~ プロローグ ~ |
春になるとイースターが始まる。 |
~ 解説 ~ |
■指令:ウサギの耳をつけて復活祭のリュミエールストリートを巡回し、お祭りを楽しみましょう! |

~ ゲームマスターより ~ |
うさ耳でデートをする浄化師が見たい衝動に駆られて。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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黒うさ耳カチューシャ ちょっと…恥ずかしいんだけど… これは任務、任務だから…(屋台をチラチラ見る) 棒付きキャンディを購入 イースターエッグのイベントに興味を持ち、誘ってみる ねえ、トール、イースターエッグを…いない!? 会場を探し回ってようやく発見 どこほっつき歩いてたのよバカ! はぐれたことにも気づかないなんて、ホントにバカバカ! …え?気分転換? どうもありがとうどこかのバカを探すのに必死でそんなことすっかりどうでもよくなったわよ! いいからイースターエッグを描くの!(ぐいぐい引っ張っていく 漫画っぽい絵柄でデフォルメの蛇を描く あなたの新しいイレイス、蛇みたいでちょっとかっこいいと思って もう…置いてっちゃ嫌よ |
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二人ともウサギ耳カチューシャ リシュテンさん可愛い! あっ、ごめんなさい。つい… いえ!ついじゃないですよね、ええと…(おろおろ 私は大丈夫でしょうか?角があるのでなんだか妙な事になっていないか少し不安で… そ、そうですか?よかった、浮いていたらどうしようかと 強そう…。いいですね、そうありたいものです 美味しそうな匂い… そうですね、食べ歩きにもよさそうですし賛成です こういうお祭りならではの食べ物っていいですよね 普段は見ないようなものが沢山あって楽しいです 口ごもった事に首を傾げつつ そうなんですか?じゃあ今日は目一杯お祭りを楽しめるといいですね 誰かと一緒に回るお祭りは楽しいんですよ …あっ、巡回も忘れずに!です |
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うさ耳カチューシャ ロメオさんイースターのお祭りの警備ですよ!これを付けてください…! カチューシャは恥ずかしいですか?じゃあこれで。 うん、可愛らしいですね!えー言っちゃだめですか(くすくす) 楽しいお祭りにスリなんて許せませんよね。 スリになんてあったら楽しい気持ちが一気にしぼんでしまいます。 ですのでしっかり警備をさせていただきます! 警備を… うー、あちこち気になって集中が。だめだめしっかり警備しなくちゃ。 あ、あのキャンディ可愛い …だめだめ! バニーキャンディですね。ご褒美ってまた私の事子供扱いしてますね。 この間もぬいぐるみ買ってくださったのに。 でも自分も食べたかったって言われたらしかたないですよね。 |
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★衣装 うさ耳カチューシャにコスプレ用エプロンドレス、赤基調 (後者は折角だからと碧希にせがまれ貸衣装屋で借りたもの) ★巡回 実に復活〜 そうかしら? 碧希君は何だか新鮮ね 普段ラフな格好が多いから…… そうね、こんな機会でもないと着ないもんね ……ペイント……? 碧希君画力が壊め……こほん、独特のセンスよね…… いや今回は簡単な図形だしいける……? (※第一話の悲劇) さて、何描こうかしら と言うか動物モチーフって爬虫類なのね……(蛇にょろり) そうね、私達まだ大きな実践経験はないけど いざその時が来ても、戦えるようにならなきゃね ……でもね、私はそれでも、碧希君は無事でいてほしいって そう、思うのよ はいはい、行きましょうか |
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◆目的 お祭りを満喫する ◆行動 エリィは着ぐるみ、レイはシルクハット着用 レ:どうして着ぐるみ… エ:えっ!可愛くないデスか?? レ:(ウサ耳だけでもじゅうぶん可愛いのに) エ:レイさんも可愛いデスヨ! レ:…ありがとうございます(棒 他人の挙動を気にしつつ、ゆるーく巡回しながら屋台巡り B級グルメを堪能してから、エッグペイントへ 描く図形はエリィは全部、レイは星・木・蛇 レ:レディの成長と僕らの関係が永く続くことを願って エ:ワタシは全部乗せデス! レ:ちょっと強欲すぎませんか(苦笑 エ:願うだけならタダですカラ!遠慮する意味が分かりまセン もしどれか叶ったら、レイさんにもお裾分けしてあげマスネ レ:…ありがとうございます |
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お祭り…楽しそうです…けど、スリが出るのでしたらちゃんと見回らないと、ですね… でもこの格好…あの、クリス…?これって… クリスが借りてきてくれた衣装を何も考えず着てみたら 兎を追いかけて入った穴の先で不思議な国に迷い込んでしまった少女の姿で… これ、少し、恥ずかしい…のですけど… 俯いてたら数多に装着されたうさ耳のカチューシャ 見上げたら、燕尾服のウサギさん… はい、似合ってます… 男性にうさ耳が似合うと思ってなくて目をぱちくりしつつ 思わず少しだけ頬が緩んで そうですね、せっかくなので…スコッチエッグを食べてみたいです… とても美味しいと感じてたら 何だか、クリスが笑ってます…? そんなに幸せそう、でした…?私…? |
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【目的】 ・お祭りの警備 ・パートナーと楽しむ 【行動】 食べ歩き 【会話】 レ:……カチューシャ、恥ずかしいけど、着けないとなのよ、ね? テ:そうだな。気持ちは分かるが、ほら。レミネの分だ レ:あ、ありがとう。……あなたは、似合うね……カチューシャ テ:そうか? ありがとう。レミネも似合うぞ レ:っ……(照れて声が出ない) テ:レミネ、何かほしいものはないか? レ:えっ……? テ:なにかあれば言ってくれ レ:……。あそこの、バニーキャンディ、とか? テ:わかった。買ってこよう キャンディを渡される レ:あり、がとう…… あ、おいしい テ:そうか、それなら良かった。任務中だが、楽しまないと損だからな |
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●明智 服装:吸血鬼のような貴族服(私服)に、ウサ耳付きシルクハット 「ふ、ふふ。実に復活!あぁ、今日は千亞さんとお揃いです…!素晴らしい…!」 うさぎだらけの祭りにハァハァと興奮。 「さぁ千亞さん、祭りを楽しみましょう…!!」 ●千亞 服装:自前の白兎耳&私服 「何興奮してるんだド変態。本来の目的は警備だからな、忘れるなよ」 呆れつつも、祭りの賑やかさに思わず目を奪われ、楽しそうな表情を見せる。 ●行動 可愛いものや、食べること(特にお菓子)が好きな千亞。 主に出店周りを巡回&買い食い。 明智「あぁ、バニーキャンディーを舐める千亞さん…(恍惚)私も舐められた…」 千亞「黙れド変態(蹴り)」 明智「イースター万ッ歳…!」 |
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~ リザルトノベル ~ |
● 教団の通達に従い、レイ・アクトリスは商工所のテントで貸出用に並んだ様々なウサ耳を前にしていた。 耳付きシルクハットを手に取り、頭にかぶる。シルクハット自体は普段から着用する機会も多いので、全体的な印象は損なわれていない……はずだ。ウサ耳が嫌なわけではないが、いい歳の男だし単純に恥ずかしいものがある。これが女の子であったなら、純粋に愛らしさを引き立てるアイテムになるのだろうが。 レディは何色の耳を選んだのだろう、とレイはパートナーのエリィ・ブロッサムの姿を思い浮かべた。 「お待たせしマシタ!」 噂をすれば何とやら勢いよくカーテンが開き、登場したエリィの姿にレイは思考を止める。 「どうして着ぐるみ……」 「えっ! 可愛くないデスか??」 その場で一回転してみせるエリィに、ウサ耳だけでもじゅうぶんに可愛いのに、と脱力する。正直なところ、ちょっと残念だ。 「レイさんも可愛いデスヨ!」 「……ありがとうございます」 返事が棒読みになってしまったのは、許して欲しいところである。 周囲に目を配りながら屋台を巡る。 どう食べるのか疑問だったが、エリィは既に着ぐるみのまま食べる方法を編み出していた。イースターパンが着ぐるみの頭部に飲み込まれていく。彼女には妙な探究心がある。 「とっても美味しいデス」 「食べづらくはありませんか」 「いいんデス。こんな機会でもなければ着る機会ないデスからね!」 なるほど。そういう発想か。彼女の好奇心は、いつもレイの想像の範疇を超えていく。 「お二人さん、イースターエッグのペイントはどうだい」 露店に声をかけられ、ハイ! とエリィが即座に返事をした。 「意外と頭が重いデス。ちょっと置いておきまショウ」 作業台にウサギの頭がごとりと置かれる。店員は卵と絵筆を二人に手渡した。 「図形にも意味があるんですね」 レイは、星(成長)・木(繁栄)・蛇(永続)の図形を選ぶことにした。 「レディの成長と僕らの関係が永く続くことを願って」 「ワタシは全部乗せデス!」 エリィの卵には、星に太陽、木と麦に遊ぶ蛇とカエル、その隙間を縫うように波模様がギチギチにペイントされている。 「ちょっと強欲すぎませんか」 「願うだけならタダですカラ! 遠慮する意味が分かりまセン」 苦笑したレイに、エリィはごくマイペースに返した。こういうものは取捨選択するものと無意識に捉えていた自分に気づかされ、レイは新鮮な驚きを感じる。彼女はレイの固定観念というものを軽々と破壊していくのだ。 「もしどれか叶ったら、レイさんにもお裾分けしてあげマスネ」 「……ありがとうございます」 ご利益のお裾分け、というのもレイにはない発想だった。それが彼女らしくて、素直に嬉しい。今度のお礼は心から出た。 ● 「ロメオさんお祭りの警備ですよ! これを付けてください!」 ウサ耳カチューシャをつけたシャルローザ・マリアージュが、同じカチューシャをロメオ・オクタードに差し出している。 「警備はいいんだがどうしてもそれをつけなくちゃダメか。それは俺にはちょっとなぁ……」 ロメオはシャルローザとカチューシャを見比べて渋ってみせた。ひと回り以上年齢が違う女の子とお揃いをする思い切りは、とても湧いて来ないだろう。 「じゃあこの辺で……」 いつまでも駄々をこねる年でもないので、ロメオは妥協案のウサ耳フードつきマントをやれやれ、と羽織った。まぁ、これでも似合わないことこの上ないんだけど、と自嘲気味に嘆息する。 「うん、可愛らしいですね!」 「こら、おじさんをからかうな。可愛いとか言うんじゃありません」 「えー言っちゃだめですか」 複雑そうに言うロメオの様子がおかしいのか、シャルローザは楽しげに笑った。 人の多い通りに踏み出す。兎耳の子がきゃっきゃと駆けていく。シャルローザは頬をゆるめ、その小さな背を見送った。 「楽しいお祭りにスリなんて許せませんよね。楽しい気持ちが一気にしぼんでしまいます」 「確かに楽しんでるのに水を差されたらいやだわな」 「ですのでしっかり警備をさせていただきます!」 「お祭りと言えどお嬢ちゃんは真面目だねぇ」 胸の前で握りこぶしするシャルローザにロメオは小さく肩をすくめた。何事にも一所懸命に取り組むシャルローザの気質は好ましいものであるが、同時に放っておけないような心持ちにもなる。 凛として巡回に勤しんでいたシャルローザだが、様子が次第に変化してきた。顕著なのは目の動きだろう。 (あー……お嬢ちゃんの目線があちこち行きはじめたな) 視線が屋台に引き寄せられているのが分かる。瞳はきらきらと輝き、今にも屋台に駆けだして行きそうに見えたが、サボる発想がないのが面白いところだ。 『……うー、あちこち気になって集中が。だめだめしっかり警備しなくちゃ』 台詞をはめるなら、こんなところだろう。 (真面目なんだけどそういうのをごまかせないのがお嬢ちゃんらしいというか……) 『あ、あれも可愛い……だめだめ!』 兎の形の飴を売る店から目を逸らして、首を横に振る様などつい笑いがこみ上げてしまう。 「どれ、お嬢ちゃん、あの飴を買ってあげよう。警備のご褒美だよ」 誘惑を振り払うのに必死だったシャルローザは、はっと顔を上げる。 「ご褒美ってまた私の事、子供扱いしてますね」 「俺も甘い物が食べたかったし気にするな」 棒付きキャンディを買い求め、シャルローザに差し出す。 「ほら、可愛らしいだろう」 ぴょこぴょことキャンディを動かして見せれば、遠慮していたシャルローザも笑み崩れた。 「この間もぬいぐるみ買ってくださったのに……でも自分も食べたかったって言われたらしかたないですよね」 二人で味わうことにした。 ● 「ちょっと、恥ずかしいんだけど………」 リコリス・ラディアータはウサ耳カチューシャの黒耳をつまみながら、顔を赤らめた。 「リコは黒耳にしたんだな。じゃあ、俺は白耳にするか」 トール・フォルクスは白を選んでウサ耳付きシルクハットをかぶる。 「うさぎ、可愛いよな」 リコリスは物言いたげにトールを見たが、笑顔が返ってきて言うべきことを見失った。 商店街は華やかな賑わいに満ちている。普段とはひと味違う品が並ぶ屋台にリコリスはつい目を奪われてしまった。 「これは指令、指令だから……」 ぶつぶつと己を律しようと呟いては店から視線を引き剥がすことを繰り返していると、トールが横から店員にバニーキャンディを注文した。 「トール!?」 「指令は防犯だけど見て回るくらい許されるだろ」 はい、リコの分、と棒付きキャンディの片方をリコリスに差し出す。 「ぬいぐるみも定番だよな」 トールが言うので、実は気になっていた兎のぬいぐるみの出店も見ることができた。次第に指令の緊張感から解き放たれ、浮き立つ気持ちで祭を巡る。 イースターエッグペイントが出来る屋台が目に留まった。カラフルな卵に興味を惹かれる。 「ねえ、トール、イースターエッグを……いない!?」 誘いかけるため振り向くと、後ろにいるはずのトールの姿が消えていた。 祭はいい機会だとトールは考えていた。先の戦闘からリコリスは大分ピリピリしている。気分転換になれば、と思ったのだ。 うさぬいの屋台を眺めるリコリスの後ろ頭を眺めていると、喧騒が耳についた。 (ん? 騒がしいな、ちょっと見てくるか) トールはリコリスに言い置くのも忘れて駆け出していった。 騒ぎはただの度を過ぎた盛り上がりで、事件性がないのを確認する。良かった、と頷いていると怒声が飛んできた。 「トール!」 「あれ? どうしたリコ、そんなに息切らして」 「どこほっつき歩いてたのよバカ! はぐれたことにも気づかないなんて、ホントにバカバカ!」 相当通りを探し回ったらしいリコリスは怒り心頭で、ばしばしとトールをはたく。 「わ、悪かった! 喧嘩でもあったかと思って思わず飛び出しちまったんだ。ところで気分転換はできたか?」 「……え? 気分転換?」 「ほら、この前の戦闘でかなり気が立ってたから」 そんな心配をされていたとは思わず、リコリスはぽかんと口を開けた。 「どうもありがとうどこかのバカを探すのに必死でそんなことすっかりどうでもよくなったわよ! いいからイースターエッグを描くの!」 「……そうですか」 腕を引っ張られながらトールは、どうでもよくなったなら良かったんだろう、たぶん、と思った。 リコリスは卵にデフォルメの蛇を描き、トールは木の絵をざっくりと描く。 「あなたの新しいイレイス、蛇みたいでちょっとかっこいいと思って」 「リコには森のイメージがあるんだよな」 意図せず、お互いのイメージのイースターエッグが出来上がった。 「もう……置いてっちゃ嫌よ」 小さく呟いたリコリスに、今回は俺が心配かけてしまったな、と反省する。木の図形は成長を意味する。もう心配かけないように、己の成長を祈願することにした。 ● 「リシュテンさん可愛い!」 唐崎・翠はウサ耳カチューシャ姿のパートナーを見て、思わず声をあげた。レガート・リシュテンは同じカチューシャをつけている翠の大仰な反応にひとつまばたきをする。 「あっ、ごめんなさい。つい……いえ! ついじゃないですよね、ええと……」 「いえ、ありがとうございます。似合っているようで安心しました」 こちらが何も言っていない内から、失言だったとおろおろする翠にレガートはくすりと笑った。翠はレガートの言葉にほっとしたようで、今度は自分の頭上のウサ耳をつまむ。 「私は大丈夫でしょうか? 角があるのでなんだか妙な事になっていないか少し不安で……」 「心配する事ないですよ。とても似合ってます」 額から隆起した二対の角とウサ耳、翠の温厚そうな外見のおかげか、愛らしく調和していた。 「そ、そうですか? よかった、浮いていたらどうしようかと」 「角のある兎……なんだか言葉にしてみると強そうですね」 地域によっては生息していそうだな、そんなモンスター、と考えて今度図鑑を調べてみようか、と考える。調べ物は好きなタイプだ。 「強そう……。いいですね、そうありたいものです」 翠は他愛ないレガートの言葉をよく噛みしめるようにして、口元をゆるめた。 (翠さんにとって、強そうって褒め言葉なんだ……) 喜ばれるとは思っていなかったので、そのツボに驚きつつも、心に留める。こうしてパートナーの好むことを新しい記憶として積み上げられることが嬉しい。 たしかに翠は温厚に見られる外見であるが、瞳の奥には勇ましさが潜んでいる。兎もあれで強力な脚力を持っているので、その点でも似合っているのかもしれない。 街に繰り出すと、祭の空気を肌で感じることができる。 「美味しそうな匂い……」 通りは、様々な食べ物の屋台がひしめいていた。 「何か食べながら行きますか?」 「そうですね、食べ歩きにもよさそうですし賛成です」 レガートの提案に翠は微笑みながら頷いた。揚げたてのスコッチエッグを買い求める。かぶりつくと、肉にはしっかり味がついており、卵との相性は抜群だった。 「こういうお祭りならではの食べ物っていいですよね」 確かに、卵料理や兎の形のお菓子、どれも復活祭の限定商品なのだろう。 「普段は見ないようなものが沢山あって楽しいです」 「なるほど……あ、僕はお祭りってあんまり来た事がないんです」 だから祭の醍醐味というものを知らないでいたのだと説明したかったのだが、 「いや、あんまりというか……」 記憶を失うより前は来ていたのかもしれない、と思い当たり、あんまりという言葉は正確ではないな、と言葉に詰まる。 「そうなんですか? じゃあ今日は目一杯お祭りを楽しめるといいですね」 上手く説明できないでいるレガートに翠は首を傾げて言った。その言葉がすとんと胸に落ちる。 「誰かと一緒に回るお祭りは楽しいんですよ」 翠の微笑みに、今が楽しければ過去は別にいいか、と思えた。 ● 復活祭の警備巡回の命を受け、商店街に訪れたレミネ・ビアズリーだったが、指令を前に少々気後れしていた。 「……カチューシャ、恥ずかしいけど、着けないとなのよ、ね?」 「そうだな。気持ちは分かるが、ほら。レミネの分だ」 レミネを気遣う言葉を掛けながら、ティーノ・ジラルディが問題のモノを差し出してくる。それはティーノが付けているモノと同じ……ウサ耳カチューシャだった。 仕事なのだから、つけないという選択肢はない。手渡されたカチューシャを、えいっと頭につける。 「ちょっと待て」 ティーノがレミネのカチューシャの位置を直した。その指先がおでこを掠めて、レミネはどきりとする。 「これでいい」 「あ、ありがとう……あなたは、似合うね……カチューシャ」 下から窺うようにティーノを見た。ティーノのプラチナブロンドには、兎の耳が驚くほど似合っている。 「そうか? ありがとう。レミネも似合うぞ」 「っ……」 不意打ちの肯定に言葉がつかえて出てこない。大した意味もない言葉だと思うのに頬が熱くなる。恥ずかしくて俯いた。 街に出ると、思ったより仮装をした人は沢山いた。ウサ耳をつけた人もそれなりに歩いている。 (……あんまり、周りから見て、不自然にならないように気をつけなきゃ) 復活祭の雰囲気を壊さないように、と事前に言われていたことを思い出し、おかしくはないだろうか、と不安になる。 「レミネ、何かほしいものはないか?」 「えっ……?」 突然、ティーノに尋ねられ、指令のことで頭がいっぱいになっていたレミネは咄嗟に何を言われたのか分からなかった。 「なにかあれば言ってくれ」 ティーノが屋台の並びを視線で示す。そこで初めてレミネはそれぞれの店を認識する。 「……あそこの、バニーキャンディ、とか?」 目に留まったのは兎の形をした棒付きキャンディの店だった。 「わかった。買ってこよう」 レミネの戸惑いがちな返答に頷き、ティーノは直ぐにキャンディを買い求めてくる。 「あり、がとう……」 キャンディを手渡され、レミネはぎこちなくお礼を言った。ただ持っているのもおかしいので、口にふくむ。 「あ、おいしい」 甘酸っぱい苺の味に、ぽろりと声が出た。 「そうか、それなら良かった。指令中だが、楽しまないと損だからな」 どうして、こんなに優しくしてくれるんだろう。 理由が分からないまま湧き出す嬉しさに、緊張が抜ける。少し心の余裕ができ、残りの巡回はふたり楽しむことができた。 ● 「お祭り……楽しそうです……けど、スリが出るのでしたらちゃんと見回らないと、ですね……」 「アリシアは凄く真面目に見回りをしようと思ってるね。でも、これを忘れちゃいけないらしいよ?」 アリシア・ムーンライトにクリストフ・フォンシラーは、人当たりのいい笑顔で用意してきた衣装を手渡す。 「着替えておいで」 はい、と特に何も考えずに受け取り、更衣室で着替える。すべてを身につけ、鏡を見て首をかしげた。 「この格好……あの、クリス……? これって……」 童話の少女のような水色のエプロンドレスだった。兎を追いかけて不思議な国に迷い込んでしまった少女の姿がそのまま鏡に映っている。 「これ、少し、恥ずかしい……のですけど……」 「うん、大丈夫、似合ってるから」 更衣室から出てきて俯いているアリシアの頭に、クリストフが新たにウサ耳カチューシャを装着した。また何かつけられた気配に顔を上げると、燕尾服の兎さんが立っていて、アリシアは目をぱちくりさせる。 「俺は案内役の兎になってみたよ。似合う?」 ウサ耳付きのシルクハットに燕尾服、不思議の国を連想させる衣装を纏ったクリストフが少しおどけてみせた。 「はい、似合ってます……」 男性にウサ耳が似合うとは思っていなかったが、疑いようもなく似合っていた。それがおかしくて、思わず少し頬が緩む。 復活祭一色の街を歩きながら、クリストフはさっきのアリシアの顔を思い出していた。ちょっとだけ口元をほころばせて笑った顔……もっと笑った顔が見たいな、と思案する。 「何か食べる?」 美味しいものを食べて機嫌を悪くする生き物はいない。シンプルな理論で誘いかけると、アリシアは屋台の並びを長閑に眺める。 「そうですね、せっかくなので……スコッチエッグを食べてみたいです……」 リクエスト通りにスコッチエッグを二つ購入し、ひとつをアリシアに手渡した。揚げたてのスコッチエッグを食べつつ、巡回を再開する。 アリシアの横顔を窺うと、幸せオーラが漂っていてクリストフは思わず笑ってしまった。そんなに表情が変わってる訳でもないのに、逆に器用に思える。 「何だか、クリス笑ってます……?」 「あんまり幸せそうに食べるものだから」 くすくすと笑いながら答えるクリストフに、アリシアは恥ずかしそうに自分の頬に手を当てる。 「そんなに幸せそう、でした……? 私……?」 「そんな幸せそうに食べてくれたら買った甲斐があったよ」 笑顔にするつもりが笑顔にされてしまったが、よりいいものを見られた。次は何をしてあげようか、と案内役の白兎は笑むのだった。 ● 「「実に復活!」」 碧希・生田と朱輝・神南が復活祭の挨拶を交わし合って、貸衣装屋の店先で落ち合う。ウサ耳だけは教団から支給されるが、碧希が折角だから衣装も! 朱輝に頼み込んだのだ。 「いやー朱輝、衣装似合ってるよ~」 「そうかしら?」 ウサ耳カチューシャの朱輝は、エプロンドレスの裾を摘まんで、やっぱりちょっと浮かれすぎじゃない? と首を傾げる。赤基調のドレスは朱輝の髪色によく似合っていた。 「まあ偶には浮かれてもいいんじゃない? ほら、こういうの楽しんだもの勝ちみたいなとこあるしさ」 碧希の衣装は、ウサ耳シルクハットに青基調の燕尾服だ。赤と青、ふたりはそういう対だった。 「そうね、こんな機会でもないと着ないもんね。碧希君は何だか新鮮。普段ラフな格好が多いから……」 朱輝は納得し、あらためて碧希の姿を見る。碧希は動きやすそうな格好をしている印象が強いので、とても目新しく感じる。この非日常感こそが祭に相応しいとも言えた。 「あっちでペイントやってるよ!」 街を歩き始めて真っ先に碧希の目に留まったのは、イースターエッグのペイントをやらせる店だった。 「……ペイント?」 やりたがる碧希に、朱輝は微妙な表情になる。以前、絵画教室で碧希の手によって生み出された魔物が想起されたのだ。 「碧希君、画力が壊め……こほん、独特のセンスよね……いや今回は簡単な図形だしいける……?」 「……?」 ぼそぼそと何か言っている朱輝に首傾げながら、碧希は店主から卵と絵筆を受け取る。 「さて、何描こうかしら」 図形の意味の説明が書かれた板をふたりで眺めた。 「と言うか動物モチーフって哺乳類はないのね……」 可愛い兎だとかは候補になく、動物と呼べそうなのはカエルと蛇だけだった。蛇を選んで、にょろりと描く。 「あー全部描きたいなあ、でもスペースがなー」 碧希はう~ん、と唸った。もともと細々した作業に向いている気質ではない。 「こうしよう!」 太陽と星で卵をピカピカに埋め尽くす。太陽も星も成長を意味する図形だ。 「ベリアルや使徒に困ってる人は沢山いるし、俺達も日々強くならないとな」 「そうね、私達まだ大きな実践経験はないけど、いざその時が来ても戦えるようにならなきゃね」 「朱輝とならやれる気がする!」 にかっと太陽のように笑いかけられて、朱輝の胸には不安の影が落ちた。 「……でもね、私はそれでも、碧希君は無事でいてほしいって、そう思うのよ」 大きな戦いに身を投じることになったとき、誰よりも無事でいて欲しいと願っている。 「ん、大丈夫……俺は、ここにいる」 安心させるように碧希が朱輝の手をぎゅっと握った。 「さて、飾りに行こう!」 「はいはい、行きましょうか」 ● 「ふ、ふふ。実に復活! あぁ、今日は千亞さんとお揃いです……! 素晴らしい……!」 明智・珠樹はウサ耳付きシルクハットをかぶり、高らかに喜びを謳う。街は復活祭の飾りつけが施され、兎の耳をつけた通行人も少なくはない。 「あちらも兎、こちらも兎、これは実質、千亞さん祭のようなものなのでは……?」 ハァハァと興奮に息を荒げる明智を白兎・千亞は冷たい目で見る。千亞の耳は自前の天然逸品物だ。 「さぁ千亞さん、祭りを楽しみましょう……!!」 「何興奮してるんだド変態。本来の目的は警備だからな、忘れるなよ」 振り向きざまにバッと両手を広げた明智をバッサリと切り捨て、千亞はさっさと歩き出した。 色鮮やかなイースターエッグ、可愛い兎のぬいぐるみ、賑やかな祭の非日常に千亞の目はすぐに奪われた。指令を忘れるな、と明智には言ったが、司令部に飲食禁止とは言われていない。 兎の形をした棒付きキャンディが可愛くて、心惹かれる。 「キャンディひとつお願いします」 「私の分は頼んで下さらない千亞さん……放置プレイ、嫌いじゃありませんよ」 「……キャンディふたつ」 プレイに巻き込まれて堪るか、と注文を追加した。一本を手渡し、自分の分を舐めながら巡回を再開する。 「あぁ、バニーキャンディを舐める千亞さん……」 横から熱い視線が突き刺さってきて集中できない。 「私も舐められた……」 「黙れド変態! 大人しく自分の飴を舐めてろ!」 熱い吐息までかかってきたので、得意の蹴りを見舞ってやった。 「イースター万ッ歳……!」 大人しく飴を咥えて横を歩いている明智に視線をやる。 (兎耳をつけた珠樹を見ると……やっぱり兄さんのこと思い出しちゃうな) 明智の顔は、行方不明になった千亞の兄とよく似ていた。契約のとき、兄が帰ってきたのかと錯覚を起こしたくらいだ。 それが今日は兎の耳をつけている。仕立てのいい豪奢な服は普段の通りだが――兎のライカンスロープである、貴族の男に見えてしまう。まるっきり千亞の兄と同じ肩書に。 不安を掻き立てられるのに、つい横顔に見入ってしまう。 明智の視線が流れる。 目が合い、千亞はどきり、と身を竦めた。 「ご安心ください、千亞さん。沢山の兎さんがいますが……千亞さんの天然兎さんはやはり別格です、愛らしいです、ふふ……!」 「な、何言ってるんだ馬鹿! 僕はいいから周りの様子を確認しろ!」 どきりとしてしまったのを誤魔化すのと、単純に恥ずかしいことを言われて照れたのとで真っ赤になった千亞の、いつもより強めの飛び蹴りが炸裂する。 「あぁ、素晴らしい兎さん的跳躍力…!」 恍惚と身悶える明智の姿に、やっぱり似てない、と千亞は気を持ち直す。 こうして不安を秘密裏に取り除いてしまう明智の手腕を、千亞は知らないでいるのだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[9] 唐崎・翠 2018/05/24-22:20
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[8] エリィ・ブロッサム 2018/05/24-22:13
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[7] クリストフ・フォンシラー 2018/05/24-21:36
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[6] トール・フォルクス 2018/05/24-20:36
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[5] 明智・珠樹 2018/05/24-20:28
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[4] 朱輝・神南 2018/05/24-13:17
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[3] シャルローザ・マリアージュ 2018/05/24-06:04
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[2] 明智・珠樹 2018/05/24-00:03
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