~ プロローグ ~ |
1719年12月――教皇国家アークソサエティは、今年もクリスマスムードに包まれています。
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~ 解説 ~ |
現代社会とは、起源などが異なっていますが、基本的なイメージは同様のイベント内容になっています。
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~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル『聖なる夜は終わらない』の対象エピソードです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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スポット:4
クリスマスプレゼント、こんなのはどうでしょうか? ステンドガラス風の小さなキャンドルホルダー さまざまな色の光が輝いていて綺麗だと思うんです 今日はありがとうございます。 私を連れ出す為でもあったんですよね。 もう大丈夫です。明日からはきちんと任務にも参加します。 ?何でしょうか? ……………………い、いえ言葉は理解できるのですが それは…まるで…プロポーズのように聞こえるのですが…? …今はまだ応えられない。イザークさんのせいではなく 私は可愛げがないし杓子定規すぎるし、何より父と私を捨てた母のようにならないか… 一人の人間としてイザークさんの横に並ぶ勇気がなくて 今は、まだ でも……でもっ 病院でしてもらったように強く彼の手を握る 私が、自分の事を受け入れることができたら その時は……私の方からプロポーズさせてくださいっ! 目をそらざずに、今の精一杯の思いを。 |
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~ リザルトノベル ~ |
その日は、人々の笑顔が絶えない、好き日だった。
「私が選んでも、良いんでしょうか?」 リュミエールストリートへ向かう道中、『鈴理・あおい』は、寄り添うように歩く『イザーク・デューラー』に不安を滲ませ問い掛けた。 いま2人は、室長ヨセフに渡すクリスマスプレゼントを見繕うため、リュミエールストリートで開催されているクリスマス・マルシェに向かっている。 「あおいに選んで欲しいんだ」 イザークは、あおいの歩みに合わせながら、やわらかな口調で言った。 「俺が選ぶより、あおいが選んでくれた物の方が、室長は喜んでくれると思う。 俺だとどうしても、武骨な物になって、クリスマスプレゼントには向いていない物になってしまう。 だから、あおいに選んで欲しいんだ」 「……はい、分かりました。頑張って、選びます」 あおいは一生懸命、精一杯頑張るのだという意気込みを見せる。 彼女の様子を見て、イザークは心地好さそうに目を細めた。 何事にも一生懸命に、自分の成せる最善を尽くそうとするあおいを、イザークは好ましいと思う。 あおいは、誰にも頼らず1人で前を向いて、凜と背筋を伸ばし生きている。 それは息苦しいこともあるだろう。 けれど、常に己の力で道を切り開こうとしている生き様は好ましいと、イザークは思うのだ。 でもそれと同じくらい、彼女の心が安らぎ、心が晴れる時があって欲しいと思っている。 父親が亡くなって間もない、今のような時は、特に。 少し前、あおいの父は亡くなった。 死に際を看取り、言葉を交わすことが出来たとはいえ、あおいの心中の悲しみは、どれほどだっただろう。 あの時、震える手に手を重ね、立ち会ったイザークは思ってしまう。 あおいには、幸せになって欲しい、と。 だからこそ、室長へのプレゼント探しを口実に、あおいをクリスマス・マルシェに連れ出したのだ。 経費をやりくりしているサンタの親分へプレゼントもいいだろう? 先日はお世話になった事だし。 イザークの申し出に、あおいは頷き、こうして2人でリュミエールストリートに向かっていたのだ。 道中、会話を重ねながら、2人はリュミエールストリートに到着する。 そこは大勢の笑顔で、溢れていた。 「……賑やかですね」 あおいは息を飲むような間を空けて、どこか嬉しそうに言った。 クリスマス・マルシェに彩られたリュミエールストリートでは、大勢の人々が店を覗いている。 親子に友人、そして恋人たちが、今このひとときを楽しみながら、贈り物を探す昂揚感を楽しんでいた。 「あおい、どこに行こうか?」 イザークは誘うように声を掛ける。 エスコートするように提案しても良かったが、まずは彼女の望む場所があれば、そこに行きたいと思ったのだ。 あおいは少しだけ考えた後、イザークに応える。 「あまり嵩張らず、普段から傍に置いて貰えるような物が良いんじゃないかと思うんです。 だから、小物屋さんに行ってみませんか? 今なら、クリスマスにちなんだ物も置いてあると思います」 イザークは事前に調べておいた店を幾つか思い浮かべ、あおいに応える。 「それなら、心当たりがある。まずは、そこに行ってみないか?」 「はい」 あおいは小さく笑顔を浮かべ応えると、イザークのエスコートで店に向かう。 人波を2人は進む。 時折イザークは、寄り道をするように幾つかの店のショーウィンドーをあおいと共に眺めながら、目的の店に。 そこは落ち着いた雰囲気の、清潔感のある店だった。 「いらっしゃいませ」 扉を開け中に入ると店主に出迎えられる。 「好きに見ていって下さい。手に取って頂いても構いません」 店主の勧めをありがたく受け、あおいは商品を手に取っていく。 クリスマスに合わせているらしく、モミの木やサンタの置物など、可愛らしく色鮮やかな小物が目移りしそうなほどあった。 あおいは真剣な眼差しで、ひとつひとつを手に取って選んでいく。 そんな彼女の様子を、イザークは苦笑するように見詰めながら、一緒に見ていった。 しっかりと吟味して、あおいはプレゼントを選ぶ。 「クリスマスプレゼント、こんなのはどうでしょうか?」 あおいが手に取ったのは、ステンドガラス風の小さなキャンドルホルダー。 「さまざまな色の光が輝いていて綺麗だと思うんです」 あおいの選んだプレゼントを見て、イザークは彼女の意図を何となく理解した。 (さまざまな色に輝くエクソシスト達と、その中心にいる光が室長なんだろう) 「良いと思う。包んで貰おうか」 イザークは、あおいからキャンドルホルダーを受け取ると購入する。 送り先を伝えれば、あとで送ってくれるということで、室長宛てに頼む。 「ありがとうございました」 店主の礼を受けながら、2人は店を後にする。 店を出て、あおいが何かを言おうとするより先に、イザークは提案した。 「長く歩いたから、喉が乾かないか? 好い店を見つけたんだ。一緒に行ってくれると、嬉しい」 イザークの提案に、あおいは一瞬、迷うような間をおいて応える。 「……はい。少し、お茶をしましょう」 そしてイザークにエスコートされながら、落ち着いた雰囲気の喫茶店に。 店に入ると、お昼時を過ぎていることもあり、人気はまばらだった。 奥の席を案内され、2人は香りの良い紅茶を頼む。 ほどなくしてお茶は運ばれ、一息つくようにお茶を楽しんだ後、あおいは言った。 「今日はありがとうございます」 やわらかく視線を合わせ、礼を言う。 「私を連れ出す為でもあったんですよね」 イザークを安心させるように、凜とした声で続ける。 「もう大丈夫です。明日からは、きちんと任務にも参加します」 変わらず1人で前を向いて進もうとするあおいの姿に、彼女らしいなと、イザークは苦笑する。 けれど今回はそこで留まらず、視線を合わせたまま、想いを言葉に乗せていく。 「あおい。君と病院から戻った後、ずっと考えていた」 「? 何でしょうか?」 それはイザークの、心の内から溢れてきた真摯な想い。 あおいは、どんなに辛い時でも、己の力で立ち上がろうとする人だと分かっている。けれど―― (……そんな彼女だからこそ、ずっと共にいたいと、思ったんだ) 想いを言葉に込め、告白する。 「あおい、君と共に歩んでいきたい。 祓魔人と喰人だけではなく、ひとりの人間として」 応えは、すぐに返すことはできなかった。 じっとイザークを見つめたまま、あおいは応えを返せない。 不安になったイザークが、言葉を続ける。 「言い方が悪かっただろうか? 分かり辛かったなら、すまない」 これにあおいは応えを返した。 「……………………い、いえ言葉は理解できるのですが。 それは……まるで……プロポーズのように聞こえるのですが……?」 「そうだね、結婚を前提に話をしているよ」 まっすぐなイザークの応えに、あおいは息を飲むように言葉を無くす。 そんな彼女に、誠意を込めてイザークは言った。 「一気に話が飛躍している自覚はある。 でも、それだけ本気なんだという事は分かって欲しい。 今すぐ答えが欲しいわけでは無いし、断る権利もある」 あおいを急かさず、望みを押し付けるのでもなく、イザークは本心を告げる。 まっすぐに視線を合わせ見詰めたまま、あおいの応えを待っていた。 (私は――) あおいは、喜びと不安を同時に感じていた。 それは今の自分自身と、母のことが心にわだかまっていたからだ。 (……今はまだ応えられない。イザークさんのせいではなく) イザークと視線を合わせたまま、思う。 (私は可愛げがないし杓子定規すぎるし、何より父と私を捨てた母のようにならないか……) イザークの想いは嬉しい。 けれど今の自分には、1人の人間として、彼の横に並ぶ勇気がない。 「今は、まだ」 言ってすぐに、言葉を続ける。 「でも……でもっ」 病院でして貰ったように強くイザークの手を握り、告白した。 「私が、自分の事を受け入れることができたら」 目をそらさずに、今の精一杯の想いを口にする。 「その時は……私の方からプロポーズさせてくださいっ!」 それはまるで誓いのように。 イザークの心に、強く強く、響いた。 心から湧き上がる想いに従い、イザークはあおいの手を握り返す。 「ありがとう……満足な答えだよ」 2人は見詰めあい、想いを重ねた。 そんな2人の元に、2皿のケーキが運ばれる。 ひとつはチョコレートケーキ。もうひとつは、ホイップクリームケーキ。 「サービスです」 店主はにこやかな笑顔を浮かべ言った。 「あいにくと、それぞれひとつしかなくて。どっちも美味しいんですよ。折角ですから、2人で分け合って食べてみて下さい」 そう言うと店主は、お邪魔虫は去ると言わんばかりに、入り口付近のカウンターに戻っていった。 ケーキには、それぞれフォークがひとつずつ付いている。 あおいはフォークを見詰めたあと、意を決したように、イザークと繋いでいた手を離す。 名残を惜しむように視線を合わせたあと、ケーキを一口フォークで切り取り―― その日2人が食べたクリスマスケーキは、とてもとても、甘かった。
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*** 活躍者 *** |
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