~ プロローグ ~ |
エントランスに指令をもらいにくると、ロリクが神妙な面持ちで書類と格闘していた。いつものことだが、いつも以上にこう困っている、ぽい。 |
~ 解説 ~ |
メンチカツって安くておいしくておなかいっぱいになるんだぞ! |
~ ゲームマスターより ~ |
出来たら私は片膝ついているみなさんのお姿が執筆したいですっっ! |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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◆3・瞬目線 ・スペルを決めた後、いよいよ契約を ・口付けてもらう際は姿勢を低くしてあげよう、目線を合わせて 瞬(第一印象は小さく震える、目がキラキラな女の子 前のパートナーは男だったからある意味気楽だったけど… そう言えば契約には彼女に手の甲へ口付けて貰わなきゃだっけ) 瞬「じゃあ、契約だねー。まずは俺の手を切ってー うん…こんなところかな〜 …それで、いづは俺の手の甲に…大丈夫〜?」 唯「は、いっ!今!」 瞬(緊張するよねぇ… ほぼ初めましてみたいなオジサンとだもん、嫌かなぁ?) 唯「い、いきます…!」 瞬(触れたか触れないかの口づけが何だか微笑ましい) 瞬「さ、唱えよー!」 唯「はい!」 瞬・唯『ペリドットアイリス!』 |
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3.ショーン視点 組織は社会の縮図だ どんなに崇高でも必ずクズは存在する 俺はそのクズのせいで俺は上官の部屋を訪れていた 俺がもめ事を起こしたからだ 俺が『保護』した喰人候補にそのクズが言いがかりを付けていることが俺には我慢ならなかっただけだ そいつの勧誘が酷くて彼女に拒否されたそうだが… 彼女がここに来た直後からそいつは彼女に嫌がらせをしていたらしい だから俺はそいつを注意したんだ で、去り際そいつに肩を捕まれ、俺がその手を跳ね除けて大喧嘩になった訳だ 「契約はお前が適任かもな」 怒鳴られる事を想定していた俺には拍子抜けする言葉だった 彼女にはまだ契約していないらしい 適合しても頭が切れすぎて辞退されるそうだ |
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A4 ◆アユカ 記憶をなくした直後に教団に保護され連れてこられた状態 その様子は酷く無気力で、もうどうなってもいいと自暴自棄に陥っているよう だけどパートナーの名前を聞いた時、少しその瞳に光が灯る …綺麗な、名前だね きみの名前には色を感じる 世界を希望の色に塗り替えてくれるような力を感じるよ ◆楓 淡々と契約に臨もうとしていたが、彼女の顔を見た瞬間顔色が変わる 傍目から見ても、これは一目惚れだな…と明らかにわかる状態 彼女の境遇は知らされているのか、不器用ながらも気遣う姿勢を見せている …そう言われたのは、初めてです 世界を希望の色に… 今の私にはそこまでの力はありませんが、少しずつでも実現できればいいと思っています |
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※アドリブ歓迎します 2 僕はあの頃(3話)、ただ教団に対して悪意を持っていた。 ただ助けを待つばかりが正義で、被害者だと思っていた。 教団服だって、誰が着るものかと思った。 アブソリュートスペルだって、ベリアルと教団への、 そんな怨みからつけたものだったのに… ユギルさんと話して(30話)、心が揺らぎつつあるんだ。 自分こそが被害者だと思っていないか? 教団に責任転嫁していないか? 、って… (ララエルの話を聞き) 教団を…あるべき場所に…? そう…そうだな…そろそろアブソリュートスペルの意味を 変える時なのかもしれない。 もちろん、一緒に行こう。僕の故郷を、君に見せたい。 |
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3 リュシアン視点 彼女は全てを忘れていた 昔の事も、僕の事も…全て でも…きっとこれで良かったんだ あんな忌まわしい年月の記憶なんてない方がいい あの男の事も 僕達が犯した罪も 何一つ思い出さなくていい 彼女はやっと日の光の下を歩めるんだ これから、幾らでも幸せになれるんだ 死が僕らを別つまで 血の滲む彼女の手に口付け、誓いを唱える …同じ日に生まれて、同じ血を分けた僕達が 今度こそ決して離れる事のないように …何も分からないまま戦いに出向く事になるんだ 恐ろしくて仕方ない筈なのに それでも僕の手を握ってくれる 姉として…弟の僕を励まそうと微笑んでくれる リュネ。いや、…姉さん これからは、弟として、…パートナーとして 必ず守り抜く |
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■ハプニング ナツキが口付けを極端に恥ずかしがった為契約が進まなくなる ルーノの言葉でナツキが覚悟を決めて契約を続行 ナツキ:待て、心の準備が! ルーノ:…ナツキ。君にはやるべき事があるんだろう?こんな所で立ち止まっている暇はないはずだよ ■ルーノ やや直情的でお人好しという自分と真逆の相手と契約して大丈夫かと若干不安 しかしやっと見つかった適合者、選好みはできない 緊張するナツキを気遣い優しく手を取り口付ける ■ナツキ 物腰柔らかくしっかりした大人という印象のルーノ、良い人に当たったと安心 使徒の犠牲を増やさない為、絶対に浄化師になると意気込む 口付けの件ではごねるが、ルーノの言葉にはっとして真剣に頷き契約を進める |
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雲羽 ※喰人の過去は知らない 過去 偶然見つけて診療所へ 深い深淵から目を覚ました彼女の瞳は闇に沈みゆく夕暮れの太陽のようで …おいで、僕の可愛いお人形さん(マドールチェ)。君に本当の空の青さを教えてあげよう 僕は一番の素敵なものを拾った はは、人生なんてそんなものさ 偶然契約できる二人が偶然出会っていた それだけの話さ♪ ああ、契約する前に一ついいかな? …流す血は最小限にしておくれ 痕が残ったら大変だ 魔術真名かぁ …『さあ吟じようこの空へこの身を捧げんとする我らへ… ええ~? で結局 僕達の旅路を、これからを 『さあ、吟じよう』 万感の想いを込める事で妥協し契約 今の君は暁の太陽と赤いカナリヤのようだね これはとっても良い事さ♪ |
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パートナー候補として紹介された人はどこかつかみどころのない人だった。 占い師として少し話せばだいたいのことが分かる。 と多少の自信があった自分にもまったく掴めない人柄。 明るい?真面目?暗い?不真面目?いい人?悪い人? ぐるぐるといろんな側面が見えてきて特定できない。 それで私はじっとパートナーになる人の顔を見た。 それはもう不躾なほどに。 エクソシストには憧れていた。ベリアルを倒せる唯一の存在。 魔術的な知識もたくさん積める。 それさえできれば私はよかったのだ。 そのためのパートナー。 悪い人じゃなければだれでもよかったのかもしれない。 でもこれだけは分かった。この人とは長い付き合いになる。 いい人ならいいな。 |
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~ リザルトノベル ~ |
俺の目の前でがちがちに緊張して、今にも震えそうな、けど、目だけはキラキラしている女の子……『杜郷・唯月』を見る。 前のパートナーは、男だったから気軽なのは気軽だったなって。 俺はいづって呼ぶけど、今のところはまだ苗字の『泉世』にさんづけ。俺としては出来たら『泉』がいいんだけど、どうかな~? まだちゃんと視線だって合わないけど、スペルにいれちゃうくらい、俺はいづの目がすきなんだけどな~。そう言えば契約のときは彼女に手の甲へ口付けて貰わなきゃだっけ……いづが真剣な顔で形式にのとって契約を交わそうとする。俺はまだいづが何を抱えているのか知らないけど。それは俺もだよね。だいじょーぶだよ、大丈夫! って気持ちをこめて笑ってみせるけど、やっぱり視線があわない。 「じゃあ、契約だねー。まずは俺の手を切ってー。うん……こんなところかな~。……それで、いづは俺の手の甲に……大丈夫~?」 「は、いっ! 今!」 いづが両膝をついて両手を伸ばしてくる。俺は屈みこむ。 緊張するよねぇ……ほぼ初めましてみたいなオジサンとだもん、嫌かなぁ? 「泉世さん、あ、あの」 顔を覗き込んで笑いかける。いづがほっとした顔をした。頼ってもいいって思ってくれたのかな? スペルを決めるときにまだあった距離が少し縮んだ気がした。 俺のきれいだって思った目が俺のこと見てる! やっぱりスペルは、これでよかった~! 「あ、あの……」 「さ、唱えよー!」 「はい!」 「ペリドット!」 「アイリス!」 俺といづの声が重なり合う。 契約、ちゃんと交わせたね、いづ。俺たち、これから浄化師としてやっていくんだよ。 「うーん」 思わず腕組みをして唸ってしまう。無事に契約をかわしてほっとしているいづはなにか失敗したのかって不安そうで、あ、ちがう、ちがうって俺は慌てて手を横にふった。 「?……どう、しました……?」 「やっぱり……瞬って呼んで欲しいなーって!」 ごめん、我慢できなかった! いづが驚いた顔しておろおろ見つめてくる。けど言わなきゃわからないよね! 「ぇえ?!」 「泉世呼びに距離感感じちゃったんだ、ごめんね、さん付けでも全然いーよ!」 「えっと……」 「困らせちゃってるね。でもね俺、いづともっと仲良くなりたいんだぁ」 「そう言ってもらうの……初めて、です……わかりました……瞬、さん……」 はにかんだ笑みのいづに、俺の胸の中にあったかいものがこみあげてくるのがわかった。 いづ、すごいな。俺、君に出会うて、契約できて、本当によかったって思うんだ。いづも、そう思ってほしいな。 ● 契約の話、か。 今後の参考になるかはわからないがそれが指令の内容だ。ドクターは、今は研究に忙しいから俺だけでもいいんだな? 組織は社会の縮図だ。 どんなに崇高でも必ずクズは存在する。 組織が大きければ大きいだけ膿は必ず出てくる。 新人相手の言葉じゃない? 知らないままで過ごすよりは早めに知っておいたほうがいい。 ドクターみたいなことを言う、だと? ドクターは一貫した倫理観を持つ優しい人だが……似てきたんじゃないかって……っ、それなら嬉しいんだが……話を戻すぞ? 俺はそのクズのせいで上官の部屋を訪れることになった。理由? ああ、俺が『保護』した喰人候補にクズが言いがかりを付けていることが俺には我慢ならなかっただけだ。 そいつの勧誘が酷くて彼女に拒否されたそうだ。どういう勧誘をしたのか知らないが彼女はあらゆる手段で否定し続けていた……そんな彼女がここに来た直後からそいつは嫌がらせをしていたらしい。 だから俺はそいつを注意したんだ。で、去り際そいつに肩を捕まれ、俺がその手を跳ね除けて大喧嘩になった訳だ。 「契約はお前が適任かもな」 上官からは規律を乱した愚か者と怒鳴られる事を想定していた俺には拍子抜けする言葉だった。 彼女はまだ契約していなかった。頭が切れすぎて辞退されるそうだ……不安に思いつつ会った彼女は確かに知的だったが、恐怖は感じなかった。 「はじめまして。『レオノル・ペリエ』。よろしく」 「『ショーン・ハイド』……です」 教団を拒絶した彼女をここに連れてきたのは俺で、そのときは間違ったことをしたなどと微塵も思っていなかったが、見つめられると、どうしてか胸がざわついた。 適合診断の時、一度は魔力を出さずにぴったり手があってしまって驚くというハプニングはあったが、魔力を出した状態で手を合わせ、俺は驚いた。 最初と同じように指まで絡ませられたからだ。 そうだ、俺と彼女は同調率100%だったんだ。 「あのときの口論、見ていたよ。確固たる意志を持って立ち向かえる君が適合者なら、私も退屈しないだろうね」 柔らかな、声だった。 ただ、彼女は『私』が保護したことに気づいてなさそうだった。 まあ、それは些末なことと、そのときは思っていた。 ……一人称の変化か、耳敏いな……『私』と、敬意から自然と口にしていたんだ。 魔術真名は彼女に任せるような形になった。 求めよ、さらば与えられんという意味だと教えられた。 欲しいと望むことが大切なのだ、と、その言葉の意味を理解したのは、血の流れたその手の甲に口づけたその時より後の話だ。 ドクターが呼んでいる。この続きは機会があれば、また後に話すことにしよう。 ● 暗い世界で、倒れていたその娘は、なにもかも自暴自棄のように見えた。 長く教団に属していれば、そういう者に会うこともある。 『アユカ・セイロウ』。桔梗色の髪と瞳をしたエレメンツは無気力で、世界に絶望しているようだった。何を尋ねてもわからない、と、完全に記憶喪失だ。 適正結果――浄化師となりえる。そして相性についても他の教団員とともに探し出した――『花咲・楓』。 強い意志を感じさせる青年にパートナーになれる相手がいるが、やや問題があることも伝えた。 すると。 「構わない。世界を守るのにパートナーは必要だ」 前途多難。 とりあえず二人を会わせてみよう。相性が良い場合、なにかしらが作用をしてアユカさんの心に変化を、または楓さんにも影響を与えるかもしれない。 「アユカさん、あなたのパートナーになりえる人ですよ」 「パートナー?」 「……花咲楓……で、です」 「かえで? ……綺麗な、名前だね。きみの名前には色を感じる。世界を希望の色に塗り替えてくれるような力を感じるよ」 「あっ。ありがとうございます。その、平気ですか。顔色があまりすぐれないようですが」 これは……今までほとんど話さなかったアユカさんに反応があったのもいいが、楓さんのこれは。 「ありゃ惚れたな」 「しっ!」 私の横でパートナーが囁くのに、睨みつけて黙らせた。 ざぁざぁと降りしきる大雨の日が契約日になってしまった。本当は晴れの日にしてあげったが、二人ともそれぞれこの相手がいいと口にした。契約を交わすならば早いほうがいい。 「アユカさん、いいですか? スペルはどうしますか」 「……スペル……思いは現実となり世界を変える、雨の後には希望の花咲く」 「それは」 「……詩のフレーズみたい」 アユカさんの言葉に楓さんがぎこちなくも微笑んだ。 「それにしましょう。長いと不便なのでもう少しだけ縮めて……雨だって吹き飛ばすような希望を持ちましょう」 「希望……うん。そうだね。じゃあ、『雨のち、希望咲く』かな?」 「はい。では、お願いします」 「うん」 楓さんが手の甲を切る。それに屈んでいたアユカさんが顔をあげた。真剣に見つめあう。お願い、滞りなく終わってと私が祈るように見つめる。二人は見つめあい。微かに笑った、気がした。 アユカさんが楓さんの手の甲にキスを落として、二人が言葉を紡ぐ。 雨だって吹き飛ばすような素敵なスペル。 新しい浄化師が生まれた。 のちに私はときどき彼らをエントランスで見る。二人とも笑いあいながら希望へと進んでいるようだ。 ● 「むむぅ」 「うーん」 『ラウル・イースト』『ララエル・エリーゼ』はカフェで向き合って唸っていた。 その目の前にはレポート用紙とペン。 今回は契約についてまとめるという至極簡単なものだ。まとめる一例としてまったくもって参考にならない先輩の話も聞いた。 「ラウル、どうですか?」 「そうだな。今後の参考……僕はあの頃、ただ教団に対して悪意を持っていた」 「ラウル……それは、仕方がないです」 「ありがとう。けど、ララ、思ったんだ。ただ助けを待つばかりが正義で、自分が被害者だと思っていた。教団服だって、誰が着るものかと思った。アブソリュートスペルだって、ベリアルと教団への、そんな怨みからつけたものだったのに……」 ラウルは過去の自分を振り返り、苦笑いする。彼の瞳はちらりと周りを歩く仲間である教団員にむけられる。 「ユギルさんと話して、心が揺らぎつつあるんだ。自分こそが被害者だと思っていないか?教団に責任転嫁していないか? って……」 自分は弱いとラウルは思っている。だからそう口にした。それを甘えとユギルは言った。そしてラウルは強いとも。 そこからラウルはララエルのためにも強くあろうと自分なりに向き合い、進んできた。ララエルも以前は不安定だったが今は笑みを見せてくれるようになった。 「それなら、こうしちゃうのはどうでしょう? 『あるべき所に還れ』なら、仮に教団を、あるべき所にしちゃうんです」 「あるべき所……」 スペルを決めたとき、ララエルは「お墓にかえらなくちゃだめですか?」と小さな声で口にしていた。そんなララエルからの提案にラウルは目を見開く。 「そうしたらラウルは、故郷を復興するまでは、教団をおうちにできるし、私も生き返ったこの体で立ってゆける。この脚で歩いてゆける。そして全部終わったら、あるべき場所に還るんです、二人で。それがラウルの故郷だったら嬉しいな、なんて……えへへ」 最後ははにかんで答えるララエルの強さにラウルは、ゆるゆると笑いかけた。 「ララ、ありがとう。教団を……あるべき場所に……そう……そうだな……そろそろアブソリュートスペルの意味を変える時なのかもしれない」 教団で出会った人々が受け入れてくれたように。二人はこの場所で大切なものを作り上げていった。 「もちろん、一緒に行こう。僕の故郷を、君に見せたい」 「はうあっ!? 一緒に見に行くのが私でいいんですか?」 「もちろんだよ。ララエル」 ラウルが手を伸ばす。照れて赤くなっていたララエルがゆるゆると手を重ねる。 「あるべきところ」 「かえれ」 二人は視線をあわせて言葉を重ねた。それは今は二人で作り上げた家――教団だ。 ● 「あなたは誰?」 その一言に、僕は決めた。 リュネ……死ぬまで弟として、そしてパートナーとして貴女を守り抜く。 「いや、こわい」 「……姉さん、僕はあなたの弟だよ」 「わたしの、おとうと?」 「うん。貴女は『リュネット・アベール』、僕は弟の『リュシアン・アベール』……僕たちは、浄化師になれるんだよ?」 なにもかもあの人のせいだ。何も知らないまま出会った弱弱しい小鳥のような貴女。 一目見たそのときに僕は恋に落ちたんだ。 それがリュネット、あなただった。 ひどい不幸のなかでも生きるあなたを……あの人から救おうとした。 地獄のはじまりでも構わなかった。手に持った銃口の重さも、引き金の強さも幸せになれると妄信していた。 その結果、あの人は……ベリアルになった。僕は罰を受けたんだ。けど、貴女は自由になると思っていたのに、皮肉だよね、今度は僕が貴女を捕えてる。 「わたしは何て酷いんだろう。弟を犠牲にして、自分だけ生き延びて挙句、全部忘れて」 「そんなことないよ」 「ごめんなさい、シア。たった一人の弟なのに」 「……自分をせめないで」 彼女は全てを忘れていた。昔の事も、僕の事も……全て、でも……きっとこれで良かったんだ。あんな忌まわしい記憶なんてない方がいい。あの男の事も。僕達が犯した罪も。何一つ思い出さなくていい。彼女はやっと日の光の下を歩めるんだ。 これから、幾らでも幸せになれるんだ。けど、僕は。 「本当に、いいの?」 「うん……もう道を違えない……危険な日々かもしれないけど、これからはお姉ちゃんも一緒だよ? だから大丈夫……シア」 違うよ、そんな言葉がほしいんじゃないよ。リュネ。 僕はただ黙るしかない。 相性は大丈夫だった。契約の儀式。僕は膝をついてリュネを見上げる。 何もかも捧げるように決意してくれた彼女の血の滲む手に口付け、誓いを唱える。 「死が僕らを別つまで」 「二人は一つと誓います」 同じ日に生まれて、同じ血を分けた僕達が、今度こそ決して離れる事のないように。 僕との契約にはにかむリュネ。僕は大切なことを言っていない。言い出せばよかったのに言えなかった。これから、ずっとこの罪を抱えて生きていく。リュネ、あなたを愛し続けて。 ……何も分からないまま戦いに出向く事になるんだ。恐ろしくて仕方ない筈なのに。それでも僕の手を握ってくれる。姉として……弟の僕を励まそうと微笑んでくれる。 リュネ。いや、……姉さん。 これからは、弟として、……パートナーとして、必ず守り抜く。 ● 「待った!」 それは何度目かの制止の声だったのに『ルーノ・クロード』は形の良い眉を顰めなくてはいけなかった。 その前では尻尾をぶんぶんとふって真っ赤になっている『ナツキ・ヤクト』がおろおろしている。傍から見ても彼がうろたえているのがわかる。 「ナツキ」 「う。ごめん!」 二人は出会い、相性を見た結果、契約を交わすことになった。しかし、いざそのときになってナツキがごねはじめたのだ。 ナツキは育った孤児院がヨハネの使徒に襲われた。二度とそんな悲劇を起こさないために浄化師になることを決めた。 戦う覚悟は決めていたつもりだが……。 問題は手の甲への口づけ、である。 (ルーノは妙に手馴れてるし……沈まれ心臓……!) 早鐘のように脈打つ心臓の暴走にナツキはつい叫んでしまうのだ。 「待て、心の準備が!」 何度目かの心の準備だ。 (手を切るのは良くて口づけは駄目なのか) ルーノは心の中でつっこんだ。 どういう基準なのかがさっぱりわからないが、この際、そんなことを疑問に思っている必要はない。 ため息を飲み込んで、かわりに言葉を紡ぐ。彼がどうして浄化師になりたいのかは既に聞いていたから、なおのこと。 「……ナツキ。君にはやるべき事があるんだろう? こんな所で立ち止まっている暇はないはずだよ」 ルーノのその一言にナツキは、ぎくりと肩を震わせ、拳を握りしめると俯いて、ごめん、と囁いた。 「俺、覚悟が足りなかった」 「いや、私も少し言い方がきつかった。すまない」 「ルーノは悪くねぇよ! ありがとな。俺の背中を押してくれて。やっぱりルーノが相棒でよかった!」 「……そうか」 ルーノは口元に笑みを作った。 直感的で、お人よしなナツキは自分とは真逆で若干不安を感じていた。しかし、ようやく見つけた相手にえり好みできる立場ではなかった。 それに真っすぐな瞳は悪くはないと思えるのだ。 ルーノはナツキの手をとる。びくりと軽く震えたのを落ち着けるようにゆっくりと口づける。 「その牙は己の為に」 二人で決めたことがある。 教団に属しても浄化師となって得た力の使い道は自分自身で決める。 それが魔術真名にこめた二人の気持ちだ。 ままならない世界で、失ってきた自分たちだが、何かあって迷っても再び進めるために。そして自分たちの意志だけは決して縛られないという反逆の気持ちをこめて。 ナツキはじっとルーノを見る。ルーノは自分になにも語らない。けれど、それでいい。今はこうして契約を交わしてパートナーとして認めてくれるなら。 尻尾をふって笑いかけると、ルーノも目を細めた。 「よろしく相棒」 「おう!」 ● あなたは私の青い空。 目覚めた世界で初めて見た青い空。彼は私においで、と口にした。ああ、なんて青い。青いのだろう? 吸い込まれてしまいそう。がらんどうな私を救いあげてくれた空。 「おいで、僕の可愛いお人形さん。君に本当の空の青さを教えてあげよう」 はい、と答え以外あるかしら? 長い長い旅の末に二人は教団へと連れていかれ、そこで浄化師になれることが発覚した。 しかも相性を見れば二人の同調率50%。高くもないが、低くもなく、契約を交わすことできる相手だった。 「……まさか私達が契約できる適合者だったなんて……」 「はは、人生なんてそんなものさ。偶然契約できる二人が偶然出会っていた。それだけの話さ♪」 驚く『ライラ・フレイア』に楽観主義者の『空詩・雲羽』は笑って告げる。 そのまま契約の流れになると、ふいに雲羽が笑みを消してライラに告げた。 「ああ、契約する前に一ついいかな?」 「何?」 「流す血は最小限にしておくれ、痕が残ったら大変だ」 びっくりするくらい優しい手に包まれて、ライラは大切にされているのだと言葉以上に感じて、ああ、うん、と呟くように目を細めて言い返す。 「あ……魔術真名はどうするの?」 「魔術真名かぁ……『さあ吟じようこの空へこの身を捧げんとする我らへ」 「ストップストップ雲さん!? 長すぎだから! もっと! 短く! コンパクトに!」 「えぇ~」 「そんなのだと戦う前に殺されてしまうわ!」 「うーん、ではさぁ、空へと」 「もっと! 短く!」 すったもんだの末。 二人は向き直る。ライラが手の甲に傷をつけ、雲羽が恭しくも優しく口づけを落とす。 空と太陽がまじりあう。 「さあ、吟じよう」 これからの二人の旅路へ万感の想いをこめる言葉を選んだ。 何とか契約出来て一安心したライラに雲羽が満足そうに覗き込む。 「今の君は暁の太陽と赤いカナリヤのようだね。これはとっても良い事さ♪」 「う……うん? ありがとう……?」 ライラは不思議そうに小首を傾げるのに雲羽は心から嬉しそうにづけた。 「さぁ、行こうか。僕のお人形さん」 「待って、雲さん」 先へ先へと歩きだす雲羽をライラは追いかける。 その日、この世で一番素敵なものを拾った。 傷だらけの美しい小鳥を抱え、偶然見つけた診療所に駆け込んだ。 目覚めたと聞いてみると沈む深淵から目を覚ました彼女の瞳は闇に沈みゆく夕暮れの太陽のようで。 微笑みながら手を伸ばし、言葉を紡いだ。 彼女は、はい、と答えた。 君は、僕の見つけた太陽だ。 ● 『シャルローザ・マリアージュ』と『ロメオ・オクタード』は向き合う。 海色の瞳と太陽の瞳が見つめあう。 わからない人。とシャルローザは感じる。占い師として多少は鍛えて自信がついてきた頃だったのに、この人はぜんぜんわからない。本質を少しも掴ませてくれない。 (明るい? 真面目? 暗い? 不真面目? いい人? 悪い人?) ひとつ、またひとつといろんなシーンが出てきては消える。 どれもがこの男性で、どれもが違う。 (あなたはだれ?) 不躾なほどにシャルローザは見つめる。 問いかけるように、しつこく。それが相手にどんな印象を抱かせるなんて考える余裕もないほどに。 ロメオは皮肉な笑みを浮かべた。さんざん逃げ回り隠れてきたのにいざとなる命が惜しい。 (俺の人生をここで終わらせたくない) 記憶は欠落しているロメオはアンデッドとして今、ここに誕生したばかりなのだ。 しかし、紹介された相手がこんなにも可愛らしい女の子だとは意外だった。 もっと子供の場合もあるので、まだマシかと思うのだが。 緊張からか、それとも何か気に食わないのかまじまじと見つめられる。いや睨むような強い瞳。 海色の瞳にロメオは目を細めた。 (気に入らないところがあるのか?) ロメオが手の甲に傷をつくる。シャルローザは片膝をつき、その手をとる。触れるか、触れないかの口づけを落とす。 再び瞳か向き合う。 「嘘と」 「お菓子は甘いもの」 言葉が重なり合う。 二人の契約は実にあっさりとした成立した。 「憧れていたんです」 ぽつりと、シャルローザは自分を晒した。相手を知りたいなら自分を出さないといけないと気が付いたのだ。 「ベリアルを倒せる唯一の存在だから」 なにより知識が欲しいから。 それだけでよかったと思っていた。だからパートナーは大切だと言われても、浄化師になるための足掛かりで、悪い人でなければいいな、とだけ思っていた。けど。 「へぇ。なら、邪魔しないようにしないとな。いい関係を作れるようにしよう」 「……ロメオさんは、きっと、いい人ですね」 「そうかい?」 ロメオの皮肉な微笑みは自分に向けて。真っすぐにまぶしいほど願いを持つパートナーに生きているだけの自分でいいのかと、疑問が浮かんだからだ。 彼の心を少しだけシャルローザは読み取ることができた。 (この人は、少なくとも悪い人じゃない) そして長く付き合うことになる。まだ全部はわからないけど、いい人ならいい。 シャルローザは微笑むのにロメオは金の目を細めた。 彼でよかったと気持ちをこめて。
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*** 活躍者 *** |
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[2] 空詩・雲羽 2018/10/06-23:00 |