白ネコと一緒にハーモニー
とても簡単 | すべて
6/8名
白ネコと一緒にハーモニー 情報
担当 留菜マナ GM
タイプ ショート
ジャンル ハートフル
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 ほんの少し
相談期間 5 日
公開日 2018-05-04 00:00:00
出発日 2018-05-12 00:00:00
帰還日 2018-05-19



~ プロローグ ~

 ここは、教皇国家アークソサエティの西部に位置する、巨大都市エトワール。
 エトワールの中心街にあるリュミエールストリートでは、この日も『蚤の市』とも呼ばれている、フリーマーケット、オルヴワルが賑わっていた。
 フリーマーケットには、商人が持ちよった野菜、海産物類、そして珍しい骨董品の数々が並んでいた。あらゆる国々から集められたさまざまな品物が、ここでは手に入る。
 だが、フリーマーケットを訪れた一組の浄化師達は、そこで商人達の悲鳴を耳にした。
「俺の商品がない!」
「私の商品もないわ!」
「俺のところもなくなっている!」
 商人達の話を聞いてみると、フリーマーケットで売っていた商品が次々と姿を消しているというのだ。
 しかもすべて、珍しい骨董品の数々だという。
 消えた商品は、誰かに盗まれてしまったのだろうか?
 だが、誰も商品が盗まれるところを見ていないと言う。
 不可解な現象に、浄化師達が悩んでいると、足元から不思議な歌声のような鳴き声が聞こえてきた。
「にゃにゃー、にゃーにゃー」
 浄化師達が視線を落とすと、そこには何やら綺麗な石をくわえた白猫がそそくさとその場から立ち去ろうとしていた。
 浄化師達と同じように、白猫に気づいた商人の一人が叫んだ。
「あれは、俺の商品だ!」
「何だって……あっ!」
「にゃん」
 すかさず、捕まえようと手を伸ばした商人達だったが、白猫は商人達の隙をついて身を翻し、フリーマーケットから立ち去ろうとしてしまう。
「待て!」
「待ちなさい!」
「――にゃ!? にゃあ、にゃあ!」
 しかし、行く手を拒むようにして立ち塞がった浄化師達によって、白猫は呆気なく捕まってしまった。
 女性の商人は、白猫を捕まえた浄化師達に視線を向けると顔を曇らせて言った。
「この猫が盗んだの?」
 女性商人の疑問を受けて、別の商人が感情を抑えた声で淡々と続ける。
「誰かが、この猫に手引きして盗ませていたかもしれないな」
「すべては、この猫が鍵を握っているのか」
 これ見よがしにその商人が言うのを聞いて、浄化師の一人、祓魔人の男性は静かにそう告げると、顎に手を当てて真剣な表情で思案し始める。
「とにかく、このまま野放しにはできないな。盗んだ商品の在り処を突き止めるためにも、しばらく、この猫を預からせてもらおう」



 後日、教団本部に、白猫を手引きした男が捕まったという連絡が入った。
 だが、盗まれた商品は見つかっておらず、男も盗んだ商品に関しては一切、話そうとしない。
「盗んだ商品はどこにあるんだ?」
「にゃー」
 祓魔人の男性が聞いても、白猫は知らんぷり。
「どうしたら教えてくれるんだ?」
「にゃ~ん」
 白猫は悩むように視線を泳がせ、やがて部屋の机に飛び乗った。そして、置いてある羽ペンを取ると、浄化師達の方へと向ける。
「もしかして、一緒に歌ってほしいのか?」
「にゃーにゃーにゃー」
 そういえば、白猫と初めて出会った時、歌のようなものを歌っていたような気がする。
 マイクのように差し出されたペンの先端をじっと見つめながら、祓魔人の男性とパートナーの喰人の女性は少し照れくさそうに歌を歌ってあげた。
 だが、白猫はまだ歌いたいとねだるように、両手を広げて喰人の女性の顔を見上げる。
「えっ? まだ、歌いたいの?」
「にゃー」
「ねえ、さすがにずっと付き合うわけにもいかないし、他のみんなにも声をかけてみましょう」
 白猫と一緒に歌ってあげたら、盗んだ商品の在り処が分かるかもしれない。


~ 解説 ~

・目的
 あなたとパートナーは、浄化師の仲間に頼まれて、教団にある声楽部を訪れました。
 ここで、白猫と一緒に歌を歌ってあげて下さい。
 一緒に歌うのを付き合ってくれたら、白猫は盗んだ商品が置かれている場所を教えてくれます。
 それぞれの浄化師達と白猫による個別描写になります。

・白猫の名前
 白猫は、ネネという名前です。
 歌詞に名前を入れると、喜んでくれるかもしれません。

・白猫と一緒に歌う歌について
 歌の歌詞は、あなたとパートナーで決めることができます。
 歌詞は30文字以内でお願い致します。
 どうか、ネネと一緒に素敵な歌を歌ってあげて下さい。


~ ゲームマスターより ~

 初めまして、留菜マナと申します。
 初めてのエピソードになります。
 GM未経験なので、ご迷惑をお掛けしてしまうかもしれません。
 少しでも楽しんで頂けるように頑張っていきます。
 どうぞよろしくお願い致します。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ラシーファ・エルダム アルティス・ディア
男性 / エレメンツ / 断罪者 男性 / ヴァンピール / 占星術師
声楽部でしたらピアノがありそうですね
可能ならお借りしましょうか

その場で即興で作曲
マイク代わりの羽根ペンをピアノに置いて、歌いたいと思います
結構どの趣味を学んでも飽きやすいのですが、歌は何だかんだで大好きです

ネネに対して歌詞で、歌いながらネネを褒め続けます
僕はお世辞って苦手なんですけれども、実際、白猫って可愛いですよね。歌っていると、一層楽しくてうきうきします

ネネにも一緒に歌ってもらえるなら、途中から羽根ペンをそちらに向けて、ネネにも気持ちよく歌ってもらえたら嬉しいです
満足してもらえるまで歌います、耐久レースな気配もしますが、あまり苦になりません
猫と歌を歌える機会だなんてなかなかありませんからね
朱輝・神南 碧希・生田
女性 / 人間 / 魔性憑き 男性 / ヴァンピール / 占星術師
猫可愛いわよね
(マイクテストの真似事をする碧希とネネを見ながら)
盗人の片棒担がせるなんて酷い男もいたもんだわ
ま、私達はこっちを何とかしないとね

そうね、あと明るい曲調がいいかしら?
折角歌うなら楽しまないとね
歌うのは好きよ、私
楽しい事もね

ん、手?
これでいいの?
(碧希の手を握って、そのまま碧希の歌を聴き)

ふふ
ネネが喜んでくれるように、歌詞を考えたのね
碧希君は、誰かの気持ちに寄り添うのが上手いから
(呟いて感じる微かな胸の痛みに胸中で首を傾げつつ)

……何でもないわ!(ぱっと笑って見せ)
さ、歌いましょう!(繰り返し歌う)
シャルル・アンデルセン ノグリエ・オルト
女性 / 人間 / 魔性憑き 男性 / ヴァンピール / 人形遣い
猫さんの器用さは正直にすごいなって思うんですけど。
猫さんに泥棒の手伝いをさせるなんてひどいです。
猫さんにお歌を歌って喜んでもらえるなら歌いますよ。
ん~でも歌を歌うことはあっても歌詞を考えるなんてあんまりなかったので悩みますね。
心のままに、ですか?そうですね。思った通り歌ってみましょう。
ノグリエさんも一緒に!

ネネちゃんネネちゃん可愛い白猫さん♪
お歌をうたいましょう♪
可愛い白猫さんはどんなお歌が好きかしら♪
さあ、一緒に歌いましょう♪

あ、喜んでくれたみたいですねよかった。
他の浄化師さんのお仕事を邪魔しちゃいけませんよ。
盗んだ物の場所も教えてくれるといいんですが…持ち主さんが困ってるでしょうから…。
ベアトリス・セルヴァル ジョシュア・デッドマン
女性 / ライカンスロープ / 魔性憑き 男性 / アンデッド / 陰陽師
綺麗な猫さんだねえ
しかも話を聞く限りとってもお利口さんみたい!

顎まわりとか尻尾の付け根を撫でてあげたら喜ぶかな?
ジョシュアと交互に撫でて挨拶代わりにしよう!
だって、ほら、多人数で演奏とかする前にセッション?ていうのするじゃない?そんな感じ。
ジョシュア、いつになく上機嫌だけどもしかして動物好きなのかな?

歌…即興の歌詞かー
よし!じゃあ猫さんの気持ちになる!
うーん、こんなんできました!

【歌詞】
そこ行く猫さん
ねーねー猫さん
一緒に散歩しよう
ミクリクミクリク

名前のネネちゃんと、呼び掛けのねえねえをかけてみた!(ドヤーッ)
あとは、もしあたしが猫だったら何したいか気ままに考えてたらこうなったよ。
ロス・レッグ シンティラ・ウェルシコロル
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / エレメンツ / 陰陽師
歌詞:GOGO 華麗なる身の軽さと勇気を持って立ち向かえ、ネネ!

「ティ、それ歌詞か?ほんわかした、この場の雰囲気に合わねぇくねぇ?」
「とりあえず、こうカッコイイのをと(真剣)」

■目的
ネネを和ませる

∇ティ
ハーブを使い音楽を奏でる
技術はないので下手だが元気よく引いてアップテンポを目指す
しかし勢い良すぎて多分弦が切れる
ネネが不満そうなら
ゆっくり奏でてみる
もしくはネネの目の前に差し出し弾いて貰ってみる

∇ロス
トランスで狼姿に
初めは少しネネと距離を開けて様子見
ネネの警戒心がないようなら近付いて
ティの音楽に合わせて踊りネネを誘う

最終的には狼姿のままティの元(抱き上げて貰い)でまどろむ
ネネにも誘いをかけてみる
明智・珠樹 白兎・千亞
男性 / ヴァンピール / 拷問官 女性 / ライカンスロープ / 魔性憑き
【目的】
白猫さんと一緒に歌い、盗品の在処を教えてもらいたい。
ネネの保護先や飼い主を探したい。

【千亞心境】
動物を悪さに利用するなんて許せない!(頬を膨らませ)

【明智心境】
…ふ、ふふ。千亞さんと白ネコさん、あぁ、白同士愛らしく麗しい…!(ときめき)
それに、千亞さんの歌が聴けるのは初めてです。
ネネさんに感謝せねばなりませんね、ふふ…!

【歌】
千「ネネちゃん、僕は千亞。よろしくね(微笑み)」
明「明智と申します。共にハーモニーを奏でましょう…!」

♪歌詞
『僕らの希望を知りし 白猫ネネよ その歌声と共に 僕らを導いて』

千「歌と言うより僕の心境だね。隠したものの場所、教えてくれるかな?
 足りなかったらいくらでも歌うよ」


~ リザルトノベル ~

●ラシーファ・エルダムとアルティス・ディアのハーモニー

「声楽部ならピアノがありそうですね。可能ならお借りしましょうか」
 ラシーファ・エルダムはそう告げると、椅子に座ってピアノの音を確認し始める。
「にゃー?」
 ピアノと聞いて、ネネは興味津々な様子でラシーファに近づいていく。
 ピアノの音合わせを終えた後、ラシーファはネネに視線を向けると穏やかに微笑んだ。
「その場で即興での作曲になりますが……そうですね。ネネがしたように、羽ペンをピアノに置いてマイクの代わりにして歌いましょうか」
「にゃー」
 自分のアイデアを取り入れてもらえて、ネネは嬉しさを噛みしめるように両手を広げる。
 ピアノを弾きながら、ラシーファは自身が考えた歌を紡ぎ始めた。

『ネネはとても可愛い子猫。瞳も毛並みもその歌もとても綺麗で素敵。さあ、ネネも一緒に歌いませんか?』

「にゃー」
 ラシーファに促されて、ネネは途中で差し出された羽ペンに向けて歌い始める。
『ネネはとても可愛い子猫。瞳も毛並みもその歌もとても綺麗で素敵』
「にゃん、にゃにゃー」
 ラシーファは片手でピアノを弾きながら、ネネと一緒に歌い続ける。
 その仲睦ましげな様子を見て、アルティス・ディアはやれやれとため息を吐いた。
「さて、ラシファが遊んでいる間に、私はゆっくりとのんびりと一人の時間を過ごし――」
「歌ってください」
 ラシーファは立ち上がると、声楽部から立ち去ろうとしていたアルティスの行く手を遮るようにして立ち塞がった。
「さて、何だろう。聞こえなかったかな」
「歌ってください」
 言いようのない眼力と名状しがたい圧力。
 戦闘で感じるのとは別種のプレッシャーを与えてくるラシーファに、アルティスは呆れたように言う。
「今年28の一般成人男性に一体何を求めているのかな、お前は」
「良かったですね、ネネ。一緒に歌ってくれるそうですよ」
「にゃー!」
「……」
 即座にネネに対して笑顔を浮かべるラシーファを前にして、アルティスはこれから付き合わされる歌の一環をふと思い浮かべてしまい、今更ながらに頭を抱えたのだった。


(一通り、付き合った……。ラシファには少し男の年齢について語る必要がありそうだね)
 今もまだ、ネネと一緒に歌っているラシーファを見つめていたアルティスは、驚いたような嬉しいような、でもどこか受け入れられないような、複雑な感情が入り交じっていた。
 そのまま、逡巡するように、ネネを眺めた後で思う。
(……さておき、少しネネにも情が湧いたから、担当の教団員の方に伝えておこう。『この猫は悪くないので、咎めないでやってほしい』と)


●朱輝・神南と碧希・生田のハーモニー

「これ、マイクの代わり? あーあー、マイクテスマイクテス……」
「にゃーにゃー」
 ネネから差し出された羽ペンを手に取り、碧希・生田はネネと一緒に声を発する。
「猫、可愛いわよね」
 マイクテストの真似事をする碧希とネネを見ながら、朱輝・神南は花咲くような笑みを浮かべた。
「盗人の片棒を担がせるなんて酷い男もいたもんだわ。ま、私達はこっちを何とかしないとね」
 朱輝がそう言って碧希達のもとに歩み寄ると、碧希は膝をついてネネに語りかけた。
「お前、ネネって言うんだな。話は聞いているよ。一緒に歌って欲しいんだって?」
「にゃー」
 ネネが頷くと、碧希は立ち上がって顎に手を当てる。
「シンプルに歌いやすいのがいいかなあ」
「そうね。あと、明るい曲調がいいかしら? 折角歌うなら楽しまないとね。歌うのは好きよ、私。楽しいこともね」
「うん、俺もそう思う! こういうのは楽しまないとな」
 朱輝の案に、碧希は顔を輝かせた。
「じゃあ、朱輝、お手を拝借!」
「ん、手? これでいいの?」
 朱輝が訳が分からぬまま、手を差し出すと、碧希は朱輝の手を握る。
 そして、周囲やネネにぶつけない程度に前後に振りながら、ネネのために考えた歌を歌う。

『白猫ネネは街一美人。街を歩けば皆が見てる!』

「にゃー」
 碧希の歌を聴いていた朱輝は、碧希と照れるように頬を撫でるネネを交互に見ながら笑みを浮かべた。
「ふふ、ネネが喜んでくれるように、歌詞を考えたのね。碧希君は、誰かの気持ちに寄り添うのが上手いから」
 最後にそう寂しげに呟いた後、朱輝は何かを訴えかけるように感じる微かな胸の痛みに手を当てる。
 朱輝が胸中で首を傾げていると、碧希は不思議そうに聞いた。
「……ん? 朱輝、どうしたの?」
「……何でもないわ!」
 碧希の言葉に、朱輝はぱっと笑ってみせた。
「さ、歌いましょう!」
「何でもないならいいけど、体調悪いとかなら無理しないようにね」
 碧希はそう言いつつ、朱輝とネネと一緒に繰り返し歌う。
『『白猫ネネは街一美人。街を歩けば皆が見てる!』』
「にゃーにゃー」
 碧希は歌を口にしながら、隣の朱輝の様子を見た。
 いつも輝いている朱輝の日長石の瞳には、先程は何故か切ないような色があった。
 だけど、今は何事もなかったように、朱輝はネネと一緒に楽しそうに歌っている。
 あの時、朱輝の表情が曇った理由は分からない。
 だけど、朱輝には笑っていてほしいと碧希は思った。


●シャルル・アンデルセンとノグリエ・オルトのハーモニー

「猫さんの器用さは正直すごいなと思うんですけど、猫さんに泥棒の手伝いをさせるなんてひどいです」
「気紛れな猫に芸を仕込む……というのは確かに素晴らしいとは思いますが、盗みの片棒を担がせるのはいけませんね……」
 シャルル・アンデルセンが両手を握りしめて、怒った仕草を見せると、ノグリエ・オルトは率直に言う。
「にゃー」
「ボクも猫は好きですし、何よりシャルルが怒っていますから」
 ネネが近づいてくると、ノグリエはため息をついて付け加える。
「猫さんに、お歌を歌って喜んでもらえるのなら歌いますよ」
「猫に歌を歌うために呼ばれたというのはいささかどうかと思いますが、シャルルの歌が聞けるのは嬉しいですね」
 シャルルのその言葉を聞いて、ノグリエは嬉しそうに笑みをこぼした。
「ん~、でも、歌を歌うことはあっても、歌詞を考えるなんてあんまりなかったので悩みますね」
 少し間を置いた後、シャルルは人差し指を立てるときょとんとした表情で首を傾げてみせる。
「歌詞ですか? そんなに難しく考えなくても、シャルルがよく歌ってる鼻歌みたいな感じでいいんじゃないでしょうか。あれはあれでとても可愛らしいですから」
「心のままに、ですか? そうですね。思った通り、歌ってみましょう。ノグリエさんも一緒に!」
「……えっ、ボクも一緒に歌うんですか……。シャルルが望むなら仕方ないですね」
 屈託のない笑顔でやる気を全身にみなぎらせたシャルルを見て、ノグリエは胸に滲みるように安堵の表情を浮かべる。

『ネネちゃん、ネネちゃん、可愛い白猫さん。お歌をうたいましょう。可愛い白猫さんは、どんなお歌が好きかしら。さあ、一緒に歌いましょう』

「にゃんにゃん、にゃにゃー」
 シャルルとノグリエの歌声につられて、ネネも一緒に歌い始めた。
「あ、喜んでくれたみたいですね、よかった」
「あぁ、やっぱりシャルルの歌はいい。猫も喜んでくれてるみたいです」
 ネネの反応に、シャルルはノグリエと顔を見合せると、ほっとしたようにほんわかと笑ってみせる。
「他の浄化師さんのお仕事を邪魔しちゃいけませんよ。盗んだ物の場所も教えてくれるといいんですが……持ち主さんが困ってるでしょうから……」
「ついでに盗ったものの場所も教えてくれると嬉しいんですが」
「にゃー」
 シャルルとノグリエの懇願に、ネネはもう少しだけ、歌いたいとねだるように両手を広げる。
「もう少しお歌を歌ったら、教えてくれるみたいです」
「そうみたいですね」
 周囲に光を撒き散らすような笑みを浮かべるシャルルを、ノグリエは眩しそうに見つめていた。


●ベアトリス・セルヴァルとジョシュア・デッドマンのハーモニー

「被害者の届けがあるなら、盗まれた品の申告もある筈。場所を教えてくれた時のことを考えて、探し物リストを作れるなら作りたいね」
 ジョシュア・デッドマンは声楽部内を見渡しながら言った。
「発見時に照合できれば、手間が減る。面倒が減るなら、それくらい頑張りますよっと」
 使えそうなものに歩み寄り、ジョシュアは簡単な事務作業ができる場所を設置する。
 そして、声楽部を出て、担当の教団員から今回の件の申告書を受け取った。
「担当の教団員から盗まれた品の申告書を受け取ってきたが、思っていたよりも盗まれた品の量は多くないようだ」
 リストを作成すると、ジョシュアは様子を伺っていたネネに歩み寄る。
「それで件の猫は……ははぁ、毛並みの良い猫だな」
「綺麗な猫さんだねえ。しかも、話を聞く限り、とってもお利口さんみたい!」
 ベアトリス・セルヴァルは、ジョシュアの言葉に応えるように頷いた。
「犯罪の手助けにするとは猫の手も借りたかったんだろうが、無粋だね」
 ジョシュアは苦々しく眉根を寄せる。
「顎まわりとか尻尾の付け根を撫でてあげたら喜ぶかな?」
 ベアトリスはうずうずとした顔で、ジョシュアに声をかけた。
 挨拶代わりに、ベアトリスはジョシュアと交互にネネを撫でる。
「よしよし」
「にゃー」
(ジョシュア、いつになく上機嫌だけど、もしかして動物好きなのかな?)
 上機嫌でネネを撫でるジョシュアを見て、ベアトリスは不思議そうに首を傾げた。
「歌……即興の歌詞か―。よし! じゃあ、猫さんの気持ちになる!」
 頭を切り替えるように一気にそう言い放つと、ベアトリスはネネと一緒に歌う歌詞を模索する。
「うーん、こんなんできました!」
 少し間の置いた後、ベアトリスは弾けるような笑顔を浮かべた。

『そこ行く猫さん。ねーねー猫さん、一緒に散歩しよう。ミクリク、ミクリク』

「にゃん、にゃん」
 マイクの代わりに羽根ペンを握りしめたベアトリスが、ネネと一緒に歌う。
 ミクリクは、固い地面と猫の爪がぶつかる小さな音を表している。
「名前のネネちゃんと、呼び掛けのねえねえをかけてみた!」
「子豚作の歌詞。なんというか……あはは、脳みそが溶けそうな歌だな」
 ベアトリスがドヤーッとばかりに力説すると、ジョシュアは軽く肩をすくめてみせる。
「あとは、もしあたしが猫だったら、何したいか気ままに考えていたらこうなったよ」
「子豚が猫だったら、散歩どころか、辺りを走り回って世話が大変そうだ」
 猫の姿のベアトリスを想像して、ジョシュアはうんざりとした顔でため息をついた。


●ロス・レッグとシンティラ・ウェルシコロルのハーモニー

(人の言葉が解るってことは、俺と同じライカンスロープなような)
「にゃー?」
 トランスで狼姿になったロス・レッグは、きょとんとしているネネに視線を向ける。
(トランス状態で中に商品を隠してっのかなーとか、ちらり、と思っけど。下手なことを言って機嫌こねられても……今がその状況か)
「ロスさん、準備できました」
 ネネと少し距離を開けて様子見していたロスに対して、ハープを弾く準備を終えたシンティラ・ウェルシコロルが声をかけた。
「おぉー、ティ、さんきゅーな!」
 ロスはそう告げると、シンティラのもとに駆けていく。
 目の前のハープに恐縮しながらも、シンティラはネネをそっと窺い見る。
(猫かわいいっ! 可愛いです。懐いてくれるんでしょうか)
 目を輝かせているシンティラをよそに、ロスはネネを注意深く観察した。
(珍品ばかりっつーから、やっぱこう意図的なもんあっだろっし、その男の願い事を何でネネが聞いたっつーのは不自然な? 物が戻って来れば問題ねぇし、戻って来たら来た時に事実は解っだろっし、あんましこっちでグルグル考えてっの悟られっのは事実隱遁される恐れがあっから、まー楽しくしてもらっのが一番な!)
 感慨深くロスが物思いに耽っていると、シンティラは元気よくアップテンポの曲を目指して、ハープを奏でながら歌う。

『GOGO、華麗なる身の軽さと勇気を持って立ち向かえ、ネネ!』

「ティ、それ歌詞か? ほんわかした、この場の雰囲気に合わねぇくねぇ?」
「とりあえず、こうカッコイイのをと」
 あくまでも真剣な表情で言うシンティラに、音楽に合わせて踊っていたロスは苦笑する。
「おぉ、ネネも歌って踊ろっか」
「にゃー」
 ネネに警戒心がないことが分かったロスは、歌いたそうにうずうずしているネネに呼びかけた。
 シンティラがハープを奏でて、ネネと一緒にロスが踊る。
 しかし、歌いながら軽快なテンポの曲を奏でていたためか、勢い良すぎて弦が切れてしまう。
「……あっ、弦が――ネネさん!」
「にゃー」
 途中で弦が切れて困っているシンティラのもとに、ネネが駆けつけて弦を奏でる。
「ハープを弾くのを手伝ってくれるのでしょうか?」
「にゃー」
「まー楽しく弾くっのが一番な!」
「はい」
 シンティラはロスを抱き上げると、まどろむロスの言葉に頷いた。
「ネネ、歌い終わったら、一緒にゴロゴロまったり、だ」
「にゃん!」
 ロスの誘いに、シンティラのもとにやってきたネネを見て、シンティラは嬉しそうに笑みを浮かべた。


●明智・珠樹と白兎・千亞のハーモニー

(動物を悪さに利用するなんて許せない!)
(……ふ、ふふ。千亞さんと白ネコさん、あぁ、白同士愛らしく麗しい……!)
 頬を膨らませ、怒った仕草を見せる白兎・千亞をよそに、明智・珠樹は愛おしげに胸をときめかせた。
(それに、千亞さんの歌が聴けるのは初めてです。ネネさんに感謝せねばなりませんね、ふふ……!)
 珠樹は、怒り心頭の千亞を見て意味深に笑う。
 ネネと対面した珠樹と千亞は、それぞれ異なる想いを抱いていた。
「ネネちゃん、僕は千亞。よろしくね」
「明智と申します。共にハーモニーを奏でましょう……!」
「にゃー」
 千亞と珠樹の言葉に、ネネは元気よく答える。
「さあ、千亞さん。千亞さんが一生懸命、考えた歌を共に歌いましょう」
「分かっている」
 そう答えたものの、千亞は少し浮かない顔をしていた。
 緊張しているのか、かすかに肩を震わせている。
 やがて、千亞は珠樹に目配りしてみせると自身が考えた歌を口にした。

『僕らの希望を知りし、白猫ネネよ。その歌声と共に、僕らを導いて』

「にゃー」
 千亞の透き通るような歌声と珠樹の低く艶やかな歌声のハーモニーに、ネネはうっとりとする。
「歌と言うより僕の心境だね。隠したものの場所、教えてくれるかな? 足りなかったら、いくらでも歌うよ」
「にゃー」
「ふふ……、『にゃー』だそうです」
「黙れ!」
 珠樹がネネの代わりに答えると、千亞は不服そうに声を上げた。
「歌うことは好きだけど……作曲や作詞は初めてだね。ちょっと緊張したよ……」
「あぁ、千亞さんの曲、声、素晴らしいです、ふふ……!」
「た、珠樹のために歌ったわけではない! 忘れろ!」
 珠樹の称賛に、千亞は顔を真っ赤に染めた。
 苛立ちの混じった千亞の声にも、珠樹は淡々と笑みを浮かべる。
「また、聴かせていただきたいです、ふふ……!」
(珠樹の歌声も新鮮だし……意外と上手なんだな……)
 珠樹の歌声を思い出して、千亞はしみじみとする。
 だが、千亞はネネを見ると深刻そうな表情を浮かべた。
「だけど、ネネちゃんはどうなっちゃうんだろう……。世話してくれる人を探したいな」
「でしたら、商人さん達に頼んで、ネネさんの世話をしてくれる方を探してもらいましょう」
「珠樹……」
 予想もしていなかった珠樹の言葉に、千亞は虚を突かれたように呆然とする。
「……ふ、ふふ。ネネさんの世話をしてくれる方が見つかれば、これからもそこに行けば、千亞さんとネネさんの歌声が聴けるのですね。あぁ、白同士愛らしく麗しい……!」
「もう嫌だ」
「にゃん?」
 幸せそうに語り続ける珠樹のその様子を、千亞とネネは唖然とした表情のまま見つめていた。


●それから

 ネネの案内、ジョシュアが作成した盗まれた商品のリストにより、男によって盗まれた骨董品の数々が無事に商人達のもとに戻ってきた。
 そして、珠樹と千亞が商人達に頼んだことで、ネネの新しい飼い主もすぐに見つかった。
 何でも、ネネに盗みを手引きした男は歌うことが好きだったようだ。
 生まれた時から男のもとにいたネネも、歌を好きになるのは自然だったかもしれない。
 今回、男が珍しい骨董品を狙ったのも、その中に含まれていた貴重な楽譜を手に入れるためだった。
 しかし、ネネは楽譜がどんなものか分からなかったため、商人達が口にしていた『骨董品』という言葉に反応して盗みをおこなったらしい。

 商人達の商品が戻ってきた数日後――。
 新しい飼い主のもとに行くことになったネネは、教団を見上げて歌を紡ぎ始めた。
 一つの歌を歌い終わったら、次の歌を歌う。
 それは、みんながネネのために考えた歌を順番に歌っているようだった。
 やがて、ネネの歌はハーモニーを奏でるように、風と競いあうように響き合いながら、終わりの近づく春の空に溶けていく。
 春が終わり、もうすぐ夏が来る。
 だけど、その日、春のような心温まるハーモニーを通して、ネネは大層満足そうな笑みを浮かべていた。


白ネコと一緒にハーモニー
(執筆:留菜マナ GM)



*** 活躍者 ***

  • ベアトリス・セルヴァル
    きっと、なんとかなるよね!
  • ジョシュア・デッドマン
    死人に鞭打たないで欲しいな
  • 明智・珠樹
    ふ、ふふ…!素晴らしいですね…
  • 白兎・千亞
    僕は千亞。よろしくね。

ベアトリス・セルヴァル
女性 / ライカンスロープ / 魔性憑き
ジョシュア・デッドマン
男性 / アンデッド / 陰陽師

明智・珠樹
男性 / ヴァンピール / 拷問官
白兎・千亞
女性 / ライカンスロープ / 魔性憑き




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/05/04-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[7] ラシーファ・エルダム 2018/05/08-22:16

おじゃまします。僕がラシーファで、あっちのがアルティスです。
個別ですが、僕も皆さんが子猫と何を歌われるのか、陰でこっそりと楽しみにしています。
こちらは作詞の才はないので、もの凄く先行き不安ですが、できるかぎり頑張ろうかなと。  
 

[6] 明智・珠樹 2018/05/08-21:40

はじめまして、明智珠樹と申します。
あちらの白兎っ娘はパートナーの千亞さんです。
朱輝さんご両人、ベアトリスさんご両人はお久しぶりですね、ふふ。
皆様何卒よろしくお願いいたします…!

実際に近くで皆様の歌は聴けないのやもしれませんが
皆様の白猫ネネさんとの交流、ひっそりこっそり
楽しみにしております…!!ふ、ふふ、ふふふ…!!  
 

[5] 朱輝・神南 2018/05/08-07:34

神南朱輝と、こっちは碧希君よ。
初めましての人もお久しぶりの人も、よろしくね。

猫可愛いわよね、盗人の片棒担がせるなんて許せないわ。
ともあれ満足して貰って、商品の在り処を教えて貰わないとね。  
 

[4] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/08-00:07

シンティラ・ウェルシコロルです。
そして、一緒にいるのはロスさんです。よろしくお願いします。  
 

[3] ベアトリス・セルヴァル 2018/05/08-00:03

こんばんは、ベアトリスとバディのジョシュアだよ!よろしくね~  
 

[2] シャルル・アンデルセン 2018/05/07-17:29