~ プロローグ ~ |
ドッペル達が、教団内部に留まることになった数日後――。 |
~ 解説 ~ |
●状況 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、留菜マナです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
薬→ヨナ 姿も声も認識されず困っていた所でドッペルと会う ヨ あなたはこの間の…? ベ どうしたものかと思っていたが君がいてくれて助かった 今日はこのまま付き合ってくれないか ヨ …お願いします 予定通り遊園地の警備へ 煌びやかなイルミネーションに浮足立つドッペル 警護の意識は薄い ヨナはどうやら傍で待機していて 必要な時以外はドッペルの好き動いて構わないと伝えた様子 高揚した面持ちで花の香りを楽しみ、手を掲げてイルミネーションをなぞる様に追いかける その度に喰人に「みてみて」「あれは何?」「綺麗」と手を繋ぎ笑顔と共に言葉を投げかけてくる 同じ姿でもまるで別人だな こうして見ていると、なかなか可愛いものだ 一方ヨナ本人は。 |
||||||||
|
||||||||
キョウ:わあ、サクラが消えた。 サクラ:はぁ? キョウ:うーん。これでまた一人に戻ってしまいました。 サクラ:…… キョウ:あれ、いつの間に瞬間移動が出来るように? サクラ:この間と同じドッペルかしら。 キョウ:んん?誰に向かって話してるんです? 【行動】B:声学部にいって楽器を触る サクラ 不思議な気分ねぇ。まあ、頑張って私をまねしてもらいましょう。 で、ついたわねぇ声学部。 芸術(音楽)は癒し。 自分たちを癒やしに楽器に触れて遊 違ったわ楽器を奏でるのよ。 キョウ ドッペルでしたか。 ドッペル、サクラのやること、言ってくる事は無視して構いませ痛い! 見えない攻撃はずるいです! ドッペル!まねしないで下さい!蹴らないで! |
||||||||
|
||||||||
薬を飲んだ方 …本当に見えないし聞こえていないのね シリウスの前で手をひらひら 3人でいたら大丈夫ね 今日は一日 よろしくね? A わあ 冬なのにこんなに花が! ねえ ドッペルさんもシリウスも見て クリスマスローズ クレマチス 冬バラもこんなに綺麗に つん と服の裾を引っ張られて我に返る あ… そうね 迷子になったらたいへん 眉を顰めた彼の 視線がずれているのがおかしくて わたしはこっちよ シリウス そっと頬に触れる 丸くなる翡翠の目に笑顔 迷子にならないように 片手を彼と もう片方を彼女と繋いで ドッペルさんって 種族名でしょう? あなたのお名前は? 返事がなければ考え込んで カノン というのはどうかしら カノンちゃん わたしと友だちになってくれない? |
||||||||
|
||||||||
A 私、見えなくなってる、んですか…? 警備のお仕事…どうしましょう… ドッペルさん、一緒に来てくれますか? ありがとう… はぐれないように、しっかり付いていかないと… と思ったら繋がれた手 どうして、私がこっちにいるって、分かったんですか? 見えないし、声も聞こえない、のに… ドッペルさんに伝えて貰ったけどはぐらかされてしまって首を傾げ 元に戻ったら、もう一度聞いてみましょう… 警備をしてて周りを見ながら 今度は、休暇でここに来たいですね… 喜んでパレードを見てるドッペルさんに悪いから口には出さず心の中で その時耳元で囁かれた言葉に クリスの手をそっと頬に当てる 今、顔が見えなくて、良かった… だってきっと、真っ赤ですもの… |
||||||||
|
||||||||
A え。えーと…? どう対処しろと…? つまり…ドッペル。貴女ならドクターが分かるという事なんですね とりあえずドッペルの事は丁重に扱おう… …どこに行きたいんですか? …?なんかここら辺もさもさしてる? え?何だって!?ドクターを触ってる!?申し訳ない! 飲み物等は3人分用意するか… 宙に浮いて減っていく食べ物は奇妙だが… …とはいえ。 イルミネーションを前に目を輝かせているドッペルを見ていると、本当にドクターそのものだな… やっぱりドクターの笑顔は俺にとっては嬉し…え?ドクターとはぐれた? ドッペルに協力してもらって探した末に、突然腰のあたりが締め付けられ… …う、うぐ… このベアハッグは…ドクター… ご無事で、何より… |
||||||||
|
||||||||
A まあ見た感じいつも通りだし、任務に支障はないか…たぶん 俺達の担当はピクニックエリアの警備だ ドッペルでもリントの代わりにしっかりやってもらわないとな …おいリント、今はアシッドも降ってないし空からベリアルも降ってこないぞ 何か会話が不自然だと思ったら案の定だ 律儀なドッペルで助かったよ サボってたリントに怒るよりも呆れ それにしてもアンタ、本当に星が好きなんだな 別に謝るほどのことじゃ…え? ば、バカ!仕事中に何言ってるんだ!(照れて真っ赤) 今見えてるのはドッペルの方なのに 見た目も声も本物そっくりだからどうしても意識してしまう いやでもこれを言わせているのは本物のリントで、つまり…?(混乱) |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
● 「――っ!」 食堂で出された飲み物を呑んだ瞬間、『ヨナ・ミューエ』の姿が消失した。 彼女の身に起きた変化に、『ベルトルド・レーヴェ』は目を瞬かせる。 『ベルトルドさん!』 ヨナが必死に呼びかけても、姿も声も認識されない。 想定外の状況。 だが、この後、遊園地の警備の指令へと赴くことになっていた。 互いに途方に暮れていた所で、ドッペルがやってきて、ヨナへと姿を変える。 どうやら、ドッペルには、ヨナの姿が見え、声も聞こえるようだ。 『あなたはこの間の……?』 「あ……」 ドッペルは突然の出来事に動揺しながらも、魔女の子供達が持っていた飲み物とヨナの身に起きたことを説明した。 「どうしたものかと思っていたが、君がいてくれて助かった。今日はこのまま付き合ってくれないか」 『……お願いします』 「……うん」 二人からの懇願に、ドッペルは噛みしめるようにそう答える。 そして、ヨナ達は予定通り、遊園地の警備へと赴いたのだった。 夜の遊園地。 花に囲まれたピクニックエリアは、華やかなイルミネーションを展開し、園内を美しく彩っている。 それは、まるで星空のように幻想的だった。 「綺麗……」 ドッペルは感慨深げに、周りを見渡しながらつぶやいた。 煌びやかなイルミネーションを前に浮き足立つドッペルには、もはや警護への意識は薄い。 どうやら、ヨナは傍で待機していて、必要な時以外はドッペルの好きに動いて構わないと伝えた様子だった。 「みてみて」 ドッペルは屈託のない笑顔で、ベルトルドの手を繋いでくる。 彼女は高揚した面持ちで花の香りを楽しみ、手を掲げてイルミネーションをなぞる様に追いかけていた。 「……あれは何?」 「観覧車だ」 「観覧車……?」 やがてドッペルは、ベルトルドに目を向けたまま、無垢な笑みを浮かべて尋ねてくる。 (同じ姿でも、まるで別人だな。こうして見ていると、なかなか可愛いものだ) ベルトルドは胸のつかえが取れたように、ドッペルを優しく見守っていた。 しかし、そんな二人の姿を見て、ヨナは複雑な心境を抱いてしまう。 (前は驚いて、怖がらせてしまったのは良くなかった。今回は危険は少ないでしょうし、反省も兼ねて口は出さないように……) そう考えても、ヨナの胸に様々な情念が去来する。 (自分の姿で、自分らしからぬ事をされるのは、何というか見ていられない。あんな目で、ベルトルドさんを見たことがあったかしら。自分の姿だから気になるのか。別の姿の女性だったら?) 答えの出ない問答に、ヨナの胸の奥がざわめいた。 (パートナーといっても、ベルトルドさんは自分のものではない。分かってはいるけども) まるで、時間が止まってしまったかのように胸が苦しくなる。 その時、ヨナはふと心配げに様子を伺うドッペルの姿に気が付いた。 「大丈夫……?」 『ごめんなさい。かえって気を遣わしてしまって』 ドッペルが不安そうな声で、そっと手を伸ばす。 ヨナは力ない笑顔と共に、その手を優しく握り返した。 『貴女は優しい方ですね。私も、そうあれたらいいのですけど』 冬空を背景に、一抹の切なさが胸の中で燻るようだった。 ● 「わあ、サクラが消えた」 『はぁ?』 予想外な『キョウ・ニムラサ』の言葉に、『サク・ニムラサ』は驚きをあらわにした。 「うーん。これでまた一人に戻ってしまいました」 『……』 サクは、周囲に視線を向けるキョウの様子を見て、自身の身に起きた変化に驚く。 (キョウヤ、気付いていないのかしら……?) サクは、キョウに気付かれていない事実を噛みしめるように表情を曇らせる。 その時、ドッペルがやってきて、サクへと姿を変えた。 「あれ、いつの間に瞬間移動が出来るように?」 突如、姿を現したサクの姿をしたドッペルを前にして、キョウは唖然とした。 しかし、サクの姿をしたドッペルの表情は浮かない。 ドッペルが真似していることに気づいたサクは、ドッペルの頬を軽く引っ張って告げる。 『笑って』 楽しそうじゃない自分を見るのが、見せるのが嫌だから――。 その言葉に応えるように、ドッペルは笑みを浮かべる。 『この間と同じドッペルかしら』 「ええ」 「んん? 誰に向かって話してるんです?」 本物のサクが見えないキョウは、不思議そうに尋ねる。 そこで、サクの姿をしたドッペルが事情を説明した。 「ドッペルでしたか」 意外な事実に、キョウは意表を突かれたように言う。 『不思議な気分ねぇ』 「不思議な気分ねぇ」 ドッペルが、サクの言葉を反芻する。 『まあ、頑張って、私を真似してもらいましょう』 「まあ、頑張って、私を真似してもらいましょう」 サク達は、目的の場所である声楽部へとたどり着いた。 『で、ついたわねぇ、声楽部』 「で、ついたわねぇ、声楽部」 「いろいろな楽器がありますね」 キョウが感慨にふけていると、サクは思案するように楽器へと視線を巡らせる。 『芸術は癒し。自分達を癒しに楽器に触れて遊――』 「芸術は癒し。自分達を癒しに楽器に触れて遊――」 サクは艶やかな笑顔を浮かべ、言い直した。 『違ったわ。楽器を奏でるのよ』 「違ったわ。楽器を奏でるのよ」 「ドッペル、サクラのやること、言ってくる事は無視して構いませ痛い!」 キョウは即座に忠告しようとしたが、突然、見えない攻撃に襲われる。 「見えない攻撃はずるいです!」 キョウは心外だとばかりに訴えようとしたが、さらに慮外の攻撃が放たれた。 「ドッペル! 真似しないで下さい! 蹴らないで!」 キョウの願いも虚しく、二人のサクは楽しげな笑みを浮かべる。 一触即発の出来事から、閑話休題。 サク達は笛系、キョウは弦楽器を使って演奏を開始する。 やがて、3人で作り出した音楽が声楽部を満たす。 『今は下手だけど、やっている内にきっとうまくなる。いつか3人で演奏しましょう』 「今は下手だけど、やっている内にきっとうまくなる。いつか3人で演奏しましょう」 「演奏会、いいと思います」 弦楽器を鳴らしたキョウが応えると、二人のサクは戯れ合いながらも嬉しそうな笑顔を浮かべる。 『所で、透明になった原因はなにかしら。お礼を言わないと』 「それは――」 サクの少し硬い言葉に、ドッペルは事の発端となった飲み物のことを話したのだった。 ● 「……人騒がせな……」 ドッペルから事情を聞いたことで、事の発端が魔女の子供達の悪戯のせいだと分かり、『シリウス・セイアッド』は大きくため息を吐いた。 その時、目の前でひらひらと動く指に視線を上げる。 『……本当に見えないし、聞こえていないのね』 「……本当に見えないし、聞こえていないのね」 『リチェルカーレ・リモージュ』は、自身の身に起きた変化に戸惑いの色を隠せなかった。 ドッペルが、彼女と同じ言動を繰り返す。 リチェルカーレと同じ顔の少女からの言葉に、本物が言っているのだと気付き、 「――そこにいるのか?」 シリウスは、ドッペルの視線の先から、リチェルカーレがいると思われる空間を見つめた。 「ええ、そうよ」 ドッペルが、リチェルカーレの代わりに答える。 『3人でいたら大丈夫ね。今日は一日、よろしくね?』 「よろしくね」 リチェルカーレの言葉に、ドッペルは花咲くような笑みを浮かべた。 夜の遊園地。 ピクニックエリアは、イルミネーションに彩られ、冬の花達が可憐に咲き誇っていた。 『わあ、冬なのにこんなに花が!』 「わあ、冬なのにこんなに花が!」 リチェルカーレは溢れる感動を伝えるように、両手を絡ませる。 『ねえ、ドッペルさんもシリウスも見て』 「ねえ、ドッペルさんもシリウスも見て」 二人のリチェルカーレは顔を輝かせて、歌うように言葉を紡ぐ。 『クリスマスローズ、クレマチス、冬バラもこんなに綺麗に』 「クリスマスローズ、クレマチス、冬バラもこんなに綺麗に」 突然、流れるように喋り出したドッペルの姿に、シリウスは若干、嫌な予感を感じる。 「……リチェは、こっちを見ているのか?」 首を横に振るドッペルの姿が、全てを如実に語っていた。 シリウスは頭痛をこらえる仕草で伝える。 「――捕まえてくれ。絶対、逸れる」 リチェルカーレは愛おしそうに、花達を見つめていた。 その時、ドッペルにつんと服の裾を引っ張られて我に返る。 『あ……そうね。迷子になったら大変』 「あ……そうね。迷子になったら大変」 その言葉に、シリウスは思わず、ため息を一つこぼした。 「迷子に、ならないように、してくれ」 眉を顰めた彼の視線がずれているのに気付いて、リチェルカーレは笑みをこぼす。 『わたしはこっちよ、シリウス』 「わたしはこっちよ、シリウス」 リチェルカーレは、そっとシリウスの頬に触れる。 目を見開くシリウスに対して、彼女は周囲に光を撒き散らすような笑みを浮かべた。 馴染みのある体温に、シリウスは実際に彼女がそこにいるのだと安堵する。 リチェルカーレは迷子にならないように、と片手を彼と、もう片方を彼女へと繋ぐ。 シリウスは表情を緩め、見えない細い指をそっと握り返す。 『ドッペルさんって、種族名でしょう? あなたのお名前は?』 「……っ」 リチェルカーレの問いに、名前を持たないドッペルは言葉を詰まらせる。 ドッペルの表情が硬く強張ったことに気づいたリチェルカーレは、少し考え込んではにかんでみせた。 「カノン、というのはどうかしら?」 「カノン……」 ドッペル――カノンは胸に刻むように、その名前を口にした。 「カノンちゃん、わたしと友だちになってくれない?」 「ええ、ありがとう……」 言葉には出来ない感謝の想いが、カノンの胸に広がる。 また、新たな明日が始まる。 希望に満ちたその名前は、彼女にそう予感させた。 何もかも現実味が欠けた幻想の世界で、彼女には共に進行していく二人だけが確かだった。 ● 「まさか、食堂でこんな怪しい物を出されるなんて……油断した」 『私、見えなくなってる、んですか……?』 『クリストフ・フォンシラー』が苦々しく告げると、『アリシア・ムーンライト』は悲しそうに呟いた。 「アリシア? 大丈夫かい?」 『はい……。でも、警備のお仕事……どうしましょう……』 想定外の状況に、アリシアは不安を滲ませる。 その時、ドッペルがやってきて、アリシアへと姿を変えた。 どうやら、ドッペルには、アリシアの姿が見え、声も聞こえるようだ。 『あなたは……』 「……警備の、お仕事」 ドッペルは突然の出来事に動揺しながらも、アリシアの言葉を繰り返した。 ドッペルの通訳にホッと息を吐き、クリストフは優しく笑みを返す。 「うん、仕事があるんだよね。来てくれるなら助かるよ、ドッペルちゃん」 『ドッペルさん、一緒に来てくれますか?』 「はい……」 二人の懇願に、ドッペルは肯定する。 『ありがとう……』 「ドッペルちゃん、ありがとう」 二人の言葉に、ドッペルは嬉しそうに微笑んだ。 光と音楽に包まれたナイトパレード。 それは、幼い頃に夢見た架空の物語を形にしたようなものだった。 アリシアが視線を向けた場所では、幻想的に彩られたパレードが周囲を明るく照らしている。 『とても、綺麗です、ね……』 「とても、綺麗です、ね……」 アリシアはドッペルと共に感嘆のため息を吐く。 夜には閑散としているはずの遊園地が、多くの人達で溢れていた。 (はぐれないように、しっかり付いていかないと……) (ええと、アリシアはこの辺かな?) クリストフは、いつも彼女から香っている花の香りを頼りに手を伸ばす。 アリシアの腕に触れたところで、手を下に滑らせて繋ぐ。 『あ……』 「はぐれないようにね」 アリシアが疑問を白い呼吸に乗せると、クリストフは安心させるように柔らかな声で言った。 『どうして、私がこっちにいるって、分かったんですか? 見えないし、声も聞こえない、のに……』 「どうして、私がこっちにいるって、分かったんですか? 見えないし、声も聞こえない、のに……」 「どうしてって……ふっ、俺だけの秘密だよ」 アリシアが縋るようなような想いで尋ねると、クリストフは意味深に微笑む。 『元に戻ったら、もう一度聞いてみましょう……』 はぐらかされてしまった答え。 アリシアは不思議そうに首を傾げる。 やがて、ナイトパレードも終盤に差し掛かり、ドッペルが満面の笑顔で華やかなパレードを見ていた。 (今度は、休暇でここに来たいですね……) (これはこれで素敵なんだけど、本物のアリシアの笑顔が見たいから、今度は二人でまた来よう) 周りを警戒しながら、二人は密かな願いを心の中に仕舞う。 「そこにいるのが分かるのは、花の香りがするからだよ」 その時、耳元で囁かれた言葉。 アリシアは、クリストフの手をそっと頬に当てた。 (今、顔が見えなくて、良かった……。だってきっと、真っ赤ですもの……) アリシアは幸せに浸りながら、頬を紅潮させる。 手に伝わる熱に彼女の表情を悟って、クリストフは微笑した。 ● 「え。えーと……?」 『レオノル・ペリエ』が飲み物を呑んだ瞬間、引き起こされた現象に、『ショーン・ハイド』は自分の目を疑った。 突如、彼の視界から、レオノルの姿が消えたのだ。 しかも、周囲にも、彼女の姿は見えていない。 「どう対処しろと……?」 『あっちゃー……』 不可解な出来事を目の当たりにして、ショーンとレオノルは困惑する。 その時、ドッペルがやってきて、レオノルへと姿を変える。 ショーンが先程、起こった現象を口にすると、ドッペルはレオノルの姿を認識していることを伝えた。 「つまり……ドッペル。貴女なら、ドクターが分かるという事なんですね」 『ドッペル、右も左も分からない所、不安だと思うけど、ショーンについておけば危ないことは無いからさ。今日は、私の代わりに楽しんどいでよ』 二人の言葉に、ドッペルは肯定する。 「……どこに行きたいんですか?」 (……? なんかここら辺、もさもさしてる?) (私のドッペルに、丁重に接するのが凄く謎なんだけど……) ショーンがドッペルを丁重に扱うのを見て、レオノルは気まずそうな表情を浮かべる。 『ほら、ドッペルが恐縮してるじゃん! あと、私の頭、もさもさ逆撫でしないで!』 「ほら、ドッペルが恐縮してるじゃん! あと、私の頭、もさもさ逆撫でしないで!」 「え? 何だって!? ドクターを触ってる!? 申し訳ない!」 状況を理解したショーンは謝辞し、レオノルの髪へと触れていた手を元に戻した。 (飲み物等は、3人分用意するか……。宙に浮いて減っていく食べ物は奇妙だが……) ショーンが慇懃丁重に手渡すと、レオノル達は飲み物等を手にイルミネーションを観賞した。 (……とはいえ。イルミネーションを前に目を輝かせているドッペルを見ていると、本当にドクターそのものだな……) (……それにしても、ショーンのドッペルに対する態度って、ショーンが普段、私に取ってる態度なんだよな……) ドッペルが煌びやかなイルミネーションを前にして、感嘆の声を上げる。 そんな彼女に懇切丁寧に説明するショーンを見て、レオノルは物寂しさを感じていた。 (凄く嬉しそうだな) その理由はすぐに思い当たった。 (そりゃ酷い目に遭った所で、優しくしてくれた人と一緒なんだもんな……。なんか寂し……って。あれ!? 迷子になった!) 寂寥感を抱いていたレオノルは、そこで自身の置かれた状況を把握した。 「やっぱりドクターの笑顔は、俺にとっては嬉し……え? ドクターとはぐれた?」 予想外なドッペルの発言は、その場の空気ごと全てをさらっていった。 ショーンは率先して周囲を窺うドッペルを頼りに、離れ離れになったレオノルを探していた。 その道中で、突然、腰のあたりが締め付けられる。 『ショーン! 心細かったよ! もう離れ離れも構ってもらえないのも嫌だ!』 「……う、うぐ……」 ショーンを見た瞬間、レオノルの中で想いが弾ける。 「このベアハッグは……ドクター……。ご無事で、何より……」 必死に抱きついてくる、誰よりも愛しくて大切な彼女と過ごす時間は。 幻想の中でも、現実の中でも、永遠に輝く光であるように――ショーンには思えた。 ● 『なかなか、楽しそうな事態になっちゃったね』 「なかなか、楽しそうな事態になっちゃったね」 ドッペルから、自身の身に起きた変化について聞いた『リントヴルム・ガラクシア』は目を瞠った。 リントヴルムの姿をしたドッペルが、彼と同じ言動を繰り返す。 「まあ、見た感じ、いつも通りだし、任務に支障はないか……たぶん」 『まあ、僕の言ったことをそのまま喋って真似してくれるんなら特に問題ないよね』 「まあ、僕の言ったことをそのまま喋って真似してくれるんなら特に問題ないよね」 『ベルロック・シックザール』の言葉に、リントヴルムは同意する。 星々が煌めく夜空の下、色鮮やかな光の灯がピクニックエリアに果てしなく広がっていた。 園内は盛況で、多くの人々が行き来し、雑踏に溢れている。 ドッペルの陰に隠れていたリントヴルムは、警備もそこそこに空を見上げた。 『イルミネーションも綺麗だけど、僕はやっぱり星空が好きだなあ』 「イルミネーションも綺麗だけど、僕はやっぱり星空が好きだなあ」 「俺達の担当は、ピクニックエリアの警備だ。ドッペルでも、リントの代わりにしっかりやってもらわないとな」 ベルロックが視線を向けると、リントヴルムの姿をしたドッペルは空を仰ぎ見ていた。 想定外の反応に、ベルロックは目を瞬かせる。 「……おい、リント。今はアシッドも降ってないし、空からベリアルも降ってこないぞ」 『……あ、そうか。ドッペル君、動きも僕と同じになるんだね』 同じ動作をしていたドッペルを見て、リントヴルムは顎に手を当てて考え込んだ。 『よし、僕は星を見てるから、君が警備をしっかりやるんだよ』 「僕は星を見てるから、君が警備をやるんだよ」 『……あーっ! そこは言わなくていいの!』 「そこは言わなくていいの!」 リントヴルムが訴えかけても、ドッペルはまるで合わせ鏡のように同一の言動を繰り返していた。 「何か会話が不自然だと思ったら案の定だ。律儀なドッペルで助かったよ」 事情を把握したベルロックは呆気に取られる。 『もう、サボってるのがばれちゃったじゃないか……。仕方ない、正直に謝ってから機嫌を取ろう』 リントヴルムが肩を竦めると、落ち込んでいたドッペルは真剣な眼差しで請け合う。 「それにしてもアンタ、本当に星が好きなんだな」 『ごめんね、ベル君。お詫びに、後でデートしようか』 「ごめんね、ベル君。お詫びに、後でデートしようか」 「別に謝るほどのことじゃ……え?」 思いがけない言葉に、ベルロックは一拍置くと輪をかけて動揺した。 「ば、バカ! 仕事中に何言ってるんだ!」 否応もなく、その意味を理解したベルロックは顔を真っ赤にする。 (今見えてるのはドッペルの方なのに、見た目も声も本物そっくりだから、どうしても意識してしまう。いや、でも、これを言わせているのは本物のリントで、つまり……?) 追いつかない感情。 空回りする思考。 何よりも優先しなければならない出来事に直面したベルロックは、リントヴルムの言葉に全てを占拠されていた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||
|
| ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2020/01/10-22:30
| ||
[4] リントヴルム・ガラクシア 2020/01/10-20:51
| ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2020/01/09-23:53
| ||
[2] ヨナ・ミューエ 2020/01/09-19:50
|