虚偽のサクリファイス
普通 | すべて
6/8名
虚偽のサクリファイス 情報
担当 留菜マナ GM
タイプ ショート
ジャンル シリアス
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 5 日
公開日 2019-12-22 00:00:00
出発日 2019-12-30 00:00:00
帰還日 2020-01-03



~ プロローグ ~



「何も恐れる必要はありません」
 凛とした声が、屋敷にある礼拝堂に響き渡った。
 金髪の髪を揺らした修道服の女性は、祈りを捧げるように指を絡ませる。
 女性は手に持つ十字架を優しく胸に抱き、ステンドグラスに描かれた美しき神の絵を見上げた。
 拝跪するその姿は、まるで聖女のように神々しい。
「カタリナ様……」
 近くで参列していた『サクリファイス』の残党達も感極まる思いで跪き、祈りを捧げた。
 カタリナ・ヴァルプルギス。
 神を盲信し、滅びの運命を許容するべきと提唱していた宗教組織『サクリファイス』のリーダーだ。
 しかし、彼女は、浄化師達との戦いで倒されたはずだった。
「神の御心の体現者である私を滅ぼしたということは、神への叛逆行為に他ならない。冒涜者たる存在には、これから我々の手で鉄槌を下すのですから」
 カタリナは恍惚とした表情で絵を見上げながら、己の理想を物語った。
「しかし、今の私には、それだけの力はないのですわ」
「「――っ」」
 蘇えらせたカタリナは、かっての魔力を失っている。
 その事実は、サクリファイスの残党達の心に重くのしかかった。
 魔術研究をおこなっていた終焉の夜明け団の男――イヴルとの出会いは、サクリファイスの残党達にとって大きな転換点になった。
 カタリナを蘇えらせてやるという誘い文句に引かれて、サクリファイスの残党達は藁にもすがる思いでイヴルの協力を得ていた。
 サクリファイスの残党達による苦渋の決断は、一見、成功したようにも思えた。
 だが、蘇ったカタリナは、膨大な魔力そのものを失っていた。
 これではいずれ、教団と相対したとしても、返り討ちに合うのが関の山だろう。
「力を取り戻す方法がないわけではない」
「「――っ」」
 イヴルの発言に、サクリファイスの残党達は大きく目を見開いた。

 カタリナ様の力を取り戻す方法があるというのか?

 それは、この場にいるサクリファイスの残党達、誰もが抱く疑問だった。
「まずは、各地に散らばっている『サクリファイス』の者達を可能な限り、集結させろ」
 目を見瞠るサクリファイスの残党達は、ただ静かにイヴルの次の言葉を待つ。
「教団は既に、私達の動きに気づいているのだろう。『レヴェナント』の者達が、この付近に隠れ潜んでいた」
「くっ……!」
 イヴルは、捕らえたレヴェナントの者達の一人を床に放り投げる。
 『レヴェナント』。
 それは、薔薇十字教団の管轄下で、世界各地で終焉の夜明け団とサクリファイスの動きを追っている組織である。
「カタリナ・ヴァルプルギス! 何故、貴様が生きている!」
 床に放り出されたレヴェナントの男が、怒涛の勢いで叫ぶ。
 だが、カタリナはそれに動じることもなく、憐憫に満ちた目で彼らを見つめる。
「可哀相な人達。間違った観念を植え付けられ、名を奪われ、過去を消され、生をも弄ばれている。けれど、喜ぶといいわ。あなた達の魂は、私の力を取り戻すための礎となるのですから」
 レヴェナントの者達は、鳥肌が立つ思いでカタリナの顔を見ていた。
 イヴルは手を掲げると、レヴェナントの者達に対して魔術を発動する。
 やがて、凛烈さをはらむ済んだ青空と、雪化粧を施す屋敷に、彼らの断末魔の叫びが響き渡った。




「上出来だ」
 カタリナの命を受けて、サクリファイスの残党達は屋敷から去っていく。
 その様子を窺っていたイヴルは、天啓を得たように目を輝かせた。
「これでサクリファイスは、カタリナを筆頭に再起を図るに違いない」
 イヴルの心に、過去に抱いた感情と似た想いが再び、込み上げてくる。
「そうなれば、危険分子である教団も何らかの動きをみせるはずだ。カタリナを殺した危険分子は、全て排除せねばならない」
 イヴルは、幼い頃にカタリナとともに求めた理想を体現しようとする。
 それは、カタリナの人生を狂わせた教団への強い憎しみによるものだった。
 当時、世間を賑わせたエレメンツの少女がいた。
 『ヴァルプルギス』一族の一人娘として生まれた彼女は、類稀な才能と努力によって、若干八歳で魔術士の国家資格を手に入れた。
 周囲から脚光を浴びていた彼女。
 そんな彼女と運命的な出会いを果たしたのは、偶然だったのだろうか。
 互いに貴族の家柄であり、エレメンツ同士、同じ年齢だったということも重なって、二人は意気投合し、和気藹々と語り合った。
 だが、その幸せな日々は瞬く間に崩壊する。
 教団の調査によって、ヴァルプルギス一族の母方が、魔女の家系であることが明かされたからだ。
 カタリナの両親は、魔女裁判にかけられ、今も教団地下深くに投獄されている。
 イヴルの両親も、カタリナの家族を庇ったことで投獄されていた。
 イヴルは、カタリナを救うことができなかった己の無力さを呪った。
 あの日感じた雨の冷たさを、彼は今でも覚えている。
「咎人は断罪する必要がある。ここで、私達の話を盗み聞いている、失敗作の『ドッペル』どもも含めてだ」
「「――っ!」」
 ドッペル達は逃げ出そうとしたが、イヴルが放った拘束の魔術によって身動きを封じられてしまった。
「教団に、場所を知られてしまったようだからな。拠点を変更する」
「全ては、神の思し召しのままに……」
 イヴルが憎々しげにそう告げると、カタリナは片膝をついた姿勢のまま、誓いを交わした。

 一介の終焉の夜明け団の信者に対して、忠誠を誓う『サクリファイス』のトップ。

 それは、どこか滑稽で狂気に満ち溢れた光景だったのかもしれない。
 しかし、そのことを訝しむ『人物』は、この場にはいなかった。




「寒いな」
「寒いね」
 凍てつくような風が肌身に染みる中、あなたとパートナーは肩を震わせる。
 ここは、ミズガルズ地方の北に位置する樹氷群ノルウェンディ。
 樹氷と霧氷が美しく、一年を通して国土に雪氷が覆う国だ。
 あなた達は指令を受けて、終焉の夜明け団が魔術研究の際に使っていたとされる屋敷の調査に再び、赴いていた。
 魔術研究で産み出された特殊なドッペル達の報告をした後日、『サクリファイス』の残党達がこの地で暗躍しているという情報がもたらされたからだ。
 しかも、あのカタリナ・ヴァルプルギスが、神の奇跡により再誕したという。
 それが真実なら、途方もなくおぞましい事態だ。
 真相を探るために、調査に向かったレヴェナントの者達の足取りは途絶えてしまっている。
「とにかく、調べてみるしかないな」
 あなたは己に言い聞かせ、屋敷へと向かう。
「なっ!」
「――っ」
 だが、そこで、予想外の光景を目の当たりにして、あなた達は全身が総毛立つような感覚に襲われた。
 訪れるはずだった屋敷は、立ち上る黒煙とともに炎に包まれていた。

 人の心に巣食った闇は知らない間に、あったはずの彼らの未来をも奪っていく――。


~ 解説 ~

・解説

●目的
 調査のために訪れた屋敷が、終焉の夜明け団の男の手によって燃えています。
 拘束の魔術に長時間囚われたことで、意識が朦朧としているドッペル達を救出して下さい。

●ドッペル達は、あなた達が近づくと、姿を見せるためにどちらかに姿を変えます。
 どちらに姿を変えたのか、プランに記載して下さい。
 ドッペル達は疲弊しており、姿を変えた途端、気を失ってしまいます。
 体力を回復させても、すぐには目覚めません。
 姿を変えたドッペルを抱きかかえたりなどして運んで頂くと、火の手から逃れやすいです。
 姿を変えたドッペルは、記憶は持ち合わせていないので、本物が口にしないような言葉を発したり、行動をすることがあります。

●ドッペル達を救助し、屋敷の外に出た後、終焉の夜明け団の男が放ったゾンビ達が、あなた達に襲いかかってきます。

●敵
・ゾンビ5体
 レヴェナントの死体を使った、近接戦闘系のゾンビです。
 口封じのため、ドッペル達を優勢的に狙ってきます。

●NPC
・特殊なドッペル
(浄化師一組につき、一体救出しています)
 終焉の夜明け団の魔術研究によって産み出されたドッペルです。
 普段は霧の塊ですが、縄張りに入った者の姿を鏡写して化ける生物です。
 通常のドッペルとは違い、会話をすることができます。
 この時点では、意識を失っています。
 戦闘が終わり次第、目覚めます。


~ ゲームマスターより ~

 こんにちは、留菜マナです。
 今回は、屋敷からドッペル達を救い出すエピソードになっています。
 「それは夢か、現か」の続きの話になっています。
 今後も、シリーズ物として続けていこうと思っています。
 どうぞよろしくお願い致します。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
終焉の夜明け団とサクリファイスが どう繋がるのかしら
…それに カタリナさんは…
静かな 労わるようなシリウスの手に泣きそうな笑顔
ー調査 頑張らないとね

駆け寄ってくる「自分」に 目を見開いて
シリウス あのこ!
叫んで彼女に駆け寄る
大丈夫?いったい何が…
ここは危ないわ まず避難を…っ
倒れてくる体を慌てて抱き止め

敵遭遇時 魔術真名詠唱
初手で禹歩七星を仲間に
ドッペル達の前で盾
シアちゃんたちと連携 天恩天嗣3の回復と近づく敵へ鬼門封印
自分の方に来る敵には 式神で対応
彼女たちに 酷いことしないで
ドッペルへの攻撃は盾に

戦闘終了後は安全な場所へ
気が付いた?どこか痛むところはない?
必要なら回復魔法を
がんばったね もう大丈夫
ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
ベ 終焉の夜明け団の研究の為の館にサクリファイスの残党…か
ヨ 調査に出ていたレヴェナントが不明という事ですし
  何かが起こっているに違いありません

ヨナに変化したドッペルに驚きつつ
以前の指令であったドッペルの報告を思い出し危険は少ないと判断

ベ 悪いものではないのだろう? しかし姿を変えるだけで精一杯のようだ
  俺が運び出すからヨナはもう少し屋敷を調べてくれ

襲い掛かって来たゾンビにはヨナで対応
目の前の私を無視してドッペルを狙っている…?
生かしておくのに都合が悪いというのなら みすみすやらせません
FN15や16をばら撒きつつドッペルを運ぶ仲間達を守りながら戦う

ソンビの他に危険の有無や不明者の形跡を調べてから皆の元へ
ヴォルフラム・マカミ カグヤ・ミツルギ
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / 人間 / 陰陽師
「ちょ、なんで屋敷が燃えてるの?!」
今更?
4月に見つけた時だって、放置されてるっぽかったのに…

とりあえず、まだドッペル達が居るなら助けないと!
ドッペルにはカグちゃんに変化して貰って抱えて運ぶよ
僕になられても運べないしね

襲われたら、ドッペルはカグちゃん本人にお願いして迎撃するよ
「偽物でも今はカグちゃんの姿してる子も居るんだ、近づけさせないよ!」
TM4やTM8を使って攻撃するよ


カグヤ(又は偽カグヤ)が攻撃受けた
「僕のカグちゃんに、触んないでよ!」
本物でも偽物でも、カグちゃんを傷つける奴は許さない


大方、こうなった理由を聞いてたとかで処分されそうになったんだと思うけど…
あれから屋敷の外に出なかったの?
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
カタリナさんが、生きかえった…?
悲しいですけれど、亡くなった方は…蘇らない、ですから…
何者かが、カタリナさんを騙っているなら、悲しいです…

お屋敷、燃えてます…

突入前に皆に禹歩七星をかけて中へ

誰かが中にいるかも…助けないと…!
…え、私…?

自分の姿をした人物を見て目を見張り
クリスに抱きかかえられるのを見て思わず赤くなる

何だか…変な感じです…

ドッペルにそっと天恩天賜をかけて
周りを警戒しながらクリスの後ろについて脱出
ゾンビとの戦闘時
ドッペルさん達を庇う位置でリチェちゃんと連携
鬼門封印、禁符の陣、天恩天賜で支援と回復

この方達は、守って見せます…!

戦闘終了後、他の方が連れてきたドッペルさんにも回復を掛けて
サク・ニムラサ キョウ・ニムラサ
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / ヴァンピール / 陰陽師
サク:カタリナって誰かしら?
キョウ:悪い組織の偉いやつですよ。
サク:じゃあ殺さ
キョウ:すでに死んでいるのにどうやって殺すのですか?
サク:……冗談よ。そもそも目的が違ったわね。ごめん。
キョウ:わかってもらえて何よりです。所でアレ……

【行動】
サク
見てみてすごいわ!私がいるわ!
すごく面白い!ドッペルに手伝ってもらえれたら沢山遊べれそう。
わかったわ、屋敷にいる間は私が運ぶ。

キョウ
わぁ、嘘でしょう。あ、ちょっと、サクラ睨まな
怖い笑顔も辞めてくれると嬉しいです!!
屋敷から出てからは自分が運びます。
あと天恩天賜で回復できるか確かめて起きますね。
自分より弱いサクは嫌なので早く違う姿になってくれませんか。
ショーン・ハイド レオノル・ペリエ
男性 / アンデッド / 悪魔祓い 女性 / エレメンツ / 狂信者
…ドクターが、二人…?
いやこれ…この方をファイヤーマンズ・キャリーで運ぶのは腹部に圧迫を与え…はい。本物のドクター、承知しました…
とりあえず武器を持てるように肩に担いでドッペルを運ぶ

ドクターが破壊し損ねた箇所はクリムゾンストックで壊して進もう
…なんか、こう、やはり違和感を覚えるよな…
見た目はドクターなわけだし、こういう運び方は凄く罪悪感が…

ゾンビに対してはソニックショットで狙うぞ
…レヴェナントの死体ということに少々引け目は感じるが、とにかく距離を取る様に戦わんといかんからな…

…戦闘終了後はドクターのドッペルを丁重に扱おう
いえ。いくら見た目だけとはいえ、どちらも大事に扱わないと良心が…


~ リザルトノベル ~

 紅蓮の炎に飲まれていく館。
 青かったはずの空は、今や黒煙が立ち込め、それを照らす炎で不気味に赤く染まる。
「ちょ、なんで屋敷が燃えてるの?!」
 予想外な光景を目の当たりにして、『ヴォルフラム・マカミ』は驚愕した。
 終焉の夜明け団が、『特殊なドッペル』を使って何かを画策している――。
(今更? 前に見つけた時だって、放置されてるっぽかったのに……)
 以前、指令で訪れた際に、ドッペルから告げられた言葉が、ヴォルフラムの脳裏に蘇る。
「終焉の夜明け団の研究の為の館に、サクリファイスの残党……か」
「調査に出ていたレヴェナントが不明という事ですし、何かが起こっているに違いありません」
 『ベルトルド・レーヴェ』の懸念に、『ヨナ・ミューエ』は油断なく、周囲の警戒を行っていた。
「終焉の夜明け団とサクリファイスがどう繋がるのかしら? ……それに、カタリナさんは……」
 銀青色の髪を揺らした『リチェルカーレ・リモージュ』が、顔を俯かせて声を震わせる。
「……死んだ人間は蘇らない。だが、それなら今回の情報は一体……」
 そこまで告げて、揺れるリチェルカーレの瞳に気付く。
 『シリウス・セイアッド』は表情を緩めると、彼女の肩を優しく叩いた。
 静かな労るようなシリウスの手。
「――調査、頑張らないとね」
 そんな彼の気持ちを汲み取ったリチェルカーレは、泣きそうな笑顔を浮かべる。
「カタリナさんが生き返った……?」
 今回の指令書の内容を改めて見た瞬間、『アリシア・ムーンライト』は躊躇うように言う。
「神の奇跡、ね……。カタリナは確かにこの手で討ち取った。生きてるわけがない。そして、蘇るとかあり得ない。十中八九、偽物だろうな」
 『クリストフ・フォンシラー』は事実を如実に語った。
「悲しいですけれど、亡くなった方は……蘇らない、ですから……」
 アリシアは、沈痛な面持ちで指令書を眺める。
「何者かが、カタリナさんを騙っているなら、悲しいです……」
「実際に会えれば、俺を見て反応するかどうかで判断できるんだけど」
 アリシアの言葉に、クリストフは応える。
「にしても、終焉の夜明け団のアジトにサクリファイス……? 胡散臭さしかない気がするね」
「お屋敷、燃えてます……」
「っと、それどころじゃないか。行くよ、アリシア」
 妙な胸騒ぎを感じつつも、クリストフ達は屋敷へと向かう。
 屋敷への突入前に、アリシアは皆に禹歩七星をかけていった。




「この屋敷には、何があったのでしょうか?」
 炎に包まれた屋敷を、『キョウ・ニムラサ』達は捜索していた。
「カタリナって誰かしら?」
「悪い組織の偉い奴ですよ」
 『サク・ニムラサ』が発した疑問に、キョウは答える。
「じゃあ、殺さ――」
「既に死んでいるのに、どうやって殺すのですか?」
 弟の即座の切り返しに、サクは一瞬、考えた。
「……冗談よ。そもそも、目的が違ったわね。ごめん」
「分かってもらえて何よりです。所で、アレ……」
 キョウの視線の先には、サクに似た人物が二人に駆け寄ろうとしてその場に崩れ落ちた。
 表情、服装、全てが瓜二つ。
 そっくりというレベルではない。
 どちらも、サクそのものなのだ。
「……サクラが二人?」
 キョウは明らかに戸惑っていた。
 逆に、サクはもう一人の自分を前にして、感極まったように告げる。
「見てみてすごいわ! 私がいるわ!」
「わぁ、嘘でしょう。あ、ちょっと、サクラ、睨まな――」
 サクからの視線に気付き、キョウは必死に訴える。
 戦慄するキョウをよそに、サクは楽しそうな声でこう続けた。
「すごく面白い! ドッペルに手伝ってもらえたら沢山遊べそう」
「怖い笑顔も辞めてくれると嬉しいです!!」
 キョウの懇願に、サクは切り替えるように表情を収める。
「分かったわ。屋敷にいる間は、私が運ぶ」
「屋敷を出てからは自分が運びます。あと、天恩天嗣で回復できるか、確かめておきますね」
 キョウは駆け寄ると、意識を失っているもう一人のサクを回復する。
 もう一人のサクの表情が良くなり、呼吸も安定した。
 しかし、体力を回復させても、もう一人のサクの意識は戻らない。
 サクに運ばれるもう一人のサクを見て、キョウは複雑な心境を抱く。
(報告書にあったドッペルですね)
 キョウは、以前の指令であったドッペルの報告を思い返していた。


「……ドクターが、二人……?」
 屋敷を探索していた最中、飛び込んできた光景に、『ショーン・ハイド』は自分の目を疑った。
 そこには、彼のパートナーである『レオノル・ペリエ』と瓜二つの人物が倒れていた。
「私のドッペル救出かぁ……。なんか変な気分だなぁ……」
「いやこれ……この方をファイヤーマンズ・キャリーで運ぶのは腹部に圧迫を与え……」
 あからさまに挙動不審になったショーンに、レオノルは小首を傾げる。
「そんな、私のドッペル相手に畏まらなくていいよ、ショーン。見た目は私でも、本質は違うんだから。ここは早く逃げて、安全な所に連れてったげて」
「はい。本物のドクター、承知しました」
 手招きするレオノルに応えるように、ショーンは一礼する。
 ショーンは武器を持てるように、肩に担いでレオノルの姿のドッペルを運ぶ。
 二人が来た道を戻っていると、紅蓮の炎が立ち登り、壁の一部が行く手を阻むように崩れていた。
「火の手は一気に広がるからね。狭い場所は破壊してかないと」
 火事で崩れて通れなさそうなところを、レオノルはウォーターランスで破壊する。
(ドッペルを運ぶショーン達の逃げ道を確保して、みんなの体力を温存しないと)
(……なんか、こう、やはり違和感を覚えるよな……。見た目はドクターなわけだし、こういう運び方は凄く罪悪感が……)
 レオノルが破壊し損ねた箇所を、ショーンはクリムゾンストックで壊して進んでいった。


 屋敷を捜索していたリチェルカーレは、駆け寄ってくる『自分』に目を見開いた。
「シリウス、あの子!」
 リチェルカーレは叫んで、彼女に駆け寄る。
「大丈夫? 一体、何が…」
「――っ」
 リチェルカーレが声をかけても、彼女からの返事はない。
 衰弱しているのか、荒い呼吸を繰り返している。
「ここは危ないわ。まず避難を……っ」
 リチェルカーレは、倒れてくる彼女を慌てて抱き止めた。
「ドッペルさん!」
「気を失っただけだ」
 悲鳴を上げるリチェルカーレを気遣うように、シリウスは答える。
「――俺が運ぶ」
 シリウスはそっと、彼女の華奢な体を抱き上げた。


「とりあえず、まだドッペル達が居るなら助けないと!」
「……うん」
 ヴォルフラムの言葉に応えながらも、『カグヤ・ミツルギ』はこの不可解な状況について模索していた。
「あの特殊なドッペルを使えば、カタリナは蘇る」
 カグヤの思考は、一つの推論を導いていた。
(……勿論、見た目だけ)
 カグヤは、ドッペルの特性に着目する。
(後は言動をそれらしくすれば、信じ込ませるのは難しくない。組織トップにそう会える平組織員はいない)
 カグヤはさらに思案し、仮説を立てた。
 だが、全てを結論付けるには、要となるピースがまだ足りない。
(問題は、終焉の夜明け団が何時どうやって、ドッペルに見せたのか? 両組織が仲良く協力してた、とは思えないし)
「もう一人のカグちゃん!」
 カグヤが目を細め、更なる思考に耽ろうとした時、ヴォルフラムの声が聞こえてきた。
 カグヤは自分の思考に終止符を打ち、周囲を窺う。
 そこには、もう一人の自分が苦悶の表情を浮かべていた。
「もう一人のカグちゃん、大丈夫?」
「――っ」
 ヴォルフラムの悲痛な叫びも虚しく、助けを求めてきたもう一人のカグヤは苦しげに表情を歪める。
 やがて、疲弊していた彼女は、そのまま意識を手放した。
「何があったのか……」
 カグヤは事態の急転を受けて、状況を整理してみる。
「とにかく、屋敷の外に出よう。僕が運ぶよ」
 ヴォルフラムはもう一人のカグヤを抱えると、カグヤとともに屋敷の外へと向かった。


「火の回りが早いな」
 ベルトルドは燃え上がる館の部屋へと視線を走らせる。
 その時、部屋の隅に現れた――見知った彼女の姿が目に止まった。
「ヨナが、もう一人……?」
 ヨナに変化したドッペルに驚きつつも、ベルトルドは状況を把握する。
 以前の指令であったドッペルの報告を思い出し、危険は少ないと判断したからだ。
 ベルトルド達が近づくと、彼女は安堵したのか、そのまま意識を手放した。
「……私ですね。以前、報告にあったドッペルでしょうか?」
 自分と全く瓜二つの彼女を見て、ヨナの瞳に複雑な感情が入り乱れる。
「悪いものではないのだろう? しかし、姿を変えるだけで精一杯のようだ。俺が運び出すから、ヨナはもう少し屋敷を調べてくれ」
「分かりました」
 ベルトルドの指示に、ヨナは神妙な面持ちで応えた。


「誰かが中にいるかも……助けないと……!」
 崩れ落ちた瓦礫の奥に気配を感じて、アリシアは部屋に入った。
「……え、私……?」
 アリシアは、自分の姿をした人物を見て目を見張る。
 意識が朦朧としていた彼女は、やがて辛そうに目を閉じた。
「これは……見分けが付かないね、確かに」
 クリストフは、アリシアの姿のドッペルに思わず感心する。
「ま、俺に化けないでくれて良かったよ。これなら、運びやすい」
「――っ」
 クリストフはそう告げると、アリシアの姿のドッペルをお姫様抱っこで運ぶ。
「何だか……変な感じです……」
 アリシアは、自分と瓜二つの彼女がクリストフに抱きかかえられるのを見て思わず赤くなる。
 クリストフは、胸を高鳴らせるアリシアを見遣るとそっと語りかけた。
「じゃあ、戻ろうか」
「その前に……」
 クリストフに抱きかかえられているドッペルに対して優しい光が包まれる。
 それがアリシアの天恩天嗣だと気づく頃には、ドッペルの治療は終わっていた。
 アリシアは周りを警戒しながら、クリストフの後ろについて屋敷を脱出しようとする。
 しかし、屋敷の入口付近が瓦礫で埋まっており、行く手を阻んでいた。
「任せて!」
「ドクター、ここは私が!」
 火事で崩れて通れなくなっていた入口は、皆と先に合流を果たしていたレオノル達が破壊した。
 館から出て安全な場所へと避難しようとした時、前方に気配を感じて立ち止まる。
 彼らが視線を向けると、ゾンビ達が次々と屋敷の周辺から集まってきていた。
「黄昏と聡明 明日を紡ぐ光をここに」
 魔術真名の詠唱を終え、シリウスはリチェルカーレにドッペルを預けると、ゾンビ達のもとに赴く。
「シリウス、気をつけて」
「ああ」
 背後からかけられた声に、シリウスは頷いた。
 そして、リチェルカーレは皆に禹歩七星を掛けていく。
 ゾンビ達を倒すべく動くのは、他の浄化師達も同様だ。
「アリシア、彼女を頼む」
「はい……」
 クリストフはそう言うと、アリシアにドッペルを預ける。
 魔術真名を唱えると、クリストフはシリウスとともに前衛に出た。
「カグちゃん、お願い!」
「うん……」
 ヴォルフラムは、カグヤにドッペルを預けると戦闘態勢に入る。
 やがて、赤く仄暗い残光が走り、シリウス達とゾンビ達が激突した。
 シリウスが、ソードバニッシュで先手を打つ。
 ゾンビ達は不意を打たれたように、隊列を狂わせた。
 そこに、クリストフは間合いを詰めると、初手から全力で叩き込む。
 踏み込みの勢いも込めた爆裂斬。
 ゾンビは間一髪のところで避けようとするが間に合わず、腕を斬り裂かれる。
 その瞬間、傷口が爆散し、ゾンビの腕を吹き飛ばす。
 だが、痛みを感じていないゾンビは、即座に反撃を繰り出した。
 クリストフは、それを制裁2で捌き、カウンターを入れる。
 瞬く間に、ゾンビの1体が倒された。
 しかし、他のゾンビ達はそれを顧みない。
 そのまま、前衛に立つシリウス達を掻い潜り、ドッペル達のもとへと向かおうとする。
「――こいつら、ドッペル達を狙っているのか」
 シリウスはドッペル達へと向かうゾンビを最優先に、間合いに踏み込んで攪乱しつつ攻撃を加えていく。
「目の前の私を無視して、ドッペルを狙っている……?」
 前衛の防衛を突破したゾンビが、ヨナを無視して突き進んでいった。
「生かしておくのに都合が悪いというのなら、みすみすやらせません」
 ドッペル達に追い縋ろうとしたゾンビに、ヨナはナイトメアを放つ。
「キョウヤ、やるわよ」
「はい」
 サクの言葉に、キョウは応える。
 そして、前衛サク、中衛キョウ、後方にドッペルとなるように隊列を組み直す。
 サクはリンクマーカー2で命中力を上げ、ソニックショットでゾンビ達を翻弄する。
 キョウは鬼門封印で、サク達に迫るゾンビの回避率を下げた。
「この方達は、守って見せます……!」
 アリシアはリチェルカーレと連携して、仲間への天恩天嗣の回復と、近づく敵へ鬼門封印を施す。
 ゾンビの対処に向かうショーンに対して、レオノルは言った。
「つまり、彼らにとって、ドッペルを生かしておくのは都合が悪いんだよね」
 視線をゾンビ達に油断なく向け、ショーンに告げる。
「さぁ、ショーン、ぎゃふんと言わせに行こうか」
「ドクター、承知しました」
 レオノルの呼び掛けに、ショーンは静かに返す。
 ヨナの攻撃を受けながらも、ゾンビはドッペル達までの道を切り開くように、二打三打と連続して攻撃を繰り出す。
「偽物でも、今はカグちゃんの姿をしてる子も居るんだ。近づけさせないよ!」
 ヴォルフラムは怒槌で、迫りくるゾンビを鉄槌の如き迎撃した。
 ほぼ同時に、ショーンのソニックショットが放たれる。
 度重なる猛攻を前にして、ゾンビの1体が力尽きたように崩れ落ちる。
「ごめんね。彼等は重要参考人なんだ。とっとと消えてもらうよ!」
 ゾンビ達が固まっている場所を狙って、レオノルがソーンケージを叩き込む。
 魔力で形作られた茨。
 限界まで収束させたソーンケージは、固まっているゾンビ達を貫く。
 そこに、サクのソニックショットが放たれる。
 3体目のゾンビが倒れ、残りは2体。
 前衛に立つシリウス達に対して、剣を持った2体のゾンビが立ちはだかる。
 ゾンビがクリストフの動きに合わせ剣を振り抜くと、真っ直ぐに踏み込んだクリストフは紙一重で躱す。
 ヴォルフラムの援護を受けながら、シリウス達はゾンビ達との間合いを詰めていく。
 だが、残りの2体の動きは、今までのゾンビ達の速度を遥かに上回っていた。
 ゾンビ達は間断なく攻撃を繋いでくる。
「――っ!」
 ゾンビの1体が、疾駆の早さで繰り出した鋭い剣閃。
 それは超速の乱舞を繰り出し、クリストフを肉薄する。
 しかし、ゾンビ達が囲み、2撃目を放とうとした時には、シリウスは表裏斬を放っていた。
 大きく胴を斬り裂く。
 シリウスは動きが鈍ったゾンビの背後に回ると、足を断ち切るような勢いで追撃の一閃を放つ。
 そこに、ヨナのライトレイが放たれた。
 4体目のゾンビが倒れる。
 残ったゾンビは退避しようと試みるが、シリウスの方が速かった。
 瞬速の踏み込みと共にソードバニッシュ。
 最後に残ったゾンビを斬り飛ばす。
 全てのゾンビ達との戦闘を終え、屋敷に静寂が戻ってきた。
「これで全部だね」
「回復、します……」
 クリストフが周囲を確認すると、アリシアは荒い呼吸をしているドッペル達に寄り添い、体力を回復させていった。
 全てのドッペル達の表情が良くなり、呼吸も安定する。
 シリウス達は館から離れ、ドッペル達を安全な場所へと運ぶ。
「――っ」
 やがて、ドッペル達の喘ぐような声が聞こえてきた。
 皆、寝覚めたばかりのように薄く目を開けている。
「……っ」
 目覚めたリチェルカーレの姿をしたドッペルに、シリウスは表情を緩めた。
「気が付いた? どこか痛むところはない?」
「あっ……」
 リチェルカーレはそっと微笑む。
「頑張ったね。もう大丈夫」
「ありがとう……」
 慈愛に満ちたリチェルカーレの言葉に、彼女の姿をしたドッペルは再会の喜びを噛みしめる。
 情報収集は後でいい。
 シリウスは周囲の確認と安全を確保してから、教団へ彼女達の保護を要請した。
「ベルトルドさん。私はもう少し、危険の有無や不明者の形跡を調べてみます」
「ああ」
 ヨナは魔力探知を用いて、周囲に対して神経を尖らせる。
 遠くから放たれる魔力の波動を感じる。
 だが、少なくとも今、この付近では殺気を纏った存在は感じられない。
 不明者の形跡を調べ、先程、戦ったゾンビ達が調査に向かったレヴェナントの者達だと判断した。




 ドッペル達は屋敷へ訪れた人の行動を学習して、その人物を真似る。
 しかし、今回は意識を失っていたため、本人とかけ離れた言動を取るドッペル達もいた。
 キョウは弱っているドッペルを見て、サクを重ねていた。
 戦闘中は守ってあげないと思ってて、こういうサクも良いなぁと思った。
 だが、本来のサクと異なるサクは、やっぱり嫌だと感じてしまう。
「自分より弱いサクは嫌なので、早く違う姿になってくれませんか」
「違う姿ね……」
 キョウの懇願に、サクの姿をしたドッペルは本物のサクに視線を向ける。
「それじゃ、キョウヤ。貴方は、ドッペルのどんな姿がお望みなのかしら?」
「怖い笑顔、辞めてくれると嬉しいです!!」
 意味深な本物のサクの微笑みに、キョウは狼狽えた。
 その時、ベルトルドは背負っていたヨナの姿のドッペルも目覚めたことに気づく。
「大丈夫か?」
 と声を掛け、彼女を降ろすと、ついつい見入ってしまう。
「……うん」
 ベルトルドの言葉に返ってきたのは、透き通るような小さな声。
 触れただけで溶けてしまいそうな、雪を彷彿させる繊細な声だった。
「館で、何が行われていたんだ?」
「……魔術研究」
「ドッペルは、どういう存在なのか?」
「霧の塊……。だから、近くの人の姿を鏡写して姿を変えないと話せないの……」
「これから、どうしたいか?」
「……分からない」
 ベルトルドの最後の質問に、ヨナの姿のドッペルの肩がびくりと跳ね、あたふたと視線を泳がせる。
「……ただ、怖い」
 ヨナの姿のドッペルは怯えるようにして俯いていた。
 不安そうに揺れる瞳は儚げで、震えを抑えるようにベルトルドの腕にしがみついてくる姿はいじらしかった。
 本来のヨナならまず見せない気弱な姿に、ベルトルドは優しく語りかけた。
「無理はしないでくれ。全部に答えなくてもいい。ドッペル達が利用されているだけで、教団と敵対するつもりがないのなら保護したい」
 胸に染みる静寂が舞い降りたのは一瞬。
「……ありがとう」
 顔を上げたヨナの姿のドッペルは、初めて柔らかく微笑んだ。
「ところで、あまり腕にしがみつくのは……」
「……だめ?」
「……っ」
 彼女のその声音は弱々しく、あまりにも脆い。
 上目遣いに見上げてくるその瞳に、ベルトルドは成す術がない。
(姿はそっくりなのに、本人より素直で少し調子が狂うな)
 その時、調査を終えたヨナが戻ってくる。
「私の姿でべたべたされるのは……」
「――っ」
 ヨナに注意され、ヨナの姿のドッペルは怯えたようにベルトルドの背中に隠れた。
「まあまあ。今は、それどころではないだろう?」
 ベルトルドは、瞳を潤ませるヨナの姿のドッペルを庇って仲裁する。
 そして、核心に迫ろうとしていた話へと矛先を変えた。
「大方、こうなった理由を聞いてたとかで処分されそうになったんだと思うけど……あれから屋敷の外に出なかったの?」
「……連れ戻された」
 ヴォルフラムの疑問に、カグヤの姿をしたドッペルは答える。
「終焉の夜明け団?」
「はい……。私達を、産み出した『イヴル』様に……」
 クリストフの問いに、アリシアの姿をしたドッペルが目を伏せた。
「……死人が蘇った、ってだけの話だと、素直に考えればアンデットなのかなって思うんだけどね。そこまでシンプルな話でもないでしょ、多分」
「特殊なドッペルを使えば、カタリナは蘇る」
 レオノルの疑問に答えたのはカグヤだった。
 雪に霞む夜景を眺めながら、カグヤの姿のドッペルは悲しそうに佇む。
「……うん。イヴル様は一度、姿を変えたことがある人物なら、近くにその人物がいなくても姿を変えられるドッペルの個体達を産み出すことに成功した。その中でも、もっとも優れた個体だったドッペルに以前、屋敷に訪れたカタリナ様を学習し、真似るように命じたから」
「そのドッペルを使って、イヴル様はサクリファイスを集めていたんだよ」
「そうなんですか」
 ショーンは、レオノルの姿のドッペルを丁重に扱う。
「そんな、私のドッペル相手に畏まらなくていいよ、ショーン」
「いえ。いくら見た目だけとはいえ、どちらも大事に扱わないと良心が……」
 レオノルの苦笑に、ショーンは弁明する。
「終焉の夜明け団が、カタリナを騙ってサクリファイスを集める利点は、ある。……残党を、エリクサーの材料にする」
「――っ」
 悲痛な声は、夜空に吸い込まれて消える。
 ドッペル達の明らかな動揺に、カグヤは推測を確信に変えた。
(危険分子排除ついでに利用ってところか)
 ドッペル達からカタリナの顛末を聞き、カグヤは痛ましげな表情を見せた。



 屋敷を立ち去り、新たな拠点を目指していたイヴルは、浄化師達が互いに助け合う様子を見て強い懐かしさを覚えた。
 不意に、幼い日のカタリナの言葉が脳裏に蘇る。
「イヴル、さようなら」
 あの日――君の声も涙も、雨に溶けてしまった。
 魔女の家系だと虐げられ、様々なものを剥奪されたカタリナに残されたものは、彼女の母親が常に持っていた十字架だけだった。
「……別れなど認めない」
 イヴルは瞳に暗い火を宿して主張する。
 そして、隣に立つカタリナに視線を向けた。
 彼は、ドッペルを見ていない。
 ドッペルが姿を変えた『カタリナ』だけを見ていた。
 もう会えないと絶望した。
 もう一度、会いたいと夢想した。
 恋に焦がれて、現実に打ちのめされて、それでも求めた女性が手に届く場所にいる。

「カタリナ。これから、『ヴァルプルギス』一族が移民する前に居たという――『アルフ聖樹森』に向かう」

 身を焦がすあらゆる感情を呑み込んで、イヴルは大切な女性の名前を口にした。
 たとえ――いつか現実が、理想を呑み込んでしまったとしても。


虚偽のサクリファイス
(執筆:留菜マナ GM)



*** 活躍者 ***

  • ヨナ・ミューエ
    私は私の信じる道を
  • ベルトルド・レーヴェ
    行くか
  • ヴォルフラム・マカミ
    カグちゃーん、ごはんだよー
  • カグヤ・ミツルギ
    ・・・ん、解った。

ヨナ・ミューエ
女性 / エレメンツ / 狂信者
ベルトルド・レーヴェ
男性 / ライカンスロープ / 断罪者

ヴォルフラム・マカミ
男性 / ライカンスロープ / 拷問官
カグヤ・ミツルギ
女性 / 人間 / 陰陽師




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2019/12/09-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[10] レオノル・ペリエ 2019/12/29-22:38

やっほー°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
滑り込みで来たよ!!
とりあえずドッペル運ぶのもゾンビやっつけるのも頑張るから任せて(`・ω・´)
んじゃ、よろしくね!!  
 

[9] キョウ・ニムラサ 2019/12/29-15:44

滑り込みで失礼します。
悪魔祓いのサクラと陰陽師のキョウです。
よろしくお願い致します。  
 

[8] リチェルカーレ・リモージュ 2019/12/28-23:07

シアちゃん、クリスさん。どうぞよろしくお願いします。
ドッペルさんたちを助けて、ゾンビを倒すときは守る感じで…戦闘後にお話を聞く流れでしょうか?
はい、知っていることはきっと、教えてくれると思います。
戦闘後は、教団で彼らを保護してくれないかしら…。

わたし達も戦闘になった場合はわたしが護衛に、シリウスが攻撃に入れ替わりますね。  
 

[7] ヨナ・ミューエ 2019/12/28-15:34

アリシアさんクリストフさんも宜しくお願いします。
ドッペルについてのお返事ありがとうございます。攻撃性…というか攻撃能力自体が無さそう、と。
疲弊しているのが少し心配ですけども会話自体は期待できそうですね。

そうそう、話は全く変わるのですが、この間のサルーグ村でのお祭りでは、
ヴォルフラムさん達のお店のお饅頭、美味しかったです。御馳走様でした。  
 

[6] クリストフ・フォンシラー 2019/12/26-22:11

断罪者のクリストフと陰陽師のアリシアだよ。よろしくどうぞ。

前にドッペルが現れたときには関わってないんだけど、報告書は読んできたよ。
まあ、今回の助ける子達は危険は無さそうだしゾンビに気をつければ大丈夫かな?

ああ、俺達も変身はアリシアになって貰う。
運ぶのはどっちにしても俺がするし、自分の姿のドッペル運ぶより
アリシアの姿の方がいいしね(にっこりと)  
 

[5] リチェルカーレ・リモージュ 2019/12/26-17:51

リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
アライブは陰陽師と断罪者です。
どうぞよろしくお願いします。

はい、わたしの会ったドッペルさんも何も悪いことはしなかったです。助けて、お話が聞けたらいいと思います。
それにしても、あのお屋敷は夜明け団が使っていたと聞いたのに。サクリファイスのカタリナさん…どういう繋がりなんでしょう。

あ、わたしたちも化けるのはわたしに。運ぶのはシリウスが、と。反対だと運べないので…。  
 

[4] ヴォルフラム・マカミ 2019/12/26-13:25

ごめんねー、カグちゃんなんか色々考えこんじゃってるみたいだから…
僕らの行動は、ドッペルには…業腹だけど…カグちゃんに化けて貰って
ドッペルの運搬は僕がやって、ゾンビが出てきたら、カグちゃんにバトンタッチする感じ。
そのままカグちゃんにはドッペルの護衛もしてもらうよ。

えぇと、ここのドッペルは他人に化けておしゃべりするだけで、戦闘能力は皆無っぽかったよ。
勿論、攻撃的でもない。他人に化けてイタズラする程度だね。
あと、他人に化けないと、おしゃべりできないって言ってたかな?  
 

[3] カグヤ・ミツルギ 2019/12/26-12:58

陰陽師のカグヤと、拷問官のヴォル。…よろしく、お願い、します。

…カタリナ・ヴァルプルギスとは直接対峙してないから、わからないけど…
死者は蘇らないから、多分、前にこの館に居た、終末の夜明け団が調整した特殊なドッペルが
カタリナ・ヴァルプルギスになってるんだと、思う。
……前来た時、ドッペルが、館を訪れた人の行動を学習してる、と言っていた。
以前ここに、カタリナ・ヴァルプルギス本人が来て、それを観察・学習したドッペルが、
今のカタリナ・ヴァルプルギスに成り代わってる、のだと思う。


……要人暗殺して、暗殺対象とドッペルをすり替えて、傀儡にでもするのかと思ってたけど、
要人とドッペル会わせて学習させて、もし要人が死んだ場合、
学習したドッペルが化けて、要人は死んでいない、又は奇跡等で蘇ったとかいえば、意欲を失った狂信者も再燃する、か。
そっちの方は考えてなかった…でも、ドッペルの特性の性質上、その運用の方が妥当か…  
 

[2] ヨナ・ミューエ 2019/12/26-11:53

狂信者ヨナ・ミューエおよび断罪者ベルトルド・レーヴェ。宜しくお願いします。

再びカタリナ・ヴァルプルギスの名前を聞くことになるとは思いませんでしたね…。
何者かが彼女の名を使ってまた何か成そうとしているのでしょうか?
どちらにせよ用心していきましょう。

ええと、前に現れたドッペルは特に攻撃的ではなかったんですよね?
出来ればここで何があったのか聞く為に連れ出せれば良いのかなと思います。
運ぶのはベルトルドさんに任せて、私はゾンビの対応をしようと考えています。