~ プロローグ ~ |
飛び交う金切り声。ガラスの割れる音。甘ったるい酒の臭いを身にまとった知らない男。それをお父さんと呼べという母親。 |
~ 解説 ~ |
少年型のベリアル(スケール1)の討伐依頼です。 |

~ ゲームマスターより ~ |
初めまして。月村と申します。フロンティアファクトリーに時折出没していたのでお久しぶりの方もいらっしゃるかもしれませんね。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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*目的 ベリアルの撃破 *行動 ●事前行動 地図などで広場へのルートを確認 ユウの特技【魔力探知】でベリアルの位置を把握する ●作戦中 ユウに【ランタン】を持ってもらい、その光でベリアルを注意を引き、適当に応戦しつつ広場へ誘導 誘導後、他のメンバーと共に包囲して戦闘開始 ●戦闘時 ・セプティム 前衛を担当 【クロス・ローズ】を使った接近戦を仕掛ける 主に触手と脚部を狙って攻撃。機動力を削ぐ 魔法陣を見つけたら【エッジスラスト】による斬撃を加える 魔術を使ってきたら【マナ・シールド】で防御して対応 鎖に捕らえられた魂が出現したら即座に斬る ・ユウ 後衛を担当 ベリアルが包囲網から逃げないよう【プロージョン】を放って支援攻撃を行う |
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【目的】 ・少年型ベリアルの討伐(少年の魂の解放) 【事前準備】 ・ベリアルの発見、戦闘前に市街地の立地を確認 ・戦闘場所となりそうな広場(又は空き地)を見つけルートを確認 【誘導・追尾】 ・(アメジス)特技【魔力探知】で動き回るベリアルを発見。ベリアルを目視するまで継続 ・(2人)追尾班としてベリアルの後方に周り気付かれない様に追尾。逃げ道を塞ぐ 【戦闘】 ・アメジスは中衛、藤葉は後衛に配置。前には出ない ・戦闘開始直後に【魔術真名】を宣言 ・能力が上がっている内にベリアルの足に【部位攻撃】 ・それ以降はアライブスキルを使用して能力を上げ触手に対して支援攻撃 |
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目的 ベリアルの討伐 誘導班。たいまつ所持 ヨナ 魔力探知でベリアルの位置を把握 標的を明かりで釣り想定の位置までおびき寄せそこで戦闘 追尾班の存在を気付かれにくくする為魔力弾を打ち上げ注意をこちらに向ける 目的地到達後後ろから戦闘参加 こうした方が確実に注意を向けられます 奪われた物を取り返すこともできないならせめて幕を引くのが我々の役目です これはもう少年ではないんです ベルトルド ヨナと共に誘導班 誘導後前線でベリアルを囲むような陣形 人型なので蹴りで膝を狙いまず機動力を落とす 攻撃をしつつ核を探しそこを集中して狙う ぬくもり、命、魂 少年の求めていた灯りは結局奪うことしかしなかったんだな 俺達も、彼にとっては奪う側だ |
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◆目的 ベリアルの討伐 ◆行動 事前に広場及びルートを確認 レイの【魔力探知】で敵の位置を探索 得た情報は他の仲間にも共有し、周辺への被害やルート上の安全確認に向かう 確認後は広場へ合流 【魔力探知】は常に使用し、不測の事態に備えておく 「こそこそするのは苦手なのデスガ… 「我慢してください ◆戦闘 戦闘開始前に手を合わせ魔術真名を唱える 仲間の動きを読み、敵を取り囲むように配置 エリィ:後衛 MPが続く限りスキル『フレイム』を使用 弱点である魔方陣を優先的に探し、敵の殲滅を第一に考える 「燃やしつくしマス!」 レイ:中衛 前衛の隙を補うようにスキル攻撃 敵が魔術を使う事も念頭においておき、そんな素振りが見えたら阻害又は注意喚起 |
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■目的 少年型ベリアル討伐 ■行動 役目は【追尾班】 話し合いで戦場を決めた後、索敵へ 仲間の魔力感知で方角確認の当たりをつけキリアンが飛行 上空から捜索し仲間に伝える 敵が誘導班に釣られたら追尾 敵が他へ気をそらす等想定外の事態に備えフォロー キリアンが飛行し周囲の状況把握しつつ追尾 避難完了しているとの事だが市民の存在も一応意識 戦闘開始後 キリアンが前衛、セアラが後衛 キリアンは他断罪者と協力し敵包囲 後衛への攻撃を防ぎ味方の攻撃機会を作る 隙あればJM2使用 セアラは積極的にDE3使用 可能なら頭部や脚を狙い行動の自由を奪いたい 戦場全体の把握に努め仲間フォロー 戦闘終了後 少年の遺品回収 素性を調べ家族へ報告に行けたら |
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■戦闘前 黒憑と共に念のため周囲に人影がないか確認しながら進む 先回りして、誘導先に人影がないかも確認 ■戦闘ー黒憑(後衛・スペル詠唱) 攻撃優先でダメージを与えることに専念する。 連携出来る状況なら仲間が敵を食い止めている間を 狙って「プロージョン」で攻撃。 敵とは常に1〜2以上の距離を保ち、接近されないようにする。 ■戦闘ー東(前衛) 盾役。「絶対防御ノ誓イ」を使用し、大鎌を使って敵の足止めや牽制。 HPが低い仲間が狙われるようなら間に入って攻撃を庇う。 仲間が攻撃を撃つ時は合図を出して貰って、巻き込まれないよう一旦敵から距離を取る。 HPが10以下になったら後ろに下がらせてもらうよ。 |
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◆心情 ベリアルと化した少年、かぁ …早く彼を休ませてあげないといけないね、真昼くん ◆事前 市街地の立地確認 討伐場所の広場へのルート確認 上記を記憶しておく ◆安全確認班 月明りでしか見えない分、音にも注意を払いたいな 仲間の魔力探知の情報と破壊音の情報を合わせて、ある程度の位置を出したいね 誘導班の邪魔にならない様近づきすぎず、離れすぎずの距離で安全確認をしていこう 万が一民間人を発見した場合は、周囲の建物の中又は広場の向こう側へ避難する様促す ◆戦闘 戦闘直前魔術真名 後衛 広場に繋がっている通路の直線上に位置 敵の逃走阻止出来る様警戒 前衛に合わせ通常攻撃で支援 ◆戦闘後 魂を解放後は手を合わせたいな あの世では、安らかに |
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■行動 ∇街の状態を把握 ティ:魔知検知で他の種族仲間達と周りの把握 ロス:狼状態で嗅覚聴覚を敏感に ■戦闘 ∇序 初めスペル ロスはランタンを腰 ティは先頭陣と共に松明を ティは常時 盾を構え魔知での警戒は怠らず 仲間の負傷に天恩天賜での対応 ∇誘導 ・ロス 前衛の仲間とタイミングを合わせ攻撃し気を引く 誘導失敗時は敵の懐に潜り削岩撃 自分が攻撃しない時は盾構え ・ティ 仲間が攻撃しやすいよう松明を持ち距離はおく 敵が建物等に近付くなら符で足元攻撃し牽制 ∇空地 ・ティ 灯りで囲み前衛陣が攻撃しやすいよう 基本は前衛陣に攻撃を任せ前衛陣の死角等の攻撃に符 他にベリアル達がいないか周囲警戒 ・ロス 仲間の攻撃の邪魔せず 敵の出鼻を折るつもりで攻撃 |
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~ リザルトノベル ~ |
●星の下に集う 夜道をぺたぺたと子供の足音が駆けていく。それに追随するのは子供のはしゃぎ声ではない。そこを通っていくのは嵐のようなベリアルの破壊だ。 町の夜を駆けるべリアルの討伐指令。それに答えたのは8組のエクソシストだった。集まった16人の間に漂う空気は酷く重たいものだった。無理もないことだ、と籠崎・真昼は思う。かつては人間、それも子供だったのだ。アシッドは生き物を等しく飲み込む。その可能性は十分わかっていたとはいえ、元が人と思えば足取りが重くなる気がした。 そして、心配するべき要素はもう一つあった。真昼は自身の契約者をちらりと見る。彼らにとってはこれが最初のベリアル討伐なのだ。最初から元人間である。 「朝日ちゃん、大丈夫か?」 問いかければ、降矢・朝日は強張った笑みと共に毅然とした答えを返した。 「大丈夫。……早く彼を休ませてあげないといけないね、真昼くん」 これが初めてとなるのは彼らだけではない。 「僕達は今回が初任務なんだ。どうぞ宜しく」 簡単な自己紹介の後にアメジス・ローザはそう付け加えた。それまで半ば彼の影に隠れるようにして立っていた藤葉・宮野も身を乗り出して決意を口にする。きゅっと結ばれたポニーテールが頭上で揺れていた。 「人型の……少年のベリアルと戦うのは辛い、です。でも、魂だけでも救ってあげたいんです」 「そうですね……奪われた物を取り返すこともできないなら、せめて幕を引くのが我々の役目です」 それに答えたヨナ・ミューエの言葉は、半ば自分に言い聞かせたものだった。そう思わないとやっていられない。 勿論、全員がそのような心苦しさを抱えている訳ではない。エリィ・ブロッサムの中には「ベリアル=倒すもの」という図式が出来上がっていたし、またその契約者レイ・アクトリスも戸惑いを見せない。同情の気持ちはあれど、倒すことが救いと知っているからだ。 さらに言えば黒憑・燃は「俺は餓鬼一匹どうなろうと知ったこっちゃねぇ」と思っていたし、清十寺・東も容赦はしないと心に決めている。中でも冷徹にして苛烈なのがセプティム・リライズだ。 「そもそもアシッド確認の報告があって避難も行われていたと聞きます。つまりこうなったのは自業自得です」 「わかってはいるけど、もう少し思いやりがあっていいと思うんだけど……」 容赦のないセプティムのそばで契約者であるユウ・ブレイハートは小さく呟いた。こちらはかなり気が滅入っている。 (あー、こりゃひでえ仕事だ。ガキぶん殴るのは趣味じゃねーんですがねえ) キリアン・ザジは自身の契約者、セアラ・オルコットの表情を伺う。お嬢に足をひっぱられると面倒くせーな、と思ってのことだ。断じて強い抵抗を感じている様子で唇を噛みしめていた彼女を心配している訳ではない。 「……やるよ。やってやる」 セアラは小さく声をあげる。小さいが、確かに芯の通った力強い宣言だった。 「悔しい思いはもういやだ! 絶対、倒す!」 伏せられていた瞳は強い光を宿して前を見据えていた。案外しゃんとしてんじゃねーの、と彼は評価を改める。 (ちったあ、浄化師としての自覚ができましたかねえ) そう考える彼の表情は誰にも見えない。 ●追走劇と待ち受ける者たち ともあれ、まずはベリアルの行方を追わなくてはならない。 5人のエレメンツたちが感覚を研ぎ澄ませながら歩き始める。魔力検知を行っているのだ。 その中で、シンティラ・ウェルシコロルには気にかかっていることがあった。他にもベリアルが現れているかもしれないという懸念だ。アシッドは広域に渡って観測されている。街のことを考えれば、考えるべきなのは目の前のベリアル一体のことだけではない。契約者のライカンスロープ、ロス・レッグも同じ思いで鼻をひくつかせていた。狼の嗅覚を生かしているのである。 最初に魔力の気配を感じ取ったのはレイだった。「あっちです」と指し示された一点の先を見通すべく、キリアンは竜の翼を広げて夜空に舞い上がった。暗闇に目を凝らし、その方角へ安全に、着実に進める道筋を告げる。指示通りに道を進みながら、朝日は破壊音が着実に近づいていることをひしひしと感じ取っていた。事前に頭に叩き込んでいた地図を思い浮かべ、交戦場所の候補で最も近い広場までの道筋を描く。あと数歩で会敵というところで彼女は真昼と目くばせをかわした。そうして、二人は仲間とは違う方向へと走り出す。 彼らの役割は交戦地点までの道筋の安全確認だ。ベリアルを誘導する仲間たちに先行しなければならない。さらに先を行く燃と東、エリィとレイの背中を見ながら、彼らは協力し、時には肩車しながら道脇の街灯に黒い布をかぶせて回る。光に反応する相手だ。注意をそらすものは隠しておきたい。 安全確認組が離脱したのを見届けて、誘導班はベリアルの位置を取り囲んだ。追尾のために暗がりに身を潜めたアメジスは最後の確認とばかりに横で息をひそめる藤葉に言い聞かせる。 「いいかい、藤ちゃん。出来る事だけをするんだよ」 「はい、アメジス兄様。無理はしません」 しっかりと藤葉が答えた直後、合図とともにランタンや松明を掲げた誘導班が飛び出した。掲げられた灯火がくっきりとお互いの姿を映し出す。 荒れ狂うベリアルの姿はとても小さいものだった。想像していたよりも幼い姿にランタンを掲げたユウは思わず目を伏せたくなった。傍らではセプティムが一瞬の躊躇もなく得物を構えた気配がする。ああ、本当に気が滅入る。 突然光に照らし出されたベリアルは驚いたように視線を巡らせた。少年が光に抱いていたのは憎悪だけではない。拒絶への恐怖と倦厭が入り交じり、かつて一人ぼっちの少年だった存在は一歩後ろに下がる。 暗闇に潜む仲間たちに気づかれると厄介だ。ヨナは牽制に魔力弾を一つ放った。これなら確実に敵の注意を引き付けることが出来る。これはもう少年ではないのだと割り切った末の決断だ。 それが攻撃だという事はベリアルにも明確に伝わったらしい。全てを憎悪に塗り替えて、かつての少年は地を蹴った。それを見て取ったヨナは獣に背を向けて全力で走る。狙い通りベリアルの足音はこちらに向かっているようだ。だが、想定よりも速い。 元々開いていた距離はあっという間に縮まってしまった。獣の息遣いがすぐそばに迫り、伸ばされた触手が背筋を掠める。触手が足に絡みつくかと思ったその時、鈍い音がして背後の気配が離れた。割り込んだベルトルドが横から蹴りを叩きこんだのだ。すぐにロスとセプティムが追撃を入れて足止めをする。思わず足を止めたヨナにベルトルドは声をかけた。 「あのなあ。お前最近こういうの多くないか」 「こういうのって何ですか」 反射的な問いに返ってきたのは溜息と、とても短い沈黙。 「一人でやっていると思うな。いいから、先に行け」 ヨナは少しむっとした顔をしたが、すぐに黙って元のルートを駆けだした。彼が正しいのだろうという事はわかっていたし、図星でもあった。走るヨナを唸るベリアルと交戦する誘導班が追い、追尾班が後ろを固めて退路を塞ぐ。向かう先は仲間の待ち構える広場だ。 一方、戦場と定められた広場。ここには6人のエクソシストが身を潜めていた。 「こそこそするのは苦手なのデスガ……」 「我慢してください」 エリィの訴えをあっさりと抑え、レイは暗がりに目をこらす。魔力は確実にこちらに近づいてきている。少し遅れてやってきた真昼たちも既に位置についた。あと少しでベリアルと仲間が到着するだろう。人がいないことも確認してあるから、後は待つだけだ。 遠くから響く戦闘の音を待ち受けながら東は静かに大鎌を握りなおした。ベリアルの来る道を睨む横顔に燃は「怖い怖い」とつぶやく。 「しっかり護ってくれよ、ダーリン」 「甘ったれたこと言ってんじゃあないよ! 自分の身くらい自分で護りやがれ」 ばっさりと切り捨てられても、燃はまるで堪えた様子を見せない。 「俺は餓鬼一匹どうなろうと知ったこっちゃねぇが、先生に怒られるのは悲しいからなぁ。ま、程々にやってやるか……」 そう言っている間にも誘導班の掲げる灯火は近づいてきていた。やがてベリアルが変わり果てた姿を広場に晒す。この醜悪なオブジェも俺が手を加えりゃ少しはマシになるだろ、と考えて燃は獲物を構えた。 「さて、まずはどこを削ってやろうかね?」 悠然と好戦的な笑みを浮かべて進む燃を追い越すように、盾役の東は敵に向かって駆け出した。自分としては背中に傷をつけなければなんでもいい。 「はン、可哀想とは思うが容赦はしねぇ。さっさと死にな、恨み言は墓場で聞いてやる」 大鎌を構えた新手の登場にベリアルの足が止まった。そこに燃のプロ―ジョンが炸裂する。続いて、逃げ道を塞ぐようにして後を追ってきたアメジスの攻撃と、ベルトルドの蹴りが立て続けにベリアルの足に叩き込まれた。討伐戦の始まりである。 ●広場での戦い 自分が何らかの計略によって誘い込まれた事を悟ったのだろうか。それとも見覚えのある場所だったからだろうか。 かつての少年は一つ瞬きをしてエクソシストの向こうに灯る街灯を一瞥した後、獣じみた唸り声をあげて眼前の東に猛然と襲い掛かった。東はそれを大鎌で何とかしのぎ切る。「絶対防御ノ誓イ」を使っているのだ。埒が明かないと獣が後ろに飛ぼうとしたところで、死角に配置されていたシンティラの符がそれを阻んだ。 さらに真昼のクロスジャッジがベリアルを切り裂き、ユウのプロ―ジョンが炸裂する。ベリアルは足元をふらつかせ、傷ついた子供がやるように項垂れた。 その足元から伸びた触手が不気味に揺れている事にレイは気づいた。前衛の隙間を縫って攻撃を飛ばそうとする際に気づいたのだ。 「新手の攻撃、来ます!」 魔法が飛んでくる可能性だって否定は出来ない。注意を呼び掛けながらカードを投擲し、伸ばされた触手を、切り落とす。だが、数が多い。そこにロスが盾を構えて躍り出た。苦労する様子もなく攻撃を受け止めていく。その様子はまるでスポーツに興じているようにも見えた。 やがてベリアルの攻撃が途切れる。それを捌ききったロスと入れ替わるようにして前に出たキリアンは暴虎馮河斬を繰り出した。胴を貫かれその場から動けなくなったべリアルにレイの援護が突き刺さり、燃の攻撃がその身を抉る。反撃しようとしたのだろう、ベリアルは身をよじるが縫い付けられた少年の身では向き直ることも出来ない。忌々しげに吠えるベリアルにエクソシストたちはさらなる追撃を加える。 その時、全身から伸びる触手が突如膨れ上がった。憎悪の色を強く纏った触手がその背から真っ直ぐ伸びる。狙いは先ほど自身の身を抉った燃だ。 だが、その攻撃が燃に通ることはなかった。炎の斜線に東が飛び込んだのだ。真正面からその体で攻撃を受け止める。 「先生!」 「清十寺さん!」 決して小さくはない傷を負ってなお、東は小さく笑って見せた。 「大丈夫。ただ、ちょっと後ろに下がらせてもらうよ」 フォローに回ったセアラのチェインショットに隠れるようにして、東は後ろに下がり、駆け寄ったシンティラから回復を受けた。 一方で、なおも追いすがって攻撃を加えようとするベリアルを真昼は前衛で押さえていた。クロス・ジャッジで畳みかけ、相手が動く隙を与えない。アメジスの攻撃が触手を薙ぎ払った時に、ちらりと何かが見えたような気がする。そういえば、先ほど攻撃を食らった時も背中から再生していた。 「核だ! 背中にあるんだ!」 「了解、燃やしつくしマス!」 その直後、フレイムを使用し続けていたエリィが火球を狙いすまして打ち込んだ。核を焼き尽くすようにして炎が躍る。ベリアルはひときわ甲高い叫び声をあげた。癇癪をおこした子供のように手足を触手ごとばたつかせ、何とかして串刺しになった体を引き抜いた。そのまま逃走するようにふらふらと歩き出す。広場から通路に出る直線の上を位置取っていた朝日がそれを食い止め、そこにベルトルドが拳を叩きこんで動きを止めた。 これが崩壊の決定打だった。 少年の姿をしたベリアルは足をよろめかせ、何とか踏みとどまる。俯いた子供の背中に浮かぶ紋様から、翼が広がるようにゆらりと鎖が現れた。星灯りを受けて鈍く光る鎖の先にはいくつかの魂が繋がれている。 「……ッ!」 囚われた魂の有様に、エクソシストたちからも息を飲む音があがる。 ベリアルの素体となった少年。その餌食となった人々。少年の視線の先に、おそらく少年の親であっただろう男女の姿を見出してシンティラはぐっと拳を握りしめた。彼の帰るべき家はもう、どこにもなくなっていたのだ。 「子供の時間は終わりです」 そんな中で、セプティムはクロス・ローズを構えて宣言した。街灯の明かりを受け、団章が鋭く浮かび上がる。次の行動を悟ったベルトルドは少年の肩を強く掴んだ。目の高さを合わせるように、抱き寄せるようにしてベリアルを拘束する。 近づく足音に目を上げれば、セプティムが静かに剣を振り上げていた。二人の断罪者の視線が交錯する。一つの頷きの後、剣が風を切って振り下ろされた。 「永遠の眠りについてください」 セプティムは静かに告げ、一息に鎖を断ち切った。魂たちは解き放たれ、ベリアルはさらさらと姿を崩して灰へ還っていく。 「そうだな。……おやすみ」 籠手の中から零れ落ちていく冷たい灰にベルトルドは小さく声をかけた。ぬくもり、命、魂。少年の求めていた灯りは結局奪うことしかしなかった。 (俺達も、彼にとっては奪う側だ) それでも、彼は少年の冥福を祈りたかった。 ●戦いの終わり ベリアルの犠牲者の魂は静かに空へ溶けるように消えていく。その中でまっすぐ星々に向かって昇っていった少年の幻影に、キリアンは前髪の奥に隠した傷が少し傷んだような気がした。 「……次はもっとマシなところへ生まれてきな」 彼は空を見上げるのをやめ、前に、セアラへと向き直る。「身が持たないからもうキリーが怪我しても慌てないことにした」とは言っていたが、きっと手当を受けろと迫られることになるのだろう。これが彼らの日常なのだ。 幻影を見つめていたエクソシストは他にもいる。藤葉はその姿に「……どうか、安らいで下さい」と声をかけていた。労わるように、その頭をアメジスが撫でる。少し遠くではエリィが苦虫を噛み潰したような表情でそれを見ている。ベリアルに同情する日が来るとは思っていなかったのだ。 「ベリアルは倒さなきゃいけないものデス。なので、この結末に後悔はありまセン」 零れた言葉は傍らのレイに向かってのものだろうか、それとも自分自身に向けての言葉だろうか。レイはその表情に驚いて続きを待つ。 「が、こんなに後味が悪くなるとは思いませんデシタ……」 レイはアメジスに習い、黙ってその髪を撫でる。どうか、その優しさは忘れないで。そんな願いが込められていた。 せめてもの弔いに、とレイはエリィを伴って広場の花を少しだけ拝借した。形を整え、街灯の傍に落ちていた本と共に手向ける。ベリアル発生地点はこの近くと聞いた。きっとこの本は彼のものなのだろう。手を合わせていると、ベリアルの遺灰を集めていたユウ、朝日と真昼もそこに合流する。 「あの世では、安らかに」 「ゆっくり休めよ、少年」 夜明け前の最も暗い時刻、祈る彼らの姿を街灯が静かに照らし出していた。 悼んでいるばかりではいられない。いずれ日は昇り、日常が再開されるだろう。ロスとシンティラは一足先に避難した市民の元へ向かっていた。行方不明者の確認に討伐報告。復旧が必要ならば手伝いも必要になるかもしれない。やるべき事はたくさんある。 エクソシストの中にはそれに加わる者もいるだろう。次の戦いに備える者、傷を癒す者、今一度戦う意義を考える者。 生き残った者にはさまざまな選択肢が残っている。
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*** 活躍者 *** |
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[32] 降矢・朝日 2018/06/12-22:38
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[31] ロス・レッグ 2018/06/12-22:08
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[30] ロス・レッグ 2018/06/12-19:17
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[29] ヨナ・ミューエ 2018/06/12-11:23
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[28] 藤葉・宮野 2018/06/12-09:13
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[27] ロス・レッグ 2018/06/12-07:45
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[26] エリィ・ブロッサム 2018/06/11-08:12
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[25] エリィ・ブロッサム 2018/06/11-08:10
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[24] セプティム・リライズ 2018/06/11-04:23
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[23] ロス・レッグ 2018/06/11-00:24
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[22] 降矢・朝日 2018/06/10-23:29
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[21] キリアン・ザジ 2018/06/10-22:52 | ||
[20] 清十寺・東 2018/06/10-22:05
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[19] アメジス・ローザ 2018/06/10-15:47
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[18] ヨナ・ミューエ 2018/06/10-11:02
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[17] 藤葉・宮野 2018/06/10-09:38
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[16] セアラ・オルコット 2018/06/09-23:54
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[15] レイ・アクトリス 2018/06/09-23:35 | ||
[14] 藤葉・宮野 2018/06/09-16:33
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[13] 清十寺・東 2018/06/09-16:18
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[12] 清十寺・東 2018/06/09-16:16 | ||
[11] セアラ・オルコット 2018/06/09-15:55 | ||
[10] ヨナ・ミューエ 2018/06/09-09:54
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[9] 藤葉・宮野 2018/06/09-08:25
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[8] セプティム・リライズ 2018/06/09-07:32 | ||
[7] エリィ・ブロッサム 2018/06/08-23:16 | ||
[6] 藤葉・宮野 2018/06/08-15:13
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[5] ヨナ・ミューエ 2018/06/08-03:00
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[4] 藤葉・宮野 2018/06/07-16:21
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[3] セプティム・リライズ 2018/06/07-14:06
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[2] 藤葉・宮野 2018/06/07-00:38
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