香が揺蕩い、眠気が襲う。

『寒うない様に、してやれよ』
 眠りに落ちた二人を寝屋に運ぶ妖達にそう言って、姫はクイと神露を煽る。
『……誠、人の業とは深いなぁ……』
 溜息と共に零す声。
 酷く酷く。
 悲しく愛しい。


ラニ・シェルロワの1日
(執筆:土斑猫 GM)



*** 活躍者 ***


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