結局、ハロウィンどころじゃなかったなぁ…急な召集だったから仕方がないといえば仕方がないんだが。もう日付けも変わるな…こんな時間まで開いてる店はないし、飾りも撤去されてる店ばっかりだ。せっかくハルと店を見て回ろうと思ってたのに、ちょっと残念だな。あ、それ俺も行こうと思ってた。ハルがいくら食べても大丈夫だなって。…いや、違う。単に俺がハルと出かけたかっただけなんだ。楽しい思い出は何があってもずっと残るから。あーあ、ゆっくりハロウィンを楽しみたかったなー…えっ、菓子!?その、ごめん…く、くすぐるのだけは勘弁して欲しい!…な、何だよ、何で笑ってるんだ!?ハル、来年こそは一緒にハロウィン楽しもうな。
ハルはいいのか?ハルにだって会いたい人はきっと……分かった、そういうことなら行ってくる。久しぶり、父さん。いざ父さんを前にして、言葉が詰まって出てこない。……何が、「この刀を地下のコレクションルームに置いてきて欲しい」だ!最初から逃げるつもりなんてなかったんだろ!おかしいと思って途中で引き返して、鍵のかかった扉の向こうで俺が一体どんな気持ちでいたと……!ああ、違う、父さんに会ってこんなことを言いたかったんじゃなくて。違う、違うんだ、俺がもう一度父さんに会いたかったのは。突然のことすぎて、父さんにありがとうも、さよならも言えなかったから。ごめんなハル、俺ばかり喋って。でもやっと、別れが言えたよ。
魔術真名を唱えてから突入、俺達はアートスの対応に回ろう。羊達や警備隊の二人のとアートスの間に入って戦う。合流まで頑張って持ち堪えよう。攻撃はまともに喰らえない、動きも素早いようだ。突進してきそうな挙動があれば声掛け。飛び立つのが難しくなるように、スキルを使いつつ翼を狙う。カタコトでも、理性がないとしても。何かを本人が伝えようとしているのなら聞き届けてやりたい。竜達の肉を焼く光景……なかなか迫力があるな。甘いもの、あるかな?ああもう!だからハル、野菜もきちんと食べろって!放っておくとすぐ肉ばっかり……仕方ない……なあ竜達、追加で肉を焼いてやってくれないか。懇親会の後は片付けを手伝うことにするよ。
魔術真名を唱えてから突入。俺とハルは属性まで同じだから長期戦になるだろうな……できることなら一体づつ攻撃を集中させて倒していきたい。スキルは二階までは温存しておきたいから4発までってところか?二階では一度ゴーレムに増援を呼ばせてから、残ったスキル使い切るようにするよ。さて、どんなバッドステータスが来るかな……俺は特に問題にゃいよう……にゃ!?ち、違っ、違うにゃっ!言葉が勝手に!ハル、何肩震わせてるにゃ、笑うにゃーっ!なんて恐ろしいトラップの数々なんだ……ここに立ち入る時はくれぐれも気をつけるように報告しないといけないな、これ。増援出現までの時間やバッドステータスの持続時間、覚えておこうっと。
最近は忙しかったからな、やることがないと落ち着かなくてさ。本部の周りでも歩くか?歩いている途中、時折ハルが名前を呼んできては答えるのを繰り返す。それだけなのに、ハルが楽しそうにしてるのを見て嬉しくなる。心のどこかで不安に思って来たことをハルに聞いてみることにする。「なあ、俺についてきて後悔はしていないか?」俺の都合に巻き込んでしまった。そんな思いが、契約してからずっとどこかで引っかかってた。でもこんな幸せそうな顔して言われたら、迷いなんてなくなる。「……馬鹿だな、ハル」自由になれたはずなのに。でも、それでも共にあると言ってくれるなら、もっと色んな物を見に行こう。色んな物をハルに見せてやろう。