~ プロローグ ~ |
彼らは、追い詰められた者の眼をしていた。 |
~ 解説 ~ |
○状況説明 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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1 幻惑ベースはラニ ミドリガメの幽霊て…まぁ調査は調査よね! 廃村、とりあえず広場へ向けて廃家を調査 広場へ向かう途中で幻惑を見る 冗談よね、どうして 幻覚はかつての幼馴染の少女 微笑んでいるが首にはナイフが刺さっていて止めどなく血が流れ 彼女を見たラスもまた、頭痛に蹲り こんなの幻影!うそっぱち!ほら、早く起きなさいラス! 「嘘つきはアナタじゃないの、ラニちゃん」 「どうして嘘ついたの? 私は殺されてなんかないのに 私は自分で死んだのよ ねぇ、うそつきのラニちゃん」 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい 嘘ついてごめんなさい 全部あたしのわがままです 一人で生きたくなかったあたしのわがままです ……ラス?何を…!? |
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アーティ:くだらないの一言に尽きる。幽霊なんてものは罪悪感による幻影かなんかだろ。 兎にも角にも何らかの原因を探るしかないな。 行くか、ツィギィ。 ツィギィ:幽霊とは襲うものなのですか? メモ帳には書いてないものですから、知らなくて。 …え、普通は襲わないですか。メモせねば。 行動:廃村では、住宅側から調査の予定。 物音があれば、音のする方に向かっていく。 仲間以外の存在に遭遇した場合、敵意を見せない為に武器を下ろし、手を上げる。 敵意を見せてきたらアライブスキルで対抗し、大きな音を立てて仲間に知らせる。 |
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2 ベ 空気が重いな ヨ 何でしょうこの胸騒ぎ… 急いだほうが良さそうですね 心臓を掴まれたような恐怖を感じ取りながら広場へ あなた方は…どうしてここに? 私達はこの場所の異変の調査に来ました ここは この空間では一体何が起こっているんです 一瞬直接の関与を疑うが以前#94の事から即座に打ち消す あなた方は強い力をお持ちのようですが教団関係者ではないのですか? 終焉の夜明け団の仲間には見えませんし 何より私達に協力してくださいました ここに来た目的を話して貰う事は出来ませんか 敵とは思わないが曖昧な部分もあるので反応を見る(心理学スキル そも教団の把握していない魔女が単独行動をしているのが珍しい それとも教団or国の隠密? |
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1罪悪感 故郷がベリアルに襲われた時、俺は終焉の夜明け団…あの女に攫われていてそこにはいなかった あの時俺がいたからって故郷が助かるわけでもない だけど結果として俺は何もできずに一人だけ生き残った 奇妙な世界 直接見たわけじゃないけど、襲われる故郷の再現だろうか? でも今なら戦う力がある、皆を助けられるかもしれない 自分の家のあった方に向かって駆け出し リント、行くぞ!…え? 立ち塞がる、見覚えのある女… 「あなたは故郷を助けられない」 冷たく言われ足が竦む リントに言われたことを反芻し泣きたくなる そうだ…これは過去だ 俺はこんな所で立ち止まるわけにはいかない! 叫んで剣を一閃 元に戻ったのか? 今回はリントに助けられたな… |
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1 なぜか感じる怖い雰囲気に肩を震わせ 何かしら 胸がどきどきする 見上げた先に 蒼白になった彼の顔 …シリウス? 現れた沢山の人影と 彼らの言葉に目を見開く お前さえいなければ 誰も死なずにすんだのに 喰人であるお前のせいで 虚ろな視線は皆 一声もあげないシリウスに 凍りついたように 呼吸さえも止めたシリウスの手をぎゅっと握って 違うわ!あなたのせいじゃない ねえシリウス わたしを見て 声に出せず 両親を呼ぶ彼の頬を挟んで ーお父さんやお母さんが あなたのせいと言ったの? 泣きそうな笑顔で 彼の頭を抱き寄せ シリウスのせいじゃない 絶対よ だからお願い そんな顔しないで 震える体を抱きしめる 元の世界 夜明け団の二人が倒れていれば慌てて手当て |
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~ リザルトノベル ~ |
○偽りの地獄へ とある廃村の異常を探る調査指令。 浄化師達は目的地に向け進んでいた。 「ミドリガメの幽霊て……」 目的地に進みながら、『ラニ・シェルロワ』は呆れたように呟いた。 それに返すのは、パートナーである『ラス・シェルレイ』。 「気持ちは分かるけど、仕事だし。気は抜かずに行こう」 これにラニは、気持ちを切り替えるように返す。 「まぁ、調査は調査よね! 気は抜かずにやっちゃいましょ!」 目的地まで距離がある中、この時点の浄化師達は不穏なものを感じていなかった。 道中、指令内容について話す余裕もあった。 「くだらないの一言に尽きる」 パートナーである『ツィギィ・クラーク』に寄り添うように歩きながら、『アーティ・ランドルフ』は指令内容について意見を口にする。 「幽霊なんてものは罪悪感による幻影かなんかだろ」 「幻影ですか」 アーティの言葉に、ツィギィは手にしたメモ帳をめくり尋ねる。 「幽霊は、実在しないのですか? メモには、死者の魂と書いてあるのですが」 これにアーティは、少し考え込むような間を空けて返す。 「そういうのも居るかもな。でも大半は、思い込みの幻だ」 「そうなのですか? なら、本物と偽者があるんですね。どうやって見分ければ?」 「見分けるのなんて簡単だ。実際に襲い掛かって来るのが本物の幽霊。そうじゃなけりゃ、幻影だ」 「幽霊とは襲うものなのですか?」 ツィギィは、静かに驚いたように聞き返す。 「メモ帳には書いてないものですから、知らなくて」 そう言ってメモに書こうとするツィギィに、アーティは言った。 「普通は襲わない」 「……え、普通は襲わないですか。メモせねば」 自分の言うことを疑う事もなくメモを続けるツィギィに、アーティは自覚できない罪悪感を抱きながら歩を進めた。 そして浄化師達は進む。 進むほど、明らかに空気が変わっていった。 「なんだか、嫌な気配だね」 歩みを止めることなく、『リントヴルム・ガラクシア』は不穏な予感を口にする。 その口調は、あえて軽く。 だから彼の言葉に返した『ベルロック・シックザール』の声も、いつもと変わらぬ平穏を意識していた。 「なにかが、あるのかもな。でも、それならそれで解決するだけだ」 やる気をみせるベルロックに、リントヴルムは楽しげに目を細めた。 不穏なものを感じながらも、速度を落とすことなく浄化師達は進む。 そして廃村近くに辿り着くと、不穏さは危機感となってまとわりついてきた。 「空気が重いな」 「何でしょうこの胸騒ぎ……急いだほうが良さそうです」 廃村の入り口に辿り着き、『ヨナ・ミューエ』と『ベルトルド・レーヴェ』は、さらに重くなった気配に焦燥感を抱く。 そして廃村の中に入り。 浄化師の中には、明らかな変調を見せ始める者も。 村に入ると同時に感じる怖い雰囲気に肩を震わせる『リチェルカーレ・リモージュ』。 (何かしら、胸がどきどきする) 予感めいた感覚に、パートナーである『シリウス・セイアッド』の顔を見上げる。 「……シリウス?」 見上げた先にあるのは、蒼白になったシリウスの顔。 不安になったリチェルカーレが、さらに声を掛けようとした瞬間。 2人は消え失せた。 2人だけでない。 ラニとラス。リントヴルムとベルロックも消え失せる。 「これは、一体?」 ツィギィは驚きと好奇心に声を上げる。 だが、彼の疑問に答えられる者は、この場にはいない。 「何が起こったのか分からないが、兎にも角にも何らかの原因を探るしかないな。行くか、ツィギィ」 アーティはツィギィと共に、住宅側から調査を。 ヨナとベルトルドも、原因究明のため探索を。 そうして探る中、この場から消えた浄化師達は、奇妙な世界に囚われていた。 ○偽りの罪、真実の約束 「冗談よね、どうして」 微笑みを浮かべる彼女に、ラニは声を震わせた。 もはや記憶の中にしかいない筈の彼女が、目の前に居る。 周囲には、血の臭いが。 その源は、微笑みを浮かべる彼女。 首にナイフが刺さった彼女は、微笑みながら近づいてくる。 (うそ……こんなの、幻よ) 懸命に目の前の彼女を否定しながら、ラニは近付いてくる彼女から視線を逸らせない。 1歩、2歩。 ゆっくりと、確実に、 彼女は近付いて来るというのに、ラニは1歩も動けない。 だから出来ることは、声を上げることだけ。 傍に居るラスに、必死になって呼び掛ける。 「こんなの幻影! うそっぱち! ほら、早く起きなさいラス!」 けれど応えは返ってこない。 ラスは、死んだ筈の彼女を見た瞬間、頭痛に苛まれ蹲っていた。 助けは無い。 それでもラニは、ラスに呼び掛けを続けようとする。 だが―― 「嘘つきはアナタじゃないの、ラニちゃん」 死者の言葉が、ラニの心に突き刺さる。 「どうして嘘ついたの? 私は殺されてなんかないのに。 私は自分で死んだのよ。 ねぇ、うそつきのラニちゃん」 それはラニが囚われた罪。 自分自身の記憶に蓋をして、隠し続けた虚言の罪。 耐えることは、ラニには出来なかった。 「……ごめんなさい」 ひとたび溢れ出せば、罪の意識は止まらなかった。 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。 嘘ついてごめんなさい。 全部あたしのわがままです。 一人で生きたくなかったあたしのわがままです」 涙を流すことすら出来ず、罪の告白は、ラニを苛み続ける。 ラニ独りならば、そのまま意識が刈り取られるまで、告白は続いただろう。 だが彼女は独りじゃない。 「違う!」 頭痛に苛まれながら、ラスが立ち上がる。 武器を掴み、目指すは偽りの死者。 (やっと、おもいだした) 頭痛の痛みに思考は乱されながら、けれど思い出した『約束』は鮮烈に、ラスを突き動かす。 『いきなさい、生きなさい』 それは彼女の命が尽きる中、彼女がくれた『約束』。 『こんなことしかできなくてごめんね。 どうか、ラニちゃんをお願いね。 貴方達を、ずっとずっと愛してる』 偽りの死者に踏み込み、真実の約束を胸に抱き、ラスは怒槌を発動。 まさしく怒れる鉄槌の如く、偽りの死者を吹き飛ばした。 「……ラス? 何を……!?」 ラスの行動に困惑するラニ。 そんな彼女の頭をラスは小突く。 ラニに、自分のことを振り向かせるように。 驚くラニに、ラスは視線を重ね言った。 「シィラは最後に言ったんだ、生きろって」 それは真実の言葉。 けれど罪に囚われるラニは否定しようとする。 「嘘……そんなこと――」 自分を責めようとするラニに、ラスは言葉を重ねる。 「お前、こんなもん抱えて辛かっただろ」 ラスの言葉に、ラニは涙が溢れそうになる。 けれど自分を許せないラニは、自分を責める言葉を口にしようとする。 「辛く、なんて……ラスの方が、もっと辛かった筈なのに……。 あたしじゃなくて、シィラが生きていてくれたら……。 だってラスは、シィラのことが好きだったから――」 「馬鹿野郎!」 ラニに、それ以上言わせることなく、ラスは言い切った。 「シィラのことは好きだったさ! 死んだ時は辛かったさ! でもだからって、お前を置いていくわけあるか! ……いい加減分かれ! 今のオレにとって、一番大切で手放したくないのはお前だけだ!!」 手を繋ぐ。 重ねた手に力を込めて。 今ここに居るのだと。共に居たいのだと、伝えるように。 全ての言葉も行動も、ラスの真実。 だからこそ、ラニが囚われた偽りの地獄を吹き飛ばす。 2人は、元の世界に帰還した。 「行くぞ。ラニ」 「……うん」 繋いだ手に、2人は力を込めて。 ラスはラニを守るのだというように。 2人は確かな繋がりを感じながら、仲間の元に走り出した。 ○選ぶは、未来への前進 奇妙な世界に囚われたベルロックは、その時点では平静だった。 「ここは……」 べリアルに蹂躙される燃える村。 それを前にして、ベルロックには奇妙な確信があった。 (直接見たわけじゃないけど、襲われる故郷の再現だろうか?) あり得ぬはずの現状を、ベルロックは異様だと思うことが出来ない。 それよりも強く心に去来するのは、後悔の念。 (故郷がベリアルに襲われた時、俺は終焉の夜明け団……あの女に攫われていてそこにはいなかった。 あの時、俺がいたからって故郷が助かるわけでもない。 だけど結果として、俺は何もできずに一人だけ生き残った) それは罪ならざる悔恨。 されどベルロックにとっては、逃れられぬ罪の意識。 罪悪感に囚われるベルロックの傍らにいるリントヴルムは、そんな彼を冷静に見つめていた。 (燃える村……? ベリアルもたくさん) 目の前の光景を、リントヴルムは推測する。 (見覚えがないから、多分ベル君の記憶の中か心象風景かも。 だとすると……ここを抜け出すには村を助けるのが正解、かな?) 罪悪感に囚われていないリントヴルムは、目の前の異変を見ても、熱に浮かされることはない。 何をどうすれば最善に繋がるのか? それを静かに考えていた。 けれどベルロックは違う。 罪を灌ぐ時が来たと、たぎる熱に急かされる。 (今なら戦う力がある、皆を助けられるかもしれない) 目指す場所は、失った自分の家。 過去を変えようと、ベルロックは駈け出す。 「リント、行くぞ!」 けれど、その意志は殺される。 突如現れた、歪な過去の再現に。 「……え?」 立ち塞がる、見覚えのある彼女。 「あなたは故郷を助けられない」 冷たい声に、ベルロックは一歩も動けなくなった。 彼女が誰なのか? それはリントヴルムにも分かった。 (手の甲に十字架を埋めた女の姿……マリーだ!) 姿形は間違いない。 だが決定的な差異が、リントヴルムを冷静にする。 記憶の中の優しい笑顔とは違う、冷たく歪んだ笑み。 マリーならざるマリーと、ベルロックを見比べ、一瞬だけ迷う。 (ここにはマリーがいる、もしここに残ればずっと彼女と……) けれど即座に否定する。 (……ダメだな、あのマリーはベル君の妄想みたいなものだし。 仕方ない、今回は僕が見たことのない彼女の表情を見せてくれたことに免じて助けてあげよう) ベルロックの傍に立ち、告げる。 「キミのせいじゃない、そしてキミが救うべき人はここにはいない」 その言葉が、ベルロックを解き放つ。 (そうだ……これは過去だ) リントヴルムの言葉を反芻しながら、泣き出しそうになる自分を抑え、ベルロックは前進する。 「俺はこんな所で立ち止まるわけにはいかない!」 叫んで剣を一閃。 それが奇妙な世界からの解放に繋がる。 2人は、元の世界に戻ることが出来た。 「元に戻ったのか?」 現状を確認しながら、ベルロックは思う。 (今回はリントに助けられたな……) そしてリントヴルムも、ひとつの思いを抱く。 (本当の正解は、村じゃなくベル君の心を救うことだった……のかな?) それぞれの思いを胸に、2人は廃村の探索に戻った。 ○彼女の福音 「……シリウス?」 蒼白になったシリウスの顔を見上げながら、リチェルカーレが呼び掛けると同時に、2人は奇妙な世界に囚われた。 「お前さえいなければ」 唐突に聞こえてきた、怨嗟の声。 その声にリチェルカーレは視線を向け、現れた沢山の人影と彼らの言葉に目を見開く。 「お前だ。お前さえいなければ」 「誰も死なずにすんだのに」 「喰人であるお前のせいで」 現れた沢山の人影は、呪うように口を開く。 それが誰なのか、シリウスは分かっていた。 (ああ……やはりここは……故郷だ) 廃村に入ってすぐ、感じていた違和感がなんであるのか、シリウスは気付く。 あの建物も、この通りも広場もすべて、失ってしまった自分の故郷。 失った故郷で、赤く染まった大切なひと達だったものが手を伸ばす。 怨嗟の声は止まることなく、その中に両親の姿を見つけ動けなくなる。 (……父さん、母さん) 意識が遠のく。 やはり両親も、自分のことを恨んでいるのかと、罪悪感に潰されるように意識を刈り取られようとしていた。 けれど、彼女の声が救いとなった。 「違うわ! あなたのせいじゃない」 虚ろな視線を向ける人々から守るように、リチェルカーレはシリウスの前に立つ。 凍りついたように、呼吸さえも止めたシリウスの手をぎゅっと握って、必死に呼び掛ける。 「ねえシリウス、わたしを見て」 その声は優しく、冷たく凍える魂を包み込むように。 リチェルカーレはシリウスの頬を両手で挟みながら、声に出せず両親を呼ぶシリウスに呼び掛ける。 「――お父さんやお母さんが、あなたのせいと言ったの?」 泣きそうな笑顔で、彼の頭を抱き寄せ、リチェルカーレは断言した。 「シリウスのせいじゃない、絶対よ」 それはシリウスのことを知る、リチェルカーレだったからこそ。 これまで重ねてきた、共に過ごしてきた日々が、言葉になる。 「だからお願い。そんな顔しないで」 震えるシリウスを抱きしめながら、祈るようにリチェルカーレは言った。 それが、罪悪感に囚われるシリウスの福音になる。 触れるぬくもりと春色の双眸に瞬きながら、シリウスは思う。 (――だけど……) それは失った人々を愛していたからこそ。 愛していたからこそ、彼の罪悪感は、全ての色を無くし意識がなくなるほど、自分を否定する。けれど―― 『あなたのせいじゃない』 魔法のような柔らかな声に、視界に色が戻る。 だからこそ、気付くことが出来る。 至近距離にある、泣きそうな笑顔。 懸命にシリウスを救おうとする、リチェルカーレの眼差しに。 (――泣かないでくれ) 言葉にすることはできず、代わりに自らを奮い立たせる。 歯を食いしばり、リチェルカーレの細い身体を抱きしめる。 僅かに得たぬくもりを頼りに、シリウスは自らを取り戻した。 その途端、元の世界に戻る。 ゆっくりとリチェルカーレの身体を離すと、心配げな彼女に、掠れる声で応えた。 「大丈夫」 か細く、安心させるように言うと、リチェルカーレの前に立つ。 何物からもリチェルカーレを守るという決意を抱きながら、シリウスは彼女と共に探索に戻った。 ○求るは罪なるや? 住宅側から調査をしていた2人の内、最初に気付いたのはアーティだった。 「そこに居るのは誰だ?」 人の気配がする。 同時に、じゃらりという物音も、聞こえてきた。 「俺達は浄化師だ。この場所で起っている異変を調べに来た。危害を加えるつもりはない」 最初に決めていた通り、武器を下げ敵意がないことを示す。 アーティの隣では、ツィギィがメモ帳で確認してから、同じように武器を降ろす。 何かあれば、即座に対応できる準備をしながら、気配の元に近付いた。 そして出遭う。 心の底でわだかまる、罪悪感から創り出された存在に。 「……誰だ、お前」 聞くまでもない。見れば分かる。 けれどそれは、受け入れがたい存在だった。 「気付いているだろ?」 笑みを浮かべながら、それは――アーティの姿をした何かは言った。 「俺は、お前だよ」 ツィギィを背中から抱きしめながら、そいつは言った。 「羨ましいか?」 拘束するように、あるいは束縛するように。 鎖でツィギィを動けなくしながら、そいつは言い続ける。 「俺のものだ。俺だけのものだ。俺だけを求めてくれれば良い」 そいつの言葉に、鎖に縛られたツィギィは、受け入れるように微笑んでいる。 微笑むツィギィに、そいつは言った。 「俺だけで、十分だろ? 家族も故郷も、お前自身だって、他には要らない。そうだろ?」 その問い掛けに、微笑むツィギィは、肯定の言葉を口にしようとした――寸前に。 「黙れ!」 アーティは叫ぶようにして、止める。 怒りと羞恥に、血が湧き立つ。 自らの願望。自らの罪悪感。 それを醜悪に現したそれに、嫌悪感を抱く。 そんなアーティのすぐ傍で、本物のツィギィが問い掛けた。 「アーティ、あれが幽霊なのですか?」 普段と変わらぬ、ツィギィの声と表情。 それが乱されかけたアーティの心を、正してくれた。 「お前達は偽者だ」 武器を手に、アーティは偽者の2人に近付く。 「偽物が、勝手に罪を騙るな」 一気に振り降ろす。 その一撃に、まさしく幻の如く、偽者の2人は消え失せた。 「幽霊は、殴れば消えるのですね」 メモに書きながら、ツィギィは忘れまいとするように呟く。 そんな彼に苦笑しながら。 「行こう、ツィギィ」 いつの間にか奇妙な世界に囚われていたアーティは、元に世界に戻り、探索に戻った。 ○不測の事態 心臓を掴まれたような恐怖を感じ取りながら、異変の中心に辿り着いたヨナ達が見つけたのは、以前に出会った2人組だった。 「あなた方は……どうしてここに?」 ヨナは一瞬、2人の関与を疑うも、即座に否定。 (以前に見た時は、異変を治めようとしていました。今回も?) 少しでも真実を探るべく、ヨナは尋ねる。 「あなた方は……どうしてここに? 私達はこの場所の異変の調査に来ました。ここは、この空間では一体何が起こっているんです」 そして視線は、広場の中央で浮いている右腕に。 (一帯の異変を引き起こしているのが、この腕ならば、これをどうにかすれば……魔術によるもの? 魔法? なぜ腕だけ? 男? 女? 他の部分は?) 応えが返ってこない中、ヨナは呼び掛けを続ける。 「あなた方は強い力をお持ちのようですが教団関係者ではないのですか? 終焉の夜明け団の仲間には見えませんし、何より私達に協力してくださいました。ここに来た目的を話して貰う事は出来ませんか?」 身につけた心理学の技術も応用し、質問しながらメフィスト達の様子を探る。 仮面の男は、つけている仮面のせいで読めないが、メフィストの方は、何を話すべきか悩んでいるように見えた。 「あなた方は、何者なのですか? 教団や国の隠密のようなことをしているのではありませんか?」 応えを返さないメフィスト達に、ヨナは問い掛けを続ける。 するとメフィストは、ヨナではなくベルトルドの足元の2人に視線を向け口を開いた。 それは気絶した終焉の夜明け団。 「その2人、どうしたのですか?」 これにベルトルドが返す。 「情報も色々持っているだろうし このまま連れて帰ろうかと思ってな」 「教団に連れて行けば、殺されるだけですよー」 ベルトルドは少し迷うような間を空けて返した。 「殺すばかりではな。一番良いのは、味方にすることだろう。見た限り捨て駒にされているようだし、取引や懐柔で協力関係に出来れば」 「お~う、そういうことも考えられるのですねー」 ベルトルドの応えに、メフィストは興味を示す。 「そういう柔軟性は良いですよ~。そういう考えも出来るなら、仲良く出来そうでーす」 「なら、全てを話してくれますか?」 ヨナの問い掛けに、メフィストは言葉を選びながら返す。 「話したい所ですがー、下手なことを話すと、ゲームが終っちゃうのでーす」 「……ゲーム?」 訝しむヨナに、メフィストは続ける。 「アレにとっては、そうでーす。プレイヤーは全生物。負ければ、絶滅でーす。それが、アレとアレイスターが交わした契約ですからー」 唐突に出てきた『アレイスター』という言葉に、ヨナ達は混乱する。 (一体、どういうことなんですか?) 疑問は次から次に湧き、その最中、ヨナは広場に浮かぶ右腕に視線を向ける。 (悪いものなら、破壊するべきなのでは?) そう考えながら、魔力探知を強化するウィッチ・コンタクトも使い解析をしようとした。 それが不測の事態を起こす。 ただの魔力探知であれば見ることなど叶わなかった本質の一端を見てしまう。 それは、あまりにも巨大な存在だった。 そしてヨナの『視る』という行為に反応し、それもヨナを『視る』。 例えるなら、星の如き巨大な目玉に凝視されるような、圧倒的な視線にヨナは曝された。 「っ!」 悲鳴を上げることすら出来ず、ヨナは反射的に攻撃をしてしまう。 「拙いっ!」 メフィストが本気で焦った声を上げる中、膨大な魔力が右腕から溢れ。 その魔力を受けたヨナとベルトルドは、アウェイクニング・ベリアルを発症した。 「因果応法が発動したか!」 メフィストは舌打ちするように言うと、仮面の男を魔法で強化。 「2人を抑えてください!」 「長くは持たんぞ!」 瞳を黒化させ、全身に魔方陣を浮かび上がらせ、尋常ならざる力を振るうヨナとベルトルドを、辛うじて抑える仮面の男。 その猶予に、メフィストは宙に浮かぶ右腕に接近。 接近と同時に魔法で光剣を作り出し、自らの右腕を切断。 傷口に、宙に浮かぶ右腕を繋げた。 同時に、黒炎を召還する。 「獄炎よ、悪因を焼き払え」 メフィストの命に従い、繋げた右腕から発生した黒炎がヨナとベルトルドを包み。 アウェイクニング・ベリアルを起こした2人を浄化した。 元に戻った反動で、ぐったりとする2人。 その2人を残し、逃走するメフィスト達。 「腕は拾って下さーい。あとで付け替えまーす」 メフィストは仮面の男に言うと、付け替えた右腕で指を鳴らす。 途端、子犬になる終焉の夜明け団の2人。 それを捕まえて、メフィスト達は一目散に逃げ出そうとする。 そこに天からの声が響いた。 はははははっ! それは傲慢にして全てをひれ伏させる声だった。 随分と慌ててるじゃないか、アンリ。 これにメフィストは返す。 「覗いてましたか、ネームレス・ワン」 そりゃね。お蔭で面白い物が見れたよ。お前が慌てる姿なんて、そうそう見られるもんじゃない。 「相変わらず性格の悪い」 お互い様だろ。それより、その繋げた腕だけど―― 「分かってまーす! 後で切り離して、魔導書にでもしまーす!」 ああ、それなら良いよ。繋げたままだと、お前ひとりで全てを解決しかねない。それじゃ、ゲームバランスが取れないだろ? 「心配しなくても、アナタのゲームを壊す気はありませーん!」 ならいいよ。それなら、僕もアレイスターと交わした約束を守るまでさ。まぁ、キミもせいぜい頑張って、アンリ。 「今はメフィストでーす!」 はいはい。人間は大変だね。アンリ・マンユ。 「元凶に言われたくないでーす!」 天から聞こえてくる声に返しながら、逃げ出すメフィスト達。 後には、合流した浄化師達が集まったが、周囲を調べても何も残っていなかった。 そうして廃村の調査を完了する浄化師達だった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[5] アーティ・ランドルフ 2019/07/12-17:09
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[4] ベルロック・シックザール 2019/07/12-13:38
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/07/10-22:21
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[2] ヨナ・ミューエ 2019/07/10-21:03
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