~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティの中心地、首都エルドラドから見て西部に位置する巨大都市エトワール。各地域の生産品を元に様々なお店が展開され、美術品や美しい建築様式などの芸術に富んでいる。市民階級から軍事階級、稀に貴族階級の者が好んで住んでいる中枢地区で、常に観光客で賑わっている街だ。 |
~ 解説 ~ |
[目的] |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして。十六夜あやめと申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【目的】 配合などを教えてもらいながら、それぞれ作成 香りは、お互いに完成するまで秘密に 【台詞】 祓「──できました。はい、どうぞ」 喰「これは…?」 (タバック・レザータイプの香水を渡して、祓が相手の胸ぐらを両手で掴み寄せるように、その胸元の臭いを嗅いで) 祓「──吸ってますよね?ずっと僕に内緒で。安いのを。 僕は安い煙草の臭いが大嫌いなんです。 それに。僕が知らない間に、そちらが黙って安煙草の臭いが付けてるのって、何だか凄く癪なんです。 それなら最初から、それっぽい高級な香りを纏うくらいの気位を見せてください」 喰「うん、何だか酷い理由だけれども、甘んじて受け取っておこうかな」 (笑顔で傷つきつつ気を取り直し) |
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☆香水 シングル(秋桜 ディオさんとパートナーになってまだ数週間… お互い壁がありぎこちない気が… よしディオさんを誘い街へ出かけて少しでも仲良くなろう! (会話をするも長続きしない あぁどうしましょう 会話が、続きませんっ…! ……でも、ディオさんの隣にいるだけなのに何故安心してしまうのでしょう? 【体験】 「ディオさん! 沢山あって迷いますね どんな香りにするか決まりました? 私は秋桜です クーちゃんは桜が好きなんですが私は秋桜が好きなんです(微笑 っ!(僅かだが初めて微笑みを見て驚く えっとお母様の故郷、ですか? よく? もしかして何方かとご一緒に? あっすっすみません! わっ分かり、たよ! 頑張って直しま、直すねディオさん!」 |
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最初 (場違い感はんぱねぇ帰りたい…!!) 目的 ルドが楽しそうなので付き合う 手段 講師か先生がいれば、人のやるのを見て勉強 メモしつつ ルドは飲み込みいいから一人でさっさと好きな香り作ってるし 俺も何かつーくろっと めちゃくちゃに調香して刺激物を産む俺 センスねぇなぁ ルドは終わったらしい どんな香りにしたんだ?かがせてくれよ どれ …木の香りがする あと、オレンジとかレモンみたいな香り いつもより優しく笑うルドに一瞬見惚れる ぼうっとしてると、もう一つ調香されたものを渡された …俺に? 嗅いでみる 皮、みたいな焦げた感じ、タバコ? あとちょっと花の匂いがする 俺をイメージした香り? (やばい、嬉しい) (顔赤くなってる) さ、サンキュー |
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香水の調合…素敵ですね。私にもきちんとできるでしょうか? 薫りの方はノグリエさんにお任せします。ノグリエさんの方が香水とか詳しそうですから。 私はそれのお手伝いをさせていただきますね。 えっ…私のイメージの香りですか?何だか照れちゃいますけどノグリエさんが思ってる私のイメージ分かるのなら楽しみです。 シングルフローラルタイプ…一つのお花の香りですね。ノグリエさんには私のイメージのお花があるということでしょうか? 完成ですか?あぁ…とてもいい香りです。これが私のイメージ…私きっとこんなに可憐じゃないですよ…ふふ、でもノグリエさんがイメージしてる私の香りを知ることが出来て嬉しいです。 |
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まぶしすぎる空間な。 けどせっかくだし、と体験教室の隅に加わる 香料目移りしてたら 「好きな香りを手に取っては?」 グラから言われてコレかな、と取ったのは甘い果実の香りで。 こーゆーのも好き、と酸味の強い果物の香り。 グラの視線が妙に生温い そういえば外でアンタの姿見るの初めてだな 「普段は寮の自室で過ごしていますから 部屋で何してんの 「読書ですね ふうん。今日は買い物? 「新しい栞を買いに ◆香り完成イメージ トウマル:フルーティ グラ:ウッディ 良い香り。でも 「でも? ……腹減ってくる、かも 「……美味しそうな香りですものね 「私のと交換しますか? どんな香り?――ああ、なんかアンタらしいな 「そうですか? 深い森の、懐かしい香り |
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【目的】 香水作りに挑戦。 アキはマーガレットの控えめな匂い。 カインは本と煙草の混じった匂い。 【会話】 アキ:香水なんて使い道わかんないわね。 カイン:香水を身に纏う場合は、体臭と混じった状態でどう変化するかも大事です。 アキ:つけすぎて鼻曲がりそうな匂いの人とかいるものね。(げんなり カイン:何事もほどほどが良いと言います。 アキ:カインはどんなのにするの? カイン:タバック・レザーというタイプがありました。それで古書と煙草を合わせた香りにしたいと考えています。 アキ:不思議な組み合わせね。 カイン:かも知れません。アマツカ氏はどのような香りを? アキ:……マーガレットとか? カイン:アマツカ氏に合うと推測します。 |
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目的 香水作りながら、昔話に耳を傾ける 僕は聞き役…パンプティさんの意外な姿を知れたら良いな 僕はフローラル。彼女はシングルを作ります 台詞 パンプティさん、お呼びですか? …? 会話 リ)僕、香水作りは初めてです。何を作りましょう パ)そりゃお互い様さ。アタシも作るのは初めてだしな リ)しかし、どうして香水を? パ)ちょーっと懐かしい香りがして。お?これかな? リ)…百合?ですか? パ)そ。まぁ…懐かしい花なんだよ リ)よければお話、聞かせてくださいな 彼女の話を聞きながら、自分の作る香水を決めた 言葉にはしないけど、君をイメージして きっと君は良い人だ 僕には勿体無い程に 君が多くの友にこれからも恵まれますように そう願いながら |
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目的 ・それぞれ香水を作る ・お互いに贈り合う 台詞 ……どれが良いんだろ え? あなたが……? 別に。……じゃあ、私があなたのを調香したら良いのね? な、なにか用……? ……震えてないから そうは言うが、調香する手は緩く震えている っ!? ちょ、ちょっと……! 手を重ね、調香を続行させられ、驚く 思い 心臓、ばくばくしてる……。この人、とうして私のこと構うんだろ 考えるも、答え出ず ……はい、これ 手伝ってくれたから、ほぼあなたが作ったようなものかもだけど 私が……? そうかな あ、後でつけてみるから……。あり、がとう(ぼそ |
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~ リザルトノベル ~ |
●ラシーファ・エルダム アルティス・ディア ペア 漂ってきた甘い香りに惹きつけられ、ステンドグラスの扉を開けたラシーファ・エルダムとアルティス・ディア。天井からぶら下がるシャンデリアの柔らかな灯りが屋内を照らしている。 「これを見てよ」 アルティスが入口に貼られている「無料体験教室実施中」と書かれている紙を指差した。 「へぇ。無料で香水を作れるのですね」 「面白そうだね。作ってみるかい?」 ラシーファが頷く。すると、部屋の奥から女性店員が出てきて笑顔で案内された。屋内に用意された仮設机の上にはビーカーやスポイト、香料などが置かれている。対面するように椅子に座り、女性店員から香水作りについての説明を受ける。 「なるほど。調香って意外と簡単なようですね」 「そうだね。どんな香水を作ろうかな?」 「互いに完成するまで秘密にしましょうか。その方が面白そうです」 「うん、わかったよ」 互いに手元を見つめ、ラシーファはこれから調香するイメージを描いていく。 (これらの中ならやはりこれがしっくりきますね) 調香の選定でタバック・レザータイプを選択した。葉巻たばこ、皮の香りが特徴の香料だ。サンプルを参考に配合を決定し、調香作業を行う。イメージ通りに微調整を数度繰り返し、保存用の小瓶に流し入れた。 「──できました。はい、どうぞ」 「これは……?」 ラシーファは完成した香水を手渡し、ぐっとアルティスの胸ぐらを両手で掴み寄せるように、その胸元の匂いを嗅ぐ。 「吸っていますよね? ずっと僕に内緒で。安いのを。僕は安い煙草の匂いが大嫌いなんです。それに、僕が知らない間にそちらが黙って安煙草の匂いが付けてるのって、何だか凄く癪なんです。それなら最初から、それっぽい高級な香りを纏うくらいの気位を見せてください。これはそのつなぎです」 「うん、何だか酷い理由だけれども、甘んじて受け取っておこうかな」 急に説教されたアルティスは内心では傷付きつつも笑顔のまま気を取り直し、自分が作った香水を手渡す。 「ラシファ、君をイメージして作ってみたよ」 柑橘系の香りを中心に調香されたシトラスコロンタイプの香水を手渡し、ラシーファが香りを嗅いだ。 「どういう意図です?」 「ラシファの為だけの香りだよ。それが私の側にいると思うと、抱き締めたいほど愛お──」 「やめてください。気色悪い」 アルティスが最後まで言う前にラシーファは完全に遮断した。 体験教室を終え、ラシーファと離れ一人の時間になったアルティスはもらった香水を見つめる。 「……吸っているの、ばれていたんだね。禁煙でもして、今度からこちらをつけようかな」 その頃、ラシーファも一人になってからもらった香水の匂いを嗅いでいた。 「僕だけの……匂い、ですか」 柑橘系の香りに少し感傷を想い浸る。 「──香りに……罪はありませんね」 こっそりと自分の為だけに作られた香りを手首に付けて目を閉じ、少し幸せそうにその香りだけに意識を傾けていたのだった。 ●ウラヌス・テネブラエ ディオス・アルジリーア ペア 暖かな日差しが注ぐ陽気な日。ウラヌス・テネブラエとディオス・アルジリーアはエトワールの街を歩いていた。浄化師の契約をしてまだ数週間。互いに壁がありぎこちない空気が漂っていた。ウラヌスはディオスを誘い街へ出掛け、少しでも仲良くなろうとしていた。 (会話をするも長続きしない! あぁどうしましょう! でも、ディオさんの隣にいるだけなのに何故安心してしまうのでしょう?) ウラヌスが一人であたふたしている間、ディオスも似たようなことを考えていた。 (会話をするも長続きせず。全く、続かないなら振らなければ良いものを……。しかし、妙な安心感があるのは何故だ?) そんな二人の元へ甘い香りが漂ってきて、香りのする路地裏へ向かっていく。ステンドグラスの扉に貼られた「無料体験教室実施中」の文字を見て、ゆっくりとその扉を開けた。カウンターに立つ女性店員が微笑みながら香水作り体験を勧める。ウラヌスは良い機会だと思った。 「ディオさん! あの、せっかく来たのですから、その、一緒に香水作りましょう!」 「あぁ……」 勢いのあまり、若干圧倒されたディオス。 机の上にある器具を眺め、女性店員から調香の仕方を教わる。互いに作りたい香水のイメージを膨らませていく。 「沢山あって迷いますね! どんな香りにするか決まりました? 私はシングルフローラルタイプで秋桜にします! クーちゃんは桜が好きなんですが私は秋桜が好きなんです!」 楽しそうに話すウラヌスを見て僅かだがディオスが微笑んだ。 「分かったから少しは落ち着け。クロが桜を好きなのは知っているが、アンタは秋桜か。同じ桜が入っている辺り姉妹だな」 「えぇもちろんです。性格は真逆ですけど、私とクーちゃんは一卵性双生児ですから!」 「あぁそうだな。俺はこのウッディタイプにした。この匂いは、母の故郷を思い出す。あぁ、小さな村だったが樹木がある広場でよく……」 「よく? えっとお母様の故郷、ですか? もしかして何方かとご一緒に?」 「別にこれ以上俺の事は良いだろ。語る必要はない。早く作業に取り掛かれ」 「き、気になります……!」 ディオスは着実に手を進めて調香作業を行っていく。手際よく調香を終え、ムエットに付けて鼻の前で扇いで香りを確認した。その一方でウラヌスの作業は遅れていた。 「俺はもう終わるぞ」 「ディオさん早いです! もう少し待っていてください!」 「あぁ。それより、いい加減敬語は止めろ」 「あっすっすみません! わっ分かり、たよ! 頑張って直しま、直すねディオさん!」 「あぁ、それでいい」 ディオスはそっとウラヌスを見つめ、薄く口角を上げた。 少し遅れてウラヌスの香水が完成すると、ディオスはその匂いを嗅いでみた。 「いい匂いだ」 互いに感じていた壁や漂っていたぎこちない空気は、素敵に香る香水に掻き消されてしまったのだった。 ●アシエト・ラヴ ルドハイド・ラーマ ペア (場違い感はんぱねぇ帰りたい…!!) 思わず心の中で叫んでしまったアシエト・ラブ。 「どれにしようか迷うな」 目の前に並ぶガラス器具や香料に夢中になるルドハイド・ラーマ。 二人はエトワールの街で嗅いだ甘い香りに釣られ、香水を作る工房『ラストノート』に来ていた。「無料体験教室実施中」の文字を見てルドハイドはすぐ香水を作ると言い出した。楽しそうなルドハイドを見て付き合うことにしたアシエトだったが、女性店員の香水作りの説明を聞いているうちに場違いだと思い始めていた。 ルドハイドは飲み込みが早く一人でさっさと好きな香料を手に取り、調香していく。 「俺も何かつーくろっと」 適当に手元にある香料を嗅いでいく。いい香りだと思った香料をスポイトも使わず、分量も量らずめちゃくちゃにビーカーに入れ、無水エタノールを注いで混ぜていく。そうして調香された香水はとてつもない刺激物となった。 (やべぇ……センスねぇなぁ) とてつもない刺激物を生み出した俺に呆れたような視線を向けるルドハイド。 「大人しくしてろ」 ルドハイドは一人でてきぱきと何に使うかわからない道具を使って調香作業を進める。それはとても初めて調香したようには見えなかった。 (すげーなルドは。やっぱりすげぇ) 「あんまりジロジロ見るな。手元が狂いそうだ」 そうは言われたもののルドハイドの華麗な手さばきには感心せざるを得ない。しばらく様子を見ていると、どうやら終わったらしい。 「どんな香りにしたんだ? 嗅がせてくれよ。どれ…………木の香りがする。あと、オレンジとかレモンみたいな香りだ。なんだよこれ……すげぇ、いい匂い」 ムエットに付けて鼻の前で軽く扇ぎながら嗅いだ。アシエトの感想を聞いていつもより優しく笑うルドハイドに一瞬アシエトは見惚れた。 「当たり前だ。これは俺の好む香りだ」 アシエトがぼうっとしていると、ルドハイドはもうひとつムエットを取り出してアシエトに手渡す。よく理解できないアシエトに「いいから嗅げ」と押し付ける。 「ルドこれって……」 「お前をイメージした」 タバコや皮のような焦げた感じの香りに加え少し花の香りもする。 (ルドが俺をイメージして? やばい嬉しい。それに俺の好きな匂いだ。いつの間にこんなの作ってたんだ? てか、めっちゃ顔赤くなってるかも) 「あんな刺激臭のするもの身に付けていられないだろ。廃棄してもらえ」 「お、おぅ。えっと……さ、サンキュー。あと、その……い、いい匂いだな。気に入った」 「そうか。それは良かったな」 ルドハイドは見ないふりをして使った器具を片付けていくのだった。 ●シャルル・アンデルセン ノグリエ・オルト ペア 浄化師のシャルル・アンデルセンとノグリエ・オルトはエトワールの街に出掛けていた。 「なんでしょう? とても甘い良い香りがします」 「本当ですね。あっちの方から漂ってくるみたいですよシャルル」 「行ってみましょう!」 香りの元へ早足で駆けつける。辿り着いた先は『ラストノート』という香水店だった。入口のステンドグラスの扉に「無料体験教室実施中」の紙が貼られているのを見た。 「香水の調合……素敵ですね! 私にもきちんとできるでしょうか?」 「どうでしょうね。でも香水の調合ですか……ボクも興味がありますよ。まずは中に入ってみますか」 中に入ると天井からぶら下がるシャンデリア、棚に丁寧に置かれたガラス瓶やガラス器具がずらっと並べられていた。 「素敵なお店です! あの、香水を作ってみたいのですがよろしいですか?」 カウンターで受付をしている女性店員が笑顔で頷く。シャルルとノグリエは女性店員に案内され、香水作成に必要な器具や香料、方法について一通り教わった。 「それじゃ作りましょうか。香りの方はノグリエさんにお任せします。ノグリエさんの方が香水とか詳しそうですから。私はそれのお手伝いをさせていただきますね」 「折角香水を作るんです……ボクの理想の香りというのを追及してみたいですね。まぁ理想と言えばシャルルのイメージになるのですが」 「えっ……私のイメージの香りですか? 何だか照れちゃいますけど、ノグリエさんが思っている私のイメージが分かるのなら楽しみです!」 「そうですね。シングルフローラルタイプがいいかもしれませんね。シャルルは白くて可憐な花……ジャスミンでしょうか?」 シャルルの可愛らしい顔を見てノグリエは微笑む。 「うん。シャルルにとてもお似合いの花です。香りもきっと気に入りますよ」 ノグリエはシングルフローラルタイプを選択し、教わった通り丁寧に調香していく。香料の配合を決定し、イメージ通りに近付くよう微調整した。 「完成ですか? あぁ……とてもいい香りです。これが私のイメージ。私きっとこんなに可憐じゃないですよ。ふふ、でもノグリエさんがイメージした香りを知ることが出来て嬉しいです」 「気に入ってくれましたか? こんなに可憐じゃないなんていいますけど、ボクにとって君はいつだって可憐で愛らしいのだからしかたありません。ジャスミンの花言葉を知っていますか? 『柔和』『可愛らしいさ』なんですよ。シャルルにぴったりだと思いませんか?」 優しく微笑み、ムエットに付けた自作の香水を嗅ぐ。 「この香水の名前は『シャルル』で決まりですね」 ●トウマル・ウツギ グラナーダ・リラ ペア 「――甘い香りがする」 トウマルはエトワールの街を散策中だった。ふと、漂ってきた甘い香りに釣られ、路地裏にあるお店に辿り着いた。だが、店の外観からして入りにくい感じがして遠目に眺める。その背中を「入るのでしょう?」と偶然通り掛かったグラナーダ・リラが押した。 半ば強引に店内に入れられたトウマル。外で感じた通り明らかに場違いな空間に若干気後れした。しかし、普段見慣れないものが並ぶ空間に好奇心の方が勝る。周囲に失礼にならない程度にきょろきょろと辺りを見回した。 カウンターの奥の部屋から女性店員が出てきた。無料体験教室を実施中らしく、誰でも簡単に香水を作れると説明された。 「せっかく来たんだし参加するか」 「貴方が作るなら私もやりましょう」 女性店員に香水作りを教わり、これから作成する香水のイメージを決めていく。トウマルが様々な香料に目移りしていると「好きな香りを手に取っては?」とグラナーダから言われた。コレかな、と取ったのは甘い果実の香りがした。 「こーゆーのも好きだな。酸味の強い果物の香りだ」 選択しているとグラナーダの視線が妙に真剣だった。 「そういえば外でアンタの姿を見るのは初めてだな」 「えぇ。普段は寮の自室で過ごしていますから」 「部屋で何してんの」 「読書ですね」 「ふうん。今日は買い物?」 「新しい栞を買いに来ただけだったんですが。甘い香りに釣られまして」 「アンタも同じだったってことか」 「えぇ。そこでたまたま貴方を見かけたので――」 ぐだぐだと会話しつつ、香料の選定は完了したトウマルとグラナーダ。 「俺はこの果物の香りが中心となったフルーティタイプにする。色々嗅いだけど一番いい香りだった気がするな」 「私はウッディタイプですね。なんだか無意識に選んでいました」 香料をスポイトで量り取り、ビーカーに入れて無水エタノールで溶かしていく。グラナーダはそわそわしているトウマルに気付き、彼の手元が危うくならぬよう注視する。 「どうかしましたか?」 「いや、良い香りだなって。でも……」 「でも?」 「……腹減ってくる、かも」 「美味しそうな香りですものね」 腹減り発言に思わず笑いそうになったグラナーダだったが何とか堪えることができた。互いに微調整を繰り返してイメージに近付けていく。そして数分後。 「出来た。なんだか俺が作ったとは思えないな」 「私のと交換しますか?」 互いにムエットに香りを付けて手渡す。 「どんな香り? ――あぁ、なんかアンタらしいな」 「そうですか? 深い森の、懐かしい香りです。貴方のはたくさんの果物が入っていてとても、甘い香りがする」 偶然立ち寄った香水店でトウマルとグラナーダは満足いく時間を過ごせたのだった。 ●アキ・アマツカ カイン・レカキス ペア 路地裏にあるステンドグラスがあしらわれた扉の建物から漂ってきた甘い香りに誘われ、アキ・アマツカとカイン・レカキスが足を運んでいた。香水を無料で作れる体験教室が実施されていると街でカインが聞きつけたようだ。 「――それで、少し興味あったから来たけれど……香水なんて使い道わかんないわね」 香水はお金持ちのみが使えるアイテムだとアキは思ってきた。浄化師になってからようやく人並みの生活ができるようになったアキは、浄化師になると香水も使える生活に変化するのだと内心少し卑屈になった。 用意された仮設机の上にガラス器具一式と香料などが準備されている。お互いに香水のイメージを考えていた。 「香水を身に纏う場合は、体臭と混じった状態でどう変化するかも大事です」 「つけすぎて鼻が曲がりそうな匂いの人とかもいるものね」 「何事もほどほどが良いと言います」 「カインはどんなのにするの?」 「タバック・レザーというタイプがありました。それで古書と煙草を合わせた香りにしたいと考えています」 古書と煙草を合わせるというカインのイメージがアキには具体的に思い浮かばなかった。 「不思議な組み合わせね」 「かもしれません。アマツカ氏はどのような香りを?」 机に並ぶたくさんの香料を眺めて一つを手に取る。 「このマーガレット、とか?」 「アマツカ氏に合うと推測します」 カインはまっすぐな目で素直に感想を述べた。 イメージがまとまり香料も決まったところでアキとカインは調香を開始した。ガラス器具同士がぶつかる音が響く。スポイトで香水を吸い取りムエットに付着させ、扇いで香りの確認を行う。さらにイメージに寄せていく作業を繰り返して微調整していった。 「――完成しました。私のイメージ通り……とまではいきませんでしたが、懐かしい香りには近付きました」 「懐かしい香り?」 「えぇ。昔一緒に暮らしていた浄化師が古書に囲まれながら煙草吸って本読んでいました。私は煙草を吸いませんが、あの香りがなんとも忘れられなくて。そのときの香りをもう一度再現できればと思ったのですが、なかなか難しいですね」 表情には出していないが僅かに悲しそうな雰囲気が漂っていた。 「アマツカ氏は上手くいきましたか?」 「あたしのはそんなに難しい香りじゃないからね。香水って意外と簡単に作れてしまうのね」 「嗅がせていただいてもいいですか?」 アキはマーガレットの香水をムエットに数的垂らし、カインに渡した。カインは優しく香る控えめな匂いを深く吸い込んだ。 「アマツカ氏らしい香りです」 微笑みながら言うカインの言葉に少しドキッとしたアキだった。 ●リトル・フェイカー パンプティ・ブラッディ ペア エトワールの街で用事を済ませた帰り道。そこでリトル・フェイカーは偶然見つけてしまった。路地裏にあるステンドグラスの扉が綺麗な建物の前で鬼の大女が一人。スカーフェイスに褐色肌、ボリュームのあるポニーテールが目立っている。 (あれって……パンプティさんですよね?) 見間違えるはずはないと思いつつも確認したくなるフェイカー。徐々に距離を縮めるとそこに立っていたのは正真正銘パンプティ・ブラッディだった。パンプティは扉に貼られた「無料体験教室実施中」の紙をじっと見つめていた。 (百合の香りには興味あるねぇ。だが、アタシが入るにはあまりに似合わねぇ! 店内はカップル多いし……誰か誘……相棒は……あーでも、なんて!) 「パンプティさん!」 フェイカーは道端で一人悶々としている後ろから、少し大きな声で呼んでみた。急に大声を掛けられて甲高い声とともに飛び跳ねたパンプティ。鬼の大女は恥の襲来を受けた。髪は逆立ち、目は血走り、拳を作って震わせ、狂気の形相で振り返る。 「テメェ……どこから出て……!」 「パンプティさん、お呼びですか?」 そこには、にこにこと笑顔でいるフェイカーがいた。 「くっ……。あぁー折角だ! 付き合いな!」 フェイカーはにこにこしながら一緒に建物の中へ入って行った。 「――なるほど。僕、香水作りは初めてです。何を作りましょう」 「そりゃお互い様さ。アタシも作るのは初めてだしな」 「しかし、どうして香水を?」 「この店からちょーっと懐かしい香りがして。お? これかな?」 パンプティはラベルの貼られた小瓶をひとつ手に取った。 「それって百合……ですか?」 「なんだいその目は。まぁ懐かしい花なんだよ」 「よければお話、聞かせてくださいな」 目を輝かせるフェイカー。パンプティは仕方がないと諦めうな垂れながら、互いに女性店員から教わった通りに香水作りを始めた。 「以前アタシが元は貴族階級の出身だと話したね。昔、庭師が丁寧に育てていた百合を思い出したのさ。それは見事な百合で、アタシはその見事な百合を作る庭師を評価するべきだ……そう思ったのさ。相手の階級がどうであれね。でも貴族たちはそれを認めなかった。そんな陰気な貴族が嫌になって今に至るわけさ」 「へぇ、恋をしていたんですね」 「馬鹿言ってんじゃないよ! アタシは立派な百合が恋しくなっただけさ」 言葉は乱暴だがパンプティの人柄の良さが滲み出ていた。 (きっと君は良い人だ。僕には勿体無い程に。君が多くの友にこれからも恵まれますように) パンプティは自分用に百合の香りの香水を作り、フェイカーは数種類の花の香りが調和した花束のようなフローラルブーケタイプを作った。 「これ、お話し聞かせてもらったお礼にプレゼントしますね」 パンプティは手渡された小瓶に書かれたラベルを見てくすっと笑った。 「ラストノート……残り香って――粋じゃないか」 ●レミネ・ビアズリー ティーノ・ジラルディ ペア 香水工房『ラストノート』に訪れた浄化師の二人、レミネ・ビアズリーとティーノ・ジラルディ。二人は街を歩いている途中、漂う甘い香りに誘われてここへ足を運んだ。 「……どれが良いんだろ」 数ある香料の瓶を見つめながら悩むレミネ。ひとつ一つ手に取って香りを嗅いでいく。 「迷っているのか? なら、俺がレミネの分を作るから、お前は俺のを作ったらいい」 「え? ……じゃあ、私があなたの香水を調香したら良いのね?」 「あぁ、嫌か?」 レミネ横に首を振り、仮設机に並べられたガラス器具を自分の前に置いた。そして、香水をイメージして香料を選んでいく。先ほど教わった香水の作り方を思い出しながら着実に作業を進めていた。 ティーノもある程度イメージが固まり、調香作業に移っていく。 「……震えてないか?」 レミネのガラス棒とビーカーを持つ手が震えている。 「な、なにか用……? 震えてないから」 初めての香水作りに緊張のあまり手先が震える。ティーノはそんなレミネが気になって仕方がなかった。 (これはどう見ても……震えている) 「手伝うぞ、レミネ」 ティーノは有無を言わさず、レミネの手を支える。強がっているが、調香する手は緩く震えていた。 「っ!? ちょ、ちょっと……!」 突然、手を重ねられ、調香を続行させられることに驚くレミネ。 (心臓、ばくばくしてる……。この人、どうして私のこと構うんだろ) 考えても答えは出ず、ただただ緊張した状態で調香作業が行われた。 「――はい、これ。手伝ってくれたおかげで完成させることができたわ。ほぼあなたが作ったようなものかもだけど」 少し不服そうにティーノに小瓶を手渡す。 「そんなことはないだろ。俺は手伝っただけだ。嗅いでもいいか?」 「どうぞ」 小瓶の栓を抜いて、すっと鼻に近付ける。何の花かは分からないが、花と樹木を感じる。シングルフラワータイプとウッディタイプで調香されているみたいだ。 「ありがとう。あとでゆっくり嗅ぐことにする。それとこれはお前の分だ、レミネ」 手渡された小瓶。ラベルには『レミネ』と書かれている。 「え、これって……わ、私の名前?」 「当たり前だ。レミネをイメージして調香したんだ」 恥ずかしげもなく真っ直ぐに言うティーノ。そんな彼を直視できずにいるレミネは顔を少し赤らめていた。 「あ、後でつけてみるから……。その、えっと、あり、がとう」 「あとで感想を聞かせてくれると助かる」 「わ、わかった……」 そっと栓を開けて嗅いだ香りはいっぱいの果物と柑橘系の香りが混ざり合った私好みの香りだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[10] アシエト・ラヴ 2018/04/18-04:18
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[9] トウマル・ウツギ 2018/04/16-19:49
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[8] アキ・アマツカ 2018/04/15-22:26
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[7] シャルル・アンデルセン 2018/04/15-14:50
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[6] シャルル・アンデルセン 2018/04/15-14:50
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[5] ウラヌス・テネブラエ 2018/04/14-23:33
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[4] レミネ・ビアズリー 2018/04/14-14:22
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[3] ラシーファ・エルダム 2018/04/13-23:14
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[2] リトル・フェイカー 2018/04/13-22:34
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