~ プロローグ ~ |
まぶた越しにまぶしい光を感じながらうつらうつらとしていた。 |
~ 解説 ~ |
乗車する予定の夕方発の列車が駅に到着するのは午後の2時頃です。 |

~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして! 宇美と申します。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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◆(2) ・寝過ごしに唯月は反省、瞬は楽観 唯「寝過ごしてしまうなんて…」 瞬「たまにはこんな事もあるよ~」 ◆所持金が心許ないので資金稼ぎにパフォーマンスを ・唯月はその人が描いて欲しいものを即興で描く (メモ帳とペンで描くクオリティ) 唯(…瞬さんも頑張ってますし…私も頑張らなきゃ!) 唯「えっと…即興で絵を描きます! 物や似顔絵等…ご要望ありましたら…なんなりと!」 ・瞬は演技のストリートアクトを歌を混じえて披露 ・一人芝居でテーマは『童話の誰か』で 様々な童話の人物の心情を演じてみる。 瞬「俺はやっぱ演技かなぁ~馴染みやすい題材を考えよう」 瞬「童話の人物達をテーマに一人芝居 あなたが好きな童話の人物は誰かな~?」 |
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寝てしまった上に鞄を持ち逃げされるとは不覚 だが財布は懐に入れてたので無事だ 鉄道修理工場か(目が輝き よく分かったな そんなに分かりやすいか? やはり汽車は素晴らしいな! 感嘆しつつ、どういった仕組みなんだ?と質問を始める 時間を忘れて見学していたら袖を引かれ もう昼か 確かに何か食っておかないと保たないな 後ろ髪引かれる思いで出口に向かい知った顔を見つけ レオノルもいたのか 素晴らしい物を見たな 話ながら飲食店街へ 仲間を見つけ走り出すヴィオラを慌てて追いかける ああ、分かった 帰りの汽車賃さえ残してくれれば私が払おう それにしてもシリウス 食わねば必要な栄養が摂れないぞ いざという時リチェを守る力を出す為にもちゃんと食べろよ |
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まさか寝過ごしちゃうなんて… 自分では気付かないうちに疲れが出てるのかしら? まあいいわ、時間までぶらぶらしましょう 街を歩きストリートパフォーマンスを見物 何人か見知った顔もいるわね 特に雲羽のパフォーマンスは何だか楽しくて素敵 チップをはずみたいけれど、生憎今は持ち合わせがないのよね… …え?歌? 別に人に聴かせるようなものじゃないし… トール、聴きたいの? パフォーマンスは無理だけど、皆と楽しむためになら、少しだけだったら… そ、そんなに期待されても困るわ!(赤くなる 見て回ったら食事に 声をかけられたら断らずご一緒 じゃあ、私はハンバーガー…はぁーい… 渋々ニホン風の麺を取り へえ…うどんって言うのねこれ(七味どばぁ |
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仕方ないじゃない 夕方までゆっくり過ごしましょう? 休暇をもらったと思いましょうよ 額を押さえているシリウスの手をひいて にっこり (3) 色んなお店があるのね 大道芸に拍手をしたり 綺麗な雑貨に目を輝かせたり 周りの光景に夢中 はぐれないよう 彼の手をぎゅっと握って お昼時 知り合いを見つけて駆け寄る 皆さんも今からご飯ですか? 良かったらご一緒しませんか? ぱっと離された手に ほんの少し残念さを感じる 買ってきたご飯を皆で分ける クレープとかプリン系 女の子同士分けてきゃっきゃと ヴィオラちゃんのも美味しそう 少しもらってもいい? レオノル先生 美味そうなクッキーもありましたよ 後で買いに行きましょう 食が細いシリウスが 食べている姿に笑顔 |
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…参ったな(ぽかん) ドクターが寝てると思って気づいたら終点とは… 泥棒には慣れていますし私が金品を管理してたんで、まあ何も取られはしなかったですが… 暇つぶしと言いますが…何をするんです?修理工場か…何が面白いんですか? はぁ…物理学者には楽しいことがあるんだろうな…(俺には分からんが…) 上機嫌そうなドクターが見られるのが嬉しいんだが ?お知り合いですか? ニコラと再会して嬉しそうなドクターを他所に、時計を見る そろそろ食事にしないとな…と思った先に、仲間たちを発見 食事か…ドクターには栄養バランスの揃った食事を購入せねば… クッキーは後で。まずは食事です! シリウス、お前もだ。ほら、野菜も肉も食え |
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2 使用 楽器 歌 雲羽 絵に描いたような挫折ポーズと悔恨の叫びにおやおや… まあ最近教団での寮生活にすっかり慣れてしまったからね~旅の記憶が薄れ油断してしまうのは仕方のない事さ♪ 必死な様子にふむ でもこれはこれで嘗ての旅路を思い出さないかい? 着の身着のまま、赴くままに♪ ひらりと大衆の前に躍り出て さあさあ吟じようじゃあないか♪ 音も相方も踊る 3 一稼ぎした後顔見知りを見かけ声掛け一緒に終点ぶらり旅をしよう♪ 女の子が喜びそうなスポットとか回るだけで楽しいし♪(軟派 フードコートとかで食べ歩きも乙だよね~♪ 合間 ん~?(もぐもぐ 嚥下 うん。勿論さ♪ 君は君の意思で僕の隣にいる 過去に縛られず歩く事が出来るのはとても良い事さ♪ |
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※アドリブ歓迎します ※機械関係が好き 1・2 金を盗まれたのは痛かったけど…鉄道修理工場だって! 凄いな、どういう工程で修理をしてるんだろう…! (少年のように目を輝かせる) (ララエルの言葉に) ま、まあ…そうなんだけどね。 仕方ない、ストリートパフォーマンスでもやろうか。 (ララエルにストリートパフォーマンスの説明をする) ララ、僕の演奏に合わせて歌える? (大勢に向かって) さあさあ、そこのお客さん! 一時歌姫の歌を聴いていかないかい?(スキル会話術3) バイオリンを構え、小気味な演奏を(スキル演奏3) (パフォーマンスを終え、一礼) |
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~ リザルトノベル ~ |
● 「うう……寝過ごしてしまうなんて……私ったらなんてドジ……」 落ち込む『杜郷・唯月(もりさと・いづき)』を 「たまにはこんな事もあるよ~」 と『泉世・瞬(みなせ・まどか)』は慰める。 駅舎を出ると、パフォーマンスをしている人が沢山だ。 「所持金が心許ないことだし、俺たちも資金稼ぎにパフォーマンスをしようか? 皆さん! 童話の人物達を演じます。あなたが好きな童話の人物は誰かな~?」 よく通る声で、ためらいなく通りかかるひとに声をかける。 向こうから7,8歳の可愛らしい少女がやってきた。 灰かぶり姫をやって欲しい、という。 瞬は一瞬面食らった様子だったが、間もなくにこっとした。 瞬は右の手を握って人差し指を立てると、空中でくるくるさせた後少女を指差す。 「お兄ちゃん?」 「灰かぶり姫役は君だよ! 俺は魔法使いだ。今、君に魔法をかけてあげたよ! 素敵なドレスにガラスの靴が見えるかい?」 女の子はきょとんとしていたが間もなく、 「うん! お兄ちゃん! 見える見える!」 瞬は「さあ! 今から、舞踏会に行こう」と言うと、少女の手を引き、優雅なワルツを鼻歌で歌いだした。 少女をリードしてダンスをする。 「私は王子です。今日は舞踏会に来てくださり光栄です」 瞬は魔法使いから王子に変身したらしい。 駅舎の時計台が、時刻を告げる鐘を鳴らした。 時計の針が11時を指していた。 「メアリ! こんなとこにいたの! 早く来なさい」 「ママ! 私灰かぶり姫のお芝居してるの! まだ12時じゃなくて11時だから後1時間ダンスをするのよ」 「何を言っているの! 12時なんてとっくに汽車が出発しているわよ!」 少女が母親に連れ去られると、瞬王子は、「ああ……麗しの君……君がいないなんて、もう生きていけない……」といかにも芝居がかったようすで嘆いたがすぐにぱっと身をひるがえして5、6歩下がると、靴を脱ぐ。 元の位置に戻ってくると、脱いだ靴を両手で抱えラッパの声真似をした。 「さあさあ、みなさん王子様が花嫁をさがしています。この靴が履ける方は未来の王妃様ですよ! われこそは! と思うご令嬢はどうぞ名乗りをあげてください!」 いつの間にか、瞬は王宮からの使いに早変わりしていた。 面白がって若い女性たちが次々と瞬の前に進み出て、男物の靴に足を入れる。 「履けたわ! 私が王子様と結婚できるのね」 「ぶかぶかすぎるのもだめです。ぴったりじゃないと」 「その靴だったら俺だって履けるぞ!」 とふざけた調子で、一人の体格のよい男が瞬の前に出て靴に足を入れる。 「おっ! ぴったり、あなたさまこそが未来の王妃!」 と瞬が恭しくひざまずき、男の手に口づけをする。観客たちは大笑いだ。 (瞬さん芸達者だなあ。さすがです。私も頑張らなきゃ!) 頬を熱くして勇気を振り絞って声を出す。 「えええっと……即興で絵を描きます! も……ものや似顔絵等……ご要望ありましたら……なんなりと!」 ● 「きゃあああ! バッグが盗まれてるう! わ……私とした事がぁ~! 荷物管理担当として、旅してる時はちゃんと盗まれないように気を付けていたはずなのに!! ああ、サイアクだわ。情けないわ」 と『ライラ・フレイア』は涙目で地面に拳を打ち付ける。 ライラの絵に描いたような挫折のポーズと、悔恨の叫びに対して『空詩・雲羽』といえば、 「まあ最近教団での寮生活にすっかり慣れてしまったからね~旅の記憶が薄れ油断してしまうのは仕方のない事さ♪」 と鼻歌でも歌いだしかねない呑気さだ。 賑やかな通りを歩く。 雲羽は楽しんでいるようだが、ライラは心が晴れない。 「嘗ての旅路を思い出さないかい? 着のみ着のまま、赴くままに♪」 「そんな呑気な事言ってる場合じゃないのよ〜雲さん~!……でも確かに持つ物が少なかった頃を思い出す」 知り合いの浄化師の瞬がパフォーマンスをやっているのを発見した。 何かお芝居をやっているようだ。 何の役をやっているかはわからなかったが、口ぶりやしぐさは素人離れしている。ただ者じゃない感があふれていた。 「むむむ、やるなあお兄さん♪ 僕の可愛いお人形さん! 僕たちも負けてられないぞ♪ さあさあ吟じようじゃあないか♪」 ライラの手を引き、ひらりと群衆の前に躍り出る。 雲羽がリュートを構え、左手で弦を抑える。右手でぽろんと弦をはじく。朗々と歌いだす。 流れるような音色に操られるように、ライラは雲羽の前に出た。 リュートと歌声に合わせ、自然と体が動く。 長調の楽しげな曲だ。軽快なリズムにライラの体も弾む。 こまのようにくるくる回る。ゴムまりのようにぴょんぴょん跳ねる。 鳥の翼のように両手を開く。雲羽がじゃんっ! と力強く弦をはじいた。 それと同時にライラはたんっと右足を蹴りあげ、宙に舞う。 大きく飛んだので、しばらく体が宙にとどまった後、首尾よく着地する。 たくさん稼いだので、予定より早く切り上げることにした。 コインのいっぱい入った布包みをぶらさげながら、人ごみのなかを歩いた。 「顔見知りを見かけたら声を掛け、一緒にぶらり旅をしよう♪ 女の子が喜びそうなスポットとか回るだけで楽しいし♪ フードコートとかで食べ歩きも乙だよね~♪」 向こうから、知り合いの浄化師のリコリスとトールがやってきた。 4人でフードコートに向かい各国の料理を堪能した。 駅に向かう道、ライラは先ほどの雲羽の奏でる音色の一部になったかのような瞬間を思い出し、うっとりとした。 (あの時は素敵だった……まるで鳥になって空を飛んでいるような気分だった。やっぱり私には雲さんだけなんだ。これからも雲さんにどこまでもついていくんだ) 隣の雲羽だけに聞こえるくらいの声で、こうささやく。 「雲さんあのね……私、今は貴方から離れたいとは思ってないから。だから……まだ一緒にいても、良い?」 「うん。勿論さ♪ 君は君の意思で僕の隣にいる。過去に縛られず歩く事が出来るのはとても良い事さ♪」 「……うん」 ● (金を盗まれたのは痛かったけど……鉄道修理工場だって! 凄いな、どういう工程で修理をしてるんだろう!?) 少年のように目を輝かせて『ラウル・イースト』はむき出しになった機械や車輪や技師たちをじっと見つめていた。 夢中になるあまり、時間を忘れてしまいそうだ。 グイッと体が後ろに引っ貼られた。 振り向くと『ララエル・エリーゼ』がラウルのジャケットを引っ張っていた。 あどけない口元をへの字にしている。もともとふっくらした頬をさらに膨らませ、涙目になっていた。 「もうっ、ラウル! ノンキすぎます〜このままじゃお金が足りなくて帰りの汽車に乗れなくなってしまいます~!」 「ま、まあ……そうなんだけどね。 仕方ない。そろそろ外に出ようか?」 ラウルとララエルが外に向かおうとすると、一緒に工場見学に来た『ニコラ・トロワ』と『ヴィオラ・ペール』が壁が取り払われて機械がむき出しになった蒸気機関車の前で技師の説明を聞いていた。 ニコラは先ほどのラウルと同じ目をして、機械に見入っている。 ララエルはそれを見て、男の人ってみんな、機械がすきなんでしょうか? と思った。 ラウルとララエルは修理工場見学を切り上げて駅前大通りに向かう。 歌っている人、踊っている人、楽器を奏でている人、いろいろなパフォーマーたちが並びそれぞれ人気を集めている。 「ララ、僕たちもここでストリートパフォーマンスをやろう。僕の演奏に合わせて歌える?」 「ストリートパフォーマンス……ですか?」 聞き覚えのある歌声にララエルは振り向いた。 顔見知りの浄化師を雲羽の歌声だった。 雲羽の弾き語りに合わせて、ライラがまるで空を飛ぶように縦横に舞い踊る。 ララエルがくっと口角を上にあげた。 「何だか楽しそうですね。私も頑張って歌います!」 ラウルはバイオリンを掲げ軽快なリズムを奏でる。 大勢の人々が集まってきたところで 「さあさあ、そこのお客さん! 一時歌姫の歌を聴いていかないかい?」 「その女の子が歌うの? こんなに可愛いのに歌も歌えるの?」 ラウルは再びバイオリンを構えると、小気味な演奏を始めた。 ララエルはそれに合わせて歌う。 最初はラウルの演奏に歌声をそっとかぶせるようにおっかなびっくりだった。 次第にのども開いて息も合ってきたのか、のびのびと自由に歌っているのに不思議とラウルの演奏にぴったりと合っている。 (楽しい! 私、ラウルの演奏で歌うのすごく好き!) 一曲歌い終わるとどっと拍手喝采がわいた ラウルとララエルは観客に向かって一礼する。 ● (まさか寝過ごしちゃうなんて……自分では気付かないうちに疲れが出てるのかしら? まあいいわ。時間までトールとぶらぶらしましょう) 寝過ごしたことに気づいた『リコリス・ラディア―タ』は、すぐに気分を入れ替える。 リコリスの横を歩く『トール・フォルクス』も同じ気持ちだ。 (寝過ごした。おまけにリコが財布をなくしたらしい……ま、でも幸い俺のは無事だから、何とかなりそうかな) 駅舎を出れば、店もたくさんあるし、ストリートも賑やかでこれなら退屈せずに済みそうだ。 駅前大通りには大勢のストリートパフォーマーがいる。 「おもしろそうね。見て回りましょう。お財布盗られちゃったからチップはあげられないけど。何人か見知った顔もいるわね」 リコリスとトールが最初に行ったのは唯月と瞬の所だ。 観客の注目を浴びている瞬の隣で、唯月がメモ帳にせっせとペンを走らせている。 また少し歩くと、これまた知り合いの雲羽とライラのパフォーマンスに出くわした。 「素敵! チップをはずみたいけれど、生憎今は持ち合わせがないのよね……」 トールが盛大に拍手して盛り上げる。 拍手の音と喧騒の間を縫うようにバイオリンの音色と甘い歌声がわたってきた。 人だかりの奥には、金髪の育ちのよさそうな若者がバイオリンで軽快な音楽を奏でている。 それに合わせて青いロングヘアのまだローティンの少女が砂糖菓子のような甘い声で歌っている。 「あの子上手ね。可愛い声なのに、よく通るし、声量もある感じ」 「いやリコだってあれくらい上手いぞ。そういえば、リコは歌わないのか?」 「私の歌は別に人に聴かせるようなものじゃないし……」 「なんで!? 俺はリコの歌好きだぞ」 「トール、聴きたいの?」 トールは真剣な面持ちでうなずいた。 リコリスは、 「パフォーマンスは無理だけど、皆と楽しむためになら、少しだけだったら……でも、今じゃなくてまたいつか機会があるときに……」 ぐるぐると曲がりくねるような歯切れの悪い口ぶりだ。 「ああ、その時はとびきりの歌を聴かせてくれよ」 「そ、そんなに期待されても困るわ!」 とリコリスは赤くなる。 (パフォーマンスは無理、か……やっぱり歌手だった母親を思い出すからかな……) 一通り見て回ったらもう食事の時間だ。 「リコリスさーん!」 とオレンジ色の髪をきらきらさせながら声をかけてきたのは、マドールチェの少女ライラだ。 ライラと雲羽に誘われて一緒にフードコートに向かう。 お金は財布が無事だったトールが立て替えてくれるという。 ちょっとチープな感じの各国の料理の絵が並んでいた。 サンディスタム料理、東方島国ニホン風、ブリテン郷土料理……。 そういったものには目もくれずに「私はハンバーガーでいいわ」というリコリスに、トールが、 「またジャンクな物ばっかり食べないの!」 「はぁーい……」 とリコリスは渋々ニホン風の麺を注文した。 「これで出汁がきいてる」 と食事を味わっているトールに対してリコリスは 「へえ……うどんっていうのねこれ。なんか全然味がないじゃないの」 と言うなり、七味をどばぁと振りかけた。 ● (情けないことに、記憶が完全に途切れている。何もなかったから良かったものの、毒でも盛られていたら……) 青ざめている『シリウス・セイアッド』に対して『リチェルカーレ・リモージュ』はいつもながらのおっとりとした様子だ。 「仕方ないじゃない。夕方までゆっくり過ごしましょう? 休暇をもらったと思いましょうよ」 「ゆっくりって……」 能天気なリチェの言葉にシリウスは額を押さえた。 自分の手を握るリチェの手と、にっこり笑う顔を交互に見つめた後、ため息をつく。 ブリテンの中心地だけあって、アルバトゥルス駅舎前は大変なにぎわいを見せていた。 駅前大通りにびっしりと並んだ小さな店にリチェは「わあ! 色んなお店があるのね!」と興奮気味だ。 ストリートパフォーマーに拍手をしたり綺麗な雑貨に目を輝かせたりしている。 彼女ってどんな時でも楽しんでしまうんだな、と感心するのとあきれるのが入り混じった感情を抱いた。 そろそろ昼時だ。食事にしようと、香ばしいにおいに惹かれるように、横通りに入る。 男、女、子供、若者、年寄。さまざまな種族の人々。あまりにも人が密集しているので、おしくらまんじゅう状態だ。 人の波をかき分けるようにして道を進む。 「すごい人だな」とリチェに声をかけようとしてはっとした。 彼女の姿が見えない。 周りは見知らぬ人ばかりでリチェの姿はどこにもない。 思わず冷や汗をかいていると 「シリウス! ここよ!」という澄んだ声がして銀藍色のウェーブヘアが目に入った。 「リチェ……」 気をつけないと迷子になってしまいそうだ。 そう思っていると、リチェがシリウスの手をぎゅっと握った。 握りしめてくる手に目を丸くする。僅かに戸惑った後、そろりと握った指に力を入れる。 横道を抜けると、人と人の隙間に余裕がでてきた。 「あ! あの子! それにあの男の人もそうよ! ヴィオラちゃーん」 と駆け出すリチェに引っ張られシリウスも移動する。 前方に目をやるとそこには知り合いの浄化師が二組もいる。 ニコラ・トロワにヴィオラ・ペール、『ショーン・ハイド』と『レオノル・ペリエ』までいる。 シリウスは、思わずリチェの手を放した。 リチェはほがらかに二組の浄化師に声をかける。 「皆さんも今からご飯ですか? 良かったらご一緒しませんか? え!? 本当!? いいんですか? 嬉しい!」 と楽しそうにしながらも、リチェルカーレはシリウスがつないでいた手を離したことに、ほんの少しの残念さを感じていた。 ● (……参ったな、ドクターが寝てると思って気づいたら終点とは……泥棒には慣れていますし、私が金品を管理してたんで、まあ何も盗られはしなかったですが……) ショーンはすやすやと寝入っているレオノルを前に、これこらどうしようかと思いあぐねていた。 向こうから駅員がやってくる。今から車庫に入りますので降りてくださいと催促をされた。 「ドクター起きてくださいっ! 大変ですよっ!」 レオノルが眠そうに眼をひらく。 「んーよく寝たー。アルバトゥルスっ!? て、終点? うっそー!!」 興奮状態のレオノルの肩に手を添え、ショーンは線路の並ぶ地面に降りた。 駅員にこれからどうやって帰ればよいかと聞くと、教団の最寄り駅に向かう特急列車が出発するのは夕方になってからだという。 「そんなに待たないといけないんだー。暇つぶししなきゃいけないかなー?」 ほんの一瞬不満そうなレオノルだったが、すぐに目を輝かせて、 「確かここさ、鉄道修理工場があるんだよね。ね、いこ!」 「修理工場……何が面白いんですか??」 「溶接とか、メンテナンスとか、検査器具とか見られるのかなー? あーっ! わくわくするー!」 (はぁ……物理学者には楽しいことがあるんだろうな……俺には何が面白いのかさっぱりわからないが……) というショーンを 「何が面白いかは行ってみてのお楽しみだよ!!」 とレオノルが強引に引っ張っていく。 銀髪の知性派美女レオノルは小さな男の子のように飛び跳ねながら歩く。 ショーンとレオノルはにぎやかな大通りとは反対方向の出口から鉄道修理工場に向かった。 大きなレンガ造りの建物に入る。 薄暗い中にチカッと火花が散った。 「ショーン、ほら、あっち! 火花!! 見て! あの機械凄い!」 上機嫌そうなドクターが見られるのは嬉しいかな…… 「あっドクターあんまり機械に近づいちゃいけませんよ。チケット売り場の人も言っていたじゃないですか?」 レオノルが急に機械から注意をそらした。 後ろからやってくる一組の男女をじいっと見つめている。 すらりとした長身の眼鏡の男性と、清楚な感じの小柄なエレメンツの少女だった。 よく見ると男には球体の関節がある。 彼、もしかしてマドールチェ? あんな背の高いマドールチェ初めて見た、と思っていると 「あれ? あのメガネの背の高い人、博士の所の彼では? あ、やっぱそうだ」 レオノルが男を指差し、さかんに騒いでいる。 ● (あのバッグ……お気に入りでしたのに……お金はいいのでバッグだけでも返して欲しいわ……)とヴィオラはうなだれる。 (寝てしまった上に鞄を持ち逃げされるとは不覚。だが財布は懐に入れていたので無事だ) ニコラはがっかりしながらもどこか冷静だ。 「修理工場行きます?」 とヴィオラがニコラに笑いかける。 「えっ? 私が修理工場に行きたいってよくわかったな!」 「分かりますよ、だって駅員さんが修理工場の話をしてから、目がキラキラしてますもの。ふふっ、分かりやすいですよね」 「そんなにわかりやすいか?」 入り口で渡されたヘルメットをかぶり工場に入る。 案内係の指示の通りに、工場内に渡っている、鉄の板で作られた通路を進む。 最初の部屋には、車輪ばかりがごろごろと何十も並んでいた。 「こうして間近で車輪を単独で見ると、いかに大きいかがよくわかるな」 とニコラが嘆息する。 工員たちが車輪の真ん中に工具を当て、ねじを回すような作業をしている。 何人かの工員が車輪に火を噴く鉄の棒を当てている。 鎧のような防護服を纏い、車輪に抱きつくような姿勢で、作業をしていた。 鉄の棒から吹き出ている炎は赤ではなく、青白い。 ニコラによると、青い炎は赤い炎より温度が高いそうだ。 次に通った部屋では、工員たちが車体にスプレーで塗装していた。シートで覆われた車体に金色のスプレーを吹き付けている。 次の部屋に入ると、ニコラの瞳の輝きが増した。 煙突のある機関車の車体が、丸ごと一台置いてあったのだ。 しかも修理中のためか壁が取り払われて、中の機械部分がむき出しになっている。 油まみれの男がパイプのねじを回したり、布でふいたりしていた。 男が検査器具を睨んでいたからだろうか? ニコラは彼をただの工員ではなく、専門家だと思ったらしい。 蒸気機関車はどういった仕組みで動くんだ? と男に質問を始める 「蒸気の力で動くのです」 「そんな事ぐらい私は知っている。これでも科学者の助手だからな。しかし、なんでたかが蒸気の力があんな重いものを運べるのだ?」 ニコラは男を質問攻めにする。 男も説明するのが楽しいらしく、いやな顔せずに教えてくれる。 ヴィオラは口元に微笑みをうかべながらニコラを見つめていた。 話の内容は、よく理解できない。 けれども、ニコラの好奇心いっぱいの男の子のような表情を眺めているだけで、胸に暖かいものがこみあげてくるのだった。 「こういう時のニコラさんはとても可愛いです」 ● つんつんつん、と蒸気機関車に見入っている、ニコラの袖をヴィオラが引っ張る。 「そろそろお昼ですよ」 「もう昼か! まだ10時ぐらいかと思った。確かに何か食っておかないと保たないな」 まだ見足りなさそうなニコラを連れて、出口に向かうと知りあいの姿があった。 浄化師で物理学者のレオノルだ。ヴィオラの科学者の叔父のお弟子さんでもある。 「ニコラ! 久しぶり! わあ! 偶然だねえ!」 レオノルの隣にいる、30代半ばの長身の筋肉質の男が 「お知り合いですか?」 と聞くので互いに自己紹介をする。 ニコラと再会してレオノルは嬉しそうだ。 4人は修理工場を出て飲食店街に向かった。ニコラが今日は皆にごちそうしてくれるという。 「素晴らしいものを見たな」 「ホント! チョー感動だよ!」 鉄道修理工場の話で盛り上がっているニコラとレオノルを、ちょっとうらやましいかも……とヴィオラが思っていると 「ヴィオラちゃん、レオノル先生!!」 聞き覚えのある可憐な声とともに、浄化師仲間のリチェルカーレがやってきた。パートナーのシリウスも一緒だ。 ヴィオラは小走りで二人に駆け寄る。後ろからニコラもついてくる。 ヴィオラはぽんとリチェの肩を叩くと 「リチェちゃん! ニコラさんがご馳走してくれるそうなので一緒に食べません?」 6人が入ったのは各国料理の店が並んだフードコートだ。 世界各国の料理の店が並ぶ。ノルウェンディ風、東方島国ニホン風、シャドウ・ガルテン風なんていうのもあるようだ……。 「ドクターには栄養バランスの揃った食事を購入せねば……」 とショーンがつぶやく。 ショーンさんパートナー思いなんですね、とヴィオラは微笑ましく思った。 クッキーの看板にレオノルが目を輝かす。 「私はクッキー食べたいなぁ」 「ドクター! だめですよ。先に食事です!」 とたしなめるショーンに 「えー……クッキーは後?」 とレオノルはしょんぼりしている。 パスタや炒飯、ケバブ、サラダなど各店から買ってきてテーブルに広げる。リチェルカーレの買ってきたデザートもあってなかなか豪華なお昼ごはんだ。 「ショーンが選んでくれたごはんも美味しい! みんなでいろんな国の料理を交換できて楽しいね!」 「クレープ食べる? それにプリンも買ってきたの。ヴィオラちゃんのも美味しそう。少しもらってもいい?」 「そうだ、レオノル先生。さっき私が買いに行ったお店の隣に美味そうなクッキー屋さんもありましたよ。食べ終わったら買いに行きませんか?」 にぎやかな女性達の隣で男3人は比較的静かだ。 「最近シャドウ・ガルテンとの国交が始まったらしいですね」 とか「ウラド・ツェぺシェが釈放されたそうですよ」などと、ニコラとショーンはぼつぼつ世間話をしているが、シリウスは一言もしゃべらない。 おまけにさっきから一口も食べずに、水をちびちび飲んでいるだけ。 「シリウス! 水ばかり飲んでいないで、野菜も肉も食え!」 ショーンが見るに見かねて、シリウスの目の前に皿を出すが、いらないと押し返されてしまう。 ニコラにまで 「食わねば必要な栄養が摂れないぞ。いざという時リチェを守る力を出す為にもちゃんと食べろよ」 と言われ、シリウスはぐっと詰まるため息をついたが、ついに皿を受け取った。 「リチェを守る」という言葉に反応したのか、リチェルカーレが男達のほうを振り向いた。 日頃食が細いシリウスが食べている姿にリチェルカーレは微笑んだ。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[13] リチェルカーレ・リモージュ 2018/11/11-20:46
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[12] ヴィオラ・ペール 2018/11/11-16:46
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[11] リチェルカーレ・リモージュ 2018/11/11-10:20
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[10] 泉世・瞬 2018/11/11-08:27
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[9] 空詩・雲羽 2018/11/11-00:17
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[8] ショーン・ハイド 2018/11/10-22:34
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[7] リコリス・ラディアータ 2018/11/10-21:56
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[6] ヴィオラ・ペール 2018/11/10-21:53
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[5] リチェルカーレ・リモージュ 2018/11/10-21:11
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[4] 空詩・雲羽 2018/11/10-19:53 | ||
[3] ラウル・イースト 2018/11/10-12:36
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[2] リコリス・ラディアータ 2018/11/09-11:37
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