Show must go on.
普通 | すべて
1/1名
Show must go on. 情報
担当 土斑猫 GM
タイプ シチュエーションノベル
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 0 日
公開日 2021-02-09 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2021-02-09



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

リコリス・ラディアータ トール・フォルクス
女性 / エレメンツ / 魔性憑き 男性 / 人間 / 悪魔祓い
スラムの街並み、なんだか少し懐かしいわね
といっても、もうあんな暮らしは懲り懲りだけど

先陣切ってアジトに突入
構成員は後衛に任せ突っ切って人形遣いを攻撃
逃げたら追いかけアジトの裏に出て
逃がさないわよ
たったひとかけらでも潰しておかなきゃ
解号を唱え第二能力を発動、人形遣いをフィールドに閉じ込める
さあ、ショーを続けましょう
告天子を見せつけて挑発、注意を引き付けて
素早い動きで撹乱しつつ攻撃
倒せたら告天子で捕食封印
逃がさないって言ったでしょう

捕食後、ふらりと倒れ
まだ反動が大きいみたい…でも、すぐにきっと使いこなして見せるわ
それにしても疲れた…甘光が飲みたいわ
アディティ様からもらってきてくれる?


~ リザルトノベル ~

 昏かった。
 月のない新月の夜とは言え、その世界は昏きに過ぎた。
 澱んだ空気。
 満ちる退廃。
 神は消え。
 魔は沈み。
 それでもなお。
 世の歪みは消えず。
 虚しき悪意も、また絶えず。

 ◆

「スラムの街並み、何だか少し懐かしいわね」
 昏い路地裏を歩みながら、『リコリス・ラディアータ』はそう独り言ちる。
「ま、ね。何だかんだ、わたしらの人生には重要な要素だしね~」
 隣りを歩いていた『セルシア・スカーレル』がそう言って『ねぇ、同胞』などと笑む。
「と言っても、もうあんな暮らしは懲り懲りだけど」
「同意」
 笑うのは、声だけ。その瞳は、獲物を探す猛禽の様に。

「変わんないなぁ……。本当に、変わんない……」
「神様がいなくなっても、人間がすぐに変わる訳じゃない」
 悲しげな『カレナ・メルア』に、『トール・フォルクス』は静かな声で言う。
「世界にはまだ悪い奴だっている。教団もまだまだ、忙しそうだな……」
 感じる視線。猜疑。妬み。恐怖。憎悪。
「でも、此処の人達の怯え方は変。貧しさとかひもじさだけじゃあ、こんな怖がり方はしないよ」
「ああ。つまりは、こう言う事だろ?」
 矢を放つ。真っ直ぐに飛んだソレが、闇に消える。
 呻き声。走り去る気配。
「気づいてた?」
「当然さ」
 此処に入ってから、ついて来ていた気配。心当たりがあった。
「人形遣いの手下。バレてないつもりだったのかな?」
 腕の『ウニコルヌス』を唸らせるカレナ。彼女が機会を伺っているのに気づいたから、トールは先手を打った。
 無駄な人死には、無いに越した事はない。
 もっとも、その起因は彼女達の忌しき過去。理解している。だからこそ、今回の作戦を成功させる事は意味がある。
(それに、リコも昔、同じ目に会いかけたらしいし。こういう組織は早めに潰していかないと……)
 人身売買組織。神無き世に尚残る、明確なる悪意の具現。
 調査の結果、統べるモノが人外であると知れた事がせめてもの救い。
「そんな訳だから、カレナ、セルシア、今回もよろしくな」
「でも、ほどほどにね」
「了解」
「はーい」
 頷き合う皆の行手。アジトと定めし廃墟の館が、闇に佇む。

 ◆

 敷地に踏み入るなり、開け放しの入り口や割れた窓の中から飛んでくる銃弾。魔法弾。
「……思いの外、強力だな」
「頭があの人形遣い(悪魔)だからねぇ。強化でもされてるんでしょ」
 応戦しながらぼやく、トールとセルシア。その二人の横を、リコリスとカレナが駆け抜けていく。
 ――相手は人形遣いだ。なら、俺達がここを突き止めたのは知られているだろう。搦手も得意じゃないし、一気に突っ込もう――とは、トールの談。
 少ない人手。元より消耗戦は得策の筈もなく。加えて女性三人は揃ってバトルモード。異論など、出る道理もない。
「先に、行ってるわ」
「気をつけろよ」
「ええ。後方支援、お願い」
「任せろ」
「かしこまり」
 トールの範囲攻撃とセルシアのダガーが、精密作業の様に敵を薙ぎ払う。それを背に、カレナの構えたパイルバンカーを盾に、リコリスは入り口に向かって走る。
「相変わらず、速いわね」
「お姫様は、守らなくちゃ」
 相変わらずの天然たらし。あのヤンデレに刺されなきゃ良いがと苦笑する。
 迫る入り口。並ぶ構成員達が、障壁を張る。その奥に、蠢く影一つ。
「……居るよ」
「ええ……」
 獲物を捕捉した二人の目が、鋭く光る。
「ぶち抜くから、追いかけて!」
「分かったわ!」
 迫る二人に備える様に、障壁の向こうの構成員達が武器を構える。ウルコルヌスの能力、『開闢の獣牙(フォールティア・デンス)』に対する備え。やはり、情報は知られているらしい。けれど。
「キミ達なんかに……」
 彼女の構える破獣の頭骨。立て続けに薬莢を吐く。
「つっかわないよ!」
 最大出力で放たれた鉄杭が、物理威力だけで障壁も構成員もまとめて吹っ飛ばす。
 状況を一歩引いた所で見ていたのは、黒衣を纏った小柄な人物。フードの中で笑む気配を残すと、踵を返して走り出す。
「待ちなさい!」
「リコさん、コイツらボクが引き受けるから! 追いかけて!」
 生き残りの構成員をウルコルヌスで殴り倒すカレナの声に、頷くリコリス。
「分かったわ、気をつけてね!」
「リコさんもね!」
 頷き合うと、リコリスは黒衣が消えた闇に向かって走り出した。

 ◆

「待ちなさい!」
 逃げる黒衣を、追う。満ちる闇に溶け込もうとする姿を、魔力探知始め、あらゆる感覚器官を駆使して捕捉する。見失いさえしなければ、足では負けない。
 やがて走り出たのは、アジトの裏手。
「逃がさないわよ!」
 言われて、止まる馬鹿はいない。
(たった一欠片でも、潰しておかなきゃ)
 其は、無限の災厄を振り撒く禍つの誘い手。決して、許してはならぬモノ。
 抜き放つ、『告天子』。
「Show must go on!」
 解号。歌。
「!」
 一変した世界の感覚。黒衣が、足を止める。
「……空間閉鎖? 厄介な術を、お持ちの様で」
「『クライマックス・フィールド』。告天子(この子)の第二能力」
 周囲を見回しながら向き直る黒衣。歩み寄りながら、リコリスは言う。
「外界との支援のやり取りは不可能。体の一部も、使い魔なんかも、通り抜け禁止」
「それはそれは。嫌なモノですね」
 まろび出た白い手が、被っていたフードを払う。
 現れたのは、長い黒髪。エレメンツの少女の顔。知る風貌ではない。けれど、纏う魔力の禍しさを見誤りはしない。
「……お色直しが好きね」
「数少ない趣味でして。この世界のエレメンツは美しいですからね。良い機会ですので、『頂戴』させていただきました。もっとも……」
 綺麗な顔が、ニヤリと歪む。邪悪と言う概念。その、具現。
「『生命』と言う、高慢極まる芸術紛いを嬲る悦には、到底及ぶ筈もありませんがぁ!?」
 走る風。閃いた刃を、人形遣いの手が無造作に掴み止める。
 歪なつばぜり合い。冷ややかな声で、リコリスは言う。
「悪魔は見てくれは綺麗でも、声は聞くに堪えない。話に聞いた通りね」
「人の語りは、得てして真理を捉えるモノです」
 弾ける衝撃。間合いを取ったリコリスが、告天子を見せつけて挑発する。
「さあ、ショーを続けましょう!」
「では、ダンスのお相手をいたしましょう。伴侶を奪えば、相方の方はどんな憎悪と絶望を見せてくれましょうや?」
「言ってなさい!」
 再び風となったリコリスが肉薄する。華麗に素早く。ステップを踏んで、攪乱。魔性憑きの神髄。目視も困難な連斬。けれど、人形遣いは人外の反射で尽くそれを弾く。
「素敵なダンスですね。良い目の癒しです」
 連続展開する障壁の間を縫って伸びくる手。猛禽の様に長い爪が、リコリスの顔に掴みかかる。
「!」
 咄嗟に逸らす。冷たい痛みと共に、頬に一筋朱が走る。
「いけませんね。避けないでください。綺麗なお顔が、壊れてしまいます」
「狙っておいて、結構な言い様ね」
「だからですね、切り取って持って行きたいのですよ。腐敗しない様に加工して、飾って差し上げます。自分の美が永遠に残るんですよ? 女性冥利でしょう?」
「……もてないわね。あなた」
 嫌悪の籠った一撃が、人形遣いの肩を裂く。飛び散る鮮血。けれど動じる様子もなく、人形遣いは笑う。
「あはは! 人の愛なぞ、虫唾が走るだけです。あなた達はただ、私の手で踊る玩具であればいいのです!」
「お断りよ!」
 もう一度。今度はフェイントを入れて、心臓を狙う。しかし。
「もう、飽いました」
 伸びた手が、告天子の刃に突き刺さる、握り込み、幾重の捕縛魔法がリコリスの腕を絡める。
「ち……」
「捕まえましたよ。可愛い小鳥(ナイチンゲール)」
 歪な笑みを浮かべ、勝ち誇る人形遣い。
「それにしても、あなたのこの能力は些か厄介に過ぎますね。こと、私にとっては鬼門でしかない……」
 周囲を囲むフィールドを鬱陶しそうに見回して、リコリスを見る。
「このタイプの術式は時間制限があるのが定番ですが、待つ義理もありません。術者が死ねば解除されるも、また定番。如何です?」
 黙って睨み返すリコリス。肯定と受け取り、笑む。
「どの道、この世界で私が遊ぶには能力保持者のあなたは邪魔ですし、この場で片付けておくのが得策でしょう」
 告天子を押さえるのとは別の手の爪が、軋み声を上げて伸びる。
「では、さようなら。リコリス……いえ、『ララ・ホルツフェラー』」
「……知ってるの?」
 業とらしく投げかけられたその単語に、リコリスが眉を潜める。
「ええ。この世界の事は、何でも。光も闇も、善も悪も。全ては心を抉る刃に変えられますから」
「勤勉なのね」
「お褒めに預かり、光栄です。ラ……」
「でも、駄目よ」
 嘲りの言葉を、冷たい声音が遮る
「その名前を呼んで良いのは……」
 瞬間、走る風切り音。人形遣いが顔を上げると同時に、その眉間に突き刺さる矢。
「俺だけの権利なんでね」
 リコリスの向こう。ボウガンを構えたトールが、激情を込めた眼差しで見つめている。
「何故……?」
「言ってなかった? 私が指定した相手以外は、出入り自由なのよ。このフィールド」
「……何と、都合の良い……」
 不敵に笑むリコリスを、忌々しげに睨む人形遣い。せめても道連れにと言う様に、爪を振り上げる。
「ところがギッチョン!」
 セルシアの声と共に、飛来するダガー。人形遣いには毒華鳥(ピトフーイ)。リコリスには、叛逆の羽風(イカルス・アルビオン)。
 停滞と活性。相反する毒が、二人の身体を同時に蝕む。
「ぬぅ!?」
「離れなさい!」
 力を奪われ、弱まる拘束。増した力で引きちぎり、蹴り飛ばすリコリス。
「変な執着こいて既存の生物体なんか着込むから、そーなんの!」
 嘲るセルシアの横を、紅い影が駆け抜ける。
「リコさん」
 抜ける瞬間、届く声。
「決めて」
 理解し、頷く。
「玩具は大人しく嬲られていればいいもの、を……!?」
 体勢を立て直そうとした人形遣いに肉薄する少女。驚く視界に、真っ赤なポニーテールが踊る。
「開闢の獣牙(フォールティア・デンス)!」
 穿つ牙が、人形遣いの全ての盾を破壊する。
「……これまで……」
 勝機が失せた事を悟った人形遣いの背中が弾け、黒い翼が広がる。けれど。
「告天子」
『承りました。マスター』
 吹き上がる歌と羽根。飲み込まれる感覚に、下を見る。見えたのは、不敵な笑みを浮かべるリコリスの顔。
「逃がさないって、言ったでしょう?」
 全てを悟った人形遣いもまた、笑う。
「成程。『此の私』はここまでですね。でも、私は『個』には非ず」
 聖翼の顎(あぎと)に呑まれながら、それでも邪悪の笑みは消えない。
「また、お会いしましょう」
 捕食封印。
 後にはただ、薄く満ち始めた朝霧が揺れる。

 ◆

「リコさん!」
「あらら。大丈夫」
 フラリと倒れたリコリスに、皆が駆け寄る。
「……まだ、反動が大きいみたい……。でも、すぐにきっと使いこなして見せるわ……」
 強がる彼女を抱き起したトールが、愛しく微笑む。
「リコ、お疲れ様」
 嬉しそうに微笑み返して、リコリス。
「それにしても、疲れた……。甘光が飲みたいわ……。アディティ様から、貰ってきてくれる?」
「うぇ!?」
「マジで!?」
 想起されるは、名伏しがたき恐怖。硬直する、カレナとセルシア。
「……あの、滅茶苦茶甘いやつを……?」
 引き攣る恋人に、綻ぶ様な笑顔を向けて。
 リコリス・ラディアータはゆっくりと頷いた。


Show must go on.
(執筆:土斑猫 GM)



*** 活躍者 ***

  • リコリス・ラディアータ
    貴方が貴方なら王子様は必要ないの
  • トール・フォルクス
    世界と戦うお姫様と共に

リコリス・ラディアータ
女性 / エレメンツ / 魔性憑き
トール・フォルクス
男性 / 人間 / 悪魔祓い