~ プロローグ ~ |
太陽が沈みかけている夕暮れ時――一組の浄化師が街に戻るべく山の中を歩いていた。 |
~ 解説 ~ |
●状況 |
~ ゲームマスターより ~ |
どうも、お世話になっております、虚像一心です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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霧を抜けたと思ったら、僕1人だった 「逸れたのかな…」 声が聞こえないかと耳を傾ける …僕を呼ぶ叫び声が、聞こえた 物静かなカグちゃんが叫ぶ様な事だ きっと大変な事だ 走って、探す、探す 僕の大切な人を 「カグちゃん…」 見つけたカグちゃんは自分を抱く様に座り込んで泣いてる 「僕は、君を1人になんてしないよ」 跪いて抱き締める 霧で冷えた体に温もりが伝わる様に 適性診断の時、君のお父さん不満そうだったね 僕が地位も何もない農民の子だったから だから僕、今も所作も洒落にも気を使ってるよ 葡萄収穫手伝いは楽しかったね 僕も久しぶりに家に帰ったみたいだった 収穫時期に連絡くれる様頼んでみようか 大丈夫、僕は君を1人残してなんかいかないよ |
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※アドリブ歓迎します ※発狂するほう ララエルーッ!! (ララエルを抱き)嘘だろ…? 目を開けてくれよ…眠ってるだけだよな…? ララ…起きてくれよララエル!! 君が僕の為にお洒落をしてくれた事が嬉しかった… 本当は似合っていたけど、他の男に見せたくなかったから(71話) 君がアクアマリンのブレスレットをつけてくれた事が嬉しかった… 君の瞳と同じ色だったから(71話) 君が…クリスマスの日…僕に身を委ねて…くれた事がっ…(涙を流す) うああああっ、嫌だあああっ!! まだ君に何も教えてない!君のお腹に宿してない! (ララエルに抱きしめられ) ララエル…暖かい…ララエルだ…良かった…(涙を流す) |
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・祓魔人が幻を見る 倒れる幻に触れる 徐々になくなっていく体温に恐怖 さっきまで他愛もない話を交わしていたのが、嘘のよう 待って、こんな……っ 悲しみは押し寄せてくるばかり。 どくどくと、心臓がうるさい ・喰人到着 本物、幻…? おかしなこと言わないで だって確かに目の前で喰人は倒れた …言えなかった、パートナーのあの人に 香水作り、私…手が震えて…うまくできないとき手伝ってくれたり、 見学会も、人前に立つのは苦手で緊張してるとき励ましてくれたり、 復活祭も…どう振舞っていいか分からなくて…でもあの人のおかげで自然に警備できて… …それが、すごく嬉しかったし、良い…思い出、で… 隣にいると落ち着く感覚。 あなた…ティーノなの? |
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くぐもった声に振り返れば既に地に伏すヨナ 身体を起こすもそれはただただ重く 糸の切れた人形の如く 虚ろな目は喰人を映さない べちゃりとした生暖かい血が服を赤く赤く染めあげて 息を飲み どうした 何が起こった ヨナ おいヨナ…? この状況と否応なく重なる スラム生活での終止符を打った日の事 逃げたその先で起こった悲劇 #51 あんな事はもううんざりだ そんな思いを内に秘め 拳を握ってきた筈なのに いつか言ったじゃないか…残すつもりも残されるつもりも無いと(#75&思い出もこの台詞 頼む…返事をしてくれ… 願うように 祈るように 囁くように それは叶わず 堪らず吼える 声を聞きつけてヨナが向かった先に項垂れている喰人 どうしたか聞いても 続 |
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キョウ:皆さん山降りるの慣れてますね。 サクラ:キョウヤが慎重すぎるのよ。エスコートしようか?手握る? キョウ:結構です! あらら。恥ずかしがってる。やっぱり子どもね。 そんなに先に行くと迷うわよ……あら。皆さんキョウヤを見てません? 【行動】 サクラ どこにいったの。血の匂いはしない。まだ怪我をしていないだけ? 早くキョウヤの声がする方へ 【説明】 大丈夫大丈夫。私はここにいるわ。 小さい時みたいにギュッとしてあげる。 ほら手を握って立って。帰りましょう。 前だって今だって見つけれた。とても嬉しいわ。 もう耳飾りは不必要かしら。残念ね。とても楽しかったのに。 キョウヤ。あなたの名前を呼ぶ女(ヒト)他にいたかしら? |
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~ リザルトノベル ~ |
突如霧に襲われた『ヴォルフラム・マカミ』と『カグヤ・ミツルギ』の二人。 逸れないように互いに声を掛け合って、ようやく霧を抜けた……と思いきや。 「カグちゃん……?」 霧を抜けたのはヴォルフラム一人、カグヤはまだ出てきていなかった。 「逸れたのかな……」 そう思ったヴォルフラムは耳を傾ける――逸れたのなら不安で自分の名前を呼んでいるはずだと。 集中し、澄ませた耳が捉えたのは、 (叫び声……僕を呼ぶ声が聞こえた!) それはカグヤの悲鳴に近い叫び声。その声を聞いたヴォルフラムはすぐさま霧の中に戻った。 物静かなカグヤが叫ぶようなことは滅多にない。ならそれは、きっと大変なことが起きているに違いない。 ヴォルフラムは霧の中でカグヤの姿を探して、走って、探す。 自分の大切な人、どうか無事でいてくれと願いながら。 ――――………… 濃霧の中にいるカグヤの前で、突然それは起こった。 視線の先にあった黒い大きな背中、それが音を立てて……倒れたのだ。 「ヴォル……ヴォルッ!?」 ほんのついさっきまで自分と共にいたはずのヴォルフラム。 何が起きたのか、理解が追い付かないカグヤは無意識に彼の元に駆け寄り、その体を揺する、だが。 「……ぃゃ」 彼からは何も返ってこない。つまりそれは……。 「いやぁぁぁあ――ッ!!!」 パートナーを喪失したその絶望に、カグヤは耐え切れず叫んだ。 …………、 ………………、 声を出し尽くしたカグヤは地に落ちたヴォルフラムの体を拾って胸に抱く。 周りに彼の魂の気配はない、でも彼が生きている気配もない。 受け入れられない現実に、カグヤはその名を呼ぶ。 「ヴォル」 ――貴方が居なくなったら、また私は厄介な子になる。 「……ヴォル」 ――貴方が居なくなったら……私はどうしたらいいの? 「ヴォル……私をひとりに、しないで……っ!」 胸に抱いたその体を強く胸に押し付け、涙を流す彼女は、呟くように思い出を語り始めた。 「貴方が居たから、私は浄化師になれた」 ――貴方と組む時、父様に『何で地位のない農民の子と!』と叱られても、貴方とだから平気だった。 「この間の葡萄収穫、ヴォルの家に行った時みたいで、楽しかったよ」 ――また、ヴォルの家に行きたいな。 「その時は収穫、お手伝いがしたいよ」 語る思い出に応える者が誰もいないその現実を、彼女は独り声を殺しながら更に涙を流す。 ――――………… 「カグちゃん……」 濃霧の中、微かに聞こえるカグヤの声に反応し、ヴォルフラムはついにカグヤを見つけた。 そのカグヤは座り込んで泣いていた。いつも自分を抱く様に。 何があったのかはわからない……が。 「僕は、君を一人になんてしないよ」 大切な人が苦しんでいる、悲しんでいる――それを理解したヴォルフラムは跪いてカグヤの体を抱きしめた。 霧で冷えた体に、自分の温もりが伝わるように。 そう安心させるヴォルフラムに、だがカグヤからの反応はない。まるで魂だけが抜けたように。 けれど、生きている。彼女はこの腕の中にいる――だから。 「適性診断の時、君のお父さん不満そうだったね」 彼女に呼びかける。彼女が呟いた思い出に応えるように。 「僕が地位も何もない農民の子だったから……。だから今も僕、所作もお洒落にも気を使ってるよ」 「…………」 「そういえば、葡萄収穫の手伝いは楽しかったね。僕も久しぶりに家に帰ったみたいだったよ」 「…………」 「それと、あと……収穫時期に連絡くれるように頼んでみようか」 ……彼女からの反応は、ない。 こちらを見ず、言葉を拾わず、無気力になってしまったカグヤ。 それでも……自分は。 「大丈夫。僕は君を一人残してなんかいかないよ」 カグヤと共にある――それは変わらない。 その言葉に、ふいにカグヤの目が動いた。 視線が合い、その瞳にヴォルフラムの顔を捉えたカグヤは抱きしめられていることに気づき、彼の背中に腕を回す。 「幻……良かった……っ」 嬉し涙を流すカグヤに、ヴォルフラムは抱きしめて応えた。 ■■■ ――一体何が、起きたんだ……? 目の前で起きた光景に『ラウル・イースト』の思考は停止した。 視線の先にいた『ララエル・エリーゼ』――その彼女が、今。 「ララエル――ッ!!」 体から血を飛び散らせて、地面に倒れたのだ。 信じられないその光景に、ラウルはゆっくりと彼女に近づき、膝をついてその体を抱き上げる。 「嘘……だろ?」 嘘だと、質の悪い冗談だとそう願うラウル。 「目を開けてくれよ……眠っているだけだよな……?」 次の瞬間には、ララエルは目を開けて無邪気な笑顔を見せる……そのはずだ。 「ララ……起きてくれよララエルッ!」 不安にさせないでくれと、体を揺さぶって声をかける。 だが彼女からの反応は一切ない。体温を失ったその体から感じるのは。 ――ララエル・エリーゼは死んだ、という現実。 それを悟ったラウルは、ララエルの頬に優しく触れて、彼女との思い出を語る。 「ララエル……君が僕のためにお洒落をしてくれた事、嬉しかったんだ……」 胸元が開いてスカートが短い服――本当は似合っていたけど、それは他の男に見せたくなかったから。 「君がアクアマリンのブレスレットを着けてくれた事……嬉しかったんだ」 些細なことで喧嘩して、仲直りの時に贈ったそれは――君の瞳と同じ色だったから。 「君が、クリスマスの日に僕に身を委ねて……くれた、ことっ……!」 嗚呼、今でもララエルとの記憶は鮮明に思い出せる。 だがその時の想いを伝えても応えてくれない。そう思うと、記憶を思い返す度に涙が溢れ出て止まらない。 死んだ、ララエルは死んでしまった。何の前触れもなく。 もう笑い合うこと、語り合うことも、想いを伝えることも出来ない……! 「う……うああああっ、嫌だ、嫌だあああっ! そんなの嫌だぁ!」 だがそれを認めてたまるか、断じて認めるものかッ! 「まだ君に何も教えてない! 君のお腹に宿してない!」 まだまだやりたいことが山ほどある! それは君と一緒じゃないと意味がないんだ! 君が死ぬなんてあり得ない、だからこれは悪い夢なんだぁ――ッ! そう叫ぶラウル、その背後から。 「ラウル!」 霧の中を無我夢中で駆けてきた、本物のララエルが抱きしめた。 ――――………… 「私はここです、ラウル! ラウルッ!」 叫び声を聞いて急いで走ってきたララエル、我を忘れて叫ぶラウルの背中に抱き着いて彼の名前を呼ぶ。 けれど気が付いていないのか、ラウルの叫びは止まらない。 痛いと、苦しいと思うほど強く抱きしめても、それは止まらない。 気が狂ったラウルを一体どうすれば止められるのか、それを考えるララエルは思わず、 「クリスマスの日、私にキスしてくれて嬉しかったんです……!」 ラウルの叫びをかき消すほどの大声で、抱いていた想いを叫んだ。 「好きな人にあんな風に求められることの嬉しさを、私は知ったんです!」 人はあれほど幸せを感じることが出来るのか、それを教えてくれたのは――他の誰でもない、ラウルなんです! 「でも私……あれから先の事を、まだ教えてもらってないんです……!」 いつか教えてくれる、その約束の日を楽しみにしているんです――ッ! そう叫んだララエルの言葉が届いたのか、叫ぶのをやめたラウルは後ろに振り返る。 嘆き悲しみ、二度と会えないと思ったララエル――彼の瞳にはその姿がしっかりと映っていた。 「――ララ……エル?」 だが信じられない、とそう言わんばかりにラウルはララエルから離れる、が。 「私は、ラウルから離れません!」 ララエルはラウルを捕まえ、その顔を自分の胸の押し付ける様に抱きしめた。 「だからもう……泣かないで……」 「ララ……エル……?」 ラウルがその名を呼んでくれた……なら、あと少しだ。 「ラウルは私の、騎士様……なんですから」 そう願い、零れ落ちた一粒の涙、それがラウルの頬に落ちた。 暖かさ、優しさ……様々な想いが詰まったそれを感じたラウルは、 「――暖かい……あぁ、ララエルだ……良かった……」 生きていた、また会えた。 そう思ったラウルは嬉しさから涙を流し、ララエルの背中に手を回した。 ■■■ 「え――……?」 眼前で起きた光景を、『レミネ・ビアズリー』は理解できないでいた。 それもそうだろう、まさか目の前でパートナーの『ティーノ・ジラルディ』が血を飛び散らせて倒れたのだから。 それは何の前触れもなく、突然の出来事。 思考が止まったレミネは地面に倒れたティーノの体に近づき触れる。 冗談でしょう、と。からかうのはやめて、と。 そう願う彼女は、その体から徐々に無くなっていく体温に恐怖を覚えた。 それはまるで、先ほどまで他愛もない話を交わしていたのが、嘘だと言うように。 「待って、こんな……っ!」 その現実は、ティーノが『過去の人間』だと告げる――そう悟ったレミネは何とか冷静になろうとする。 だが切り離そうとした悲しみは抵抗するように押し寄せてくるばかりで、冷静になれない。 そも、自分たちが浄化師である以上、こういう結末を予想していなかったわけではない。覚悟は決めたはずだ……なのに。 どくどく、とこの胸を強く打つ心臓が酷くうるさい。 一体何故――何故この心臓はこんなにうるさいの? 地面に座り込み、パートナーを失ったレミネは虚空を見つめる。 冷静になろうと何も考えず、現実を受け止めるために。 ――――………… 「……レミネ?」 逸れたレミネを探しに来たティーノ――ようやく見つけたと思えば、レミネは地面に座り込んでいた。 近づき、何が遭ったと訊くと、レミネは。 「……本物、幻? ……いえ、幻ね。だってあの人は目の前で――」 死んだもの、とそう呟いた。 その言葉にティーノは疑問を抱く――一体何を言っているのかと。 心臓が動き、脳で考え、肌で感じている自分は今ここにいる。生きているはずなのに、レミネの中では死んだことになっている。 ……意味がわからない。だからこう言うしかない。 「――俺は死んでない。レミネが見たのは幻だろう、俺は本物だ」 冷静にそういうティーノに、だがレミネ。 「おかしなこと言わないで。だって確かに目の前であの人は倒れたの」 幻の、もう一人のティーノの亡骸を見たと、主張を変えない。 今話しているティーノは霧が生み出した幻だと、そう思い込んでいるレミネに、本物のティーノは頭を悩ませる。 ――ふと。 「……私、言えなかった。パートナーのあの人に」 膝に顔を埋めたレミネは、ティーノとの思い出を呟き始めた。 「香水作り、私……手が震えて……上手くできない時に手伝ってくれて」 それは――巨大都市エトワールにある香水工房で香水を作った時の記憶。 「見学会も、人前に立つのは苦手で緊張してる時に励ましてくれて」 それは――首都エルドラド内にある学校で薔薇十字教団の説明をした時の記憶。 「復活祭も……どう振る舞っていいかわからなくて……でもあの人のお陰で自然に警備できて……」 それは――復活祭で警備の仕事に不安を感じていた時の記憶。 「……それが」 それらをまるで懺悔するかのように呟くレミネは、 「すごく嬉しかったし、良い……思い出、で……」 大切なことなのに伝えられなかった、と震える声でそう言った。 「…………」 レミネが語る思い出に黙って耳を傾けていたティーノ。 「……お前が困っていれば必ず手を貸す。だから――」 片膝をつき、レミネに向けて。 「俺はこれからも力を貸そう」 手を差し伸べた。その手に気づいたレミネは顔を上げる。 「俺はお前の……レミネのパートナーだ」 そう言いながら、ティーノは手を伸ばしてレミネの目に溜まっていた涙を拭い、傍に落ちていた人形のマリネッタを拾って渡す。 隣にいると落ち着く感覚――眼前の幻からそれをレミネは感じたのか、その瞳にティーノの姿が映った。 「あなた……ティーノなの……?」 「それ以外の誰に見えるんだ?」 冷静に答えたティーノの言葉に、レミネは確信した――目の前にいるのは本物のパートナーだと。死んでいなかったと。 そう感じたレミネはティーノに抱き着く――失った恐怖を味わった体を震えさせながら。 震える体を抱きしめ、ティーノは心中で誓う。 (もう、レミネにあんな思い、させない。俺がレミネを守る) ■■■ 「――――」 くぐもった声に振り返れば、地に伏しているのはパートナーの『ヨナ・ミューエ』。 『ベルトルド・レーヴェ』は無意識に彼女の元に向かい、その体を起こす……だがその体はただただ重く、糸の切れた人形の如く、全く力を感じない。 ベルトルドはヨナの瞳を見る、だがその虚ろな目は自身を映すことがない。 彼女から流れる、べちゃりとした生暖かい血が服を赤く、赤く染め上げてゆく。 ――それらの受け入れ難い現実にベルトルドは息を飲み、 「どうした、何が起こった……?」 ヨナに問いかける。 「ヨナ。おい、ヨナ……?」 だが返事が返ってくることはない。それは重くなった体と瞳、赤くなった服が語っている――ヨナが動くことはもう二度とないのだと。 ――この状況と否応なく重なるのは、スラム生活に終止符を打った日の出来事。 それはスラムの仲間たちと共に追いかけてくる死から逃げた先で起きた悲劇だ。 一人、また一人と脱落してゆく中、自分は死にたくない一心で逃げ続けた。 それは約束――逸れた時はここで落ち合う、と仲間の赤毛の少女とした約束。 初恋の相手であるその少女と約束した場所に自分は何とかたどり着いた。そこに彼女はいた……だが時すでに遅く、彼女はベリアルによって血の花を咲かせていた後だった。 変わり果てた姿に、終ぞ想いを伝えることができなかった悲しみの慟哭を木霊させた自分。 大切な人を失う気持ち、想い……その後悔は二度と味わいたくない。 だから――あんな事はもううんざりだと。 そんな思いを内に秘め、拳を握ってきた筈……なのに! 「頼む……ヨナ」 いつかお前は言ったじゃないか……俺を残すつもりも残されるつもりもないと。 「返事を、してくれ……」 願うように、祈るように、囁くように、そう言うベルトルド。 だがそれが叶うことはなく、その無慈悲な現実に堪らず彼は吼えた。 ――――………… その叫び声を聞きつけたヨナが向かった先にあったのは、項垂れているベルトルドの姿。 駆け付けたヨナは訊く――どうしたのかと。 その声に反応したベルトルドは、顔に笑みを浮かべたがそれはほんの一瞬、彼は耳を塞いだ。 目の前にいるのが本物なのか偽物なのか、一体何が本当なのかわからないと。 ――もう俺を惑わせないでくれ。 死んだんだ、あいつも……ヨナも。 俺はまた何もできなかったんだ……っ! 俯き、叫ぶようにそう言ったベルトルドに、ヨナは狼狽する。 (もしかして……昔のことを思い出していて、私も死んだと思っているの……?) 一体何故――まさか、この霧が作用した……? 苦しそうに耳を塞ぐベルトルドに、ふとヨナは思った。 ベルトルドは過去のことを乗り越えているのだと、ずっとそう思っていた。 自分より遥かに、経験も強さも持ち合わせた人だと。 この人となら大丈夫。そう思えるほどに……でも。 ――その逆は? 私は、彼の支えになれているの? 「……ベルトルドさん」 名前を呼び、近づくヨナはベルトルドの顔にそっと触れる。あやす様に。 その手の温もりを感じたのか、ベルトルドは耳から手を離して顔を上げた。 「聞いて」 絶望に染まった瞳を持つ彼に、ヨナは語り掛ける。 「私はここにいます。何ともない、何も起こっていない。 私は、あなたを残して死ぬわけない――そう言ったでしょう」 いつか言ったその言葉を、もう一度言うヨナ。 「私を見て」 ベルトルドの顔を両手で包み、そして。 「これが、わたし」 その頬に、優しいキスをした。 頬に触れたその唇の柔らかさ、真っすぐで強い眼差しを、彼は感じたはずだ。 その二つは自分が想う他の誰でもないヨナのものだと――故に。 「……ヨナ」 ベルトルドは、眼前の幻が本物の『ヨナ・ミューエ』だと理解した。 「ベルトルドさん、私はここにいます」 「ヨナ……ヨナ……っ!」 嬉しさから何度も名を呼び、ベルトルドはヨナを強く抱きしめる。 それは存在を確かめるように、ヨナの息が詰まるほどの強い力で。 もう決して失うものか、残されるものかとそう涙を零しながら……。 ■■■ 『皆さん、山降りるのに慣れてますね』 笑いながらそう言う『キョウ・ニムラサ』に、 『キョウヤが慎重すぎるのよ。エスコートしようか? 手握る?』 意地悪そうに笑みを浮かべながら『サク・ニムラサ』が手を差し出した。 『っ、結構です!』 『あらら、恥ずかしがってる。やっぱり子どもね』 子どもの頃にしたことを大人になった自分ができるものかと、顔を真っ赤にしたキョウはサクから離れるように歩を速めた。 『そんなに先に行くと迷うわよ』 サクがそう注意するものの、だがキョウは聞く耳持たずひたすら前に進む。 と、辺りを霧が包み、サクとキョウは互いの声を頼りに前に進む……しかし。 『……あら。皆さん、キョウヤを見てません?』 いざ霧から出てみれば、そこにキョウの姿はなく。 サクは周りにいた浄化師たちにキョウの情報を求めた。 ――これが、つい先ほどまでの出来事。 霧の中に取り残されたキョウは、今。 「……意味がわかりませんね、いったい何の冗談ですか?」 目の前で頭から大量の血を流しているサクの姿を見ていた。 それはまるで、どこかから落ちて頭を強打したような状態。しかし周りに崖があった覚えはないし、何よりサクがそのようなヘマをするはずがない。 だから冗談だと、キョウはそう思い近づく。 ……だが、キョウが一歩近づくと、サクの体は力が抜けたように倒れた。 頭から血を流し、微動だにしないサクにキョウ。 「……冗談でしょう? お願いです、何か言ってください、喋って」 寄り添い、その体を揺らし、声をかける。 けれどサクが応えることはない。何度呼びかけても、何も返ってこない。 そしてキョウは悟った――それは自分の『姉だったもの』だと。 「手を、握っていれば……これはなかったのですか……?」 もしあの時、恥ずかしがらずに手を握っていれば、こんなことにはならなかったのではないか。 手を握っていれば、サクは……姉は、死ななかったのではないか? 「サクラは強いですから、こんなの嘘です……」 ああ、そうだ。これは嘘だ、冗談だ、イタズラだ。 そう、思わなければ……、 「そうでしょ……姉様」 姉を殺したのは、自分という後悔に押しつぶされてしまう……。 地に倒れ、動かなくなったサクに、キョウは天に向かって吼えた。 ――――………… 「全く、どこに行ったの」 霧の中で逸れたキョウを探すサク。 「――血の匂いはしない、まだ怪我をしていないだけ?」 途中から叫び声を聞いた彼女は、早く行かなければ、と声がする方に走る。 …………、 …………しばらく走ると、そこにキョウの姿はあった、だが。 (何を、しているのかしら……?) 彼は地面に手を付いて嘆くような姿勢をして、何かを呟いていた。 それが気になったサクはその声に耳を傾ける。 「サクラ……自分が迷子になった時に探してくれた、あの嬉しそうな顔、今でも忘れてません」 過去の思い出を語っているのか、そういうこともあったな、とサクは思う。 「いつも耳飾りを選んでくれているサクラ……楽しそうに選ぶ姿を見るのが楽しかった。困った風にしているのは、照れ隠しなんです、ごめんなさい」 そうだったのか、とサクは微笑む。 「名前を呼んでくれているサクラ……自分をキョウヤと呼ぶのは、兄が死んでいたらサクラだけなんです……」 兄は強いから問題ないのに、とサクはため息を吐いた。 どうやらキョウの中で、自分は死んでしまったことになっているらしい。だから嘆いているのだと、そう感じたサクはキョウの元に近づき、 「大丈夫大丈夫、私はここにいるわ」 悲しみに暮れているキョウに声をかけた。 「ほら手を握って立って、一緒に帰りましょう。前だって今だって見つけられた。とても嬉しいわ。だから小さい時みたいにギュッてしてあげる」 手を差し伸べるサクは、 「もう耳飾りは不必要なのかしら。残念ね、とても楽しかったのに」 もう二度と会うことはない、そう思っていたキョウに、 「キョウヤ――あなたの名前を呼ぶ女、他にいたかしら?」 微笑みながら応えた。 懐かしい声を感じたのか、キョウはゆっくりと上を向いた。 「さあ、一緒に帰りましょう」 「……サクラっ! サクとまた会えたと、キョウは目に大粒の涙を溜めてその手を取った。 今度は恥ずかしがることなく、昔と同じように。
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*** 活躍者 *** |
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[9] キョウ・ニムラサ 2019/09/30-21:02
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[8] ララエル・エリーゼ 2019/09/28-19:07
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[7] ヴォルフラム・マカミ 2019/09/28-13:57
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[6] ヨナ・ミューエ 2019/09/28-08:58
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[5] レミネ・ビアズリー 2019/09/27-17:59
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[4] レミネ・ビアズリー 2019/09/27-17:57
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[3] ララエル・エリーゼ 2019/09/27-13:31
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[2] ラウル・イースト 2019/09/27-00:37
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