トーマスの哀哭
普通 | すべて
4/8名
トーマスの哀哭 情報
担当 oz GM
タイプ ショート
ジャンル 戦闘
条件 すべて
難易度 普通
報酬 少し
相談期間 6 日
公開日 2018-11-27 00:00:00
出発日 2018-12-06 00:00:00
帰還日 2018-12-15



~ プロローグ ~

 ヨハネの使徒の襲撃により損害を受けた村から「復興を手伝って欲しい」と嘆願を受けた教団は、浄化師を派遣した。
 そこは教皇アークソサエティの砦付近にある小さな村。牧羊で成り立っている小さい村だった――今はその面影もなく、一週間前に起こった襲撃による傷跡を深く残している。
 ヨハネの使徒との熾烈な戦いの跡が垣間見えるように民家は崩れ落ちている。村人の顔はどこか暗く、村全体に深い陰を落としていた。
 ヨハネの使徒は北側から村へと進入してきたようで、そこにあった民家や牧舎の被害は特に酷く半壊状態だ。幸いと言うべきなのか分からないが、ヨハネの使徒は人間のみを殺戮することだけを目的としていた為、家畜への被害はそれほどでもなかった。
 だが、人々の受けた被害は大きかった。
 村人からも多数の死者が出た上に、大切な人を亡くした者も多いが、砦に近い以上こうした襲撃はよくあることのようだ。村人の間には諦観の色が浮かんでいる。
 だが、今回は想定した以上に被害が酷く不安と動揺が広がっている。
 かろうじて残った建物を開放したり、それでも入りきれない者はテントを作ってそこで協力しながら暮らしているようだ。

 報告で聞いていた以上に酷い現状に、少しでも力になれればと浄化師たちは村人たちに教団から運んできた支援物資を手渡し、村長に何か手伝えることはあるかと尋ねた矢先のことだった。
「とっととここから出て行け、浄化師!」
 少年の鋭い叫びが響きわたる。激しい憎悪をくすぶらせた目で浄化師を睨みつける。
「どうせなんにもできねえ癖に、余所者がこの村に入ってくんじゃねえ!」
 そう吐き捨てた少年の年齢に見合わない一際暗い目に浄化師は言葉を失う。
 杖を突いた村長が慌ててトーマスの失礼な物言いに怒るが、
「これ、トーマス! せっかく来てくださった浄化師様にお前は何を言っとるんじゃ!」
 何も言わずに走り去ってしまった。
「待たんか、トーマス!」
 杖を上に振り上げ呼びかけるが、トーマスは振り返ることなく、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
「申し訳ありませぬ、村の子供が……」
 心底申し訳なさそうに謝る村長に「気にしていない」と答えると、村長は浄化師たちに無言で深く頭を下げた。どうもここでは浄化師に守ってもらわなければ生きていけないとでも言うように村人の腰が低い。様付けで呼ぶのも浄化師の不興を買うのを恐れての事だろう。
 村長との話し合いを終え、被害がひどかった北側の瓦礫の撤去に向かって歩いていると、背後から呼び止められた。
「……あの、浄化師様。お忙しいところ申し訳ありません、少しだけお時間をいただけないでしょうか?」
 声をかけてきたのは病人のように青白い顔をした女性だった。今にも倒れそうな女性を放って置くわけにも行かず、話を聞くことにした。
 女性は人目を気にするように「ここでは少し……」と言葉を濁す。どうやら人に聞かれたくない話のようだ。そのまま人気のない場所まで来ると、女性は周囲を気にしながらも浄化師と向き合った。
「申し訳ありません!」
 突然女性は浄化師に向かって頭を下げる。驚いた浄化師たちは「とりあえず頭を上げてくれ」と女性を宥める。
「私はトーマスの叔母です。あの子のしたことは私の責任ですから……浄化師様にはトーマスについてお話ししたいことがあるのです」
 儚げな見た目とは裏腹にしっかりと芯を持った女性だった。
「トーマスあの子は……ヨハネの使徒の襲撃によって母親を亡くしているんです。あの襲撃時、あの子は母親といたんです。間一髪あの子は浄化師様によって救われましたが、……一緒にいた姉は助かりませんでした」
 一瞬、「姉」と言ったとき、悲しげな表情をしたが、すぐに気丈な表情を取り戻す。
「母親を目の前で亡くしたことがショックだったようで、ずっと塞ぎこんでいました。私が何を言ってもあの子には届かなかった……あの子も浄化師様のせいじゃないと分かっていると思います。ですが、まだ幼いからに割り切れていないんです」
 そこまで話して女性は一呼吸をつく。
「あの子の暴言には本当に申し訳なく思っています。ですが、浄化師様に話しておきたいのは、これとは別の件なんです」
 トーマスの事情は分かったものの、謝罪を終えた女性がまだ他にも苦悩を抱えているのが伺えた。
「あの子は浄化師としての素質を持っているかもしれません。今回の襲撃もあの子を狙ったものだと思います」
 なぜ前回浄化師に助けられたときに言わなかったのだと問いつめると、
「……姉さんが何か隠し事をしているのは分かっていました。でも、つらそうな姉さんを問いつめることができず、薄々気づいていたのに黙っていた私も同罪です……もっと早く問いつめておけば、こんなことにならなかったのに……」
 トーマスと同じ暗い瞳で自嘲的な表情を浮かべる。
「……本当に責められるべき人間は私なんです。ですが、もし村の人に知られれば、あの子は責められるでしょう。もしかしたら危害を加えられる可能性もあります。……あの子自身も自分を責めると思います。身勝手なことを言っているのは分かっています! 他の誰かに知られる前に教団に連れて行ってやってくれないでしょうか!」
 すがりつくように頼むトーマスの叔母になんと言葉を返せばいいのか迷ったが、浄化師たちは了承した。
 浄化師の素質を持つ者の保護も教団の仕事だ。村人に事情を説明しないのは納得できたわけではないが、村人を動揺させる事実を広げるのは現状、酷だろうと判断した。
「……本当にありがとうございます」
 浄化師から約束してもらえたことに安堵したのか、わずかに笑みを浮かべながらお礼を言う。
 その時、背後で何か物が倒れる音が聞こえ、先ほどと一転してトーマスの叔母の表情がこわばる。
 叔母の視線の先には、目を見開いたトーマスが呆然と立ち尽くしていた。
「トーマス、あなた……聞いていたの!?」
「何だよ、全部おれのせいだったんじゃないか……」
 俯いたトーマスの表情は分からない。そんなトーマスに叔母が駆け寄る。
「おれが母さんを殺したんだ! おれなんて死んじまえばいいんだ」
 そう叫んだトーマスの頬を叔母が思わず叩く。叩いてしまったトーマスの赤くなった頬を見て、叔母は苦しげに唇を噛んだ。
「叔母さんだって、おれがいなくなればいいと思ってるんだろ! だから、村から追い出そうとするんだ!」
「違うわ! 待って、トーマス!」
 叔母が止めるのも振り切って、トーマスは走り去ってしまった。
「お願いです、浄化師様! まだトーマスはヨハネの使徒に狙われているかもしれません。私は村を探します! もし村の外へと出ていたら、あの子を守ってやってください」
 そう言ってトーマスの後を追おうとする叔母に落ち着くように諭すが、トーマスが心配でたまらない様子だ。
 トーマスが帰ってきた時に誰もいなければ行き違いになると説得し、今にも倒れそうな程青ざめている叔母を休ませた。
 もしトーマスの叔母の話が本当ならば、浄化師としての素質を持つトーマスを狙って再びヨハネの使徒が集まってくる可能性がある。
 これ以上、村に被害を与えない為にも早急にトーマスの身柄を保護する必要がある。


~ 解説 ~

●成功条件について
 ヨハネの使徒を殲滅し、トーマスを守り抜く。

●失敗条件について
 トーマスの死亡。

●村について
 砦の方向にそびえ立つ山の麓に村があります。
 村のほぼ中央に村長の家があり、その周辺に民家建ち並んでいます。
 深刻な被害を受けた北には牧場で働く人々の住居の奥に牧舎が並んでいました。そのさらに奥には村人が共同で経営している牧場が広がっています。

●トーマスについて
 自分のせいで母が死んだ上に村が襲われたと知り、自暴自棄になっています。母思いな少年だっただけに、その事実に耐えられないでしょう。
 村人から「坊主が東の森に入るところを見た」と目撃情報が出ています。

●東の森について
 砦方向にある山へと繋がっている森。普段はこの森にあるキノコや木の実を採るために村人が足を踏み入れることも多いです。トーマスもこの森に母と一緒に足を踏み入れたことが何度もあります。
 村人が行き来している為、踏み固められた小道があり、道に迷うことはないでしょう。

●地上稼働型のヨハネの使徒について
体長:1m
重量:2000kg
攻撃方法:突進、蹴り上げ、踏み潰し
魔力属性:個体による
 重量級の攻撃のため、一撃でも食らったら浄化師でもないトーマスはただではすまないでしょう。小回りきく個体の為か、通常個体よりもスピードが速いかもしれません。

●エピソードについて
 守りや回復役がいると戦闘で有利かもしれません。浄化師として素質のあるトーマスを捜し出し、教団で保護する必要があります。


~ ゲームマスターより ~

 こんにちは、GMのozです。
 今回のエピソードは村の復興と思いきや浄化師の素質を持つ者の保護に奔走することになります。戦闘もありです!
 今回のエピソードのように浄化師としての素質を持つが為に引き起こされる悲劇もあるでしょう。
 自分から浄化師になった者もいれば、大切な人を守るために浄化師にならざるえなかった人もいるでしょう。あるいは金銭を目的に売られてなった者もいるかもしれません。浄化師一人一人にそれぞれの人生があると思います。そういうことに思いを馳せるのは楽しい作業です。
 今回のエピソードにPCが絡むことによって、どんなエピソードが生まれるか楽しみにしています。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ルーノ・クロード ナツキ・ヤクト
男性 / ヴァンピール / 陰陽師 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
■使徒
ルーノはSH8で支援、味方体力半分以下でSH11
ナツキは敵愾心隠さず常に使徒に張り付き攻撃

味方と協力し使徒の注意を引く
発見したら魔術真名詠唱
射程に入り次第攻撃開始

ルーノはコアを探し、ナツキが脚を攻撃
攻撃箇所は味方に合わせダメージ集中
コア発見後はコア破壊優先
JM11使用、絡縛糸にも合わせる

踏付け蹴り上げは回避
突進はナツキがあえて接近、使徒の勢いも利用し剣で足を払い転倒狙う
突進に味方を巻き込まないよう位置取り注意
トーマス狙いならナツキが正面に立ち妨害

■トーマス
村人に気付かれる前に保護したい

戦闘後、会話を試みる
ルーノは村で叔母との対話を勧め
ナツキは浄化師として力を貸してくれと頼み教団行きを提案
ラウル・イースト ララエル・エリーゼ
男性 / 人間 / 悪魔祓い 女性 / アンデッド / 人形遣い
※アドリブ歓迎します

トーマス君の心境を考えると辛いな…

一刻も早くトーマス君を捜し出し、ヨハネの使徒が現れたら
アブソリュートスペルを唱える。
トーマス君の身は命に代えても守り、攻撃が届きそうなら
敵の脚に向けてスウィーピングファイアをするよ。

僕さ、トーマス君の気持ち、わかるよ。

(食ってかかられたら)
僕もベリアルに両親ごと故郷を滅ぼされて、
一時期荒れていたからさ。
「何で故郷がベリアルに襲われた時、助けに来てくれなかったんだよ!」って。

でも、ある人に言われたんだ。それは傲慢だって。
そうしたら僕は、…僕こそ教団に責任転嫁してるんじゃないかと思った。
今回の事は君のせいじゃない(会話術3)
エフド・ジャーファル ラファエラ・デル・セニオ
男性 / 人間 / 墓守 女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い
あの小僧はまるで呪われてるが、まだ選択肢はある。それを問うためにも無粋な使徒は片付ける。
リネリ(13話)は死んでも意地を通さんばかりだったが、彼はどうするか。

交戦前から魔術真名とGK6を使って魔力を放出し、使徒の矛先をこちらに向ける。攻めてきたらGK7を使って受けて立つ。鎌で敵の前足と打ちあって止めてる間に、ラファエラや同僚たちに足を攻めてもらおう。
イーストは命に代えても守ると言ってるが、彼には可愛い妹分がいる。本当に代えさせちゃいかん。GK6を使い続けて敵を俺に釘付けにする。使徒にモテても嬉しくないがな。
奴の動きの自由を奪えたら、ラファエラはDE6とDE9でコアを狙い撃ちにかかるだろう。
ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
目的
トーマスの保護/説得・ヨハネの使徒討伐

目撃情報を頼りに魔力感知を使いトーマスを探し出す
ヨハネの使徒が近くにいるなら急行

森の中にいるとなると死角が多いので戦闘はやり辛いですね…
ヨハネの使徒の討伐だけが目的ではないですし
トーマスさんの事もしっかり対処しなければ(両手で顔を叩き自身を鼓舞

戦闘
ヨナ
中距離から片側だけの足元狙いFN11 バランス取れなくさせる
敵がトーマスに向かう場合 進行方向にFN6の岩を放ち進路を変える
足を壊したらコアを中心に攻撃


JM8を使いつつヒットアンドアウェイを心掛ける
拘束や足破壊が出来れば敵に飛び乗り頭上からJM11
常にトーマスの場所は把握しておき攻撃が迫れば声をかけ注意促す


~ リザルトノベル ~

「ひっ……ヨハネの使徒!?」
 トーマスの恐怖で開ききった瞳孔に写ったのは、ヨハネの使徒の姿だった。
 使徒を前にして引き攣った喉から声にならない叫びを上げて、転げながらトーマスは逃げ出した。

 死にたくない!
 まだ死にたくない!
 ヨハネの使徒の襲撃時に刻まれた死の恐怖が蘇る。
 死への恐怖は恥も外聞もなく、トーマスの剥き出しの本音を露わにした。
 トーマスは鼠のようにがむしゃらに森の中を駆けずり回りながらも、村へと戻ることはできなかった。
 それは正義感なんて綺麗なものじゃない。もっと利己的なものだった。
 きっと村人は真実に気づき、自分を詰るだろう。それ以上に、自分のせいで人が次々と死んでいくのにもう耐えられなかった。

「母さん……助けて……」
 誰も助けてはくれないのが分かっていても、助けを求めずにはいられなかった。
 死が目前に迫る。
 樹木の根に足を取られ、トーマスは転倒する。爪には泥が入り、無様に這い蹲ってでも逃げる。ただ死にたくない一心だった。
 殺される。そう思った瞬間、トーマスは堅く目を閉じた。
 刹那、何か金属がぶつかったような音が聞こえる。
「ウォオン!」
 獣が吼える声と共にピシッと罅の入る音が聞こえた。
 ヨハネの使徒の突進をも『ベルトルド・レーヴェ』の両手が絶妙に受け流し、その勢いを利用して凄まじい勁が迸る。
 閃光の如く凄まじい拳は使徒の頭部を木っ端微塵に打ち砕く。

「……もう大丈夫だ、もう少し頑張れるか?」
 安堵から涙がこぼれ落ちそうになるが、すぐに手のひらで強引に拭い取るとトーマスはこくりと頷いた。
 ――エアースラスト!
 凛然とした少女の声が遠くから聞こえる。
「伏せろ!」
 ベルトルドの声にトーマスは訳も分からず反射的に頭ごと伏せた。
 その上空を暴風が通り抜け、トーマスに襲いかかろうとした使徒を風の斬撃で阻む。
「大丈夫ですか、トーマスさん?」
「おい、ヨナ。いつも思っていたが、お前はもうちょっと丁寧に魔術を使え!」
 トーマスに覆い被さるように伏せていたベルトルドがパートナーである『ヨナ・ミューエ』に文句を付ける。
「……その事は後で話し合いましょう。今は、よそ見してる暇はないようです」
 ヨナは黄昏の魔導書を構えたまま、さらに遠くから使徒がやって来るのを魔力探知で視認していた。

「トーマスは無事か!?」
「……どうやら間に合ったようだね」
 ヨハネの使徒を片づけながら『ナツキ・ヤクト』がトーマスの方を確認する。彼の相棒である『ルーノ・クロード』はトーマスが重傷を負っていないことに安堵する。
「ルーノ、頼む!」
「……全く、仕方がないな」
 敵意を隠すことなく、使徒に張り付くように戦うナツキを横目に溜息混じりにルーノが頷いた。
「鬼門封印」
 ルーノは慣れたようにナツキのサポートに回ると、素早く手印を組みながら口を閉じ舌端で唱える。
 特殊な調音から生じる呪。聞こえる範囲にいる使徒の動きが明らかに鈍くなる。
「ラウル、後は頼んだぞ! すぐさまこいつらを倒して追いかけるからな」
「任せて下さい、トーマス君を命に代えても守ります!」
「やめろ!……何で簡単にそんなこと言うんだよ! 命に代えても!? 母さんも、おれの! おれのせいで……!」
 トーマスは差し出されたラウルの手を振り払うと青褪めた顔のまま怒鳴る。

「ぐだぐだお喋りしてる暇はないんだ。保護対象は大人しく守られてろ」
「何も知らない癖に……っ!」
 トーマスが自分よりも遥かに大きい『エフド・ジャーファル』を睨み付ける。
「元気が有り余ってるなら何よりだ。今の状況を確認しろ。控えめに言っても絶体絶命だ」
 トーマスが反論するよりも先にエフドが口を開く。
「お前を無惨な身の上に追い込んだのは何だ。お前にはあの糞忌々しいカマキリ共だろ。怒りを向ける相手を見間違うな。お前にはアイツらに報復する才能がある。努力すれば手に入るわけじゃない限られた才能が。その才能がお前を追い込んだのなら、今度は利用してやれ。……だが、今のお前は足手まといの上に邪魔だ。とっととこの場から立ち去ってくれ」
 エフドの鋭い舌鋒にトーマスは何も言い返せない。
 エフドはそれだけを言うと振り返ることなく、鎌で使徒を殴り飛ばす。
「……走れるかい?」
 何か言いたげなラウルがそう促すと、トーマスは逃げるように走り出す。
「ラウル! こいつらはジャンプできない。できるだけ高いところへ連れてってやれ!」
 ベルトルドが使徒から目を離すことなく伝えると、『ラウル・イースト』はトーマスの後を追いながら、分かりましたと返事を返す。
 ラウルは使徒に警戒を払いながら殿を務めて走り出す。彼らを見逃す気のない使徒が襲い掛かる。
「行かせません!」
 『ララエル・エリーゼ』が絡縛糸を放ち、使徒に魔力の糸で全身を絡め取る。そのまま足を拘束された使徒は地面に転倒した。キリキリと音を立てて足から潰され、コアごと全身を破壊されていく。
 二人がこの場から離脱できたことを確認すると、ララエルはほっと息を吐くのだった。

「……随分と饒舌じゃない」
「あの小僧はまるで呪われてるが、まだ選択肢はある。それを問うにも無粋な使徒を片づけるに限る」
「そうね、さっさと終わらせてしまいましょ」
 彼の相方である『ラファエラ・デル・セニオ』が皮肉気な口調で問いかけると、エフドは素っ気なく答える。
 エフドが亡者ノ呼ビ声を発動させる。魔術に則った発声が使徒の敵愾心を煽り、それを一身に集めた。
 その隙を縫うようにラファエラが弓を引くが、使徒に掠るだけ。
「……ちょこまかとっ!」
 ラファエラは鋭い舌打ちして、縦横無尽に走り回るヨハネの使徒を睨みつけた。
「皆さん、さらにヨハネの使徒の姿を複数確認!」
 ヨナが声を張り上げ、魔力探知した結果を端的に知らせる。
「コアは頭部及び心臓部。魔力属性は陰気、陽気、火気の三種! ここで何としてでも食い止めます!」
 トーマスの保護はもちろんこれ以上、村に損害を出すわけにはいかない。
 通常の個体よりも小柄で素早い使徒にとって、この森は有利な立地だった。木々の隙間を縫うような方向転換で浄化師を翻弄していく。
「ぐうっ……!」
 複数の使徒を相手取っていたナツキが使徒の蹴り上げにより、右足を負傷する。
「陰気属性か!?」
「っ大丈夫だ! 心配はいらねえ!」
 ルーノの声にもナツキは振り返ることなく使徒と苛烈に戦い続ける。
 ナツキの動きが鈍った一瞬を狙い突進してきた使徒をルーノが魔力弾を放ち、妨害する。
 魔力弾は避けられたが、ナツキの体勢を整えるには十分な時間だった。使徒の勢いすら利用した足払いを仕掛け、ナツキは剣に魔力を込める。
 磔刺――コアを目掛けて頭部と胴体に刺突を繰り返す。
 コアを破壊したのを確認すると、すぐに好戦的な表情を浮かべナツキは次の使徒へと向かう。
 数の多い使徒にラファエラが弓で射抜きながら愚痴る。
「前の奴らが取りこぼしたじゃないでしょうね?」
「いえ、ここは国境付近に近いですから……」
 中央が一番守られているとしたら、外側である国境付近は最もベリアルやヨハネの使徒の脅威に晒されやすい場所だった。
 その事をヨナは知識として知っていた。その分、浄化師候補がいた事によってさらに引き寄せてしまったのだろう。その予測をヨナは口にすることはできなかった。

「素早さだけか! カマキリ野郎っ!?」
 亡者ノ呼ビ声で呼び寄せた使徒をエフドは鎌で頭部をコアごとぶった斬っていた。
 ラファエラも淡々とララエルが絡縛糸で拘束した使徒のコアを破壊していく。
 隙を突いて村の方角へと向かおうとした使徒をベルトルドが獲物を襲う獣のように気配を消し近づく。
「ハァッ!」
 ゼロ距離で大砲のごとく撃ち出される拳。うねるような力が頭部からコアへと伝わり、炸裂する。
「すばしっこい割には脆いな……」
 残されたのは、ヨハネの使徒の残骸だった。
「ロックバーン!」
 使徒の前に岩を落とし、進行方向を変えようとするが、器用に回避していく。
「敵が抜けました! 誰か足止めを……ッ!?」
 ヨナが周囲を見渡すが、誰もが複数の使徒を相手に戦っていて一人も動ける余裕がない。すぐにヨナも他の使徒からの攻撃を受ける。

「囲まれたか!? ナツキ、一旦引くんだ!」
 ヨナの声にルーノが真っ先に状況を把握する。
「何体か通り抜けられました! 早く追わないと……」
「くそっ! 邪魔すんな! 悪ぃルーノ、すぐに合流するから!」
 死角が多い森の中であることが災いし、使徒に張り付いていたナツキは仲間と分断される。さらにエフドとベルトルドは使徒の猛攻撃を一身に引き受けていた。
 ベルトルドは正面と背後から突進を受ける。追突する直前、使徒の頭を踏みつけ高く跳び上がったベルトルドの下では2体の使徒がぶつかり、一時的に行動不能になる。
 回転ながら勢いを殺して地面に着地すると同時に使徒の蹴り上げが襲いかかる。
「ふっ……っ次々と!」
 咄嗟にベルトルドは受け止めるが、体勢を崩し地面に倒れ込む。
「俺に何か恨みでもあるのかっ!?」
 ベルトルドが叫ぶ。
 毛が逆立つような感覚――使徒の刃のような足が眼前にあった。
 あれは、駄目だ。あれは、相性が悪い。そう本能が訴える。
「おぉっ!?」
 あわや頭を踏みつぶされる寸前、ベルトルドは横に転がりながら避ける。
 綱渡りのような回避を続けるベルトルド。
 エフドもまた引き寄せた使徒から攻撃を受けていた。盾のように大きな鎌で使徒の突進に耐える。
「悪いな、俺は足癖が悪いんでね」
 蹴り上げようとした使徒には逆に蹴りをくれてやる。
「エフドお前、俺まで巻き添えにしてないか!?」
「さあな、モテる男はつらいな、ベルトルド!」
 地面に倒れていたベルトルドに景気よくエフドは声をかけてやる。
「エフド、そういうお前こそ引っ張りだこじゃないか」
「雄か雌かも分からんカマキリ共にモテても嬉しくないな」
「全くだっ!」
 ベルトルドは足を勢いよく真上に持ち上げた反動で立ち上がる。虎のごとく腰を落とし、緩やかな動きで掌底を構えながら、使徒を迎え撃つ。
「ルル、お願い。『鏡映しの人形劇を開きましょう』さあ、踊って下さい!」
 ララエルはそう唱えると、人形に生命が与えられたように動き出す。
 偶人鏡。
 魔力の糸で操った人形が鏡を反射するように使徒の攻撃を利用して反撃する。
 美しくも、儚い人形劇は使徒すらエキストラにしてしまう。
(……ラウル、待ってて下さい。すぐにそちらに向かいます!)
 使徒の防御することなど一切考えない無機質な動き。徐々に数の多さに任せた使徒の攻勢に浄化師達は押されていく。
 浄化師達はいつの間にかヨハネの使徒に取り囲まれていた。



「僕さ、トーマス君の気持ちが分かるよ」
「……あんたにおれの何が分かるって言うのさ」
 安全な後方まで下がりきったところでラウルが口を開いた。
 それまで黙りこくっていたトーマスが激高したようにラウルを睨みつける。
「僕もベリアルに両親ごと故郷を滅ばされて、一時期荒れていたからさ」
 ラウルの言葉にトーマスは息を呑む。
「『何で故郷がベリアルに襲われた時、助けに来てくれなかったんだよ!』って。……でも、ある人に言われたんだ。それは傲慢だって。そうしたら僕は、……僕こそ教団に責任転換してるんじゃないかと思った」
 トーマスはラウルの話を黙って聞いていた。
「今回の事は君のせいじゃない」
 ラウルはトーマスと目を合わせて、はっきりと告げた。
「おれは、おれは……そんな風に思えない!」
 理解したくないとばかりにトーマスは首を振る。
 トーマスは溢れ出した感情が堰を切ったように言葉を吐き出す。
「だって、おれのせいで母さんが死んだのに、たくさんの人が死んだのに! そんな風に割り切れねえよ!」
 まるで血を吐くような、トーマスの悲痛な感情の叫びをラウルは黙って受け止めた。
「母さんがおれを庇って、床に倒れてもおれを抱きしめたまま、だんだんとその体が冷たくなるんだ。それなのに……おれは、自分が生きていることに安堵してた……! 死ななくて良かったって思っちまったんだ……! おれはそんな自分が一番許せない!」
 ラウルは痛いほどトーマスの気持ちが分かった。
 きっと誰かにお前のせいだと責めて欲しかった。
 ベリアルを恨んで、教団を憎み続けても大切な人を亡くした傷跡は塞がらない。より胸の淀みが酷くなるばかり。ベリアルを屠る時だけは胸の淀みが楽になった気がした。
 誰かを責め立てても恨み言を吐いても、決して楽になどなれなかった。
 ラウルはかつて己を救った浄化師がしたようにただトーマスの慟哭を受け止めた。



 亡者ノ呼ビ声。
 エフドが引きつけた敵をベルトルドが阻み、槍の如く掌底を打ち抜く。
 鬼門封印。
 手印を組んだルーノが包囲網を逆手にとって使徒の機動力を奪い取る。
 エアースラスト。
 ヨナが使徒の包囲網を突破するために、風の斬撃で使徒を斬り刻んでいく。
 磔刺。
 ナツキが裁きによって身体強化し、渾身の一撃でコアごと貫いた。
 徐々に包囲網が崩れていく。
「ラウルを助けるの! 邪魔をしないで下さい!」
 ようやく出来た道を急ぐララエルの前に立ち塞がる使徒に偶人鏡を放った。
 不意にヨナの目にラファエラの姿が映った。
「駄目です、ラファエラさん! それは火気――……!?」
 忠告は遅かった。頭部を射抜いたものの、コアには届かなかった。
「しとめ損ねたわ……」
 属性の相性の悪さを痛感しつつ、ラファエラはそれでも攻撃の手を緩めない。
 コアが剥き出しにした使徒がラファエラの視界から一瞬消える。
 違う、ラファエラが見失ったのだ。
 すぐに使徒はラファエラの前に姿を現した。気づいた時には遅く、死の刃がラファエラの身に降りかかる――筈だった。
「うあっ……」
 ヨナが身を挺してラファエラを庇っていた。
「っ! これでも食らいなさい!」
 すぐさまラファエラは魔力が蒼弓に吸い取られていくのを感じながらも弓を引く。蒼い軌跡を描きながら、今度こそコアごと撃ち抜いた。
「く、魔力切れか……」
 体内の魔力が空っぽになった脱力感を感じながら、ヨナの方へ向かう。
「……ラファエラさん、大丈夫ですか?」
「私は平気よ。自分の心配をしなさい」
 再度襲ってきた別の使徒に向かって弓を引くと、使徒は距離を取るように離れる。
「この借りは必ず返すわ」
 ラファエラはヨナに向かってそう言うと、屈辱と憎悪に満ちた目で使徒を睨みつけた。



「……ヨハネの使徒っ!?」
(ララは、皆は無事なんだろうか……いや、きっと無事だ! 今はトーマス君を守ることだけを考えるんだ!)
 ラウルは一瞬動揺したものの、すぐにそう自分に言い聞かせた。
 自分達の足よりヨハネの使徒の方が速い。追いつかれる、ならば――
「トーマス君。木に登れるかい?」
 トーマスはバカにするなと口にしつつも、素直に木の上に登る。高い場所に辿り着き、ラウルを見下ろしながら声を掛ける。
「あんたはどうすんだよ!?」
「僕はここで戦う」
「はあっ、一人でか!?」
 言葉と裏腹に心配そうなトーマスに安心させるようにラウルは微笑む。
「君を守るよ。これでも浄化師だからね」
 ラウルは鋭い双眸で追ってきた使徒を銃で迎え撃つ。
 即座に施したリンクマーカーで使徒を撃つ。それは確実に頭部を狙って銃弾が飛ぶが、その直前で使徒が消える。
 いや、消えたのではない。ヨハネの使徒の動きが早すぎるのだ。
 あっという間に距離を詰められたラウルは突進を真正面から受け止める。
「くっ……!」
 別の方角からやってきた使徒を蹴りつけることで退けるが、ラウルの不意を突くように使徒の突進をまともに受けてしまう。ラウルは銃を抱えたまま吹き飛ばされ、地面を数回転しながら木に打ち付けられた。
「おい、大丈夫か……!?」
 トーマスの悲鳴のような叫び声にも答えることが出来ない。さらに追撃を仕掛けてくる使徒の踏みつけを転がり回避することで精一杯だった。
「この……っ!」
 地面に倒れ、体勢を崩しながらも踏みつけてきた使徒の頭部のコアごと撃ち抜く。
 一体を倒したことにより、ラウルに警戒し使徒は連携するように攻撃を仕掛けてくる。ラウルも応戦するものの、彼の身体は致命的な傷こそ受けてはいないが、それでもダメージは確実に蓄積していく。
 多勢に無勢ではラウルの分が悪くなるのも時間の問題だった。
 痛めつけられるラウルを見ていられず、トーマスが悲痛な声で叫ぶ。
「ボロボロの癖に……もう止めてくれよ! 死んじまったらお仕舞いだろ!」
「……君の、言うとおりだ」
 ラウルはふらつきながらも立ち上がる。
「なら!」
「そうだ、死んだら終わりなんだ!」
 ラウルは有らん限りに叫ぶ。
「君は生きていいんだ! 浄化師の力を持つからなんだ! そんな理由で死んでいいわけがないだろ! 君はこんな理不尽に負けていいのか! 僕は嫌だ! 最後まで抗ってみせる!」
 ラウルの心からの叫び。剥き出しの本音の叫びだからこそトーマスの心に響く。
「がっ……!?」
 相性の悪い使徒の蹴り上げを腹部に受けラウルはふらつく。それでも倒れない。彼の目から闘志は失われることはなかった。



「あんたの命で贖いなさい」
 残酷なまでに美しい蒼穹を描いて矢がコアを射抜く。
「さっさとお眠りしな!」
 エフドが鎌で引き寄せた使徒を刈り取っていく。ベルトルドは光が迸るように螺旋状に力を振り絞った掌底を放つ。
「ヨナ達が間に合えばいいが……」
「ああ、イーストは命に代えても守ると言ってるが、彼には可愛い妹分がいる。本当に代えさせちゃいかん」
 二人は使徒を迎撃しながら会話している最中も、ラファエラは冷徹なまでにコアを撃ち抜き続ける。
「……お前の相方機嫌が悪くないか?」
「いつものことさ」
「どこも相方には苦労するな」
 ベルトルドはそう溜息を吐くと、使徒を蹴り飛ばすのだった。



「ぐあっ……!」
 トーマスは唇を噛みしめながら、ラウルの戦いを泣きながら見続けていた。ラウルがついに地面に倒れても、使徒は容赦ない攻撃を加える。
 弱くて、守られている癖に被害者ぶっている自分が惨めだった。
 ――助けてくれ。おれのために戦ってくれる人を、誰でもいい誰か助けてくれ!
 トーマスが強い祈りが届いたように、ラウルを呼ぶ声と複数の足音がこちらに近づいてくる。

「ラウル! 大丈夫……っ!?」
 真っ先に駆けつけたナツキの言葉が途切れる。ラウルが使徒に嬲られているのを見て、視界が真っ赤に染まる。
「……許さねえ!」
 ナツキは目の前の使徒に剣を振るう。相性が悪さにも関わらず、裁きの力を上乗せにし、力尽くで使徒を貫く。
 ナツキの圧倒的な殺意が肌にびりびりと伝わるのを感じながら、ルーノが邪魔しようとする敵の妨害をする。
 冷徹なまでに剣は研ぎ澄まされ、振るう度に鋭さを増していく。
 ようやく駆けつけたララエルは、ラウルの姿を見て足を止めた。
 地に伏したラウル。
 頭の中が真っ白になり、足元から土台が崩れていくような感覚に襲われた。
「……ラウル?」
 場違いなまで静謐な声。刹那、ララエルの顔から表情が抜け落ち、まるで人形のようだった。
「ラウル! 嫌です、そんな……ああぁっ! ラウルラウルラウルぅあああぁああああっ!?」
 わが身を引き千切られたかのような声だった。
「ララエルさん!?」
 ヨナが呼び止めるのにも気づかず、ララエルは走った。ラウルしか目に入っていないというように。
 使徒が突進してくるのにも構わずララエルはラウルの元へ駆け寄ろうとする。ララエルは無意識に邪魔者を排除しようと手を動かす――至近距離で偶人鏡を放つ。
 使徒と相打ちする形でララエルは吹き飛ばされ、使徒は人形に引き裂かれた。
 一部始終を見ていたヨナとルーノは絶句し、慌ててララエルの元へと駆け寄る。倒れたララエルにルーノが天恩天賜をかけると、ララエルは瞼をゆっくり開く。
「ラウル……私、ラウルのところに行かなくちゃ……」
「待って下さい、まだ動いちゃ……」
 ヨナが引き留めるが、ララエルはふらふらと立ち上がって歩き出す。今のララエルの耳には誰の言葉も届いていない。
「……早急に片を付けよう、それに向こうも心配だ」
 今の状況で戦闘を続けるのは危ういと考えたルーノにヨナは頷く。
「そうですね、私が使徒を片づけます。なので、ルーノさんはララエルさんをお願いします」
 ルーノは分かったと返事を返すと、すぐにララエルの後を追う。
 ヨナは黄昏の魔導書に魔力を込め、唱える。
「エアースラスト!」
 使徒は風の斬撃に切り刻まれ、骸を晒す。
 奇しくも離れた場所にいたベルトルドが最後の一体を撃破したのと同時だった。
 浄化師達は傷を負いながらも、ヨハネの使徒を全滅させることに成功した。
 ラウルは多数の傷を負ったが、幸い致命傷には至らず、ルーノが天恩天賜をかけるとすぐに目を覚ました。
「ラウル、良かった……本当に死んじゃ……ったかと、ラウル……っ」
「ごめん、ララエル。心配かけたね……」
 ララエルは痛々しい声で彼の名前を呼びながら、嗚咽を零す。そんなララエルをラウルは優しく抱きしめた。そして、トーマスの方を見ると、
「無事で良かった」
「……おれが、弱いから。あんたが傷つけられてるのを見てるだけしか出来なくて、あんたの大切な人まで泣かせて、……ごめんなさい」
 トーマスが嗚咽混じりに喋る。何度もラウルに泣きじゃくりながら謝る。
「……お前のせいじゃねぇよ」
 そんなトーマスの頭をナツキが撫でる。ルーノがトーマスと目を合わせるように膝をつく。
「村へ戻ろう、心配しすぎて君の叔母が倒れてしまう」
「……叔母さんが?」
「信じられないなら直接話してみるといい。……それと、襲撃が君の影響であっても命を落としていい理由になど断じてならない。君の母親もそんな事望まない筈だ」
「そんなの……分かってるよ」
 今にも泣き出しそうな声だった。
「……そうだよな、自分のせいじゃないなんて思えないよな」
 大切なものを一気に失った絶望と喪失感。ナツキは寄る辺のない不安を抱えた幼い日の自分とトーマスを重ね合せた。
「俺の住んでたところも使徒に襲われてさ、使徒を倒してこういう被害を防ぐ為に浄化師になったんだ……でもまだ俺達だけじゃ防ぎきれない時もある」
 ナツキの言葉にトーマスは驚いたように顔を上げた。
「だから、俺達に力貸してくれねぇかな、これから悲しい想いをする人、少しでも減らしたいんだ」
「……俺にもできるかな、死んだ人も許してくれるかな」
「分かんねえ、でも何もしないよりはずっとマシだと思うぜ。経験者の言葉だ、少しは信じられるだろ?」
 トーマスは目を腫らしながらも、しっかりと頷いた。





トーマスの哀哭
(執筆:oz GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/11/27-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[16] ナツキ・ヤクト 2018/12/05-23:24

(水をコップ一杯一気に飲み干し)
ら、ラウル、もう少し甘さは控えめにした方が良いって絶対!飲む砂糖菓子みたいになってるぞ!!
あっ!そうだ、プランは…

ルーノ:…(溜息)プランは完成しているよ。内容はほぼ相談通りだ。
攻撃は戦力が増えたのでほぼナツキ任せ、私は支援と回復をメインに動く。

…って事みたいだぜ!
よし、じゃあ改めて現地でもよろしくな!  
 

[15] ヨナ・ミューエ 2018/12/04-22:55

何だかとっても甘い匂いが…。

あっ、ララエルさんこんにちは(遠慮がちに頭をなでながら)
この間の占い屋さんはどうでしたか?大行列でびっくりしましたね。

>トーマス
さんは一緒に連れて帰る方向でプランは合わせます。
誰のせいという話ではなくとも怒りの矛先を向けずにはいられない場合がありますから…。
トーマスさんの叔母様の心配もいかばかりかとお察しします。

>エフドさん
(ほっとしつつ)現場でまたご一緒できること嬉しく思います。
どんな相手でも堅実に詰めていくことを忘れてはいけないですね。
あこれは自戒の意味で、です。  
 

[14] エフド・ジャーファル 2018/12/04-19:10

お怪我の加減?こうして次を始めるぐらいには回復してるよ。
それに目算を誤った大本は、俺が安直に火に頼ろうとしたことだ。一発逆転の奇策なんてのはそうあるもんじゃないらしい。
勿論今回は焼き討ちなんてしないぞ。する必要もないしな。  
 

[13] ララエル・エリーゼ 2018/12/04-16:34

ヨナさーん、ベルトルドさーん!(ぶんぶんと手を振る)
エフドさんとラファエラさんも宜しくお願いします!
(ヨナさんに抱きつきながら)

ラウル:ララ、今回は遊びじゃないんだからね。
ヨナさん、ベルトルドさん、今回も宜しくお願いします。
エフドさんとラファエラさんも宜しくお願いします!
戦力が増えて心強いです。

ララエル:らくばくし、頑張りますね!

ラウル:僕はトーマス君を命に代えても守ります!  
 

[12] ルーノ・クロード 2018/12/04-12:43

なぜさらに砂糖を…いや、私は遠慮しておくよ。

ナツキ:でもそこまで行くと、いっそどんだけ甘いのか気になるな。どれどれ……っ!!?(一口飲み、尻尾の毛を逆立てて硬直)

やれやれ、好奇心は猫をも…おや、久しぶりだね。
エフド達もヨナ達も、よろしく頼むよ。
長期戦には向かない状況だと思っていたところだ、戦力が増えるのはありがたい。

各行動、了解だ。
もう少し考えてみて協調行動を取れそうな所があれば連携させてもらうよ。

トーマスについては、一緒に教団へ連れて行きたいと考えている。
村に長く留まれば村人に事情が漏れる可能性も出てくる。
そうなれば…。…可能な限り、それは避けたい。  
 

[11] ヨナ・ミューエ 2018/12/04-08:03

あと、ここでする話ではないのですが少しだけすみません。
エフドさんラファエラさん。以前ご一緒した依頼では最初の段階で目算を誤り、
予想外の出来事が続いた結果、全員が危険な状態に陥ってしまった事をお詫びします。
その後、お怪我などのお加減はいかがでしょうか。  
 

[10] ヨナ・ミューエ 2018/12/04-08:02

狂信者ヨナ・ミューエおよび断罪者ベルトルド・レーヴェ。
同じく遅れての参加ですが失礼します。皆さん暫くぶりになりますね。
宜しくお願いします。

ええと。トーマスさんは、目撃情報から東の森にいる可能性が高いようなので
まずは魔力感知で居場所を特定しようと思います。

戦闘は、私達は攻撃スキル一辺倒なのでヨハネの使徒への攻撃を積極的に行おうと思います。
重量のある敵に動き回られるのは怖いので足を重点的に狙っていければと。
ララエルさんの絡縛糸での拘束やエフドさんの墓守のスキルがあるのは心強いです。

トーマスさんは保護するなら教団へ戻る私達と一緒に来ることになるんでしょうか。
急な話で酷だとは思いますが何とか決断をして貰えれば良いのですが…。  
 

[9] エフド・ジャーファル 2018/12/04-02:32

墓守のエフドと悪魔祓いのラファエラが、遅ればせながら参加させてもらう。

使徒の矛先をトーマスから逸らすためにも、交戦前から魔術真名やアライブスキルを使いまくっていこう。
丁度いい事に、墓守には亡者ノ呼ビ声(敵に自分を狙わせる)なんてものがある。これと墓前の決意(吹き飛ばされなくなり、気絶に耐える)を合わせ、奴を引き付けるつもりだ。  
 

[8] ラウル・イースト 2018/12/03-16:47

はい、頑張ります! ルーノさんとナツキさんもお気をつけて。
使徒は脚を使って攻撃をするのですか…!
そうすると、脚を狙って攻撃するのは良さそうですね。

…あれ? お茶、飲まれないのですか?
美味しいですよ、チョコレートシロップとハチミツと砂糖を沢山入れましたから
(柔らかな笑み)

ララエル:(ガタガタと震えている)  
 

[7] ルーノ・クロード 2018/12/02-22:25

ありがとう、頼りにしている。
使徒はできるだけ引き付けるつもりではいるが、万一そちらに向かってしまった場合の守りは頼んだよ。

絡縛糸でのサポートはありがたい。
上手く転倒させる方法がなかなか思いつかないが、まずはコアを探しつつ脚を中心に狙ってみようと思っている。
使徒の攻撃方法はどれも脚を使う。妨害くらいはできるかもしれない。

ナツキ:あ、でもコア見つけたらもちろんそっち優先するぜ!…って、チョコとはちみつ山盛り!?

(ぎょっとして口を付ける直前で手を止め、カップの中を覗き込む)
…普段もそうしてお茶を飲んでいるのかい?
その、チョコレートやらハチミツやらを、山盛りに…  
 

[6] ラウル・イースト 2018/12/02-16:20

はい、交戦中の主な守りは僕に任せてください!
トーマス君は必ず守ってみせます。

ララエル:ブラッシングブラッシング♪
ナツキさんとルーノさんのこーげきりょくが高いので、
私は、らくばくしをやってみますね!
(あっ、と思い出したように)
る、ルーノさん、待ってください!
ラウルが作った紅茶ということは、チョコレートハチミツ山盛りに
なってるかもしれません!!
とーにょーびょーになります!  
 

[5] ルーノ・クロード 2018/12/02-00:06

ナツキ:お、やってくれるのか?(尻尾を預け、ブラッシングされ)
たまには人にやってもらうのもいいな。自分でやると結構雑だからなー

ララエルが楽しそうでなによりだ。
私もお茶を頂こうかな(カップを手に取り)

ああ、そうだね。使徒相手なら基本的にコアへの攻撃を目指す事になる。
コアを狙いやすくするというだけなら、絡縛糸の拘束だけでも効果はありそうだな。
転倒させられない場合でも、コアへの攻撃とタイミングを合わせて狙ってみる価値はあるかもしれない。

トーマスのケアについては…保護の後、会話を試みる形になるだろうか。
彼を守りながら戦うならできるだけ後方に置いておくのがやりやすそうだ。
交戦中の主な守りは、後衛のラウルに任せてしまっても良いだろうか?  
 

[4] ララエル・エリーゼ 2018/11/30-21:25

わわわ、ナツキさんは優しいです!
えへへ、えーい♪(ナツキさんの尻尾をハイスピードでもふもふする)
はう…癒されます…

ラウル:全く…今回だけだからね。
毎回毎回すみません、ナツキさん。
そうか、使徒にはコアがあって、そこを狙えば良いんですね。
重量が重いから、転ばせるのは良い方法ですね。
あとは…トーマス君の捜索と、心のケアでしょうか?

ララエル:『らくばくし』で転んだ使徒さんを束縛しますか?

ラウル:うーん、上手くいくかな…(額に手を当て)
…ってララ、ナツキさんの尻尾を勝手にブラッシングしない!  
 

[3] ナツキ・ヤクト 2018/11/30-17:14

よう、二人とも久しぶりだな。今回もよろしく頼むぜ。
お、来るかララエル!指令はこれからなんだし、へーきへーき!(尻尾ゆらゆら)

ラウル、気合い入ってるなぁ。あ、お菓子ありがとな!
よし、今回の相手は使徒だな。
俺達も当たった経験が多いわけじゃねぇから指導ってほどのモンでもないけど、そうだなぁ…(お菓子をかじりつつ)

前戦った時は突進ばっかりしてくるヤツだったから、突進の妨害を考えて動いたっけ。
足狙ったり転ばせたりってのが上手くハマったぜ!
足とかの部位狙いするなら連携しないと難しいと思うけど、ちょっと考えてみても良いかもな。
動き止めるとか鈍らせてからの方がコアも狙いやすいからさ。  
 

[2] ラウル・イースト 2018/11/30-11:21

ルーノさん、ナツキさん、お久し振りです!
取りあえずご挨拶だけでもと思い…良かったらこれ、どうぞ
(柔らかく微笑み、お菓子と紅茶を配りだす)

ララエル:うずうず、うずうず…

ダメだよ、今回は重要な指令なんだから。
えと…僕は戦闘には自信がありません。実はヨハネの使途と戦うのも
初めてだったりします。ご指導宜しくお願い致します。
トーマス君を守れるよう、身を固めてはきました!(ガシャーンガシャーンという音)

ララエル:ふわふわ、ふわふわ…

だから、ダメだって!