~ プロローグ ~ |
トントン。 |
~ 解説 ~ |
【事情】 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは。たまにネタを挟まないと死んじゃう病の土斑猫です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ーやっぱり駄目よね 薬に頼るなんて 呆れたようなため息に体を縮める ごめんなさい わたしが飲むわ 何か質問してみてね だって セルシアちゃんが折角作ったのに 捨てるなんて勿体ないじゃない 口元に小瓶を 怒ったような焦ったようなシリウスの顔 薬を取り上げて飲み干すのを呆然と見る …どうして 当たり障りのない質問を幾つか 好きな色は?好きな季節は?等々 今日の朝ごはんは? 答えにつまる彼に はっと気づく …食べてない? 熱は?睡眠時間はどれくらい? もう!体調が悪いんじゃない 早く休まないと… わたし そんなに頼りない? ぽつり呟かれた言葉に目を丸く 苦しいときは教えて? 浅い呼吸といつもより高い体温 助けてと言えないシリウスを ぎゅっと抱きしめて |
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ヨ ⋯という訳で断れずに頂いてしまったのです ベ あいつ割と如何わしい実験をしているな⋯ ヨ それで⋯飲んでみようかと ベ ん 意外だな さては俺にどんな言葉を囁いてくれるつもりだ? ヨ それがわからないから飲むんです(ぐい 喰人の隣にすとんと腰を下ろす事暫し ヨ その薄い⋯本? を読んでいたんですか? ベ ああこれか カレナに借りた なかなか面白い ヨ まあ いつの間にそんな仲に ベ いや廊下ですれ違った時に⋯って何だ妬いてるのか ヨ 私は妬いてる⋯でしょうか? どうして? パートナーだから? 確かに喰人さんの事は好きですけど それが親愛なのか友愛なのか恋愛なのか 自分の中でちっともはっきりしないんです(ぐいぐい迫る ベ (あ まずい ヨ そこで(ソファに膝立ち |
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マーに飲ませてみるぞ! おもしろそうだからな!おやつのときお茶にこっそり入れてみよう ……なんにもならないな、量をまちがえたのか? お、しゃべり始めた……これがそうなのか……? でも部屋にいてもたいしたこと言いそうにないなー なあマー、買い物いかないかー? おいしそうなおかしを見たんだ、なーいいだろー? おっ、見てくれ!いぬだ! ん?おーいいぞ、マーに触られるのはすきだからな! マー、顔が赤くなってるぞ! 買い物の帰りにはちょっと公園でマーと話そう そっか、しゃべらせるんなら、さいしょから質問すればよかったんだなー なあなあ、マーはオレのことどれぐらいすきなんだ? オレはすっっっごくでっっっかくだいすきだぞ!!! |
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←某氏 えーと…概念…魂…まぁ、うん とりあえず、薬から離れようよ 魔術じゃなくて、材料と知識があったら誰でも使えるのはダメじゃない? 処分してくれと言われてもなぁ… 普通に使うんだったら個人消費は一瓶か二瓶か …それ以外は…うん、他人に投げよう パンケーキの蜂蜜の代わりに持って行く 「カグちゃーん、おやつにしよー?」 本とか読みだすと、止めないといつまでも読んでるからね、君は …… 君の僕の好きな所は毛皮だったなんて…! 一服盛った様な事は謝るけど、毛皮以外も好きになってもらわないとね? 「さて、カグちゃん…今夜は外泊しようか」 幸い、今日明日の急用はないからね、存分にかわいがってあげるよ |
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ルーノの部屋で指令の打ち合わせ中、休憩に紅茶を淹れた時 置いたままになっていた小瓶の中身を、ナツキが蜂蜜と間違えてお茶に注いで一気飲み シロップの効果でナツキがルーノを褒め倒す 淹れたお茶が美味いから始まり 指令の行動や日常での助力等々、思い返しては自慢げに褒めまくる ルーノがいたたまれなくなっても話し続け、かと思えば急に肩を落とし ナツキ:…ルーノがすごい奴だってよく知ってる でも自分の事はあんまり話してくれねぇし困ってても何も言わねぇ、俺ってそんなに頼りないか? 呟いて、すぐに元のテンションで褒め始めるナツキ さっさと小瓶を処分しなかった事を後悔しつつ 小瓶を置きっぱなしにした負い目からルーノは話を聞き続ける |
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サクラ:ねえ、キョウヤ。 キョウ:どうしましたか? サクラ:甘いの好きでしょ? キョウ:ええ、好きですよ。 サクラ:これ(シロップ)甘いからあげるわ。 キョウ:怪しい……いらないです。 サクラ:じゃあ私がもらうわね。 【行動】 サクラ 甘い甘い。本当に甘い。一滴だけでも味は結構わかる物なのね。甘いと言えば食事よ。最近食べ物に偏りが出ているわよキョウヤ。食べるものが一緒だから偏りくらいわかるに決まっているでしょう?え、食べるもの同じに決まっているじゃない。キョウヤがする事したい事は私がやってみたい事でしてみたい事なのよ? で、キョウヤが好きだからあなた(キョウヤ)の話をしているのよ? 聞いてる? |
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……。 処分品と言われてもな… 「…心の表層を表に出す、か…」 …アレがやる気なくしたようだから、発破でもかけるか 甘めの酒に混ぜればあまり警戒しないで飲むだろうか… 一角だけニホンになってるメルキオスの部屋 畳を敷いた一段高くなった場所に、中央が炉付きのローテーブルをおいてその横にクッションに埋もれる様に座った奴 「…おい、髪燃えるぞ」 火がついてる所にうつ伏せになるな ……魔結晶の魔術の、その基礎を室長に話したから、完成したって言ってたろ 全く無駄ではなかったのだからいいじゃないか 「…気分転換に酒持ってきたが、飲むか?」 (…例の処分品入りだが) ……どうやら、ただ不満が溜まってただけらしい って話に脈絡もないな |
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薬を貰う方:ラス 飲まされる方:ラニ 相方がセルシア嬢に怪しい薬を貰ってるといざ知らず カレナとちょこっと好きな絵師の新作について話をしてた ん、あんたも無茶しないでよ みーんな心配してるんだから あたしもに決まってるでしょ! ラスと合流後、貰ったジュースを疑いもなく飲み あ、これ美味しい! 飲んだ後にラスに聞かれて …何でそんなこと聞くの? 怒ってるの?この間突っ込んだこと?使徒相手の実験に調子に乗ったこと? 死んだら?ひとりぼっちよ どうしようもないから、今度こそ八つ当たりだけしか能のない人間になるわよ なんで?やっぱりシィラの傍がいいの? ………(言葉を聞いて泣き出し) 嘘ついてたのに まだ一緒にいてくれるの? |
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~ リザルトノベル ~ |
【検体1】 『リチェルカーレ・リモージュ』と『シリウス・セイアッド』は無言で見つめ合っていた。 卓の上には小瓶。 「やっぱり駄目よね。薬に頼るなんて……」 「……そもそも自白剤を『どうかしら』と差し出すのはお前くらいだ……」 「ごめんなさい」 謝って小瓶を手に取る。 「わたしが飲むわ。何か質問してみてね」 躊躇いなく口元に。顔を強張らせるシリウス。 「待て! 何故飲む必要がある!?」 「だって、セルシアちゃんが折角作ったのに。捨てるなんて、勿体ないじゃない」 澄んだ瞳で不思議そうに。シリウス、口パクパク。 「どうして、お前は……そんなに無防備に……!」 ひったくる。そのまま一気にあおった。 ポカンとするリチェルカーレ。 「どうして……?」 「こんな怪しい物、飲ませられる訳ないだろう!」 睨む。ですよね。 「……何か、質問は?」 言われて考えて。取りあえず当たり障りのないモノを。 好きな色は? 好きな季節は? 「……黒か、紺。……冬……」 淡々と。けれど。 「今日の、朝ごはんは?」 「――っ」 詰まった。露骨に。 気づく。 「食べて、ないの?」 「……一食くらい抜いても、問題ない」 そんな事を言う彼の顔を、しげしげと見る。赤い。そして隈も。 「熱は? 睡眠時間は、どれくらい?」 「……そこまで高くは……」 呟く様な、言い訳する様な声。終いには。 「……寝たくない……」 などと。 「もう!」 立ち上がる。引っ張って仮眠用のベッドへ。 「早く、休まないと……」 高い体温に浅い呼吸。胸が締まる。 横たえて毛布をかける。辛そうな顔。ポツリと呟く。 「わたし、そんなに頼りない……?」 目を伏せるシリウス。 「こんな時、くらい……」 ぎゅっと握る、手。 ……頼りにしていない訳じゃ、ない。 ただ、分からない。こういう時、どうすればいいのか。 悲しげな、彼女。 うつしてしまうかもしれない。離れてと、言おうとする。 「……少し……」 「……え?」 ――もう少し、傍に――。 目を丸くするリチェルカーレ。 口にしたシリウス自身、訳が分からない。 けど。 「うん! うん! いるわ! いつでも、ずっと!」 喜びに満ちて抱き着いてくる。 受け止めて、当惑。 「俺は、何を……」 気付く。口の中に残る甘い味。 想いを零す蜜の味。 (ああ、そうか……) 納得しながら、彼女の髪を優しく撫ぜる。 (いいのか……。俺も……) 切っ掛けを作ってくれた小悪魔に、ほんの少しだけ感謝。 もっともリチェを誑かした件については一言あるが。 「でも……」 ふと顔を上げる彼女。 「お薬どうしよう。シリウス病院嫌いだから……」 しばし考えて、ポンと手を打つ。 「そうだわ。セルシアちゃんに作ってもらえば……」 「――やめてくれ!!」 魂の叫びが熱を綺麗さっぱり吹き飛ばした。 【検体2】 「という訳で、頂いてしまったのです」 「あいつ、割と如何わしい実験してるな」 『ヨナ・ミューエ』の説明に、嫌~な顔をする『ベルトルド・レーヴェ』。 (まあ、らしいと言えばらしいが……) 「……それで……」 (しかしヨナと言いあいつと言い。エレメンツには変人が多いのか?) 「あの……」 (考えてみれば他の連中も……) 「それでですね!」 「あ、ああ。すまん」 少し怒った声が、ベルトルドを引き戻す。 「飲んで、みようかと」 「え゛?」 「駄目ですか?」 「あ、いや……」 嫌な予感が走るが彼女の探究心は理解している。『あれ』も邪悪ではないし、副作用はないと言うし。 「意外だな。俺に、どんな言葉を囁いてくれるつもりだ?」 「それが分からないから飲むんです」 飲んだ。早い。 暫しの間。 すっくと立ち上がる。スタスタと歩いてきて、隣にストンと腰を下ろした。 訝しげに思っていると、手元を覗き込んできた。 「その薄い……本? を読んでいたんですか?」 「ああ、これか。カレナに借りた。なかなか面白い」 「まあ、いつの間にそんな仲に……」 「いや、廊下ですれ違った時に……」 ヨナの目。何処かで見た。そう。カレナが他の女性といるのを見る時のセルシアの目。 「何だ? 妬いてるのか?」 泳ぐ視線。 「妬いてる……のでしょうか? どうして? パートナーだから?」 自問。 「確かに、ベルトルドさんの事は好きですけど」 カクンと落ちる首。 「それが、親愛なのか友愛なのか恋愛なのか」 迫ってくる。 「自分の中で、ちっともはっきりしないんです」 (あ……まずい……) 気づいた時には、壁際まで追い詰められていた。 「そこで」 軋むソファ。膝立った彼女が見下ろす。 「!?」 「キスで、確かめてみる事にします」 「ちょ、お前、そう言う所本当……」 ジタバタするも逃げられない。 「ベルトルドさん、経験はあるんでしょう? 私は、初めてですからね」 ついでのカミングアウト。恥ずかしそうに目を伏せる仕草が艶かしい。 「待て! 早まるなっ!!」 間近に迫る、薄い唇。色んな意味で高鳴る鼓動。 観念と言うか不可抗力と言うか。何かもうどうにでもなれと目を瞑る。 「………」 けれど、その瞬間はなかなか訪れない。目を開くと不満げで悲しげな顔。 「私とでは……嫌ですか……?」 呟く。潤む声。先とは別な意味で鼓動が鳴る。 「嫌、ですか……?」 「ヨナ……ええと、だな……」 総動員する理性。 「こう言った、センシティブな事を『図書館』でするものではない……のだ……」 「え……」 そう。話す暇がなかったが図書館である。公共の施設である。 見回す。人がいる。見ている。凝視している。 「ふぁっ!」 飛び上がる。 「す、すみません! 私ったら! こんな事を! どうして!?」 そのまま真っ赤な顔を手で覆い猛スピードで走り去る。 残されたベルトルド。大きく息を吐いて崩れ落ちる。 たまに見る異常な行動力と妖薬の悪魔合体。恐ろしい。 もしこれが二人っきりの個室であったなら。 止まれただろうか。お互いに。 改めて息をつきながら取り敢えず考える事はただ一つ。 「セルシア……。今度会ったら、覚えておけよ……」 マジである。 【検体3】 その日『ステラ・ノーチェイン』は盟友の所に遊びに行った。 一緒にいたセルシアが綺麗な瓶を持っていた。 欲しくて見てたら、くれた。 流石、盟友の『恋人』。 いいヤツだ。 さて誰に試そうか。 まあ決まってるけど。 部屋の中、漂うお茶の香り。『タオ・リンファ』が呼ぶ。 「ステラ、おやつですよ」 「おー!」 ストンと座ったステラ。 「いただきまーす!」 「はい。どうぞ」 クッキーをサクサクさせながらチラリと見る。 「そうだ。マー、ちょっと目をつぶってくれ」 「ん? 何ですか? まあ、いいですけど」 目を瞑るタオ。卓に手をついて背伸びする。 唇に、唇を当てる。カップの中に『ソレ』を一滴。 一瞬で終わらせて笑う。 「えへへ、いつものお礼だ」 「も、もう……。どこで覚えたんですか?」 赤くなるタオ。さあ、何処でしょうね? 暫し。 顔に赤みを残しつつ、お茶を飲むタオ。 (……なんにもならないな? 量をまちがえたのか?) なんて考えてると。 「ステラの服、ボタンがほつれてますね。寝静まったら直しておきましょう……」 (お、しゃべり始めた。これがそうなのか?) 「今晩の献立、どうしましょう……。残った食材だけでは不足ですね。買いに行くべきか……」 呟く。あんまり面白くない。 (う~ん。部屋にいてもたいしたこと言いそうにないなー。よし) 一計、講じる。 「なあ、マー。買い物いかないかー?」 「え?」 「おいしそうなおかしを見たんだ。なー、いいだろー?」 「え、ええ。そうですね。ちょうど、考えていた所ですし……」 話が早い。 「おっ、見てくれ! いぬだ!」 商店までの道行き。出会った犬をモフモフしているとタオが覗き込んできた。 「白くてふわふわで、可愛い……」 撫でながら呟く。 「ステラの髪も、手触りがいいんですよね。後で、触らせてもらおうかな……」 「ん? おーいいぞ。マーに触られるのは、すきだからな!」 「えっ、あっ!? 私、何を……!?」 真っ赤になった頬に手を当てる。何だか、とても可愛い。 帰り。ステラの目に公園が映る。 「公園だ。マー、すこしよってかないか?」 「ええ、いいですよ」 ブランコに座って色々話す。いつもより饒舌なタオ。とても楽しくて嬉しい。 (そっか。しゃべらせるんなら、さいしょから質問すればよかったんだなー) 「なあなあ」 「何ですか?」 「マーはオレのこと、どれぐらいすきなんだ?」 「え?」 吃驚するタオに顔を近づける。 「オレは! すっごくでっかく、だいすきだぞ!」 タオが華の様に綻ぶ。 「私も、好きです。大好き! 本当にもう、今すぐ抱きしめたいくらい……」 言うやいなや、ギュッ。温もりの中、ステラもやっぱり、ギュッ。 「今日の私、本当に変です……」 満ちる愛しさ。ウフフ、アハハと笑う二人。 射し込む夕日。今はただ、少しでもこの時を。 「という訳だ」 「成程……」 たっぷり楽しんだので白状するステラ。 大好きな人に嘘なんてつけないのだ。 「ごめんな。マー」 「いいえ。ステラは悪くないですよ。悪いのは……」 剣呑に、拳を鳴らす。 子供に変なモノ渡した罪は、重い。 【検体4】 ボウルの中、メレンゲが回る。 自慢の手腕を振るいながら。 「はぁ……」 溜息をつく『ヴォルフラム・マカミ』。 「全く。闇が、深いなぁ……」 先日の邂逅。久方ぶりに会った少女は、かつての助言に感謝した。おお、と思ったのも束の間。 壮大に悪化していた。 改めて諭したものの多分、無駄。過去に起因する歪な愛情。容易くは、ない。 「ま、乗りかかった船だしね」 闘志を燃やしつつ、傍らに置かれた小瓶を見る。 困りはしたが。興味は惹かれた。副作用も無い。 「ちょっとだけ……」 愛とは常に良からぬ誘惑を引き寄せる。 「カグちゃーん、おやつにしよー?」 視線を上げる『カグヤ・ミツルギ』。 「……もう、そんな時間?」 目を擦る。昔のニホン語で書かれた書物を現代語に翻訳する仕事。 「甘い物食べたいと思ってた所……。ありがとう、ヴォル」 伸びをして席に着く。 「本とか読みだすと、止まらないからね。君は」 笑うヴォルフラム。見つめながら思う。 (時間になると、いつも探しに来てくれたよね) 愛しさと共に。 (あの時も) ずっと。ずっと。 (今も) 消えぬ、時。 特製パンケーキにシロップをかける。 魔性と呼ぶには優しい、甘美と共に。 食べ終わって、お茶を飲むカグヤ。 そろそろ頃合。声をかける。 「カグちゃん」 「ん?」 「僕の、何処が好き?」 ワクワクしながら待つ。 「……モフモフ」 「へ?」 想定にない単語。 「小さい頃は、運べないから寒くない様にって、狼になってくっついて、一緒に寝てた。モフモフ」 確かに、そんな事はあった。 「狼のヴォルの、冬毛のモフモフなお腹の毛が柔らかくて温かくて……何時でも触ってたい……。でも一番は、耳のフカフカ……。一番動くから、毛も一番柔らかいから、好き……」 気づくと、卓の上に突っ伏しているヴォルフラム。 「え、えっと……ちゃ、ちゃんと人のヴォルも、好き、だよ! 大きい手、とか。声、とか……」 焦ってフォロー。聞こえているのやら、いないのやら。 けど。 「フ……フフフ……」 唐突に笑い声。ビクリ。 「フフ、フ……理解したよ。セルシアちゃん……」 ん? 今なんか不穏な名前が。 「これは挑戦だね? ケミカル力を否定するのなら、頼らぬ愛を証明しろと……」 証明しなくても、その方向性はヤバイ。 「上等!!」 復活するヴォルフラム。早い。 「カグちゃん!」 「は、はい!?」 「君が好きな所が、毛皮だったなんて……! でも、僕は挫けない!」 ズズイッと迫る。 「一服盛った事は御免! けど、それとこれとは別! 毛皮以外も好きになってもらうよ!」 「一服……?」 「さて、カグちゃん! 今夜は外泊しようか!」 「え……?」 「幸い、今日明日の用はないからね! 存分にかわいがってあげるよ!」 「え、ええ!?」 「ね!?」 「は、はい。えっと……お手柔らかに、お願いします……」 「よし、行こう! 僕達の愛の、確実なる証明の為に!!」 そのまま抱き上げて猛然と走り出す。 腕の中、全てを理解。無表情で呟くカグヤ。 「セルシアちゃん……後で、お話……」 大人しい人は怒ると怖い。 【検体5】 「そう、ルーノは凄いんだ! 分かってんのか? ルーノ!」 「分かった……分かったから、もう勘弁してくれ……落ち着いてくれ……」 降り止まぬ『ナツキ・ヤクト』の賛辞。『ルーノ・クロード』は頭を抱えながら己の迂闊さを呪う。 人伝に渡ってきた妙なシロップ。製作者の名を聞いて嫌な予感はしていた。 被害を被る前に、処分しようと思っていた。思っていたのに。 連日の指令で疲れていたのだろう。 忘れた。 それも、あろう事か。打合せしていた卓の上に。 休憩に淹れた紅茶。蜂蜜と勘違いしたナツキが『ソレ』を注いで一気飲み。 気づいた時には、既に遅し。 滅茶苦茶、効いた。 淹れたお茶が美味いから始まり、指令の行動や日常での助力等々、思い返しては褒めまくる。 正味、恥ずかしいなんてモノじゃない。今すぐ逃げ出したい。しかし、そもそも危険物の処分を怠った自分が悪い訳で……。 負い目と責任感。離脱する術もなく、親愛と言う名の責め苦は続く。 とは言うものの、ナツキ本人もこの事態には面食らっている。 何せこのシロップ、感情の暴走は後押しするものの意識までどうこうする訳ではない。個人差にもよるが人によっては普通に『しらふ』なのだから。 (俺、何でこんな事話してんだ?) 彼はそんな難儀なパターン。けど……。 (こうして見ると、本当にスゲェな。ルーノは) 元々が単純な性格。この異常事態も、すんなり受け入れる。 (俺の意見もちゃんと聞いてくれて、不得意な所もサポートしてくれて) 参ってるルーノを見ながら思う。 (だから、今言わない事も必要になれば話してくれる……。分かってる、けど……) 淀む心。 (それでも……) 声が絶える。 見れば、肩を落としたナツキの姿。 「……どうした?」 「……ルーノが凄い奴だって、よく知ってる。でも、自分の事はあんまり話してくれねぇし。困ってても、何も言わねぇ……」 「え? いや、それは……」 「俺って、そんなに頼りないか……?」 俯く。 言葉が、ない。 (……買い被り過ぎだ……) 心で呟く。 (頼りないから話さない訳ではない。失望させてしまう事が、恐ろしいだけだ……) 伝えたい。けれど声は出ない。 いっそ……。 手に取る小瓶。空っぽ。 (全部、飲んでしまったのか……) 苦笑する。気づけば、彼はもう元のテンション。 仕方ない。せめてもの贖罪。とことん付き合おう。思いながら瓶を見る。 『有効期間・24時間』。 注意書き。 二度見しても、そのまんま。 時計。まだ一時間も経っていない。 血の気が引く。褒め倒しは終わらない。 崩れ落ちながら、呪うは元凶。 (償いはさせるぞ……。覚悟しておくがいい……) 面は、割れているのだ。 【検体6】 穏やかな陽が射す中庭。『キョウ・ニムラサ』はベンチで読書でもと、くり出した。 けど。 「甘い甘い。本当に甘い。一滴だけでも味は結構わかる物なのね。甘いと言えば食事よ。最近食べ物に偏りが出ているわよキョウヤ。食べるものが一緒だから偏りくらいわかるに決まっているでしょう? え、食べるもの同じに決まっているじゃない。キョウヤがする事したい事は私がやってみたい事でしてみたい事なのよ? で、キョウヤが好きだから貴方の話をしているのよ? 聞いてる?」 目論見は儚く崩れ去る。 呆然と佇む前には、ペラペラ喋りまくる『サク・ニムラサ』。 何ですか? これ? 何事なの? これ? 訳が分からない。 事の起こりからして変だった。 座ったら、物凄く笑顔なサクラが寄ってきた。そして『甘いの好きでしょ?』などと訊いてくる。YESと答えると『これ、甘いからあげるわ』と、妙な小瓶を出してきた。相変わらずニコニコ。やばい。何かが、やばい。 「いや……いらないです……」 「じゃあ、私が貰うわね」 飲んだ。 途端これである。 もう絶対トンチキな代物だったとしか思えない。 って言うか、何で分かってて飲むのかこの姉は。 最初の内こそ。 「え、ちょっと? 何急にまくし――」 とか。 「速い速い! 口挟む暇ないじゃないですか!」 とか。 「息してます?!」 とか。 質問したり心配したりしてたものの。 意思の疎通が出来ないので諦めた。 まあ『あの言葉』は嬉しかったけど。 「……まだ続くんですか……? コレ」 大概ウンザリした頃。話の内容が変わってきた。 家族の事とか。故郷の事とか。そんな昔の思い出。 (あー、覚えてるんですねぇ) 性格故、とっくにと思ってたのに。 ……などと、ほのぼのしてたのもそこまで。 また内容が変わってきた。 下がる、血の気。 「ちょ! 何のたまってんですか!? それは、お互い墓の下まで持ってくって約束でしょう!?」 彼らとて人間。知られたくない秘密の一つや二つ、ある。 必死に止めようとするも制御は不能。 自死すら考え始めたその時、転がっている小瓶に気づく。 拾ってみると、注意書きと、製作者の名前が。 「ああ、成程」 読んで納得。 アハハと笑う。笑う顔にピキピキと浮かぶ青筋。プルプルと握り締めた手が、バキャンと小瓶を砕く。呪詛の如く響く声。 「……スカーレル、さぁあん……」 ブチ切れ。 【検体7】 「処分品と言われてもな……」 そんな事を呟きながら歩く『クォンタム・クワトロシリカ』。手の中には一本の小瓶。 人伝に渡ってきたソレ。聞くからに怪しい。ただ、捨てると言うのも……。 (貧乏性なのだろうか?) 等と思いつつ利用方法を考える。 「心の表層を表に出す、か……」 浮かんだのは相方の『メルキオス・ディーツ』の顔。 「……やる気なくした様だから、発破でもかけるか」 先には一件の酒屋。 「甘めの酒にでも……」 香る酒精に足を向ける。 煙管の煙が揺蕩う部屋。ニホン風の装飾の中、クッションに埋もれている彼。 「……おい、髪燃えるぞ。火がついてる所に、うつ伏せになるな」 声をかけると、火鉢の張りに乗っていた頭が少し動く。向けられる金の瞳。 隣に座る。 「……例の件だけどな」 かける声。 「魔結晶の魔術の基礎を室長に話したから、完成したって言ってたろ? 全く無駄ではなかったのだから、いいじゃないか」 聞いているのかいないのか。曖昧な返事をしてゴロゴロ。やれやれと酒瓶を置く。 「気分転換に持ってきたが、飲むか?」 「あぁ、うん」 やっとまともな返事をして身を起こす。 蜜入りの果実酒。妖しく香る。 「別に、そっちはどうでもいいかなって」 飲んで暫し。語り始める。 「確かに10年以上模索してたけど」 呟く様に。 「元々魔術得意じゃないから、僕じゃ完全には出来なかったと思うし。元神に手柄持ってかれた感じで、癪だけど」 愚痴を零す、子供の様に。 クォンタムは黙って聞く。 意見するでもなく。同調するでもなく。 ただ想いに耳寄せる。 吐いて。零して。流して。 やがて彩は形を変える。 「でさー、ダヌって川の神だったよね?」 「ミズカルズのでかい川って、どんな名前だっけ?」 「神やアレイスターの考えてる事、ぶち壊してやりたくてさー」 「ウチの部族の歌に載ってたような気がして、探してるんだけど中々見つからないんだ」 「確かダヌは水に関係のある神だから載ってたんだと思うんだけど……」 脈絡の失せた綴り。混じり始める睡気。酒精の誘い。 寝息。 穏やかな寝顔を見下ろし息をつく。 「……どうやら、ただ不満が溜まってただけらしいな」 それでも追い続けた年月。相応の喪失は確かで。 懐から取り出す小瓶。 「こんなモノを使わねば、語ってもくれないか……」 伸ばす手。白い髪を撫でる。 「まあ、ゆっくり、だな……」 囁く声は、如何なる彩か。 「まあ、それはそれとして」 摘んだ小瓶を、目の前にぶら下げる。 「何気に、強力だな。易く流して良いモノじゃ、ないだろうに」 瓶に書かれた、作者名。 「……ふむ。一つ、釘を刺しておくか」 罪過は重なる。 【検体8】 先だっての事もあり。少し気になったので。 様子見も兼ねて行ったら、歓迎と共に何故か妙なモノを渡された。 「……『推しごとき』はマジでやめとけ。次は一晩じゃ済まないぞ。それ」 経験から貴重な忠告を送り、彼女の元を後にした『ラス・シェルレイ』。外に出ると知った声。 「ん、あんたも無茶しないでよ。みーんな心配してるんだから」 見れば、朱毛の少女と談笑している『ラニ・シェルロワ』の姿。 「あたしもに、決まってるでしょ!」 そんな言葉に嬉しそうに笑う少女。 例の件以来、すっかり仲が良い。嬉しい反面、少々複雑。 勝手な独占欲と自覚してはいるが。 気づくのはポケットの中。 「ふむ」 ちょっとした悪心。 蜂退治のお礼も、まだだし。 理屈と何とかは、何処にでもくっつく。 「あ、ラス。何してんの?」 「ああ、ちょっとな。ホラ」 ポンと投げる、ジュースの瓶。 「くれるの?」 受け取ったラニが嬉しそうに笑う。 「あ、これ美味しい!」 飲み終わるのを待って問う。 「なあ……」 ずっと訊きたかった事。少しの悪意と共に。 「お前、オレが死んだらどうする」 「え……?」 戸惑う二色の瞳。 「お前が死んだら、オレも死ぬ」 ずっと口にしてきた。留める枷に、なる様に。 「お前は?」 少しの間。やがて。 「……何で、そんな事訊くの?」 戦慄く声。 「怒ってるの? この間、突っ込んだ事? 使徒相手の実験に調子に乗った事?」 怯える様に。 「死んだら? 一人ぼっちよ」 怖れる様に。 「どうしようもないから、今度こそ八つ当たりだけしか能のない人間になるわよ」 揺れる瞳。零れ落ちる涙。 「何で? やっぱり、シィラの傍がいいの?」 限界。華奢な手が顔を覆う。 「ラニ……」 途切れそうな声。震える肩。いつもより小さな姿。 沸き上がる後悔と愛しさ。 「違う!」 思うより、先。抱き締める。 「何度も言ってやる! 今大事なのは、お前だよ!」 「……嘘ついてたのに、まだ一緒にいてくれるの?」 「……当たり前だ」 抱き返す腕。胸の中で泣きじゃくる。 いつまでも。 いつまでも。 溢れた想い。受け留めるも、また想い――。 【結論】 「……ラニさん、泣いてるの?」 「――――っ!?」 背後。抑揚のない声。 振り向いた先。揺れる、ポニーテール。 「カ、カレナ……」 ビビるラスを昏い視線が射抜く。 「ラニさん、泣いてる。何で?」 「い、いや、コレは……」 「虐めた? ラスさん?」 撃音。熱持つ鉄杭が薬莢を吐く。 「お、おい……」 考えてみれば『アレ』の恋人。素質は十分。 「ラスさん」 持ち上がる凶器。そして狂気。 「ま、待て! 話を――!!!」 「ダメ」 なお、その時響いたモノとはまた別の悲鳴が、寮の一部屋からも聞こえた。 天網恢恢。裁きは下るのだ。
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*** 活躍者 *** |
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