ああもう!先に説明しろよな!でもハルが飲んだのが少量でよかったよ。ん、どうした?ああ、いや違うな…何か伝えたいことでもあるのか?参ったな…何か書けるようなものでも持って来ていればよかったんだが。連呼されてるってことは、多分俺に何かを伝えようとしてくれてるんだろうけど…ハルのことは大体分かるって思ってた。けど、そんなことなかったっていうのを思い知らされた気分だ。ずっと笑顔だから、気持ちを汲み取ってやれないことを気にしてないとは思うんだが。…あ、ごめんハル、今度はどうしたんだ。心配してくれてるのか?…よく分からないけど、ありがとな。…なっ、お前っ、効果切れてるんじゃないか!紛らわしいことするなよ!
降り始めてから大分経って、流石に人通りも殆どなくなったな。雨の音とハルの気配しか感じない、何だか落ち着くな。こうやって二人で静かに過ごすのも悪くない。ハル、本当にお前心配性になったな…大丈夫だって。今日の指令を思い出す。救えなかった命のことはいつも酷く心に圧し掛かる。勿論救えたものも、最初からどうしようもなかったものだってあるけれども。何かしらの形で死と直面するのは、戦うのは、やっぱり苦手だ。ごめん、別にハルに心配かけたかった訳じゃないんだ。大丈夫、俺はまだやれる。ここで俺に出来ることがあるのなら、今はそれを果たしたい。本当、ハルは俺のことばっかりだな。ハルこそ、辛いことがあったら俺に言えよ。
6つの時、父さんに連れられて遠くの町に出かけたんだ。父さんが他の大人と話している間、フラフラと路地に迷い込んだ。路地でハル、大怪我しててさ。本人は放っておいてくれなんて言ってたけど、泣いてるしそのままにしておけなくてさ。でもそんな状況でどうしたらいいか分からなくて。今思えばさっさと父さんを呼びに行けばよかったんだけど、必死だったから…とにかくハンカチを傷口に巻いてみたり、痛いって言う場所を撫でてみたり。でもなかなかハルの痛みを和らげてやれなくて、悔しくて。父さんが探しに来た時、ハルより俺の方が泣いてたっけ…もう父さん達はいないけど、ハルは変わらず傍にいてくれる。あの時、ハルに出会えてよかった。
4ハルのことだから肉しか食べてないだろ、取ってきたぞ。…ヤダじゃない、子供か。賑やかさが落ち着かなくてついハルの近くまで来てしまったけど、せっかく集まったんだ。目一杯雑談するとまでは行かなくても、せめて皆の話は聞いていよう。それじゃあハル行ってくるな、野菜食えよ。ハルは何だかんだで俺にばかり構ってるけど、他の奴とも楽しそうにしてるのを見てほっとした。少し寂しい気もするけどな。ハルはうまくやれてる…と思う。あいつよく気がつくし、頼りになる奴だよ。そもそもの付き合いが長いっていうのもあるけど、あいつがいてよかったと俺は思ってる。事実だけど、何だか恥ずかしいことを言った気が…食べて紛らわそう、うん。
前へ出る直前にハルと魔術真名を使用しておく。ベリアルをなるべく荷物から引き離せるよう、前へ出る。突出しすぎないよう、同じ前線にいるシリウスと動きを合わせるようにする。ただ相手にも突きの攻撃があるから、敵を通さないようにするにしても横並びにはならない方がいいかもしれないな。ベリアルを後方に逃した場合は、後方を信じて追わずに目の前の敵に専念。ハルには援護射撃や周囲の警戒を頼んでおく。あと荷物への誤射もなるべく避けたいから、荷物の移動も手が空けば。ハルは俺と違って明るい奴だから、他の奴といても心配はなさそうだ。後方の方が揺れや落石などの兆候は察知しやすいと思うから、何か異変があれば呼んでもらおう。