~ プロローグ ~ |
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
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~ 解説 ~ |
現代社会とは、起源などが異なっていますが、基本的なイメージは同様のイベント内容になっています。
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~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル『聖なる夜に祝福を!』の対象エピソードです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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教団の寮で二人で過ごす ロウハが夕食、わたしがケーキ作り担当 お互いの部屋のキッチンを行き来して手伝ったり わたしの寮室に小さなツリーとかささやかな飾りつけをしたり 普段こういうことしないから、すごく楽しかった …やっぱりロウハの料理、美味しい 懐かしいし、あったかい気持ちになるわ プレゼント…! わ、ありがとう、嬉しい…! ええ、すぐに着てくるわ 白と赤の服… いつもは黒い服が多いから、なんだか新鮮 着替えるのに邪魔になるから髪は解こう どうかしら…? (ロウハ、黙ってる…変かな) い、いい感じ…よかった…! その、わたしも、ロウハにプレゼントがあるの この服ほど素敵なものじゃないけど 小説、書いてみたの 読んで…くれる? ロウハの隣で彼が読書してる様子を窺う この物語には、わたしの思いをたくさん込めてみた ロウハ、どう思うかな… 突然引き寄せられて驚く ロウハはこっちを見てくれない、けど… 「嬉しい」…その言葉で、報われた気がする |
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~ リザルトノベル ~ |
クリスマスの、その日。『シュリ・スチュアート』と『ロウハ・カデッサ』は、薔薇十字教団本部の寮室で過ごしていた。 「ロウハ、なにか手伝うことはある?」 「いや、こっちは大丈夫だ」 ロウハは手際よく料理を作りながら、部屋にやって来たシュリに返す。 今日はクリスマスということもあり、申請さえ出しておけば、それぞれの部屋を行き来しても良いのだ。 「お嬢の方はどうだ?」 エビや魚介類がたっぷり入ったパエリアを煮込みながら、ロウハはシュリに顔を向ける。 「スポンジケーキが焼き上がって、今は冷ましてるの」 シュリはケーキを、ロウハは夕食をそれぞれ担当しているのだ。 「手が空いたから、なにか手伝えることがあれば、手伝おうと思って」 「ありがとな、お嬢。でも大丈夫だ。待っててくれよ、美味い夕食を食べさせてやるからな」 笑顔で返すロウハに、シュリも笑顔で応える。 「期待しているわ」 「お嬢のケーキも、楽しみにしてるぜ」 「ええ、任せて。それじゃ、私は部屋の飾り付けをしておくわ」 「ツリーとか飾るのか?」 「ええ。それが終ったら、ケーキの飾り付けもして、また来るわ」 「おう、頼む。その頃には、出来てる料理もあるだろうから、持って行ってくれるか?」 「ええ、分かったわ」 楽しげに言葉を交わし、シュリは自分の部屋に一先ず戻る。 「さて、こっちも仕上げていくか」 ロウハは手際よく、料理を続けていく。 オーブンに入れておいた、ローストチキンを取り出す。 テーブルに置き、今度はローストビーフをオーブンに。 フライパンで表面を焼いておいたものを、芯まで火が通るよう加熱するのだ。 「今の内に、サラダを作っとくか」 焼き上がったローストチキンを休ませ、パエリアが煮える間に、クリスマスリーフを象ったサラダを作る。 緑の葉物野菜をリーフのように輪っかになるよう飾り付け、所々に輪切りにしたゆで卵。 刻んだドライフルーツを散りばめて、ドレッシングを掛ければできあがり。 冷気を生み出す魔術道具で保存して、他の料理に取り掛かる。 手際よく料理を作るロウハ。 その頃、シュリはクリスマスのケーキを作っていた。 「ロウハ、喜んでくれるかしら」 期待と不安を滲ませながら、シュリは出来あがったケーキを見詰める。 2人で食べ切れる大きさのケーキには、マジパンで作った小さな人形がのっている。 女の子と戦士の男の子。 シュリとロウハに似ている。そして―― 「プレゼントは、ご飯を食べてからの方が良いわよね」 寝室にシュリは視線を向ける。 そこにロウハへのプレゼントを置いてあるのだ。 (気に入ってくれるかな?) 期待と不安の入り混じった思いに、少し鼓動が早くなる。 ふわふわと軽やかに、心が弾む。 クリスマスツリーと部屋を飾りつけながら、普段とは違うクリスマスの雰囲気を楽しんでいた。 それは1人で居る今も。 だからロウハと2人で居れば、もっともっと、楽しくて嬉しい気持ちになるだろう。 部屋の飾り付けとケーキを作り終えたシュリは、ロウハの部屋に。 「美味しそう」 部屋を訪れ、テーブルに置かれた料理を見て、シュリは声を上げる。 「これだけ全部作るの、大変だったでしょう。ありがとう、ロウハ」 嬉しそうなシュリの笑顔に、同じように笑顔を浮かべロウハは返す。 「喜んでくれるなら、作った甲斐があったな」 洗い物の片付けをしながら、ロウハは続ける。 「ここを片付け終わったら部屋に行くから、できあがった料理、持って行ってくれるか?」 「ええ、分かったわ」 笑顔で料理を自分の部屋に運んでいくシュリ。 その間に、手早く片付けをするロウハ。 (プレゼントの用意もしないとな) 寝室に置いてあるプレゼント。 シュリが喜んでくれるか、不安と期待を胸に抱きながら、ロウハは用意をしていった。 そして片付けも終わらせて、シュリの部屋に。 「華やかで好いな!」 ロウハは玄関の先の廊下に、プレゼントの入った袋を置いて。 飾り付けられたシュリの部屋に入り、感嘆の声を上げる。 「気に入ってくれた?」 喜ぶロウハに、はにかむようにシュリは返す。 「もちろんだ、お嬢!」 2人は笑顔で、喜び合う。 そして2人のクリスマスが始まった。 「……やっぱりロウハの料理、美味しい」 ほぅっと、息をつくように。 ロウハの料理を食べたシュリは思いを口にした。 「懐かしいし、あったかい気持ちになるわ」 それは思い出を浮かび上がらせてくれるような、シュリのことを思っての料理。 「そんなに喜んでくれるなら、久々に腕を振るった甲斐があったな」 笑顔を浮かべ、お喋りを楽しみながら、2人はクリスマス料理を食べていく。 食べやすいように切り分けられた、ローストチキンとローストビーフ。 ロウハの故郷、サンディスタムの味わいを加えられたそれは、スパイスの効いたソースの味も加わって、食べる毎に味わい深い。 エビや魚介類のたっぷり入ったパエリアを、シュリが器にとってロウハに渡す。 間間に、クリスマスリーフをあしらったサラダを。 どれもみな、美味しくて。 2人は、ずっと笑顔だった。 そして食べ終わり、最後はケーキを。 「お嬢もケーキ作り、頑張ったじゃねーか」 「本当に? 好かった」 ロウハの言葉に、喜びの笑顔を浮かべるシュリ。 その笑顔に、ロウハの胸には温かなものが満ちていく。 甘く美味しいケーキを食べながら、2人は心地好さに包まれていた。 「ごちそうさま。美味しかったわ、ロウハ」 食事が終わり、礼を言うシュリに、ロウハは返す。 「喜んでくれたなら、なによりだ。お嬢のケーキも、美味かったぜ。だから、お礼をしないとな」 そう言うと、玄関の先の廊下に。 そこに置いておいた袋から、プレゼントを取り出しシュリに渡す。 「お嬢にプレゼントだ。今着てみてくれねーか?」 「プレゼント……!」 シュリはロウハのプレゼントを受けとり、喜びに声を上げる。 「わ、ありがとう、嬉しい……!」 大切に、プレゼントを抱きしめながら言った。 「ええ、すぐに着てくるわ」 そう言うと寝室に。 「白と赤の服……」 ロウハが特注した、可愛らしい雰囲気の、白のセーターに赤のスカート。 (いつもは黒い服が多いから、なんだか新鮮) 喜びと気恥ずかしさに、胸が高鳴る。 (着替えるのに邪魔になるから髪は解こう) 髪を降ろし着替え終わると、ロウハの元に。 「どうかしら……?」 不安と期待に高鳴る鼓動を抑えるように、手を胸に当てながら。 シュリはロウハに尋ねる。 応えは、すぐには返ってこなかった。 「…………」 シュリの姿を見た途端、ロウハは動きが止まり、じっと見つめていた。 (ロウハ、黙ってる……変かな) 不安に、しゅんとするシュリ。 けれど、そんな心配はいらない。 なぜならロウハは、シュリの姿に見惚れていただけなのだから。 「ああ……なんつーか、想像以上でびっくりした」 髪を降ろしたシュリの姿は、いつもの彼女とは違って見えて。 用意した白のセーターと赤のスカートを着た彼女は、とても魅力的だった。 「いい感じだと、思うぜ」 シュリを褒めたくて、白のセーターと赤のスカートをプレゼントに用意したロウハだが、いざ彼女の姿を見てしまうと、思ったように言葉が出てくれない。 いま自分が口にできる言葉では、足りないと思ったのだ。 けれどシュリにとっては、ロウハの言葉が何よりも嬉しかった。 「い、いい感じ……よかった……!」 花咲くような笑顔を浮かべ、喜びを口にした。 シュリの様子に、ロウハの胸に喜びが沸き立つ。 それと同時に、ちょっとした心配事も。 (胸がだいぶ強調されてるな……外では着せないようにしよう) そう思ってしまうほど、シュリはロウハにとって魅力的だった。 言葉は無くとも、通じ合えるような空気が満ちていく。 それほどに、幸せな気持ちが溢れてくる。 だからこそ、少しでもその幸せを返したくて、シュリは言った。 「その、わたしも、ロウハにプレゼントがあるの」 プレゼントの置いてある寝室に行き、戻って来ると一冊の本を差し出す。 「この服ほど素敵なものじゃないけど」 勇気を振り絞るようにして、シュリは言った。 「小説、書いてみたの。読んで……くれる?」 これにロウハは、感心して声を上げる。 「小説!? すげーなお嬢、ありがとな」 大切に受け取って、部屋に備え付けのソファに座る。 横には、シュリも一緒に座り。 ロウハは静かに、ページを開いた。 ――彼女の傍には、いつも彼が居てくれました。 それは少女と、戦士の青年のお話。 父を亡くし、遺言に従って戦う少女を、いつも守ってくれる優しい青年の物語。 ――寂しくて、苦しいことがあってもへっちゃらです。 ――彼が傍に居てくれるだけで、立ち向かうことができました。 ひとつひとつの言葉に、溢れる思いを込めるように。 その物語には、作り手の気持ちが込められていた。 「…………」 最初は感心するような表情を見せていたロウハは、読むほどに無言になっていく。 (ロウハ、どう思うかな……) シュリはロウハの隣で、彼が読書してる様子を窺う。 ロウハにプレゼントした物語には、シュリの思いがたくさん込められている。 ――彼女の喜びも苦しみも、彼と共にあります。 ――それが、どれほど嬉しいことか。 ――伝え切れる言葉はありません。思いだけが溢れるほどに大きくて。 ――それでも、彼女は伝えたいと願います。 ――ありがとう。いつも傍に居てくれて。 ――大切で、大事な、私の戦士さん。 喜びと嬉しさと、そして彼に対する好意が、物語には込められていた。 ――叶うなら、これからも貴方と一緒に。 ――祈るような思いを胸に、少女と戦士の青年の物語は続いていくのです。 これから先の未来を望むように。 物語は、幕を下ろした。 全てを読み終わり、静かに本を閉じたロウハは、隣にいたシュリを片腕で引き寄せる。 「――っ!」 突然引き寄せられてシュリは驚く。 驚きに強張る彼女に、ロウハは万感の思いを込めて、一言告げた。 「……ありがとな」 それはシュリの物語を読んで、強い思いを感じたから。 描かれた少女の強い思い……それが何を意味するのか、痛いほど感じて。 溢れる気持ちを、言葉で返す。 「上手く、言えねーけど……すげー嬉しいから、安心してくれ」 視線を合わせることは、できなかった。 それほどに、いまロウハの胸に溢れる思いは強い。 (ロウハはこっちを見てくれない、けど……) シュリは驚きで強張った体から力を抜いて、寄り添うように体をあずけ言葉を返した。 「嬉しい」 それはロウハの言葉で、報われた気がしたから。 言葉を交わし、2人の思いは伝わり重なる。 その思いこそが、2人にとって一番の贈り物。 言葉と思いを贈り合い、シュリとロウハの2人は、クリスマスを過ごしたのだった。
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*** 活躍者 *** |
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