~ プロローグ ~ |
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。
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~ 解説 ~ |
現代社会とは、起源などが異なっていますが、基本的なイメージは同様のイベント内容になっています。
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~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル『聖なる夜に祝福を!』の対象エピソードです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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★参加スポット:13 また竜に乗って飛べると聞いてナツキがルーノを誘う ★竜の渓谷 乗せてくれる竜に挨拶 乗る前に持ってきた防寒着を着ておく ★アークソサイティ上空 ルーノは絶景に静かに感動 ナツキの様子に苦笑しつつ、自分も密かに高揚している ナツキは子供のようにはしゃぐ 竜に話しかけたり、身を乗り出して夜景を眺める ナツキ:すごい景色だな!イルミネーションを上から見るなんて初めてだ! ルーノ:見慣れた場所でも、空から見るとまた新鮮だな。 こんなに美しい夜景が見られるとは… ナツキ:へへっ、来て良かっただろ? ルーノ:ああ。君と居ると本当に退屈しないな ナツキ:よーし、じゃあ来年も一緒にどっか行こうぜ! ルーノ:…君は来年も女性を誘う予定は無いのかい? ナツキ:だーっ!それは言うなって! 少しナツキをからかった後、ルーノが少し考え ルーノ:…そうだな、来年また予定が無ければ、それもいいかもしれない ナツキ:…!おう!(尻尾を振り |
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~ リザルトノベル ~ |
「ジョーカシ!」 山吹色の仔竜が再会の喜びの声を上げる。 『ルーノ・クロード』と『ナツキ・ヤクト』と早く会う為に仔竜と宵闇は転移方舟のある館の外で首を長くして待っていた。 「ジョーカシ、マタキタ!」 「おう! お前もでかくなっ――……っ!?」 尻尾をぶんぶん振り回しながら、無邪気な大型犬のように飛びかかってくる。 残念ながら仔竜といえども竜だ。さすがの浄化師もその巨体に突撃を食らえば一溜まりもないだろう。 二人が反射的に左右へ飛び退こうとする寸前、宵闇が前に出る。すると突進する仔竜をぎゅむっと前足で踏みつける。 「おい、宵闇!?」 「ウー! ヨイヤミ、ジャマ!」 前足で押さえつけられて動けないのか、じたばた足掻く子竜に振動が起きる。 「ええっと、こういうのって、きょういくしどーだって言ってた。僕だって何度かやられたから平気だよ」 「何度か?」 ルーノが反芻すると、宵闇はぎくりと体を震わせるとあからさまに目を逸らした。 「宵闇はやんちゃっぽいもんなー!」 ナツキの脳天気な声を聞きながら、ルーノは宵闇が竜の渓谷で問題児扱いされていることをなんとなく察した。 「ネージュの方が酷いもん。ざっくり刺してくるんだ」 「ヨイヤミ、ボコボコ」 「余計なこというな」 さらにぎゅっと踏みつける力が強くなり、仔竜は「ぐえっ」と呻き声を上げた。 「宵闇ストップ! ストップ! もうそろそろ放してやってもいいだろ?」 「むう、ナツキがそう言うなら……」 渋々と前足を離すと、巨体に見合わぬ素早い動きで仔竜は抜け出す。 「ナツキ、アリガト!」 「人はそんなに頑丈じゃないからね、急に突撃してはダメだよ」 「ワカッタ!」 そうルーノが言い含めると、元気良く頷いた。 ナツキがいそいそ鞄からクッキー缶を4つ程取り出すと、 「お前らにクリスマスプレゼントを持ってきたんだ!」 「そっちのクッキーは缶ごとに別々の味が入っている。それとローストビーフを持ってきたんだが――……!?」 「クッキー!」 「食べ物!?」 仔竜と宵闇が食い気味に身を乗り出し、その勢いにルーノは後ずさりする。 竜は二人からのお土産に喜び荒ぶる。特に仔竜はクッキーだと分かると喜びのあまり空中で一回転する。 目を輝かせて待つ竜達にクッキー缶を開けてやると、周囲に甘い香りが広がる。 「今度は俺が食べさせたい!」 そう言ったナツキがそれぞれの缶から一つずつクッキーを与えてやると、食べた瞬間、パッと竜達は顔が輝く。 「オイシイ、モット!」 「これ僕甘くて好き!」 ルーノはそれを微笑ましく見守っている。よく見ているとそれぞれ味に好みがあることが分かってきた。 「コレ、スキ!」 すごいのは仔竜が器用に前足でバターたっぷりのサックとしたクッキー缶を持ち、独り占めせんと荒ぶっている。 「これはダメ」 「誰も取ったりしねぇから」 ナツキが宥めるように声を掛けているのは宵闇だった。 ココアクッキーを特に気に入った宵闇がクッキー缶を奪われないように前足で囲い込み隠そうとしている。 「……やはり足らなかったか」 恐れていた事態が起こり、ルーノは頭を抱える。 クッキー缶争奪戦に呆気にとられて渡し損ねたローストビーフの詰め合わせは、まだルーノの手にある。 このローストビーフは肉自体が美味しい為、そのまま食べても絶品だ。作られてすぐ魔術符で冷凍保温しているので長期保存もできるので安心だ。 今渡すと争いが激化しかねないというルーノの判断により、後から仲良く食べるようにと言付けを残して様子を見守っていたデモンの青年に渡しておいた。 宵闇が爬虫類のような縦長の金色の瞳孔を細めてじっと仔竜の持っているクッキー缶を見ている。じゅるりと音が聞こえ、仔竜がびくりと体を震わす。 仔竜はサクサクバタークッキーのピンチを感じ取り、すぐさま缶を持って空へと舞い上がる。 「むぐむぎゅうっ! あ、ずるいぞっ!」 すごい勢いで逃げていく仔竜を二人は見送るしかできないでいた。 「むぐるるっ! 僕それ食べたりないー!」 宵闇がごくんと飲み干すと、口をぐわっと開けて叫ぶ。 「落ち着け! な、宵闇! また持ってきてやるから、な!」 「そうだ、君達の好む物も分かったことだし、また持ってこよう」 飛んで追いかけようとする宵闇を慌てて二人掛かりで宥める。このまま放っておいたら、竜同士の壮大な喧嘩に発展しそうだ。 お土産争奪戦で竜の渓谷の一部がクレーターになったら洒落にならない。 「……ほんと?」 じっと見つめてくる金色の瞳に二人は頷く。 「楽しみは次の再会に取っておこうぜ」 「それに美味しいものは皆で分け合ったらもっと美味しくなるんだ」 「ルーノの言うとおりだぜ!」 二人の言葉に宵闇はまだ納得がいっていなそうだったが、こくりと頷くのだった。 「むう……今度試してみる」 「それに今日はお前が空に乗せていってくれんだろ! お前がいねーと始まんねぇよ!」 「……そうだよ、僕が今日選ばれたんだ!」 ナツキの言葉にパッと表情が明るくなり、胸を張るような仕草を見せる。 宵闇は夜にまつわる穏やかさではなく、危うさを切り取ったような紫紺のドラゴンだ。 アメジストのような鱗は月明かりに当てられたように仄かに光り帯び、見る角度によっては色味が変わって見える。 可愛らしいとはいえない獰猛な姿をしているが、牙を見せて笑うと不思議な愛嬌がある。 宵闇は防寒着を着た二人を背に乗せ、夜の空へと飛び立った。 再び見た竜の渓谷は雪景色へと変わっていた。 改めて空の上から見ても、竜の渓谷は自然に満ちあふれた土地なのだと実感する。上空から見ると、あれだけ大きかったドラゴンも小さく見えた。 「楽しい?」 「ああ、めっちゃくっちゃ楽しいぜ」 宵闇の問いにナツキが返事を返すと、嬉しそうに空を泳ぐ。 「竜に乗るのって楽しいよな! 高く飛ぶと景色も良いしスピード出したり急降下したり!」 「任せて! ぎゅーんっとやっちゃうし、ぐるぐるだってやっちゃうよ!」 ナツキの言葉に宵闇が嬉しそうに応える。アクロバット飛行再来の予感を感じ、ルーノがストップをかける。 「君に乗るのは嫌いではないんだが、……ほどほどにしてくれ」 「……え、違う?」 宵闇の提案にナツキが腕を組んでうんうんと頷いていると、ルーノの頭を抱えているのを見て、ナツキは「あれ?」という表情を浮かべている。そんなナツキを放っておき、ルーノは優しく声を掛ける。 「それに宵闇も今夜の景色をゆっくり見るといい」 「僕もアークソサエティを飛ぶのは初めてだから、楽しみ」 肌を刺すような冷たい風に吹かれながらも、えもいわれぬ開放感を感じていた。 空を飛ぶ。ただそれだけのことなのに、どこか夢のようだった。 「すごい景色だな!イルミネーションを上から見るなんて初めてだ!」 「見慣れた場所でも、空から見るとまた新鮮だな。こんなに美しい夜景が見られるとは……」 ナツキが子供のようにはしゃいでいる横で、ルーノは静かに感動していた。 (この絶景が見られるなら寒さも問題ではない。来て良かったと思う……ナツキと居ると退屈しないな、むしろ楽しいと感じる事すら増えた) ナツキの様子に苦笑いしていたが自分も人のことを言えない。ルーノ自身も特別な一日に密かに高揚していた。 高くから見渡す街々は小さな光の群れが集まり、夜の海を泳いでいるが如き魚鱗に見えた。 どこまでも夜は巨大だった。夜空は澄み渡り雲一つなく星々が今夜の主役だ。 銀砂のような星が凍てつくように輝いている。 竜と一緒に空中遊泳するにはぴったりの夜だった。 「光の群れがあるよ!?」 「あれはイルミネーションだよ。クリスマスになると灯りを飾るんだ」 「いるみねーしょん? あのキラキラは、いるみねーしょん?」 ルーノが優しく教えてやると、宵闇は何度も繰り返す。 「おう、綺麗だよなあ。宵闇お前のおかげで最高の夜景が見れてんだぜ」 「僕の?」 「そうだ、じゃなけりゃ俺らはこの光景を見れなかったからな」 不思議そうな声にナツキがその背を撫で、誉める。 「なら、ナツキとルーノのおかげで、いるみねーしょんを見れたね!」 嬉しそうな声でそう子供のように喜ぶ宵闇の無邪気さに、二人は顔を見合わせて笑う。 「見やすいようにゆっくりと飛んでくれてるんだろう、ありがとう」 「宵闇、お前も成長してるな!」 「むふうっ! そう、僕はまだ成長期なんだ!」 宵闇はふすんと自慢げに息を吐き出す 「ナツキが言いたいのはそっちではないんだが、まだ大きくなるのかい?」 ルーノが驚きの表情を浮かべると、 「大きい方がかっこいいんだ! 皆より大きな竜になるんだよ」 宵闇は子供のように憧れを語る。 「それに帰ったら、今日のこと自慢するんだ! もっとちゃんと見なくちゃ!」 調子に乗った宵闇がイルミネーションをよく見ようと時計塔のすぐ横を通り抜ける。 「おっ! 塔の住人と目があったぜ」 「よく見たい気持ちは分かるんだが、……ちょっと高度を上げようか。万が一ぶつかったら危ないからね」 白い彫刻の天使像がラッパを持っている――時計塔の装飾である天使像がはっきりと見えるスレスレを飛行され、ルーノは内心ひやりとした。 住人の驚きの表情がルーノの目にもはっきり見え、歓声が聞こえる。ここで悲鳴が聞こえなくてよかったと現実逃避気味にルーノは思う。 これはばれたら始末書にならないだろうか。 竜が飛ぶことは事前に教団から通達されているので問題ないが、塔の真横を通り抜けたとなれば話は別だろう。 そんなことを心配するルーノにナツキが笑顔で声を掛ける。 「普段暮らしてる場所を空から見るのって面白いよな。へへっ、来て良かっただろ?」 「ああ。君と居ると本当に退屈しないな」 少年のように無邪気に笑うナツキにルーノも口元に微笑が浮かぶ。それを見て、ルーノを誘ってよかったなと思ったナツキは元気よく声を上げた。 「よーし、じゃあ来年も一緒にどっか行こうぜ!」 「……君は来年も女性を誘う予定は無いのかい?」 「だーっ! それは言うなって!」 頭を掻くナツキは苦手分野を出され、しょんぼりと尻尾が下がる。 (女性を誘うかぁ…そういうのあんまり得意じゃなんだよな。それに俺もルーノと居ると退屈しないっていうか、なんか楽しくてさ。しばらく今のままでいいかな、なんて思っちまうんだよな) そんなナツキの様子を横目で見ながらからかいすぎたかと思ったルーノは、 「……そうだな、来年また予定が無ければ、それもいいかもしれない」 「……! おう!」 ナツキはぴんと耳を立てると、嬉しそうに冬毛となった尻尾を振り始める。 (……来年の話が出た時、少しだけ楽しみだと思ってしまったのは、我ながらどうかと思うが……) それも悪くない。そう思っている自分自身に内心苦笑いしてしまう。 そんな二人に宵闇も便乗するように、 「来年も僕と遊んでね!」 「おう、また遊ぼうな!」 「ああ、また私達を乗せて飛んでくれると嬉しい」 ナツキが明るく応じ、ルーノが優しく頷いてくれ、上機嫌の宵闇は歌うような高い鳴き声を上げた。 それに気づいた人々が指差し、歓声を上げる。驚きと喜びが街に広まっていく。奇しくも自分達が聖夜のサプライズになったことに苦笑いしつつも、二人は最高の夜を過ごすのだった。
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*** 活躍者 *** |