~ プロローグ ~ |
東方島国ニホンは、東西に細長い国だ。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【浴衣】 白地に青の芍薬柄。濃紺色の帯。青色の鼻緒の白木の下駄 【行動】 参道) 最近少しはルイとの距離が近づいた気はするけどまだルイが分からない。一緒に祭りをまわったら少しはルイの事分かるかな。 屋台にも我が今まで見た事がないような色んな物が売ってる。 「簪?これは髪に挿す物?」 (綺麗な髪飾り。) 蝶の簪に釘付けになっていたらルイが蝶の簪を買って簪をアップにした髪に挿してくれた。 (お面とやらも面白そう。) 次に目に付いたのは狐のお面。 「簪のお礼だから。」 そう言って強引に押し付ける。 境内) 短冊に書いた願い事は 『ルイとの距離がもっと近づきますように』 「ルイの願い事は何?」 ルイの願い事が気になったので聞いてみる。 |
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目的 七夕祭りを楽しむ。 〇浴衣 シルシィは金魚の柄に水色の帯。 マリオスは格子柄に青の帯。 着方は分からないので、それぞれで教えてもらう。 〇短冊 シルシィは「浄化師としてもっと強くなれますように」 それから、短冊に書く内容とはちょっと違うかもだけど「マリオス、いつもありがとう」 マリオスは「家族が無事に過ごせますように」 〇行動 提灯を貰って、のんびり周りを眺めつつ歩いて、先に短冊を書きに行く。 それから、参道に戻ってお買い物とかのつもり。 シルシィはリンゴ飴「…これ、何?」 マリオスは組紐のリボン?を買って、シルシィにプレゼント。 疲れたら、お茶屋さんで休憩。抹茶と和菓子を頂く。 |
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青や紫の朝顔柄の浴衣 髪は編んで頭の周りに巻いて 政府の力があまり届いていないと聞いたのに トウホクの人も妖怪さんも強いのね 見習わなくちゃ 現地の人とお喋り 海を越えてきました ええ、浄化師なんです すてきなお祭りですね 何かお困りなことはありませんか?等々 黙って歩くシリウスは 退屈ではないかしら? 振り返った先 どこか柔らかい眼差しにどきり 少し引きずった足を指摘され 困ったように笑う 大丈夫、たいしたことないから 背中を向けられて真っ赤 いい!大丈夫 わたし結構重いんだもの 重くない と強く促されおずおずと彼の背に 大きな背中と体温が恥ずかしくて無言 黙って見上げた空に 綺麗な天の川を見つけ思わず歓声 見て シリウス! とても綺麗 |
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■浴衣:紺地に朝顔模様のオーソドックスなもの 髪はアップにした方がいいと聞いたのでアップに 以前、巫女服を着た事がありましたけれど、それとも違って不思議な着心地、ですね なんだか懐かしさを感じるのは、気のせい、でしょうか 似合い、ますか…?ありがとう…その、クリスも、素敵、です(真っ赤 そう言えばニホンの方は黒髪の方が多い、です 私のご先祖様…ニホンの方だったのかもですね… (差し出された手にそっと手を重ね そ、その…行きましょう… 屋台って食べ物屋さんばかりではないんです、ね ここの簪達…とても綺麗です… クリスの瞳と同じ色の簪… そ、それじゃ 薄紫のトンボ玉付きの根付けを買って渡し その、私の瞳の色の…(ふんわり笑う |
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ニホン出身ですが、トウホクは行ったことがないので、 和樹はあからさまに、令花は表情に出さずに、両者同様に楽しみにしています。 |
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ヨナ 白地に鮮やかな紅桔梗と霞の柄の浴衣に下駄 それより少し濃い色合いの帯と手提げ 髪の毛は緩い三つ編みをおさげに 喰人 枯茶色の生地に白のかすれ縞の浴衣 紺色の帯 お面屋でニホンの伝統的なデザインの数々を興味深く眺めながら 勧められ二人で狐のお面を購入 ヨナが黒狐 喰人が白狐 ヨ (正直に前被り)…前が見づらいですね ベ こういうのはずらして被った方が『お洒落』なようだ と言いながら喰人はお面を帽子のように被り ヨナがのお面を後頭部に来るように直してやる されるがままその様子を目だけで追い こういう事 自然とやる人なんですよね でも きっと 誰に対してもそうなのかもしれない とぼんやる考えていると どうした と声をかけられはっと気が付き 続 |
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~ リザルトノベル ~ |
○まずは浴衣選び ニホンで浄化師達に好印象を持って貰うための、お祭り参加指令。 それを受けた浄化師達は、指令ということもあり、まずは全員が神社に向かう。 「ようこそおいで下さいました!」 にこにこ笑顔で神主が出迎える。 異様に好印象なので、それとなく話をすれば、今回の指令に関連して、教団を経由して多額の寄付があったとのこと。 名目は、浄化師達の浴衣代とのことだが、実際は、それ以上の金額が送られたのは間違いない。 こうして手厚い歓迎のもと、浄化師達は神社に招かれ、用意された数多くの浴衣を前にする。 早速、浴衣選び開始。 女性陣は、どれにしようかあれこれと。 男性陣は、女性陣の選んだ浴衣に合わせることも考えて、しばし待つ。 そんな手持無沙汰の男性陣の中、『桃山・和樹』が目を輝かせながら口を開く。 「みんなってば、今までどんな指令を受けてきたんだ?」 浄化師になったばかりの和樹は、冒険譚を訊きたがる少年のような好奇心いっぱいの眼差しで、皆の話を聞きたがる。 「オレ、今回の指令が初めてなんだ。でもいつか、ヨハネの使徒やべリアルとも戦って、みんなを助けられるような浄化師を目指してる」 憧れを口にするように、和樹は皆に聞いていく。 「すげー! 船を襲ったべリアルと戦ったことがあるんだ! 知ってる! みんながニホンに来た蒸気船だよな! ねーちゃんと一緒に見に行ったぜ!」 先輩浄化師として、男性陣が幾つか話をすれば、和樹は興奮したように返していく。 「すっげー! みんな、強いんだ!」 話を聞けば聞くほど興奮する和樹に、皆は肩の力を抜くように話を続ける。 それは憧れだけでは見えない、現実の無慈悲さも伝えるように。 新米浄化師の和樹が無茶をしないで済むよう、柔軟さも大事だと話していく。 それを神妙な表情で聞く和樹。 「浄化師の仕事は、戦うだけじゃねーもんな。……うん、だよな。今日の指令だって、大事大事!」 これから浄化師として、どう行動していくべきか。 和樹は先輩浄化師達から学んでいった。 そうして和樹が、男性陣から話を聞いている頃、彼のパートナーであり双子の姉『桃山・令花』は、少しばかり1人でぽつんと。 普段は和樹にくっついて行動している令花は、離れてしまうと、どうしていいか分からず迷ってしまう。 新米浄化師ということもあり、先輩浄化師の女性陣に自分から声を掛けるのも気が引けて、静かに浴衣を選んでいた。 そんな時、今回の指令に参加した浄化師達の中には、浴衣の着付けを迷う者も。 すると令花は、力になれないかと提案する。 「あの、もしよければ――」 ニホン出身の令花は、浴衣の着方ならお手の物。 これに女性陣は承諾する。 早速、着付けの仕方を伝える令花。 「最初に、裾の位置を決めて、上前と下前を合わせるんです」 まずは実演とばかりに、服の上から浴衣を着て、説明する。 「こうして、下前を上前の下に入れ込んで、浴衣の端を少し上にあげるんです。そのあと、腰ひもを結ぶと良いんですよ」 説明をしていく内に、女性陣とも自然と話が出来るようになる。 「わぁ、その浴衣、すっごく似合います! とっても綺麗です!」 和やかにお喋りをしながら、ちょっとした着付け教室は巧くいった。 こうして着付けも学び。浴衣も選んだので、それぞれ着替え。 皆はパートナーと共に、お祭りに出向いて行った。 ○短冊に想いを乗せて (任務だからと思ったけど、浴衣を着ることになるとは……) 屋台で賑わう参道を歩きながら『ルイス・ギルバート』はポツリと思う。 彼の隣には、同じく浴衣を着た『モナ・レストレンジ』が。 気付かれないように視線を向けて、すぐに、ふいっと逸らす。 なぜなら、いつもと違う彼女の姿に、鼓動が跳ねるから。 モナの浴衣は、白地に青の芍薬柄。濃紺色の帯を締めている。 穿いているのは、青色の鼻緒の白木の下駄。 見慣れない彼女の姿は新鮮で、気を抜くと、見詰めてしまいそうになる。 けれどルイスは、そんな自分を隠してしまう。 今もそうだ。 「ルイ。変じゃないかな?」 不安げに、自分の浴衣姿の感想を聞くモナに。 「レストレンジは何を着てもレストレンジじゃん」 いつもの態度で取り繕う。 ドキドキと、騒ぐ鼓動を隠しながら。 だからルイスは、今も跳ねる鼓動の音に気付かれまいとするように、少し歩みを速くする。 モナと距離を取ろうとするように。 そんなルイスに遅れまいと、モナは積極的に傍に寄る。 (どうか、したのかな?) 距離を取ろうとするルイスに、モナは思う。 (最近少しは、ルイとの距離が近づいた気がしたのに――) まだまだ、モナはルイスのことが分からない。 だから、少しでも彼のことを知るために。 (一緒に祭りをまわったら、少しはルイの事分かるかな) 期待を胸に、お祭りを一緒に巡る。 道中、屋台を見て回り。 とある屋台に目を惹かれる。 「簪? これは髪に挿す物?」 モナは、その簪に釘付けになる。 それは蝶の形をした、美しい簪。 揚羽蝶を象った、色鮮やかさと、細かい所まで精緻に作られた逸品だった。 (綺麗な髪飾り) 熱心にモナが見詰めていると。 「これ、貰えるかな」 ルイスは店主にそう言って購入する。 「ルイ?」 どうしたのかとモナが尋ねると、応えるよりも先にルイスは。 「折角着飾ってるんだし挿しとけば」 そう言って、モナのアップにした髪に簪を挿す。 「え? いいのか?」 「いいよ。それより、他の店も見に行こう」 モナに簪をプレゼントしたルイスは、そう言うと顔を見られないようにして歩き出す。 いま見られると、朱に染まった顔を見られてしまいそうだったからだ。 そうとは知らないモナは、慌てて追いかけた。 時折、簪に触れながら、お返しになるものはないかと周囲を見渡す。 すると視線は、お面屋さんに。 (お面とやらも面白そう) 目に付いた狐の面を購入すると、ルイスにプレゼント。 これにルイスは、わざと気のないように返す。 「レストレンジがお面すればいいじゃん」 けれどモナは強引に。 「簪のお礼だから」 断るルイスに、押しつけるようにして手渡した。 「……しょうがないな」 不承不承という振りをしながら、身につけるルイスだった。 そうしている内に、境内に。 「短冊に、願いを書けばいいんだな」 そう言うとルイスは、モナには見られないよう離れて書く。 何を書いたのかモナは気になりながらも、同じように短冊に願いを込めて書いた。 『ルイとの距離がもっと近づきますように』 ささやかな、けれどモナにとっては、心からの願い。 それが叶うことを願い笹に吊るすと、すでに笹に吊るし終えたルイスの元に。 「ルイの願い事は何?」 ルイスの願い事が気になったので聞いてみる。 けれど返ってきた応えは素っ気なく。 「レストレンジには関係ないから」 その応えは、もちろん本心では無くて。 『想う事だけは許して欲しい』 2人はお互いを想いながら、どこか擦れ違い。 2人一緒に、帰路についた。 ○七夕祭りを楽しむ2人 「シィ。書き終った?」 「ん、もうちょっと」 参道を巡るよりも先に、境内に来ていた『シルシィ・アスティリア』と『マリオス・ロゼッティ』は、短冊に願いを書き終え笹に吊るす。 マリオスが吊るした短冊は1枚。 『家族が無事に過ごせますように』 本当は『シルシィが怪我しませんように』と書きたい所だったけれど、過保護にしないと約束しているのだ。 けれど家族の無事を願うなら、家族同然のシルシィのことも含めることが出来て良いと思ったのだ。 一方、シルシィが吊るしたのは2枚。 1枚は、浄化師としての自分の願い。 『浄化師としてもっと強くなれますように』 もう1枚は、マリオスに感謝して。 『マリオス、いつもありがとう』 2人の願いは、お互いのことを想って。 家族のような2人は、願いを天に捧げると、参道を巡ることに。 異国情緒を楽しみながら、ゆっくり巡っていく。 時折聞こえてくる、賑やかな祭囃子に、楽しそうな人々の声。 屋台は様々で、目移りしそうなほど。 手にした提灯だけでなく、周囲に掲げられた提灯と鬼火に照らされて、温かな明るさに包まれていた。 のんびりと2人は歩きながら、マリオスはシルシィを時折見詰める。 (シィ、浴衣姿も可愛いなあ) シルシィの浴衣は、金魚の柄に水色の帯。下駄は漆の黒下駄に、水草の柄の入った鼻緒。 一方マリオスは、格子柄に青の帯。下駄は漆の黒下駄に、浴衣に合わせた青の鼻緒。 涼しげな2人の浴衣姿は、よく似合っていた。 もっともシルシィは、子供っぽく見えないかと、時折マリオスの視線を気にしていたが。 そんな2人が歩いていると、マリオスは一軒の屋台を見つける。 「ちょっと待ってて」 そう言って買ってきて手渡したのはリンゴ飴。 「……これ、何?」 「甘くて美味しいよ。歩きながらでも食べられるんだ」 そうして2人は、リンゴ飴を食べながら、屋台巡りを再開。 道中、今度はシルシィがお買い物。 「リンゴ飴の、お返し」 そう言って渡したのは、組み紐で作られたリボン。 壁に飾ったりする装飾品のようだ。 「ありがとう」 嬉しそうに礼を返し、2人は一緒に歩いて行く。 さりげなく、マリオスは人混みから庇うように前を進み、歩く速度もゆっくり目にしていたのだが。 「どうしたの?」 「下駄、ってちょっと、歩きにくい」 履きなれない下駄のせいで、鼻緒の所が少し擦れてしまったようだ。 するとマリオスは。 「お茶屋さんがある。ちょうど良い。少し休ませて貰おう」 そう言って、シルシィの速度に合わせお茶屋さんに。 長椅子に腰を下ろし注文をすると、口寄せ魔方陣で簡易救急箱を呼び寄せる。 「これで、どうかな?」 簡易救急箱に入っていた絆創膏で、擦れた場所にぺたりと。 「ん、ありがとう」 シルシィが礼を言うと、ちょうど注文品が。 冷たい抹茶と、ひんやりとした水羊羹。 「美味しい」 「うん。美味しいね」 2人は、のんびり和菓子を食べて。 「どうする? 足が痛いなら、そろそろ帰ろうか?」 「大丈夫。もっと、見て回りたい」 お祭りを楽しもうとするシルシィに、くすりとマリオスは笑みを浮かべて。 今まで以上にシルシィの歩く速さに合わせながら、マリオスは2人一緒に、屋台巡りを楽しんだ。 ○見上げる星空に、共に笑顔を 「政府の力があまり届いていないと聞いたのに、トウホクの人も妖怪さんも強いのね」 七夕祭りに集まった人々の活気に、『リチェルカーレ・リモージュ』は感心したように声を上げる。 その表情には言祝ぐような笑顔が浮かび、活気のある様を祝福しているようだった。 「……そうだな」 リチェルカーレの笑顔に『シリウス・セイアッド』は僅かに表情を緩ませる。 心の中では僅かに。 (中央以外には興味がない……アークソサエティと変わらないな) そう思ってはいても、肩を竦めるだけで声には出さない。 なぜならリチェルカーレの言葉は、正しいとも思ったからだ。 だからこそ、小さくだが頷いてみせる。 リチェルカーレは、シリウスが賛同してくれたのが嬉しかったのか、声を弾ませながら続けた。 「私達も、見習わなくちゃね」 「ああ――」 再びシリウスは頷いて、2人一緒に、お祭り巡りを開始した。 道中、リチェルカーレは屋台の店主に親しげに声を掛ける。 「海を越えてきました。ええ、浄化師なんです」 リンゴ飴売りのおばちゃんに尋ねられ、リチェルカーレは返す。 これにおばちゃんは笑顔で言った。 「ほぅかね。海から来たんね。やけど浴衣、よう似合っとおよ」 確かに、リチェルカーレの浴衣姿は似合っていた。 青や紫の朝顔柄の浴衣に、漆塗りの黒下駄姿は、落ち着いていながら華やかさもある。 そんな彼女の隣を歩いているシリウスは、紺色の地に黒の流水紋の浴衣。 リチェルカーレの浴衣姿を際立たせながら、共にあるとしっくりしていた。 そうして2人はお祭りを巡っていく。 人懐っこいリチェルカーレは、ニホンの人々と気軽にお喋りを楽しむ。 「すてきなお祭りですね。何かお困りなことはありませんか?」 和やかに声を掛け、浄化師としても言葉を交わし、お祭りを楽しんでいく。 その途中、自分が喋っているばかりでシリウスが静かなままなのに気づき不安になる。 (退屈ではないかしら?) そう思い、一緒に歩いてくれるシリウスに振り返り、どきりとする。 どこか柔らかな眼差しは、自分のことを見詰めてくれているような気がしたからだ。 恥ずかしさが湧いて来て、慌てて顔を逸らす。 その時、足に小さな痛みが。慣れない下駄を穿いて、少し足を痛めてしまったようだ。 「……足をどうかしたのか?」 「大丈夫、たいしたことないから」 誤魔化すような笑顔に、ため息ひとつ。 シリウスは背中を向け言った。 「――乗れ。その足で歩くのは無理だろう」 「いい! 大丈夫。わたし結構重いんだもの」 顔を赤く染め、ふるふると首を振るリチェルカーレに、ため息をもうひとつ。 「重くない。……横抱きにされるのと背負われるの、どっちがいい」 強く促すシリウスに、おずおずと彼の背に。 大きな背中と体温が恥ずかしくて無言になるリチェルカーレと、同じく無言になるシリウス。 そんな恥ずかしさの熱を冷ますように、なにげなく空を見上げ。 「見て、シリウス!」 空に広がる星々の、天の川。 「とても綺麗――」 見上げた星空とリチェルカーレの弾む声。 そして背中に感じる暖かさに、シリウスは静かに笑顔になる。 その笑顔は、今この場に2人であることを喜ぶように。 リチェルカーレもシリウスも、気付くことが出来ずとも。 2人は共にあり、喜び合うことが出来るのだと。 そう思えるような、笑顔だった。 ○2人の贈り物 「以前、巫女服を着た事がありましたけれど、それとも違って不思議な着心地、ですね」 浴衣を着た『アリシア・ムーンライト』は感想を口にする。 今の彼女の姿は、紺地に朝顔模様のオーソドックスなもの。下駄は漆塗りの黒下駄に、朱色の鼻緒。 髪は纏め上げアップにしていた。 (なんだか懐かしさを感じるのは、気のせい、でしょうか) 記憶にない筈なのに、浮かぶ想い。 その理由が何故なのか考えていると『クリストフ・フォンシラー』が声を掛けてくれる。 「うん、アリシア、よく似合うよ」 これにアリシアは、頬を真っ赤に染めながら返す。 「似合い、ますか……? ありがとう……その、クリスも、素敵、です」 「ありがとう。そう思ってくれるなら、嬉しいね」 笑顔を浮かべ礼を返すクリストフ。 彼の今の姿は、グレーに白い縞の物。下駄はアリシアと同じ漆塗りの黒下駄に、白の鼻緒。 アリシアの言うように、よく似合っていた。 自分を見詰めてくれるアリシアに、同じように見詰めながらクリストフは続ける。 「黒髪だからなのかな、全く違和感なくて周りに馴染んでる気がする」 この言葉にアリシアは、先ほどまで感じていた懐かしさに、どこか納得するように返す。 「そう言えばニホンの方は黒髪の方が多い、です。私のご先祖様……ニホンの方だったのかもですね……」 安心するように小さく笑顔を浮かべるアリシアに。 「さて、では短冊を飾りに行こうか」 クリストフは手を差し出しながら言った。 「はぐれると困るしね」 アリシアは差し出された手に、そっと手を乗せて応える。 「そ、その……行きましょう……」 躊躇わずに重ねられた手に、思わずクリストフはアリシアを見詰めると、恥ずかしそうに目を逸らされる。 思わず笑うクリストフ。 見ていて微笑ましくなる2人は、そのままお祭りに参加した。 そうして手を繋ぎ、2人はお祭りを見て回る。 道中、様々な屋台を見て楽しむ。 アークソサエティでもよく見る食べ物屋の屋台もあれば、それ以外も。 「屋台って、食べ物屋さんばかりでは、ないんです、ね」 とある一軒の屋台。 そこに飾られていた色取り取りの簪に、アリシアは思わず足を止めて見詰める。 「ここの簪達……とても綺麗です……」 じっと見つめるアリシアに、クリストフも視線を向ける。 「これ、貰えるかな」 金色のトンボ玉が付いてる簪を購入すると、アリシアに。 「私に……?」 「うん、いつでも君の傍にいられるように祈りを込めて」 そう言うとクリストフは、アリシアの髪に、そっと挿す。 「俺の目の色と同じ色。嫌かな?」 「クリスの瞳と同じ色の簪……」 はにかむように笑顔を浮かべ、そっと簪に触れるアリシア。 浮かんでくる嬉しさに、この喜びをクリストフにも返したくなる。 「そ、それじゃ」 アリシアは屋台を見渡し、とある根付けを見つける。 それは薄紫のトンボ玉付きの根付け。 「その、私の瞳の色の……」 ふんわりと笑顔を浮かべ、クリストフに贈り物。 クリストフは渡された根付けに、アリシアを見返し。彼女の笑顔に我知らず赤くなる。 (君の笑顔一つでこれだよ) 彼女の笑顔が、何よりの贈り物。 根付けを受け取ったクリストフは、再び手を差し出す。 アリシアは、その手を取って。 2人は短冊を書きに行く。 お互いを想い合う、温かな気持ちを抱きながら。 ○短冊に願いを込めて 令花は和樹にくっつようにして、2人はお祭りを楽しんでいた。 「ねーちゃん! これ! これ買おうぜ! 絶対美味いって!」 「はいはい。分かったから、そんなに騒がないの」 はしゃぐ和樹に、令花は落ち着いた声で返す。 もっとも、その声には弾むような響きもあったが。 和樹は素直に、令花は表情には出していないけれど、トウホクのお祭りを楽しんでいた。 「美味いな! これ!」 2人が買ったのは、挽肉に青菜を混ぜて味付けした物を小麦の皮で包み焼いた物。 「おやきって言うみたいね。美味しい」 お祭りの雰囲気もあり、おやきはとても美味しかった。 ぺろりと食べて。次々屋台を制覇。 リンゴ飴に綿菓子。 焼き鳥に串揚げ天ぷら。 「美味いな! あっ! お冷もあるぜ!」 「駄目よ。酔っぱらっちゃったらどうするの」 「えーっ、いいじゃんか!」 「いけません。私達は、浄化師として来てるんだから。みっともない真似は出来ないでしょ」 これに和樹は神妙な顔付きになる。 「……そうだな。浄化師だもんな、俺ら。なぁ、ねーちゃん」 「なに?」 「俺達、みんなみたいに立派な浄化師になれるかな?」 皆から聞いた話を思い出しながら訊く和樹に、令花は言った。 「頑張ろう、2人で。1人なら、難しいかもしれないけど、きっと2人なら」 これに和樹は、にかっと笑い。 「おう! ねーちゃんと2人なら、きっと大丈夫だ! 2人でがんばろーぜ!」 「うん」 笑顔で返す令花だった。 そして2人は短冊を書きに境内に。 2人で立派な浄化師になれますように 天に願いを捧げ。 「よっし! じゃ、また屋台回ろうぜ!」 「はいはい。なら、お茶屋さんに行ってみようか? 近くに竹細工の屋台もあったし、お土産に買っていこう」 「おう! 行こうぜ! ねーちゃん!」 そして2人仲良く、お祭りを楽しむのだった。 ○アナタの目に映るモノ 「良く似合ってるじゃないか」 「……そうですか?」 素直な気持ちを口にする『ベルトルド・レーヴェ』の言葉に『ヨナ・ミューエ』は静かに返す。 表情は意識して変わらぬよう気を付けた。 なぜならベルトルドの何気ない言葉に、とくりと鼓動が跳ねたから。 ヨナの今の姿は、白地に鮮やかな紅桔梗と霞の柄の浴衣。 帯は、浴衣より少し濃い色合い。そして帯に合わせた色合いの手提げを持っている。 そして下駄は漆の黒下駄。鼻緒は朱色。 髪は緩い三つ編みおさげにしていた。 ベルトルドの言うように、よく似合っている。 とはいえ面と向かって言われると、恥ずかしさが勝るのは仕方がない。 「指令ですから、しょうがないですが。浄化師たるもの、いつもの制服の方が――」 「確かに、いつもの制服姿も、よく似合ってると思うぞ。しかしな、折角のお祭りだ。こういう時は、今の姿の方がよく似合っている」 「……そうですか」 どこか宥めるように言ったベルトルドにヨナは、ふいっと顔を逸らす。 それは自分の顔が、赤く染まっているのを自覚したからだ。 とはいえ、そうとは気づかないベルトルドは、苦笑するように言った。 「さて、祭りを見て回るか」 「……はい」 誘うようなベルトルドの呼び掛けに、ヨナは自分でも気づかない、はにかんだ表情を浮かべ応えた。 そうして2人は祭りを巡る。 先に歩くのはベルトルド。 今の彼の姿は、枯茶色の生地に白のかすれ縞の浴衣。帯は紺色。漆塗りの黒下駄に、鼻緒は帯の色に合わせていた。 そんな彼の姿を、しらずヨナは追う。 しばしそうして歩いていると、お面屋の屋台の店主に呼び止められた。 2人が、ニホンの伝統的なデザインの数々を興味深く眺めていると、狐のお面を勧められる。 折角なので購入。 ヨナは黒狐。ベルトルドは白狐。 「……前が見づらいですね」 正直に前に被るヨナに、ベルトルドは付け直してやる。 「こういうのはずらして被った方が『お洒落』なようだ」 ベルトルドは、お面を帽子のように被り。 ヨナのお面を後頭部に来るように直してやる。 (こういう事、自然とやる人なんですよね) ベルトルドの動きを目で追いながら思う。 (でも、きっと、誰に対してもそうなのかもしれない) 「どうした?」 ぼうっと思っていた所に、ベルトルドに声を掛けられ。 「なんでもありません」 わざと素っ気なくヨナは返した。 そして2人は境内に。 そこで短冊に、ベルトルドが流暢に筆を走らせるのを見て、ヨナは感心する。 「代筆なら喜んでしようと思っていたのに。その必要もないみたいですね」 「まあ、いつも見てくれる先生のお陰で、な」 おどけるようにベルトルドは返し、続ける。 「それで、ヨナ先生は何を短冊に書いたんだ?」 「あ、だめ、ひみつです」 見られないよう隠しながら、ヨナは小走りで少し離れた場所の笹に括り付け他の短冊と紛れ込ませる。 優しくなれますように そう書いてしまったのは、ベルトルドが、わざわざ詮索を続けるような人ではないのを知っているから。 だから、こんな個人的な願い事が書けたのかもしれない。 ヨナは思う。 (私は、ベルトルドさんと同じようには、多分、出来ない) ヨナは自覚している。 (私は私。私の出来る事をすればいい) そう思っていても、胸に抱く感情を、どう消化すればいいのか分からない。 自分より遠く、広く。多くの物を見詰めることの出来るベルトルド。 その中に、自分が映っているのは知っている。 でも自分だけじゃない。 その想いが何であるのか。 自覚できず、胸に抱くヨナだった。 かくして、それぞれの七夕祭りは終わりを見せる。 それぞれお祭りを楽しみ、ニホンの人々に浄化師との関わりを深める一助となった指令だった。
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*** 活躍者 *** |
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[10] リチェルカーレ・リモージュ 2019/07/22-20:27
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[9] 桃山・令花 2019/07/22-20:11
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[8] 桃山・令花 2019/07/22-20:10
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[7] モナ・レストレンジ 2019/07/22-19:27
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[6] ベルトルド・レーヴェ 2019/07/22-19:09
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[5] 桃山・令花 2019/07/22-14:45
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[4] モナ・レストレンジ 2019/07/22-00:38
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[3] アリシア・ムーンライト 2019/07/21-22:40
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[2] シルシィ・アスティリア 2019/07/21-20:08
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