~ プロローグ ~ |
1719年12月――教皇国家アークソサエティは、今年もクリスマスムードに包まれています。
|
~ 解説 ~ |
現代社会とは、起源などが異なっていますが、基本的なイメージは同様のイベント内容になっています。
|
~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル『聖なる夜は終わらない』の対象エピソードです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
※アドリブ歓迎します
※スポット2 ※去年のシチュノベも参照 (※彼は35話、71話、75話でそれぞれ アクアマリンのネックレスとブレスレット、 イヤリングをララエルに贈っている。 全て自分の贈り物で身を固めさせているのは 強烈な独占欲) (ララエルの部屋に押し入り、クリスマスケーキを 置く。コートを脱ぎ、シャワーを浴びていた彼女を バスタオルでくるみ、ベッドに押し倒す) ララエル、今日のクリスマスケーキは甘い チョコレートケーキだよ。 (意地悪な笑みを浮かべつつ、ケーキのクリームを 指ですくいとり、ララエルの口に入れ馬乗りになり そのまま自分も激しくキスをする) (キスをしながら、隠し持っていたアクアマリンの 指輪をララエルの左手の薬指に強引にはめる) ララエルフェル・エト・エリーゼ。 君は僕と結婚するんだ。答えは聞かない。 それから赤ん坊の作り方だけどね…こうするんだよ。 (彼女のベッドにあったぬいぐるみ同士を 擦り合わせる) |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
汗だくになって目覚める。 夢と現実の境界が曖昧のまま起きたララエルは自分の室内だと気づいてホッとした。 鮮血を浴びたような不快な汗が気になり、今すぐシャワーを浴びたくなる。それにこんな汗だくの姿で折角のクリスマスをラウルと過ごしたくなかった。 ふらふらと重りがのしかかった頭でララエルは倦怠感を感じながらシャワー室に向かう。 これではラウルが心配してしまう。 熱いシャワーを浴びて何もかも洗い流したかった。シャワーの雨が降り注ぐと悪夢の名残りごと身体から流れ落ちていく。 いつの間にうたた寝していたのだろう。 今日はクリスマスなのに。部屋でぎゅっとぬいぐるみを抱きしめながらそわそわとラウルが来るのを心待ちにしていた。 少しは大人の女性になれただろうか。今年のクリスマスは、と考えてララエルはぬいぐるみに顔をうずめる。顔が真っ赤に染まっているのが自分でも分かる。 (はうう……今日はクリスマスですけど……どうしよう……去年はラウルに抱っこされて、キス……されて、嫌っ、私ったら期待……してるみたいで……) 去年のクリスマスのことを思い出して胸が熱くなる。 あまりに楽しみにし過ぎて夜眠れなかった。肝心な時に眠ってしまうなんて。 ララエルが落ち込んでいると部屋の外から物音が聞こえる。ラウルかしら、と考える暇もなく突然シャワー室のドアが開かれた。 「えっ!? ラウル!? 待ってください、私まだ……っ!」 ララエルは突然のことに動揺し、慌ててバスタオルを手に取ろうとするが、 「……鍵もかけないなんて不用心だよ、ララエル」 不機嫌そうにも無表情にも見えるラウルは自分が濡れるのも厭わず、腕の中に囲い込まれていた。 一瞬、強く抱きしめられると、ラウルはどこか余裕のない表情で急くようにバスタオルでくるみ、ララエルを抱き上げる。 ララエルがシャワー止めないと言う前に、ラウルがシャワーのコックを閉める。 「ラウル、……ラウル、私また何かしちゃいましたか?」 不安そうに尋ねるララエルに答えることなく、ベッドに運ぶとゆっくりと寝かした。 ラウルはベッドに腰掛けるように座り、テーブルの上に置かれたケーキの箱を無言で開けていた。テーブルの近くにはラウルのものと思われる黒いチェスターコートが床へ無造作に脱ぎ捨てられていた。 「……チョコレートケーキ?」 本来なら喜ぶところだが、自分はバスタオル一枚のほぼ半裸ともいえる姿に羞恥を覚える。なによりもラウルも濡れたままだった。室内は暖かいとはいえ、真冬なのだ。 「ら、ラウル、そのままじゃ風邪をひきます……着替えなきゃ」 「後で脱ぐから大丈夫だよ。……それよりも今日のクリスマスケーキは甘いんだ」 ラウルはいつものように優しいのに、それ以上に煮えたぎった熱を孕んだ声が響く。 体を起こそうとするより早く、ラウルが楽しげに笑いながらララエルの肩を押し、ベッドへ押し戻す。 まるで逃げるな、と紅玉の瞳が語っているようでララエルはベッドに縫い留められる。 「ビター味なチョコケーキなんだ。……一緒に食べたら甘くて美味しいんだろうな」 綺麗にデコレーションされた生クリームを人差し指ですくい、ラウルは意地悪げに笑う。 ラウルの赤い舌がゆっくりと唾液で濡らすように舐める様からララエルは目を離せない。 「ら、ラウル、行儀が悪い、ですよ……」 いつもと違うラウルに戸惑い、おかしな空気を誤魔化すようになんとか言葉を紡ぐ。 ラウルはまた唾液で濡れた指でクリームを救い上げ、ララエルの戸惑いを楽しむように見下ろす。 何も知らない少女。ラウルがこれから何をしようとしているのかも分からず従順に自分のことを信じ切っている。 彼女の信頼を裏切っているようで背徳感に胸が痛むのも束の間。 「これから、もっと行儀の悪いことをするんだ」 「これからって……何をっんぐぅ!?」 有無言わせず指を口内に入れるラウルの顔には嗜虐的な色が浮かんでいた。 「……ララ、舐めて」 ラウルの指は彼に似て意地悪だった。楽しそうに舌をからめ取ると指の腹で擽るように撫でる。乱暴ではないが、強引な指使いに翻弄されるままララエルは彼に言われたとおり指を濡らす。 口の中で動き回る指は確かに大人の男性のもの。ラウルの指は楽器が似合うように綺麗なのに。ララエルは彼の指を噛まないように気を付けながら舐める。 「美味しいかい? それとも甘い?」 ララエルは尋ねられるまで味のことすら忘れていた。ただこの行為が甘い。火傷しそうなほど甘くてならない。 おもむろにラウルは指を抜くと、根本まで絡んだ唾液を舐めとり、指と指の間には透明な糸が繋がっていた。 ララエルはカッと顔が熱くなり、耐え切れず顔を背ける。 ラウルに見られている。紅玉の瞳が炎を宿したように爛々と視線を降り注ぐ。 彼女はまるで標本に縫い止められた蝶のように動けないでいた。 いつもと違うラウルの視線にララエルは羞恥を覚え、バスタオルをぎゅっと握りしめる。 その仕草さえラウルを煽る材料にしかならなかった。 「ララ、こっちを見て」 目の前に迫るラウルの端正な顔に目を奪われていると、噛みつくように唇に食いつかれる。 唇で唇をこじ開けられ、ぬるりと生温かい何かが口内を這いずり回った。 それは歯列を一つ一つ丁寧に舐めると、滑らかな粘膜をなぞり、逃げる舌を追いかけ執拗にからめ取った。 静かな部屋でくちゅくちゅとくぐもった音が響くのが恥ずかしいのに、やめないで欲しいと思う自分が恥ずかしかった。 いつの間にかすがりつくようにラウルの服を握りしめていた。 そっと目を開けてラウルの表情を伺うと、獲物を前にして舌なめずりするような紅い瞳と目が合い肌が泡立つ。 息ができない。苦しくて熱くてなのに気持ちよくて何も考えられない。頭が真っ白になる。 未熟な身体の奥の方で少しずつ熱を持ち始める。 コントロールのきかない熱が疼きとなるのに、そんなに時間を必要としなかった。 ララエルの目が潤み、息が苦しくなってもラウルは止めてくれない。逃がさないと言いたげな口付けは激しさを増すばかり。 どれくらいの時間がたったのか。唇を名残惜しそうにゆっくりと離すと、ララエルは空気を求めるように胸を上下させる。 互いの唇に銀の糸がつぅと伸びているのにも気づかず、呑み込みきれなかった唾液がだらしなく顎を伝い流れた。 そっと首筋を優しく撫でるようにラウルの手が滑る。 首筋を食べられる。ララエルは目を瞑る。 すぐに首筋に小さな痛みが走る。白い肌には朱い花が咲いていた。 藍玉の瞳は熱に溶けていき、目尻は朱に染まると、はあっと艶やかな吐息がこぼれる。 「ララエルフェル・エト・エリーゼ」 ラウルに静かに名前を呼ばれ、肩がはねる。 「君は僕と結婚するんだ。答えは聞かない」 硬質な声が響く。言葉こそ強引だが、その瞳は不安と強い独占欲で揺れていた。 そっと左手を取ると、ラウルは恭しく騎士のようにアクアマリンの指輪を薬指に嵌めた。 「けっ……こん……ですか……?」 ララエルはどこか夢心地のまま繰り返す。 ラウルの表情は硬い。緊張しているのとは違うようでどこか悲しげで心臓を一突きされたような、どうしようもない痛みに耐える表情。 ――……どうしてそんな顔しているんですか、ラウル? そう尋ねる前に、ラウルに再び唇を塞がれる。 与えられた刺激に翻弄される姿にラウルの内側にいる獣が唸り声をあげる。 ララエルの何もかもを奪い、そして与えるのは自分だけだと心の奥底で獣が哂う。 めちゃくちゃにしてやりたいという本能と誰にも自分ですら傷つけたくないと言う理性が妥協した結果が指輪だった。 アクアマリンのアクセサリーで固めたのもララエルへの強烈な独占欲故にだった。 教団を裏切っても例え何を犠牲にしたとしても、ララエルが明日も明後日も隣にいて笑って欲しい。ラウルの願いはただそれだけなのだ。 これは恋なんて綺麗なものなんかじゃない。もっとドロドロとした独占欲とも執着ともいえない狂気なのかもしれない。 ――それでも君を愛してる。 自嘲気味に表情を歪めながらも、ララエルを離すことはできなかった。 (……ラウルはずるい……) ラウルがくれるものなら何でも嬉しいのに。 指輪をくれて泣きたくなるぐらい嬉しくてたまらないのに。 どうして今にも泣き出しそうな苦しい顔しているのか。まるで初めて会ったときのような不器用な態度。 ラウル、と名前を呼ぼうとするが、その言葉すら呑み込む口付け。 好き。愛してる。たくさんの愛の言葉をラウルに贈りたいのに、肝心の彼が受け取るのを拒んでいる。 まるで何も聞きたくないと語り掛ける彼の態度にララエルは悲しくなる。 結婚すると聞いて嬉しかった気分が急速に萎んでいく。 そんな気持ちも翻弄するような舌使いによってまた何も考えられなくなっていく。 キスの心地よさに溺れるララエルの目は虚ろを漂い、助けをのばすように天に向かって手を伸ばす。 ――ラウル……っ好き……大好き……っ! 藍玉の瞳から涙が一筋流れる。 不安は呼び水となって、ララエルの心を暗い奈落の底へと引きずり込もうとする。それを引き留めるのもまたラウルだった。 互いの両手を絡め合うように必死で握りしめる。ラウルから贈られた指輪にも体温が移り、指輪の存在がララエルを寸前のところでとどまった。 すがりつくようにラウルの手を握りしめると、すぐに握り返される。熱を分け合うように。決して離すまいとするように、強く。 それが嬉しくて悲しくて、ぼろぼろと涙が溢れて止まらない。 ララエルの涙を見て、ラウルは一瞬で血の気が失せ頭が冷えた。動揺のまま先程の行為がララエルにとって苦痛だったのかと思い、青ざめる。 「ララ、どうしたんだい? 嫌だったなら、ごめ――……」 「ちが、違うんです、ラウル……好きなの、傍に、いて」 ララエルは首を振りながら、たどたどしく思いを伝えようとする。 「……うん、君の傍にいるよ、この指輪に誓って」 薬指に嵌められた指輪に誓いのキスを落とす。 「ら、ラウルは私の王子様で、騎士様で、大切な人で、パートナーだから、……そんな、苦しそうな顔、しないでください。ラウルなら、ラウルから与えられるものならなんだって受け止めてみせます、から」 「……君が思っている以上に僕の想いは重いんだよ、ララエル」 ラウルは苦笑しながら宥めるようララエルの頭を撫でようとするが、 「……そんなのっ」 ララエルは泣きながらラウルを真っすぐに射貫く。 「私のほうが、ずっとずっと重いんです……っ! ラウルに負けないぐらい、重くて……ラウルの気持ち、受け止められるんだからっ!」 どうして分かってくれないんだ、とラウルの胸板を何度も叩く。 「私の、こと、ちゃんと見て、下さい! 私の言葉を聞いて下さい、ラウルが、聞いてくなきゃ、ラウルと結婚したいって、愛してますって、伝えられないじゃないですか……っ!」 ララエルの言葉を聞き、ラウルは泣きそうな顔を隠すように抱きしめる。ぎゅっと強く抱きしめてくる腕は痛い程だった。 それでも二人は幸福だった。これからどれだけの明けない夜を迎えようと、この記憶さえあれば乗り越えていける。 静謐な夜は間もなく訪れようとしていた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||
|