~ プロローグ ~ |
「……なにを企んでいるのかと思っていたけど」 |
~ 解説 ~ |
目が覚めると、皆様の枕元に一通の手紙が置かれていました。 |

~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして、あるいはお久しぶりです。あいきとうかと申します。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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また枕元に手紙 以前の招待状もも妖精種からだったのですね 今まで人間と極力関わらずにいたようだがどういう心変わりなのだろうな 等話していると式場へ 以前見た事のある二人を見つけ会釈し以前のお礼を ふと「妖精の結婚式というのは人のそれと同じ意味合いなのか?(それとも違うのか)」と聞き ヨナが「そんなあけすけに」と窘める 贈り物はは二人で一つ #74の時のものと似た新品のランプを祝いの言葉と共に ヨ シャドウ・ガルデンのランプは様々な趣向を凝らしていて私達の間ではとても人気です これを手間暇をかけて作る人々の想いと技術に触れて欲しいと思いまして ベ 二人のこれからの道筋を優しく照らしてくれるように、と選ばせて貰った |
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妖精さんの結婚式 こんな素敵な場に呼んで頂けるなんて、とても嬉しいです プレゼント、一生懸命作ってみました、けど… 気に入って頂けるといいのですけど… ●プレゼント 自分で育てたラベンダーで作ったサシェ 袋は真っ白な布に白糸でラベンダーの花を刺繍した巾着の口を薄紫のリボンで絞ったもの おめでとうございます ラベンダーは花言葉は不穏なものもありますが、香りの効果は高いので 穏やかに結婚生活が贈れますように、心を込めました、ので… ●誓い その、もっと笑えるようにしようと思います 笑顔は幸せをくれるって教えて貰ったから…(クリスをちらっと 花嫁さん、お綺麗でしたね 私もいつかあんな風に笑いたいです えっ 隣、私でいいのです、か? |
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ティファニーブルーのワンピドレス 髪は編み上げてドレスと同色のリボン 花であふれた式場 沢山の妖精たちに目を輝かせ 振り返った先に 思いつめたような彼の顔 …シリウス? ええ そう、ね 一緒にいきましょう? 少しひんやりとした彼の手を取る オベロンさん、ティターニアさん ご結婚おめでとうございます 笑顔で挨拶 お祝いにはオルゴール型の宝石箱 蓋の部分に春の花のレリーフ シリウスを見てくすくすと 贈り物…ってお店で固まっちゃうんですもの でも シリウスが自分で決めたんですよ 誓い…ええ、と 下を向かないこと、です 苦しくても悲しくても 前を向こうって 彼と一緒にと 心の中で呟く オベロンの宣言に目を丸く シリウスや仲間と視線を交わした後満面の笑顔に |
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目的 婚礼をお祝いする。 妖精さんの婚礼ってどんな風なのかとか好奇心も。 行動 まずは招待のお礼と自己紹介? それからお祝いを言って、プレゼントを渡します。 プレゼントは、相談(新婦さんが喜びそうな物なら新郎さんも嬉しいかも?)して宝石箱に。 この先もたくさんの素敵なものがあなたの元に集まりますように。 その後は、適度に食事を頂きつつ婚礼の様子を観察。 どんな妖精さんがいるのかとか…。 近くの妖精さんにこっそり式次第を聞いてみたりとか。しっかりお祝いできたらいいと思うので。 自分たちが招待された理由とかも気にはなるけど。 |
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主賓のオベロンとティターニアにプレゼントを渡す プレゼントはシャドウ・ガルテン産のワイン 妖精に対して二人とも友好的 ルーノは丁寧に、ナツキはフランクに接する ■誓い 誓うのは二人共同じ『強くなる事』 理由をルーノは語らず、ナツキは隠さず話す ルーノは得る事ができた大切なものを理不尽に奪われない為に ナツキはベリアルや使徒を倒す為、これ以上失わないよう守る為に ■同盟 妖精達が人間と同盟を望むと聞いてナツキは仲間が増えると率直に喜ぶ ルーノ:…なぜ、人間との同盟を望むのですか? ルーノは驚き妖精達に何かあったのではと懸念する しかし、人を信じて人と共に歩む道を選んでくれたという事なら ルーノも理解を示し、ナツキは更に喜ぶ |
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~ リザルトノベル ~ |
● 手にした招待状を眺めていた『ヨナ・ミューエ』は、まだ芽すら出ていないヒマワリ畑に視線を移した。 「以前の招待状も、妖精種からだったのですね」 彼女の隣で、『ベルトルド・レーヴェ』が腕を組む。 「今まで人間と極力、関わらずにいたようだが、どういう心変わりなのだろうな」 招待を受けた浄化師たちが集まると、不意にあり得ない量の花吹雪が全員をとり巻いた。 「……着いたな」 「あの方」 「ファラステロの車掌か。氷精もいるな」 「挨拶しましょう」 二人は談笑している背の高い青年と小柄な少年に近づき、会釈をする。 「こんにちは」 「おや、きみたちは」 「久しぶり。その節はどうも」 今日は礼服の車掌と、着膨れしていない少年がそれぞれ笑みを向けた。 「こちらこそ、お世話になりました」 「チョコレートはどうだった?」 「美味しかったよ、ありがとう」 そうか、と少し得意な顔になったベルトルドは、ふと気になって妖精たちに尋ねる。 「妖精の結婚式というのは、人のそれと同じ意味合いなのか?」 「そんなあけすけに」 反射的にヨナがたしなめると、背の高い妖精が穏やかに笑う。 「永遠の愛を誓う、という意味では同じかなぁ」 「本来、妖精にはない習慣だよ」 頃合いを見て彼らと別れ、ヨナとベルトルドは壇上に到着する。 「本日はお招きいただき、ありがとうございます」 ヨナの挨拶で、彼女とベルトルドが一礼した。 「招待に応じてくれたこと、感謝する。人の子らよ」 正装のオベロンが頬を緩め、隣のティターニアが恥じらうように小さく頷いた。 「こちら、ささやかながら贈り物です」 「おお、開けてもいいか?」 「はい」 ヨナが渡した箱の包装を、オベロンは丁寧に解く。 現れたのは、ランタンの形をした新品のモザイクランプだった。 ほう、とオベロンが感嘆の息をつく。ティターニアも見惚れていた。 「シャドウ・ガルテンのランプは様々な趣向を凝らしていて、私たちの間ではとても人気です。これを手間暇かけて作る人々の思いと技術に、触れてほしいと思いまして」 「二人のこれからの道筋を優しく照らしてくれるように、と選ばせてもらった」 「これが噂の……!」 目を輝かせていたオベロンは、はっとして咳払いをする。 「さ、さて人の子らよ。婚礼とは誓いの場である」 「そうですね」 はしゃいだことを誤魔化そうとしている、という点について、二人はあえて触れなかった。 「では、汝らの誓いを聞かせよ。なに、それが絶対となることはない」 「……誓い、ですか?」 急に聞かれると悩んでしまい、ヨナは小さく唸る。 「こ、これからも二人で頑張ります」 「随分と曖昧な」 「大儀的と言ってください」 図星という点は隠して、ヨナは堂々と返す。ベルトルドが目を細めた。 「なるほど」 「なんですか、もう。大は小を兼ねるんです。私は言ったんですから、ベルトルドさんも早く」 「そう急かすな」 とっさのこととはいえ、彼女自身だけでなくパートナーである自分も数に入れた、二人で、という言葉が少し嬉しくて、ベルトルドはもったいぶった。 「……では俺も、これからもヨナや神に抗う者すべてと力をあわせ、世界のために尽力すると誓おう」 浄化師となった日から、目的は変わらない。 しかし、言葉に出すという行動には、特別な力が宿っているように思えて。 ベルトルドの宣誓で改めて気が引き締まり、二人は示しあわせたわけでもなく視線を交えさせて、頷いた。 「うむ。実に尊く、勇敢な誓いである。ともに……ああ、ともに戦おう」 真剣な表情になったオベロンは、箱を持つ手に力をこめ、すぐに破顔する。 「婚礼はまだ続く。美味い料理も揃えてあるからな、最後まで楽しんでくれ」 柔らかな声に、二人は頷いて壇上を辞した。 「ご結婚、おめでとうございます」 「おめでとうございます」 緊張している『アリシア・ムーンライト』と、余裕が窺える『クリストフ・フォンシラー』の言葉に、オベロンは穏やかに笑んだ。 「ありがとう、人の子らよ」 はにかんだティターニアも頷く。 「こちら……、私からの贈り物、です」 「これは俺からです」 「なにやらいい匂いがするな。開けてもいいか?」 受けとった包みに鼻先を近づけたオベロンが問う。二人はほとんど同時に頷いた。 「おお、サシェとキャンドルか!」 「はい……」 アリシアが贈ったサシェは、真っ白な布に白糸でラベンダーの花が刺繍されていた。巾着の口は薄紫のリボンで可愛らしく絞られている。 クリストフが贈ったのは、ラベンダーとカモミール、レモンバームを蝋で固めた、華やかな見た目のハーブキャンドルだ。 「花とハーブのよさを実によく引き出しているな。なによりもこのラベンダー。愛情をこめて育てられたことが分かる。どこかで仕入れたものか?」 「いえ……、私が、育てました……」 「ハーブキャンドルに使ったラベンダーも、アリシアから分けてもらったものです」 「そうだったか! 汝、花を育てる才があるな」 興奮気味の春精に誉められ、アリシアは照れて俯く。クリストフは誇らしい思いで、大喜びする妖精を見た。 「気に入っていただけたなら嬉しいです」 「あの、ラベンダーは、不穏な花言葉はありますが、香りの効果は高いので……。穏やかに結婚生活が送れますようにと、願いをこめました、ので……」 「うむ! 大いに気に入ったぞ!」 縦に振ったオベロンは、重大なことに思い至ったように真顔になる。 「サシェは我の枕元に飾るとして、このキャンドル。燃やすのがもったいないな」 手を伸ばしたティターニアにサシェを渡し、春精は眉尻を下げた。 「香りもですが、見た目でも精神的な癒しを与えてくれるといいなと思い、贈らせていただいたので、燃やすよりも飾っておいてもらった方がいいかもしれません」 「そうか? うむ、ではこれも飾ろう!」 クリストフの提案にオベロンは明るい顔になる。満足しかけた彼の服を、ティターニアが引いた。 「おお、そうだった。先の浄化師にも問うたからな、汝らにも問おう」 「なんでしょう?」 思わずアリシアは身構え、クリストフは微かに首を傾ける。オベロンは悪戯っぽく口の端を上げた。 「婚礼とは誓いの場である。ゆえに汝らも誓うといい。なに、それが絶対となることはない」 「……誓い……」 ゆっくりと瞬いたアリシアは、ちらりとクリストフを見た。 「その、もっと笑えるようにしようと、思います。笑顔は幸せをくれるって、教えてもらったから……」 花嫁がオベロンの横顔に一瞬だけ視線を投げて、アリシアに向き直り、降参するような笑みを浮かべながら頷く。 「俺は、アリシアをあまりからかわないようにしようかな」 くすっ、とクリストフは笑う。オベロンが破顔し、ティターニアも楽しそうな微笑を浮かべる。 「うむ、実に眩く愛い誓いであった。これからもともに善き道を歩むといい。婚礼はまだ続く。美味い料理もあるからな、最後まで楽しんでくれ」 「はい。ありがとうございます」 一礼し、二人は壇上を辞す。 ほぅとアリシアが一息ついた。 「花嫁さん、お綺麗でしたね……。私もいつか、あんなふうに笑いたいです」 「あんなふうに笑うアリシアかぁ」 純白の婚礼衣装に身を包み、幸せそうに笑う彼女を想像して、クリストフは目を細める。 「そのとき、隣に俺がいると嬉しいんだけどな」 「えっ……。隣、私でいいのです、か?」 「うん。からかってないよ? さっき誓ったばかりだしね」 きょとんとしたアリシアに言葉を足して、クリストフは笑みを深めた。 ワンピースドレスの裾と、編み上げた髪の先に春を思わせる風が戯れる。 目を開くと、そこは花咲き乱れる式場だった。 「綺麗……!」 人と同じ姿をしている妖精たちが、あちらこちらにいる。『リチェルカーレ・リモージュ』は幻想的な光景に目を輝かせ、振り返った。 「……シリウス?」 思いつめた顔をしている『シリウス・セイアッド』に、リチェルカーレの表情が曇る。 転移の最中、シリウスは梅香迷宮での出来事を思い出していた。 あのときも今回のように移動したのだ。だが今回はリチェルカーレが側にいる。 「なんでもない」 そのことに安堵して、シリウスは息をついた。冷え切った指先を握りこみ、覗きこんでくる少女に首を左右に振って見せる。 それでもなお不安そうな彼女に、シリウスは壇上を目で示した。 「……婚礼の祝い、渡すんだろう?」 「ええ。そう、ね」 料理と花の匂いがする空気を細く吸って、リチェルカーレはシリウスの、少しひんやりとした手をとる。 「一緒に行きましょう?」 瞬いたシリウスは、微笑む少女の小さく温かな指に視線を揺らした。 壇上に至り、リチェルカーレは白い婚礼衣装の妖精に笑顔で挨拶をする。 「オベロンさん、ティターニアさん、ご結婚おめでとうございます」 「……おめでとうございます」 声を弾ませる少女に続けて、シリウスは軽く一礼した。 「うむ。ありがとう、人の子らよ。招きに応じてくれたこと、感謝する」 オベロンが目元を和め、ティターニアは恥ずかし気に浅く頷く。リチェルカーレが一歩、進み出た。 「こちら、お祝いの品です。よかったら受けとってください」 「おお! ありがとう、開けてもいいか?」 「もちろんです」 少女に続いてシリウスも贈り物を渡す。オベロンは丁寧に、二つの包装を解き、表情をいっそう明るくした。 「宝石箱とブローチか!」 「はい。宝石箱はオルゴールになっているんです」 「なんと」 宝石箱の蓋を彩る春花のレリーフを撫でていたオベロンは、早速オルゴールを鳴らす。可憐な音色が式場に流れた。 「美しい音色だ」 聞き惚れていたティターニアの視線が、青い花のブローチに移り、さらに贈り主であるシリウスを見る。 説明を求められているとさとり、シリウスはやや困った顔になった。 「……花嫁には青いものを贈るといいと、リチェが」 「贈り物……、って、お店で固まっちゃうんですもの。でも、シリウスが自分で決めたんですよ」 シリウスを見てそのときの光景を思い出し、リチェルカーレがくすくすと楽しそうに笑う。シリウスはわずかに頬を染め、目をそらした。新郎新婦は微笑ましそうに二人を見る。 「人の子らの習わしか。いいぞ、我はそういったものが好きだ。ティターニア」 幸福そうな表情を浮かべたオベロンは、ティターニアにブローチをつけた。 「よくお似合いです」 リチェルカーレが笑んで、シリウスも首肯する。花嫁は照れて俯いた。 「さて、婚礼とは誓いの場である」 「はい」 和やかな空気が少し張りつめた気がして、二人は背筋を正す。 「ゆえに汝らも誓うといい。なに、それが絶対になることはない」 「誓い……。ええ、と」 少女は考えてから、しっかりと前を向いた。 「下を向かないこと、です。苦しくても悲しくても、前を向こうって」 (彼と一緒に) 最後の決意は、心の中で。 誓い、と口の中で繰り返したシリウスは、リチェルカーレをちらりと見て、オベロンを見据え、確たる口調で言い切った。 「……守ること。今度こそ、何があっても、失わずにすむように」 「うむ。ともに眩く、気高き誓いである。婚礼はまだ続く。もうしばらく楽しんで行くといい」 「ありがとうございます」 目礼したシリウスと、花のように笑んだリチェルカーレが壇上を辞する。 壇上に立った『シルシィ・アスティリア』は背筋を伸ばし、背もたれの高い椅子に座る新郎と新婦に一礼した。 「この度は、お招きいただきありがとうございます。ご結婚、おめでとうございます」 「おめでとうございます」 彼女の隣に立つ『マリオス・ロゼッティ』も倣った。 オベロンはにこにこと笑んで、ティターニアは照れたように目を伏せ、浅く頷く。 「招きに応じてくれてありがとう、人の子らよ。今日は存分に楽しんで行ってくれ」 「はい。……こちら、わたしたちからの贈り物です」 一歩進み出たシルシィがリボンのかかった箱をオベロンに手渡す。マリオスは心配そうに彼女を見ていた。 「おお、ありがとう。開いてもいいか?」 こくりとシルシィが頷く。丁寧にリボンを解き、箱を開けたオベロンが瞠目する。 「美しいな」 「宝石箱です。マリオス……、彼と相談して、決めました」 「この先も、多くの素敵なものが貴方の元に集まるようにと、願いをこめて、贈らせていただきます」 「ありがとう。これはティターニアが持っておくか?」 目を輝かせていたティターニアが何度も首を縦に振り、オベロンから宝石箱を受けとる。 矯めつ眇めつ、両手で大切に持った宝石箱を眺める新婦に、新郎は幸福そうに頬を緩めた。 「汝、名は?」 「シルシィです」 「うむ。シルシィとマリオス。素晴らしい贈り物、心より感謝する。さて、婚礼とは誓いの場であることは知っているな?」 「……そうですね」 めでたい場だとは思っていたが、婚礼が永遠の愛を誓う儀式である以上、そういう見方もできるだろう、とマリオスは肯定する。シルシィも頷いた。 「では、汝らの誓いを我に聞かせよ。なに、口にした言葉が絶対となることはない。気楽になにか誓うといい」 つまり余興だ。 突然のことに悩むシルシィを横目に、マリオスが問いを投げた。 「質問してもいいですか?」 「うむ」 「もしかして、この前の、鳥かごの迷宮を作ったのは……?」 「我だ。正しくはあの中に我とティターニアがいた。恐ろしい思いをさせたか?」 「驚きました……、けど、大丈夫、です」 うろたえたオベロンにシルシィがフォローを入れる。 「シィの言う通りです。ですが、もう見られていたなら……」 一度深呼吸をして、マリオスは意を決する。 「僕はこれからシルシィに、必要以上に口や手を出さないようにします」 「マリオス……」 ぱちぱちとシルシィは瞬く。彼の言葉は喜びとなって、じわりと少女の胸にしみた。 「わたしの言うこと聞いてくれて、ありがとう」 シルシィはマリオスの手をぎゅっと握り、二体の妖精に向き直った。 「ん、わたしもマリオスが心配しなくていいように、もっと頑張ります」 唇を引き結んだマリオスは、複雑な表情を浮かべる。 「実に眩く、愛い誓いだな。浄化師とは二人でひとつと聞く。これからも共に、善き道を歩むといい」 「はい」 優しい眼差しのオベロンとティターニアに見送られ、シルシィとマリオスは壇上を辞した。 様々な国の料理が並べられたテーブルが、あちらこちらに置かれている。天は青く、地には花が咲き乱れていた。 「綺麗なケーキ……」 「あ、シィ、僕が……」 皿をとったシルシィは、テーブルのひとつに置かれたケーキをとろうとする。マリオスは反射的に手を貸そうとして、とまった。 「……届かなかったら、とるから」 「ん」 小さく笑んで、シルシィは花の飴細工が飾られたケーキをとる。 その様子を見守っていたマリオスは、ふと疑問を抱いた。 「シィ、どうして僕たちが招かれたんだろう?」 「……そう、ね」 妖精の婚礼に自分たちが招かれた理由。 今になって接触してきた魔法生物が、ただ祝ってほしかったという理由で人を招いたとは、思えなかった。 花咲き乱れる式場を見回して、『ルーノ・クロード』は思案する。 人にしか見えない妖精たちに混じり、他の浄化師たちも談笑したり食事をしたりしていた。一見すれば、平和で幸福に満ちた光景だ。 だが、ルーノは妖精たちがほんのわずかに緊張していることを、鋭敏に感じとっていた。 (なにか、裏があるのでは……) 「なぁルーノ! これ、美味いぞ!」 警戒心の欠片もない『ナツキ・ヤクト』の声で、ルーノは思考の淵から現実に意識を戻す。 片手に皿を、逆の手にフォークを持ったナツキが目を輝かせていた。 「肉料理のようだけど、見たことがないな」 「だろ? ノルウェンディの郷土料理なんだぜ」 「詳しいね」 「そこの妖精に聞いたからな」 早くも馴染んでいるナツキが楽しそうに笑う。 気が抜けてしまったルーノはこちらを見て微笑んでいる妖精に会釈をし、小さく息をついた。 場に奇妙な空気があるとしても、妖精の婚礼という珍しくてめでたい席に招かれたということに変わりはない。ひとまず様子見としてもいいだろう。 「ルーノ、次、俺たちが行くか?」 「そうだね」 浄化師たちは順繰りに、壇上に座るオベロンとティターニアに贈り物を持って行っていた。 ずっと見ていたわけではないのですでに何組が向かったのか不明だが、今は壇上が空いている。 皿とフォークを置き、口許をナプキンで拭ったナツキが、脇に置いてあった、薄紙とリボンで包装されたくびれのある細長い贈り物を持つ。 壇上に上がった二人を、オベロンは心底から嬉しそうに、ティターニアはやや恥じらった様子で迎えた。 「ご結婚おめでとうございます」 「おめでとうございます!」 ルーノは優雅に、ナツキは元気よく一礼する。 「ありがとう、人の子らよ。かしこまらず楽にするといい」 オベロンは相好をますます崩し、ティターニアは無言で目を細めた。 「こちら、私たちからの贈り物です。ささやかな品ではありますが」 「シャドウ・ガルテンのワインだぜ!」 「おお! ワインか、いいなぁ!」 受けとったワインボトルを抱き締めて、オベロンがはしゃぐ。 「前にシャドウ・ガルテンで飲んだワインが美味かったから、ルーノに選んでもらったんだ」 友人に接するように気楽に話すナツキに紹介され、ルーノは曖昧に笑む。 誇らしげな彼と苦笑気味の彼を見て、オベロンは孫を見るような、優しい目になって頷いた。 「大切に飲ませてもらおう。心より感謝するぞ、ルーノ……、と」 「ナツキだ」 「ナツキ。さて、婚礼とは誓いの場であることは知っているな?」 邪気なくオベロンが笑う。ナツキとルーノは顔を見あわせてから、頷いた。 「汝らの誓いを聞かせよ。なに、それが絶対の誓約となることはない」 「誓い……」 思案はほんの一瞬だ。 「強くなること」 示しあわせたわけでもないのに、ナツキとルーノの声が揃った。オベロンが瞬き、二人は視線をかわして口の端を上げる。 「ベリアルや使徒を倒すために、俺は強くなりたい。これ以上、なにも失わないように。守るために、強さが欲しい」 「……そうか」 なにを思い出したのか、オベロンとティターニアが刹那だけ痛みを堪えるような顔をした。 (私は、得ることができた大切なものを、理不尽に奪われないために) ルーノは胸の内で理由を語る。 「尊く、輝かしき誓いだ。敵は強大であるが、汝らは決して敗北しない。我はそう願い、信じよう」 「おう、任せとけ!」 胸を張るナツキに、ルーノは少し困った笑顔になった。 壇上と地上を繋ぐ階段を下りつつ、ナツキがぽつりと言う。 「一緒にもっと強くなろうな、ルーノ」 「ああ」 前を見たまま、ナツキが力強く笑んだ。彼の横顔をちらりと見て、ルーノは頷く。 同時に段を下りた二人は、肩を並べて歩き出した。 ● 「あの……。式次第、教えてもらってもいいですか?」 近くにいた背の高い妖精に、シルシィはこっそりと尋ねる。この後の予定を知りたかったのだ。 穏やかそうな妖精はシルシィとマリオスを順に見て、笑みを深くした。 「この後の予定は、ひとつだけだよ。――ああ、始まるね」 「始まる、って」 なにが、とマリオスが問うより早く、会場に声が響く。 「人の子らよ。今日は我とティターニアの婚礼に駆けつけてくれたこと、心より感謝する。贈り物の数々も素晴らしかった。ありがとう」 立ち上がったティターニアと壇上に戻ったオベロンが、深く一礼した。 その恰好はいつの間にか婚礼衣装から、戦闘装束にも似た礼服に変わっている。 「我ら妖精種は、今日この日まで、神の味方でも、人の味方でもなかった。だが、もはやそれは過去のこと」 自身を注視している浄化師たちを見て、オベロンは緊張が乗った声で言う。 「我ら妖精種は人とともに神に抗う、同盟の締結を提案する!」 「わたしたちと、妖精種の同盟……」 呆然とシルシィが呟く。浄化師たちの間に、驚きが広がっていた。 自分たちが招かれた理由を知り、マリオスは目を見開く。 リチェルカーレはシリウスと、近くにいる浄化師たちと顔を見あわせ、満面の笑みになる。 断る理由はない、とベルトルドとヨナが首を縦に振り、アリシアもほんのわずかに口の端を上げた。 「妖精が仲間か、心強いな!」 「そうだね、でも」 嬉しそうなナツキをちらりと見てから、ルーノは壇上の妖精たちに視線を投じる。 「なぜ、人間との同盟を望むのですか?」 疑義ではなく、妖精たちの身になにかあったのではないかと、彼は懸念したのだ。 「この場にいない妖精も、賛同していますか?」 クリストフも問いを発する。 「我らは古くより、人の子らの側に在った。ラグナロク以後、中立の立場となってからも、密かに汝らの様子を見てきた」 ゆえに、とオベロンは痛みと愛しさが等分になった表情を浮かべる。 「汝らが苦難の道をたどってきたことを知っている。もっと早くに現れろ、と思いもするだろう。遅くなってすまない。その上で、汝らとともに歩ませてほしいと願うのだ」 春精は体側でこぶしを握った。 「他多くの妖精たちは未だ、中立を保たんとしている。そちらは我に任せろ、必ず説得してみせる」 「わたしたちを信じて、一緒に進んでくれるのですね」 リチェルカーレの柔らかな声に、オベロンは強張った動きで首肯する。 ルーノが淡く笑んだ。 「よろしくお願いします」 妖精たちから緊張が抜けた。ナツキが歓声を上げる。 「簡単じゃないかもしれないけど、だからって諦めたら始まらねぇからな! なにか力になれることあったら、手貸すぜ!」 また安請け合いを、と思いながらルーノがナツキを見た。 「なにか、困ったことがあったら、解決を手伝わせてください」 マリオスの言葉に、シルシィが頷く。 「だが……」 「ともに歩むということは、そういうことでしょう。ご遠慮なく」 遠慮しかけるオベロンにクリストフが肩を竦め、アリシアが顎を引く。 「雑用から戦闘まで、全力でこなすのが浄化師だ」 冗談めかして言ったベルトルドに、ヨナが同意する。 「これからも、どうぞよろしくお願いします」 一礼したリチェルカーレに倣うように、シリウスが目礼した。 「オベロン、泣くには早いよ」 「泣いておらんわ! 待っていろ、汝らの王に宛てた手紙を持ってくる!」 「なんで最初から持ってないの」 穏やかそうな妖精に茶化されたオベロンが控室に走り、ティターニアが後を追う。小柄な妖精はその背に呆れた声を投げた。 壇上に集まっていた妖精たちが我先にと、浄化師たちをとり囲む。 花咲き乱れる婚礼会場に、温かな喧騒が満ちた。
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*** 活躍者 *** |
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[6] アリシア・ムーンライト 2019/05/04-22:09
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[5] リチェルカーレ・リモージュ 2019/05/04-20:32
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[4] ナツキ・ヤクト 2019/05/04-19:39
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[3] ベルトルド・レーヴェ 2019/05/03-09:50
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[2] シルシィ・アスティリア 2019/05/01-23:30
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